説明

超音波距離測定システム

【課題】第1の装置は、第2の装置への超音波の送信より第2の装置からの応答の超音波の受信までの時間の計測値と音速とに基づいて、第1の位置と第2の位置との間の距離を測定するシステムにおいて、第1の装置の送信波の周波数又はパルス数を第2の装置と異なる値に設定することなく、周囲に存在する物体からの反射波に起因する誤測定を防止する。
【解決手段】親機(第1の装置)は、子機(第2の装置)へ超音波102を送信し、子機2は、親機からの送信波を受信し(受信波202)、一定時間T2経過してから、応答波204を送信する。親機は、超音波102の送信後、一定時間T2経過してから、子機からの応答波を検出する。超音波102が周囲の物体で反射し、親機に到達する受信波103、105を子機からの応答波と誤らない。親機は、時間(T4−T2)と音速を基に、子機までの距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて距離を測定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて距離を測定する超音波距離測定装置は、レーザを用いて距離を測定するレーザ距離測定装置に比べてコストが低くかつ取り扱いが容易なため、簡易距離計として広く使用されている。
【0003】
超音波距離測定装置としては、測定対象であるターゲットに向けて超音波を送信し、反射波が帰ってくるまでの時間を測定し、その時間と音速とから距離を算出する反射型の装置が一般的である。
【0004】
しかし、反射型の装置には、「ターゲットとして超音波の反射率の高い材質や形状が要求される。」、「ターゲットの周囲に超音波を反射する物体があると、ターゲットからの反射波を特定できない。」等の問題がある。
【0005】
これらの問題を解決した装置として、特許文献1に記載された超音波距離測定システムがある。このシステムでは、距離を測定すべき第1の位置、第2の位置に、それぞれ第1の装置、第2の装置を設置し、第1の装置は第2の装置に向けて超音波を送信し、第2の装置は第1の装置からの超音波を受信したとき、第1の装置に向けて応答の超音波を送信し、第1の装置は第2の装置に向けて超音波を送信したときから第2の装置からの応答の超音波を受信したときまでの時間と、音速とに基づいて、距離を算出する。
【0006】
ここで、第1の装置、第2の装置は、自装置が送信する超音波を相手装置が識別できるようにするため、自装置の送信波の周波数又はパルス数を相手装置の送信波の周波数又はパルス数と異なる値に設定し、両装置間に物体が介在する場合などにおける誤測定を防止する。
【0007】
しかしながら、この超音波距離測定システムでは、それぞれの装置に自装置及び相手装置双方の周波数又はパルス数の信号を処理する機能が必要となるため、装置構成が複雑となり、コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−271628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、距離測定対象位置である第1の位置、第2の位置に設置される第1の装置、第2の装置を備え、前記第1の装置は、前記第2の装置への超音波の送信より前記第2の装置からの応答の超音波の受信までの時間の計測値と音速とに基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を測定する超音波距離測定システムにおいて、前記第1の装置の送信波の周波数又はパルス数を前記第2の装置の送信波の周波数又はパルス数と異なる値に設定することなく、周囲に存在する物体からの反射波に起因する誤測定を防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の超音波距離測定システムは、距離測定対象位置である第1の位置、第2の位置に設置される第1の装置、第2の装置を有し、前記第1の装置は、前記第2の装置への超音波の送信より前記第2の装置からの応答の超音波の受信までの時間の計測値と音速とに基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を測定する超音波距離測定システムであって、前記第1の装置は、前記第2の装置に超音波を送信してから、予め測定しておいた周囲の物体からの反射波が検出されなくなるまでの時間であるガードタイムが経過したとき、前記応答の超音波の受信を開始する応答波受信制御部と、前記時間の計測値から前記ガードタイムを減算した時間を正味の時間計測値とし、当該正味の時間計測値と音速とに基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を算出する距離算出部とを有し、前記第2の装置は、前記第1の装置から送信された超音波を受信してから、前記ガードタイム経過したとき、前記応答の超音波を送信する応答波送信制御部を有する超音波距離測定システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、距離測定対象位置である第1の位置、第2の位置に設置される第1の装置、第2の装置を備え、前記第1の装置は、前記第2の装置への超音波の送信より前記第2の装置からの応答の超音波の受信までの時間の計測値と音速とに基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を測定する超音波距離測定システムにおいて、前記第1の装置の送信波の周波数又はパルス数を前記第2の装置の送信波の周波数又はパルス数と異なる値に設定することなく、周囲に存在する物体からの反射波に起因する誤測定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の超音波距離測定システムを構成する親機及び子機のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の超音波距離測定システムにおける親機の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態の超音波距離測定システムにおける子機の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態の超音波距離測定システムの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
〈超音波距離測定システムのブロック図〉
図1は、本発明の実施形態の超音波距離測定システムのブロック図である。ここで、図1Aは親機を示し、図1Bは子機を示す。
【0014】
《親機の構成》
親機1は、制御部11、バースト波発生部12、超音波トランスジューサ13、受信信号増幅部14、信号レベル比較部15、温度計測部16、及び表示部17を備えている。
【0015】
制御部11は、親機1の全体を制御するコントローラであり、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を内蔵しており、ROMに記憶されているプログラムやデータをCPUがRAMをワークエリアとして実行することにより実現される機能として、タイマー11aと距離算出部11bを有する。
【0016】
バースト波発生部12は、制御部11からの一定周期の送信タイミング信号に応じて、バースト波を生成し、超音波トランスジューサ13に送出する。超音波トランスジューサ13は、バースト波発生部12から出力されるバースト波に応じて所定周波数(例えば40kHz)のバースト超音波を子機2に送信する。また、超音波トランスジューサ13は、所定周波数のバースト超音波を受信して受信信号を生成し、受信信号増幅部14に送出する。受信信号増幅部14は、超音波トランスジューサ13で生成された受信信号を増幅し、信号レベル比較部15に送出する。信号レベル比較部15は、入力された受信信号のレベル(振幅)を所定の閾値と比較し、閾値を超える信号のみを抽出することでノイズを除去し、制御部11に送出する。
【0017】
タイマー11aは、制御部11がバースト波発生部12に対して送信タイミング信号を送出してから、信号レベル比較部15が出力信号を制御部11に送出するまでの時間を計測する。このとき、後述するガードタイムT2を測定時間から減算する。
【0018】
また、タイマー11aは、制御部11がバースト波発生部12に対して送信タイミング信号を送出してから、受信信号増幅部14及び信号レベル比較部15が動作を開始するまでの時間としてのガードタイムT2(詳細については後述する)をカウントしたとき、カウントアップ信号を出力する。つまり、タイマー11aは、本発明の応答波受信制御部を構成している。
【0019】
距離算出部11bは、タイマー11aの計測値と音速とに基づいて、親機1と子機2との間の距離を算出し、算出値を表示部17に送出する。表示部17は、入力された距離の算出値を表示する。
【0020】
温度計測部16は、環境温度を計測し、その温度値を制御部11に送出する。制御部11は、入力された温度値をRAMに書き込み、記憶する。制御部11内のROMには、環境温度と音速との対応関係を示すテーブルが格納されており、距離算出部11bは、距離を算出するときに、温度計測部16で計測された温度に対応する音速を用いる。
【0021】
《子機の構成》
子機2は、制御部21、バースト波発生部22、超音波トランスジューサ23、受信信号増幅部24、及び信号レベル比較部25を備えている。各部の構成及び機能は親機1における同名のブロックと同様である。また、超音波トランスジューサ23の送受信周波数は、親機1の超音波トランスジューサ13の送受信周波数と同じである。
【0022】
制御部21は、ROMに記憶されているプログラムやデータをCPUがRAMをワークエリアとして実行することにより実現される機能として、タイマー21aと応答制御部21bを有する。タイマー21aと応答制御部21bが本発明の応答波送信制御部に対応する。
【0023】
タイマー21aは、信号レベル比較部25の出力信号が入力されてから、所定のガードタイムT2が経過したときにタイムアップ信号を生成し、応答制御部21bに送出する。応答制御部21bは、タイマー21aからタイムアップ信号が入力されたとき、バースト波発生部22に対し、送信タイミング信号を送出する。
【0024】
〈超音波距離測定システムの動作〉
以上の構成を備えた超音波距離測定システムの動作について、図2〜図4を用いて説明する。ここで、図2は親機1の動作を示すフローチャート、図3は子機2の動作を示すフローチャート、図4は親機1及び子機2、即ちシステムの動作を示すタイミングチャートである。
【0025】
ここで、親機1は距離測定の基準位置に設置されており、子機2は基準位置からの距離を測定したい位置(以下、被測定位置)に設置されている。ここで、基準位置と被測定位置との間は見通せるものとする。また、図2及び図3に示す距離測定動作を実行する前にガードタイムT2を測定し、親機1及び子機2のそれぞれの制御部内のROMやRAMに記憶しておく。また、温度計測部16で環境温度を計測し、その温度値を制御部11内のRAMに記憶しておく。
【0026】
図2に示すように、まず親機1は、子機2に向けて超音波を送信するとともに、タイマーをスタートさせる(ステップS1)。このとき、制御部11は、バースト波発生部12に対して、一定周期の送信タイミング信号を送出し、バースト波発生部12は、送信タイミング信号に応じて、バースト波を発生し、超音波トランスジューサ13は、バースト波に応じて、バースト超音波(親機送信波)を子機2に向けて送出する。また、制御部11はタイマー11aのカウントを開始させる。
【0027】
図3に示すように、子機2は親機1からの送信波の受信を監視する(ステップS11)。このとき、子機2では、親機1から送信された所定周波数のバースト超音波が超音波トランスジューサ23により電気信号(受信信号)に変換され、受信信号増幅部24により増幅される。そして、増幅された受信信号のレベルが所定の閾値を超えている場合、信号レベル比較部25が出力信号を制御部21に送出する。
【0028】
制御部21は、信号レベル比較部25からの出力信号が入力されることで、親機1からの送信波を受信したと判断すると(ステップS11:Yes)、ガードタイムT2待機する(ステップS12)。即ち、タイマー21aをスタートさせ、カウントアップを待つ。
【0029】
そして、ガードタイムT2が経過したとき、親機1に向けて応答の超音波(応答波)を送信する(ステップS13)。このとき、応答制御部21bは、バースト波発生部22に対して、送信タイミング信号を送出し、バースト波発生部22は、送信タイミング信号に応じて、バースト波を発生し、超音波トランスジューサ23は、バースト波に応じて、バースト超音波(子機応答波)を親機1に向けて送出する。その後、ガードタイムT2待機し(ステップS14)、ガードタイムT2が経過したとき、ステップS11に移行して、親機1からの送信波の受信の監視を繰り返す。
【0030】
図2に示すように、親機1は、超音波の送出及びタイマースタートの後、ガードタイムT2待機し(ステップS2)、ガードタイムT2が経過したとき、子機2からの応答波の受信を監視する(ステップS3)。
【0031】
制御部11は、信号レベル比較部15からの出力信号が入力されることで、子機2からの応答波を受信したと判断すると(ステップS3:Yes)、タイマー11bをストップさせ、そのタイマー値、ガードタイムT2、及び音速に基づいて、親機1と子機2との間の距離を算出する(ステップS4)。そして、算出結果を表示部17に送出して表示させ(ステップS5)、ステップS1に移行して、超音波の送信及びタイマースタートを繰り返す。
【0032】
以上の動作について、図4に示すタイミングチャートを用いて説明を補足する。
図2のステップS1により、親機送信波102が子機2に向けて送信される。親機送信波102は、親機1から子機2までの最短距離(直線距離)を超音波が伝播する時間T1遅れて子機2で受信され(ステップS11:Yes)、子機受信波202が受信信号となる。
【0033】
子機2は、ガードタイムT2待機し(ステップS12)、子機応答波204を親機1に向けて送信する(ステップS13)。子機応答波204は、子機2から親機1までの最短距離(直線距離)を超音波が伝播する時間T3遅れて親機1で受信され(ステップS3:Yes)、親機受信波104が受信信号となる。
【0034】
親機1は、親機送信波102を送信した時点から、子機応答波204を受信した時点までの時間(遅延時間)である“T4(=T1+T2+T3)”からガードタイム“T2”を減算した“T4−T2”に音速“Vs”を乗算し、“2”で除算することで、親機1から子機2までの距離を算出する。
【0035】
即ち、距離をLとすると、
L=(T4−T2)×Vs/2
である。
【0036】
ここで、ガードタイムT2を設けた理由を説明する。親機送信波102は、子機2に到達して子機受信波202となるものだけでなく、周辺の物体で反射して親機受信波103、105となるものもある。そこで、これらの自装置の送信波の環境反射波からなる親機受信波103、105を子機2からの応答波と誤らないようにするため、超音波の送信から環境反射波が受信されなくなるまでの時間T2を予め測定し、それをガードタイムT2とする。
【0037】
そして、子機2は親機送信波102を受信してから、ガードタイムT2待機した後に子機応答波を送信するので、親機1で子機2からの応答波を受信する時点が親機送信波102の送信時点からガードタイムT2経過する以前になることは有り得ない。つまり、図において、“T2”経過以前に子機2からの応答波が受信されることはない。このため、“T2”経過以前の受信波を検出しないことで、自装置の送信波の環境反射波からなる親機受信波103、105を子機2からの応答波と誤ることはなくなる。
【0038】
また、子機2は、応答波を送信した後、ガードタイムT2待機してから、親機送信波を監視する(ステップS14→S11)。これにより、子機応答波204が周囲の物体に反射して子機2に帰ってくる子機受信波205、207を、親機送信波102の次に送信される親機送信波と誤ることはなくなる。ここでは、子機2において環境反射波が受信されなくなるまでの時間として、親機1において環境反射波が受信されなくなるまでの時間T2を採用した、つまり、子機2において環境反射波が受信されなくなるまでの時間と親機1において環境反射波が受信されなくなるまでの時間とが同じとしたが、別途、子機2において環境反射波が受信されなくなるまでの時間を計測し、それをガードタイムとしてもよい。
【0039】
なお、図4において、親機受信波104は子機応答波204の直接波であり、親機受信波107は子機応答波204の環境反射波である。また、子機受信波203は親機送信波102の環境反射波である。
【0040】
なお、以上の実施形態では、バースト超音波を用いているが、パルス状の超音波を用いることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1…親機、2…子機、11a,21a…タイマー、11b…距離算出部、13,23…超音波トランスジューサ、21b…応答制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離測定対象位置である第1の位置、第2の位置に設置される第1の装置、第2の装置を有し、前記第1の装置は、前記第2の装置への超音波の送信より前記第2の装置からの応答の超音波の受信までの時間の計測値と音速とに基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を測定する超音波距離測定システムであって、
前記第1の装置は、前記第2の装置に超音波を送信してから、予め測定しておいた周囲の物体からの反射波が検出されなくなるまでの時間であるガードタイムが経過したとき、前記応答の超音波の受信を開始する応答波受信制御部と、前記時間の計測値から前記ガードタイムを減算した時間を正味の時間計測値とし、当該正味の時間計測値と音速とに基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を算出する距離算出部とを有し、
前記第2の装置は、前記第1の装置から送信された超音波を受信してから、前記ガードタイム経過したとき、前記応答の超音波を送信する応答波送信制御部を有する
超音波距離測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載された超音波距離測定システムにおいて、
前記第1の装置は、温度計測部を有し、
前記距離算出部は、前記温度計測部により計測された温度に対応する音速を用いて距離を算出する
超音波距離測定システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−230060(P2012−230060A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99699(P2011−99699)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】