説明

車両のフロント下部構造

【課題】車両走行時に発生した負圧を効果的に利用して、エンジンルーム内の熱気を確実に排出可能な車両のフロント下部構造を提供する。
【解決手段】フロント下部構造は、エンジンルーム3内に収容されたエンジンの下方にアンダーカバー5が設けられ、エンジンの下方のアンダーカバー5にエンジンルー3ム内の空間部3aとアンダーカバー5下方の車外とを連通する孔部15を設け、孔部15の前方のアンダーカバー5の下面に下方へ突出する整流板20を設ける。孔部15は、整流板20の車幅方向一端部から他端部に亘って延びる。孔部15の車両前後方向の前端部は、整流板20の前後方向後端部の近傍位置に設けられる。整流板20のアンダーカバー5の下面に対する突出長さは、整流板20に対する孔部15の前後方向後端部までの距離よりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内に収容されたエンジンの下方にアンダーカバーが設けられた車両のフロント下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンルーム内の熱気を排出する機能を向上させるため、アンダーカバーの後部に下方へ延びるエアダムを設け、車両走行時にエアダムの後方で負圧を発生させてエンジンルーム内の熱気を車両外部に放出可能な車両のフロント下部構造が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−55522号公報
【特許文献2】実開昭63−180424号公報
【特許文献3】特開平4−370316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの従来のフロント下部構造は、エンジンの前方位置又は後方位置に車外に連通する開口部が設けられ、この開口部はエンジンと離れた位置にある。このため、エンジンから離れた位置に負圧が発生し、発生した負圧のうちエンジンに寄与する割合が小さくなり、エンジンルーム内の熱気の排出が不十分になる虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、発生した負圧を効果的に利用して、エンジンルーム内の熱気を確実に排出可能な車両のフロント下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のフロント下部構造は、エンジンルーム内に収容されたエンジンの下方にアンダーカバーが設けられた車両のフロント下部構造であって、アンダーカバーにエンジンルーム内の空間部とアンダーカバーの下方の車外とを連通する孔部が設けられ、孔部の前方のアンダーカバーの下面に下方へ突出する整流板が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
また本発明の整流板は、アンダーカバーの車幅方向に延びて設けられ、孔部は、整流板の少なくとも車幅方向両端部に設けられていることを特徴とする(請求項2)。
【0008】
また本発明の孔部は、整流板に沿ってアンダーカバーの車幅方向に延びて設けられていることを特徴とする(請求項3)。
【0009】
また本発明の孔部は、整流板に沿ってアンダーカバーの車幅方向に所定間隔を有して複数設けられていることを特徴とする(請求項4)。
【0010】
さらに本発明の孔部の車両前後方向の前端部は、整流板の前後方向後端部の近傍位置に設けられていることを特徴とする(請求項5)。
【0011】
また本発明の整流板のアンダーカバーの下面に対する突出長さは、整流板に対する孔部の前後方向後端部までの距離よりも長いことを特徴とする(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係わる車両のフロント下部構造によれば、上記特徴を有することで、発生した負圧のうちエンジンに寄与する割合が大きくなり、エンジンルーム内の熱気を確実に排出可能な車両のフロント下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるフロント下部構造が設けられた車両の側面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わるフロント下部構造の平面視における概略構造図を示す。
【図3】本発明の他の実施の形態に係わるフロント下部構造の平面視における概略構造図を示す。
【図4】フロント下部構造の断面図を示し、同図(a)は図2のII−II矢視に相当する部分の断面図を示し、同図(b)はフロント下部構造の他の実施形態に係わる断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフロント下部構造の好ましい実施の形態を図1から図4に基づいて説明する。図1は、本発明のフロント下部構造を搭載した車両の側面図を示し、図2は、本発明のフロント下部構造を搭載した車両のフロント下部構造の平面視における概略構造図を示す。
【0015】
車両1の前部には、図1及び図2に示すように、エンジンEを収納するエンジンルーム3が設けられている。このエンジンルーム3の底部には、エンジンEの下方に配置されたアンダーカバー5が設けられている。アンダーカバー5は、エンジンルーム3の下側開口部を覆うように設けられている。アンダーカバー5の上方のエンジンルーム3の前端部には、コンデンサやラジエータ等の熱交換器(図示せず)が設置され、アンダーカバーの上方の熱交換器の後方にエンジンEが配設されている。熱交換器の前方の車両前端部には、熱交換器に冷却空気を導入するための前側開口部7が開口している。エンジンルーム3の上部は上側開口部が開口し、この上側開口部にボンネット9が装着されて上側開口部が塞がれている。
【0016】
エンジンEの下方のアンダーカバー5には、エンジンルーム3内の空間部3aとアンダーカバー5の下方の車外とを連通する孔部15が設けられている。孔部15は、車両1の車幅方向に延びて平面視において矩形状に形成されている。孔部15の大きさについては後述する。
【0017】
孔部15の前方のアンダーカバー5の下面には下方へ突出する整流板20が設けられている。整流板20は、孔部15に沿って車両の車幅方向に延びる板状部材である。整流板20は、障害物等に衝突時に変形可能な合成樹脂材料等で形成されてアンダーカバー5に取り付けられている。整流板20の突出長さについては後述する。
【0018】
孔部15は、整流板20の車幅方向一端部から他端部に亘って延びる。また孔部15の車両前後方向の前端部は、整流板20の前後方向後端部の近傍位置に設けられている。また、整流板20のアンダーカバー5の下面に対する突出長さLは、図4(断面図)に示すように、整流板20の後端から孔部15の前後方向後端部までの距離Sよりも長い。このため、車両の走行時にアンダーカバー5の下方を前方から後方側へ流れる空気の流れによって、整流板20の車両後方側に負圧が発生し、この負圧の範囲W内に孔部15の下側開口部15aを位置させることができる。このため、孔部15を介してエンジンルーム3内の空気を車外に排出することができる。
【0019】
また、孔部15は、整流板20の車幅方向一端部から他端部に亘って延びているので、エンジンEの車幅方向両側からエンジンルーム3内の空気を車外に排出することができる。このため、エンジンEの底部周辺の空気の他にエンジンEの車幅方向両側の空気を車外に排出させることができ、エンジンEの冷却をより効果的に行うことができる。
【0020】
なお、孔部15は、図4(b)に示すように、整流板20の前後方向後端部から後方側へ延びるように設けてもよい。このようにすると、発生する負圧の範囲W内に孔部15の下側開口部15aを確実に位置させることができる。
【0021】
また、孔部15は、車幅方向に連続的に延びるものに限るものではなく、図3に示すように、孔部15が車幅方向に所定間隔を有して複数設けられてもよい。このようにすると、連続的に延びる孔部15を有するアンダーカバー5(図2参照)と比較して、アンダーカバー5の強度低下を抑えることができる。
【0022】
このように、本発明に係わる車両のフロント下部構造は、エンジンEの下方のアンダーカバー5にエンジンルーム3と車外とを連通する孔部15が設けられ、また孔部15の前方のアンダーカバー5に整流板20が設けられることで、車両の走行時に整流板20の後方に発生した負圧を、エンジンEの真下及び車幅方向両側のエンジンルーム3内に作用させることができる。このため、孔部15を介してエンジンEの回りの熱気を車外に排出することができ、エンジンの冷却を効果的に行うことができる。
【0023】
前述した実施例では孔部15の前方に整流板20を設けた場合を示したが、整流板20の後方側に負圧を発生する機能を有するものであればエアダムでもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
3 エンジンルーム
3a 空間部
5 アンダーカバー
15 孔部
20 整流板
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に収容されたエンジンの下方にアンダーカバーが設けられた車両のフロント下部構造であって、
前記アンダーカバーに前記エンジンルーム内の空間部と前記アンダーカバーの下方の車外とを連通する孔部が設けられ、
前記孔部の前方の前記アンダーカバーの下面に下方へ突出する整流板が設けられている
ことを特徴とする車両のフロント下部構造。
【請求項2】
前記整流板は、前記アンダーカバーの車幅方向に延びて設けられ、
前記孔部は、前記整流板の少なくとも車幅方向両端部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のフロント下部構造。
【請求項3】
前記孔部は、前記整流板に沿って前記アンダーカバーの車幅方向に延びて設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両のフロント下部構造。
【請求項4】
前記孔部は、前記整流板に沿って前記アンダーカバーの車幅方向に所定間隔を有して複数設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両のフロント下部構造。
【請求項5】
前記孔部の車両前後方向の前端部は、前記整流板の前後方向後端部の近傍位置に設けられている
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の車両のフロント下部構造。
【請求項6】
前記整流板の前記アンダーカバーの下面に対する突出長さは、前記整流板に対する前記孔部の前後方向後端部までの距離よりも長い
ことを特徴とする請求項5に記載の車両のフロント下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10472(P2013−10472A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145799(P2011−145799)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】