説明

車両のフロア構造

【課題】 車両の側突時におけるロッカの転倒量を小さくし、センターピラーの車両内側への侵入量を小さくすることができる車両のフロア構造を提供する。
【解決手段】 フロアパネル1における車幅方向中央部には、車両の前後方向に延在するトンネル2が設けられており、フロアパネル1の車幅方向側方部には、車両の前後方向に延在するロッカ3が設けられている。トンネル2とロッカ3との間には、フロアクロスメンバ4が掛け渡されている。フロアクロスメンバ4は、第一フロアクロスメンバ11と第二フロアクロスメンバ12とを備えており、それらの嵌合部13には、脆弱部Fが形成されている。脆弱部Fは、フロアパネル1におけるフロアパネル1における左右方向側部よりも左右方向中央位置側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロア構造として、従来、図7に示すように、車両におけるフロアパネル51の側部に車両の前後方向に沿って延在するロッカ52が設けられ、このロッカ52の側方にフロアクロスメンバ53が設けられたものが知られている。このフロアクロスメンバ53は、反ロッカ側端部がフロアパネル51に対して固定されている。また、ロッカ52におけるフロアクロスメンバ53が設けられた側と反対側の側面(外側面)には、センターピラー54が取り付けられている。
【0003】
ここで、車両に対して側突が生じた場合、センターピラーの転倒を防止することが望まれる。ところが、図7に示す従来の車両のフロア構造では、フロアクロスメンバが全体的に床面に固定されている。このため、車両に側突が生じた場合に、フロアクロスメンバの変形量が少なくなり、フロアクロスメンバがロッカ付近の位置で変形してしまい、ロッカの転倒を防止するのが困難となる。このため、ロッカとともにセンターピラーが転倒しやすくなるという問題があった。
【0004】
この問題に対して、車両に側突が生じた場合にセンターピラーの転倒を防止する車両の下部車体構造が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。この車両の下部車体構造では、床面の左右方向中央部に車両の前後方向に沿って延在するトンネルが設けられており、フロアクロスメンバが外側部材と内側部材とに分割され、外側部材がフロアパネルに固定されている。また、外側部材とトンネルとの間にエネルギー吸収部材が配設されており、フロアパネルにおける外側部材よりも内側位置には、側突によって入力される荷重による変形可能な変形部が設けられているものである。このような構造を有することにより、車両に側突が生じた場合に、外側部材の転倒を防止し、センターピラーの車室内への侵入量を小さくするようにしている。
【特許文献1】特許2868626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された車両の下部車体構造では、フロアクロスメンバは、下側に向かって開放された略コ字状断面に部材であって、その前後各下端縁にはフランジが形成されている。このフランジがフロアパネルの上面に接続されており、車幅方向に延びる閉断面構造が形成されている。このため、車両に側突が生じた場合、側面からの衝突荷重がフロアパネルを通じて斜めに衝突面側に拡散してしまい、荷重が脆弱部まで届かず、結果として外側部材の転倒を好適に防止することができないこととなる。したがって、外側部材(ロッカ)の転倒量が多くなってしまい、センターピラーの車両内側への侵入量が多くなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、車両の側突時におけるロッカの転倒量を小さくし、センターピラーの車両内側への侵入量を小さくすることができる車両のフロア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る車両のフロア構造は、床面の左右方向側部に配置され、車両の前後方向に沿って延在するロッカが設けられた車両のフロア構造であって、車両の左右方向に延在するフロアクロスメンバがロッカにおける車両の左右方向内側に配設され、ロッカにセンターピラーが設けられており、フロアクロスメンバは、床面の左右方向中央位置と床面の左右方向側部との中間位置よりも床面の左右方向中央位置側まで延在しており、フロアクロスメンバにおける床面の左右方向側部よりも左右方向中央位置側に、脆弱部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る車両のフロア構造は、フロアクロスメンバは、床面の左右方向中央位置よりも側部側まで延在しており、フロアクロスメンバに脆弱部が形成されている。ここで、脆弱部は、フロアクロスメンバにおける床面の左右方向側部よりも左右方向中央位置に近い位置に形成されている。このため、脆弱部が破壊したときに、フロアクロスメンバにおける反ロッカ側端部の下降量を少なくすることができる。その結果、車両の側突時におけるロッカの転倒量を小さくし、センターピラーの車両内側への侵入量を小さくすることができる。
【0009】
ここで、フロアクロスメンバの上面が水平とされており、フロアクロスメンバの下面側に、ブリッジ状の湾曲部が形成されている態様とすることができる。
【0010】
このように、フロアクロスメンバの上面が水平とされていることにより、フロアクロスメンバが直線状に支持される。その結果、側突によって生じる荷重に対する剛性を高くすることができる。また、フロアクロスメンバの下面側に、ブリッジ状の湾曲部が形成されていることにより、側突による衝突荷重が床面を通じて斜めに衝突面側に拡散することを防止することができる。その結果、荷重を脆弱部まで効率よく伝達することができる。したがって、車両の側突時におけるロッカの転倒量を小さくし、センターピラーの車両内側への侵入量を小さくすることができる。
【0011】
また、床面の左右方向中央位置に、車両の前後方向に沿って延在するトンネルが設けられており、フロアクロスメンバは、ロッカとトンネルとの間に掛け渡されている態様とすることができる
【0012】
このように、フロアクロスメンバは、ロッカとトンネルとの間に掛け渡されていることにより、フロアクロスメンバを好適に配設することができる。
【0013】
さらに、脆弱部が、切欠き部またはフロアクロスメンバに形成された開口部である態様とすることができる。また、フロアクロスメンバは、長手方向に連続して接続されていた第1フロアクロスメンバおよび第2フロアクロスメンバを備えており、脆弱部が、第1フロアクロスメンバおよび第2フロアクロスメンバの間に形成され、第1フロアクロスメンバおよび第2フロアクロスメンバにおける断面厚さが異なる厚さとされている態様とすることができる。さらに、フロアクロスメンバは、フロアクロスメンバ本体と、脆弱部材とを備えており、脆弱部材は、フロアクロスメンバ本体よりも強度が弱い素材で構成されている態様とすることができる。
【0014】
このように、脆弱部としては、切欠き部や開口部を形成する態様、第1フロアクロスメンバと第2フロアクロスメンバとの断面厚さを異ならせる態様、材弱部を強度の弱い素材で形成する態様などとすることができる。
【0015】
また、脆弱部が、フロアクロスメンバに対してロッカ側からの力の入力によって折曲する際にフロアクロスメンバが下方に向けて折曲する位置に形成されている態様とすることができる。
【0016】
このように、フロアクロスメンバに対してロッカ側からの力の入力によって折曲する際にフロアクロスメンバが下方に向けて折曲する位置に形成されていることにより、折曲したフロアクロスメンバが上方に突出することを防止することができる。
【0017】
さらに、上記課題を解決した本発明に係る車両のフロア構造は、床面の左右方向側部に配置され、車両の前後方向に沿って延在するロッカが設け、ロッカの上方位置にセンターピラーが設けられた車両のフロア構造であって、ロッカの側方位置に、車両の左右方向に延在するフロアクロスメンバが複数配設されており、複数のフロアクロスメンバのうち、センターピラーに近い位置に配置された中央フロアクロスメンバの床面に対する接合部分の車両の左右方向長さが、センターピラーから遠い位置に配置された縁側フロアクロスメンバの床面に対する接合部分の車両の左右方向長さよりも短くされていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る車両のフロア構造では、センターピラーに近い位置に配置された中央フロアクロスメンバの床面に対する接合部分の車両の左右方向長さが、センターピラーから遠い位置に配置された縁側フロアクロスメンバの床面に対する接合部分の車両の左右方向長さよりも短くされている。このため、車両に側突が生じた場合に、縁側フロアクロスメンバよりも中央フロアクロスメンバの方が左右方向の内側に向けて変形することとなる。このため、縁側フロアクロスメンバよりも中央フロアクロスメンバを大きく変形させることができるので、ロッカの転倒を好適に防止することができる。
【0019】
ここで、中央フロアクロスメンバに、床面との接合部分からの離間距離が長いほど、床面からの離間距離が長くなるブリッジ状の湾曲部が形成されている態様とすることができる。
【0020】
このように、フロアクロスメンバの下面側に、ブリッジ状の湾曲部が形成されていることにより、側突による衝突荷重が床面を通じて斜めに衝突面側に拡散することを防止することができる。その結果、荷重を脆弱部まで効率よく伝達することができる。したがって、車両の側突時におけるロッカの転倒量を小さくし、センターピラーの車両内側への侵入量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両のフロア構造によれば、車両の側突時におけるロッカの転倒量を小さくし、センターピラーの車両内側への侵入量を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0023】
図1は、第1の実施形態に係る車両のフロア構造の斜視図、図2はその正断面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係る車両のフロア構造は、フロアパネル1を備えている。このフロアパネル1は、車両の床面となる。フロアパネル1における車幅方向中央部には、車両の前後方向に延在するトンネル2が設けられており、フロアパネル1の車幅方向側方部には、車両の前後方向に延在するロッカ3が設けられている。
【0024】
トンネル2は、フロアパネル1の一部を変形させることによって形成されている。また、ロッカ3は、断面略多角形状のフレーム部材である。さらに、トンネル2とロッカ3との間にはフロアクロスメンバ4が掛け渡されている。こうして、フロアクロスメンバ4は、フロアパネル1の左右方向中央位置に設けられたトンネル2と、フロアパネル1の左右方向側部に設けられたロッカ3の中間位置よりもフロアパネル1の左右方向中央位置側まで延在している。フロアクロスメンバ4は、トンネル2側に配置される第1フロアクロスメンバ11と、ロッカ3側に配置される第2フロアクロスメンバ12とを備えている。
【0025】
第1フロアクロスメンバ11および第2フロアクロスメンバ12は、いずれも断面略コ字形状をなしており、第1フロアクロスメンバ11の断面形状は、第2フロアクロスメンバ12の断面形状よりも一回り大きい形状とされている。また、第1フロアクロスメンバ11および第2フロアクロスメンバ12は、いずれも車幅方向に延在し、それぞれの長手方向に延在して配設されている。
【0026】
さらに、第1フロアクロスメンバ11におけるロッカ3側端部には、嵌合部13が形成されている。嵌合部13は、断面略コ字形状をなしており、その大きさは、第2フロアクロスメンバ12の断面形状よりも一回り小さい形状とされている。この第1フロアクロスメンバ11における嵌合部13が第2フロアクロスメンバ12のトンネル2側端部に嵌め込まれることにより、第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12とが接合されている。この第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12との接合部は、フロアクロスメンバ4の他の部分よりも強度が低く、脆弱である脆弱部Fとされている。脆弱部Fは、フロアパネル1における左右方向側部よりも左右方向中央位置側に形成されている。
【0027】
また、第1フロアクロスメンバ11および第2フロアクロスメンバ12の側面側上端縁は、いずれも水平とされており、第1フロアクロスメンバ11および第2フロアクロスメンバ12の上面は水平面とされている。ここで、第1フロアクロスメンバ11の断面形状は、第2フロアクロスメンバ12の断面形状よりも一回り大きい形状とされていることから、フロアクロスメンバ4における第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12との接合部には段差が形成されている。さらに、第1フロアクロスメンバ11および第2フロアクロスメンバ12の側面側下端縁には、それぞれ第1湾曲部14および第2湾曲部15が形成されている。
【0028】
第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12とを接合すると、第1湾曲部14および第2湾曲部15とが連続し、フロアクロスメンバ4における側面側下端縁にブリッジ状の湾曲部16が形成される。この湾曲部16が形成されることにより、フロアクロスメンバ4の長手方向中央部は、フロアパネル1から離反した状態とされている。
【0029】
また、湾曲部16は、フロアクロスメンバ4の端部から離れるほど、フロアパネル1からの距離が長くなる形状とされている。さらに、フロアクロスメンバ4の両端部には、フランジ17,18が形成されており、これらのフランジ17,18を介してフロアクロスメンバ4が、フロアパネル1、トンネル2、およびロッカ3に溶接によって接合されている。
【0030】
他方、ロッカ3におけるフロアクロスメンバ4が設けられた位置に対応する左右方向外側には、センターピラー5が取り付けられている。センターピラー5は、ロッカ3における外側面と上面とに対して、溶接によって固定されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る車両のフロア構造における作用について説明する。
【0032】
本実施形態に係る車両のフロア構造が設けられた車両に側突が生じると、ロッカ3の上方から下方に力が加わり、ロッカ3が転倒しようとする。ここで、ロッカ3の転倒量が大きいと、センターピラー5が車両内側への侵入量が大きくなってしまうことから、ロッカ3の転倒量を極力小さくすることが望まれる。
【0033】
ここで、図7に示す従来のフロアクロスメンバ53では、反ロッカ側(ロッカと反対側)の端部がフロアパネル51に固定されている。このため、図3(b)に示すように、車両に側突が生じた場合には、ロッカ52の転倒量が大きくなり、その結果、センターピラー54が車両内側への侵入量が大きくなってしまうこととなる。
【0034】
この点、本実施形態に係る車両のフロア構造においては、フロアクロスメンバ4における第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12との間には、第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12とを接合した脆弱部Fが形成されている。ここで、車両に対して側突が生じた場合、第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12とを接合した脆弱部Fが破壊されることになる。このとき、本実施形態に係るフロアクロスメンバ4では、脆弱部Fがフロアクロスメンバ4における左右方向側部よりも左右方向中央位置側に形成されている。このため図3(a)に示すように、脆弱部Fが破壊されたとしても、第2フロアクロスメンバ12のトンネル2側端部の下降量は少なくて済むことになる。したがって、車両に側突が生じた場合でも、ロッカ3の転倒量を小さくすることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る車両のフロア構造では、フロアクロスメンバ4の側面側下端縁には、湾曲部16が形成されており、フロアクロスメンバ4の一部がフロアパネル1から離反した状態となっている。このため、側突による衝突荷重がフロアパネル1を通じて斜めに衝突面側に拡散することを防止することができる。その結果、荷重を脆弱部Fまで効率よく伝達することができる。したがって、車両の側突時におけるロッカ3の転倒量を小さくし、センターピラー5の車両内側への侵入量を小さくすることができる。
【0036】
さらに、車両のフロア構造では、フロアクロスメンバ4がトンネル2とロッカ3との間に掛け渡されている。このため、フロアクロスメンバ4を好適に配設することができる。また、本実施形態に係る車両のフロア構造では、第1フロアクロスメンバ11および第2フロアクロスメンバ12が下側に開口する断面略コ字形状をなしており、第1フロアクロスメンバ11の断面の方が、第2フロアクロスメンバ12の断面よりも小さくされている。このため、車両に側突が生じた際には、第2フロアクロスメンバ12が第1フロアクロスメンバ11の下側にもぐりこみ、フロアクロスメンバ4は、下方に向けて折曲する琴となる。このため、車両に側突が生じた際に、フロアクロスメンバ4の上方への突出を防止することができる。
【0037】
次に、第1の実施形態に係る車両のフロア構造の他の実施形態、特に、フロアクロスメンバ4の他の形態について説明する。図4は、フロアクロスメンバの他の態様を示す図である。図4(a)に示す態様では、フロアクロスメンバ4における第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12との上面には段差が形成されている。この段差部が脆弱部Fとなる。その一方、フロアクロスメンバ4における下面側に湾曲部が形成されておらず、直線状である態様とされている。
【0038】
あるいは、図4(b)に示す態様とすることもできる。図4(b)に示す態様では、フロアクロスメンバ4としては、一体的な部材で構成され、その上面が面一となっている。その一方で、フロアクロスメンバ4の下面では、湾曲部16が形成されている。この態様では、湾曲部16における細径部分が脆弱部Fとして作用する。
【0039】
その他の脆弱部の態様として、図5に示すものがある。図5(a)に示す例では、フロアクロスメンバ4の下面に切欠き部31が形成されており、この切欠き部31が脆弱部Fとされている。また、図5(b)に示す例では、フロアクロスメンバ4の側面に開口部32が形成されており、この開口部32が脆弱部Fとされている。車両に側突が生じた際には、この切欠き部31や開口部32をトリガーとしてフロアクロスメンバ4が破壊されることとなる。
【0040】
その他、脆弱部の態様としては、たとえばフロアクロスメンバ4の上面にビートを形成することができる。あるいは、第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12の接合部に、第1フロアクロスメンバ11と第2フロアクロスメンバ12よりも強度の低い素材からなる接続部材を介在させる態様とすることもできる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係る車両のフロア構造の平面図である。図6に示すように、本実施形態に係る車両のフロア構造では、フロアパネル1の上面側の車幅方向中央部に、車両の前後方向に延在するトンネル2が設けられており、フロアパネル1の車幅方向側方部に、車両の前後方向に延在するロッカ3が設けられている。
【0042】
また、ロッカ3には、フロアクロスメンバ4が設けられているとともに、フロアクロスメンバ4の前後位置に、それぞれ前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42が設けられている。フロアクロスメンバ4は、フロアパネル1の左右両側に配設されており、ロッカ3とトンネル2との間に掛け渡されている。
【0043】
このフロアクロスメンバ4は、車両の左右方向両端部近傍位置において、フロアパネル1に対して溶接固定されている。また、フロアクロスメンバ4の長手方向中央部には、溶接部分からの離間距離が長いほど、フロアパネル1からの離間距離が長くなるブリッジ状の湾曲部が形成されている。
【0044】
さらに、前方フロアクロスメンバ41は、フロアパネル1の左右両側に配設されており、ロッカ3とトンネル2との間に掛け渡されている。ここで、前方フロアクロスメンバ41は、フロアパネル1の中央側において、フロアクロスメンバ4よりも中央側まで延在している。
【0045】
また、フロアパネル1に設けられたトンネル2は、車両の前後方向に見て、後方フロアクロスメンバ42が配設されている位置よりも前方位置まで延在している。後方フロアクロスメンバ42は、フロアパネル1の上面において、左右のロッカ3,3の間で掛け渡されている。
【0046】
これらの前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42は、いずれもその下面側にフランジが長手方向全域に渡って形成されており、フロアパネル1に対してフランジを介して溶接されることによって接合されている。したがって、フロアクロスメンバ4のフロアパネル1に対する溶接長さは、前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42における溶接長さよりも短くされている。本実施形態では、フロアクロスメンバ4が中央フロアクロスメンバ、前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42が縁側フロアクロスメンバとなる。
【0047】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両のフロア構造では、フロアクロスメンバ4は、前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42のいずれよりも、フロアパネル1に対する接合部分の車両の左右方向長さが短くされている。この場合、車両に側突が生じた場合、前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42よりもフロアクロスメンバ4の方が左右方向の内側に向けて変形することとなる。このため、前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42よりもフロアクロスメンバ4を大きく変形させることができるので、ロッカ3の転倒を好適に防止することができる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、フロアクロスメンバ4はトンネル2とロッカ3との間に掛け渡されているが、フロアクロスメンバ4は、トンネル2でなくフロアパネル1とロッカ3との間に掛け渡される態様とすることができる。また、上記第2の実施形態では、前方フロアクロスメンバ41および後方フロアクロスメンバ42が設けられているが、そのいずれか一方のみとすることもできるし、さらに多くのフロアクロスメンバを設ける態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態に係る車両のフロア構造の要部斜視図である。
【図2】フロアクロスメンバの側面図である。
【図3】(a)は本実施形態に係る車両のフロア構造に側突が生じた場合の模式的側面図、(b)は従来の車両のフロア構造に側突が生じた場合の模式的側面図である。
【図4】(a)(b)とも、フロアクロスメンバの他の態様を示す側面図である。
【図5】(a)(b)とも、フロアクロスメンバの他の態様を示す側面図である。
【図6】第2の実施形態に係る車両のフロア構造の平面図である。
【図7】従来の車両のフロア構造の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1…フロアパネル、2…トンネル、3…ロッカ、4…フロアクロスメンバ、5…センターピラー、11…第1フロアクロスメンバ、12…第2フロアクロスメンバ、13…嵌合部、14…第1湾曲部、15…第2湾曲部、16…湾曲部、17,18…フランジ、31…切欠き部、32…開口部、41…前方フロアクロスメンバ、42…後方フロアクロスメンバ、F…脆弱部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面の左右方向側部に配置され、車両の前後方向に沿って延在するロッカが設けられた車両のフロア構造であって、
車両の左右方向に延在するフロアクロスメンバが前記ロッカにおける前記車両の左右方向内側に配設され、
前記ロッカにセンターピラーが設けられており、
前記フロアクロスメンバは、前記床面の左右方向中央位置と前記床面の左右方向側部との中間位置よりも前記床面の左右方向中央位置側まで延在しており、
前記フロアクロスメンバにおける前記床面の左右方向側部よりも左右方向中央位置側に、脆弱部が形成されていることを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項2】
前記フロアクロスメンバの上面が水平とされており、
前記フロアクロスメンバの下面側に、ブリッジ状の湾曲部が形成されている請求項1に記載の車両のフロア構造。
【請求項3】
前記床面の左右方向中央位置に、車両の前後方向に沿って延在するトンネルが設けられており、
前記フロアクロスメンバは、前記ロッカと前記トンネルとの間に掛け渡されている請求項1または請求項2に記載の車両のフロア構造。
【請求項4】
前記脆弱部が、切欠き部である請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両のフロア構造。
【請求項5】
前記脆弱部が、前記フロアクロスメンバに形成された開口部である請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両のフロア構造。
【請求項6】
前記フロアクロスメンバは、長手方向に連続して接続されていた第1フロアクロスメンバおよび第2フロアクロスメンバを備えており、
前記脆弱部が、第1フロアクロスメンバおよび第2フロアクロスメンバの間に形成され、
第1フロアクロスメンバおよび第2フロアクロスメンバにおける断面厚さが異なる厚さとされている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両のフロア構造。
【請求項7】
前記フロアクロスメンバは、フロアクロスメンバ本体と、脆弱部材とを備えており、
前記脆弱部材は、前記フロアクロスメンバ本体よりも強度が弱い素材で構成されている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の車両のフロア構造。
【請求項8】
前記脆弱部が、前記フロアクロスメンバに対して前記ロッカ側からの力の入力によって折曲する際に前記フロアクロスメンバが下方に向けて折曲する位置に形成されている請求項1〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の車両のフロア構造。
【請求項9】
床面の左右方向側部に配置され、車両の前後方向に沿って延在するロッカが設け、前記ロッカの上方位置にセンターピラーが設けられた車両のフロア構造であって、
前記ロッカの側方位置に、車両の左右方向に延在するフロアクロスメンバが複数配設されており、
前記複数のフロアクロスメンバのうち、前記センターピラーに近い位置に配置された中央フロアクロスメンバの前記床面に対する接合部分の前記車両の左右方向長さが、前記センターピラーから遠い位置に配置された縁側フロアクロスメンバの前記床面に対する接合部分の前記車両の左右方向長さよりも短くされていることを特徴とする車両のフロア構造。
【請求項10】
前記中央フロアクロスメンバに、前記床面との接合部分からの離間距離が長いほど、前記床面からの離間距離が長くなるブリッジ状の湾曲部が形成されている請求項9に記載の車両のフロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−120404(P2010−120404A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293346(P2008−293346)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】