説明

車両のアンダカバー

【課題】 別部品を設けることなく、下向き開口部を有する取付座部に渦を発生させずに下面の気流をスムースにすることができる車両のアンダカバーを提供すること。
【解決手段】 アンダカバー10の底面29から上方に向けて、下向き開口部311を有する取付座部31を突設するとともに、取付座部31の開口部311周縁前側に、底面29から下方に突出し前向きの傾斜面371を有する整流突起37を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体の下面側に装着される車両のアンダカバーに関し、特に、車両走行時のアンダカバーに沿う気流を乱さないようにした車両のアンダカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車体の下面には、該車体の下面を極力平面にして、走行時の空気抵抗を増加させないために、アンダカバーが取り付けられる。アンダカバーが取り付けられた車両のアンダボデー構造の一例として、特開平7−81629号公報(以下、「特許文献1」という。)がある。
この特許文献1には、アンダカバー20のフロアパネル26への取付部上面に、開口部を下方に向けたコ字状断面のリインホースメント54が設けられ、フロアパネル26への取付孔と同軸上に作業孔60が設けられ、この作業孔60に蓋62が取り付けられてアンダカバー20の下面が略平坦面に形成されたものが記載されている。
【0003】
また、特許文献1に記載されたアンダカバーは、アンダカバー本体と別に成形されたコ字状断面のリインホースメントとを組み合わせて、このリインホースメントをフロアパネルへの取付座部としたものであるが、近年、図5に示すように、合成樹脂製でアンダカバー本体に取付座部を一体成形して製造されることが多い。
【特許文献1】特開平7−81629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、アンダカバー910本体に取付座部を一体成形する場合は、取付座部931が下向き開口部9311を有する円錐筒状のものになるが、この円錐筒状のものでは、図6に太線の矢印で示すように、車両走行時の前方からの空気の流れが円錐筒状内に入り込み、この中で渦を発生させてアンダカバー910の下面を流れる空気が乱流となり、車両走行時の空力特性を低下させるという問題が生じていた。
このため、円錐筒状の下向き開口部を閉鎖して平面とする必要があるが、その場合は閉鎖するための別部品が必要となったり、そのために重量が増加したりするという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、別部品を設けることなく、下向き開口部を有する取付座部に渦を発生させずに下面の気流をスムースにすることができる車両のアンダカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る請求項1に記載の車両のアンダカバーは、車体の下面側に装着されるアンダカバーにおいて、該アンダカバーの底面から上方に向けて、下向き開口部を有する取付座部を突設するとともに、該取付座部の開口部周縁前側に、前記底面から下方に突出し前向きの傾斜面を有する整流突起を形成したことを特徴とする。
よって、車両走行時にアンダカバーの下面に沿って流れる前方からの空気が、前記整流突起により斜め下向きにアンダカバーの下面から離れる方向に流れて取付座部の内部には入り込みにくいため渦が発生せず、車両の走行安定性を向上させることができる。
【0007】
また、本発明に係る請求項2に記載の車両のアンダカバーは、請求項1に記載の車両のアンダカバーであって、前記取付座部が円錐筒状であり、前記整流突起が前記開口部周縁の略半周にわたって設けられていることを特徴とする。
よって、取付座部を円錐筒状としたことにより、開口部の面積を小さくして取付座部を分散することができるとともに、整流突起を開口部周縁の略半周に設けたことにより、車両走行時の気流を過不足なく前記開口部から逃がすことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両のアンダカバーによれば、別部品を設けることなくアンダカバーの底面に設けられた取付座部の開口部から気流を剥離させて取付座部の内部に渦を発生させず、車両の走行安定性を向上させることができるアンダカバーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明に係る車両のアンダカバーの一の実施の形態について図面を参照して説明する。
ここで、図1は、車両のアンダカバーを示した斜視図であり、図2は、図1のII−II線に沿う断面図であり、図3は、取付座部の拡大平面図である。
【実施例】
【0010】
車両のアンダカバーの構成について説明する。車両のアンダカバー10は、図1に示すように、前端をフロントバンパ(図略)の下端と共締めで車両のフレーム(図略)に締め付けられるフロント部20と、該フロント部20の後部に連続して、エンジン(図略)の下面を覆うリヤ部30とからなる合成樹脂材料を真空成形したものである。
フロント部20は、前端の4箇所にアンダカバー10を車両のフレームに取り付けるための取付座部aと、後部の左右端に取付座部bが設けられ、これら取付座部a、bから一段低い位置に、前部が若干上方に傾斜する底面29を形成し、この底面29の前後方向に複数のビードαを設けたものである。
【0011】
リヤ部30は、フロント部20の後端から一段高く成形されて周囲のフランジ部381を形成し、取付座部c、dを設けた縁部38と、該縁部38から若干凹んで一般面となる底面39とを有し、該底面39に前後方向に設けられた複数のビードβを設けたものである。
【0012】
本実施の形態のアンダカバー10には、中央部の垂れ下がりを防止するために、リヤ部30の前側で車両の幅方向に延在し、平面視で前方に湾曲した鋼板製のリインホースメント50が取り付けられている。このリインホースメント50は、図2の断面図に示すように、平板部51の車両の前後方向となる両端に、下向きに開口する半円状のビード部53を設けた細長いプレス成型品である。
【0013】
リインホースメント50の左右両端はリヤ部30の左右のフランジ部381に、平板部51が載置されてボルトにより締め付けられる。リインホースメント50の平板部51とリヤ部30の底面39との間には、空間Hが生じるため、リヤ部30の所定位置(本実施の形態では4箇所)に、該底面39から上方に向けて、下向き開口部311を有する取付座部31が突設されている。
【0014】
取付座部31は、底面39から上方に向けて円錐筒状に突設される縦壁部33と、該縦壁部33の上端で前記リインホースメント50の平板部51と結合される上底部35とからなる。この上底部35の中央部に穿設された取付孔351にボルト60を挿通して、リインホースメント50の平板部51に溶接されているウェルドナット52に締め付けることにより、リインホースメント50をリヤ部30に締結している。
【0015】
取付座部31の開口部311周縁の前側半周には、図3にも示すように、底面39から下方に突出し前向きの傾斜面371を有する整流突起37が形成されている。整流突起37が形成された取付座部31の開口部311周縁の前側半周の前記縦壁部33は、縦壁延在部331を介して前記傾斜面371の下端部と接続されている。
そして、傾斜面371の、前記開口部311周縁における端部は、取付座部31の中心と直交する直線上で傾斜端面373により底面39に戻るように接続されている。
【0016】
次に、アンダカバー10の動作について説明する。アンダカバー10が取り付けられた車両が走行すると、前方からアンダカバー10の下面に沿って空気が流れ、図4に太線の矢印で示すように、取付座部31の部分では、その開口部311周縁の前側に設けた整流突起37により気流が斜め下方に向かって進み、取付座部31の円錐筒状内には入り込まず、この円錐筒状内部に渦が発生しないため、取付座部31近辺の空気はスムースな流れとなる。
【0017】
したがって、上記のような取付座部31が多数設けられたアンダカバー10にあっては、車両走行時の空気抵抗が減少するとともに走行安定性が向上し、快適に運転できる車両とすることができる。
【0018】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施の形態では、円錐筒状の取付座部の前側に整流突起を設けたもので説明したが、これに限られず、角状の筒や車両幅方向に設けられた溝状のビードの前側に整流突起を設けたものでも可能である。
また、アンダカバーは車両の後部に取り付けるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、車体の下面側に装着されるアンダカバーにおいて、該アンダカバーの底面から上方に向けて、下向き開口部を有する取付座部を突設するとともに、該取付座部の開口部周縁前側に、前記底面から下方に突出し前向きの傾斜面を有する整流突起を形成したので、取付座部内での空気の渦の発生を防止し、車両の走行安定性を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る車両のアンダカバーを示した斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る車両のアンダカバーに設けた取付座部の拡大平面図である。
【図4】車両走行時の空気の流れを示す図1のII−II線に沿う断面図である。
【図5】従来の車両のアンダカバーを示した斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 アンダカバー
20 フロント部
29 底面
30 リヤ部
31 取付座部
311 開口部
33 縦壁部
331 縦壁延在部
35 上底部
37 整流突起
371 傾斜面
39 底面
50 リインホースメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下面側に装着されるアンダカバーにおいて、
該アンダカバーの底面から上方に向けて、下向き開口部を有する取付座部を突設するとともに、
該取付座部の開口部周縁前側に、前記底面から下方に突出し前向きの傾斜面を有する整流突起を形成したことを特徴とする車両のアンダカバー。
【請求項2】
前記取付座部が円錐筒状であり、前記整流突起が前記開口部周縁の略半周にわたって設けられている請求項1に記載の車両のアンダカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−205910(P2006−205910A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21230(P2005−21230)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】