説明

超音波溶着機、超音波溶着システム

【課題】被給電部材と給電部材の摺接する表面を磨耗しにくくし、磨耗した被給電部材と給電部材の磨耗粉が、被給電部材と給電部材が摺接する表面で接触不良を引き起こしにくくした超音波溶着機を提供する。
【解決手段】超音波溶着機100を、回転自在であり、当該回転の回転軸方向に超音波振動を生じさせる超音波振動子10と、超音波振動子10により生じる超音波振動の影響を受けることなく当該超音波振動子10と一体に回転するよう設けられたキャップ13と、超音波振動子10の回転軸上に位置するよう当該キャップ13に設けられ、当該キャップ13と一体に回転しつつ超音波振動子10への電力を伝達する被給電部材15と、この回転軸上にて被給電部材15と当接し、この当接部分から被給電部材15に電力を伝達する給電部材17とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の工具ホーンを超音波振動させながら、プラスチックシートや金属箔などの上を転動させ、これらを連続的に超音波溶着あるいは超音波接合する超音波溶着機(超音波接合機を含む)および超音波溶着システム(超音波接合システムを含む)に関し、特に、超音波発振手段に給電する給電手段の構造を改良した超音波溶着機および超音波溶着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円板状の工具ホーンを超音波振動させながら溶着対象物あるいは接合対象物の上を転動させ、これらを連続的に超音波溶着あるいは超音波接合する超音波溶着機では、超音波発振手段を工具ホーンと一体に設け、この超音波発振手段の外周に円筒状のスリップリングを設け、スリップリングにブラシを摺接させて超音波振動信号と所定の電力を給電していた。
【0003】
図11に、従来の超音波溶着機の断面図を示す。図11において、振動子58への電気系統は次のようになっている。振動子58は導電性の有る覆体61を外嵌装着し、振動子58の負極電極と覆体61とが接続される。覆体61の後端中央には正極振動子端子62を電気絶縁固定し、正極振動子端子62と振動子58の正極端子とが接続される。回転内殻57の後端には電気絶縁材製の回転接続部63がねじで固定される。回転接続部63は、内部に埋設された正極回転端子64と、周面に装着されたスリップリングと称呼される負極・正極環状回転端子65,66と、前面より突出した負極回転端子67と、負極・正極環状回転端子65,66相互を隔てるように周面より突出した電気絶縁材より成る環状の隔壁68とを有する。
【0004】
すなわち、正極回転端子64と正極環状回転端子66とが回転接続部63に埋設された図外の導体により接続され、正極回転端子64の前面が正極振動子端子62に接触する。負極環状回転端子65と負極回転端子67とが回転接続部63に埋設された導体により接続され、負極回転端子67が覆体61の外周面に接触する。回転接続部63と対応する位置において、固定外殻76は電気絶縁材より成る複数の固定接続部79を有する。各固定接続部79は、ブラシと称呼される負極・正極摺接端子80,81と、負極・正極摺接端子80,81を負極・正極環状回転端子65,66側に付勢する導電性材料より成る負極・正極弾性部材82,83と、負極・正極配線端子84,85と、電気絶縁材製のキャップ86,87とを個別に有する。負極摺接端子80が負極弾性部材82により押されて負極環状回転端子65に接触し、正極摺接端子81が正極弾性部材83により押されて正極環状回転端子66に接触する。
【0005】
このように従来の超音波溶着機では、回転接続部63にスリップリングと称呼される負極・正極環状回転端子65,66を設けて、ブラシと称呼される負極・正極摺接端子80,81を摺接させて給電している。
しかし、スリップリングと称呼される負極・正極環状回転端子65,66の表面の周速度は速く、ブラシと称呼される負極・正極摺接端子80,81の摺接速度は速いため、摺接する表面が磨耗する。そして、磨耗したスリップリングとブラシの磨耗粉は、摺接する表面に付着して、スリップリングとブラシの接触状態を悪くしていた。
【0006】
また上記従来の超音波溶着機のように、ブラシを用いた超音波溶着機は、超音波発振手段の外周に円筒状の電極を設けているため、給電部の構造が複雑で、摺接する表面部分の状態を点検したり、分解して清掃したりするのに手間がかかるだけでなく、装置が大型化するという欠点があった(例えば特許文献1参照)。
大型化した超音波溶着機は溶着対象物の上を移動させるには不向きなため、超音波溶着機を所定位置に固定して、例えばロール状をした溶着対象物を展開してシート状にしたものを円板状の工具ホーンの下を通して一定方向に移動させて溶着あるいは接合する方法が取られていた。そのため、例えばロール状をした溶着対象物を溶着する際に、ロール状の原反の残量が少なくなり、新しいロール状の原反をつなぐときだけ、超音波溶着機の向きを変えて原反を溶着する接続作業に転用するようなことはできなかった(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−229265号公報
【特許文献2】特開2002−134093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、給電構造を工夫することにより、被給電部材と給電部材との摺接速度を遅くして、被給電部材と給電部材が摺接する表面を磨耗しにくくする。そして、被給電部材と給電部材の摺接する表面で磨耗粉を生じなくして、被給電部材と給電部材の摺接する表面の接触不良を引き起こしにくくした超音波溶着機を提供することを第一の課題としている。
また、本発明は、給電構造を工夫することにより小型・軽量化した超音波溶着機を提供することを第二の課題としている。
【0009】
また、本発明の小型・軽量化した超音波溶着機にガイド手段を取り付け、この小型・軽量化した超音波溶着機をガイドレールに沿って移動させることにより、超音波溶着機等のガイドレールに沿った移動動作を利用した超音波溶着を行う超音波溶着システムを提供することを第三の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の超音波溶着機は、回転自在であり、当該回転の回転軸方向に超音波振動を生じさせる超音波振動手段と、前記超音波振動手段により生じる超音波振動の影響を受けることなく、当該超音波振動手段と一体に回転するよう設けられたキャップ部材と、前記超音波振動手段の回転軸上に位置するよう前記キャップ部材に設けられ、当該キャップ部材と一体に回転しつつ前記超音波振動手段への電力を伝達する被給電部材と、前記回転軸上にて前記被給電部材と当接し、当該当接部分から前記被給電部材へ電力を伝達する給電部材とを備えた構成としている(請求項1)。
【0011】
このように回転軸上にて被給電部材と給電部材を配置して互いに当接させた構成により、被給電部材と給電部材との摺接速度を遅くして、被給電部材と給電部材の摺接する表面を磨耗しにくくする。そして、被給電部材と給電部材の摺接する表面で磨耗粉を生じにくくして、被給電部材と給電部材の摺接する表面の接触不良を引き起こしにくくしている。
またこの構成により、従来のように超音波発振手段の外周に円筒状の電極を設ける等の複雑な構成にすることなく、回転軸上の一点で接触させるだけの簡単な構造で超音波信号と所定の電力を超音波振動手段に給電することができ、全体として小型・軽量化した超音波溶着機を実現している。
【0012】
また、好ましくは、前記超音波振動手段には、対象物上を転動しつつ当該対象物に超音波を伝達する円板型の工具ホーンを設ける(請求項2)。前記キャップ部材には、前記超音波振動手段との間に当該キャップ部材と超音波振動手段との間の相対運動を吸収するクッション部材を介装する(請求項3)。さらに、前記給電部材を前記回転軸方向に移動可能に設け、前記給電部材を前記回転軸方向に沿って前記被給電部材側に押圧する押圧手段を備える(請求項4)。また、前記被給電部材を半球状とし、球面を前記給電部材と当接させる(請求項5)。さらに、前記給電部材を球状とし、球面を前記被給電部材と当接させる(請求項6)。
【0013】
さらに、本発明の超音波溶着システムは、上記の超音波溶着機に加えて、前記超音波溶着機に装着するガイド手段と、前記ガイド手段を案内するガイドレールとを備えた構成としている(請求項7)。また、好ましくは、前記対象物は一方向に移動するものであり、前記ガイドレールは、一方が前記対象物の移動方向と平行に延び、他方が前記対象物の移動方向と交差するよう延びた略L字状の案内経路を形成している(請求項8)。
【0014】
これらの構成により、超音波溶着機をガイドレールに沿った軌跡で移動させ、超音波溶着機等のガイドレールに沿った移動動作を利用した超音波溶着を行う超音波溶着システムを実現している。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、回転軸の軸心に被給電部材と給電部材を配置して互いに当接させた給電構造とすることにより、被給電部材と給電部材との摺接速度を遅くして、被給電部材と給電部材の摺接する表面を磨耗しにくくすることができる。これにより被給電部材と給電部材の摺接する表面で磨耗粉が生じにくくなり、被給電部材と給電部材の摺接する表面の接触不良を引き起こしにくくした超音波溶着機を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、回転軸上の一点で接触させるだけの給電構造とすることにより、全体として小型・軽量化した超音波溶着機を提供することができる。
さらに、本発明の超音波溶着システムは、小型・軽量化した超音波溶着機にガイド手段を取り付け、超音波溶着機をガイドレールに沿って移動できるようにして、超音波溶着機等のガイドレールに沿った移動動作を利用した超音波溶着をする超音波溶着システムを実現している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の断面図。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の分解斜視図。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機を用いた溶着作業状態を示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機を用いた溶着作業状態を示す斜視図。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の給電側の部品を取り外したときの断面図。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムを用いた溶着作業状態を示す斜視図。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムに用いる超音波溶着機の断面図。
【図8】本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムを用いた溶着作業状態を示す平面図。
【図9】本発明の実施の形態3にかかる超音波溶着機の断面図。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる超音波溶着機の断面図。
【図11】従来の給電ブラシ方式の超音波溶着機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、図面とともに本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機100の断面図を示す。なお、以下の説明では、図1に合わせて超音波溶着機の先端側を左側、根元側を右側として表記する。本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機100は、円板型の工具ホーン1を支持フレームである門型フレーム2の両側壁の間に入れて、工具ホーン1の中心に左側回転軸3、右側回転軸4を両側から圧入して回転自在に支持している。
【0019】
すなわち、図1に示したように、凹部を有する円筒状(有底円筒状)の左ハウジング6と、左ハウジング6に圧入したベアリング5と、ベアリング5に圧入した左側回転軸3が、門型フレーム2と一体に設ける左側の回転支持手段を構成しており、左側回転軸3を門型フレーム2の左側の側壁に回転自在に支持している。
【0020】
また、導電性のカラー8とベアリング7を圧入した中空円筒状の右ハウジング9が門型フレーム2と一体に設ける右側の回転支持手段を構成しており、超音波振動手段である超音波振動子10とホーン11に一体的に設けられる右側回転軸4を門型フレーム2の右側の側壁に回転自在に支持する。
図示しない超音波振動駆動手段から、超音波振動信号と所定の電力を超音波振動子10に供給すると、超音波振動子10が振動し、それによってホーン11が、例えば15kHzから60kHzの周波数で、軸方向に数ミクロンメートルから数十ミクロンメートルの振幅で超音波振動する。図1の工具ホーン1は、軸方向の超音波振動を半径方向の超音波振動に変換する振動方向変換タイプであり、ホーン11から供給される軸方向の数ミクロンメートルの超音波振動を半径方向の超音波振動に変換する。そのため、工具ホーン1の外周面1aは、半径方向に拡大と縮小を繰り返す超音波振動をする。この工具ホーン1の外周面1aを、後述する図3のように重ねられた複数枚のプラスチック部材28、29の表面に押圧しつつ転動すると、プラスチック部材28、29の該当部分は、加えられた超音波振動エネルギーにより発熱し、溶融し、その後冷却して一体に溶着する。
【0021】
本発明の超音波溶着機では、図示しない超音波振動駆動手段から超音波振動信号と所定の電力を超音波振動子10に供給するために、簡易な構造の給電手段を設けている。以下、本発明の給電手段を説明する。図1に示したように、本発明の給電手段は、まず、超音波振動子10の外周にキャップ13を嵌合している。キャップ13は、図面左側の片面に凹部を形成し、図面右側を中実の壁にして、壁の図面右側の軸心部分にボス部を設け、ボス部に雌ネジをきった形状にしている。キャップ13の材質は、ベークライトなどの絶縁体で作っている。キャップ13は、超音波振動子10が超音波振動しても、振動しない節に被せることにしているため、キャップ13と超音波振動子10は相対的に動かない。なお、キャップ13の凹部には紙などの材質で出来たクッション材12を入れているが、クッション材12は、何らかの理由でわずかな相対運動が生じた場合にその動きを吸収する機能を果し、キャップ13と超音波振動子10の間で無用の振動や異音が起きないようにしている。
【0022】
キャップ13右側のボス部端面には、半径方向一側に延びた銅板製の第一の給電板14を、導電性の材料で作られ半球状の摺動面をもつ頭部と雄ネジ部を形成した被給電部材15でネジ止めしている。第一の給電板14の端部には、第一の給電用リード線16を接続し、第一の給電用リード線16の他端を超音波振動子10に接続している。なお、被給電部材15の軸心は、一体に回転する超音波振動子10、ホーン11、右側回転軸4、工具ホーン1、左側回転軸3などの軸心と一致するようにしている。そのため、これら超音波振動子10、ホーン11、右側回転軸4、工具ホーン1、左側回転軸3などが一体に回転しても芯振れすることはない。
【0023】
被給電部材15の半球状の摺動面をもつ頭部には、導電性の材料で作られ半球状の摺動面をもつ頭部と雄ネジ部を形成した給電部材17を当接させている。給電部材17は、段付き円柱状のスライド軸19の左側端面に、半径方向一側に延びた銅板製の第二の給電板18をネジ止めしている。第二の給電板18の端部には、第二の給電用リード線22を接続している。なお、第二の給電用リード線22は、スライド保持部20に設けた貫通孔を通ってコネクタ26に接続している。
【0024】
スライド軸19は、先に説明した円筒状の右ハウジング9の右端に嵌合せて取り付けているスライド保持部20の孔に沿って、軸方向にスライドする。なお、図示していないが、スライド軸19とスライド保持部20の間には、軸方向にキーとキー溝のような回転規制手段を設けて、スライド軸19の動きを軸方向にのみスライドするように規制している。スライド保持部20の孔周縁とスライド軸19の間には、圧縮バネ21を入れている。この圧縮バネ21のバネ力によって、スライド軸19はスライド保持部20の孔に沿って図面左側に付勢され、給電部材17の半球状の摺動面をもつ頭部と、被給電部材15の半球状の摺動面をもつ頭部が互いに押圧されて接触する。コネクタ26からは、第三の給電用リード線23が出ており、第三の給電用リード線23は右側ハウジング9に固定ネジ25によって固定した第三の給電板24に接続している。
【0025】
図示しない超音波振動駆動手段からの、超音波振動信号と所定の電力は、コネクタ26に入り、第二の給電用リード線22から第二の給電板18、給電部材17の頭部から被給電部材15の頭部に流れ、第一の給電板14から第一の給電用リード線16により超音波振動子10に給電される。
第三の給電用リード線23は、アース線であり、超音波振動子10、ホーン11、右側回転軸4、工具ホーン1、左側回転軸3をカラー8、ベアリング7、右側ハウジング9、第三の給電板24を経由してアースに落とす役割をしている。
【0026】
被給電部材15は超音波振動子10、ホーン11、右側回転軸4、工具ホーン1、左側回転軸3などと一体に回転するが、給電部材17は軸方向にスライドするのみで回転しない。被給電部材15の軸心は芯振れしないため、被給電部材15と給電部材17のそれぞれの頭部が接する給電点における両者の摺動速度は、点接触であるため、ほとんどゼロである。このことにより、給電点の接触部分は磨耗しにくくなっている。被給電部材15と給電部材17の材質、形状については、磨耗しにくい組み合わせにして、導電性グリースなどを塗布しておく。そのため、本発明では磨耗粉が発生しない。仮に磨耗粉が発生したとしても少ないため、給電点は清浄で、接触不良が起きる頻度は少ない。参考までに、図2に本発明の超音波溶着機の分解斜視図を示す。図2では、コネクタ26の記載を省略した他は、図1と同じ部分に同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機を用いた溶着作業状態を示す断面図である。図3では、工具ホーン1の外周面1aを、アンビル27の上に重ねて載置した複数枚のプラスチック部材28、29の表面を押圧しつつ転動させている状態を示している。プラスチック部材28、29は工具ホーン1の外周面1aで押圧された状態で超音波振動の振動エネルギーを受け、発熱して溶融し、その後冷却されて一体に溶着される。
【0028】
なお、工具ホーン1には、軸方向の超音波振動を外周面1aでも軸方向に振動する振動方向の変換をしないタイプのものを用いても良い。この場合、工具ホーン1が軸方向に振動しつつ転動して溶着対象物の表面に接するため、金属箔を超音波振動で接合する超音波接合に用いることができる。
図4は、本発明の超音波溶着機100a、100bを配置して、アンビル27上に重ねて載置した複数のプラスチック部材28、29を溶着している状態を斜視図で示している。一対の超音波溶着機100a、100bを所定位置に固定し、アンビル27の上に重ねて載置した複数のプラスチック部材28、29を、超音波振動している工具ホーン1で押圧している状態で、複数のプラスチック部材28、29をA1矢印方向に送り、A2矢印のように引っ張ると、本発明の一対の超音波溶着機100a、100bの工具ホーンからの超音波振動により押圧していた部分が溶着されてA2矢印のように送られていく。なお、アンビル27には超音波溶着時の発熱が蓄積されるので、図示しない冷却パイプなどで冷却する。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる超音波溶着機の給電側の部材を取り外した状態を示す。図5では、門型フレーム2の右側に設けてある右ハウジング9から固定ビス25を外した後、右ハウジング9からスライドホルダー20を取り外した状態を示している。図5のように、右ハウジング9からスライドホルダー20を取り外すと給電部材17が露出する。
【0030】
このように、右ハウジング9からスライドホルダー20を取り外すだけで、給電部材17の給電点の状態を目視点検することが出来るので、磨耗粉の発生の有無を確認することができる。磨耗粉が生じていなければ、そのまま再組立すればよく、磨耗粉が生じていれば、右ハウジング9からスライドホルダー20を取り外した状態で清掃する等、メンテナンス作業を簡単に行うことができる。また、被給電部材15と給電部材17は着脱自在にネジ固定しているため、必要により簡単に古い被給電部材15や給電部材17を取り外して新しい被給電部材や給電部材に交換することができる。
【0031】
以上説明したように、本発明は、超音波振動子10の回転軸の軸心に被給電部材と給電部材を配置して互いに当接させた給電構造としたことにより、回転する被給電部材と非回転の給電部材との摺接速度を遅くして、被給電部材と給電部材の摺接する表面を磨耗しにくくすることができる。これにより被給電部材と給電部材の摺接する表面で磨耗粉を生じにくくし、被給電部材と給電部材の摺接する表面の接触不良を引き起こしにくくしている。また、本発明は、給電構造を工夫したことにより、全体として小型・軽量化した超音波溶着機を実現している。
【0032】
なお上記では、被給電部材15と給電部材17の両方の頭部を半球状の摺動面を有する頭部とした実施の形態を説明したが、被給電部材15の頭部か給電部材17の頭部のいずれか一方を半球状の摺動面をもつ頭部とし、他方を平面あるいは平面に近い曲面等、任意の曲面を有する頭部として構成しても良い。被給電部材15と給電部材17の両方の頭部を半球状の摺動面として当接させる場合に比べて、他方を平面あるいは曲面を有する頭部とすれば、点接触を成立させつつ被給電部材15の頭部と給電部材17の頭部の軸心を一致させることを考慮する必要が無い。
【0033】
また、上記ではプラスチック部材28、29を溶着する場合を説明したが、本発明は、重ねあわせた不織布やプラスチックシート等の溶着対象物を超音波溶着する場合に適用することができる他、重ねあわせた金属箔を溶着接合する場合に適用することができる。
【0034】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本発明の実施の形態2では、本発明の実施の形態1で説明した、小型・軽量化した超音波溶着機100aの上方に、走行ローラを内蔵させたガイド手段36を取り付け、ガイド手段36にガイドレール37を通して、本発明の超音波溶着機100aをガイドレール37に沿って移動できるようにした超音波溶着システムとして構成している。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムによる溶着作業状態を示す斜視図である。本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムでは、一対の超音波溶着機100a、100bの一方の超音波溶着機100aにガイド手段36を取り付け、このガイド手段36を使って、超音波溶着機100aをガイドレール37に沿って、手動あるいは図示しないモータ駆動手段により移動させることができる。当該ガイドレール37は一方が溶着対象物の移動方向と平行に延び、他方が当該移動方向と交差するよう形成された略L字状をなしている。
【0036】
例えば、一対の超音波溶着機100a、100bで超音波溶着した不織布などの原反の量が少なくなると、一旦、原反33の送りを止めて超音波溶着作業を止める。そして、古い原反33の上に新しい原反34を重ね、一方の超音波溶着機100aをガイドレール37に沿って、B1矢印、B2矢印のように移動し、超音波溶着機100aの工具ホーン1の向きを90度回転させる。そして、超音波溶着機100aへ超音波振動信号と所定電力を供給して、工具ホーン1を超音波振動させながら、B3矢印、つまり原反33、34の走行方向と直交する方向に移動する。このことにより、原反33、34を重ねた部分35を超音波溶着する。そして、超音波溶着機100aへの超音波振動信号と所定電力の供給を停止し、逆方向のC1、C2、C3矢印のように超音波溶着機100aを元の位置に戻す。そして、新旧の原反33、34を送り、超音波溶着機100a、100bに超音波振動信号と所定電力を再び供給して新しい原反34の超音波溶着を再開する。
【0037】
図7は、本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着機100aの断面図である。ガイド手段36には、ガイドレール37の上面を走行するローラ38aと、ガイドレール37の側面を走行するローラ38b、38cが、それぞれ回転軸39a、39b、39cにより回転自在に支持されている。
図8は、本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムを用いた溶着作業状態を示す平面図である。本発明の実施の形態2にかかる超音波溶着システムの一対の超音波溶着機100a、100bの内、一方の超音波溶着機100aにガイド手段36を取り付け、超音波溶着機100aをガイドレール37に沿って、B1矢印、B2矢印のように移動し、超音波溶着機100aの向きを90度回転させる。そして、超音波溶着機100aへの超音波振動信号と所定電力を供給して、工具ホーン1を超音波振動させながら、B3矢印、つまり原反33、34の走行方向と直交する方向に移動する。このことにより、重ねた原反33、34の重ねた部分35を押圧して、両者を超音波溶着する。そして、超音波溶着機100aへの超音波振動信号と所定電力の供給を停止し、それまでと逆方向のC1、C2、C3矢印のように、超音波溶着機100aを元の位置に戻す。このことは、既に図6で説明した通りである。このように、ガイド手段36により、超音波溶着機100aガイドレール37に沿って、手動あるいは図示しないモータ駆動手段を用いて移動させることにより、容易に新旧の原反33、34をつなぐことができる。
【0038】
以上説明したとおり、本発明の小型・軽量化した超音波溶着機にガイド手段を取り付け、ガイドレールに沿って移動させることにより、ガイドレールに沿った軌跡で超音波溶着ができる。
その他、必要によりガイドレールの形状を変え、ロール状の溶着対象物を円板状の工具ホーンの下を通して一定方向に移動する動作と、超音波溶着機等のガイドレールに沿った移動動作を組み合わせて利用することにより、任意の曲線状の溶着を行うこともできる。
【0039】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1、2では、門型フレーム2で円板型の軸方向両側から工具ホーン1を回転自在に支えた、いわゆる両持ち支持タイプの超音波溶着機での実施の形態を示したが、本発明の実施の形態3として、いわゆる片持ち支持タイプの超音波溶着機における実施の形態を示す。
【0040】
図9で、工具ホーン41は、回転軸44で支えられ、回転軸44は導電性のカラー48とベアリング5、7を圧入し、蓋47を嵌めた中空円筒状のハウジング49で支持され、ハウジング49は支持フレーム42に嵌合している。回転軸44が、超音波振動子10および超音波振動するホーン11に一体的に構成されていることと給電手段の基本的な構造は、既に説明した実施の形態1、2と同じであり、同じ部分には、同じ符号をつけて説明を省略する。
【0041】
図示しない超音波振動駆動手段から、超音波振動信号と所定の電力を超音波振動子10に供給すると、超音波振動子10が振動し、それによってホーン11が、例えば15kHzから60kHzの周波数で、図面の水平方向に数ミクロンメートルの振幅で超音波振動することは、既に説明した実施の形態1、2と同じである。
ハウジング49からスライドホルダー20を外して、被給電部材15と給電部材17の接点の状態を簡単に確認でき、清掃等のメンテナンス作業、被給電部材15と給電部材17の交換作業等を簡単に行うことができる点は、いわゆる両持ち支持タイプの超音波溶着機と同じである。
【0042】
詳しい説明は省略するが、このように、本発明は、いわゆる両持ち支持タイプの超音波溶着機でない、片持ち支持タイプの超音波溶着機にも適用することができる。
【0043】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。既に説明した実施の形態1、2、3では、被給電部材15と給電部材17を半球状の摺動面をもつ頭部と雄ネジ部を形成した導電部材と説明したが、実施の形態4の超音波溶着機110では、被給電部材50と給電部材51を頭部に凹部を設け、この凹部で導電性の球体50a、51aをそれぞれ回転自在に支持して、半球状の当接面をもつ頭部と雄ネジ部を形成した点に特徴がある。
【0044】
図10では、被給電部材50と給電部材51の頭部に凹部を設け、この凹部に導電性の球体50a、51aをそれぞれ回転自在に支持して、球体50a、51aを当接させて給電している。なお、給電手段の基本的な構造は、既に説明した実施の形態1から3と同じであり、同じ部分には、同じ符号をつけているのでその他の部分の説明は省略する。
実施の形態4では、球体50a、51aを当接させて転動させているため、摺動により磨耗することがないという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、重ねあわせた不織布やプラスチックシート等の溶着対象物を超音波溶着する場合に適用することができる他、重ねあわせた金属箔を溶着接合する場合に適用することができる。
特に、小型・軽量化した超音波溶着機にガイド手段とガイドレールを加えて用いることにより、例えばロール状の材料を溶着する場合に、工具ホーンの向きを変えて、新旧の原反を接合する場合の他、任意の曲線状の溶着をするなど、超音波溶着機等のガイドレールに沿った移動動作を利用した超音波溶着をする場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 工具ホーン
2 門型フレーム
3 左側回転軸
4 右側回転軸
5、7 ベアリング
6 左ハウジング
8 カラー
9 右ハウジング
10 超音波振動子
11 ホーン
12 クッション材
13 キャップ
14 第一の給電用板
15 被給電部材
16 第一の給電用リード線
17 給電部材
18 第二の給電用板
19 スライド軸
20 スライドホルダー
21 圧縮バネ
22 第二の給電用リード線
23 第三の給電用リード線
24 第三の給電用板
25 固定ネジ
26 コネクタ
27 アンビル
28、29 プラスチック部材(溶着対象物)
51 ガイド手段
52 ガイドレール
55a、57a 球体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在であり、当該回転の回転軸方向に超音波振動を生じさせる超音波振動手段と、
前記超音波振動手段により生じる超音波振動の影響を受けることなく、当該超音波振動手段と一体に回転するよう設けられたキャップ部材と、
前記超音波振動手段の回転軸上に位置するよう前記キャップ部材に設けられ、当該キャップ部材と一体に回転しつつ前記超音波振動手段への電力を伝達する被給電部材と、
前記回転軸上にて前記被給電部材と当接し、当該当接部分から前記被給電部材へ電力を伝達する給電部材と、
を備えたことを特徴とする超音波溶着機。
【請求項2】
前記超音波振動手段には、対象物上を転動しつつ当該対象物に超音波を伝達する円板型の工具ホーンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の超音波溶着機。
【請求項3】
前記キャップ部材には、前記超音波振動手段との間に当該キャップ部材と超音波振動手段との間の相対運動を吸収するクッション部材が介装されて設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の超音波溶着機。
【請求項4】
前記給電部材は前記回転軸方向に移動可能に設けられており、
前記給電部材を前記回転軸方向に沿って前記被給電部材側に押圧する押圧手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の超音波溶着機。
【請求項5】
前記被給電部材は半球状をなしており、球面が前記給電部材と当接することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の超音波溶着機。
【請求項6】
前記給電部材は半球状をなしており、球面が前記被給電部材と当接することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超音波溶着機。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれかに記載の超音波溶着機と、
前記超音波溶着機に装着するガイド手段と、
前記ガイド手段を案内するガイドレールと、
を備えたことを特徴とする超音波溶着システム。
【請求項8】
前記対象物は一方向に移動するものであり、
前記ガイドレールは、一方が前記対象物の移動方向と平行に延び、他方が前記対象物の移動方向と交差するよう延びた略L字状の案内経路を形成していることを特徴とする請求項7記載の超音波溶着システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−194454(P2011−194454A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66170(P2010−66170)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000195649)精電舎電子工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】