説明

超音波用探触子

【課題】フレキシブル配線基板から振動子の電極が剥がれる断線等の事故を防止することができる構造を有する超音波用探触子を提供する。
【解決手段】この超音波用探触子は、(a)所定の配列で配置されている複数の圧電体と、複数の圧電体の第1の面に形成された少なくとも1つの共通電極と、複数の圧電体の第2の面にそれぞれ形成された複数の信号電極とを含む振動子アレイと、(b)少なくとも1つの共通電極上に形成され、圧電体よりも小さい音響インピーダンスを有する音響整合層と、(c)複数の信号電極にそれぞれ接合される複数のランドを有し、複数の信号電極間において応力を緩衝するためのたわみ部が形成されるように複数の信号電極に固定されたフレキシブル基板と、(d)フレキシブル基板上に固定されたバッキング層とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用や構造物探傷用の超音波撮像装置において用いられ、超音波を送信及び/又は受信する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波を送信及び/又は受信する超音波トランスデューサとして、圧電セラミック等の圧電体の両端に電極を形成した振動子が一般的に用いられている。そのような振動子の電極に電圧を印加すると、圧電効果により圧電体が伸縮して超音波を発生する。さらに、複数の振動子を1次元又は2次元状に配列し、所定の遅延を与えた複数の駆動信号によって駆動することにより、超音波ビームを所望の方向に向けて形成することができる。一方、それぞれの振動子は、超音波を受信することによって伸縮して電気信号を発生する。
【0003】
一般に、超音波用探触子は、上記のような複数の振動子と、それらの振動子と被検体との間で音響インピーダンスを整合させる音響整合層と、不要な超音波を減衰させるバッキング材とを主な構成要素としている。また、それらの構成要素の他にも、超音波診断装置本体から複数の振動子に駆動信号を供給し、また、受信した超音波に基づいて生成される受信信号を複数の振動子から超音波診断装置本体に出力するための配線が、それらの振動子の電極に接続されている。
【0004】
近年においては、超音波用探触子の小型化が進んでいることもあり、振動子の電極に接続される配線として、優れた電気特性と可撓性を有するフレキシブル配線基板が用いられることが多い。フレキシブル配線基板の材料として一般的に用いられるポリイミド材は、振動子と比較して熱膨張係数が大きいので、フレキシブル配線基板は、その周囲温度によって膨張又は収縮し、振動子の電極との接合において問題を生じる。
【0005】
例えば、フレキシブル配線基板を振動子の電極に半田ペースト等によって接合する場合を考える。接合の際には、半田ペースト等の溶融のために、フレキシブル配線基板の周囲温度が上昇するので、フレキシブル配線基板は膨張する。次に、接合が完了すると、周囲温度は低下するので、フレキシブル配線基板は収縮しようとする。しかしながら、フレキシブル配線基板と振動子の電極とが半田によって固定されているので、フレキシブル配線基板は十分に収縮することができず、残留応力(収縮応力)が発生する。
【0006】
複数の振動子を含む振動子アレイにおいて、1つの振動子の両側に他の振動子が位置している場合には、両側から加えられる残留応力は均衡しているが、振動子アレイの端部に位置する振動子の場合には、残留応力が片側に集中する。従って、その残留応力の不均衡が原因となり、経時変化によって、振動子の電極とフレキシブル配線基板とが位置ずれを起こすことが考えられる。また、そのような位置ずれは、フレキシブル配線基板から振動子の電極が剥がれる原因となり、断線等の事故を引き起こしてしまう。
【0007】
そのような問題は、フレキシブル配線基板を振動子の電極に接合する場合のみでなく、超音波用探触子が通常に使用される場合においても考えられる。例えば、振動子を駆動する際の発熱によるフレキシブル配線基板の膨張と、振動子の駆動を停止した際の温度低下によるフレキシブル配線基板の収縮とによって、振動子の電極とフレキシブル配線基板とが位置ずれを起こすことが考えられる。そのような問題に対処するために、様々な技術が開発されている。
【0008】
関連する技術として、下記の特許文献1には、両面に電極を有する多数個の超音波振動素子を超音波吸収体上に配列してなる超音波用探触子の各素子の電極と、フレキシブル印刷配線板との電極接続において、フレキシブル印刷配線板が分割されていることを特徴とする超音波用探触子の電極接続方法が開示されている。この電極接続方法によれば、フレキシブル印刷配線板に切断溝が形成されているため、フレキシブル印刷配線板の収縮応力による断線は起こらないと記載されている。しかしながら、切断溝が形成されたフレキシブル印刷配線板を振動素子と接続する際に、位置ずれが発生し易くなる。また、超音波用探触子を使用する際に、フレキシブル印刷配線板に形成された切断溝から破断が生じ易くなることも考えられる。
【特許文献1】特開昭58−202867号公報(第1、2頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、フレキシブル配線基板から振動子の電極が剥がれる断線等の事故を防止することができる構造を有する超音波用探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波用探触子は、(a)所定の配列で配置されている複数の圧電体と、複数の圧電体の第1の面に形成された少なくとも1つの共通電極と、複数の圧電体の第2の面にそれぞれ形成された複数の信号電極とを含む振動子アレイと、(b)少なくとも1つの共通電極上に形成され、圧電体よりも小さい音響インピーダンスを有する音響整合層と、(c)複数の信号電極にそれぞれ接合される複数のランドを有し、複数の信号電極間において応力を緩衝するためのたわみ部が形成されるように複数の信号電極に固定されたフレキシブル基板と、(d)フレキシブル基板上に固定されたバッキング層とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の信号電極間において応力を緩衝するためのたわみ部をフレキシブル基板に形成することにより、フレキシブル配線基板から信号電極が剥がれる断線等の事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。図1Aに示すように、超音波用探触子は、圧電効果により伸縮して超音波を発生する複数の圧電体11と、それらの圧電体11に圧電効果を発生させるための電圧が印加される少なくとも1つの共通電極12及び複数の信号電極13と、超音波の伝播効率を高めるための音響整合層14と、圧電体11から発生した不要な超音波を減衰させるバッキング材15とを含んでいる。
【0013】
圧電体11と、その両面に形成された共通電極12及び信号電極13とによって、振動子16が構成される。振動子16は、X軸方向の幅が10μm程度でありY軸方向の長さが1000μm程度である柱状の形状を有している。本実施形態においては、複数の振動子16が、1次元又は2次元状にアレイ化される。
【0014】
ここで、圧電体11の材料としては、圧電セラミックが用いられる。圧電セラミックは、電気・機械エネルギー変換能力が高いので、体内の深部まで到達可能な強力な超音波を発生することができ、また、受信感度も高い。具体的な材料として、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(Ti,Zr)O)や、同様のペロブスカイト系結晶構造を有する変成組成の材料や、一般にリラクサ系材料と呼ばれている材料等を用いることができる。
【0015】
圧電体11の材料として圧電セラミックを用いる場合には、振動子16の音響インピーダンスと被検体(人体等)との音響インピーダンスとの間に大きな差があるので、振動子16と人体との間に、それらの中間の音響インピーダンスを有する音響整合層14を設けることにより、音響インピーダンスの整合を図って、超音波の伝播効率を上げることが必要となる。さらに、音響整合層14を多層構造としても良く、層の数を多くする程、超音波の伝播効率が良くなるが、製造上の観点から2層構造又は3層構造とすることが多い。
【0016】
音響整合層14の材料としては、例えば、石英ガラスや、有機材料(エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂等)に、高い音響インピーダンスを有する材料粉末(タングステン、フェライト紛等)を混ぜ合わせた材料が用いられる。また、バッキング材15の材料としては、音響減衰の大きいエポキシ樹脂やゴム等が用いられる。さらに、超音波用探触子は、音響整合層14上に、超音波を集束させるための音響レンズを含んでいても良い。
【0017】
本実施形態においては、共通電極12が、フレキシブル配線基板(以下、「FPC基板」ともいう)17に設けられた少なくとも1つの基板端子(ランド)に接合され、FPC基板17に設けられた配線パターンを介して、信号伝送用の複数の同軸ケーブルのアース側に接続されて、超音波診断装置本体の接地電位に接続される。
【0018】
また、複数の信号電極13が、FPC基板18に設けられた複数のランドにそれぞれ接合され、FPC基板18に設けられた複数の配線パターンを介して、信号伝送用の複数の同軸ケーブルのホット側に接続されて、超音波診断装置本体内の回路に接続される。なお、FPC基板17及び18の裏面は、バッキング材15に接着されている。FPC基板17及び18のランドは、導電ペースト(例えば、銀ペースト)や半田のような機能性接合材料を用いて、共通電極12及び信号電極13にそれぞれ接合される。
【0019】
図1Bは、図1Aに示す超音波用探触子をX軸方向に切断してY軸方向から見た断面図である。本実施形態においては、FPC基板18の材料として用いられているポリイミドの可撓性を利用することにより、図1Bに示すように、複数の信号電極間において、FPC基板18に、波形の形状を有するたわみ部が形成されている。このたわみ部は、FPC基板18を複数箇所において折り曲げることにより形成される。なお、図1A及び図1Bにおいては、複数の信号電極間において1つの波形の形状が形成されているが、複数の波形の形状が形成されていても良い。
【0020】
ここで、本実施形態に係る超音波用探触子の製造方法について説明する。
図2は、図1に示す超音波用探触子の製造方法を説明するための図である。まず、所望の波形の形状を有する凹凸部が形成された金型プレス機を用いて、FPC基板18を複数箇所において折り曲げることにより、FPC基板18に波形の形状を形成する(a)。また、圧電体11上に複数の信号電極13を形成し、ダイシング法等によって圧電体11の厚さの半分程まで溝を形成する。次に、電気炉又はホットプレート等を用いて、複数の信号電極13を半田によってFPC基板18の複数のランドに接合する(b)。さらに、ダイシング法等によって、圧電体11に溝を形成し、既に形成した溝と合わせて貫通溝とする。
【0021】
FPC基板18の裏面に、バッキング材15を接着剤等によって接着する(c)。次に、少なくとも1つの共通電極12が形成された音響整合層14を、接着剤等によって圧電体11上に接着する(d)。また、共通電極12を半田によってFPC基板17(図1)の少なくとも1つのランドに接合する。さらに、FPC基板18に機械的又は熱的な加工を施すことによって、FPC基板18をバッキング材15に沿って折り曲げることにより、超音波用探触子の後方に引き回す。その後、超音波診断装置との接続用の複数の同軸ケーブルのアース側の線を半田によってFPC基板17に接合すると共に、それらの同軸ケーブルのホット側の線を半田によってFPC基板18に接合し、全体をハウジングに収納して、超音波用探触子が完成する。
【0022】
図2に示す製造工程は、本実施形態に係る超音波用探触子の製造工程の一例であって、本発明は、これに限定されるものではない。なお、超音波用探触子を構成する圧電体等の部材同士を接合していく順番は、高い接合温度を必要とする部材同士の接合から始めて、次第に低い接合温度を必要とする部材同士の接合へと進めて行くことが望ましい。
【0023】
再び、図1A及び図1Bを参照しながら説明する。本実施形態において用いられるFPC基板18には、ポリイミド材が用いられていて、ポリイミド材は、振動子16と比較して大きな熱膨張係数を有している。従って、FPC基板18は、振動子16が駆動されて発生する熱等によって周囲の温度が上昇すると膨張し、逆に、周囲の温度が低下すると収縮する。
【0024】
FPC基板18が膨張又は収縮する際には、FPC基板18内において、膨張又は収縮による応力が発生する。もし、FPC基板18が複数の信号電極13A〜13Dに対して分割されている場合には、例えば、信号電極13Bの下部においてFPC基板18が膨張又は収縮する際に発生する応力が、信号電極13A及び13Cの下部に及ぶことはない。しかしながら、FPC基板18を、複数の信号電極13A〜13Dに対して分割された構成とするためには、例えば、1枚のFPC基板18に切断溝を形成することが必要であり、形成した切断溝を起点として亀裂が発生し易くなる等の構造上の問題が生じてしまう。
【0025】
そこで、本実施形態においては、FPC基板18が、複数の信号電極13A〜13Dに対して共通に構成されている。ただし、FPC基板18が単一の平面で複数の信号電極13A〜13Dに接合されると、例えば、信号電極13Bの下部において発生するFPC基板18の膨張又は収縮による応力が、信号電極13A及び13Cの下部に及んでしまう。従って、信号電極13Aの下部において、X軸の正方向の応力とX軸の負方向の応力とが不均衡となり、経時変化によって、信号電極13AとFPC基板18との接合にずれが生じるおそれがある。そのような接合のずれは、信号電極13Aの剥離の原因となり、断線を引き起こしてしまう。
【0026】
また、そのような接合のずれによって、信号電極13Aの下部においてFPC基板18が撓みを生じるようになると、圧電体11と音響整合層14との並びにおいてZ軸からのずれが生じてしまい、超音波の伝播効率が劣化してしまう。さらに、信号電極13AとFPC基板18との接合にずれが生じて信号電極13Aが剥離すると、次に、信号電極13Bの下部において、X軸の正方向の応力とX軸の負方向の応力とが不均衡となって、ずれが伝播してしまう。従って、一旦、信号電極13Aの剥離が発生すると、経時変化によって、信号電極13B、信号電極13C・・・というように、剥離が連鎖的に発生するおそれがある。
【0027】
そこで、本実施形態においては、図1Bに示すように、FPC基板18が、複数の信号電極13間において波形の形状のたわみ部を有しており、そのたわみ部が、スプリングのような緩衝材として機能する。例えば、信号電極13Bの下部においてFPC基板18が膨張したとすると、その膨張による応力は、信号電極13Aと信号電極13Bとの間に形成されたたわみ部と、信号電極13Bと信号電極13Cとの間に形成されたたわみ部とに働き、その結果、たわみ部は、山の部分が高くなるように変形する。
【0028】
逆に、信号電極13Bの下部においてFPC基板18が収縮したとすると、その収縮による応力は、信号電極13Aと信号電極13Bとの間に形成されたたわみ部と、信号電極13Bと信号電極13Cとの間に形成されたたわみ部とに働き、その結果、たわみ部は、山の部分が低くなるように変形する。
【0029】
即ち、図1Bに示すようなたわみ部が形成されている場合には、FPC基板18の膨張・収縮によって発生する応力は、たわみ部の波形の形状を変形することに用いられるので、信号電極13A及び13Cの下部に及ばない。これにより、FPC基板18が複数の信号電極13A〜13Dに対して分割されている場合と同様の効果を実現でき、かつ、FPC基板18に切断溝を形成することがないので、構造上の問題を生じることがない。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3Aは、本発明の第2の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図であり、図3Bは、図3Aに示す超音波用探触子をX軸方向に切断してY軸方向から見た断面図である。図3Aに示すように、本実施形態においては、複数の信号電極間において、FPC基板18に、断面が袋形状(中空の形状)を有するたわみ部が形成されている。それ以外の点に関しては、図1A及び図1Bに示す第1の実施形態と同じである。
【0031】
この袋形状は、例えば、断面が、5μm〜10μmの直径を有する円形に近い輪郭を有している。本実施形態に係る超音波用探触子も、図2に示すのと同様の製造方法によって製造することができる。図2の(a)について説明したように、金型プレス機が用いられて、FPC基板18に袋形状を有するたわみ部が形成される。
【0032】
本実施形態においては、FPC基板18において袋形状を有するたわみ部が、スプリングのような緩衝材として機能する。例えば、図3Bにおいて、信号電極13Bの下部においてFPC基板18が膨張したとすると、その膨張による応力は、信号電極13Aと信号電極13Bとの間に形成されたたわみ部と、信号電極13Bと信号電極13Cとの間に形成されたたわみ部とに働き、その結果、たわみ部の袋形状が、その開口部分が閉じるように変形する。
【0033】
逆に、信号電極13Bの下部においてFPC基板18が収縮したとすると、その収縮による応力は、信号電極13Aと信号電極13Bとの間に形成されたたわみ部と、信号電極13Bと信号電極13Cとの間に形成されたたわみ部とに働き、その結果、たわみ部の袋形状は、その開口部分がさらに開くように変形する。従って、図3Bに示すような袋形状を有するたわみ部が形成されている場合には、信号電極13Bに下部において発生した応力が、袋形状を変形することに用いられるので、信号電極13A及び13Cの下部に及ばない。このようにして、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を実現できる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図4Aは、本発明の第3の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図であり、図4Bは、図4Aに示す超音波用探触子を点I、J、Kを含む平面で切断し、FPC基板と信号電極のみを示す斜視図である。図4Bに示すように、本実施形態においては、複数の信号電極間において、FPC基板18に、複数の孔が形成されたたわみ部が形成されている。それ以外の点に関しては、図1A及び図1Bに示す第1の実施形態と同じである。
【0035】
FPC基板18には、複数の信号電極13間において、図1A及び図1Bに示すのと同様の波形の形状を有するたわみ部が形成されているが、その形状は、複数の孔が形成されることによって網目形状となっている。本実施形態に係る超音波用探触子も、図2に示すのと同様の製造方法によって製造することができるが、金型プレス機の他にパンチプレス機器が用いられて、FPC基板18に複数の孔が形成される。なお、図4A及び図4Bにおいては、複数の信号電極間において1つの波形の形状が形成されているが、複数の波形の形状が形成されていても良い。
【0036】
本実施形態によれば、FPC基板18に形成されているたわみ部が、複数の孔が形成された網目形状を有しているので、図1A及び図1Bに示す第1の実施形態と比較して、応力に対する変形の度合いが大きくなる。即ち、網目形状を構成する複数の孔が変形することによって、変形の度合いが高まるので、緩衝機能の効果を大きくすることができる。
【0037】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第4の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。図5に示すように、本実施形態においては、複数の信号電極間において、音響整合層14及び共通電極12に、波形の形状を有するたわみ部が形成されている。それ以外の点に関しては、図1A及び図1Bに示す第1の実施形態と同じである。
【0038】
FPC基板18には、図1A及び図1Bに示すのと同様に、複数の信号電極13間において、波形の形状を有するたわみ部が形成されている。また、音響整合層14及び共通電極12にも、複数の圧電体11間において、波形の形状を有するたわみ部が形成されている。
【0039】
本実施形態に係る超音波用探触子も、基本的に、図2と同様の製造方法によって製造することができる。本実施形態においては、図2の(c)に示す工程と図2の(d)に示す工程との間において、音響整合層14をプレス加工して波形の形状を形成する。さらに、波形の形状が形成された音響整合層14の表面上に、導電ペーストを用いて金属箔を貼り付けて、共通電極12を形成する。あるいは、音響整合層14の表面に真空成膜法等によって金属膜を形成することにより、共通電極12を形成しても良い。このようにして共通電極12が形成された音響整合層14は、圧電体11上に接着剤等によって接着される。なお、図5においては、複数の圧電体間において、音響整合層14及び共通電極12に1つの波形の形状が形成されているが、複数の波形の形状が形成されていても良い。
【0040】
一般に、音響整合層14も、FPC基板18と同様に、振動子16と比較して大きな熱膨張係数を有しているので、温度が上昇すると膨張し、温度が低下すると収縮する。音響整合層14及び共通電極12は、複数の圧電体11に対して分割されずに共通に接合されているので、図1A及び図1Bに示すFPC基板18について説明したのと同様の問題が生じる。特に、共通電極12は、複数の圧電体11に対して共通に接合されているので、共通電極12の一部分が1つの圧電体から剥がれると、他の圧電体に対しても電圧が供給されない等の影響が及んでしまう。
【0041】
一般に、音響整合層14の主な材料であるエポキシ樹脂は、FPC基板18の主な材料であるポリイミド材よりも弾力性は低いが、図5に示すような波形の形状を有するたわみ部を設けることによって、スプリング的な弾性を実現することができる。その結果、FPC基板18に波形の形状を有するたわみ部を設けたのと同様の効果を実現することができる。また、図5に示すように、音響整合層14及び共通電極12は、圧電体11側に凸部を向けて波形の形状を形成しているので、音響整合層14上に音響レンズを形成する場合においても特に問題とならない。
【0042】
図1A〜図5においては、X軸方向のみに振動子をアレイ化した1次元アレイについて説明したが、本発明は、1次元アレイに限定されるものではなく、2次元アレイにも適用できる。即ち、図1A〜図5において、X軸方向とY軸方向とに振動子を並べてアレイ化し、全体として2次元アレイを構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、医療用や構造物探傷用の超音波撮像装置において用いられ、超音波を送信及び/又は受信する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図1B】図1Aに示す超音波用探触子をX軸方向に切断してY軸方向から見た断面図である。
【図2】図1に示す超音波用探触子の製造方法を説明するための図である。
【図3A】本発明の第2の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図3B】図3Aに示す超音波用探触子をX軸方向に切断してY軸方向から見た断面図である。
【図4A】本発明の第3の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図4B】図4Aに示す超音波用探触子を点I、J、Kを含む平面で切断し、FPC基板と信号電極のみを示す斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
11 圧電体
12 共通電極
13 信号電極
14 音響整合層
15 バッキング材
16 振動子
17、18 フレキシブル配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列で配置されている複数の圧電体と、前記複数の圧電体の第1の面に形成された少なくとも1つの共通電極と、前記複数の圧電体の第2の面にそれぞれ形成された複数の信号電極とを含む振動子アレイと、
前記少なくとも1つの共通電極上に形成され、前記圧電体よりも小さい音響インピーダンスを有する音響整合層と、
前記複数の信号電極にそれぞれ接合される複数のランドを有し、前記複数の信号電極間において応力を緩衝するためのたわみ部が形成されるように前記複数の信号電極に固定されたフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板上に固定されたバッキング層と、
を具備する超音波用探触子。
【請求項2】
前記フレキシブル基板のたわみ部が、波形の形状を有する、請求項1記載の超音波用探触子。
【請求項3】
前記フレキシブル基板のたわみ部が、中空の形状を有する、請求項1記載の超音波用探触子。
【請求項4】
前記フレキシブル基板のたわみ部において、前記フレキシブル基板に複数の孔が形成されている請求項1記載の超音波用探触子。
【請求項5】
前記少なくとも1つの共通電極と前記音響整合層とが、前記複数の圧電体間において応力を緩衝するためのたわみ部が形成されるように前記複数の圧電体上に固定されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波用探触子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−85537(P2008−85537A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261839(P2006−261839)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】