説明

超音波ボリュームデータ処理装置

【課題】三次元関心領域を用いたレンダリング処理により三次元画像を形成する場合にレンダリング開始面又はレンダリング終了面の湾曲に起因して三次元画像に縞模様が発生していた。
【解決手段】各レイ(視線)304上において所定間隔をもってサンプルポイント306が定められ、それらに対して個別的にボクセル演算が実行される。第1例(A)では、最終ボクセルのエコー値enに対して、そこから終了面302までの距離rに応じた重み付け処理が適用され、その上で最後のボクセル演算が実行される。第2例(B)では、終了面上に終了ボクセルが設定され、その場合においても距離rに応じてエコー値en+に対する距離rの重み付け処理が適用された上で、当該最終ボクセルに対してボクセル演算が実行される。レイの並び方向に輝度値の段差が生じることを軽減又は防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波ボリュームデータ処理装置に関し、特に三次元画像処理が適用される三次元関心領域を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、医療分野において、三次元超音波診断が普及しつつある。例えば、産科においては、母体内の胎児を包含する三次元空間(送受波空間)に対し、超音波が送受波され、これにより、ボリュームデータ(超音波ボリュームデータ)が取得される。そのボリュームデータに対してレンダリング処理を適用することにより、胎児の三次元画像が形成される。三次元画像形成法としては、ボリュームレンダリング法等が周知である。そのようなレンダリング法では、画像化の対象となる空間を通過する複数のレイ(視線)が設定され、各レイごとに開始点から終了点まで逐次的にボクセル演算が実行される。そして、各レイについての最終的なボクセル演算結果が画素値に対応付けられ、複数の画素値の集合として三次元画像が形成される。他の画像処理法として、サーフェイスレンダリング法、積算投影法、等が知られている。
【0003】
対象組織についての三次元画像を形成する場合には、対象組織に隣接している他の組織(非対象組織)の画像化をできるだけ防止することが望まれる。特にボリュームレンダリング法において各レイ上のボクセル演算が対象組織の手前側に存在する他の組織に対しても適用されてしまうと、最終的に形成される三次元画像上において、対象組織が他の組織の裏側に隠れてしまい、対象組織を観察できなくなるという問題が生じる。例えば、子宮内の胎児を表した三次元画像において、最も観察したい胎児の顔が、その手前にある胎盤に隠れてしまう、という問題がある。
【0004】
そこで、三次元関心領域(3D−ROI)が利用されている。三次元関心領域は、三次元のデータ処理空間内に存在する部分的な空間であって、レンダリング処理が適用される範囲を限定するための空間である。三次元関心領域内に胎児(正確には胎児データ)が位置し、且つ、胎盤(正確には胎盤データ)が三次元関心領域外に位置するように、三次元データ処理空間内に三次元関心領域を設定すれば、上記問題を解消することができる。三次元データ処理空間において、三次元関心領域は立体的な図形として観念される。通常、三次元関心領域はレンダリング開始面を有する。例えば、胎児の三次元画像を形成する場合、レンダリング開始面ができる限り胎児の顔と胎盤との間に位置するように、当該レンダリング開始面がマニュアル又は自動的に設定される。レンダリング開始面は、組織分離機能を有するので、それをクリッピング面と称することができる。
【0005】
特許文献1には、三次元関心領域の形状を変形させる技術が開示されている。この技術によれば、三次元関心領域として、立方体形状の特定の角部分を斜めに切り落とした形状を生成できる。特許文献2には、複数の点に基づいて定義された自由曲面を有する三次元関心領域が開示されている。同じく特許文献3には、自由曲面を有する三次元関心領域が開示されている。特許文献3に開示された技術では、自由曲面の形状が、直交する2つの断面上におけるユーザーの座標指定によって定義されている。このため、一方の断面に対する座標指定を他方の断面に反映させるために仮想点という特別な点が用いられている。特許文献4には三次元関心領域を自動的に設定する技術が開示されている。
【0006】
特許文献5には、ボリュームレンダリングで生じる縞模様を防止するためにサンプリング間隔を変える技術が開示されている。
【0007】
生体内において、画像化したい組織の形状や画像化したくない組織の形状は色々であるため、三次元関心領域の形状として単なる立方体形状を採用するのは困難である。特に、レンダリング開始面であるクリッピング面を単なる平面とすると、画像化したい組織と画像化したくない組織とを分離することが困難となる。よって、特許文献1に記載された技術は採用し難い。
【0008】
その一方、ユーザー負担の軽減及び検査時間の短縮のためには、三次元関心領域を簡便かつ迅速に設定できることが望まれる。特に、レンダリング開始面あるいはクリッピング面の位置、形状及び姿勢を簡便かつ迅速に設定できることが望まれる。その観点から見て、特許文献2に記載された技術は、断層画像上において、複数の点を組織表面形状に沿って個別的に位置決める必要があるので、操作上の負担が生じやすい。
【0009】
本発明者らの研究によれば、画像化したい組織の表面形状及び画像化したくない組織の表面形状は、多くの場合に、およそ凸面状及び凹面状のいずれかである、ということが判明している。また、それらの間の隙間は、多くの場合に、三次元関心領域の中心軸(レンダリング中心線)に対して傾斜している、ということが判明している。このような生体組織の傾向に鑑みると、特許文献3の技術は採用しがたい。同技術では、三次元関心領域の上面(クリッピング面)の形状を自在に変化させることができるものの、それ全体の傾きを変化させることはできないからである。当該上面の四隅の高さは常に互いに同一であり、傾斜した隙間に対して上面を挿入することが非常に困難であると言い得る。もちろん、三次元関心領域それ自体をボリュームデータに対して相対的に傾斜させることもできる。しかし、その場合、クリッピング面をそれ全体として傾斜させることはできるものの、レンダリング方向が変化してしまう、又は、三次元関心領域内に画像化不要な組織が入り込んでしまう、といった他の問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−113603号公報(図4)
【特許文献2】特開2004−33658号公報(図2)
【特許文献3】特開2006−61698号公報(図6C)
【特許文献4】特開2001−145631号公報(第0044段落)
【特許文献5】特開2000−339486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、以上のような三次元関心領域を用いてボリュームレンダリング法等を実行する場合において、レンダリングの開始面、終了面あるいは両方が湾曲していると、どうしても各レイの経路長が不揃いとなる。そのような状況下で、各レイ上において一定の規則性をもって一定のサンプリング間隔でサンプル点列が定められると、離散化に伴う周期性が湾曲方向に生じて、超音波画像上に縞模様が生じるという問題が指摘されている。例えば、クリッピング面(つまりレンダリング開始面)が凸形又は凹形の球面の場合には多重リング状の縞模様が生じやすく、クリッピング面が半円筒のような形状の場合には縦の縞模様が生じやすい。特に、終了面付近に強反射物体が存在している場合にそのような問題が顕著となる。ちなみに、各レイにおけるサンプル点を揃えた場合、開始面が階段状となるが、その場合には開始面の近くに強反射体が存在すると、縞模様が顕著に発生するようである。いずれにしても、レイごとに離散化処理を行う場合であって各レイの経路長や位置が揃っていない場合には上記のような問題が生じやすい。そのような縞模様は三次元超音波画像の見映えを著しく低下させるものであり、また疾病診断上の障害となるから、それを抑圧することが強く要請される。
【0012】
本発明の目的は、三次元画像上に生じる縞模様を軽減又は解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)関連技術の説明
後述の実施形態に係る超音波ボリュームデータ処理は、生体内の三次元空間から取得された超音波ボリュームデータに対してレンダリング処理が適用される三次元関心領域を設定する三次元関心領域設定手段と、前記三次元関心領域内のデータを用いてレンダリング処理を実行し、これにより三次元超音波画像を形成する三次元超音波画像形成手段と、を含み、前記三次元関心領域は、画像化対象組織と画像化非対象組織とを空間的に分離するためのクリッピング面を有し、前記三次元関心領域設定手段は、前記クリッピング面を変形させる変形手段と、前記クリッピング面それ全体を傾斜させる傾斜手段と、を有することを特徴とするものである。
【0014】
上記構成において、超音波ボリュームデータは生体内の三次元空間に対する超音波の送受波によって取得される。三次元関心領域設定手段は超音波ボリュームデータに対して仮想的な三次元関心領域を設定する。当該三次元関心領域はレンダリング処理が適用される領域である。レンダリング処理は、ボリュームレンダリング法に基づく処理であるのが望ましいが、他の処理であってもよい。三次元関心領域は分離面あるいは境界面として機能するクリッピング面を有する。クリッピング面は、特に望ましくは、レンダリング開始面であるが、他の面であってもよい。いずれにしても、クリッピング面は、画像化対象組織と画像化非対象組織とを空間的に分離することを目的とした面である。三次元関心領域設定手段は変形手段と傾斜手段とを備える。それらは望ましくはソフトウエアの機能として実現される。変形手段はクリッピング面の形状を変化させるものである。その場合にクリッピング面が通過する1又は複数の代表点を動かすことにより、クリッピング面を変形させるようにしてもよい。望ましくは、クリッピング面の形状は1つの代表点の高さ位置によって定められる。傾斜手段は、クリッピング面の変形後において、あるいは、変形前において、クリッピング面それ全体を傾斜させる。第1方向にだけ傾斜可能な構成を採用するようにしてもよいが、望ましくは、第1方向及び第2方向の両方向に傾斜可能な構成が採用される。クリッピング面それ全体を傾斜させることができるので、2つの組織表面が対向している状況において、それらの隙間の傾斜方向に合わせてクリッピング面を傾けることが容易となる。クリッピング面が例えば4つの角を有する場合、クリッピング面の二次元傾斜によれば、4つの角の高さを任意に設定できる。予めクリッピング面を変形させておいてからそれを傾斜させるようにしてもよいし、クリッピング面を傾斜させた上でそれを変形させるようにしてもよいし、変形と傾斜とを同時又は交互に行えるようにしてもよい。クリッピング面の傾斜により、そのサイズの補正が必要となる場合には、クリッピング面に対して拡大処理(又は縮小処理)が適用される。
【0015】
上記の構成によれば、生体内における画像化対象組織と画像化非対象組織との間にクリッピング面を容易かつ迅速に設定できるという利点を得られる。特に、クリッピング面の形状を適切なものにでき、同時に、その姿勢を適切なものにできるから、レンダリング処理結果の品質を向上できる。例えば、胎児の三次元画像を形成する場合に、胎児の顔が胎盤に隠れてしまうといった問題を容易に回避することが可能である。超音波ボリュームデータ処理装置は、超音波診断装置によって構成されてもよいし、超音波診断装置で取得されたデータを処理するコンピュータによって構成されてもよいし、他の装置によって構成されてもよい。
【0016】
望ましくは、前記変形手段は、前記クリッピング面を凸形状又は凹形状に変形させる。組織間の隙間の形状は、経験則上、概ね凸面又は凹面であることから、クリッピング面の形状として凸形状及び凹形状の両方を選択できるように構成するのが望ましい。クリッピング面の形状として凹凸面のような複雑な形状を採用することも勿論可能である。但し、ユーザーの操作性を考慮するならば、クリッピング面の中心にある代表点を上下に移動させて、それを通過する単純な凸面又は凹面が設定されるように構成するのが望ましい。
【0017】
望ましくは、前記クリッピング面は、傾斜運動する3つの方向としての第1水平方向、第2水平方向及び垂直方向を有し、前記変形手段は、ユーザー指定されたパラメータhに従って前記クリッピング面の代表点についての前記垂直方向の高さを定める。3つの方向は直交関係を維持しながら運動するものである。垂直方向は法線方向に相当し、当該方向における代表点の高さの設定により、クリッピング面の変形方向及び曲率を自在に設定できる。
【0018】
望ましくは、前記第1水平方向において前記代表点の両側の形状が線対称の関係にあり、前記第2水平方向において前記代表点の両側の形状が線対称の関係にある。このような対称性によればユーザーをして三次元関心領域を直感的に容易に認識させることができる。
望ましくは、前記傾斜手段は、第1傾斜角度θ1及び第2傾斜角度θ2に従って前記クリッピング面の二次元傾斜姿勢を定める。2つの方向について独立して傾斜角度を設定できるようにすれば、組織間の隙間が存在する方向にクリッピング面を合わせることが容易となる。
【0019】
望ましくは、前記クリッピング面の傾斜角度に応じて前記クリッピング面のサイズを調整するサイズ調整手段を有する。傾斜前の状態においてクリッピング面の形状が定義された場合、そこから傾斜を行うと、クリッピング面が三次元関心領域の本体図形(クリッピング面を除いた部分)に合致せずに、両者間に空間的なずれが生じてしまう。そこで、サイズ調整(特に拡大処理)を行えば、両者をサイズ面において整合させることができる。これにより正規の立体形状を維持できる。なお、サイズ調整は、クリッピング面又は本体図形のいずれにも適用可能である。拡大補正の他、縮小補正を採用することもできる。
【0020】
望ましくは、前記サイズ調整手段は、前記クリッピング面の傾斜角度が大きくなればなるほど、前記クリッピング面のサイズを大きくする。この場合、相似形を維持してクリッピング面のサイズが変化するように構成するのが望ましい。
【0021】
望ましくは、第1過程において前記変形手段によって変形後のクリッピング面が生成され、次の第2過程において前記傾斜手段によって前記変形後のクリッピング面を傾斜させることにより変形後かつ傾斜後のクリッピング面が生成され、更に第3過程において前記サイズ調整手段によって前記変形後かつ傾斜後のクリッピング面のサイズを調整することにより変形後かつ傾斜後かつサイズ調整後のクリッピング面が生成される。この構成によれば、演算を簡略化できるから、ソフトウエア処理を迅速に行える。望ましくは、前記変形手段は、前記変形後のクリッピング面として第1の三次元形状データを生成し、前記傾斜手段は、前記第1の三次元形状データの回転変換により前記変形後かつ傾斜後のクリッピング面として第2の三次元形状データを生成し、前記サイズ調整手段は、前記第2の三次元形状データの拡大変換により前記変形後かつ傾斜後かつサイズ調整後のクリッピング面として第3の三次元形状データを生成し、前記第3の三次元形状データに基づいて前記レンダリングを実行する際の各レイ上のボクセル演算開始点が規定される。クリッピング面を構成する点群の位置形状データを用いずにクリッピング面を関数で表現することもできる。
【0022】
望ましくは、前記超音波ボリュームデータに基づいて互いに直交する第1及び第2の断層画像を形成する断層画像形成手段と、前記三次元関心領域についての互いに直交する2つの断面を表す第1及び第2のグラフィック画像を形成するグラフィック画像形成手段と、前記第1の断層画像上に前記第1のグラフィック画像が合成された第1の表示画像を表示し、前記第2の断層画像上に前記第2のグラフィック画像が合成された第2の表示画像を表示する表示手段と、を含み、前記三次元関心領域が変更されると、それに連動して、前記第1及び第2のグラフィック画像の内容が変更される。ユーザーはそのような第1及び第2の表示画像を通じて三次元関心領域の位置、形状等を認識できる。
【0023】
望ましくは、複数の初期パラメータセットを格納した記憶部と、前記複数の初期パラメータセットの中から特定のパラメータセットを選択する選択手段と、を含み、前記三次元関心領域設定手段は、前記特定のパラメータセットに従って初期三次元関心領域を設定する。複数の初期形状に対応する複数の初期パラメータセットを予め用意しておけば、所望の三次元関心領域を迅速に設定でき、その場合におけるユーザーの負担を少なくできる。過去に設定された三次元関心領域を規定するパラメータセットを追加登録して後日利用できるように構成するのが望ましい。
【0024】
後述する実施形態に係るプログラムは、生体内の三次元空間から取得された超音波ボリュームデータに対してレンダリングが適用される三次元関心領域を設定する機能を備え、超音波ボリュームデータ処理装置において実行されるプログラムであって、当該プログラムは、前記三次元関心領域に含まれる面であって画像化対象組織と画像化非対象組織とを空間的に分離するためのクリッピング面を生成するクリッピング面生成機能を有し、前記クリッピング面生成機能は、ユーザー入力に基づいて前記クリッピング面を変形させる変形機能と、ユーザー入力に基づいて前記クリッピング面それ全体を傾斜させる傾斜機能と、を有するものである。
【0025】
(2)本発明の説明
後述する実施形態に係る超音波ボリュームデータ処理装置は、超音波ボリュームデータに対して、レンダリング処理が適用される三次元関心領域を設定する三次元関心領域設定手段と、前記三次元関心領域に対して複数のレイを設定し、各レイに沿ってボクセル演算を繰り返し実行することにより、三次元超音波画像を形成する三次元超音波画像形成手段と、を含み、前記各レイ上の複数回のボクセル演算の中に、前記三次元関心領域における開始面及び終了面の少なくとも一方が湾曲していることに起因する縞模様発生現象を抑制するための特別なボクセル演算が含まれる、ことを特徴とするものである。
【0026】
上記構成によれば、三次元関心領域を使ってレンダリング処理を行う場合において、三次元関心領域におけるレンダリング開始面及びレンダリング終了面のいずれか一方が湾曲していても、縞模様発生現象を抑制するための特別なボクセル演算が実行されるため、三次元画像を表示した場合において、縞模様が発生することはなく、あるいは、縞模様が発生してもそれが目立たないようにすることができる。これにより三次元画像の品質を高めることが可能である。なお、上記の関連技術の説明欄では、クリッピング面の全体を傾斜させる手段及びそれを変形させる手段について説明したが、上記構成は、少なくともレンダリング開始面及びレンダリング終了面の一方が非平面である場合、あるいは、各レイにおける経路長がその並び方向に変化している場合に広く適用可能なものである。
【0027】
望ましくは、前記特別なボクセル演算は、前記各レイ上において一定サンプリング間隔で複数のサンプル点を設定した場合に生じる前記一定サンプリング間隔未満の端数を利用するボクセル演算である。この構成によれば、レイ間における不揃い情報を端数として認識し、それを用いて不揃いを緩和する処理を実行することが可能となる。
【0028】
望ましくは、前記端数は、前記終了面から戻って1つ手前のボクセルと前記終了面との間の距離に相当する。望ましくは、前記特別なボクセル演算は、前記終了面に基づいて決定される終了ボクセルに対するボクセル演算であって、前記距離が重み値として作用するボクセル演算である。望ましくは、前記終了ボクセルは前記一定のサンプリング間隔で定められるボクセルである。望ましくは、前記終了ボクセルは前記一定のサンプリング間隔で定められるものではない前記終了面上に付加的に設定されたボクセルである。
【0029】
後述する実施形態に係るプログラムは、超音波ボリュームデータを処理する超音波ボリュームデータ処理装置において機能するプログラムであって、当該プログラムは、前記超音波ボリュームデータに対して、レンダリング処理が適用される三次元関心領域を設定する機能と、前記三次元関心領域に対して複数のレイを設定し、各レイに沿ってボクセル演算を繰り返し実行することにより、三次元超音波画像を形成する機能と、を含み、前記各レイ上の複数回のボクセル演算の中に、前記三次元関心領域における開始面及び終了面の少なくとも一方が湾曲していることに起因する縞模様発生現象を抑制するための特別なボクセル演算が含まれる、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、三次元画像上に生じる縞模様を軽減又は解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る超音波ボリュームデータ処理装置としての超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】表示器に表示される画像の一例を示す図である。
【図3】三次元関心領域を利用したレンダリング処理を説明するための図である。
【図4】記憶部に格納される複数のパラメータセットを示す図である。
【図5】制御部の機能として三次元関心領域の生成処理を説明するための図である。
【図6】傾斜していない変形後のクリップ面を表す概念図である。
【図7】傾斜後のクリップ面を示す概念図である。
【図8】拡大処理後のクリップ面を示す概念図である。
【図9】三次元関心領域の設定方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】三次元関心領域のYX断面形状およびYZ断面形状を示す図である。
【図11】三次元関心領域のYX断面形状の生成処理を示すフローチャートである。
【図12】三次元関心領域のYZ断面形状の生成処理を示すフローチャートである。
【図13】複数のレイの相互間において終了点の位置が不揃いとなる現象を説明するための図である。
【図14】三次元画像上において生じる縞模様を示す図である。
【図15】縞模様の発生を抑圧するための2つの手法を説明するための図である。
【図16】複数のレイ間において終了点を揃えた場合を示す図である。
【図17】実施形態の手法を適用した場合における縞模様の消失を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(1)三次元関心領域の設定に関する構成の説明
図1には、本発明に係る超音波ボリュームデータ処理装置としての超音波診断装置がブロック図として示されている。この超音波診断装置は医療の分野において用いられ、超音波の送受波により生体内の組織の三次元画像を形成する機能を有している。本実施形態において、画像化の対象となる組織は胎児である。もちろん他の組織を画像化するようにしてもよい。
【0033】
プローブ10は三次元エコーデータを取り込むための送受波手段であり、本実施形態において、プローブ10は1Dアレイ振動子とそれを機械的に走査する走査機構とを内蔵している。1Dアレイ振動子による超音波ビームの電子走査により走査面が形成され、その走査面を機械的に走査することにより、三次元エコーデータ取り込み空間としての三次元空間12が形成される。プローブ10に2Dアレイ振動子を設け、超音波ビームを二次元的に電子走査するようにしてもよい。このような方式によっても三次元空間12を形成することが可能である。電子走査方式としては、電子セクタ走査、電子リニア走査等が知られている。プローブ10は体表面上に当接されるものであるが、もちろんプローブ10として体腔内に挿入されるものが用いられてもよい。胎児の超音波診断を行う場合には、プローブ10が母体の腹部表面上に当接され、その状態において超音波の送受波が実行される。
【0034】
送受信部16は送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマとして機能するものである。すなわち、送信時において、送受信部16からプローブ10へ複数の送信信号が供給され、これにより送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波はプローブ10において受波され、これによりプローブ10から送受信部16へ複数の受信信号が出力される。送受信部16において、複数の受信信号に対する整相加算処理が実行され、これにより整相加算後の受信信号としてビームデータが出力される。ビームデータに対しては図示されていない信号処理モジュールによる各種の信号処理が適用され、そのような信号処理後のビームデータが3Dメモリ18へ格納される。
【0035】
3Dメモリ18は、三次元空間12に対応するデータ空間を有し、3Dメモリ18内には三次元空間12から取得されたエコーデータ集合体としてのボリュームデータが格納される。ボリュームデータは実際には複数本のビームデータの座標変換及び補間処理により構成されるものである。ドプラ情報から成るボリュームデータが構成されるようにしてもよい。各エコーデータに対する座標変換がデータ読み出し時に実行されてもよい。
【0036】
ボリュームレンダリング部20は、制御部36から与えられたレンダリング条件に従って、三次元関心領域内のデータを利用してレンダリング処理を実行し、これにより三次元画像を形成する。その画像データは表示処理部22へ出力される。ボリュームレンダリング法としては各種の手法が知られており、様々な方法を採用することができる。なお、ボリュームレンダリング法に代えてサーフェイスレンダリング法等の他の画像処理法を適用することも可能である。
【0037】
断層画像形成部24,26,28は、それぞれBモード白黒断層画像を形成するモジュールである。本実施形態においては、互いに直交関係にある切断面に対応した3つの断層画像が形成されている。それらの断層画像は一般にトリプレーンと称されている。本実施形態においては、三次元関心領域における中心点(原点)を通過する3つの切断面に対応する3つの断層画像が形成されている。勿論、各切断面を後述するX方向、Y方向あるいはZ方向に変化させるようにしてもよい。断層画像形成部24,26,28により生成された3つの断層画像のデータは表示処理部22へ出力される。なお、断層画像形成部24,26,28の画像処理にあたって必要な条件は制御部36から渡されている。
【0038】
図形イメージ生成部30,32,34は、3つの断層画像に対してオーバーレイ表示されるグラフィックイメージを生成するモジュールである。本実施形態においては、図形イメージ生成部30が関心領域のYX断面を表すグラフィックイメージを生成しており、図形イメージ生成部32が三次元関心領域のYZ断面を表すグラフィックイメージを生成している。図形イメージ生成部34は、三次元関心領域のもう一つの断面形状を表すグラフィックイメージを生成している。このように生成された各イメージは表示処理部22に出力されている。図形イメージ生成部30,32,34におけるイメージ生成にあたって必要な条件およびデータは制御部36から渡されている。
【0039】
表示処理部22は画像合成機能を有し、入力される複数の画像データに基づいて表示画像を構成し、それを表すデータを表示器42へ出力する。表示器42に表示される画像例については後に図2を用いて説明する。
制御部36は、本実施形態において、CPUおよび動作プログラムによって構成されている。ちなみにボリュームレンダリング部20、断層画像形成部24,26,28、図形イメージ生成部30,32,34もソフトエアの機能として実現することが可能である。制御部36には記憶部38が接続されており、また制御部36には入力部40が接続されている。入力部40は本実施形態において操作パネルにより構成され、その操作パネルはキーボードやトラックボール等を有するものである。ユーザーは入力部40を用いて三次元関心領域の設定にあたって必要な数値を入力することが可能である。記憶部38には、後に図4を用いて説明する複数のパラメータセットが予め格納されている。また記憶部38にはワークエリアが確保されており、そのワークエリア上にはクリップ面を表す形状データが必要に応じて格納される。制御部36は、本実施形態において三次元関心領域の設定機能を有している。その処理内容については後に図5乃至図12を用いて詳述する。
【0040】
図2には、表示器に表示される画像の一例が示されている。符号44は表示画像を表している。その表示画像44には、3つの断層画像46,48,50が含まれ、更に三次元画像52が含まれている。3つの断層画像46,48,50は互いに直交関係を有し、それら全体としてトリプレーンを構成している。具体的に説明すると、断層画像46はYX断面を表す断層画像であり、その断層画像46内にはグラフィックイメージとしての断面形状SYXが含まれている。この断面形状SYXは、三次元関心領域のYX断面を表すものであり、それにはクリッピング面の断面を表すカーブ118が含まれている。符号54は画像化対象となる組織を表しており、符号56は画像化をしたくない組織を表している。カーブ118は組織54と組織56の隙間に沿って湾曲かつ傾斜している。
【0041】
断層画像48には、三次元関心領域のYZ断面を表す断面形状SYZが含まれている。それはクリッピング面のYZ断面を表すカーブ128を有している。カーブ128は画像化対象となる組織54とそうではない組織56との間の隙間に沿って傾斜および湾曲しており、2つの組織の分離が行われている。図2においては、凸形状を有するカーブ118,128が表示されていたが、凹形状を有するカーブ118,128が表示されることもある。
【0042】
断層画像50には三次元関心領域のXZ断面を表す四角形の断面形状58が表れている。もちろん、三次元関心領域の位置やサイズはユーザにより任意に可変することが可能である。また後に詳述するように、クリッピング面の形状および姿勢を任意に設定することが可能である。
【0043】
三次元画像52は、以上のように設定される三次元関心領域内のデータを用いてレンダリング処理を実行することにより生成された画像である。本実施形態において、クリッピング面がレンダリング開始面に相当しており、図示の例においてはY方向に沿って各レイが設定されており、投影視点はY方向上方にある。なお、レンダリング処理にあたっては、各レイ上においてボクセルデータがサンプリングされるが、その場合においては各ボクセルデータは周辺に存在する複数のエコーデータを参照することにより補間処理によって生成される。補間処理を行う場合において三次元関心領域外のデータが参照されることもある。
【0044】
図3には、三次元関心領域を用いたレンダリング処理が概念図として示されている。三次元関心領域Vに対してはY方向に平行に複数のレイ64が設定されている。もちろん、平行投影法ではなく他の投影法を適用してもよい。三次元関心領域Vにおけるクリッピング面60は本実施形態において変形可能且つ傾斜可能なものであり、クリッピング面60は上述したようにレンダリング開始面に相当する。クリッピング面60と反対側の面が終了面62であり、それは図3において底面のように表されている。各レイ上においては、所定のサンプリング間隔をもってボクセル演算が逐次的に実行される。各ボクセルごとに入力光量に基づいて出力光量が演算され、その場合においてはオパシティ(不透明度)がパラメータとして利用される。ボクセル演算が各レイに沿って順次進行し、その処理が終了面62に到達した段階で、当該レイ上のボクセル演算は終了する。あるいは各ボクセルごとに演算される出力光量が最大値(例えば1.0)に到達した場合にもボクセル演算は終了する。その終了時点の出力光量が画素値として用いられ、すなわち仮想的なスクリーン68上において、レイ64に対応する画素70の画素値が当該レイ64において求められた最終の出力光量により決定される。複数のレイについて同様の処理を行うならば、スクリーン68上に三次元画像が構築されることになる。
【0045】
図4には、図1に示した記憶部に格納される複数のパラメータセット74の一例が示されている。ここで1つのパラメータセット74に着目すると、当該パラメータセット74は、三次元関心領域の原点Cの座標(X0,Y0,Z0)と、三次元関心領域のサイズ(XW,YW,ZW)と、Y方向におけるオフセット量(Y+)と、クリッピング面の高さhと、クリッピング面の傾斜角度θX,θZと、で構成されている。もちろん、この構成は一例であり、他の構成を採用することもできる。本実施形態においては、三次元関心領域として、例えば8つの初期形状が定められており、その8つの初期形状に対応した8つのパラメータセット74が記憶部上に登録されている。よって、ユーザーはパラメータセットの選択により、所望の形状を有する三次元関心領域を瞬時に設定することが可能であり、その上で必要な修正を施すことが可能である。今まで生成した三次元関心領域を記憶部上に登録するようにしてもよい。
【0046】
図5には、クリッピング面の生成に関する処理の流れが概念図として示されている。符号76は制御部36の機能を表しており、符号38Aは記憶部38上のワークエリアを表している。また符号74Aはユーザにより選択されたパラメータセットを表している。そのパラメータセット74Aを構成する各パラメータを、符号90で示すように、ユーザーによって任意に変更することが可能である。まず、第1段階においては、符号78で示すように、スプライン処理により、傾斜していない状態で変形されたクリッピング面が生成される。その具体的な内容については後に図6等を用いて詳述する。その処理にあたってはパラメータセット74Aが参照される。スプライン処理78により生成された傾斜前且つ変形後のクリッピング面は実際には三次元の形状データとして生成されており、それがワークエリア38A上に一時的に格納される。形状データは符号80で表されている。
【0047】
第2段階においては、回転変換処理82が実行される。具体的にはパラメータセット74Aに基づいて、形状データ80に対して回転変換処理82を適用することにより、傾斜後のクリッピング面を表す形状データ84が生成され、それがワークエリア38A上に格納される。この形状データ84は過渡的なデータである。
【0048】
第3段階においては、形状データ84に対して拡大変換処理86が適用される。この拡大変換処理86により、拡大後のクリッピング面を表す形状データ88が生成され、それがワークエリア38A上に格納される。この拡大変換処理86により実際に機能させるクリッピング面が確定することになり、すなわち三次元関心領域の生成が完了する。そして、符号90で示されるように、いずれかのパラメータがユーザーにより変更された場合、それをトリガとして、再び第1段階から第3段階までの処理が実行され、三次元関心領域が瞬時に更新されることになる。
【0049】
次に、図6乃至図9を用いて、三次元関心領域の生成処理について、より具体的に説明する。
【0050】
図6には、初期状態にある三次元関心領域V1が示されている。三次元関心領域V1はデータ処理空間上において仮想的に存在するものである。すなわち、以下に説明するクリッピング面112以外の本体については、レンダリング処理範囲の条件として数値上存在しているだけであり、実際にそのような形状が生成されているわけではない。ただし、本実施形態の説明に当たっては、その理解を助けるために、三次元関心領域を視覚的に認識できる図形であるものとみなす。
【0051】
三次元関心領域V1は原点Cを有し、その原点Cの空間的位置は上述したパラメータセットに含まれる原点座標(X0,Y0,Z0)により定められる。三次元関心領域V1のX方向、Y方向およびZ方向のそれそれのサイズは上述したパラメータセット74に含まれるサイズ情報(XW,YW,ZW)により定められる。それらの情報は各方向における全体幅を定義するものであってもよいし、その半分を定義するものであってもよい。図6において、Oは基準点を表しており、それは中心線100上の点である。基準点Oは後に説明するようにクリッピング面112を傾斜させる場合における回転中心(不動点)である。Y方向のサイズとは別に、基準点のY方向の高さを調整したい場合にはオフセット値Y+の値を可変すればよい。その値の可変により原点Cを維持しつつも、その上側のサイズを任意に定めることができる。原点Oに対して中心線100に沿った距離として高さhが定義されている。基準点Oから距離hだけ離れた点が代表点Pである。hが正の値であれば代表点Pは基準点Oよりも上方に位置し、それとは逆にhが負の値をとる場合には代表点Pは基準点Oよりも下方に位置することになる。
【0052】
ちなみに、図6において、三次元関心領域V1が有する8個の角がa1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8で表されている。そして、各辺の中点がa12,a23,a34,a14,a56,a67,a78,a58で表されている。
【0053】
クリッピング面112の生成について詳述すると、上述したように、パラメータhにより代表点Pが定められると、代表点Pと2つの端点P1,P2とに基づくスプライン補間演算により、背骨のような基本線として曲線104が生成される。端点P1は上述した点a12であり、端点P2は上述した点a34である。曲線104は代表点P4を挟んでZ方向両側において線対称の形状を有している。但し、図6においてはクリッピング面112の形状をより分かり易く表現方法が採用されている。
【0054】
以上のように曲線104が定められると、辺L1と辺L3との間に複数のスプライン曲線106,108が順次生成される。具体的には、辺L2,辺L4に対して等間隔で複数の端点P3,P4,P5,P6が定められ、同様に曲線104上においてもZ方向に等間隔で複数の通過点が定められる。そして、Z方向の各位置において、2つの端点と1つの通過点とを用いてスプライン補間演算を行うことにより、スプライン曲線を生成することができる。図6においては、端点P3,P4を結ぶスプライン補間曲線が符号106で表されており、同じく端点P5,P6を結ぶスプライン補間曲線が符号108で示されている。そのような曲線をZ方向の各位置において生成することにより、結果として曲線アレイ110を構成することができ、それによって傾斜前の状態におけるクリッピング面112が構成される。それは実際には三次元形状データからなるものである。ちなみに、図6に示す例においてはZ方向に複数のスプライン保管曲線が並べられたが、それがX方向に生成されるようにしてもよい。
【0055】
以上のような第1段階の処理により、傾斜していないクリッピング面112が生成されると、次に、図7に示すように、傾斜したクリッピング面114が生成される。具体的には、パラメータセットを構成する傾斜角度θX,θZが参照され、X方向およびZ方向の両方向にクリッピング面が傾けられる。これを、法線115の傾斜として理解することもできるが、本実施形態においては法線は演算されていない。三次元の形状データの座標変換により、傾斜後のクリッピング面114が構成されている。
【0056】
法線115は基準点Oと傾斜後の代表点P’とを結ぶ線であり、法線115のX方向の傾斜角度が上述したθXであり、法線115のZ方向の傾斜角度が上述したθZである。クリッピング面114は、4つの角b1,b2,b3,b4を有している。図6に示したクリッピング面112を単純に傾斜させたため、図7に示す状態では、角b1,b2,b3,b4は、三次元形状本体よりも内側に位置している。このままでは三次元関心領域を構成できない。そこで、本実施形態においては、クリッピング面114の相似形を生成する拡大処理が実行されている。相似形が維持されるように拡大処理が適用される。具体的には、2つの水平方向u,v方向にクリッピング面114が拡大され、同時に法線115の方向(傾斜後の垂直方向)にも、クリッピング面114が拡大される。ただし、基準点の位置は不変である。拡大後のクリッピング面も三次元形状データとして構成されている。
【0057】
図8には、拡大後のクリッピング面116が示されている。拡大処理の結果、4つの角c1,c2,c3,c4は4つの垂直辺上に位置している。これにより傾斜後のクリッピング面116を含む三次元関心領域V2が構成される。その三次元関心領域V2は8つの点c1,c2,c3,c4,a5,a6,a7,a8によって囲まれる形状を有している。一方、このような三次元関心領域V2を2つの断層画像上において確認するために断面形状SYX、SYZが生成される。その場合においては、2つの端点c12,c34を結ぶ断面上において上述同様のスプライン補間演算によりカーブが生成され、それと直交関係にある断面上においても2つの端点c14,c23の間におけるスプライン補間演算により上述したカーブが生成される。それらの断面形状の生成に関しては後に図10乃至図12を用いて詳述する。
【0058】
図9には、以上説明した三次元関心領域の生成処理がフローチャートとして示されている。まず、S101では、複数の初期形状の中からユーザーにより実際に使用する初期形状が選択される。具体的には、ユーザーが選択された初期形状に対応するパラメータセットがプログラム実行上において認識されることになる。S102おいては、三次元関心領域の原点座標C(X0,Y0,Z0)、サイズ(XW,YW,ZW)、オフセットY+、クリッピング面の高さh、に基づいて、傾斜前のクリッピング面が生成される。そのような生成にあたっては上述したスプライン補間演算が実行される。これによってクリッピング面を表す三次元形状データが生成される。S103においては、傾斜角度をθX,θZに基づいて、傾斜前のクリッピング面を空間的に変換することにより、傾斜後のクリップ面が生成される。そのクリッピング面も三次元形状データにより構成される。S104では、そのような傾斜後のクリッピング面に対して拡大処理が適用される。その場合においては、上述したように相似形を維持しながら形状を拡大する処理が実行される。拡大率については傾斜角度θX、θZから一義的に定めることができる。このような処理により実際に使用するクリッピング面が三次元形状データとして構成されることになる。S105においては以上のように構成されたクリッピング面を有する三次元関心領域が決定される。それは実際には三次元形状データとそこからのレンダリング範囲を規定する数値情報とにより構成されるものである。S106においては以上のように生成されたレンダリング条件に従ってボリュームレンダリング処理が実際に実行される。これにより三次元画像が構成され、その画像データが表示画面上に表示される。S107では、以上のような処理を続行するか否かが判断され、続行する場合にはS108においてユーザーによりいずれかのパラメータに対する変更があったか否かが判断され、変更有りと判断された場合には、S102以降の各工程が繰り返し実行される。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、クリッピング面をシンプルな凸面あるいは凹面として構成することができ、しかも、そのようなクリッピング面を二次元傾斜させることができるので、図2に示したように、画像化対象となる組織とそうでない組織との間の隙間が二次元的に傾斜しているような場合においても、それに合わせてクリッピング面の姿勢を適切に設定できるという利点がある。本実施形態においては、クリッピング面の中心点を成す代表点の高さを定めるだけで、その形状を定義することができるから、ユーザーにおいて分かり易く混乱が生じることもない。そのようなシンプルな形状であっても、実際の生体組織の形状への適合性は良好であることが実験により確認されている。本実施形態においては、X方向およびY方向の両方向において、代表点の両側の形状が線対称の関係にあったが、代表点の両側において非対称の形状を採用することも可能である。ちなみに、立方体が有する6面のうちでいずれの面をクリッピング面にしてもよい。また、三次元関心領域をボリュームデータに対して相対的に任意に回転できるように構成するのが望ましい。
【0060】
次に、図10乃至図12を用いて、図2に示した三次元関心領域の断面形状SYX,SYZの生成方法について説明する。
【0061】
本実施形態においては、三次元関心領域の生成とその断面形状の生成は、互いに独立した演算処理により実現されている。(A)には断面形状SYXの生成過程が示されており、(B)には断面形状SYZの生成過程が示されている。
【0062】
(A)において、みかけ上の代表点P10は、中心線110上の高さhに基づいて、まず奥行方向(Z方向)に、傾斜していないカーブをスプライン補間により生成し、それを傾斜角度θz に基づいて回転及び拡大し、それにより生成されるカーブ上において中心線110に交わる点を特定することにより、当該交点として決定される。但し、これは一例に過ぎない。符号212が初期カーブを表している。この初期カーブ212はみかけ上の代表点P12と2つの端点a14,a23とを結ぶスプライン補間演算により生成されるものである。補間方法としては各種のものがあるので、必要に応じて補間方法を切り替えてもよい。クリッピング面の生成過程と同様に、X方向の傾斜角度θXに基づいてカーブ212が回転され、その回転後のカーブが符号216で表されている。そこにおける2つの端点がa14’,a23’であり、移動後の代表点がP10Xで表されている。基準点Oと移動後の代表点P10Xとを結ぶ直線が、みかけ上の法線214である。但し、代表点P10Xや法線214は実際には演算されない。カーブ216に対して拡大処理を適用した後の形状がカーブ118である。これにより、2つの端点c14,c23が左右の垂直辺上に位置している。このような処理の結果、2つの点c14,c23,a67,a58に囲まれるボックス形状として三次元関心領域のYX断面SYXが生成される。それは実際にはグラフィックイメージとして断層画面上にオーバーレイ表示される。
【0063】
YZ断面SYZについても上記同様に生成される。具体的には、まず3点P12,a12,a34のスプライン補間演算によりカーブ222が生成され、Z方向の傾斜角度θZに基づいてそのカーブ212が回転変換される。それが符号126により表されている。みかけ上の法線224上に代表点P12Yが表されているが、それらは実際には計算されない。2つの端点a12’,a34’は左右の垂直ライン上から内側に外れている。そこで、それに対して拡大処理を適用した結果がカーブ228である。2つの端点c14,c23はいずれも左右の垂直ライン上に位置している。これによってYZ断面形状SYZが生成される。それは断層画像上にオーバーレイ表示される。
【0064】
図11には、図10の(A)に示した断面形状SYXの生成過程がフローチャートとして示されている。S201では、ユーザーの選択による初期データとしてパラメータセットが参照される。S202では、そのパラメータセットに基づいて、傾斜していないカーブが生成される。S203では、X方向の傾斜角度θXに基づいて、傾斜したカーブが生成される。S204では、傾斜角度θXに基づいて、傾斜後のカーブに対する拡大処理が適用される。S205では、拡大処理後のカーブを含むボックス形状として断面形状SYXが定められ、それが断層画像上にグラフィックとして表示される。S206では以上の処理を継続するか否かが判断され、S207においていずれかのパラメータについての変更があったと判断された場合、具体的には断面形状SYXに関係するパラメータについて変更があったと判断された場合に、S202以降の各工程が繰り返し実行される。
【0065】
図12には、図10(B)に示した断面形状SYZの生成過程がフローチャートとして示されている。この内容は図11に示した内容と基本的に同一であるが、念のため説明する。
【0066】
S301では、初期データが参照され、S302ではパラメータセットが参照され、それに基づいて、傾斜していないカーブが生成される。そして、S303では、Z方向の傾斜角度θZに基づいて、傾斜処理が実行されて、傾斜したカーブが生成される。そして、S304では、同じく傾斜角度θZに基づいて、拡大率が定められ、傾斜したカーブに対して拡大処理を適用した結果として拡大後のカーブが生成される。S305では、そのような拡大されたカーブを含む断面形状SYZが定められ、それが断層画像上に表示される。S306では、以上の処理を続行するか否かが判断され、続行する場合には、S307において、断面形状SYZに影響を与えるパラメータの値が変更されたか否かが判断され、変更があったと判断された場合には、S302以降の各工程が実行されることになる。
【0067】
上記の実施形態においては、断面形状の生成にあたって2次元空間上での処理が中心となるので、その処理を迅速に行えるという利点が得られる。
【0068】
(2)三次元画像の画質向上に関する構成
次に、レンダリング開始面(又はレンダリング終了面)を湾曲面とした場合において、三次元画像上に不要な縞模様が生じる問題とその解決策について説明する。以下に説明する処理は、図1に示したボリュームレンダリング部20によって実行される。その場合に必要な条件は制御部36から当該ボリュームレンダリング部20へ送られる。
【0069】
図13には三次元関心領域Vが模式的に示されている。三次元関心領域Vは、クリッピング面300を有しており、それは二次元に湾曲した面であり、この例ではレンダリング開始面を構成する。三次元関心領域Vに対しては複数のレイ(演算経路)304が設定される。各レイ304上において、通常一定のピッチをもって多数のサンプリングポイントが定められる。先頭のサンプリングポイントである開始点はレンダリング開始面であるクリッピング面304によって規定され(通常、それはクリッピング面304上に定められるが、図13においては模式的な長方形ボックスとして示されている)、そこから等間隔でサンプリングポイント306が設定される。各サンプリングポイントにおいては、その周囲に存在する例えば8個のデータが参照され、それらに基づく補間演算によりサンプリングポイントのデータ(ボクセルデータ)が生成される。各サンプリングポイントごとに例えば以下のようなボクセル演算が実行される。
【0070】
[数1]
OUTi=(1−αi)・CINi+αi・ei …(1)
【0071】
上記において、COUTiはi番目のボクセルの出力光量を示している。CINiはi番目のボクセルの入力光量を表している。それはi−1番目のボクセルの出力光量COUTi-1である。αiはオパシティ(不透明度)であり、それは(1−αi)は透明度である。eiはi番目のボクセルのエコー値(補間後のボクセル値)である。すなわち、ボクセルごとに出力光量の演算(ボクセル演算)が繰り返される。
【0072】
ボクセル演算の終了条件として通常2つの終了条件が定められている。第1終了条件は、次のボクセル演算が終了面302を超えてしまう場合にその時点でボクセル演算を終了させるものである。これは三次元関心領域V内を画像化するための条件である。第2終了条件は出力光量が最大値に到達した場合にボクセル演算を終了させるものである。
【0073】
レンダリング開始面が湾曲しているため、複数のレイの相互間においてはサンプリング位置が不揃いとなる。同じ理由から、各レイ304における最終ボクセル(終了条件が満たされた時点のボクセル)の位置は不揃いとなり、レンダリング終了面302までの距離が区々となる。水平方向に観察した場合、データ数の段差308も生じやすいし、レンダリング終了面302までの距離が周期的に変化することからその周期性が画像化されやすくなる。図14には、三次元画像が模式的に示されている。図13に示したような原因により、組織の三次元像の他に不要な縞模様314が生じている。これはクリッピング面の湾曲の形態を反映したものであり、多重リング状の縞模様となることもあるが、場合によっては多重平行線のような縞模様が生じることもあり得る。このような縞模様は画像観察上、大きな障害となるものであり、事情を知らない被検者に驚きを生じさせ得る。
【0074】
この問題を解決する2つの手法が図15に例示されている。(A)は第1例を示し、(B)は第2例を示す。第1例において、レイ304上には複数のサンプリングポイント(ボクセル)306が定められている。それら相互の間隔は一定であり、図15では1.0の間隔となっている。符号302は終了面を表している。最終ボクセルEnと終了面302との間には隙間としての距離rが存在している。距離rは1.0未満の値となる。第1例では、このレイについての最終ボクセルについてだけ、例外的に以下の内容の重み付け処理を含む演算が実行される。それ以外においては上記(1)式の演算が実行される。
【0075】
[数2]
OUTn=(1−αn)・CINn+αn・en・r …(2)
【0076】
上記においてCOUTnは最終ボクセルの出力光量である。つまり、従来においては、最終ボクセルのエコー値がそのままボクセル演算で利用されていたが、第1例では、そのエコー値に対してrによる重み付けを行うものである。但し、0≦r<1.0である。このような距離rに応じた重み付け処理を各レイに対して適用すれば、レイの並び方向に周期的に生じる輝度値の段差を軽減又は解消できる。
【0077】
次に(B)に示す第2例について説明する。従来法ではエコー値enをもったボクセルが最終ボクセルであったが、この第2例では、次のエコー値en+をもったボクセルが最終ボクセルとなる。その最終ボクセルは終了面302上に強制的に設定されるものである。最終ボクセルについては、例外的に、以下のボクセル演算が実行される。それ以前においては上記(1)がそのまま適用される。
【0078】
[数3]
OUTn+=(1−αn+)・CINn++αn+・en+・r …(3)
【0079】
上記において、COUTn+が最終的に出力される出力光量であり、それが輝度値に変換される。このような処理が各レイに対して適用される。第1例との対比においては、第2例では、終了面302上のエコー値までを利用して画素値を決定できるので、三次元関心領域の形状に忠実な画像処理を実現できる。特に、レイ間において最終面までの距離が異なることはなく、しかも、それぞれのレイに対して最後に追加されたエコー値に対しては、1つ前のボクセルからの距離rによる重み付けが適用されるため、レイの並び方向において輝度値変化の周期性を緩和でき、特に輝度値の段差が生じることを十分に軽減、解消することができる。なお、(1)式及び(2)式において、オパシティαがエコー値eに基づいて決定されている場合、最終ボクセルについては、オパシティαがエコー値e×rに基づいて決定される。
【0080】
第2例が適用された場合の演算対象範囲が図16に示されている。ここでは符号306bが最終ボクセル306+に対する1つ手前のボクセルを示している。レイ間における最終ボクセル306+の寄与度は、1つ手前のボクセル306bから終了面302までの距離rに依存するから、段差を効果的に解消可能である。図17には、第1例及び第2例が適用された場合の三次元画像処理結果が模式的に示されている。図14において示されていた縞模様314が消失している。これによれば、観察上目障りなノイズを軽減できるから、画像品質を向上できる。
【0081】
上記第1例及び第2例では、最終のエコー値に対して距離rを作用させたが、オパシティに対して距離rを作用させるようにしてよいし、輝度値そのものに対して距離rを作用させるようにしてもよい。
【0082】
上記実施形態においては、終了面と最終ボクセルとの距離が周期的に変化することに起因する問題について解決法を説明したが、湾曲した開始面に各レイ上の開始ボクセルを揃えるのではなく、レイ間においてサンプリングポイントの位置を揃える方式が採用される場合においても、上記同様の手法を適用することが可能である。すなわち、その場合には、レイ間における中途半端な距離が開始ボクセルと開始面との間に生じるから、その距離を何らかの形で重みとして画素値に反映されるように演算条件を部分的に修正すればよい。レイの配列方向に沿ったスムージング処理、輝度値又はエコー値をランダムに修正する技術、等を上記手法に組み合わせるようにしてもよい。いずれにしても、周期性が緩和されるように、しかも原画像をできるだけ劣化させないように、レンダリング条件を適宜修正するのが望ましい。上記部分的な修正の適用又は不適用をユーザーにより選択させるようにしてもよいし、それを画像評価結果から自動化してもよい。
【符号の説明】
【0083】
46,48,50 断層画像、52 3次元画像、112 傾斜前のクリッピング面、114 傾斜後のクリッピング面、116 拡大後のクリッピング面、300 クリッピング面(レンダリング開始面)、302 レンダリング終了面、V 三次元関心領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ボリュームデータに対して、レンダリング処理が適用される三次元関心領域を設定する三次元関心領域設定手段と、
前記三次元関心領域に対して複数のレイを設定し、各レイに沿ってボクセル演算を繰り返し実行することにより、三次元超音波画像を形成する三次元超音波画像形成手段と、
を含み、
前記各レイ上の複数回のボクセル演算の中に、前記三次元関心領域における開始面及び終了面の少なくとも一方が湾曲していることに起因する縞模様発生現象を抑制するための特別なボクセル演算が含まれる、
ことを特徴とする超音波ボリュームデータ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記特別なボクセル演算は、前記各レイ上において一定サンプリング間隔で複数のサンプル点を設定した場合に生じる前記一定サンプリング間隔未満の端数を利用するボクセル演算である、ことを特徴とする超音波ボリュームデータ処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記端数は、前記終了面から戻って1つ手前のボクセルと前記終了面との間の距離に相当する、ことを特徴とする超音波ボリュームデータ処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記特別なボクセル演算は、前記終了面に基づいて決定される終了ボクセルに対するボクセル演算であって、前記距離が重み値として作用するボクセル演算である。ことを特徴とする超音波ボリュームデータ処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記終了ボクセルは前記一定のサンプリング間隔で定められるボクセルである、
ことを特徴とする超音波ボリュームデータ処理装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置において、
前記終了ボクセルは前記一定のサンプリング間隔で定められるものではない前記終了面上に付加的に設定されたボクセルである、
ことを特徴とする超音波ボリュームデータ処理装置。
【請求項7】
超音波ボリュームデータを処理する超音波ボリュームデータ処理装置において機能するプログラムであって、
当該プログラムは、
前記超音波ボリュームデータに対して、レンダリング処理が適用される三次元関心領域を設定する機能と、
前記三次元関心領域に対して複数のレイを設定し、各レイに沿ってボクセル演算を繰り返し実行することにより、三次元超音波画像を形成する機能と、
を含み、
前記各レイ上の複数回のボクセル演算の中に、前記三次元関心領域における開始面及び終了面の少なくとも一方が湾曲していることに起因する縞模様発生現象を抑制するための特別なボクセル演算が含まれる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−83440(P2011−83440A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238768(P2009−238768)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】