説明

身体測定装置

【課題】簡単な構成により低コストで導入することが可能であって、腹囲や胸囲などの身体測定を行うことが可能な身体測定装置の提供。
【解決手段】被測定者の身体表面までの距離を測定する距離計2と、被測定者の身体表面の測定位置を決定するために被測定者を撮像するカメラ3と、距離計2およびカメラ3を高さ調節可能に支持するホルダ4と、ホルダ4を被測定者の周囲で走行させるためのレール5と、ホルダ4をレール5上で走行させながら距離計2により被測定者の身体表面までの距離を測定し、身体表面の測定位置の周長を算出する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹囲や胸囲などの身体測定を行うための身体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健診者に接触することなく非接触方式で腹囲や胸囲などの身体測定を行う装置が開発されている。例えば、特許文献1には、所定位置から被測定者の身体表面までの距離を水平方向から所定範囲に亘って検出し、これに対応した信号を出力する6台の体形検出機構が設けられた体形検出部と、各体形検機構のうち3台ずつを1組として垂直方向に駆動する駆動機構とを備え、各体形検出機構から出力される体形情報を処理して体形データを形成する体形自動測定装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、光学的手段により照射されたレーザスリット光を回転しながら被測定者の体表面上に死角になる部分に光が当たるようにレーザ光反射手段で間接的に照射し、照射されたレーザ光を撮影手段により画像として取り込み、得られた情報から体表面、体容積等を測定する体格測定装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−231623号公報
【特許文献2】特開平7−313492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような測定装置では、装置が非常に大掛かりであり、装置構成も複雑であるため、装置のコストが高く、個々の病院や保健所などの施設に導入することは困難であり、普及には至っていない。
【0006】
そこで、本発明においては、簡単な構成により低コストで導入することが可能であって、腹囲や胸囲などの身体測定を行うことが可能な身体測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の身体測定装置は、被測定者の身体表面までの距離を測定する距離測定手段と、被測定者の身体表面の測定位置を決定するために被測定者を撮像する撮像手段と、距離測定手段および撮像手段を高さ調節可能に支持するホルダと、ホルダを被測定者の周囲で走行させるためのレールと、ホルダをレール上で走行させながら距離測定手段により被測定者の身体表面までの距離を測定し、身体表面の測定位置の周長を算出する手段とを有するものである。
【0008】
本発明によれば、被測定者を撮像手段により撮像し、この撮像した画像に基づいて距離測定手段および撮像手段を高さ調節して被測定者の身体表面の測定位置を合わせてから、ホルダをレール上で走行させて距離測定手段により被測定者の身体表面までの距離を測定すると、身体表面の測定位置の周長が算出される。
【0009】
また、本発明の身体測定装置は、距離測定手段により測定される身体表面の測定位置を、撮像手段により撮像した画像とともに表示する表示手段を有するものであることが望ましい。これにより、撮像手段により撮像した画像に基づいて被測定者の身体表面の測定位置を合わせる際に、身体表面の測定位置が撮像した画像とともに表示手段に表示されるので、この表示手段の表示を見ながら測定位置を確認することができる。
【0010】
ここで、レールは全円周の半分より大きい円弧状であることが望ましい。全円周の半分より大きい円弧状のレール上で走行するホルダに支持された距離測定手段であれば、被測定者の身体表面の測定位置の周長の半分を測定することができるので、この周長の半分を2倍にすることによって周長を算出することが可能である。また、レールが円弧状であることにより、レールには切れ目部分が存在するので、この切れ目部分を通じて被測定者はレールの内側空間に出入りすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の身体測定装置は、被測定者を身体が動かないように固定する固定手段を有するものであることが望ましい。これにより、被測定者の身体表面までの距離を測定する際に被測定者の身体が動くのを防止してより正確な測定を行うことが可能となる。
【0012】
ここで、固定手段は、レールを支持するフレーム内で膨らんで被測定者の身体を挟持するエアバッグであることが望ましい。これにより、被測定者がどのような位置や向きでレールの内部空間にいた場合であっても、エアバッグの膨らみにより被測定者の身体を挟持し、安定して固定することが可能となる。
【0013】
また、本発明の身体測定装置は、撮像手段により撮像した画像を解析して距離測定手段により測定される身体表面の測定位置を検出し、ホルダの高さを自動調節する手段を有するものであることが望ましい。これにより、被測定者がレールの内部空間内に入ると、自動的に身体表面の測定位置が検出され、ホルダにより高さが自動調節される。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明によれば、被測定者を撮像手段により撮像し、この撮像した画像に基づいて距離測定手段および撮像手段を高さ調節して被測定者の身体表面の測定位置を合わせてから、ホルダをレール上で走行させて被測定者の身体表面までの距離を測定し、身体表面の測定位置の周長を算出するので、測定に際してはホルダ上での撮像手段および距離測定手段の高さ調整と、ホルダのレール上での走行だけで良く、簡単な構成により低コストで導入可能な身体測定装置が得られる。
【0015】
(2)距離測定手段により測定される身体表面の測定位置を、撮像手段により撮像した画像とともに表示する表示手段を有することにより、撮像した画像とともに表示される身体表面の測定位置を見ながら測定位置を調節することが可能となり、人の目を借りてより簡単かつ正確な測定位置を調節することが可能となる。
【0016】
(3)レールが全円周の半分より大きい円弧状であることにより、被測定者の身体表面の測定位置の周長の半分のみを測定するだけで簡単かつ高速に周長を算出することが可能となる。また、円弧状のレールの切れ目部分を通じて被測定者はレールの内側空間に出入りすることができるので、簡単に測定を行うことが可能となる。
【0017】
(4)被測定者を身体が動かないように固定する固定手段を有するものであることにより、被測定者の身体表面までの距離を測定する際に被測定者の身体が動くのを防止してより正確な測定を行うことが可能となる。
【0018】
(5)固定手段が、レールを支持するフレーム内で膨らんで被測定者の身体を挟持するエアバッグであることにより、被測定者がどのような位置や向きでレールの内部空間にいた場合であっても、エアバッグの膨らみにより被測定者の身体を挟持し、安定して固定することが可能となり、より正確な測定を行うことが可能となる。
【0019】
(6)撮像手段により撮像した画像を解析して距離測定手段により測定される身体表面の測定位置を検出し、ホルダの高さを自動調節する手段を有するものであることにより、被測定者がレールの内部空間内に入ると、自動的に身体表面の測定位置が検出され、ホルダにより高さが自動調節されるので、より簡単な身体測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の実施の形態における身体測定装置の斜視図、図2は図1のホルダ部分の断面図、図3は図1の身体測定装置のブロック図、図4は図1の身体測定装置による測定範囲を示す平面図である。
【0021】
図1において、本実施形態における身体測定装置1は、被測定者の腹囲を測定する腹囲測定装置であって、被測定者の身体表面までの距離を測定する距離測定手段としての距離計2や撮像手段としてのカメラ3などを支持するホルダ4と、ホルダ4を被測定者の周囲で走行させるためのレール5と、カメラ3により撮像した画像を表示する表示手段としてのモニタ21(図3参照。)とを有する。モニタ21は被測定者から見やすい位置に設置される。
【0022】
距離計2は、ホルダ4に対して上下(鉛直)方向にスライド可能に支持されている。距離計2はレーザ光線を鉛直上向きに発し、このレーザ光線を距離計2の上方でホルダ4に固定されたミラー10により水平方向へ曲折させて被測定者へ当てることにより被測定者の身体表面までの距離を測定するものである。なお、距離計2は、ホルダ4に対して上下方向にスライド可能に支持したものであれば良く、超音波などを利用して距離を測定するものでも良い。
【0023】
図2に示すように、距離計2のスライド機構は、ホルダ4に対して鉛直方向軸周りに回転可能に支持された送りねじ11と、送りねじ11を回転駆動するサーボモータ12と、送りねじ11の回転により上下方向に移動するスライダ13とによって構成されている。距離計2は、スライダ13に固定されている。カメラ3は、距離計2の側面に水平方向に向けて固定されているので、距離計2とともに上下方向にスライドする。
【0024】
また、ホルダ4の外周側には、レール5に沿って走行するためのガイド14と、タイヤ15と、タイヤ15を回転駆動する走行モータ16とが設けられている。レール5は、フレーム6上に固定された略C形状のベースプレート7上に固定された円弧状のものである。レール5は全円周の半分より大きい円弧状(図示例では240°の円弧状)であり、レール5、フレーム6およびベースプレート7には切れ目部分が存在し、この切れ目部分が、被測定者がレール5の内側空間に出入りするための出入口8となっている。ホルダ4は、走行モータ16によって回転駆動されるタイヤ15がベースプレート7上で転がることによって、レール5に沿って走行する。
【0025】
また、ベースプレート7の外周側には、ホルダ4の位置を検出するためのホルダセンサ9が22.5°の等間隔で計17個設けられている。ホルダセンサ9は、ホルダ4の位置を検出することにより、距離計2により測定した被測定者の身体表面の測定位置を特定する。なお、このホルダセンサ9は、180°以上の範囲に等間隔で複数個設けられていれば良い。
【0026】
また、図示しないが、フレーム6の内側には、被測定者の身体を固定するためのエアバッグ17(図3参照。)が設けられている。エアバッグ17は、空気を内部に導入することによりフレーム6の内側へ向かって膨んで被測定者の身体を挟持することにより、被測定者の身体が動かないようにフレーム6の内側に固定する固定手段である。
【0027】
なお、エアバッグ17は、距離計2による測定およびカメラ3による撮像を阻害しない高さに設定されている。また、エアバッグ17は、レール5、フレーム6およびベースプレート7と同様に、被測定者が出入口8からフレーム6の内側に出入りすることができるように分割されている。
【0028】
また、本実施形態における身体測定装置1は、図3に示すように各部を制御したり、演算処理を行ったりするための中央処理装置20を備えている。中央処理装置20は、被測定者の身体表面の測定位置を決定するためにカメラ3によりフレーム6の内側にいる被測定者を撮像し、このカメラ3により撮像した画像に基づいてサーボモータ12により距離計2の高さを調節する。
【0029】
なお、本実施形態においては、中央処理装置20は、カメラ3により撮像した画像から被測定者Pの測定位置としての臍の位置を計測し(図4参照。)、距離計2の測定位置が被測定者Pの臍の位置と一致するようにサーボモータ12を作動させて距離計2およびカメラ3の高さを自動的に調節する。なお、中央処理装置20は、距離計2により測定される身体表面の測定位置をカメラ3により撮像した画像とともにモニタ21に表示することで、被測定者自身により距離計2およびカメラ3の高さや、被測定者自身の測定位置の高さを調節させることも可能である。
【0030】
次に、上記構成の身体測定装置1による腹囲測定について説明する。
被測定者が出入口8からフレーム6の内側に入ると、中央処理装置20は、カメラ3により被測定者を認識し、エアバッグ17を作動させて膨らませ、フレーム6の内側に被測定者を身体が動かないように固定する。そして、中央処理装置20は、カメラ3により撮像した画像を解析して被測定者の臍の位置を検出し、サーボモータ12を作動させることにより距離計2の高さを自動調節する。
【0031】
次に、中央処理装置20は、走行モータ16を作動させてホルダ4をレール5上で走行させる。このとき、中央処理装置20は、ホルダセンサ9によりホルダ4の位置を検出し、それぞれの検出位置において距離計2により被測定者の身体表面までの距離を測定する。図4のA〜Qは各ホルダセンサ9の位置での距離計2による被測定者の身体表面の測定点を示している。
【0032】
そして、中央処理装置20は、これらの測定点A〜Qまでの距離から被測定者の腹囲の半分の軌跡を算出し、この軌跡を2倍して臍周りの腹囲を算出する。中央処理装置20は、この測定結果をモニタ21に表示する。なお、中央処理装置20は、この測定結果を通信ネットワーク(図示せず。)を通じて別のコンピュータなどの装置へ伝送して記録する構成とすることも可能である。
【0033】
そして、測定が完了すると、中央処理装置20はエアバッグ17を作動させて萎ませるので、被測定者はフレーム6の外側に出ることができる。なお、中央処理装置20は、エアバッグ17が膨らんだり、萎んだりするときに、モニタ21に表示したり、警告音を発したりしてアナウンスする構成とすることも可能である。
【0034】
以上のように、身体測定装置1によれば、距離計2による測定位置を、サーボモータ12を作動することにより合わせてから、ホルダ4をレール5上で回転させて被測定者の身体表面までの距離を180°の範囲に亘って22.5°の等間隔で測定し、身体表面の測定位置の周長である腹囲を算出するので、測定に際してはホルダ4上での距離計2およびカメラ3の高さ調整と、ホルダ4のレール5上での走行だけで良く、簡単な構成により低コストで導入可能な装置が得られる。
【0035】
また、この身体測定装置1は、距離計2により測定される身体表面の測定位置を、カメラ3により撮像した画像とともに表示するモニタ21を有するので、撮像した画像とともに表示される身体表面の測定位置を見ながら測定位置を調節することも可能であり、人の目を借りてより簡単かつ正確な測定位置の調節を行うことも可能である。
【0036】
また、身体測定装置1では、フレーム6の内側に被測定者を身体が動かないように固定するエアバッグ17を有するので、測定時に被測定者の身体が動くのを防止して、より正確な測定を行うことが可能である。特に、この身体測定装置1では、エアバッグ17がフレーム6の内側で膨らんで被測定者の身体を挟持するので、被測定者がどのような位置や向きでフレーム6の内側に入っていた場合であっても、エアバッグ17の膨らみにより被測定者の身体を挟持し、安定して固定することが可能であり、より正確な測定を行うことが可能である。なお、エアバッグ17に代えてベルトによりフレーム6に固定する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の身体測定装置は、腹囲や胸囲などの身体測定を自動的に行うための装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態における身体測定装置の斜視図である。
【図2】図1のホルダ部分の断面図である。
【図3】図1の身体測定装置のブロック図である。
【図4】図1の身体測定装置による測定範囲を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 身体測定装置
2 距離計
3 カメラ
4 ホルダ
5 レール
6 フレーム
7 ベースプレート
8 出入口
9 ホルダセンサ
10 ミラー
11 送りねじ
12 サーボモータ
13 スライダ
14 ガイド
15 タイヤ
16 走行モータ
17 エアバッグ
20 中央処理装置
21 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の身体表面までの距離を測定する距離測定手段と、
前記被測定者の身体表面の測定位置を決定するために前記被測定者を撮像する撮像手段と、
前記距離測定手段および撮像手段を高さ調節可能に支持するホルダと、
前記ホルダを被測定者の周囲で走行させるためのレールと、
前記ホルダを前記レール上で走行させながら前記距離測定手段により前記被測定者の身体表面までの距離を測定し、前記身体表面の測定位置の周長を算出する手段と
を有する身体測定装置。
【請求項2】
前記距離測定手段により測定される身体表面の測定位置を、前記撮像手段により撮像した画像とともに表示する表示手段を有する請求項1記載の身体測定装置。
【請求項3】
前記レールは、全円周の半分より大きい円弧状である請求項1または2に記載の身体測定装置。
【請求項4】
前記被測定者を身体が動かないように固定する固定手段を有する請求項1から3のいずれかに記載の身体測定装置。
【請求項5】
前記固定手段は、前記レールを支持するフレーム内で膨らんで前記被測定者の身体を挟持するエアバッグである請求項4記載の身体測定装置。
【請求項6】
前記撮像手段により撮像した画像を解析して前記距離測定手段により測定される身体表面の測定位置を検出し、前記ホルダの高さを自動調節する手段を有する請求項1から5のいずれかに記載の身体測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−201670(P2009−201670A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46507(P2008−46507)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【特許番号】特許第4308874号(P4308874)
【特許公報発行日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(596076126)株式会社マリネックス (7)
【Fターム(参考)】