説明

車両のバッテリ搭載構造

【課題】本発明は、後輪を駆動する車両にも適用でき、車両の走行性能の低下を抑制することのできる車両のバッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】バッテリ(3)は、車両後方の車両幅方向中央に位置する一角に逃げ部(3a)が形成されている。また、バッテリ(3)は、燃料タンク(10)と車幅方向に並列で一体となるように一対のクロスメンバブラケット(12)によりバッテリ(3)と燃料タンク(10)のそれぞれの上面の前後が固定されている。そして、バッテリ(3)と燃料タンク(10)は、一対のサイドメンバ(9)内のドライブシャフト(7)の前方にドライブシャフト(7)と近接するように一対のクロスメンバブラケット(12)を介して、車両(1)のフロア(13)に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ搭載構造に係り、詳しくは、モータ駆動用バッテリ搭載位置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関(エンジン)の他に電動機(モータ)を備えるハイブリット自動車では、電力を蓄電し、蓄電した電力をモータへ供給する蓄電池(バッテリ)が車両のフロア下部に配設されている。例えば、特許文献1に記載されているように乗員の着座するシート下部のフロアを他の面より高くし、シート下部のフロア下にバッテリと車幅方向に並列して燃料タンクを配設するように構成されているものが知られている。このような構成の車両の下部車体構造は、フロアの下部にバッテリを配設しているので、車両前後方向の長さを短縮しつつ、車室内の低床化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−138753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の車両の下部車体構造では、フロアの下部に車幅方向に並列してバッテリと燃料タンクを配設しており、後輪を駆動する車両に適用すると車両下部に後輪に駆動力を伝達させる駆動系部品(例えばプロペラシャフトやリヤデファレンシャル装置)があり、バッテリ或いは燃料タンクが干渉することとなり適用することが困難であった。
【0005】
また、特許文献1の構造では、車両前後方向のほぼ中央にあるシート下部にバッテリを配設しているため、車両の最低地上高が低下することにより、不整地での走破性を示す指標である前輪と後輪の接地点から伸びる線をホイールベース中心に位置する車体底部で交差させたときの角度、所謂ランプブレークオーバーアングルが小さくなり、車両の走行性能が低下する虞もある。
【0006】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、後輪側に差動装置を有する車両であっても、車両の走行性能の低下を抑制することのできる車両のバッテリ搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両のバッテリ搭載構造では、車両の動力源としての内燃機関及び電動機と、前記電動機に電力を供給するバッテリと、前記内燃機関の動力を前記車両の後輪側に伝達するプロペラシャフトと、前記プロペラシャフトに接続されると共に該プロペラシャフトから伝達される動力を前記車両の左右後輪に分配する差動装置と、前記差動装置により分配された動力を前記左右後輪に伝達するドライブシャフトとを備えるハイブリッド車のバッテリ搭載構造において、前記差動装置は、前記プロペラシャフトとの接続部より前記車両の後方へ向かって車幅方向へ広がる傾斜部を有し、前記バッテリは、前記プロペラシャフトの側方であって前記ドライブシャフトの前方に配置されると共に前記差動装置のバッテリ側傾斜部と対面する一角に該バッテリ側傾斜部に沿うバッテリ逃げ部を形成することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の車両のバッテリ搭載構造では、請求項1において、前記内燃機関に供給する燃料を貯留する燃料タンクを更に備え、前記燃料タンクは、前記差動装置のタンク側傾斜部と対面する一角に該タンク側傾斜部に沿うタンク逃げ部が形成され、前記蓄電池及び前記燃料タンクは前記プロペラシャフトを挟んで前記車両の幅方向に並設されると共に一つ一のブラケットを介して前記車両の車体に支持されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の車両のバッテリ搭載構造では、請求項1或いは2において、前記蓄電池は、前記車両の左右両側に車両前後方向に延設される一対の車体構成部材の間に配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、蓄電池は、車両後方側の一角に差動装置との干渉を回避するためのバッテリ逃げ部を有し、バッテリ逃げ部により差動装置と当接することなくバッテリを車両の後方までさげて配置することができる。
従って、蓄電池をドライブシャフトに近接させて配置することができるので、後輪駆動の車両であってもランプブレークオーバーアングルを確保することができ車両の走行性能の低下を抑制することができる。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、燃料タンクの一角にバッテリと同様、差動装置との干渉を回避するためのタンク逃げ部が形成されている。更に、蓄電池は、燃料タンクと一つのブラケットを介して車体に支持され、燃料タンクと車両の幅方向に並設するようにしている。
従って、燃料タンクをバッテリと同程度まで車両後方に配置することが可能となる。更に、蓄電池を燃料タンクと同一のブラケットにより一体的に車体に支持されるので、燃料タンクと同時に蓄電池を車両に搭載することができ、蓄電池の車両搭載性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項3の発明によれば、蓄電池を車両の左右両側に車両前後方向に延設する一対の車体構成部材の間に配設するようにしている。
従って、一対の車体構成部材の間に蓄電池を配設しているので、例えば車両の側方に他車が衝突した場合でも一対の車体構造部材により蓄電池を保護することができ、蓄電池の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のバッテリ搭載構造が適用された車両の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両のバッテリ搭載構造が適用された車両の下面視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両のバッテリ搭載構造が適用された車両の概略構成図である。また、図2は、車両のバッテリ搭載構造が適用された車両の下面視図である。また、図3は、図2のA−Aでの断面図である。なお、図中矢印「上」は車体上方向、矢印「前」は車体前方向、矢印「横」は車体幅方向をそれぞれ示す。以下、車両の構成を説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、当該車両1の走行装置として、エンジン(内燃機関)2と、バッテリ(蓄電池)3より電力が供給されインバータにより制御される図示しない走行用モータ(電動機)とを備えるハイブリット自動車である。また、車両1は、エンジン2及び走行用モータで発生した駆動力を変速機4で走行に適した駆動力とし、当該駆動力をプロペラシャフト4を介して差動装置(リヤデファレンシャル装置)6に伝達し、リヤデファレンシャル装置6から一対のドライブシャフト7を介して車両1の左右の後輪8に駆動力を伝達することで後輪を駆動する後輪駆動車である。
【0016】
エンジン2は、車両1の左右両側を前後方向に延伸するように設けられている一対のサイドメンバ(車体構成部材)9の車両前方に配設されている。
変速機4は、エンジン2の後方に図示しないボルトにて締結され、一対のサイドメンバ9に車両前方のクロスメンバ11等を介して車両1に配設されている。
プロペラシャフト5は、車両幅方向の略中央に位置し、一端が変速機4に接続されている。他端は、リヤデファレンシャル装置6と接続される接続部6cでボルトにより締結されている。
【0017】
リヤデファレンシャル装置6は、一対のサイドメンバ9に車両後方のクロスメンバ11を介して、車両1の車両後方であって、車両幅方向の略中央に位置するように配設されている。リヤデファレンシャル装置6の外形は、車両前方側であって接続部6cから後方に向けて車両幅方向に広がるような傾斜部を有する形状となっている。ここで、バッテリと向き合う側の傾斜部をバッテリ側傾斜部6aとし、燃料タンクと向き合う側の傾斜部をタンク側傾斜部6bとする。
【0018】
一対のドライブシャフト7は、一端をリヤデファレンシャル装置6に、他端をそれぞれ左右後輪8に接続されている。
左右後輪8は、一対のサイドメンバ9の左右それぞれに図示しないサスペンション等を介して車両1の車両後方の両側部に位置するように配設されている。
図2及び図3に示すように、バッテリ3は、車両後方の車両幅方向中央に位置する一角に当該バッテリ3の後端に向かうにつれ、バッテリ3の幅を狭くするバッテリ逃げ部3aが形成されている。
【0019】
また、エンジン2に供給される燃料を貯留する燃料タンク10には、車両後方の車両幅方向中央に位置する一角に燃料タンク側傾斜部6bと向きあうタンク逃げ部10aが形成されている。
更に、バッテリ3は、燃料タンク10と車幅方向に並列で一体となるように一対のクロスメンバブラケット(ブラケット)12によりバッテリ3と当該燃料タンク10のそれぞれの上面の前後で固定されている。
【0020】
バッテリ3と燃料タンク10は、バッテリ逃げ部3a及びタンク逃げ部10aがリヤデファレンシャル装置6の外形と対応し、バッテリ3及び燃料タンク10とリヤデファレンシャル装置6とが当接することなく、一対のサイドメンバ9間のドライブシャフト7の前方に近接するように車両1に配設されている。そして、バッテリ3と燃料タンク10は、プロペラシャフト5がバッテリ3と燃料タンク10との間を通るように一対のクロスメンバブラケット12を介して、車両1の車体を形成する一部であるフロア13に固定されている。
【0021】
また、バッテリ3と燃料タンク10との間には、エンジン1から排出される排気を車両1の後方に排出する排気管14も配設されている。
このように構成された本発明の実施形態に係る車両のバッテリ搭載構造では、バッテリ3の車両後方の車両幅方向中央に位置する一角に当該バッテリ3の後端に向かうにつれ、バッテリ3の幅を狭くするバッテリ逃げ部3aが形成されており、バッテリ3とリヤデファレンシャル装置6とが接触することなくドライブシャフト7の前方に近接するようにバッテリ3を車両1のフロア13下に固定することができる。
【0022】
従って、バッテリ3をドライブシャフト7に近づけることができるので、車両1のような後輪側に差動装置を有する車両であっても、バッテリ3を車両の後方までさげて配置することができる。よって、ランプブレークオーバーアングルを確保することができ車両1の走行性能の低下を抑制することができる。
また、燃料タンク10にもタンク逃げ部10aが形成されており、燃料タンク10とリヤデファレンシャル装置6とが接触することなくドライブシャフト7の前方に近接するように燃料タンク10を車両1のフロア13下に固定することができる。更に、バッテリ3の上面と燃料タンク10の上面とを一対のクロスメンバブラケット12で一体に固定し、一対のクロスメンバブラケット12を介して車両1のフロア13に固定しているので、バッテリ3を車両に搭載する際に燃料タンク10と同時に車両に搭載することができ、バッテリ3の車両搭載性を向上させることができる。
【0023】
また、一体に固定されたバッテリ3と燃料タンク10を一対のサイドメンバ9間に配設しているので、例えば車両の側方に他車が衝突した場合でもサイドメンバ9によりバッテリ3を保護することができ、バッテリ3の破損を防止することができる。
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0024】
上記実施形態では、車両1を後輪駆動のハイブリッド車としているが、これに限定されるものではなく、例えば前輪駆動であっても、後輪を駆動させる四輪駆動車であれば、本実施形態と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
また、バッテリ1の逃げ部3aをバッテリ3の後端に向かうにつれ、バッテリ3の幅を狭くするようにしているが、これに限定されるものではなく、一角を矩形形状に切り落とした形状としてもよく、リヤデファレンシャル装置6と当接しない形状であればよい。
【符号の説明】
【0025】
1 車両
2 エンジン(内燃機関)
3 バッテリ(蓄電池)
5 プロペラシャフト
6 リヤデファレンシャル装置(差動装置)
6a バッテリ側傾斜部
6b タンク側傾斜部
6c 接続部
7 ドライブシャフト
9 サイドメンバ(車体構成部材)
12 クロスメンバブラケット(ブラケット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源としての内燃機関及び電動機と、
前記電動機に電力を供給するバッテリと、
前記内燃機関の動力を前記車両の後輪側に伝達するプロペラシャフトと、
前記プロペラシャフトに接続されると共に該プロペラシャフトから伝達される動力を前記車両の左右後輪に分配する差動装置と、
前記差動装置により分配された動力を前記左右後輪に伝達するドライブシャフトと、を備えるハイブリッド車のバッテリ搭載構造において、
前記差動装置は、前記プロペラシャフトとの接続部より前記車両の後方へ向かって車幅方向へ広がる傾斜部を有し、
前記バッテリは、前記プロペラシャフトの側方であって前記ドライブシャフトの前方に配置されると共に前記差動装置のバッテリ側傾斜部と対面する一角に該バッテリ側傾斜部に沿うバッテリ逃げ部を形成することを特徴とするハイブリッド車のバッテリ搭載構造。
【請求項2】
前記内燃機関に供給する燃料を貯留する燃料タンクを更に備え、
前記燃料タンクは、前記差動装置のタンク側傾斜部と対面する一角に該タンク側傾斜部に沿うタンク逃げ部が形成され、
前記蓄電池及び前記燃料タンクは前記プロペラシャフトを挟んで前記車両の幅方向に並設されると共に一つのブラケットを介して前記車両の車体に支持されることを特徴とする、請求項1に記載の車両のバッテリ搭載構造。
【請求項3】
前記蓄電池は、前記車両の左右両側に車両前後方向に延設される一対の車体構成部材の間に配設されることを特徴とする、請求項1或いは2に記載の車両のバッテリ搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148749(P2012−148749A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10936(P2011−10936)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】