説明

路面性状測定方法

【課題】安価で且つ少ない作業手間と時間で路面性状を測定できる路面性状測定方法を提供する。
【解決手段】路面の補修を行う基準となる路面の平たん性σ、わだち掘れ深さD、ひび割れ率Cを測定する路面性状測定方法において、振動測定器2を搭載した車両3を一定速度で走行させて、被測定路面1の所定の区間内での振動数を検出して、その振動数から、予め形成された振動数に対する平たん性の相関表に基づいて前記区間内の平たん性σを決定することで、平たん性σを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の補修工事を行うに際しては、路面の劣化状態を測定する路面性状測定を行って、その測定値より舗装の評価数値(MCI(メンテナンス・コントロール・インデックス)値)を算出し、その評価数値に応じて、補修工事の順序が決定される。すなわち、基本的には舗装の劣化進行の大きい路面から補修工事が行われるようになっている。路面性状測定は、路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定して、これらの値からMCI値を算出する。
【0003】
従来、路面性状測定を行うには、種々の方法があったが、その一つとして、路面性状測定車(例えば、特許文献1乃至3参照)を使用する場合があった。路面性状測定車は、平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を走行しながら測定できる車両である。路面性状測定車は、例えば、真上から路面に照射したレーザ光線の反射により路面からの高さを検出し、距離信号に重ねながら路面画像を撮影し、リアルタイム画像専用処理機により自動解析し、高精度な平たん性データを測定する。また、路面性状測定車は、例えば、路面画像を撮影しつつ、レーザと光検出器を用いながら、幅1mm以上のひび割れを検出してひび割れ率を算出する。さらに、路面性状測定車は、例えば、真上から路面に走査されたレーザ光線による反射映像をCCDカメラにより記録し、その映像データをリアルタイム画像専用処理機により自動解析し、正確なわだち掘れ深さを測定する。以上のような路面性状測定車によれば、正確な測定データを短時間で得ることができる。
【0004】
その他に、簡易な路面性状測定方法として、以下のような方法があった。
【0005】
路面の平たん性を測定するには、3メートルプロフィルメータを用いている。3メートルプロフィルメータは、3メートルの直線状部材の中間に、路面との距離を測定する測定装置を備えており、路面の走行方向に沿って直線状部材の長手方向に牽引しながら、直線上部材と路面との距離を測定して、路面の走行方向の平たん性を測定するように構成されている。
【0006】
路面のひび割れ率を測定するには、特に計測試験機などは用いず、ステッキメジャー等でひび割れ位置や長さを確認し、グラフ用紙にスケッチする。そして、グラフ用紙の単位マス内のクラックの有無を確認して、ひび割れ率を算出する。
【0007】
路面のわだち掘れ深さを測定するには、横断凹凸プロフィルメータを用いている。横断凹凸プロフィルメータは、道路の一車線分の幅と同等の長さの直線状部材と、この直線状部材の長手方向に移動自在に設けられ路面との距離を測定する測定装置とを有しており、路面の横断方向に沿って配置され、測定装置を横断方向に移動させながら、路面との距離を測定して、わだち掘れ深さを測定するように構成されている。
【特許文献1】特開2000−194983号公報
【特許文献2】特開平10−2727号公報
【特許文献3】特開平9−96515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、路面性状測定車は非常に高価(億単位)であり、路面性状測定を行うに際しても非常に高いコスト(数百万〜数千万円)がかかるといった問題があった。そのため、路面性状測定車は、国や都道府県が管理している道路では使用されているが、市町村が管理している道路では予算が合わないのが現状である。よって、市町村が管理している道路では、前記したような簡易な路面性状測定方法を採用するようになるが、この路面性状測定方法では、以下のような問題があった。
【0009】
3メートルプロフィルメータを用いて平たん性を測定する場合には、装置自体は比較的安価であるが、作業員が人力で引っ張って測定をおこなうために、測定速度が遅く、非常に多くの時間と手間を要していた。また、横断凹凸プロフィルメータを用いてわだち掘れ深さを測定する場合には、測定の際に一車線を完全に遮断する必要があり、交通に影響を及ぼすとともに、最大わだち掘れ深さを読み取る作業が必要となる。さらに、路面のひび割れ率を測定する場合には、特に測定器などは用いないので、安価に測定を行うことができるが、測定作業員の熟練によって測定精度が左右されるとともに、作業に非常に多くの時間と手間を要する。
【0010】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、安価で且つ少ない作業手間と時間で路面性状を測定できる路面性状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法において、振動測定器を搭載した車両を一定速度で走行させて、被測定路面の所定の区間内での振動数を検出して、その振動数に応じて前記区間内の平たん性を決定することで、前記平たん性を測定することを特徴とする路面性状測定方法である。
【0012】
このような方法によれば、車両に搭載した振動測定器で検出した振動数に応じて、平たん性を測定するので、車両を走行させながら測定することができ、従来の3メートルプロフィルメータを用いた場合と比較して作業手間と時間を大幅に低減することができる。さらに、振動測定器は、路面性状測定車と比較して大幅に安価である。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記平たん性は、予め形成された、前記振動数に対する平たん性の相関表に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の路面性状測定方法である。
【0014】
このような方法によれば、実測されたデータに基づいて平たん性が決定されるので、精度の高い平たん性のデータを得ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法において、複数のわだち掘れ深さに対応する複数の路面表面形状を図示した表面形状パターン図を形成しておき、一方、被測定路面の所定の位置に横断方向に延びるラインを引き、前記ラインを所定の角度から観測するとともに前記表面形状パターン図と比較して最も近い表面形状パターン図を選択することで、前記わだち掘れ深さを決定することを特徴とする路面性状測定方法である。
【0016】
このような方法によれば、測定作業者は、被測定路面上あるいは被測定路面脇の所定の位置で所定の高さから被測定路面と表面形状パターン図を比較するだけで、わだち掘れ深さを決定できるので、従来の横断凹凸プロフィルメータを用いた場合と比較して作業手間と時間を大幅に低減することができる。さらに、路面性状測定車と比較して安価であるのは勿論、横断凹凸プロフィルメータと比較しても大幅に安価である。
【0017】
請求項4に係る発明は、前記表面形状パターン図は、透明シートに前記路面表面形状を図示して形成されており、前記表面形状パターン図を前記被測定路面に被せるように観測して、前記被測定路面と前記表面形状パターン図とを比較することを特徴とする請求項3に記載の路面性状測定方法である。
【0018】
このような方法によれば、被測定路面と表面形状パターン図とを視線上で重ねて直接的に観測することができるので、その比較を短時間でできるとともに、わだち掘れ深さの測定精度を高めることができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法において、複数のひび割れ率に対応する複数のひび割れ形状を図示したひび割れパターン図を形成しておき、前記ひび割れパターン図を被測定路面と比較して最も近いひび割れパターン図を選択することで、前記ひび割れ率を決定することを特徴とする路面性状測定方法である。
【0020】
このような方法によれば、測定作業者は、被測定路面上あるいは被測定路面脇から被測定路面とひび割れパターン図を比較するだけで、ひび割れ率を決定できるので、作業手間と時間を大幅に低減することができる。また、従来のグラフ用紙にスケッチする方法と比較して精度はほとんど変わらない。さらに、路面性状測定車と比較して安価であるのは勿論、スケッチする方法と比較しても消耗品を必要とせず作業人数が少なくて済むので安価に測定することができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、前記ひび割れパターン図は、透明シートに前記ひび割れ形状を図示して形成されており、前記ひび割れパターン図を前記被測定路面に被せるように観測して、前記被測定路面と前記ひび割れパターン図とを比較することを特徴とする請求項5に記載の路面性状測定方法である。
【0022】
このような方法によれば、被測定路面とひび割れパターン図とを視線上で重ねて直接的に観測することができるので、その比較を短時間でできるとともに、ひび割れ率の測定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、安価で且つ少ない作業手間と時間で路面性状を測定できるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
図1は本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態の平たん性を測定する状態を示した側面図、図2は振動数と平たん性との相対関係を示した相関図、図3は本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態のわだち掘り深さを測定する状態を示した斜視図、図4はわだち掘り深さの測定位置を示した側面図、図5は本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態の表面形状パターン図を示した正面図、図6は本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態の他の表面形状パターン図を示した正面図、図7はひび割れ率を測定する被測定路面を示した斜視図、図8は本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態のひび割れパターン図を示した正面図である。
【0026】
本実施の形態に係る路面性状測定方法は、路面の劣化状態を測定する方法であって、路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率をそれぞれ測定する。そして、路面性状測定方法で得られた測定結果は、道路の補修工事を行う順番を決めるMCI(メンテナンス・コントロール・インデックス)値を算出するのに利用される。
【0027】
まず、かかる路面性状測定方法のうち、路面(被測定路面1)の平たん性σを測定する方法を説明する。平たん性σを測定するに際しては、図1に示すように、振動測定器2を搭載した車両3を、被測定路面1上を一定速度(例えば、時速30kmまたは50km)で走行させる。そして、振動測定器2で、所定の区間内(例えば100メートル)での振動数を検出する。ここで、一度の測定では長距離を走行し、所定の長さ単位で分割された複数の区間を連続して測定する。
【0028】
本発明は、検出された振動数に応じて、区間内の平たん性σを決定することで、被測定路面1の平たん性σを測定するようになっている。これは、平たん性σが悪い(平たん性σの数値が大きい)と、走行する車両3に多くの振動が発生するという現象を利用したものである。具体的には、平たん性σは、予め形成された振動数に対する平たん性σの相関表(図2参照)に基づいて決定されるようになっている。相関表は、従来の方法で平たん性σが求められている路面(図示せず)に、振動測定器2を備えた車両3を走行させて、所定の平たん性σに対する振動数を測定する実走行試験を行うことで形成される。このとき、振動測定器2の測定感度(加速度、速度、変位など)は一定にしておく。この実走行試験は、同一の路面で複数回行い、その平均値を算出することで、相関表の精度を高めている。また、実走行試験は、複数の路面で行い、複数の数値の平たん性σについて、平たん性σに対応する振動数をそれぞれ測定する。
【0029】
相関表は、例えば、図2に示すように形成されている。実走行試験によって計測された所定の走行距離での振動数が0〜30の場合は、平たん性σは、0〜0.5となる。この場合、MCI値の計算には0.5が用いられる。また、振動数が30(30は含まず)〜50の場合は、平たん性σは、0.5(0.5は含まず)〜1.0となる。この場合、MCI値の計算には1.0が用いられる。さらに、振動数が50(50は含まず)〜100の場合は、平たん性σは、1.0(1.0は含まず)〜1.5となる。この場合、MCI値の計算には1.5が用いられる。そして、振動数が増加すると、図2に示す数値のように、平たん性σの数値も増加する。なお、振動数が1000(1000は含まず)〜の場合は、平たん性σは、4.0(4.0は含まず)〜5.0となる。この場合、MCI値の計算には5.0が用いられる。
【0030】
次に、かかる路面性状測定方法のうち、路面(被測定路面1)のわだち掘れ深さDを測定する方法を説明する。わだち掘れ深さDを測定するに際しては、まず、図3に示すように、被測定路面1の測定位置となる所定の位置に横断方向に延びるライン4を引く。ライン4は、チョークなどで引いておき、測定後に他の車両が走行することで自然に消えるようにするのが好ましい。そして、図4に示すように、ライン4を所定の角度αから観測する。このとき、ライン4から所定距離L離間した位置で、所定の高さHに目線を合わせることで、所定の角度αで観測することができる。なお、ライン4の観測は、車両内から行えば、風雨の影響を受けないので好ましい。
【0031】
一方、複数のわだち掘れ深さDに対応する複数の路面表面形状を図示した表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5f(図5参照)を予め形成しておく。各表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fは、各わだち掘れ深さDごとに路面の表面形状をプレートにそれぞれ図示して形成されている。プレートは透明シート6にて構成されており、プレートの向こう側が透過できるようになっている。各表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fには、表面形状に応じたわだち掘れ深さDが表示されている。本実施の形態では、表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fは6種類形成されており、わだち掘れ深さDが5mm,10mm,20mm,30mm,40mm,50mmの6段階で表示されている。
【0032】
ライン4の観測は、複数の路面表面形状を図示した表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fと比較して、形状が一致するか、あるいは最も近い表面形状パターン図5a(5b,5c,5d,5e,5f)を選択する。このとき、測定作業者は各表面形状パターン図5a(5b,5c,5d,5e,5f)を、視線上に入れて、被測定路面1に被せるように観測して、被測定路面1と表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fとを比較すれば、短時間で且つ正確な測定を行うことができる。そして選択した表面形状パターン図5a(5b,5c,5d,5e,5f)に表示された数値を、被測定路面1のわだち掘れ深さDとする。かかるわだち掘れ深さDの測定は、表面が凹凸の路面にライン4を引いて所定の角度αから観察すると、一定の形状に見えるといった性質を利用したものである。
【0033】
なお、路面の劣化状態は、道路の使用状況や使用環境に応じて変わってくる。そのため、表面形状パターン図は、図5に示したもの以外にも予め形成しておく。例えば、温暖地域で夏季の路面温度の高い時期で、大型車の通過頻度の高いアスファルト製の路面では、図6に示すように、アスファルトの塑性流動が発生して、路面表面の磨耗の他に変形が発生する。具体的には、車輪が接触するわだち部分の表面に磨耗が発生するとともに、わだち部分の下部のアスファルトが両側に押し退けられて、わだち部分の両側が隆起する。図6の表面形状パターン図7a,7b,7c,7d,7e,7fも6種類形成されており、わだち掘れ深さDが5mm,10mm,20mm,30mm,40mm,50mmの6段階で表示されている。
【0034】
なお、高い精度が必要な場合は、直定規とクサビ部材を用いて、わだち掘れ深さを実測してもよい。
【0035】
次に、かかる路面性状測定方法のうち、路面(被測定路面1)のひび割れ率Cを測定する方法を説明する。路面のひび割れは、図7に示すように、主に、縦ひび割れ8aと横ひび割れ8bとがある。縦ひび割れ8aは、路面の縦断方向に沿って1本または複数本の線で発生するもので、線状ひび割れともいう。縦ひび割れ8aは、車輪の通過位置(わだち掘れの発生位置)に多く発生する。横ひび割れ8bは、路面の横断方向に沿って発生するものである。横ひび割れ8bは、アスファルト舗装では、路面内に水道管やガス管などの構造物が横断している箇所に発生するケースが多く、コンクリート舗装では、舗装体と下地との温度収縮の差が大きく、目地部が対応しきれずに発生する場合が多い。図示していないが、ひび割れは、その他に面状ひび割れや切盛境のひび割れなどがある。面状ひび割れは、舗装面全体に亀甲状に発生するものであって、線状ひび割れが発達して発生したり、アスファルト混合物の性状や施工状況に起因して発生するケースが多い。切盛境のひび割れは、切土部と盛土部の境界線上に発生するひび割れで、切土盛土の形状と同じ形で路面の表面に現れるものがほとんどである。切盛境のひび割れは、路床より下部の不等沈下によって発生する場合が多い。
【0036】
ひび割れ率Cを測定するに際しては、まず、例えば10%、20%・・・というように複数のひび割れ率に対応するひび割れパターン図を形成しておく。図8に示すように、ひび割れパターン図9a,9b,9cは、同じひび割れ率(例えば、10%)で、複数のパターンが形成されている。例えば、ひび割れパターン図9aは、縦ひび割れ8aが1条発生したパターンを示しており、縦ひび割れ8a1本当たりでひび割れ率10%に相当する。ひび割れパターン図9bは、縦ひび割れ8aと横ひび割れ8bとが混在したパターンを示しており、図示する程度の割合の場合、ひび割れ率Cが10%となる。ひび割れパターン図9cは、部分補修を行ったパッチング部分8cを含むパターンを示しており、パッチング部分8cが図示する程度の割合の場合、ひび割れ率Cが10%となる。ひび割れパターン図9a,9b,9cは、各種パターンをプレートに図示して形成されている。プレートは透明シート6にて構成されており、プレートの向こう側が透過できるようになっている。各ひび割れパターン図9a,9b,9cには、ひび割れの状態に応じたひび割れ率C(図9では全てひび割れ率C=10%)が表示されている。また、各ひび割れパターン図9a,9b,9cには、格子状のグリッドが形成されており、実際の路面との比較が行いやすくなっている。ひび割れパターン図は、図9に示すものに限られるものではなく、複数のひび割れ率C(5%,10%,20%,30%,40%,50%)ごとに形成されている。また、ひび割れのパターンも、図9に示すものに限られるものではなく、面状ひび割れを含むパターンや、種々のひび割れを組み合わせたパターンを形成するようにしてもよい。
【0037】
ひび割れ率Cを測定するに際しては、前記ひび割れパターン図9a,9b,9cを含む複数のひび割れパターン図と被測定路面1とを比較して、同一かあるいは最も近いひび割れパターン図を選択する。このとき、測定作業者はひび割れパターン図9a,9b,9cを、視線上に入れて、被測定路面1に被せるように観測して、被測定路面1とひび割れパターン図9a(9b,9c)とを比較すれば、短時間で且つ正確な測定を行うことができる。そして選択したひび割れパターン図9a(9b,9c)に表示された数値を、被測定路面1のひび割れ率Cとする。かかるひび割れ率Cの測定は、ひび割れの形状と長さによって、ひび割れ率Cが大まか決定できるといった性質を利用したものである。
【0038】
以上のように、測定された平たん性σ、ひび割れ率Cおよびわだち掘れ深さDは、図9に示すような、一枚のシートからなる路面調査票に記入する。路面調査票は、測定箇所の記載欄と、調査データの記載欄とで構成され、一目で路面データが確認できるように構成されている。
【0039】
測定箇所の記載欄には、路線名と、測点(例えば、キロポスト表示)と、車線(例えば、上り線・下り線の区別、走行車線・追越車線の区別)が記載される。
【0040】
調査データの平たん性σの記載欄には、測定された振動数より平たん性σの劣化度を示したランクが記載される。本実施の形態では、例えばcランクとなっており、MCI値の計算にはσ=3.0が用いられる。
【0041】
調査データのわだち掘れ深さDの欄には、被測定路面と比較して選択された表面形状パターン図のわだち掘れ深さDの数値より決まったランクが記載される。本実施の形態では、例えばdランクとなっており、MCI値の計算にはD=30が用いられる。なお、わだち掘れ深さDは、実測値がある場合には、これを優先して用いることで、測定精度を高めている。
【0042】
調査データのひび割れ率Cの欄には、被測定路面と比較して選択されたひび割れパターン図のひび割れ率Cの数値より決まったランクが記載される。本実施の形態では、例えばcランクとなっており、MCI値の計算にはC=20が用いられる。
【0043】
MCI値を算出するには下記の(1式)乃至(4式)を用いる。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【0044】
まず、(1式)を用いて、平たん性σ、ひび割れ率Cおよびわだち掘れ深さDを考慮したMCI値を算出する。本実施の形態で得た前記数値を用いて計算すると、MCI=2.64となる。次に、(2式)を用いて、わだち掘れ深さDおよびひび割れ率Cを考慮したMCIを算出する。本実施の形態で得た前記数値を用いて計算すると、MCI=3.05となる。さらに、(3式)を用いて、ひび割れ率Cを考慮したMCIを算出する。本実施の形態で得た前記数値を用いて計算すると、MCI=4.52となる。最後に、(4式)を用いて、わだち掘れ深さDを考慮したMCIを算出する。本実施の形態で得た前記数値を用いて計算すると、MCI=4.16となる。
【0045】
そして、以上の4式より算出されたMCI値を比較して、最も小さい値を、被測定路面の評価の数値とする。この被測定路面の評価は、MCI値が2.64となる。これは、一部でも極端に劣化した部分があると路面補修を行う必要があるためである。そして、路面の維持修繕の管理基準値をMCI=3とした場合、この被測定路面は補修工事を行う必要があると判断する。なお、路面の管理基準値は、国、県や市町村などの道路管理者が定めた値による。
【0046】
本実施の形態では、(1式)〜(4式)の4つの式よりMCI値を算出して、最も小さい値を採用しているが、これに限られるものではない。地域の状況に応じて、前記4つの式のうち、選択された式(例えば(4式))を用いて、路面の評価を行うようにしてもよい。
【0047】
次に、本実施の形態に係る路面性状測定方法の作用を説明する。
【0048】
かかる路面性状測定方法によれば、平たん性σを測定する車両3に搭載した振動測定器2で検出した振動数に応じて、平たん性σを決定するので、車両3を走行させながら自動的に測定を行うことができ、従来の3メートルプロフィルメータを用いた場合と比較して作業手間と作業時間を大幅に低減することができる。また、測定時間が短いので複数回測定することも容易であり、測定精度を高めることができる。さらに、振動測定器2は、従来の路面性状測定車と比較して大幅に安価であり、イニシャルコストおよびランニングコストを大幅に低減することができる。
【0049】
また、平たん性σは、予め形成された振動数に対する平たん性の相関表(図2参照)に基づいて決定されるので、実測されたデータに基づいて平たん性σが決定され、精度の高い平たん性σのデータを得ることができる。
【0050】
一方、かかる路面性状測定方法によれば、複数のひび割れ率Cに対応する複数のひび割れ形状を図示したひび割れパターン図9a,9b,9cを形成しておき、ひび割れパターン図9a,9b,9cを被測定路面1と比較して同一か最も近いひび割れパターン図9a(9b,9c)を選択することで、ひび割れ率Cを決定するので、測定作業者は、被測定路面上あるいは被測定路面脇から被測定路面1とひび割れパターン図9a,9b,9cを比較するだけで、ひび割れ率Cを決定できる。したがって、測定の作業手間と時間を大幅に低減することができる。また、前記のようにして測定されたひび割れ率Cは、従来のグラフ用紙にスケッチする方法と比較して精度はほとんど変わらない。さらに、従来の路面性状測定車と比較して安価であるのは勿論、スケッチする方法と比較しても消耗品を必要とせず作業人数が少なくて済むのでさらに安価に測定することができる。
【0051】
また、ひび割れパターン図9a,9b,9cは、透明シート6にひび割れ形状を図示して形成されているので、被測定路面1とひび割れパターン図9a,9b,9cとを視線上で重ねて直接的に観測することができるので、その比較を短時間でできるとともに、ひび割れ率Cの測定精度を高めることができる。
【0052】
一方、かかる路面性状測定方法によれば、被測定路面の所定の位置に横断方向に延びるライン4を引き、このライン4を所定の角度から観測するとともに表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fと比較して同一か最も近い表面形状パターン図5a(5b,5c,5d,5e,5f)を選択することで、わだち掘れ深さDを決定するので、測定作業者は、被測定路面上あるいは被測定路面脇の所定の位置で所定の高さから被測定路面1と表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fを比較するだけで、わだち掘れ深さDを決定できる。したがって、従来の横断凹凸プロフィルメータを用いた場合と比較して作業手間と作業時間を大幅に低減することができる。さらに、一旦、ひび割れパターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fを形成してしまえば、その後は、被測定路面1とひび割れパターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fとを比較するだけでよいので、殆んど費用がかからない。よって、従来の路面性状測定車と比較して安価であるのは勿論、横断凹凸プロフィルメータと比較しても大幅に安価である。
【0053】
さらに、表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fは、透明シート6に路面表面形状を図示して形成されているので、被測定路面1と表面形状パターン図5a,5b,5c,5d,5e,5fとを視線上で重ねて直接的に観測することができる。したがって、その比較を短時間でできるとともに、わだち掘れ深さDの測定精度を高めることができる。
【0054】
すなわち、本実施の形態によれば、平たん性σ、ひび割れ率Cおよびわだち掘れ深さD全ての項目において、安価で且つ少ない作業手間と作業時間で路面性状を測定することができる。したがって、道路を遮断する時間を大幅に低減することができ、交通に及ぼす影響を低減できる。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施の形態では、わだち掘れ深さDの測定およびひび割れ率Cの測定(観測)は、測定現場で直接行うようにしているが、これに限られるものではなく、所定の位置から路面に引かれたライン4やひび割れ状態を写真撮影しておき、後に別の場所で測定を行うようにしてもよい。このようにすれば、道路を遮断する時間をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態の平たん性を測定する状態を示した側面図である。
【図2】振動数と平たん性との相対関係を示した相関図である。
【図3】本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態のわだち掘り深さを測定する状態を示した斜視図である。
【図4】わだち掘り深さの測定位置を示した側面図である。
【図5】本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態の表面形状パターン図を示した正面図である。
【図6】本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態の他の表面形状パターン図を示した正面図である。
【図7】ひび割れ率を測定する被測定路面を示した斜視図である。
【図8】本発明に係る路面性状測定方法を実施するための最良の形態のひび割れパターン図を示した正面図である。
【図9】測定されたデータを記載する路面調査票を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
1 被測定路面
2 振動計測器
3 車両
4 ライン
5a〜5f 表面形状パターン図
6 透明シート
7a〜7f 表面形状パターン図
9a〜9c ひび割れパターン図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法において、
振動測定器を搭載した車両を一定速度で走行させて、被測定路面の所定の区間内での振動数を検出して、その振動数に応じて前記区間内の平たん性を決定することで、前記平たん性を測定する
ことを特徴とする路面性状測定方法。
【請求項2】
前記平たん性は、予め形成された、前記振動数に対する平たん性の相関表に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1に記載の路面性状測定方法。
【請求項3】
路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法において、
複数のわだち掘れ深さに対応する複数の路面表面形状を図示した表面形状パターン図を形成しておき、一方、被測定路面の所定の位置に横断方向に延びるラインを引き、
前記ラインを所定の角度から観測するとともに前記表面形状パターン図と比較して最も近い表面形状パターン図を選択することで、前記わだち掘れ深さを決定する
ことを特徴とする路面性状測定方法。
【請求項4】
前記表面形状パターン図は、透明シートに前記路面表面形状を図示して形成されており、
前記表面形状パターン図を前記被測定路面に被せるように観測して、前記被測定路面と前記表面形状パターン図とを比較する
ことを特徴とする請求項3に記載の路面性状測定方法。
【請求項5】
路面の補修を行う基準となる路面の平たん性、わだち掘れ深さ、ひび割れ率を測定する路面性状測定方法において、
複数のひび割れ率に対応する複数のひび割れ形状を図示したひび割れパターン図を形成しておき、前記ひび割れパターン図を被測定路面と比較して最も近いひび割れパターン図を選択することで、前記ひび割れ率を決定する
ことを特徴とする路面性状測定方法。
【請求項6】
前記ひび割れパターン図は、透明シートに前記ひび割れ形状を図示して形成されており、
前記ひび割れパターン図を前記被測定路面に被せるように観測して、前記被測定路面と前記ひび割れパターン図とを比較する
ことを特徴とする請求項5に記載の路面性状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−116294(P2008−116294A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299062(P2006−299062)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【Fターム(参考)】