説明

車両のモータルーム内主要部品搭載構造

【課題】DC-DCコンバータをインバータの後方へ移設しても、DC-DCコンバータの荷重が、これを固定したサポートメンバに集中せず、全メンバに分散されるようにする。
【解決手段】インバータ11を搭載する主要部品搭載台9の後ろ側にDC-DCコンバータ12を配置して、主要部品搭載台9の後側サポートメンバ6にDC-DCコンバータ12を固定する。主要部品搭載台9は、モータルーム内に車幅方向へ延在するよう横架した一対の前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6と、これら前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6間をクロスメンバ7,8により相互に結合して成る井桁形状となす。このため、DC-DCコンバータ12の全重量が、DC-DCコンバータ12を取り付けた後側サポートメンバ6のみに作用するのでなく、前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6の双方にかかって応力を分散させ得ることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関および電動モータを動力源とするハイブリッド車両や、電動モータのみを動力源とする電気自動車などの電動車両に代表される車両のモータルーム内主要部品搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両や電気自動車などの電動車両に代表される車両としては、車輪に駆動結合したモータと、このモータを駆動制御するためのインバータなどの電力変換装置およびDC-DCコンバータなどのコンバータとをモータルーム内に収納して搭載したものがある。
【0003】
そして、これらモータ、インバータなどの電力変換装置、およびDC-DCコンバータなどのコンバータのような主要部品をモータルーム内に収納して搭載するに際しては従来、コンパクトにしたり、ワイヤハーネスの配索上、モータ、電力変換装置およびコンバータの順に重合配置する。
【0004】
ここでモータは、車輪に駆動結合するため配置レベルが低く、単独で搭載されるが、それ以外の主要部品である電力変換装置およびコンバータの搭載は、例えば特許文献1に記載のごとく、
モータルーム内に車幅方向へ延在するよう横架した一対のサポートメンバを車両前後方向に配して設け、これらサポートメンバ上に電力変換装置およびコンバータを載せて固定することにより行われるのが普通であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−219020号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし昨今は、デザイン上の要求や、造形上の必要性から、電力変換装置の上方にコンバータを重合配置するのではなく、コンバータを電力変換装置の後方や前方に配置して搭載することが必要な場合がある。
【0007】
このときコンバータを電力変換装置の筐体に直接取着して固定するのでは、これらの筐体が共に、電気の流れによって発生する電波雑音の漏れを防止すべくアルミ鋳物で構成されていて剛体であって、剛体同士間での取着になること、また、それぞれの筐体がアルミ鋳物のため10Kgを超える重量物であることから、取着部の緩みなどが発生して信頼性に欠ける。
【0008】
よって、コンバータを電力変換装置の後方や前方に配置して搭載するに際しては必然的に、上記一対の車両前後方向に配したサポートメンバのうち後側サポートメンバまたは前側サポートメンバにコンバータを取着して搭載することになる。
【0009】
しかし、コンバータを後側サポートメンバまたは前側サポートメンバに取着して搭載した場合、この後側サポートメンバまたは前側サポートメンバにコンバータの全重量がかかって応力集中を生じ、コンバータの支持剛性が不足気味になるという問題や、
コンバータの重量による荷重が、上記後側サポートメンバまたは前側サポートメンバの弾性変形を介して電力変換装置の筐体に達し、この荷重が車両の振動により繰り返し荷重になることとも相まって、電力変換装置に少なからず耐久性などへの悪影響が及ぶという問題を生ずる。
【0010】
本発明は、コンバータの全重量が後側サポートメンバまたは前側サポートメンバに作用するのでなく、これらサポートメンバの双方にかかって応力が分散されるようになすことで、上記したコンバータの支持剛性が不足気味になるという問題や、電力変換装置の筐体にコンバータの荷重が作用して耐久性に悪影響が及ぶという問題を解消した、車両のモータルーム内主要部品搭載構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明による車両のモータルーム内主要部品搭載構造は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる車両を説明するに、これは、
車輪に駆動結合したモータと、該モータを駆動制御する電力変換装置およびコンバータとをモータルーム内に収納して搭載したものである。
【0012】
本発明による車両のモータルーム内主要部品搭載構造は、かかる車両において、
上記モータルーム内に車幅方向へ延在するよう横架した一対のサポートメンバを車両前後方向に配して設けると共に、これら前側サポートメンバおよび後側サポートメンバ間をクロスメンバにより相互に結合して、井桁形状の主要部品搭載台を形成し、
この主要部品搭載台上に上記電力変換装置を載せて固定し、
該主要部品搭載台の車両前後方向一方側に上記コンバータを配置して、該車両前後方向一方側における上記サポートメンバに固定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
かかる本発明のモータルーム内主要部品搭載構造にあっては、
電力変換装置を載せて固定する主要部品搭載台の車両前後方向一方側にコンバータを配置して、該車両前後方向一方側におけるサポートメンバにコンバータを固定したものであっても、
主要部品搭載台が、モータルーム内に車幅方向へ延在するよう横架した一対の前側サポートメンバおよび後側サポートメンバと、これら前側サポートメンバおよび後側サポートメンバ間をクロスメンバにより相互に結合して成る井桁形状であるため、以下の作用効果を達成することができる。
【0014】
つまり、上記した井桁形状の主要部品搭載台によれば、コンバータの全重量が、コンバータを取り付けた前側または後側のサポートメンバのみに作用するのでなく、前側サポートメンバおよび後側サポートメンバの双方に作用して応力を分散させることができ、重量物であるコンバータの支持剛性が不足気味になるという前記の問題を解消することができる。
【0015】
また同様な理由から、コンバータの重量による荷重が、コンバータを取り付けた前側または後側のサポートメンバの弾性変形を介して電力変換装置の筐体に達することがなく、この荷重が車両の振動により繰り返し荷重になると雖も、電力変換装置に耐久性などへの悪影響が及ぶという問題をも解消することができる。
を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例になるモータルーム内主要部品搭載構造を具えた車両の車体前部に係わる骨格を示す斜視図である。
【図2】図1における車体前部の骨格を、図1のA-A線上で断面とし、矢の方向に見て示す左縦断側面図である。
【図3】図1に示す車体前部の骨格から、主要部品であるインバータ、DC-DCコンバータおよびバッテリを取り外して示す、図1と同様な斜視図である。
【図4】主要部品搭載台を、図3に示す車体前部取り付け状態から取り外して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<構成>
図1,2はそれぞれ、本発明の一実施例になるモータルーム内主要部品搭載構造を具えた車両の車体前部に係わる骨格を示す斜視図および縦断側面図である。
これらの図において、1は、ダッシュロアパネル、2は、左フロントサイドメンバ、3は、右フロントサイドメンバ、4は、ストラットタワーをそれぞれ示す。
【0018】
ダッシュロアパネル1および左右フロントサイドメンバ2,3によりモータルームを画成し、このモータルーム内の下方領域に主要部品の1つである電動モータ(図示せず)を収納して搭載する。
電動モータは、同じく図示せざる車輪に変速機などを介し駆動結合し、車両の走行用動力源として用いる。
【0019】
上記のモータルーム内には、車幅方向へ延在するよう一対のサポートメンバ5,6を配置して設け、これらサポートメンバ5,6を図3に明示するごとく、車両前後方向に配してほぼ平行な状態で左右フロントサイドメンバ2,3間に架設する。
【0020】
そして、これら前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6間を、ほぼ車両前後方向へ延在する左右クロスメンバ7,8により相互に結合し、
前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6と、左右クロスメンバ7,8とにより、車体取り付け前の段階で図4に明示するような井桁形状の主要部品搭載台9を構成する。
【0021】
かかる井桁形状の主要部品搭載台9をモータルーム内で車体に取り付けるに際しては、後側サポートメンバ6が図3に示すようにストラットタワー4の若干前方に位置するよう主要部品搭載台9を配置し、
前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6の両端をそれぞれ左右フロントサイドメンバ2,3に結合して、当該主要部品搭載台9の車体取り付けを行う。
【0022】
主要部品搭載台9は図3,4に明示するように、前側サポートメンバ5と異なり後側サポートメンバ6を、その大部分において後側上部サポートメンバ部分6aおよび後側下部サポートメンバ部分6bよりなる上下二段構造とし、
後側上部サポートメンバ部分6aを前側サポートメンバ5と同レベルの高さとする。
【0023】
そして図1,2に示すごとく、前記電動モータ(図示せず)の駆動制御に用いる主要部品である、重量が20Kg越えるインバータ11(電力変換装置)および重量が10Kg越えるDC-DCコンバータ12のうち、電動モータの直上に配置すべきインバータ11を後側上部サポートメンバ部分6aおよび前側サポートメンバ5上に載せて、インバータ11の4隅角をボルト13により後側上部サポートメンバ部分6aおよび前側サポートメンバ5に固定する。
そのため、インバータ11の4隅角が載る後側上部サポートメンバ部分6aおよび前側サポートメンバ5の箇所にそれぞれ、ボルト13をねじ込むねじ穴9aを図3,4のごとくに設ける。
【0024】
一方、他方の主要部品であるDC-DCコンバータ12は図1,2に示すごとく、デザイン上の要求や、造形上の必要性から、また設置スペースの観点から、主要部品搭載台9の車両前後方向後ろ側に立てた状態で配置する。
【0025】
かかる配置としたDC-DCコンバータ12の搭載に当たっては、図3,4に明示するごとく、後側上部サポートメンバ部分6aに車幅方向に離間した一対のブラケット14を上方へ延在するよう立設し、
これらブラケット14を介し図1,2に示すごとくDC-DCコンバータ12の上部2隅角をそれぞれボルト15で後側上部サポートメンバ部分6aに固定し、
DC-DCコンバータ12の下部2隅角はそれぞれ、図2に示すごとく後側下部サポートメンバ部分6bに直接ボルト16で固定する。
【0026】
以上のことから、後側サポートメンバ6を後側上部サポートメンバ部分6aおよび後側下部サポートメンバ部分6bよりなる上下二段構造とする領域は、DC-DCコンバータ12が位置させる領域とし、それ以外の領域では後側サポートメンバ6を図3,4に明示するように、前側サポートメンバ5と同様な一段構造のままにする。
そして、当該一段構造のままにされている後側サポートメンバ6の部分と、前側サポートメンバ5との間に前記の左側クロスメンバ7を位置させ、この左側クロスメンバ7上に図1のごとく、電動モータ用の電力源であって重量が15Kg越えるバッテリ17を載せ、ここにバッテリ17をクランプ18により固定する。
【0027】
<作用効果>
上記した本実施例の構成になるモータルーム内主要部品搭載構造においては、
デザイン上の要求や、造形上の必要性から、また設置スペースの観点から、インバータ11(電力変換装置)を載せて固定する主要部品搭載台9の車両前後方向後ろ側にDC-DCコンバータ12を配置して、該車両前後方向後ろ側における後側サポートメンバ6にDC-DCコンバータ12を固定したものであっても、
主要部品搭載台9が、モータルーム内に車幅方向へ延在するよう横架した一対の前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6と、これら前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6間をクロスメンバ7,8により相互に結合して成る井桁形状であるため、以下の作用効果を達成することができる。
【0028】
つまり、上記したような井桁形状の主要部品搭載台9によれば、DC-DCコンバータ12の全重量が、DC-DCコンバータ12を取り付けた後側サポートメンバ6のみに作用するのでなく、前側サポートメンバ5および後側サポートメンバ6の双方にかかって応力を分散させ得ることとなる。
このため、重量物であるDC-DCコンバータ12の支持剛性が不足気味になるという前記の問題を解消することができる。
【0029】
また同様な理由から、DC-DCコンバータ12の重量による荷重が、DC-DCコンバータ12を取り付けた後側サポートメンバ6の弾性変形を介してインバータ11の筐体に達することがない。
従って、DC-DCコンバータ12の重量による荷重が車両の振動により繰り返し荷重になると雖も、インバータ11に耐久性などへの悪影響が及ぶという前記の問題をも解消することができる。
【0030】
なお井桁形状の主要部品搭載台9は、左右フロントサイドメンバ7,8間を橋絡しているため、モータルーム近辺における車体の捻り強度を高めるという付加的な作用効果をも達成可能である。
【0031】
また本実施例では、DC-DCコンバータ12を主要部品搭載台3の車両前後方向後方に配置して後側サポートメンバ6に固定したため、
主要部品搭載台3の後方にある比較的確保し易いスペースを有効に利用してDC-DCコンバータ12を設置し得ることとなり、制約されたモータルーム内のスペース効率を高めることができる。
【0032】
なおこの際、DC-DCコンバータ12を主要部品搭載台3の車両前後方向後方に立てた状態に配置したため、
DC-DCコンバータ12の設置スペースを益々確保し易くなり、モータルーム内のスペース効率を更に高めることができる。
【0033】
更に、後側サポートメンバ6の少なくともDC-DCコンバータ12が位置する領域を、後側上部サポートメンバ部分6aおよび後側下部サポートメンバ部分6bよりなる上下二段構造とし、
DC-DCコンバータ12の上部を後側上部サポートメンバ部分6aに、またDC-DCコンバータ12の下部を後側下部サポートメンバ部分6bにそれぞれ取着して固定したため、
DC-DCコンバータ12の上下間支持スパンが大きくなって、DC-DCコンバータ12の支持強度を高めることができる。
【0034】
そして主要部品搭載台9上に、電動モータ用の電力源であるバッテリ17をも載せて固定したため、
バッテリ17を重量物であると雖も、頑丈な井桁形状の主要部品搭載台9を介して強固に車載させることができ、併せて、他の主要部品との距離が短くなってワイヤハーネスの配索が容易である。
【0035】
<その他の実施例>
なお、図示例のモータルーム内主要部品搭載構造ではDC-DCコンバータ12を主要部品搭載台9の車両前後方向後ろ側に立てて配置したが、
逆にDC-DCコンバータ12を主要部品搭載台9の車両前後方向前側に立てて配置したり、平置きして配置して、主要部品搭載台9の前側サポートメンバ5に固定することもできる。
この場合も、図示例と同様な着想を適用することで、前記したと同様な作用効果が奏し得られるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 ダッシュロアパネル
2 左フロントサイドメンバ
3 右フロントサイドメンバ
4 ストラットタワー
5 前側サポートメンバ
6 後側サポートメンバ
6a 後側上部サポートメンバ部分
6b 後側下部サポートメンバ部分
7 左クロスメンバ
8 右クロスメンバ
9 主要部品搭載台
9a インバータ取り付けねじ穴
11 インバータ(電力変換装置)
12 DC-DCコンバータ(コンバータ)
13 インバータ取り付けボルト
14 DC-DCコンバータ上部取り付けブラケット
15 DC-DCコンバータ上部取り付けボルト
16 DC-DCコンバータ下部取り付けボルト
17 バッテリ
18 バッテリ固定クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に駆動結合したモータと、該モータを駆動制御する電力変換装置およびコンバータとをモータルーム内に収納して搭載した車両において、
前記モータルーム内に車幅方向へ延在するよう横架した一対のサポートメンバを車両前後方向に配して設けると共に、前側サポートメンバおよび後側サポートメンバ間をクロスメンバにより相互に結合して、井桁形状の主要部品搭載台を形成し、
該主要部品搭載台上に前記電力変換装置を載せて固定し、
該主要部品搭載台の車両前後方向一方側に前記コンバータを配置して、該車両前後方向一方側における前記サポートメンバに固定したことを特徴とする車両のモータルーム内主要部品搭載構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のモータルーム内主要部品搭載構造において、
前記コンバータを、前記主要部品搭載台の車両前後方向後方に配置して前記後側サポートメンバに固定したことを特徴とする車両のモータルーム内主要部品搭載構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のモータルーム内主要部品搭載構造において、
前記コンバータを、前記主要部品搭載台の車両前後方向後方に立てた状態に配置したことを特徴とする車両のモータルーム内主要部品搭載構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両のモータルーム内主要部品搭載構造において、
前記後側サポートメンバの少なくとも前記コンバータが位置する領域を、後側上部サポートメンバ部分および後側下部サポートメンバ部分よりなる上下二段構造とし、
前記コンバータの上部を前記後側上部サポートメンバ部分に、また前記コンバータの下部を前記後側下部サポートメンバ部分にそれぞれ取着して固定したことを特徴とする車両のモータルーム内主要部品搭載構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のモータルーム内主要部品搭載構造において、
前記主要部品搭載台上に、前記モータ用の電力源であるバッテリをも載せて固定したことを特徴とする車両のモータルーム内主要部品搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20602(P2011−20602A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168489(P2009−168489)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】