説明

車両のフード構造

【課題】 フードの振動を抑制すると共に、車両衝突時における障害物に対する反力を小さくする車両のフード構造を提供する。
【解決手段】 車両上方側に設けられるアウターパネル7と、該アウターパネル7の車両下方側に張設されると共に、下方に膨出する複数のリブからなる骨格部15を有するインナーパネル9とを備え、前記骨格部15を、車両前後方向に延びる主骨部19と、車幅方向に延びて前記主骨部19同士を連結する小骨部27とから構成することにより、これらのインナーパネル9の骨格部15とアウターパネル7とによって中空断面17を形成する車両のフード構造において、前記主骨部19から車幅方向に沿って所定の間隔をおいた小骨部27の所定部位に対応するアウターパネル7の下面側に、分断部51をアウターパネル7に近接させて配置させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフード構造に関し、さらに詳しくは、エンジンから伝わる振動を効率的に抑制できる剛性を有すると共に、車両が障害物に衝突したときに、該障害物から受ける衝突エネルギーを効率的に吸収することができる車両のフード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部にエンジンルームが設けられている車両においては、このエンジンルームの開口部を塞ぐフードが開閉自在に配設されている。
【0003】
このフードは、複数のリブからなる骨格部が形成されたインナーパネルの周縁部を、アウターパネルの外周フランジをヘミング加工して一体化することにより構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−1182公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来例では、フード全体の剛性を低くし過ぎると、エンジンから伝わる振動によってフード自体が振動し、さらにステアリングの振動等を引き起こすおそれがあった。その一方、フードの剛性を高くし過ぎると、車両が障害物に衝突したときに、障害物に対して高い反力を与えるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、フードの振動を抑制すると共に、車両衝突時における障害物に対する反力を小さくする車両のフード構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、車両上方側に設けられるアウターパネルと、該アウターパネルの車両下方側に張設されると共に、下方に膨出する複数のリブからなる骨格部を有するインナーパネルとを備え、前記骨格部を、車両前後方向に延びる主骨部と、車幅方向に延びて前記主骨部同士を連結する小骨部とから構成することにより、これらのインナーパネルの骨格部とアウターパネルとによって中空断面を形成する車両のフード構造において、前記主骨部から小骨部に沿って間隔をおいた所定部位に対応するアウターパネルの下面側に、補強手段をアウターパネルに近接させて配置させている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主骨部から車幅方向に間隔をおいた小骨部の所定部位に対応するアウターパネルの下面側に、補強手段をアウターパネルに近接させて配置しているため、この補強手段によってアウターパネルの剛性が向上して、補強手段近傍のフードの剛性が向上し、フードの振動を抑制することができる。
【0008】
また、インナーパネルの骨格部とアウターパネルとによって中空断面を形成しているため、車両衝突時には、この中空断面によって衝突エネルギーを吸収して、障害物に対する反力を小さくすることができる。
【0009】
このように、本発明によれば、フードの振動を抑制すると共に、車両衝突時における障害物に対する反力を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1実施形態によるフード構造を採用した車両の前部を示す斜視図である。
【0012】
車両1の前部には、エンジンルーム3が配設されており、該エンジンルーム3の開口部は、開閉自在のフード5によって閉塞される。即ち、フード5の後端部の左右両側は、ヒンジ装置6を介して車体側のフードリッジに開閉自在に支持されている。
【0013】
図2は図1のフードを分解した斜視図である。
【0014】
本発明の実施形態によるフード5は、上側に配置されたアウターパネル7と、下側に配置されたインナーパネル9とから構成されており、該インナーパネル9の周縁部11を、アウターパネル7の周縁フランジ13でヘミング加工することによって、アウターパネル7とインナーパネル9とが一体に形成される。
【0015】
また、インナーパネル9には、車両前後方向及び車幅方向に沿って延びる複数のリブが互いに交差しており、これらのリブによって骨格部15を構成している。このリブは、インナーパネル9の面を下方に膨出させたものであり、リブとアウターパネル7とによって中空断面(図4参照)17を形成している。
【0016】
さらに、前記骨格部15は、車両前後方向に延びる主骨部19と、車幅方向に延びて前記主骨部同士を連結する小骨部とから構成されている。この図2においては、各リブは車幅方向中央側の主骨部19を境として、左右両側に対称に配置されている。
【0017】
具体的には、主骨部19は、車幅方向中央に配置されて車両前後方向に沿って延びる第1主骨部21と、該第1主骨部21の左右両側に隣接して形成された第2主骨部23と、該第2主骨部23の左右両側で、かつ、インナーパネル9の左右側端部に配置された第3主骨部25とからなる。また、第2主骨部23の前端23aは第1主骨部21の前端21aと同一部位に配置され、車両後方に向かうにつれて徐々に左右両側に広がるように斜めに延びている。また、小骨部27は、第1主骨部21と第2主骨部23とを連結する第1小骨部29及び第2小骨部31、第2主骨部23と第3主骨部25とを連結する第3小骨部33及び第4小骨部35から構成されている。
【0018】
なお、図2に示すように、インナーパネル9の主骨部19には、車幅方向に沿って折れ促進ビード37が一直線状に形成されている。この折れ促進ビード37は、主骨部19の底面を車両上方に向けて凹ませた脆弱部である。従って、車両1が前面衝突を起こした場合には、フード5に対して車両前側から衝突荷重が入力されるが、前記折れ促進ビード37を起点としてフード5は上方に折れ曲がり、衝突エネルギーを効率的に吸収する。
【0019】
図3は図1の要部を拡大した斜視図であり、フードを上下逆に配置した状態を示している。即ち、図3の上側にはインナーパネル9が配置され、下側にはアウターパネル7が配置されている。また、図4は図3のA−A線による断面図である。
【0020】
車両前後方向に延びる主骨部19は、アウターパネル7の下面に当接するフランジ39と、該フランジ39から図3の上方に屈曲して延びる側面41と、該側面41の先端から屈曲して、アウターパネル7の面と略平行に延びる底面43とから、断面略ハット状に形成されている。
【0021】
また、主骨部19に直交して、該主骨部19よりも高さの低い小骨部27が配設されている。この小骨部27も、アウターパネル7の下面に当接するフランジ45と、該フランジ45から図3の上方に屈曲して延びる側面47と、該側面47の先端から屈曲して、アウターパネル7の面と略平行に延びる底面49とから、断面略ハット状に形成されている。また、前記主骨部19と小骨部27とは、一枚の平板材をプレス成形することによって、一体に形成されたものであり、主骨部19のフランジ39は小骨部27のフランジ45に連通し、主骨部19の側面41及び底面43は小骨部27の側面47及び底面49にそれぞれ連通して形成されている。
【0022】
そして、図3,4に示すように、小骨部27には、主骨部19の側面41から車幅方向に沿って所定の間隔をおいた所定部位に、図3,4の下方に向けて凹んだ分断部51が形成されている。この分断部51は、小骨部27の底面を図3,4の下方(アウターパネル7側)に向けて、アウターパネル7の近傍に至るまで凹ませることによって形成したものであり、分断部51の底面がフランジと同一平面状に配置されている。従って、本実施形態においては、分断部51の底面53は、小骨部27のフランジ45と一体になって形成され、この分断部51が補強手段を構成している。
【0023】
また、図4に示すように、前記分断部51は、主骨部19の左右の側面41から車幅方向に沿って同一距離分だけ離れた部位に、左右一対に配設されている。即ち、図4における主骨部19よりも右側での、主骨部19の側面41から分断部51までの距離L1と、主骨部19よりも左側での、主骨部19の側面から分断部51までの距離L2とは、ほぼ同一に設定されている。
【0024】
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0025】
前記主骨部19の側面から車幅方向に沿って所定の間隔をおいた小骨部27の所定部位に対応するアウターパネル7の下面側に、補強手段をアウターパネル7に近接させて配置している。この補強手段は、前記主骨部19から間隔をおいて小骨部27の所定部位をアウターパネル7の近傍に至るまで車両上方に凹ませた分断部51によって構成している。
【0026】
従って、分断部51の近傍においては、図4で説明したように、アウターパネル7の面にインナーパネル9の面が近接して配置されるため、振動に対するフード5の剛性を大幅に向上させることができる。
【0027】
また、図3,4で説明したように、前記主骨部19と小骨部27とを略直交させて主骨部19の両側面41,41から小骨部27を延設させると共に、この側面41から略同一距離分だけ離れた部位に、前記分断部51(補強手段)を左右一対に設けている。従って、主骨部19と小骨部27との交差部近傍において、主骨部19の左右両側の剛性が均等に向上する。
【0028】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0029】
図5は本発明の第2実施形態によるフードの要部を上下逆に配置した拡大斜視図、図6は図5のB−B線による断面図である。
【0030】
本実施形態によるフード5のインナーパネル9には、前記第1実施形態の場合と同様に、車両下方に膨出する複数のリブからなる骨格部15が設けられている。該骨格部15は、車両前後方向に延びる主骨部19と車幅方向に延びる小骨部55とからなり、該小骨部55には、車両前後方向に沿って、補強手段である板状部材57が取り付けられている。
【0031】
この板状部材57は、車両前後方向に沿って細長く延びる平面視矩形状の平板であり、小骨部27のフランジ45に接合されている。つまり、小骨部27のフランジ45には、図5の上方に屈曲したジョグル59が形成されており、該ジョグル59に板状部材57が嵌合して接合されている。
【0032】
また、この板状部材57も、主骨部19の左右両側面41,41から車幅方向に略同一距離分隔てた位置に配設されている。
【0033】
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0034】
前記補強手段を、前記アウターパネル7の下面側に取り付けた板状部材57によって構成している。従って、この板状部材57の近傍部におけるフード5の剛性を向上させて振動を効率的に抑制することができる。
【0035】
また、図6に示すように、主骨部19の両側面41,41から小骨部55を延設させると共に、この両側面41,41から略同一距離分だけ離れた部位に、前記板状部材57を左右一対に設けている。
【0036】
従って、主骨部19と小骨部との交差部近傍において、主骨部19の左右両側の剛性が均等に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態によるフード構造を採用した車両の前部を示す斜視図である。
【図2】図1のフードを分解した斜視図である。
【図3】図1の要部を上下逆にした拡大斜視図である。
【図4】図3のA−A線による断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるフードの要部を上下逆にした拡大斜視図である。
【図6】図5のB−B線による断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…車両
5…フード
7…アウターパネル
9…インナーパネル
15…骨格部
17…中空断面
19…主骨部
27…小骨部
41…側面
51…分断部(補強手段)
57…板状部材(補強手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターパネルの下面側にインナーパネルを張設すると共に、該インナーパネルに、下方に膨出する複数のリブからなる骨格部を設け、該骨格部を、車両前後方向に延びる主骨部と、車幅方向に延びて前記主骨部同士を連結する小骨部とから構成することにより、これらのインナーパネルの骨格部とアウターパネルとによって中空断面を形成する車両のフード構造において、
前記主骨部から車幅方向に間隔をおいた小骨部の所定部位に対応するアウターパネルの下面側に、該アウターパネルに近接配置した補強手段を設けたことを特徴とする車両のフード構造。
【請求項2】
前記補強手段を、前記小骨部の所定部位をアウターパネル近傍に至るまで凹ませた分断部によって構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両のフード構造。
【請求項3】
前記補強手段を、前記アウターパネルの下面側に配置した板状部材によって構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両のフード構造。
【請求項4】
前記主骨部と小骨部とを略直交させて主骨部の両側面から小骨部を延設させると共に、これらの両側面から略同一距離分だけ離れた位置に、前記補強手段を左右一対に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両のフード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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