説明

超音波測定装置及び超音波信号の評価方法

本発明は、受信装置(14)と比較装置(101)と評価装置(112)とを備えた超音波測定装置に関する。受信装置は、車両固有の超音波送信器及び/又は外部の超音波測定装置から受信した超音波信号の周期持続時間の時間経過に関する測定セットを決定する。比較装置は、決定された測定セットの少なくとも一つの基準セットからの偏差に関する比較情報を決定する。評価装置は、決定された比較情報を考慮して、超音波送信器から送出された信号形状、受信装置と外部の超音波送信器との間の相対速度、受信装置と車両固有の超音波送信器及び/又は外部の超音波測定装置との間の伝送経路内に存在する少なくとも一つの反射性の対象の相対速度、及び/又は、少なくとも一つの反射性の対象の形状の特徴的指標に関する情報を決定する。更に本発明は、超音波信号を評価するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波測定装置に関する。更に本発明は超音波信号の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、その車両の周辺の対象の位置を求めるために超音波システムを有していることが多い。その種の超音波システムはDE 38 130 83 A1から公知である。この刊行物に記載されている超音波システムは、車両に取り付けられている、少なくとも一つの送信装置及び少なくとも一つの受信装置を有している。特に、超音波システムは、車両に分散して配置されている複数の送信装置及び複数の受信装置を有していることも考えられる。通常の場合、送信装置及び受信装置は一つの機器に組み込まれており、双方向に制御されるアンテナ装置としての同一の電気音響変換器、ダイアフラムを使用する。この場合には、アンテナ装置を超音波信号のための送信器としても受信器としても使用することができる。ある時点において少数の送信装置のみが送信信号としての超音波信号を送出するように、複数のアンテナ装置を備えた超音波信号の制御が行われることが多い。検出が不明確になることを回避するために、大抵の場合はパルス状である送信信号の送出後に、次の送信パルスが送出されるまでのエコー周期と称される期間の経過を待つことになる。超音波システムの全てのアンテナ装置が少なくとも一回は送信信号を送出するまでに必要とされる期間は、超音波システムの送信周期と称されることが多い。
【0003】
アンテナ装置から送出された送信信号は、少なくとも一つの反射性の対象点に入射し、この対象点から少なくとも部分的に反射されることが考えられる。続いて、受信器のアンテナ装置は反射された超音波信号を受信し、送信信号の送出から反射された超音波信号の受信までの期間が求められる。最後に、超音波システムの評価装置は、求められた少なくとも一つの期間に基づき、車両の周囲の少なくとも一つの反射性の対象点の位置を決定することができる。
【0004】
発明の概要
本発明によれば、請求項1の特徴部分に記載されている構成を備えた超音波測定装置及び請求項8の特徴部分に記載されている構成を備えた超音波信号の評価方法が提供される。
【0005】
本発明の有利な実施の形態は従属請求項に記載されている。超音波測定信号の実施の形態の特徴部分に記載されている構成によって実現される利点は相応の方法においても保証されている。
【0006】
本発明は、特に、受信した超音波信号の周期持続時間の測定セットが、指紋と同様に、送出した送信パルスに関しても、受信装置までの伝送経路に関してもそれぞれ特徴的なものであることを基礎としている。伝送経路は例えば送信側のアンテナ及び/又は受信側のアンテナの指向特性によって決定されており、更には、送出されたパルスの受信装置までの経路上においてパルスを反射する対象、また対象相互の相対運動によっても決定されている。伝送シナリオに関する特徴的な指紋、有利には基準周期持続時間のセットによって表される指紋が評価装置に既知である場合には、受信した超音波信号においてどのシナリオが存在していたかを受信側において検出することができる。
【0007】
超音波信号は平均値を有していない交流信号であり、従って、信号強度が時間的に変化する周期持続時間のセットとして表すことができる。周期持続時間とは、連続する二つの零通過間の超音波信号の時間区分(しばしば半周期持続時間とも称される)であるか、負の信号状態から正の信号状態又は正の信号状態から負の信号状態への連続する2回の切り換えが行なわれる間の期間(正の周期持続時間又は負の周期持続時間としても公知である)であると解される。しかしながら、周期持続時間の代わりに、同等のパラメータを検出及び評価することもできる。ここで、求められた測定セットが正の周期持続時間のセット、負の周期持続時間のセット、正の基準周期持続時間のセットからの正の周期持続時間偏差のセット、負の基準周期持続時間のセットからの負の周期持続時間偏差のセット、時間的に変化する周波数、及び/又は、基準周波数からの時間的に変化する周波数偏差を含むことを明示的に言及しておく。この代わりに、又はこれに付加的に、情報は受信信号の少なくとも一つの周期持続時間の偏差に関する周期持続時間パラメータ又は周波数パラメータを含むことができる。例えば、情報は正の周期持続時間差、及び/又は、負の周期持続時間差、及び/又は、受信信号と送信信号の周波数差である。
【0008】
本発明による方法は、受信信号に内在する測定装置の特徴的指標を取得するための方法も含むことができる。
【0009】
本発明によって、時間並びに作業に関するコストが少ない、周期持続時間のセット、及び/又は、時間的に変化する周波数を検出することも可能である。続けて、周期持続時間及び/又は周波数変化を反射性の対象の少なくとも一つの形状及び/又は速度の特徴的指標を求めるために使用することができる。識別された少なくとも一つの形状及び/又は速度の特徴的指標を用いて、改善された周囲検出を実施することができる。例えば、検出された相対速度によって、受信信号の強度変化を比較的高い確率で対象に対応付けることができる。同様に、対象の立体的な形状を検出することによって、対象タイプもより良好に識別することができる。同様にして、種々の送信信号を使用することによって、送信側の超音波装置と受信側の超音波装置との間で情報を伝送することができる。
【0010】
従って本発明は、相対速度を検出するため、反射性の対象の対象分類を実施するため、及び/又は、種々に送出された信号形状を区別するためのイントラパルス分析を提供する。
【0011】
更には、本発明によって、エコーの見込み受信時間をより正確に予測することができる。このようにして取得された比較的高い測定精度を、応答時間の短縮及び/又は測定範囲の拡大に使用することができる。更には、超音波システムの送信周期内の種々の時点に取得された対象情報、例えば対象間隔を基準時点について正規化することができ、これによって車両周辺の対象シーンのより正確な分析を実施することができる。更には、受信装置によって区別可能な送信信号が送出される場合には、測定精度及び応答時間を更に改善することができる。本発明を用いることにより、受信装置は、考えられる信号形状のセットの内のどの信号形状を送出された送信信号が有していたかを受信信号の時間経過に基づき識別することができる。本発明のこの実施の形態においては、従来技術のように信号強度に基づいて、受信信号と送信パルスの類似性のみが検査されるのではない。その代わりに、この実施の形態は、受信信号の周波数の時間経過及び/又は周期持続時間と送信パルスの類似性が確定される。このことは、システムの更なる改善、例えばパルス繰り返し時間及び/又はパルス間隔の比較的短い送信を保証する。更にはこのようにして、車両間通信における送信側の超音波装置と受信側の超音波装置との間の情報伝送の改善を容易に実現することができる。
【0012】
純粋に振幅持続時間の評価に取り組む従来の超音波システムの動作方法における欠点は、超音波システムに対する対象の相対運動を個々のエコーに基づき識別できないことである。従来の測定方法では、対象の相対速度は、連続する送信周期における対象の複数のエコーの伝播時間差を評価することによって初めて識別される。この場合、重大な測定エラー源は、連続する二つの送信パルス間の期間中の相対運動である。相対運動に起因して、この相対運動の結果に起因して生じるのではなく、反射点の移動に起因する伝播時間差によってのみ生じるように、対象における複数の反射点は変化する可能性がある。このことは、所定の対象における受信信号の対応付けの際のエラーも頻繁に生じさせる。
【0013】
比較的大きい手間が必要となるような場合には、考えられる受信パルス形状毎に相応のアナログ値の相互相関が受信信号を用いて算出されることによって、個々の対象及び/又は送信信号形状における受信パルスの対応付けを回避することが試みられる。相互相関の計算の手間は大きく、またその手間は考えられるエコー信号の数によって増加する。
【0014】
従って、従来の制限を克服するために、付加的な測定を要することなく反射時点の時間的な発展の傾向を予測することができる方法が提供されることが望ましい。特に、例えば車両に固定されて配置されている超音波アンテナ装置の速度に対する反射点の相対速度を検出できるようにすることが望ましい。このことは本発明により実現される。
【0015】
特に、本発明は正の周期持続時間及び負の周期持続時間を同時に又は並行に評価することができる。このようにして、相互的な妥当化に使用することができる冗長的な評価結果が得られる。正の周期持続時間及び負の周期持続時間の測定及び評価がほぼエラー無く実施される場合、負の周期持続時間から取得された評価結果は、正の周期持続時間から取得された評価結果に対応することを前提とすることによって妥当化を実施することができる。
【0016】
この場合には、イントラパルス評価から取得された評価結果を例えば平均値形成によって簡略化することができる。
【0017】
本発明によって、密に並んで設けられている反射点における反射もより良好に区別することができる。
【0018】
超音波測定の高い時間精度要求、例えば1km/hの相対速度変化毎の0.16%の測定分解能の高い時間精度を、本発明による方法では、特に、一つ以上の周期持続時間にわたる測定によって、測定時間ベースに対する比較的僅かな要求でもって実現することができる。
【0019】
本発明による超音波測定装置及び相応の方法は、例えばセキュリティシステム、ドライバアシスタントシステム及び/又は情報出力装置及び/又は警告装置に使用することができる。適切なドライバアシスタントシステムの例は、自動化された制動システム、操舵システム及び/又は加速システムである。本発明にとって有利なセキュリティシステムは、例えばエアバッグシステム、持ち上げ可能なボンネット、シートベルトテンショナ、パワーウィンドウ、及び/又は、アクティブヘッドレストである。
【0020】
従って本発明は、信号形状識別、対象検出及び/又は相対速度評価を用いた車両周囲の超音波検出を実現する。測定セットの評価と同時に、瞬時信号強度の時間経過も評価することができる。従って、従来の評価方法を本発明に統合することができる。
【0021】
超音波測定装置の必要に応じて使用される閾値スイッチは、エコー伝播時間に関して可変に調整可能な閾値を出力することができる。測定セットの決定を補完するものとして、複数の測定装置を複数の測定セットを確定するために時間的に並行に、もしくはほぼ並行に動作させることもできる。
【0022】
受信した超音波信号の考えられる信号形状として、搬送周波数、個別パルス、二重パルス、直接拡散パルス、チャープ変調及び/又は周波数ホッピング変調を本発明により決定することができる。
【0023】
以下では本発明の別の特徴及び利点を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】イントラパルス分析のために評価されるデータを説明するための送信信号に関する座標系を示す。
【図1B】イントラパルス分析のために評価されるデータを説明するための正の周期持続時間に関する座標系を示す。
【図1C】イントラパルス分析のために評価されるデータを説明するための負の周期持続時間に関する座標系を示す。
【図2A】交通状況が表されている、超音波測定装置の適用可能性についての一例を示す。
【図2B】受信した超音波信号の時間的な強度分布が表されている、超音波測定装置の適用可能性についての一例を示す。
【図2C】超音波信号から求められた、交通に関与する別の対象の相対速度が表されている、超音波測定装置の適用可能性についての一例を示す。
【図3】超音波測定装置の第1の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【図4】超音波測定装置の第2の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【図5】超音波測定装置の第3の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【図6A】超音波測定装置の第4の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【図6B】超音波測定装置の第4の実施の形態の回路装置によって実施される計算ステップを示す。
【図7A】超音波測定装置の第5の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【図7B】超音波測定装置の第5の実施の形態の回路装置を説明するための座標系を示す。
【図7C】超音波測定装置の第5の実施の形態の回路装置を説明するための座標系を示す。
【図8A】超音波測定装置の一つの実施の形態の第1の適用例に関して、瞬時周期持続時間の評価を説明するための座標系を示す。
【図8B】超音波測定装置の一つの実施の形態の第1の適用例に関して、瞬時周波数の評価を説明するための座標系を示す。
【図9A】超音波測定装置の一つの実施の形態の第2の適用例に関して、周期持続時間の評価を説明するための座標系を示す。
【図9B】超音波測定装置の一つの実施の形態の第2の適用例に関して、周波数の評価を説明するための座標系を示す。
【図10A】超音波測定装置の一つの実施の形態の第3の適用例に関して、周期持続時間の評価を説明するための座標系を示す。
【図10B】超音波測定装置の一つの実施の形態の第3の適用例に関して、周波数の評価を説明するための座標系を示す。
【図11】超音波測定装置の一つの実施の形態の第4の適用例において周期持続時間の評価を説明するための座標系を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aから図1Cには、イントラパルスに関して評価されたデータを説明するための座標系が示されており、図1Aには送信信号が示されており、図1Bには正の周期持続時間が示されており、また、図1Cには負の周期持続時間が示されている。
【0026】
図1Aから図1Cの座標系の横軸は時間軸τである。図1Aの座標系の縦軸は、超音波測定装置の測定装置から送出される送信信号s(τ)を表している。図1Aとは異なり、図1B及び図1Cの座標系に縦軸は示されていない。
【0027】
送信信号s(τ)は超音波信号、例えば、ゼロ平均のバンドパス信号である。通常の場合、送信信号s(τ)の周波数は数kHzの周波数帯域内にある。送信信号s(τ)の送出は0からTsの期間に行われる。従って、送信信号s(τ)のパルス幅は値Tsである。送信信号s(τ)のエンベロープS(τ)も同様に図1Aの座標系に表されている。
【0028】
送信信号のs(τ)の周波数経過を、正の周期持続時間のセットPP1−PP6及び/又は負の周期持続時間のセットPN1−PN6として表すことができる。図1Bに示されている正の周期持続時間PP1−PP6及び図1Cに示されている負の周期持続時間PN1−PN6は、超音波測定装置の送信装置から送出された送信信号s(τ)に関する相互にほぼ独立した情報を含んでおり、また、送信信号s(τ)の送信周波数の時間経過によって設定される。
【0029】
正の周期持続時間PP1−PP6として使用されている概念は、基準値(以下ではSBと記す)を基準とした送信信号s(τ)の「小さい値」からSBを基準とした送信信号s(τ)の「大きい値」への連続する2回の変化の間の時間的な間隔である。相応に、負の周期持続時間PN1−PN6とは、「SBよりも大きい値」から「SBよりも小さい値」への連続する2回の変化の間の時間的な間隔であると解される。
【0030】
送信信号s(τ)の瞬時周波数の時間経過に関しては、正の基準周期持続時間からの正の周期持続時間偏差のセット及び/又は負の基準周期持続時間からの負の周期持続時間偏差のセットを表すこともできる。例えば、正の基準周期持続時間は正の周期持続時間PP1−PP6の平均値であり、負の基準周期持続時間は負の周期持続時間PN1−PN6の平均値である。択一的に、正/負の周期持続時間の概念は、例えば正/負の半周期持続時間、即ち、SBよりも小さい/大きい信号値からSBよりも大きい/小さい信号値に変化するまでの時間間隔と同等であると解することもできる。
【0031】
送信信号s(τ)の周波数経過は、例えば相応の逆数の形成による、周波数のセット及び/又は基準周波数からの周波数偏差のセットとしても表すことができる。従って、以下において説明する本発明の実施の形態では、正の周期持続時間PP1−PP6、負の周期持続時間PN1−PN6、正の基準周期持続時間からの正の周期持続時間偏差、及び/又は、負の基準周期持続時間からの負の周期持続時間偏差の代わりに、周波数及び/又は基準周波数からの周波数偏差も検査することもできる。勿論、周波数及び/又は基準周波数からの周波数偏差も、列挙した値に付加的に評価することができる。しかしながら、周期持続時間と周波数の関係は当業者には自明であるので、本明細書ではその詳細については殆ど検討しない。
【0032】
以下では、より分かりやすくするために、周期持続時間偏差の求め方及び評価についてのみ説明する。正の周期持続時間PP1−PP6と負の周期持続時間PN1−PN6、又は、正の周期持続時間偏差と負の周期持続時間偏差は区別されない。しかしながら、前述の周期持続時間とは、正の周期持続時間PP1−PP6、負の周期持続時間PN1−PN6、正の基準周期持続時間からの正の周期持続時間偏差、及び/又は、負の基準周期持続時間からの負の周期持続時間偏差と解することもできることを言及しておく。したがって、周期持続時間偏差という語句は、同一の効果の種々の表現と同義である。
【0033】
超音波測定装置の送信装置から送出された送信信号s(τ)の周期持続時間は、超音波測定装置に対して0とは異なる相対速度で移動している個々の対象点において反射される際に、及び/又は、車両固有の送信器と対象点と車両固有の受信器との間の0とは異なる相対運動の際に既に変更される。また、一つの対象の種々の反射点における複数の反射が重畳することによって、及び/又は、アンテナ及び/又は伝播媒体の伝送特性に基づき、信号は送信器と受信器との間の経路において変化する可能性がある。更には、特に送信信号の周期持続時間/瞬時周期持続時間の時間経過において区別される複数の送信信号を使用することができる。これによって、超音波測定装置の受信装置によって受信された受信信号の周期持続時間は、送信信号s(τ)の送出された周期持続時間とは異なる値を取る可能性がある。また、反射性の対象の対象形状も反射された超音波信号の周期持続時間を変化させる可能性があることを言及しておく。従って、受信した超音波信号の周期持続時間を評価することによって、少なくとも一つの相対速度に付加的に、対象の形状に関する情報、それと共に対象のタイプに関する情報も取得することができる。同様に、別の情報も送信側の装置から受信側の装置へと伝送することができる。
【0034】
有利には信号強度で重み付けされたイントラパルス分析として実施される、イントラパルス分析の以下において説明する方法によって、この作用を比較的僅かな付加的な手間でもって受信信号からフィルタリングすることができる。さらにはこの作用を、ドライバに情報を通知するため、操舵時、加速時及び/又は制動時のドライバの支援のため、パラメータ化のため、及び/又は、事故を低減するための装置の操作のための情報として使用することができる。
【0035】
例えば、受信信号においては、少なくとも一つの基準に対する周期持続時間偏差のセットが調べられ、有利には、受信信号の信号強度が比較的高い区間において調べられる。イントラパルス評価のより詳細な構成を以下において複数の例に基づき更に説明する。
【0036】
図2Aから図2Cには、超音波測定装置の考えられる用途についての例が示されている。図2Aには交通状況が示されており、図2Bには受信した超音波信号の時間的な強度分布が示されており、また、図2Cには、超音波信号から求められた、交通に関与する他の対象の相対速度が示されている。
【0037】
図2Aにおいて概略的に表されている交通状況では、車両10が速度v0で走行方向12に向かって走行している。車両10には、例えば、送信装置13及び受信装置14を備えた超音波測定装置が設けられている。送信装置13及び受信装置14は、送信装置13から送出された超音波信号が走行方向12において車両10の前方に位置する周囲の一部に入射するように車両10に固定されている。少なくとも一つの送信装置13は、超音波信号を送出する際に、走行方向12において車両10の前方に位置する周囲の一部を良好に覆うために十分に広い開口角を有することができる。
【0038】
図2Aに示されている送信器13と受信器14の配置構成は、原理を簡単に説明するために例示的に示されたものに過ぎないと解するべきである。ここでは、今日では同一の位置に設けられている慣例の超音波変換器が送信器13の機能と受信器14の機能を交互に担うことができ、通常の場合は二つ以上の超音波変換器が車両10に取り付けられているという公知の事項が明示的に示唆されている。
【0039】
超音波を基礎とするこの種の測定装置は比較的廉価に製造することができる。それらの測定装置は汚れに対して比較的ロバストである。更に、超音波測定装置の機能は、気候による影響、例えば暗闇、霧、雨及び雪に対して比較的高い耐性を有している。
【0040】
図示されている交通状況においては、車両16a,16b及び16cが走行方向12において車両10の前方に存在している。従って、車両16a,16b及び16cは送信装置13及び受信装置14の測定領域内に存在している。車両16aから16cはそれぞれ、車両10に対する相対速度va,vb又はvcで走行している。車両16bは相対速度vbで同様に走行方向12に向かって走行しているが、車両16a及び車両16cはそれぞれ相対速度va又はvcで走行方向12とは反対方向に向かって走行している。
【0041】
車両16a,16b及び16cはそれぞれ、少なくとも一つの送信装置13から送出された超音波信号の一部を車両10に向かって反射する。以下において更に詳細に説明するように、図2Aにおいては車両16a及び16bは、それらの車両からの反射が強度分布に基づいて区別できない総反射へと重畳されるように相互に並んで近くに位置している。このことは、複数の対象が車両10に対してほぼ同じ距離に位置している場合に頻繁に生じる。
【0042】
車両10の前方に延びる道路においても、送出された超音波信号の一部が反射される。このことは、車両10と車両16aから16cとの間に位置している道路上の障害物18を介して概略的に示されている。
【0043】
以下では、反射された超音波信号の超音波測定装置を用いた評価を介して、図示されている交通状況をどのように検出することができるかを説明する。
【0044】
図2Bに示されている座標系においては、横軸として時間軸τがプロットされており、また、縦軸として少なくとも一つの送信装置から送出された超音波信号の受信したエコーの強度分布R(τ)がプロットされている。時間軸τにわたり示されている総時間は例えば18msである。エコーの求められた時間的な強度分布R(τ)に付加的に、座標系には、(時間的に変化する)有効閾値RLim(τ)も表されており、この有効閾値RLim(τ)は例えば時点τ=0における超音波信号の送出後に指数的に低下していく。強度分布R(τ)のうち、有利には、有効閾値RLim(τ)よりも上に位置している超過領域20から30のみが評価のために考慮される。有利には、時間的に変化する有効閾値R(τ)が使用される。しかしながら、時間的に変化する有効閾値RLim(τ)の代わりに、時間的に一定の閾値を使用することも可能である。
【0045】
有利には、超音波ドライバアシスタントシステムのイントラパルス分析では、特に受信信号の信号強度が高い場合にのみ、基準時間経過に対する、受信したパルスの周期持続時間の時間経過の変化が実施される。信号強度で重み付けされたそのような瞬時周期持続時間評価では、各超過領域20から30に関して、所属の周期持続時間pが下記においてさらに説明する方式によって検出される。図2Cの座標系の縦軸は、超過領域20から30の求められた瞬時周期持続時間pの値を表している。図2Cの座標系の横軸は時間軸τである。図2Cは、例えばドップラー効果に起因して、対象16aから16c及び18において反射された超音波信号の周期持続時間pがどのように変化するかを示している。図示されている例において、求められる周期持続時間pは19.2μsから20.2μsの値領域にある。
【0046】
ここで説明する例においては、超音波測定装置は、20μsのほぼ一定の瞬時周期持続時間pを有する超音波信号を送出するように構成されている。しかしながら、以下においてさらに説明するように、特に種々の信号形状を区別するために、送信信号の瞬時周期持続時間の別の時間経過も考えられる。更には、超音波測定装置が評価装置を有しており、この評価装置は、走行路に対する車両10の速度v0を継続的に求め、且つ、この速度v0に対応する基準信号32を算出するように構成されている。基準信号32は、速度v0で移動している対象における反射のドップラーシフトに対応する。図2Cにおいて基準信号32は約19.7μsの位置にある。基準信号の値は、ここでは例示的に、地面の上の車両の相対速度によって設定されている。
【0047】
時点τ1以降は、期間Δ1にわたり、クロストーク20が超過領域20として受信される。超過領域20は送出された超音波信号に等しい瞬時周期持続時間pを示し、また、エコー伝播時間τ1が実際の超音波速度で二つのセンサ13及び14の間隔に相当する場合には、相対速度0で移動するそれら二つのセンサ13及び14間のクロストークとして一義的に識別することができる。
【0048】
時点τ2からτ4までは、期間Δ2からΔ4にわたり、道路上の障害物18において反射された底面エコー22が超過領域22として受信される。底面エコー22は、送出された超音波信号の周期持続時間pと、車両の速度v0に相当する基準信号32との間の値領域にある瞬時周期持続時間pを有している。底面エコー22の周期持続時間p間の偏差は、超音波測定装置が底面、即ち道路を「斜めに見る」ことによって生じる。底面エコー22はこの指標に基づいて、複数の瞬時周期持続時間の経過のイントラパルス分析の際には、底面エコー22として容易に識別することができ、またフィルタリングすることができる。
【0049】
時点τ5以降では、期間Δ5において、車両16aの反射信号26及び車両16bの反射信号28から形成されている重畳受信信号24が受信される。本発明による超音波測定装置の顕著な利点は、受信信号の瞬時周期持続時間の時間経過に基づき、受信信号24が二つの個々の信号26及び28から形成されていることを超音波測定装置が識別できる点にある。このことは、超音波測定装置が受信信号24の瞬時周期持続時間pの時間経過を、送出された信号に対する変化に関して検査し、その際に、受信信号24の瞬時周期持続時間pの時間経過に二つの相対速度va及びvbを対応付けることができることによって行なわれる(図2Cを参照されたい)。従って、超音波測定装置は、受信信号24に異なる相対速度va及びvbを有する二つの異なる対象を対応付けられることを識別する。例えば、受信信号24は小型の単一の対象の位置を表しているのではなく、異なる相対速度va及びvbを有する二つの異なる対象の位置を表していることを識別することによって、障害状況を識別し、更には適時に防止することができる。
【0050】
このことは、従来の超音波システムに対する、本発明による超音波測定装置の決定的な利点である。受信したエコーの少なくとも一つの瞬時周期持続時間p(又は少なくとも一つの瞬時周波数)を分析することによって、対象のそのような空間的な重畳を識別することができ、また受信した信号の評価のために相殺することができる。複数の対象が相互に考察者にとって異なる相対運動を示す場合には、対象を特に容易に区別することができる。例えば、車両16a及び16bの異なる相対運動に基づいて、瞬時周期持続時間pを評価することによって、車両16a及び16bを容易に区別することができる。従って、瞬時周期持続時間pの評価によって、実際の交通状況に関する非常に正確な情報をエコーから取得することができる。
【0051】
従来の超音波システムは、求められた超過領域20から30の時間のみを考慮して、車両の周囲の対象を求めるものである。つまり従来の超音波システムは、判定閾値RLim(τ)を超えたことに基づき、エコーの受信した超過領域20から30が対象に対応付けられているか否かを確認するためにしか構成されていない。従って、従来の超音波システムにおける対象の分類は、エコー強度の分析(強度分布R(τ))に限定されている。つまり、車両10に対する対象の相対運動を識別するためには複数のエコー周期が必要になる。到達範囲が大きい場合のエコーの多義性を回避しようとする場合、長いエコー減衰時間が必要となる。しかしながらそれによって、特に相対速度が比較的速い場合には、そのような速い相対速度を確実に検出できるようにするためにはシステムの送信周期が過度に長く続く確率が高まる。
【0052】
更には、従来技術による超音波システムは、非常に近くに並んで位置している複数の対象(車両16a及び16b)を、エコーの強度分布R(τ)に基づいて区別できないことが多い。従って、エコーの超過領域を特定の対象に確実に対応付けることはできない。複数の閾値を使用してもこの問題を解決できないことが多い。従って従来技術によれば、非常に近くに並んで位置している複数の対象を別のエコー情報を用いることでしか、例えば、ダイレクトエコーの使用、別のセンサのエコーの評価、及び/又は、(有利には別の車両位置に配置されているセンサによる)反復的な送出によってしか区別することができない。しかしながら、特に対象までの距離が比較的長い場合には、区別は通常の場合不可能である。
【0053】
車両16cにおいて反射された超音波信号は、時点τ6以降の期間Δ6にわたり受信信号30として検出される。超過領域30に関しても相対速度を求めることができる。求められた相対速度va、vb又はvcは、歩行者及び/又は自転車に乗っている人の典型的な速度からは著しく偏差している範囲にある。従って、求められた相対速度va、vb又はvcに基づき、所属の対象に対象タイプを既に対応付けられることが多い。例えば、この例における超音波測定装置は、受信信号26、28及び30が高い確率で車両16a、16b及び16cの位置、形状及び/又は速度を表していることを確定するように構成されている。
【0054】
特に複雑な状況においては、対象の相対運動に関する知識に基づき、その対象の誤認された所在地を後続のエコー周期においてより正確に決定することができ、また、この予測を後続のエコー周期において実際に生じたエコー伝播時間との比較によって、運動モデルも含めて対象モデルを明確にすることができる。
【0055】
更には、空間的に異なるセンサの位置に基づき、また異なる時点に検出されたエコー伝播時間及び相対運動に基づき、空間的な基準座標系の基準時点における各反射点を換算し、それによって対象シーンの全体像を共通の基準で得ることができる。
【0056】
そのようなシステムの送信側のセンサによって種々の送信信号パルスが使用される場合、送信側のセンサと受信側のセンサとの間で、送信時点、送信位置、センサ識別、自車両の走行様式に関する情報及び/又は周囲情報のような情報を伝送することができる。
【0057】
図2Bに例示的に示されている強度分布R(τ)及び図2Cに示されている受信信号強度で重み付けされた周期持続時間pは、送信装置13から送出され、続いて受信装置14によって受信された、交通シーンの信号に対応する。
【0058】
超音波信号は比較的遅い伝播速度を有している。これによって、複数のアンテナ装置を備えている従来の超音波システムの送信周期は比較的長いものになっている。更には、対象シーンを確実に観察するために、送信周期は測定距離が長くなるにつれ延長される。これによって従来の超音波システムでは、個々の測定の間の比較的長い休止期間を用いることでしか、車両の周囲の反射性の対象点の位置に関する情報を検出することができない。従って、従来の超音波システムにおいては、対象シーンの最新の確実な情報を検出することができる頻度は非常に制限されている。
【0059】
反射性の対象点は車両に相対的に移動していることが多いので、従来の超音波システムを用いる場合、個々の測定の間の長い休止期間は、異なる時点において求められた指標の個々の対象への対応付けを困難にする。従って、対応付けの際の一義性の条件は従来の超音波システムでは十分に満たされていない。特に、従来の超音波システムは、反射性の対象点の最新の位置を求める際の頻度が制限されていることから、車両の周囲における反射性の対象の速度の決定に関しては、変化する距離情報に基づき制限的にしか適していない。このことは、特に自動化された車両制御システムに関する、従来の超音波システムの使用可能性を非常に制限する。
【0060】
更には、従来の超音波システムを使用する場合、伝播時間に応じてシフトする複数の対象点の個々の反射が重畳されて総反射信号が生じるという問題が頻繁に発生する。個々の反射の相応の重畳は、例えば送信信号が複数の対象において反射される場合、及び/又は、個々の対象の非平坦な表面において反射される場合に生じる。伝播時間差により生じる個々の反射相互の位相位置に依存して、重畳は総反射信号の増幅、低減または消失をもたらす可能性がある。従って、個々の反射の重畳は、従来の超音波システムを用いて確実な位置データ及び速度データの確定、又は、対象形状を求めることを困難にする。
【0061】
しかしながら、本発明による超音波測定装置によって、機能の劣化を回避することができる。
【0062】
図3は、超音波測定装置の第1の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【0063】
図1に基づき説明したような一つ又は複数の送信パルスの形状についての知識の他に、以下において説明するイントラパルス分析が専ら受信経路において行なわれるので、図3において概略的に示されている回路装置98では送信器を図示していない。
【0064】
概略的に示されている回路装置98は音響電気変換器100を有しており、この音響電気変換器100によって、受信した超音波信号が受信信号、例えば電気信号に変換される。続いて受信信号は信号処理ユニット102に出力される。例えば、信号処理ユニット102は、所望の信号成分をフィルタリングするための、及び/又は、周波数応答を補正するための増幅器及び/又はバンドパスフィルタを含んでいる。信号処理ユニット102の出力側において、(処理された)受信信号r(τ)が出力される。
【0065】
イントラパルス分析部は瞬時周期持続時間偏差Δp又は相応の等価値を検出するための少なくとも一つの測定装置61を測定時間領域毎に有している。選択的に、この測定装置61の後段には、基準周期持続時間偏差PG105のセットに応じて、又は、相応の等価の基準セット、例えば瞬時周波数偏差に基づいて、瞬時周期持続時間偏差を評価するための少なくとも一つの装置106が設けられている。選択的に、この装置106の後段には、品質基準で信号を処理する装置108が設けられている。さらに選択的に、この装置108の後段には、最終的な信号判定を行なうための少なくとも一つの装置112が設けられている。
【0066】
図3に概略的に示されている回路装置61は、受信信号r(τ)の所定の基準周期持続時間からの瞬時周期持続時間偏差Δpを求めるように設計されている。瞬時周期持続時間偏差Δpの代わりに、周期持続時間、周波数、及び/又は、所定の基準周波数からの周波数偏差を求めるように回路装置61を変更することもできる。同様に、送信装置61によって求められた瞬時周期持続時間偏差Δpを、周期持続時間、周波数、及び/又は、周波数偏差に変換することもできる。
【0067】
時間をずらして複数の送信装置61を始動させ、それぞれが複数の(半)周期持続時間にわたり平均周期持続時間偏差を測定することもできる。
【0068】
続いて、スイッチオンされた後の一つ又は複数の評価ユニットにおいて、周期持続時間偏差の有限の長さの基準セットを、測定された瞬時周期持続時間偏差のセットにおける相応の同じ長さの部分とそれぞれ比較することができる。例えば、最初に、それぞれの値ペアの偏差に関する平均値が決定される。選択的に、複数のセットのそれぞれの値ペアの偏差の範囲に関する大まかな尺度を決定することもできる。同様に、それぞれ相互に比較される複数のセットの値ペアのうちどの値ペアが相互に非常に大きく偏差しているかを表している尺度を形成し、評価することもできる。
【0069】
各測定装置61−1,61−2・・・を用いて、処理された受信信号r(τ)から、時間的にずらされた測定時間領域−1,−2,・・・に応じて、また、レベル変化の方向が正の瞬時周期持続時間偏差及び負の瞬時周期持続時間偏差として別個に測定されるか否かに応じて、瞬時周期持続時間偏差Δp104に関する尺度が決定され、後続のユニットに伝送される。この伝送は有利にはクロック信号CLKと同期して行なわれる。各測定の測定時間領域はそれぞれ開始信号59−1,59−2,・・・でもって開始される。時間的にずらされた複数の測定時間領域において同時に測定を行なう場合、開始信号59−1,59−2,・・・は、クロック時間ベース部56と適切な信号遅延部57又は同等のクロック発生器によって相互に遅延される。
【0070】
相互に時間的にずらされている測定領域をそれぞれ一つ又は複数の周期持続時間にわたり同時に測定することは、確かに同時に動作する複数の測定装置を必要とするが、しかしながらこれによって他方では、超音波信号のただ一つの半周期又は一周期にわたる測定に比べて、瞬時周期持続時間偏差を検出するための基準時間ベースに対する要求が僅かなもので済む。
【0071】
時間的にずらされた測定を実施するための段は時間的に遅延された開始信号59−2,59−3,・・・も含めて同様に構成されているので、それらの段は図3の下方においては単に例示的に61−2に基づき示唆されている。
【0072】
図示されている実施例において、ブロック61−1は、正の瞬時周期持続時間偏差104a−1及び負の瞬時周期持続時間偏差104b−1を時間的にずらして測定するための二つの測定装置a及びbから構成されている。図示されている特別なケースにおいては、全ての測定装置62a−1,62a−2,・・・,62b−1,62b−2,・・・は一つの閾値スイッチ60を共有しており、これによって付加的なコストを回避することができる。
【0073】
有利な実施の形態においては、測定装置の同期がバイナリ信号b(τ)によって直接的に行なわれる。従って、このバイナリ信号b(τ)は同期信号59のタスクも担うものである。
【0074】
別の有利な簡略化された実施の形態においては、受信段毎に、正の瞬時周期持続時間偏差104a及び負の瞬時周期持続時間偏差104bを測定するための測定装置がそれぞれ一つずつしか設けられていないので、付加的な遅延段57は必要ない。例えば、この装置は正の半周期の瞬時周期持続時間偏差及び負の半周期の瞬時周期持続時間偏差を連続的に測定し、後段の(一つ又は複数の)装置106a−1,106a−2,・・・,106b−1,106b−2,・・・はそれらのセットを評価する。この評価に関しては下記において詳細に説明する。
【0075】
イントラパルス分析部の非常に簡略化された実施の形態においては、瞬時周期持続時間偏差104のその都度最新の値が直接的に判定段112によって受信される。
【0076】
受信信号r(τ)は閾値スイッチ60に出力され、この閾値スイッチ60によって受信信号r(τ)はバイナリ信号b(τ)に変換される。閾値スイッチ60は、受信信号r(τ)のどの振幅において、二つのレベル、即ちローレベル(Low)とハイレベル(High)を有するバイナリ信号b(τ)が出力されるかを規定する。有利には、閾値スイッチの閾値は、特にコストを最小限にするために受信回路における他の機能との相乗作用を達成するために、閾値RLim(τ)と同一のものであることが望ましい。バイナリ信号b(τ)は第1の評価分岐及び第2の評価分岐に供給される。
【0077】
二つの評価分岐それぞれの入力側には一つの回路62a又は62bが設けられている。回路62aは、バイナリ信号b(τ)に基づき、所定の正の基準周期持続時間からの正の瞬時周期持続時間偏差104aを求めるように構成されている。相応に回路62bは、バイナリ信号b(τ)に基づき、所定の負の基準周期持続時間からの負の瞬時周期持続時間偏差104bを求めるように構成されている。有利にはローからハイへのレベル変化又はハイからローへのレベル変化を評価することによって、正の瞬時周期持続時間偏差及び負の瞬時周期持続時間偏差を検出するための時間測定が行なわれる。極端に偏差している瞬時周期持続時間偏差を、二つの回路62a及び62bによって既にフィルタリングして除去することができる。この除去は、例えば、有効な測定値の範囲を事前に規定しておき、この値範囲内にないことが回路62によって判断されることによって行なわれる。
【0078】
受信信号がイントラパルス分析部に基づいて、考えられる種々の送信信号及び/又は対象の内のどの送信信号及び/又は対象によってその受信信号が生じたかについて検査されると、またこの検査が必要に応じて、更に複数の測定装置61a−1,61a−2,・・・,61b−1,61b−2,・・・を使用して行なわれると、各瞬時周期持続時間104・・・をその都度、考えられる種々の送信信号及び/又は対象を表す基準PG・・・105とそれぞれのブロック106・・・において比較することができる。その種の比較によって、それぞれが基準セットPG・・・に関連する瞬時周期持続時間偏差のセットの生の平均周期持続時間偏差Δprrが後続の段に伝送される。
【0079】
生の平均周期持続時間偏差Δprrの他にも、装置106は選択的に、クロック周期毎にパターンベクトルεと、平均値の散乱に関する生の尺度σrとを形成する。パターンベクトルεは、基準セットPG105からの目下検査された瞬時周期持続時間偏差のセットがどのように偏差しているかを表す。三つのパラメータΔprr,ε及びσrはデータ線路104,110を介して後続の装置に伝送される。
【0080】
品質判定を基礎として信号処理を行なうためのオプションとしての後続の段108においては、有利には周期ステップ毎に、中間パラメータΔprr、ε及びσrに基づいた結果の評価が行なわれる。
【0081】
理想的には、偏差ベクトルεの受信時点において、測定された瞬時周期持続時間偏差のセットが中間パラメータΔprrを含めて基準周期持続時間偏差のセットPGとは異ならないこと、また、平均偏差σrに関する尺度もこの時点においては二つのセットと高い類似性を示すことが証明されるので、品質判定を基礎として信号を補正する段はその時点において補正を行なう必要はなく、また、周期持続時間のずれΔprrに相応する相対運動に類似する信号パルスの基準PGの内の一つがこの時点において受信されたことに基づいて、信号強度123が十分に高く、且つ信号持続時間122が十分に長い場合には、後続の判定装置112に転送することができる。複数の基準PG・・・との比較結果を評価することによって判定段112において判定が行なわれると、基準は少なくとも一つの信号形状及び/又は対象を表し、これによって信号124においては相対運動の他に、検出された信号形状及び/又は対象に関する情報も伝送される。
【0082】
この理想的な場合とは異なる他の全ての状況においては、品質判定を基礎として信号を処理する段108が生の中間値を補正して提供する。この補正は例えば以下において説明するように行なわれる。
【0083】
上述の理想的な場合にならず、また、エコー強度が高く、瞬時周期持続時間偏差と基準PG・・・との連続的に行なわれる比較を表す偏差尺度σのいずれも十分に小さくない場合には、目下の高い受信強度が基準のいずれにも対応しないこと、又は、目下の高い受信強度が基準PGに最も類似しており、その偏差尺度σが別のものとの関係において最も小さいことを転送することができる。これら二つの情報のいずれかを、部分分析の偏差尺度σの大きさに基づき判定することができる。回路62aによって求められた正の瞬時周期持続時間偏差はデータ信号104としてクロック信号CLK(τ)と共に計算装置106aに供給される。計算装置106aは、測定された瞬時周期持続時間偏差の詳細なセットをそれぞれ、基準周期持続時間偏差のセットPGに基づき正規化する。またこの計算装置106aは、正の平均周期持続時間偏差、個々の瞬時周期持続時間偏差、及び/又は、瞬時周期持続時間偏差の散乱の和を求めるよう構成されている。計算装置106aによって算出された値は、続いてデータ信号110として評価装置108aに出力される。
【0084】
信号処理装置108aは、その入力側に供給されるロー値に基づき信号処理を実施する。この信号処理は、信号処理装置108aが、伝送された品質基準に基づき、この周期ステップにおいて算出されたそれぞれの基準セットを正規化した平均周期持続時間偏差Δprrに関する最終的な値、もしくは、そこから算出された等価値、例えば相対速度、及び/又は、それぞれの部分分析においてそれぞれの基準セットと比較された、測定された瞬時周期持続時間偏差のセットがどの程度の確率で同一であるかを表す、処理された尺度σを求めることによって行なわれる。評価装置108aは、所定の比較値から過度に偏差している正の平均瞬時周期持続時間偏差及び/又は散乱を有している正の瞬時周期持続時間偏差をフィルタリングして除去することによって、最適な正の平均瞬時周期持続時間偏差、及び/又は、正の瞬時周期持続時間偏差の最適化されたセットを決定し、データ信号110として判定装置112に出力するように構成することができる。
【0085】
回路62bによって検出された負の瞬時周期持続時間偏差はデータ信号104bとしてクロック信号CLK(τ)と共に計算装置106bに供給される。計算装置106bの機能は上述の計算装置106aの機能に対応する。計算装置106bの後段にも、評価装置108aと同じ機能を備えている評価装置108bが配置されている。計算装置106bによって算出された値は、データ信号110b,111b及び114bとして評価装置108bに出力され、負の瞬時周期持続時間偏差が所定の評価品質に対応する限りは、必要に応じて品質基準で信号を処理する段108bにおいて処理を行なった後に判定装置112に転送される。
【0086】
周期持続時間偏差を求めて評価するコンポーネントに付加的に、回路装置98は更に別のコンポーネント118及び120を有することができる。このことは図3における破線によって表されている。コンポーネント118及び120は例えば整流器118及び積分フィルタ120であり、また、瞬時信号強度123に関する情報を生成する。このためにコンポーネント118及び120を、従来技術から公知のやり方で、供給された受信信号r(τ)をエコーの時間的な強度分布に関して評価するように構成することができる。このようにして、超音波測定装置に関する反射性の対象点の位置を大まかに検出することができる。コンポーネント118及び120によって求められた信号122及び123を判定装置112にも出力することができる。
【0087】
前述したように、考えられる送信信号の種類、伝送経路の種類及び反射性の対象の種類の各組み合わせはそれぞれ、考えられる瞬時周期持続時間偏差PG・・・105の本来の基準セットを必要とするので、それぞれの基準セットに対して、比較ユニット106と選択的に品質基準で信号を処理するユニット108とからなる部分分析が必要となる可能性がある。必要な手間は、図3に示したケースのように、受信信号が正の周期持続時間及び負の周期持続時間に応じて別個に分析されるべき場合、及び/又は、その都度の複数の周期持続時間にわたり分析されるべき場合には、時間的に並行して動作する測定装置61の数だけ増加することが考えられる。このようにして取得された、それぞれの基準セットPG・・・を基礎とする種々の部分分析の個別の仮説は、続いて、その都度の時点においてそれぞれ最も可能性の高い受信仮説を表すために、送信された信号と伝送系路内での基礎となる変化との組み合わせを介して、従ってまた選択的には、反射性の対象の種類を介して、信号判定器に供給される。
【0088】
つまり、判定装置112は例えば、それぞれの位置に関して、その都度の相対速度、また選択的には、超音波測定装置の周囲の対象を検出するよう構成されている。判定装置112はまた、どの信号形状がそれぞれの受信信号の基礎となったのかも識別することができる。
【0089】
同様に、少なくとも一つの対象の形状を識別するように判定装置112を構成することができる。特に、少なくとも一つの反射性の対象の表面構造を検出するように判定装置を構成することができる。識別された形状/表面構造に基づき判定装置112は、どのような種類の対象が超音波測定装置の周囲に存在しているかも識別することができる。例えば、成人、子供、動物、壁のような位置固定された構造物、可撓性の対象、及び/又は、自転車のような可動の対象を区別することができる。
【0090】
これに代替的に、又はこれに付加的に、考えられる信号形状のセットの内のどの信号形状が超音波測定装置の送信装置から送信され、続いて、超音波測定装置の周囲における対象によって反射されたかを確認するように判定装置112を構成することもできる。以下では、このプロセスを一つの例に基づいて詳細に説明する。
【0091】
更には、評価された対象形状及び/又は評価された運動方向に基づき、それぞれの観察時点における送信周期の全てのエコーの伝播時間を正規化するように判定装置112を構成することもできる。同様に、エコー伝播時間の期待領域を、後続の送信周期に関する対象形状及び運動方向の識別によってより良好に予測することができる。従って、車両の周囲における対象を所期のように求め、また、対象の速度及び/又は形状に関して評価することができる。
【0092】
判定装置112によって求められた位置データ、速度データ、対象形状データ、対象表面データ、対象タイプデータ、対象対応付けデータ、及び/又は、送信信号形状データを情報信号124,126及び128として、例えば、自動的な車両制御システム、例えば自動的な制動システム、操舵システム及び/又は加速システムに転送することができる。
【0093】
図示されている回路装置98に代わるものとして、回路62a及び/又は62bは、周期持続時間偏差と等価のパラメータ、例えば周期持続時間及び/又は周波数(周波数電圧変換器を用いて得られる)及び/又は周波数偏差を測定することができる時間測定装置であっても良い。信号形状として、例えば単一パルス方式、直接拡散パルス方式、チャープ方式及び周波数ホッピング方式のような変調方式を適用することができる。
【0094】
ただ二つの時間測定装置を使用する代わりに、時間をずらして複数の時間測定装置を始動させ、従って複数の(半)周期にわたり平均周期持続時間偏差を並行して測定できることも再度示唆しておく。続いて、スイッチオンされた後の一つ又は複数の評価ユニットにおいて、周期持続時間偏差の有限の長さの基準セットを、測定された周期持続時間偏差のセットにおける相応の同じ長さの部分とそれぞれ比較することができる。例えば、最初に、それぞれの値ペアの偏差に関する平均値が決定される。選択的に、複数のセットのそれぞれの値ペアの偏差の散乱幅に関する粗い尺度も決定することができる。同様に、相互に比較されるそれぞれのセットの値ペアのうちのどの値ペアが相互に非常に大きく偏差しているかを表している尺度を形成し、評価することもできる。
【0095】
図4は、超音波測定装置の第2の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【0096】
図示されている回路装置58は、一つだけの測定装置61と、基準PGを一つだけ使用する比較器106と、廉価に実現される信号評価部108及び信号判定部112を備えた、前述の回路装置に関して説明した信号分析部の具体的な実現形態を示す。回路装置58は前述の回路装置とは異なり、受信した受信信号r(τ)の周期持続時間偏差Δpを求めるためにのみ構成されているのではなく、求められた周期持続時間偏差Δpの測定品質を検出するためにも構成されている。
【0097】
回路装置58は測定装置のサブユニットとしての閾値スイッチ60を有している。閾値スイッチ60は、超音波測定装置の受信装置から供給された、例えば超音波測定装置から送出された超音波信号の対象における反射に起因する受信信号r(τ)をバイナリ信号b(τ)に変換する。例えば、閾値スイッチ60はバイナリ信号b(τ)を形成し、このバイナリ信号b(τ)は受信信号r(τ)の正の値に関して値1を有しており、且つ、受信信号r(τ)の負の値に関して値0を有している。有利には、閾値スイッチ60は上述したように、時間的に可変の有効閾値を用いて受信信号r(τ)を評価する。
【0098】
バイナリ信号b(τ)は続いて、瞬時周期持続時間偏差Δpを求めるために回路62に出力される。回路62は例えば下記において説明するコンポーネント50及び52を有することができる。
【0099】
図示されている比較回路106は比較ユニット101と、偏差パターンを検出するユニット103及び生の平均偏差品質を検出する計算ユニット107から構成されている、評価品質を決定するユニットとを有している。
【0100】
図示されている品質基準で信号を評価するユニット108は、ここでは単に例示的に閾値スイッチ80のみから構成されており、この閾値スイッチ80は評価品質の生の尺度から処理された評価品質σを生成する。この簡単な例においては、エラーベクトルεに挿入される情報は信号評価部108において使用されないままである。
【0101】
図4に示されている簡単な判定器112においては、信号強度及び処理された評価品質σに依存して、更なる処理のために供給された速度情報vが有効な値を取るか否か、又は、有効でないものとして特徴付けられるか否かを判定する。
【0102】
ここで、比較回路106のより正確な理解のために、受信した超音波パルスは信号強度の時間経過に関してのみ分析されるのでなく、パルス内の瞬時周期持続時間又は瞬時周波数の時間経過に関しても分析されることを言及しておく。従って、受信したパルスの周期持続時間(瞬時周期持続時間)のセットは指紋に等しく、また、送出された送信パルスに関する特性も受信器までの伝送経路に関する特性も表している。伝送経路は、例えば、送信アンテナ及び/又は受信アンテナの指向性によって、及び/又は、送信されたパルスを受信器までの経路に反射させる対象及び対象相互の相対運動によって決定される。受信器が伝送シナリオに関して特徴付けられており、ここでは基準周期持続時間のセットによって表される指紋を識別すると、受信側では受信したパルスにおいてどのシナリオが存在していたかを検出することができる。
【0103】
分かり易くするために、相対運動の際には、速度に比例する基準セットの時間的な圧縮又は伸張のみが生じることを想定することができる。図4に示されている回路を用いて、ただ一つの指紋を例にして、即ちN個の要素から成る基準セットを例にして、その種の分析を簡単な手段でどのように実現することができるかを説明する。
【0104】
この分析に関して、この具体的な実施の形態においては、クロックCLK(τ)を用いて、測定ユニット62によって取得された瞬時周期持続時間偏差Δpが時間的に連続して比較ユニット101に伝送され、この比較ユニット101においては、基準セット105のN個の基準要素と測定された瞬時周期持続時間偏差のセットとの差分がその都度形成される。
【0105】
参照番号101で表されているブロックでは、一連のN個の減算段66とそれらN個の減算段の後段にそれぞれ接続されているN個の結果レジスタ64とを用いて比較が行なわれる。この減算方式において使用される基準セット105を、例えばこの伝送状況に関して典型的な受信信号の周期持続時間のセットから導出することによって形成することができる。
【0106】
有利にはこの種の比較では、期待される受信信号の帯域制限に起因して、差分形成時には大きい値の差は生じず、これによってレジスタには僅かなメモリ長しか必要とされず、また、差分形成を一つ又は少数の減分段又は増分段によって、即ち、値のカウントダウン又はカウントアップによって、それぞれの後続の結果レジスタによって実現することができる。煩雑な減算作業を省略することができる。
【0107】
回路62によって複数のN個のクロックが送出されると、レジスタ64のN個の出力側ΔpK(N)−ΔpK(1)にはそれぞれ、N段の基準セットに対するN回測定された瞬時周期持続時間偏差の差分が供給される。このN段の基準セットは正規化された周期持続時間偏差のセットとも称される。加算団68と係数1/Nで動作する比例素子70とを用いて形成される偏差セットの平均値は生の平均周期持続時間偏差Δprを表す。
【0108】
正規化された周期持続時間偏差ΔpK(N)−ΔpK(1)の散乱を算出するために、各正規化された周期持続時間偏差ΔpK(N)−ΔpK(1)から平均値が減算される。このことは、複数のN個の計算作業72を介して行なわれる。続いて、計算ユニット72を用いて算出された差分D(N)からD(1)はそれぞれ計算ユニット74に供給される。計算ユニット74はそれぞれ供給された差分D(N)からD(1)を二乗する。これによってN個の散乱σ(N)からσ(1)が得られる。
【0109】
評価品質を評価するユニット103においては、各要素ΔpK(...)に関して、それら各要素ΔpK(...)が平均値Δprからどれ程偏差しているかを検査する。このために、図4に示されている実施例においては、周期ステップ毎にN個の要素の偏差ベクトルεがブロック76において決定され、この偏差ベクトルεは、クロック周期毎に形成される平均値Δprから要素ΔpK(...)の各々がどれ程大きく偏差しているかを表す。計算ユニット72とこの計算ユニット72に接続されている評価曲線形成部74とを用いた差分形成によって、各偏差が決定される。有利には、この評価曲線は、計算ユニット72において事前に算出された、Δprに対するΔpK(...)の偏差の平方の絶対値に相当する。しかしながら平方関数の代わりに、偏差の大きさに関する尺度としての絶対値又は他の関数も使用することができる。
【0110】
図4に示されている、生の平均偏差品質σrを決定するための計算ユニット107においては、周期ステップ毎に、それぞれの偏差ベクトルεの全ての要素の和が形成され、後続のユニット108に供給される。評価ユニット76は、N個の偏差ε(N)からε(1)より、クロック周期毎に、複数のN個の値を有するセットεを形成することができる。このセットεは続いて少なくとも一つの比較セットと比較される。
【0111】
図4に基づき説明した回路は評価品質、即ち散乱に関する尺度を決定するために構成できることをここで再度言及しておく。評価品質を用いることにより、正規化された周期持続時間偏差ΔpK(N)からΔpK(1)は更に処理及び評価されるか否かについての有効判定を行なうことができる。過度に大きく散乱している、正規化された個々の周期持続時間偏差ΔpK(N)からΔpK(1)をフィルタリングし、エラーメモリに格納することができる。このようにして、個々のエラー測定を識別することができる。続いて、フィルタリングによって有効であると確認された残りの正規化された周期持続時間偏差ΔpK(N)からΔpK(1)を、十分な評価品質を有している最適化された平均周期持続時間偏差の算出に使用することができる。
【0112】
しかしながら、エラーベクトルεの分析に基づいた各クロック周期の平均値の品質評価も可能である。偏差ベクトルの要素において、図9において説明する瞬時周期持続時間と同様に、値ΔpK(...)で表される、比較の際に考慮される瞬時周期持続時間偏差のペアの特異な異常値、また相応の基準周期持続時間偏差のペアの特異な異常値が存在する場合、このペアは「無効なもの」として説明することができる。何故ならば、このペアは最終的な平均周期持続時間偏差Δprを決定する際にもはや考慮されず、このことは、補正された値に基づきこの段において新たに算出された平均偏差尺度σの低減にも繋がるからである。相応の偏差ベクトルεにおいて異常値として検出された要素の数が過度に多い場合には、クロック周期において提供される値のセットを無効なものとして説明することも考えられる。
【0113】
図4において説明した回路を、図3に基づき説明した原理に従い複数の基準セットについて拡張すること、及び/又は、時間的にずらされて動作する複数の測定装置61によって取得された値を処理するために拡張することも可能である。
【0114】
図5は、超音波測定装置の第4の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図を示す。
【0115】
図5に基づき説明する回路装置148は、平均周期持続時間偏差を求めることに特に良く適している。有利には、超音波測定装置の送信装置がほぼ一定の信号周波数を有する(即ちほぼ一定の周期持続時間P0を有する)送信信号を送出する。このようにして、比較器を補償することができる。
【0116】
アナログの受信信号r(τ)は第1の評価経路及び第2の評価経路に供給される。第1の評価経路の入力側にはLH比較器150aが設けられており、また、第2の評価経路の入力側にはHL比較器150bが設けられている。二つの比較器150a及び150bはそれぞれ、アナログの受信信号r(τ)をバイナリ信号b1(τ)又はb2(τ)に変換するように構成されている。比較器150a及び/又は150bの内の少なくとも一つは、時間的に変化する有効閾値を有する閾値スイッチの機能を実現することができる。選択的に、比較器150a及び/又は150bの後段には、バイナリ信号b1(τ)及びb2(τ)を平滑化するための平滑化ユニット152a及び/又は152bが接続されている。しかしながら、図5に基づき説明した受信信号r(τ)を評価するための構成は、バイナリ信号b1(τ)及びb2(τ)を平滑化せずとも実施することができる。
【0117】
クロック信号CLK(τ)の供給は、平滑化された(デバウンスされた)バイナリ信号b1(τ)又はb2(τ)を介して行なうことができる。周期持続時間測定装置154a又は154bが例えば一つの周期持続時間にわたり動作する場合、クロック信号CLK(τ)は有利には平滑化されたバイナリ信号b1(τ)又はb2(τ)に等しい。周期持続時間測定装置154a又は154bはNm個の周期にわたり平均化される場合、クロック信号CLK(τ)は相応にNmによって除算されることによってクロックを低減することができる。
【0118】
平滑化された、又は平滑化されていないバイナリ信号b1(τ)は周期持続時間測定装置154aに供給される。周期持続時間測定を複数の周期にわたり行なうことができる、及び/又は、0通過時にのみ行なうことができる。有利には、バイナリ信号b1(τ)に基づき、正の周期持続時間(瞬時周期持続時間)に関する時間離散的な8ビット周期持続時間値を求めるように周期持続時間測定装置154aは構成されている。
【0119】
周期持続時間測定装置154aの後段には計算ユニット156aが接続されている。この計算ユニット156aを用いて、周期持続時間測定装置154aによって決定された正の周期持続時間に関する値を周期持続時間偏差(瞬時周期持続時間偏差)に変換することができる。このために、周期持続時間から定数、例えば送信信号の(平均)周期持続時間P0が減算される。
【0120】
第2の評価経路も周期持続時間測定装置154b及び計算ユニット156bを有している。例えば、平滑化された、又は平滑化されていないバイナリ信号b2(τ)に基づき、負の周期持続時間に関する時間離散的な8ビット周期持続時間値を決定するように第2の評価経路の周期持続時間測定装置154bは構成されている。続いて計算ユニットを用いて、負の周期持続時間(瞬時周期持続時間)に関する値をその都度形成するために、送信信号の周期持続時間P0から周期持続時間の求められた値が減算される。
【0121】
周期持続時間測定ユニット154a及び計算ユニット156aを用いて算出された正の周期持続時間偏差は、計算ユニット158aにもN倍(遅延)シフトレジスタ160aにも出力される。シフトレジスタ160aはクロック信号CLK(τ)によってクロック制御される。シフトレジスタ160aの出力側は計算ユニット158aのマイナス入力側と接続されている。従って、求められた正の周期持続時間偏差は計算ユニット158aによって一緒に加算され、その都度N番目の最後の周期持続時間偏差が減算される。従って、計算ユニット158aから出力された値は、N番目の最後に求められた正の周期持続時間偏差の和に相当する。計算ユニット158aから出力された値は計算ユニット162に転送される。
【0122】
第2の評価経路はクロック信号CLK(τ)によってクロック制御されるN倍(遅延)シフトレジスタ160bを有しており、このシフトレジスタ160bの出力側には計算ユニット156bのマイナス入力側が接続されている。付加的に、計算ユニット156bの出力側は計算ユニット158bのプラス入力側に接続されている。従って、計算ユニット158aから出力された値は、N番目の最後に求められた負の周期持続時間偏差の和に相当する。計算ユニット158bの出力側も計算ユニット162に接続されている。
【0123】
計算ユニット162は、負の周期持続時間偏差に含まれる情報の平均値も正の周期持続時間偏差に含まれる情報の平均値も検出するために、計算ユニット158a及び158bから供給された値を加算して和を形成する。計算ユニット162の出力側は除算器164に接続されており、この除算器164は計算ユニット162によって算出された和を値2Nで除算する。除算器164によって実施される除算は、値Nが2(ただしaは自然数である)に等しい場合には特に有利である。もっとも、図5に基づき説明した評価方式を別の値Nについても実施することができる。
【0124】
続けて、除算器164によって算出された値を出力メモリ166に出力することができる。出力メモリ166もクロック信号CLK(τ)によってクロック制御することができる。有利には、N個の周期にわたり平均化された周期持続時間偏差が、測定品質が十分なものである場合にのみ、後続の処理ユニットに供給される。例えばシフトレジスタ160に記憶されている値がその値散乱に関して分析される場合には、測定品質の検出、及び/又は、出力メモリ166に記憶されている、N個の周期にわたり平均化された周期持続時間偏差の更なる処理及び評価を、上述の例と同様に実施することができる。従って、それに関する説明はここでは省略する。
【0125】
回路装置148の一つの発展形態においては、異なるNを有する複数の評価部を対象分類に使用することができるか、又は結果を連続的なものにするために使用することができる。
【0126】
図6A及び図6Bは、超音波測定装置の第4の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図及び座標系を示し、図6Aには回路装置が示されており、図6Bには回路装置によって実施される計算ステップが示されている。
【0127】
図6Aに基づき概略的に示されている回路装置198は、下側の周波数f0−Δfmaxから上側の周波数f0+Δfmaxまでの範囲内の主要な搬送信号の信号周波数を検出するためのFM復調器として構成されている。特に、図6Aには周波数電圧変換器の回路構造が示されている。生成された周波数f0+Δfmaxを有する受信信号r(τ)のスペクトル成分も、生成された別の周波数f0−Δfmaxを有する受信信号r(τ)のスペクトル成分も検出される。続いて、二つのスペクトル成分の絶対値の差が周期持続時間偏差又は周波数偏差の尺度として形成される。
【0128】
回路装置198の信号入力側には受信信号r(τ)が供給される。受信信号r(τ)は回路装置198によってその周波数に関して検査される。
【0129】
回路は、第1の基準発生器200a及び第2の基準発生器200bを有している。第1の基準発生器200aは、周波数f0+Δfmaxを有する信号を生成して信号出力側に供給されるように構成されている。第2の基準発生器200bは、周波数f0−Δfmaxを有する信号を信号出力側に供給されるように構成されている。従って、値2Δfmaxは受信信号r(τ)の重要な周波数が求められるべき値範囲の帯域幅を表す。有利には、周波数f0は送信信号が出力される平均周波数である。特に、送信信号としてほぼ一定の周波数f0を有する信号が考えられる。
【0130】
基準発生器200aによって生成された信号f0+Δfmaxはミキサ202aによって受信信号r(τ)と混合される。この際に形成された信号を以下では信号rl+と称する。周波数f0+Δfmaxを有する信号は付加的に位相回転器204aに出力されて90°回転される。続いて、回転された信号がミキサ206aによって受信信号r(τ)と混合され、信号rQ+が形成される。
【0131】
相応に、基準発生器200bによって生成された、周波数f0−Δfmaxを有する信号はミキサ202bによって受信信号r(τ)と混合されて混合信号rl−が形成される。同様に、周波数f0−Δfmaxを有する信号が位相回転器204bに出力されて90°回転される。回転された信号をミキサ206bによって受信信号r(τ)と混合することができる。このようにして信号rQ−が形成される。
【0132】
信号rl+,rQ+,rl−及びrQ−はそれぞれローパスフィルタ208a,210a,208b又は210bに出力される。信号をフィルタリングするための式は下記の通りである:
【数1】

ここで、TFは有利には2Δfmaxの逆数である。すなわち、
TF=1/2・Δfmax
フィルタリングされた信号rl+,rQ+,rl−及びrQ−はそれぞれ二乗器212a,214a,212b又は214bに出力される。二乗器212aの信号及び214aの信号は続いて加算器216aによって加算される。相応に、二乗器212bの信号及び214bの信号も加算器216bによって加算される。この加算によって信号r2+及びr2−が得られる。伝達関数|r+(f)|及び|r-(f)|並びにその差分r+-が図6Bに示されている。
【0133】
続いて信号r2+は平方根検出ユニット218aに出力される。信号r2−も平方根検出ユニット218bに出力される。続いて、加算器220を用いて、平方根検出ユニット218aから出力された信号から、平方根検出ユニット218bから出力された信号が減算される。
【0134】
加算器220の出力側に供給される信号は、周期持続時間偏差(又は周波数偏差の逆数)に近似的に比例する。従って、加算器220の信号に基づき、サンプリング装置226及びクロック発生器228を介して、簡単なやり方で、受信信号r(τ)の瞬時周波数が周波数f0からどれ程偏差しているかを決定することができる。
【0135】
選択的に、信号r2+から信号r2−を減算することによって、信号r2+及びr2−も簡単なやり方で加算器222を用いて混合することができる。続いて、係数形成ユニット224、サンプリング装置226及びクロック発生器228を介して、周波数偏差に近似的に比例する信号を形成することができる。
【0136】
回路装置198は計算コストが比較的高いにもかかわらず、一つの周期内の複数回のサンプリングによって全体の曲線情報が考慮されるという利点を有している。このことは良好なノイズ抑制を保証する。
【0137】
図7Aから図7Cは、超音波測定装置の第5の実施の形態の回路装置を説明するためのブロック図及び2つの座標系を示す。
【0138】
受信信号r(τ)がバイナリ信号b(τ)どのように変換されるかについては上記において既に説明した。バイナリ信号b(τ)は、受信信号r(τ)の正の期間に関して第1の値を有しており、受信信号r(τ)の負の期間に関して第2の値を有しているので、このバイナリ信号b(τ)を1−0信号(10信号)と称することもできる。この場合、第1の値及び第2の値は値「1」及び「0」である(横軸に時間軸τがプロットされている図7Bを参照されたい)。
【0139】
バイナリ信号b(τ)はモノフロップユニット50に供給される。モノフロップユニット50は、バイナリ信号b(τ)の0から1への上昇エッジが識別される度に、パルス持続時間TMを有する(パルス信号としての)クロック信号CLK(τ)のパルスを出力するように設計されている。モノフロップユニット50によって形成されたクロック信号CLK(τ)も図7Bに同様に示されている。
【0140】
クロック信号CLK(τ)はバイナリ信号b(τ)と共に、現在時間キャプチャ(Preset-Timer-Capture:PTC)ユニット52に供給される。PTCユニット52はタイマ53とキャプチャレジスタ54とから構成されている。値Naがデフォルト値として設定されているカウント値を有するタイマ53は、クロック信号CLK(τ)の下降エッジの発生以降にクロック時間Tcにわたり、カウント値Neに達するまでカウントダウンを行う。キャプチャレジスタ54は、バイナリ信号b(τ)の上昇エッジが発生した際にタイマ53のその時点のカウント値を受け取る。
【0141】
遅延キャプチャアーキテクチャ48の機能、即ち相互に結線されているコンポーネント50から54の機能は図7B及び図7Cの座標系に基づき理解することができる。座標系の横軸は時間軸τを表している。
【0142】
バイナリ信号b(τ)のレベルが変化すると、遅延持続時間(パルス持続時間TM)にわたりバイナリ信号b(τ)の更なるレベル変化に反応しないことによって測定が開始される。これによって達成されるデバウンスはローパスフィルタのように作用する。この場合、遅延持続時間を比較的長く設定することができる。遅延持続時間の経過した直後に、PTCユニット52のカウンタがスタートし、このPTCユニット52は有利には、複数の種々の速度値に対応する値Naでもって負荷が掛けられ、また有利には、モノフロップの遅延持続時間TMの開始以降に基準周期持続時間が経過したときにカウンタが丁度値0を有するようにクロック周波数が規定される。そのような設計の場合には、周期持続時間偏差の各値は、更なる換算を必要としなくても速度値に対応している。エッジの上昇と共に、タイマの瞬時カウンタ値は基準としてキャプチャレジスタ54に記憶される。
【0143】
図7Cには、PTCユニット52によって求められた周期持続時間偏差Δp(瞬時周期持続時間偏差)に関する3つの例Δp(1)及びΔp(2)が示されている。第1のケースにおいては、測定すべき周期持続時間は基準周期持続時間と丁度一致し、従って、Δp(1)=0である。第2のケースにおいては、測定すべき周期持続時間は基準周期持続時間よりも長く、従って、ここで図示している回路装置によってΔp(2)>0が生じる。
【0144】
バイナリ信号b(τ)の上昇エッジの識別に基づき事前にカウントが停止されることなく、カウンタが所定の最終カウント値Neに達すると、周期持続時間偏差Δpに関する値が「無効」にセットされることによってカウントプロセスが中断される。従って、周期持続時間偏差Δpが求められた際に生じ得ない値のフィルタリングが既に行なわれる(図7Cの最後の例を参照されたい)。
【0145】
カウンタの瞬時カウンタ値が、バイナリ信号b(τ)の次に上昇するレベル変化が識別される瞬間における周期持続時間偏差Δpに関する尺度として読み出され、この時点はそれと同時に、モノフロップ50のトリガによる周期持続時間偏差Δpの後続の測定の開始に関する新たな開始点を表す。
【0146】
図7Aから図7Cに基づき説明した回路を、正の周期持続時間偏差を求めるためにも、負の周期持続時間偏差を求めるためにも構成することができる。この回路装置を、タイマの別のカウンタ装置、及び/又は、カウンタ値もしくは制御信号の別の符号でも動作するように構成することができる。
【0147】
パルス持続時間TMが長くなればなるほど、要求が同じであればクロック時間Tcを長くすることができる。この要求は例えば相対速度の区別可能な値によって設定される。
【0148】
図8A及び図8Bは、超音波測定装置の一つの実施の形態の第1の適用例を説明するための二つの座標系を示す。図8Aは瞬時周期持続時間の評価を説明するものであり、図8Bは瞬時周波数の評価を説明するものである。
【0149】
図8A及び図8Bの座標系の横軸は時間軸τである。図8Aの座標系の左側に示されている縦軸は、瞬時周期持続時間偏差p(τ)を示す。これに対し、図8Bの座標系の左側に示されている縦軸は、瞬時周波数f(τ)に対応する。右側に示されている縦軸はそれぞれ例示的に、約20μsの周期持続時間に相当する約50kHzの信号周波数を有する信号パルスの約5kHzの周波数シフト又は約2μsの同等の周期持続時間変化がどの相対速度において生じるかを示す。
【0150】
座標系には、その都度の測定装置から出力される送信信号の瞬時周期持続時間250a(図8A)、及び、送信信号の相応の瞬時周波数250b(図8B)がプロットされている。瞬時周期持続時間250a及び瞬時周波数250bに基づき、それぞれグラフ251a及び251bを表すことができる。イントラパルス分析部が数km/hの相対運動に起因する信号変化を検出した場合には、瞬時周期持続時間250aの(図示していない)平均周期持続時間からの偏差及び瞬時周波数250bの(図示していない)平均周波数からの偏差が比較的大きいことがはっきりと示されている。例えば、送信信号における周期持続時間の差は、例えば相対運動に起因するエコーの周期持続時間偏差であることが考えられる、調べられた情報の最小分解能よりも遙かに大きい。即ち、例えばチャープ変調の場合には故意に、又は、超音波送信器の振動に起因する場合には意図せずに、送信信号が変化する。
【0151】
図8A及び図8Bにおいては、例えば、超音波送信器と受信装置との間で直接的に伝送される場合に生じる可能性がある、伝播時間だけシフトされた(妨害されていない)受信信号の周期持続時間に関して求められた値252a及び瞬時周波数252bもプロットされている。それらの値を簡単なやり方で評価することができ、またグラフ253a及び253bとして表すことができる。伝送が妨害されない場合には、全ての周期持続時間252a及び周波数252bがグラフ253a及び253b上にあることが見て取れる。
【0152】
グラフ251a及び253aの比較に基づき、又は、グラフ251b及び253bの比較に基づき、例えば、評価すべき受信信号を反射する反射性の対象の相対速度、及び/又は、超音波送信器と受信装置との間の相対速度を、ドップラーシフトを考慮して求めることができる。図示されている例においては、相対速度は8m/s(約30km/h)である。
【0153】
図8A及び図8Bはまた、測定エラーが2%を下回ることも示している。どの程度の相対速度で、約20μsの周期持続時間に相当する約50kHzの信号周波数を有する送信パルスの約5kHzの周波数シフト、又は、約2μsの同等の周期持続時間変化が生じることが付加的に示されている。
【0154】
ドップラーシフトを評価することによって相対運動を求めるために、送信信号の信号形状が評価のために基準として存在する場合には有利である。相対運動の決定は、例えば、受信信号の求められた瞬時周期持続時間252a及び/又は瞬時周期持続時間252bと、基準周期持続時間及び/又は基準周波数との差が算出されることによって行なわれる。このようにして、受信信号の周期持続時間のセットを、差分形成によって基準セットについて正規化することができる。このことは例えば図4に基づき上記において既に説明している。
【0155】
従って、所定の簡単な周辺条件下では、差分の平均値が求めるべき相対速度に相当する。可変の送信信号形状の送出後に受信側において種々の受信信号形状を用いて計算が行われる場合、種々の基準での比較を実施することができる。時間的に並行する基準周期持続時間及び/又は基準周波数の種々のセットから、求められた瞬時周期持続時間252a及び/又は瞬時周波数252bを減算することができる。基準周期持続時間及び/又は基準周波数のセットはそれぞれ、種々の信号形状のセット及び/又は種々の対象形状の反射パターンに由来する送信信号の考えられる信号形状に対応することが考えられる。
【0156】
複数の基準に基づき受信信号のイントラパルス経過の差異を調べることが所望される場合、正規化された瞬時周期持続時間252a及び/又は正規化された瞬時周波数252bの平均値の算出、個々の散乱の算出、及び/又は、平均散乱の算出を介して、評価時に、考えられる信号形状の内のどの信号形状に送出された送信信号が対応するか、及び/又は、どの対象形状がエコーを生じさせたかを確定することができる。
【0157】
受信信号のイントラパルス評価によって、考えられる送信信号のセットからどの送信信号が事前に送出されたかを確定するよう構成されている超音波測定装置を用いることによって、ロングランニングトランザクションの抑制及び/又は時間的な並行動作のようなシステムのさらなる改善を達成することができる。
【0158】
好適には、受信信号の求められた個々の瞬時周期持続時間252a及び/又は瞬時周波数252b間の大きい差が、大きく変化する瞬時周期持続時間250a及び/又は瞬時周波数250bを有する送信パルスに起因するものではなく、反射性の対象点の所定のパターンに起因する場合には、超音波測定装置に対する同等の要求も得られる。この場合にも、比較周期持続時間及び/又は比較周波数の所定のセットを用いた、求められた瞬時周期持続時間252a及び/又は瞬時周波数252bのほぼ同時の正規化を介して、所定のパターンを求められた瞬時周期持続時間252a及び/又は瞬時周波数252bに対応付けることができ、従って反射性の対象点に対応付けることができる。
【0159】
図9A及び図9Bは、超音波測定装置の一つの実施の形態の第2の適用例を説明するための二つの座標系を示す。図9Aは周期持続時間の評価を説明するものであり、図9Bは周波数の評価を説明するものである。図9A及び図9Bの横軸及び縦軸は図8A及び図8Bの横軸及び縦軸に対応する。
【0160】
図9A及び図9Bにおいては、送信信号の上述の瞬時周期持続時間250a及び瞬時周波数250bが、送信信号の瞬時周期持続時間250a及び瞬時周波数250bに基づき表されたグラフ251a及び251bと共にプロットされている。付加的に、受信信号から求められ、伝達伝播時間だけシフトされた瞬時周期持続時間256aが示されており(図9A)、また、伝達伝播時間だけシフトされた、受信信号から求められた瞬時周波数256bが示されている(図9B)。
【0161】
境界曲線258a及び260a又は258b及び260bによって張られている値領域外にある、障害の無い伝送では通常生じない極大値254a及び254bを上述の回路を用いて簡単に極大値254a及び254bとして識別することができ、例えば、瞬時周期持続時間偏差を測定するために適切に構成されている回路によってフィルタリングすることができる。
【0162】
フィルタリングによって取得された瞬時周期持続時間256a及び/又は瞬時周波数256bを、境界曲線258a及び260a又は258b及び260bを用いる上述の方法によって、「不適切なもの」としてフィルタリングすることができ、またそのような瞬時周期持続時間256a及び/又は瞬時周波数256bは最終的な算出時には考慮されない。従って、極大値254a及び254bによって結果が劣化することはないので、2%以下の測定エラーでもって、相対速度が8m/s(約30km/h)であることを確認することができる。
【0163】
同様に、平均値に対する極大値の散乱に基づき、その極大値を「不適切」としてフィルタリングすることができ、従って極大値は後続の算出時に考慮されないままである。
【0164】
境界曲線258a及び260a又は258b及び260bによって張られる値領域の代わりに、それぞれの基準に正規化された周期持続時間256a及び/又は周波数256bの散乱も、極大値254a及び254bのフィルタリングのために評価することができる。
【0165】
図10A及び図10Bは、超音波測定装置の一つの実施の形態の第3の適用例を説明するための二つの座標系を示す。図10Aは瞬時周期持続時間の評価を説明するものであり、図10Bは瞬時周波数の評価を説明するものである。図10A及び図10Bの横軸及び縦軸は図8A及び図8Bの横軸及び縦軸に対応する。
【0166】
図10A及び図10Bにおいては、送信信号の上述の瞬時周期持続時間250a及び瞬時周波数250bが、グラフ251a及び251bと共にプロットされている。同様に、受信信号から求められ、伝達伝播時間だけシフトされた瞬時周期持続時間260aが図10Aに示されており、また、伝達伝播時間だけシフトされた、受信信号から求められた瞬時周波数260bが図10Bに示されている。
【0167】
図10A及び10Bからは、受信信号の求められた瞬時周期持続時間260a及び瞬時周波数260bが前述の例に比べて大きい散乱を示していることがはっきりと見て取れる。もっとも、受信信号の瞬時周期持続時間260a及び瞬時周波数260bのこの大きい散乱は、周期持続時間260a及び/又は周波数260bに関する最適化された平均値の算出によって補償することができる。つまり、受信信号の瞬時周期持続時間260a及び瞬時周波数260bの散乱が比較的大きいにもかかわらず、8m/s(約30km/h)の相対速度を15%以下の測定エラーで求めることができる。
【0168】
図11は、超音波測定装置の一つの実施の形態の第4の適用例において瞬時周期持続時間の評価を説明するための座標系を示す。座標系の横軸は時間軸τである。座標系の縦軸は周期持続時間を表している。
【0169】
図示されている適用例においては、グラフ266に表されている瞬時周期持続時間264を有する、送出された送信信号が二つの対象点において反射される。(図示していない)二つの対象点は約28mmの行路差で相互にずれて位置している。二つの対象間の行路差が比較的小さいことに基づき、個々の対象の個々の反射間の重畳が生じる可能性がある。従って、受信信号に基づき求められた、伝播時間だけシフトされた瞬時周期持続時間268は比較的大きい散乱を有している。
【0170】
そのような重畳ケースでは、例えば、受信したパルスのパルス持続時間が送出されたパルスのパルス持続時間よりも遥かに長いことが特徴的である。従って有利には、その種の受信信号の瞬時周期持続時間268は、エコーの開始時及び終了時の周期持続時間の時間経過のみが考慮される評価方法を用いて評価される。有利にはエコーの開始は、受信信号の信号強度が有効閾値を最後に下回ってから比較的長い時間が経過した後に、その有効閾値を最初に上回ったことによって規定され、また、エコーの終了は、受信信号の信号強度が有効閾値を下回ってから比較的長い時間を経過する前に、信号強度が有効閾値を最後に上回ったことによって規定される。このようにして、個々の反射の重畳をそのような重畳として識別することができる。使用される超音波測定装置は、受信信号の求められた周期持続時間268に関して二つのグラフ270及び272の形成が有利であることを識別するように構成されている。付加的に、超音波測定装置は二つの対象間の距離を規定することができる。
【0171】
更に、超音波測定装置はドップラーシフトに基づき、対象の相対速度を規定することもできる。この場合、超音波測定装置は、二つの対象が8m/sの同一の相対速度で移動していることを識別する。測定エラーは12%を下回る。
【0172】
上述のアプローチでは、イントラパルス評価による周期持続時間及び/又は周波数の取得についてのみ詳細に説明した。周期持続時間及び/又は周波数に基づき取得されたベース情報、例えば相対速度、対象表面、及び/又は、送出された信号形状を周囲シーン画像及び/又は周囲シーンフィルムへと更に処理することは、当業者であれば容易に想到できる。従ってここでは詳細に説明しない。
【0173】
別の実施の形態においては、車両間通信を実現することができ、この車両間通信は同時に車両間移動関係の伝送にも適している。
【0174】
このために有利には、各車両のコーナーにそれぞれアンテナが取り付けられている。前方の二つのアンテナFL(フロント左)及びFR(フロント右)は特に、主として走行方向に配向されている。後方の二つのアンテナRL(リア左)及びRR(リア右)はこの場合、主として走行方向とは反対方向に配向されている。車両の移動関係は特にパルス変調を用いて伝送され、アンテナからその都度送出されるパルスは異なる搬送周波数f(VL)、f(VR)、f(RL)及びf(RR)で変調されている。この周波数セットの周波数の関係(周波数差)は固定的なものであり、全ての受信器に既知であり、また、車両の実際の運動が例えばドップラーシフトによって、パルスを車両の送信個所にもはや一義的に対応付けることができない程にシフトされることが殆どないように、又はシフトしないように選定されている。
【0175】
この周波数セットの平均周波数(もしくは基本周波数又は基準周波数)を有利には、車両の速度に比例するように選定することができ、これによってパルスの受信器は送信側の車両の速度を識別することができる。車両から前方又は後方に送出されたパルスの時間的な幅、即ちパルス持続時間は有利には、車両によって評価された、前方を走行する車両又は後続の車両までの間隔に比例する。間隔が比較的大きい場合には比較的長いパルス持続時間のパルスが送出され、また、間隔が比較的小さい場合には比較的短いパルス持続時間のパルスが送出される。有利には、パルス持続時間は前方と後方とで相互に完全に独立している。更には、送信側の車両が走行方向の右側において、左側における障害物間隔とは異なる障害物間隔を識別した場合には、左側のアンテナにおけるパルス持続時間と右側のアンテナにおけるパルス持続時間は異なる。パルスを受信する交通に関与する対象はパルス持続時間に基づき、送信側の車両によって想定されたシナリオを識別することができる。
【0176】
走行方向毎のアンテナの基線は全ての車両において可能な限り画一的であることが望ましく、また、有利には130cmから150cmの間にある。
【0177】
パルスの送出は、有利には二つの方向(前方及び後方)に関して同時点に開始される。受信側の車両はこのようにして、送信側の車両のアンテナの基線を決定することができる。択一的に、搬送周波数で変調されたパルスの送出を同時点に終了させることも可能である。変調されたパルスを受信するアンテナを備えた受信器はこの場合、場合によっては生じるパルスの伝播時間差から受信アンテナと送信側の車両との空間的な関係を識別することができる。運動関係の決定は、別のアンテナにおいて受信を同時に行うことによって妥当化及び向上される。送信側と受信側との間での、場合によっては生じる遮蔽部も検出することができる。
【0178】
パルス間の時間的な間隔を、通信時においては一般的なランダム成分の他に、固有速度及び/又は周辺車両に対する相対速度にも依存させることができる。固有速度が比較的速い場合、及び/又は、隣接する対象/車両に対する相対速度が比較的速い場合、パルス間隔はほぼ静止している車両/対象によって包囲されているほぼ静止している車両におけるパルス間隔よりも小さい。受信器がマルチパス伝播に由来する信号変化をより良好に分析できるようにするために、関連するパルスの代わりに、時間的な関連性の低い二重パルス又は時間的に短く連続するパルスシーケンスを送出することができる。
【0179】
車両間通信の変形形態においては、走行方向のアンテナの左側のパルス及び右側のパルスが受信器には既知の時間的な関係を相互に有していても良い。このことは最も簡単な場合には、受信器に対する要求を低減することができる。何故ならば、このパルスを低い搬送周波数で時間的に同時に受信すればよいからである。同様に、パルス相互の可変の時間的な関係及び/又は搬送周波数の可変の関係も車両間の情報伝送のために使用することもできる。受信したパルスの振幅、またその相互の時間的な関係に基づき、受信器は送信側の車両と受信側の車両との間隔を評価することができる。
【0180】
伝送媒体として超音波を使用する場合、緩慢な伝播速度を今日の手段を用いて容易に制御することができる。更には、現在の車両の多くは、外部コーナーにおける超音波パーキングセンサの形態の相応のアンテナを多数有している。周波数多重によって信号コーディングを実施することができる。相関方式によって実現可能な到達距離をさらに延長することができる。システムが適切に設計されている場合、この種の車両間通信を30mまでの自由空間において実現することができる。特に、この搬送周波数セットは固定の周波数の代わりに、周波数チップのセットを使用することができる。これによって、同じ速度の車両が相互に妨害することが阻止される。
【0181】
前述のシステムを精密に設計すると、今日において一般的なアンテナの送信タイミング及び搬送周波数を一緒に考慮することができる。例えば、アンテナにおける使用可能な帯域幅に応じて、送信経路及び受信経路は別の搬送周波数のアンテナを付加的なメッセージ伝送に使用することができる。このようにして伝送可能なメッセージは例えば固定対象の位置、事故の位置及び/又は交通に関与する別の対象の位置である。勿論、交通の流れには直接的に関与しないデータとしてのマルチメディアデータ、エンターテイメントデータ及び/又は通行料金に関する情報もこのようにして伝送することができる。
【0182】
例えば、走行方向においては二つのアンテナの代わりに唯一つのアンテナを取り付けることによる簡略化も可能である。前方を走行する車両から後続の車両までの通信もこの場合には良好に実現される。
【0183】
速度が速い場合には一般的に禁止される超音波信号の使用もその種のシステムにおいてはクリティカルなものではない。何故ならば、音は前方を走行する車両から後続の車両まで、即ち、情報の流れの経路に沿って伝播するからである。
【0184】
上述のアプローチにおいて説明した方法は有利には、搬送周波数との距離が大きい混合周波数が送出される。この場合には、無線により支援されるカー・ツー・カープロジェクトにおける測定も実現される。
【0185】
特に、上述のアプローチにおいて説明した技術を用いて、交通に関与する対象相互の位置測定を簡単に実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)用の超音波測定装置において、
前記超音波測定装置は、受信装置(14)と、比較装置(101)と、評価装置(112)とを有しており、
前記受信装置(14)は、車両固有の超音波送信器(13)及び/又は外部の超音波測定装置(13)から送出された超音波信号(r(τ))を受信し、受信した超音波信号(r(τ))の周期持続時間(PN1からPN6,PP1からPP6)の時間経過に関する測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)を決定及び供給するよう構成されており、
前記比較装置(101)には少なくとも一つの基準セット(Δp0(1)からΔp0(N))が記憶されており、且つ、前記比較装置(101)は、決定された前記測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)を前記少なくとも一つの基準セット(Δp0(1)からΔp0(N))と比較し、決定された前記測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)の前記少なくとも一つの基準セット(Δp0(1)からΔp0(N))からの偏差に関する比較情報(Δpn(1)からΔpn(N))を決定するよう構成されており、
前記評価装置(112)は、決定された前記比較情報(Δpn(1)からΔpn(N))を考慮して、前記超音波送信器(13)から送出された信号形状、及び/又は、前記受信装置(14)と前記外部の超音波送信器(13)との間の相対速度、及び/又は、前記受信装置(14)と車両固有の超音波送信器(13)及び/又は外部の超音波測定装置(13)との間の伝送経路内に存在する少なくとも一つの反射性の対象(16a,16b,16c,16d)の相対速度、及び/又は、前記少なくとも一つの反射性の対象(16a,16b,16c,16d)の形状の特徴的指標に関する情報を決定するように構成されていることを特徴とする、超音波測定装置。
【請求項2】
前記受信装置(14)によって決定された前記測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)は、前記超音波信号(r(τ))の正の周期持続時間(PP1からPP6)のセット、及び/又は、前記超音波信号(r(τ))の負の周期持続時間(PN1からPN6)のセット、及び/又は、基準周期持続時間(P0)からの前記超音波信号(r(τ))の正の周期持続時間偏差(Δp,Δp(1),Δp(2))のセット、及び/又は、基準周期持続時間(P0)からの前記超音波信号(r(τ))の負の周期持続時間偏差のセット、及び/又は、前記超音波信号(r(τ))の周波数(f)のセット、及び/又は、基準周波数(f0)からの前記超音波信号(r(τ))の周波数偏差のセットを含む、請求項1に記載の超音波測定装置。
【請求項3】
前記受信装置(14)は、所定の有効閾値(R(τ))を有する閾値スイッチ(60)を有しており、該閾値スイッチ(60)は、前記有効閾値(R(τ))を上回る強度(I(τ))を有する前記超音波信号(r(τ))の信号領域(Δ1からΔ6)を考慮して、前記測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)が決定され、且つ、前記有効閾値(R(τ))を下回る強度(I(τ))を有する前記超音波信号(r(τ))の信号領域がフィルタリングされて除去されるように前記超音波信号(r(τ))をフィルタリングするよう構成されている、請求項1又は2に記載の超音波測定装置。
【請求項4】
前記受信装置(14)は、バイナリ信号出力装置と少なくとも一つの時間測定ユニット(62a,62b,154a,154b)とを有しており、
前記バイナリ信号出力装置は、少なくとも、受信した前記超音波信号(r(τ))をバイナリ信号(b(τ),b1(τ),b2(τ))に変換するよう構成されており、
前記少なくとも一つの時間測定ユニット(62a,62b,154a,154b)は、供給された前記バイナリ信号(b(τ),b1(τ),b2(τ))を考慮して、基準周期持続時間(P0)からの正の周期持続時間偏差(Δp,Δp(1),Δp(2))のセット及び/又は基準周期持続時間(P0)からの負の周期持続時間偏差のセットを測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)として決定するよう構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項5】
前記受信装置(14)は第1の時間測定ユニット(62a,154a)と第2の時間測定ユニット(62b,154b)とを有しており、
前記第1の時間測定ユニット(62a,154a)は、前記基準周期持続時間(P0)からの前記正の周期持続時間偏差(Δp,Δp(1),Δp(2))を求めるよう構成されており、
前記第2の時間測定ユニット(62b,154b)は、前記基準周期持続時間(P0)からの前記負の周期持続時間偏差を求めるよう構成されている、請求項4に記載の超音波測定装置。
【請求項6】
前記比較装置(60)には、前記少なくとも一つの反射性の対象(16a,16b,16c,18)の第1の比較形状の特徴的指標に関する少なくとも一つの第1の基準セットと、前記少なくとも一つの反射性の対象(16a,16b,16c,18)の第2の比較形状の特徴的指標に関する第2の基準セットとが記憶されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項7】
前記評価装置(112)は、決定された前記比較情報(Δpn(1)からΔpn(N))の部分セットを考慮して、前記少なくとも一つの対象(16a,16b,16c,18)の少なくとも一つの第1の相対速度(va)と、該第1の相対速度(va)とは異なる、前記少なくとも一つの対象(16a,16b,16c,18)の第2の相対速度(vb)とを決定するよう構成されており、
更に前記評価装置(112)は前記第1の相対速度(va)及び該第1の相対速度(va)とは異なる前記第2の相対速度(vb)を決定する際に、前記部分セットに対応する期間(Δ5)の間に、少なくとも二つの異なる対象(16a,16b)において反射された超音波信号(r(τ))が前記受信装置(14)によって受信されることを識別するよう構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の超音波測定装置。
【請求項8】
車両固有の超音波送信器(13)及び/又は外部の超音波送信器(13)から送出された超音波信号(r(τ)を評価する方法において、
受信した前記超音波信号(r(τ))の周期持続時間(PN1からPN6,PP1からPP6)の時間経過に関する測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)を決定するステップと、
決定された前記測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)を少なくとも一つの基準セット(Δp0(1)からΔp0(N))と比較し、前記測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP1からPP6)の前記少なくとも一つの基準セット(Δp0(1)からΔp0(N))からの偏差に関する比較情報(Δpn(1)からΔpn(N))を決定するステップと、
決定された前記比較情報(Δpn(1)からΔpn(N))を考慮して、超音波送信器(13)から送出された信号形状、及び/又は、受信装置(14)と外部の超音波送信器(13)との間の相対速度、及び/又は、受信装置(14)と車両固有の超音波送信器(13)及び/又は外部の超音波測定装置(13)との間の伝送経路内に存在する少なくとも一つの反射性の対象(16a,16b,16c,16d)の相対速度、及び/又は、前記少なくとも一つの反射性の対象(16a,16b,16c,16d)の形状の特徴的指標に関する情報を決定するステップとを有することを特徴とする、超音波信号(r(τ)を評価する方法。
【請求項9】
測定セット(Δp,Δp(1),Δp(2),f,PN1からPN6,PP8からPP6)として、前記超音波信号(r(τ))の正の周期持続時間(PP1からPP6)のセット、及び/又は、前記超音波信号(r(τ))の負の周期持続時間(PN1からPN6)のセット、及び/又は、基準周期持続時間(P0)からの前記超音波信号(r(τ))の正の周期持続時間偏差(Δp,Δp(1),Δp(2))のセット、及び/又は、基準周期持続時間(P0)からの前記超音波信号(r(τ))の負の周期持続時間偏差のセット、及び/又は、前記超音波信号(r(τ))の周波数(f)のセット、及び/又は、基準周波数(f0)からの前記超音波信号(r(τ))の周波数偏差のセットを決定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
決定された前記比較情報(Δpn(1)からΔpn(N))の部分セットを考慮して、前記少なくとも一つの対象(16a,16b,16c,18)の少なくとも一つの第1の相対速度(va)と、該第1の相対速度(va)とは異なる、前記少なくとも一つの対象(16a,16b,16c,18)の第2の相対速度(vb)とが決定される限り、前記部分セットに対応する期間(Δ5)の間に、少なくとも二つの異なる外部の対象(16a,16b)において反射された超音波信号(r(τ))が受信されることを決定する、請求項8又は9に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B−2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−533741(P2012−533741A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521000(P2012−521000)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060114
【国際公開番号】WO2011/009786
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】