説明

車両のハイブリッドパワートレーン

【課題】車両の燃費を一層向上させ、スポーティーな変速感を具現するとともに、その全長が長くならないようにして車両への搭載上の問題を解消した車両のハイブリッドパワートレーンを提供する。
【解決手段】駆動ギアを備えた入力軸と、第1被動ギア及び第2被動ギアと、前記入力軸に平行に配置された第1駆動軸と、前記入力軸に平行に配置された第2駆動軸と、前記第1駆動軸と第2駆動軸に平行に配置された出力軸と、前記出力軸に備えられた多数の変速被動ギアにそれぞれ噛み合って各変速段をなすように前記第1駆動軸及び第2駆動軸にそれぞれ備えられた多数の変速駆動ギアと、前記多数の変速駆動ギアをそれぞれ前記第1駆動軸または第2駆動軸に同期して噛み合わせるように備えられた多数の同期装置と、前記第1駆動軸と第2駆動軸及び出力軸に平行な回転軸に配置され、前記駆動ギアに動力を提供する電気モーターと、を含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のハイブリッドパワートレーンに係り、より詳しくはDCTを用いた車両のハイブリッドパワートレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、関心が高まっている高油価及びCO2環境規制に対応するために、車両の燃費改善がより一層必要な状況であり、現時点で最も現実的な対応策は内燃機関の効率改善と動力を伝達する駆動系の効率改善であると言える。
従来の駆動系のうち、効率が最も優れた変速機は手動変速機であり、これに基づくダブルクラッチ変速機(DCT:Double Clutch Transmission)も伝達効率が一般ATまたはCVTに比べて優れている。従って、このように効率に優れたDCTに電気モーターを組み合わせたハイブリッド型の変速機を構成すれば、現在の内燃機関車両の燃費を一層改善させることができる。
【0003】
しかし、従来のハイブリッドパワートレーン構造は、図1に示すように、エンジン500と変速機502の間に電気モーター504を組み合わせているが、従来のDCTの場合、通常軸方向に二つのクラッチが重畳して配置された構造であるため、図1の変速機部分の長さが従来のATまたはCVTより長くなる。このような構造はエンジン500から変速機に至る全搭載長を長くするので、車両への搭載には大きな問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−336804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであって、DCTを使うハイブリッドパワートレーンを構成して、車両の燃費を一層向上させ、スポーティーな変速感を具現するとともに、その全長が長くならないようにして車両への搭載上の問題を解消した車両のハイブリッドパワートレーンを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両のハイブリッドパワートレーンは、駆動ギア(1)を備えた入力軸(3)と、前記駆動ギア(1)にそれぞれ噛み合う第1被動ギア(5)及び第2被動ギア(7)と、前記第1被動ギア(5)と第1クラッチ(9)を備え、前記入力軸(3)に平行に配置された第1駆動軸(11)と、前記第2被動ギア(7)と第2クラッチ(13)を備え、前記入力軸(3)に平行に配置された第2駆動軸(15)と、前記第1駆動軸(11)と第2駆動軸(15)に平行に配置された出力軸(17)と、前記出力軸(17)に備えられた多数の変速被動ギア(19)にそれぞれ噛み合って各変速段をなすように前記第1駆動軸(11)及び第2駆動軸(15)にそれぞれ備えられた多数の変速駆動ギア(21)と、前記多数の変速駆動ギア(21)をそれぞれ前記第1駆動軸(11)または第2駆動軸(15)に同期して噛み合わせるように備えられた多数の同期装置(23)と、前記第1駆動軸(11)、第2駆動軸(15)及び出力軸(17)に平行な回転軸に配置され、前記駆動ギア(1)に動力を提供する電気モーター(25)と、を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、DCTを使うハイブリッドパワートレーンを構成して、車両の燃費を一層向上させ、スポーティーな変速感を具現するとともに、その全長があまり長くならないようにして車両への搭載上の問題点を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来技術によるハイブリッドパワートレーンの構造を示す図である。
【図2】本発明による車両のハイブリッドパワートレーンの実施例を示す図である。
【図3】図2を出力軸に直角な方向から見た軸配置図である。
【図4】図2を出力軸に直角な方向から見た軸配置図である。
【図5】本発明による車両のハイブリッドパワートレーンの他の実施例を示す図である。
【図6】図5の実施例の作用を説明する図である。
【図7】図5の実施例の作用を説明する図である。
【図8】図5の実施例の作用を説明する図である。
【図9】本発明による車両のハイブリッドパワートレーンのさらに他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2に示す通り、本発明車両のハイブリッドパワートレーンの実施例は、駆動ギア1を備えた入力軸3と、駆動ギア1にそれぞれ噛み合う第1被動ギア5及び第2被動ギア7と、第1被動ギア5と第1クラッチ9を備え、入力軸3に平行に配置された第1駆動軸11と、第2被動ギア7と第2クラッチ13を備え、入力軸3に平行に配置された第2駆動軸15と、第1駆動軸11と第2駆動軸15に平行に配置された出力軸17と、出力軸17に備えられた多数の変速被動ギア19にそれぞれ噛み合って各変速段をなすように第1駆動軸11及び第2駆動軸15にそれぞれ備えられた多数の変速駆動ギア21と、多数の変速駆動ギア21をそれぞれ第1駆動軸11または第2駆動軸15に同期して噛み合わせるように備えられた多数の同期装置23と、第1駆動軸11、第2駆動軸15及び出力軸17に平行な回転軸に配置され、駆動ギア1に動力を提供する電気モーター25と、を含んで構成される。
【0010】
電気モーター25、第1駆動軸11、第2駆動軸15及び出力軸17は互いに最大に重畳して、これらの中で最長のものの範囲内に互いに配置され、電気モーター25の回転軸、第1駆動軸11、第2駆動軸15及び出力軸17は4角形を成して配置される。
すなわち、エンジン27とは別に駆動力を提供する電気モーター25を、第1駆動軸11、第2駆動軸15及び出力軸17に平行、かつ互いに隣接して最大に重畳するように配置することで、結果としてこれらの中で最長のものの長さ範囲内の四角形内にこれらすべての構成要素が配置されるようにするものであり、変速機構と電気モーターがなす軸方向の長さをできるだけ短く構成したものである。
【0011】
さらに、第1クラッチ9と第2クラッチ13及び入力軸3は駆動ギア1を介して提供される動力を多数の変速駆動ギア21及び変速被動ギア19に伝達してDCTの作動を具現する。そして、従来のクラッチが軸方向に重畳した場合に比べて軸方向長さを短く形成することで、変速機と電気モーター25が占める軸方向長さを最小にしたものである。
【0012】
図3及び図4は、図2を出力軸に直角な方向から見た軸配置図である。図3では電気モーター25と駆動ギア1が入力軸3に一体的に結合されており、図4では電気モーター25の回転軸にピニオン29が結合され、ピニオン29は駆動ギア1に噛み合うことにより、電気モーター25と駆動ギア1の回転軸が同心軸を成すか成していない配置構造を有することができることを示唆している。
駆動ギア1を備えた入力軸3にはメインクラッチ31を介してエンジン27が連結される。結果として電気モーター25の回転軸は図3の実施例ではエンジン27と同心軸を成して配置された状態であり、図4の実施例では平行ではあるが同心軸を成していない配置状態を意味するものである。
【0013】
本実施例において、エンジン27と駆動ギア1の間には、メインクラッチ31の外に、エンジン27のねじれ振動を減殺するためのダンパー33が備えられる。メインクラッチ31はダンパー33の両側に二つ備えられている例を例示しているが、これらのいずれか一方を省略した構成も可能である。
第1駆動軸11には、通常のDCT構成と同様の奇数段の変速段を具現する奇数段の変速駆動ギア21が備えられ、第2駆動軸15には偶数段の変速段を具現する多数の偶数段の変速駆動ギア21が備えられ、後進駆動ギア35は第2駆動軸15に備えられてアイドルギア37を介して出力軸17の後進被動ギア39を駆動するようになっている。
【0014】
図2の実施例はFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載可能なハイブリッドパワートレーンを示すもので、出力軸17には縦減速ギア41が備えられ、縦減速ギア41は前輪差動装置43に噛み合って、前方の駆動輪を駆動できるようになっている。
図5の実施例はFR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載可能なハイブリッドパワートレーンを示すもので、出力軸17には推進軸45が連結され、推進軸45には後輪差動装置47が連結されて、後方の駆動輪を駆動できるようになっている。
【0015】
以下、図6〜図8に基づいて図5の本発明の実施例の作用について説明する。
図6はエンジン27からの駆動力によって1速走行がなされる状況を説明するもので、電気モーター25は駆動されていない状態である。
すなわち、エンジン27からの動力はメインクラッチ31を介して入力軸3の駆動ギア1を駆動し、駆動ギア1の動力は第1被動ギア5及び第2被動ギア7に同時に供給される。第1クラッチ9が連結されることで第1被動ギア5の回転力は第1駆動軸11を回転させる。同期装置23が1速の変速駆動ギア21を第1駆動軸11に同期して噛み合わせた状態であるため、第1駆動軸11の動力は1速の変速駆動ギア21と変速被動ギア19を介して出力軸17を回転させ、1速の動力が出力軸17を通じて出力される。
【0016】
図7は図6の駆動状態で電気モーター25によって発生した動力が加わる場合を示すもので、他の作動は図6の場合と同様である。電気モーター25が駆動力を駆動ギア1に提供しているため、エンジン27からの動力とともに電気モーター25からの動力が加わって1速に変速された後、出力軸17に出力されるもので、車両の加速または登板の際に使われるハイブリッドモードである。
図8は図7の駆動状態でメインクラッチ31を遮断してエンジン27を停止させた状態を示すものである。電気モーター25から提供される動力だけで1速の変速がなされ出力軸17を駆動する状況を示すものであり、純粋の電気車モードの走行がなされる。
その他の変速段への変速または動力の流れは従来の手動変速機やDCTの場合と同様であるので省略する。
【0017】
図9は本発明のさらに他の実施例を示すもので、本発明のパワートレーンで4輪駆動を具現した例である。出力軸17には前輪差動装置43と推進軸45が連結され、推進軸45には後輪差動装置47が連結されることにより、前輪及び後輪のいずれも駆動輪として作用することができる構造である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、DCTを使うハイブリッドパワートレーンを構成して、車両の燃費を一層向上させ、スポーティーな変速感を具現するとともに、その全長が長くならないようにして車両への搭載上の問題解消を狙いとした車両のハイブリッドパワートレーンに適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 駆動ギア
3 入力軸
5 第1被動ギア
7 第2被動ギア
9 第1クラッチ
11 第1駆動軸
13 第2クラッチ
15 第2駆動軸
17 出力軸
19 変速被動ギア
21 変速駆動ギア
23 同期装置
25 電気モーター
27 エンジン
29 ピニオン
31 メインクラッチ
33 ダンパー
35 後進駆動ギア
37 アイドルギア
39 後進被動ギア
41 縦減速ギア
43 前輪差動装置
45 推進軸
47 後輪差動装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ギア(1)を備えた入力軸(3)と、
前記駆動ギア(1)にそれぞれ噛み合う第1被動ギア(5)及び第2被動ギア(7)と、
前記第1被動ギア(5)と第1クラッチ(9)を備え、前記入力軸(3)に平行に配置された第1駆動軸(11)と、
前記第2被動ギア(7)と第2クラッチ(13)を備え、前記入力軸(3)に平行に配置された第2駆動軸(15)と、
前記第1駆動軸(11)と第2駆動軸(15)に平行に配置された出力軸(17)と、
前記出力軸(17)に備えられた多数の変速被動ギア(19)にそれぞれ噛み合って各変速段をなすように前記第1駆動軸(11)及び第2駆動軸(15)にそれぞれ備えられた多数の変速駆動ギア(21)と、
前記多数の変速駆動ギア(21)をそれぞれ前記第1駆動軸(11)または第2駆動軸(15)に同期して噛み合わせるように備えられた多数の同期装置(23)と、
前記第1駆動軸(11)、第2駆動軸(15)及び出力軸(17)に平行な回転軸に配置され、前記駆動ギア(1)に動力を提供する電気モーター(25)と、
を含んでなることを特徴とする車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項2】
前記電気モーター(25)、第1駆動軸(11)、第2駆動軸(15)及び出力軸(17)は互いに最大に重畳してこれらの中で最長のものの範囲内に配置され、
前記電気モーター(25)の回転軸、前記第1駆動軸(11)、第2駆動軸(15)及び出力軸(17)は4角形を成して配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項3】
前記電気モーター(25)と前記駆動ギア(1)は、入力軸(3)上に一体的に結合されたことを特徴とする請求項2に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項4】
前記電気モーター(25)の回転軸にはピニオン(29)が結合され、
前記ピニオン(29)は前記駆動ギア(1)に噛み合うことを特徴とする請求項2に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項5】
前記駆動ギア(1)を備えた入力軸(3)にはメインクラッチ(31)を介してエンジン(27)が連結されたことを特徴とする請求項2に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項6】
前記エンジン(27)と駆動ギア(1)の間にはエンジン(27)のねじれ振動を減殺するためのダンパー(33)が備えられたことを特徴とする請求項5に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項7】
前記出力軸(17)には縦減速ギア(41)が備えられ、
前記縦減速ギア(41)は前輪差動装置(43)に噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項8】
前記出力軸(17)には推進軸(45)が連結され、
前記推進軸(45)には後輪差動装置(47)が連結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。
【請求項9】
前記出力軸(17)には前輪差動装置(43)と推進軸(45)が連結され、
前記推進軸(45)には後輪差動装置(47)が連結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両のハイブリッドパワートレーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−63756(P2013−63756A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252628(P2011−252628)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】