車両のリヤボディ構造
【課題】 高い剛性を備えた車両のリヤボディ構造を提供する。
【解決手段】 車両後部にアッパバックメンバ6を備えたトランクスルー仕様の車両のリヤボディ構造で、アッパバックメンバ6を左右の各リヤサスペンション部7の上方位置から車両前方にずれた位置で車両を横切るように配設し、センターフロアクロスメンバ4をアッパバックメンバの前方下方位置に配設しており、車両後部の右側と左側において、第一補強部材10がアッパバックメンバの端部と該端部に近接したリヤサスペンション部とを結合し、第二補強部材20がアッパバックメンバの端部と該端部の前方下にあるセンターフロアクロスメンバの端部とを結合している。
【解決手段】 車両後部にアッパバックメンバ6を備えたトランクスルー仕様の車両のリヤボディ構造で、アッパバックメンバ6を左右の各リヤサスペンション部7の上方位置から車両前方にずれた位置で車両を横切るように配設し、センターフロアクロスメンバ4をアッパバックメンバの前方下方位置に配設しており、車両後部の右側と左側において、第一補強部材10がアッパバックメンバの端部と該端部に近接したリヤサスペンション部とを結合し、第二補強部材20がアッパバックメンバの端部と該端部の前方下にあるセンターフロアクロスメンバの端部とを結合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車後部のボディ構造に係り、特に、車室空間とトランクルームとを仕切るパーティションパネルを備えずに自動車後部の剛性を確保した車両のリヤボディ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車などの車両においては、エンジンルーム,車室空間,トランクルームと3つの箱を並べたような、所謂3ボックスなどのボディスタイルが知られている。そして、このようなボディスタイルのセダンや4ドアハードトップタイプの車両は、車室空間とトランクルームとを仕切るために、パーティションパネルをボディ後部に配設している(特許文献1参照)。
【0003】
この種の車両は、例えば図7に示すように、左右の後輪の各ホイールハウス51に隣接して長さ方向を車両前後に向けたサイドメンバ52を設け、これらの左右のサイドメンバ52間にセンターフロアクロスメンバ53を横設している。そして、このセンターフロアクロスメンバ53は、断面をコ字状に形成されており、閉断面を画成するようにフロアパネル54に接合している。なお、図中に示すFは車両前方を、Rは車両右方を、Hは車両高さ方向をそれぞれ意味する。
【0004】
また、従来の車両は、センターフロアクロスメンバ53の後上方位置であってCピラー55の基端近傍に車両を横切るように、即ち、車幅方向にアッパバックメンバ57を備えると共に、このアッパバックメンバ57とセンターフロアクロスメンバ53とに架け渡すように、平板状に形成されたパーティションパネル60を設置している。
【0005】
なお、従来の車両は、ホイールハウス51にリヤサスペンションタワーを取り付けており、リヤサスペンションタワーからの入力の対策として、アッパバックメンバ57とセンターフロアクロスメンバ53とをパーティションパネル60を介して結合することで、ボディの剛性を確保している。
【0006】
このような従来の車両のリヤボディ構造は、車室空間の後方位置、即ち、トランクルームとの境界をなすパーティションパネル60の前面に、リヤシートを固定式に取り付けたり、リクライニング仕様のリヤシートを設置したりする場合には適しているが、リヤシートからトランクルームへ物の出し入れ等を可能とする、所謂トランクスルー仕様をこのような車両のリヤボディ構造に適用するには、パーティションパネル60が車室空間とトランクルームとを仕切るために不適応であり、これを回避するために、パーティションパネル60を取り除いて車両後部を構成すると、ボディの剛性が低下してしまう。
【0007】
そこで、トランクスルー仕様を採用した車両の後部に剛性を持たせるために、図8〜図10に示す従来の他の例のリヤボディ構造70では、補強部材71が、リヤサスペンション部72とその上方で車幅方向にのびたアッパバックメンバ73とを結合している。
【0008】
このようなリヤボディ構造70の代わりに、図11〜図13に示す従来の別の例のリヤボディ構造80も考えられる。
リヤボディ構造80においては、パネル状の補強部材81が、ホイールハウスに近接した位置でアッパバックメンバ82とセンターフロアクロスメンバ53とを部分的に架け渡すように配設されている。なお、補強部材81の上端部がアッパバックメンバ82に接合しており、下端部はセンターフロアクロスメンバ53に接合している。
【0009】
【特許文献1】特開2000−229584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図8に示すリヤボディ構造70の補強部材71は、その成形性から図14に示すように高さHを低くして構成することになってしまう。
また、図11に示すリヤボディ構造80の補強部材81は薄い板として形成されており、このような平板が、単に上下の各端部をアッパバックメンバ82とセンターフロアクロスメンバ53とに連結して配設されているだけであるので、ねじれ剛性が低かった。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、高い剛性を備えた車両のリヤボディ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、車両後部にアッパバックメンバを備えたトランクスルー仕様の車両のリヤボディ構造であって、アッパバックメンバが左右の各リヤサスペンション部の上方位置から車両前方にずれた位置で車両を横切るように配設され、センターフロアクロスメンバがアッパバックメンバの前方下方位置に配設されており、車両後部の右側と左側において、第一補強部材がアッパバックメンバの端部とこの端部に近接したリヤサスペンション部とを結合し、第二補強部材がアッパバックメンバの端部とこの端部の前方下にあるセンターフロアクロスメンバの端部とを結合していることを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の車両のリヤボディ構造においては、前記第一補強部材が断面コ字状に形成した骨部を一体に備えており、この骨部の上端に平面が形成され、この平面をアッパバックメンバの底面に接合して、アッパバックメンバが該骨部によって支持されている。さらに、本発明の車両のリヤボディ構造においては、前記第二補強部材が、断面コ字状に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
このような構成によれば、アッパバックメンバと車両ボディとの接合箇所まわり、即ちアッパバックメンバの両端部が、それぞれ第一補強部材と第二補強部材にて支持されているので、車両後部に横曲げ、倒れやねじれに対して高い剛性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。なお、図中に示すFは車両前方を、Rは車両右方を、Hは車両高さ方向をそれぞれ意味する。
図1は本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1を示す斜視図であり、図2は正面図、図3は側面図、図4は概略平面図である。図に示すように、リヤボディ構造1においては、左右の後輪の各ホイールハウス2に隣接して長さ方向を車両前後に向けたサイドメンバ3を設け、これらの左右のサイドメンバ3,3間にセンターフロアクロスメンバ4を横設している。そして、このセンターフロアクロスメンバ4は、断面をコ字状に形成されており、閉断面を画成するようにフロアパネル5に接合されている。
【0016】
また、リヤボディ構造1は、センターフロアクロスメンバ4の後上方位置で車両を横切るように、即ち、車幅方向にアッパバックメンバ6を備えている。
さらに、ホイールハウス2の一部位が、リヤサスペンションを支えるサスペンションタワーの上端部の形状に対応して車室空間側へ突出している。なお、このようにホイールハウス自体を部分的に突出形成する代わりに、ホイールハウス3に形成した開口からサスペンションタワーの上端部を車室空間側へ突出させるようにホイールハウス3にリヤサスペンションタワーを取り付けてもよい。以下、このように、突出形成されたホイールハウスの一部位や、ホイールハウス3の開口から車室空間側に突出したサスペンションタワーのことを、リヤサスペンション部7と称する。
【0017】
ここで、本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1においては、リヤサスペンション部7とアッパバックメンバ6とセンターフロアクロスメンバ4との配置関係が、例えば、図に示すように設定されている。即ち、アッパバックメンバ6は、リヤサスペンション部7の上方位置から車両前方にずれた位置で、車両を横切るように、車幅方向に配設されている。さらに、センターフロアクロスメンバ4は、アッパバックメンバ6の前方下方位置に配設され、フロアパネル5に接合されている。
【0018】
さらに、本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1においては、図に示すように、アッパバックメンバ6とリヤサスペンション部7とが第一補強部材10にて結合されている。第一補強部材10は、所謂ガセットであり、図5に示すように、リヤサスペンション部7の上面に固定するベース部11と、ベース部11から立ち上がった骨部材12と、を備えている。なお、骨部材12は一対の骨部12A,12Bを備えており、さらに、骨部材12においては骨部12Aと骨部12Bとの間に窪み12Cが形成されて、各骨部12A,12Bが並設されている。また、各骨部12A,12Bは、図4に示すように、断面をコ字状に形成されている。また、各骨部12A,12Bは、図3に示すように、車両前方に若干傾いて、ベース部11から起立している。さらに、一方の骨部12Aの上端は平面12Dとして構成されており、この平面12Dが図3及び図4に示すように車両右側のアッパバックメンバ6の端部底面に接合されている。これにより、アッパバックメンバ6の後部底面が第一補強部材10によって支持されることになる。
【0019】
また、骨部材12の周縁にはフランジ12Eが延出しており、このフランジ12Eは、車両の後部の側面を構成する部材、例えばインナーパネルやホイールハウスにスポット溶接などによって固定されている。
【0020】
さらに、本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1は、車両後部の右側において、アッパバックメンバ6の端部とセンターフロアクロスメンバ4の端部とが、第二補強部材20によって連結されている。
第二補強部材20は、所謂ストレーナであり、図1,図3及び図6に示すように、平板状の第一傾斜部21と、第一傾斜部21の端から延出した湾曲状の湾曲部22と、湾曲部22の端から延出し、第一傾斜部21と略平行に配設された第二傾斜部23と、から構成されている。なお、第二補強部材20は、第一傾斜部21と湾曲部22と第二傾斜部23とが一体となって、断面をコ字状とする骨格として構成されている。
【0021】
図2に示すように、第一傾斜部21は、その右側の縁部が車両の後部の側面に沿うように形成されており、この縁部からフランジ21Aが延出しており、フランジ21Aは、車両の後部の側面を構成する部材、例えばインナーパネル,ホイールハウス2などにスポット溶接などによって固定される。
【0022】
また、第一傾斜部21の下部はセンターフロアクロスメンバ4の前面に接合し、第一傾斜部21の上部はアッパバックメンバ6の前面に接合している。
さらに、第一傾斜部21は、図2に示すように、左側縁が高さ中ほどが凹むように、弓状に形成されている。
湾曲部22は、その下端の寸法がセンターフロアクロスメンバ4の幅程度に設定されており、上端の寸法がアッパバックメンバ6の幅程度に設定されていて、下端から上端方向に行くにしたがって幅が広くなっており、下部がセンターフロアクロスメンバ4の上面に接合し、上部がアッパバックメンバ6の底面に接合している。
第二傾斜部23は、第一傾斜部21とほぼ同様に構成されるが、アッパバックメンバ6の底面との接合が第一傾斜部21と異なり、図4に示すように、第二傾斜部23の上端部が、第一補強部材10のフランジ12Dとアッパバックメンバ6の底面との連結箇所と重ならないように、アッパバックメンバ6の底面と接合している。例えば、図4に示すように、第二傾斜部23の上端の寸法を第一傾斜部21の上端の幅よりも短くすることで、第一補強部材10のフランジ12Dとアッパバックメンバ6の底面との連結箇所と重ならないようにすることができる。
【0023】
以上の説明では、車両後部の右側の構造例を説明したが、車両後部の左側も同様に、アッパバックメンバ6の左端部が左側のリヤサスペンション部上に固定した第一補強部材によって支持されていると共に、アッパバックメンバ6の左端部とセンターフロアクロスメンバ4の左端部とが第二補強部材によって連結されている。
【0024】
このように本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1においては、閉断面を画成するアッパバックメンバ6を頂点として、センターフロアクロスメンバ4から後方上に配設したアッパバックメンバ6に架け渡すように第二補強部材20を配置し、リヤサスペンション部7から前方上に配設したアッパバックメンバ6に架け渡すように第一補強部材10を配置している。このようにリヤボディ構造1においては、アッパバックメンバ6と第一補強部材10と第二補強部材20とが山型を呈するように配置されている。
【0025】
このように構成された本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1では、アッパバックメンバ6がその前後から第一補強部材10や第二補強部材20で支持されているので、車両後部に高い剛性を持たせることができる。このような構造においては、リヤボディ剛性として、ねじり剛性を約7%、横曲げ剛性を約13%向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のリヤボディ構造を示す斜視図であり、特に車両右後部を示している。
【図2】図1の車両のリヤボディ構造の正面図である。
【図3】図1の車両のリヤボディ構造の側面図である。
【図4】図1の車両のリヤボディ構造の平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る第一補強部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第二補強部材を示す斜視図である。
【図7】従来の車両のリヤボディ構造の一例を示す斜視図である。
【図8】従来のリヤボディ構造の他の例を示す斜視図である。
【図9】図8のリヤボディ構造の正面図である。
【図10】図8のリヤボディ構造の側面図である。
【図11】従来のリヤボディ構造の別の例を示す斜視図である。
【図12】図11のリヤボディ構造の正面図である。
【図13】図11のリヤボディ構造の側面図である。
【図14】図8のリヤボディ構造の平面図である。
【図15】図11のリヤボディ構造の平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 リヤボディ構造
2 ホイールハウス
3 サイドメンバ
4 センターフロアクロスメンバ
5 フロアパネル
6 アッパバックメンバ
7 リヤサスペンション部
10 第一補強部材
11 ベース部
12 骨部材
12A,12B 骨部
12C 骨部材の窪み
12D 平面
12E フランジ
20 第二補強部材
21 第一傾斜部
21A フランジ
22 湾曲部
23 第二傾斜部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車後部のボディ構造に係り、特に、車室空間とトランクルームとを仕切るパーティションパネルを備えずに自動車後部の剛性を確保した車両のリヤボディ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車などの車両においては、エンジンルーム,車室空間,トランクルームと3つの箱を並べたような、所謂3ボックスなどのボディスタイルが知られている。そして、このようなボディスタイルのセダンや4ドアハードトップタイプの車両は、車室空間とトランクルームとを仕切るために、パーティションパネルをボディ後部に配設している(特許文献1参照)。
【0003】
この種の車両は、例えば図7に示すように、左右の後輪の各ホイールハウス51に隣接して長さ方向を車両前後に向けたサイドメンバ52を設け、これらの左右のサイドメンバ52間にセンターフロアクロスメンバ53を横設している。そして、このセンターフロアクロスメンバ53は、断面をコ字状に形成されており、閉断面を画成するようにフロアパネル54に接合している。なお、図中に示すFは車両前方を、Rは車両右方を、Hは車両高さ方向をそれぞれ意味する。
【0004】
また、従来の車両は、センターフロアクロスメンバ53の後上方位置であってCピラー55の基端近傍に車両を横切るように、即ち、車幅方向にアッパバックメンバ57を備えると共に、このアッパバックメンバ57とセンターフロアクロスメンバ53とに架け渡すように、平板状に形成されたパーティションパネル60を設置している。
【0005】
なお、従来の車両は、ホイールハウス51にリヤサスペンションタワーを取り付けており、リヤサスペンションタワーからの入力の対策として、アッパバックメンバ57とセンターフロアクロスメンバ53とをパーティションパネル60を介して結合することで、ボディの剛性を確保している。
【0006】
このような従来の車両のリヤボディ構造は、車室空間の後方位置、即ち、トランクルームとの境界をなすパーティションパネル60の前面に、リヤシートを固定式に取り付けたり、リクライニング仕様のリヤシートを設置したりする場合には適しているが、リヤシートからトランクルームへ物の出し入れ等を可能とする、所謂トランクスルー仕様をこのような車両のリヤボディ構造に適用するには、パーティションパネル60が車室空間とトランクルームとを仕切るために不適応であり、これを回避するために、パーティションパネル60を取り除いて車両後部を構成すると、ボディの剛性が低下してしまう。
【0007】
そこで、トランクスルー仕様を採用した車両の後部に剛性を持たせるために、図8〜図10に示す従来の他の例のリヤボディ構造70では、補強部材71が、リヤサスペンション部72とその上方で車幅方向にのびたアッパバックメンバ73とを結合している。
【0008】
このようなリヤボディ構造70の代わりに、図11〜図13に示す従来の別の例のリヤボディ構造80も考えられる。
リヤボディ構造80においては、パネル状の補強部材81が、ホイールハウスに近接した位置でアッパバックメンバ82とセンターフロアクロスメンバ53とを部分的に架け渡すように配設されている。なお、補強部材81の上端部がアッパバックメンバ82に接合しており、下端部はセンターフロアクロスメンバ53に接合している。
【0009】
【特許文献1】特開2000−229584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図8に示すリヤボディ構造70の補強部材71は、その成形性から図14に示すように高さHを低くして構成することになってしまう。
また、図11に示すリヤボディ構造80の補強部材81は薄い板として形成されており、このような平板が、単に上下の各端部をアッパバックメンバ82とセンターフロアクロスメンバ53とに連結して配設されているだけであるので、ねじれ剛性が低かった。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、高い剛性を備えた車両のリヤボディ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、車両後部にアッパバックメンバを備えたトランクスルー仕様の車両のリヤボディ構造であって、アッパバックメンバが左右の各リヤサスペンション部の上方位置から車両前方にずれた位置で車両を横切るように配設され、センターフロアクロスメンバがアッパバックメンバの前方下方位置に配設されており、車両後部の右側と左側において、第一補強部材がアッパバックメンバの端部とこの端部に近接したリヤサスペンション部とを結合し、第二補強部材がアッパバックメンバの端部とこの端部の前方下にあるセンターフロアクロスメンバの端部とを結合していることを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の車両のリヤボディ構造においては、前記第一補強部材が断面コ字状に形成した骨部を一体に備えており、この骨部の上端に平面が形成され、この平面をアッパバックメンバの底面に接合して、アッパバックメンバが該骨部によって支持されている。さらに、本発明の車両のリヤボディ構造においては、前記第二補強部材が、断面コ字状に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
このような構成によれば、アッパバックメンバと車両ボディとの接合箇所まわり、即ちアッパバックメンバの両端部が、それぞれ第一補強部材と第二補強部材にて支持されているので、車両後部に横曲げ、倒れやねじれに対して高い剛性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に示した実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。なお、図中に示すFは車両前方を、Rは車両右方を、Hは車両高さ方向をそれぞれ意味する。
図1は本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1を示す斜視図であり、図2は正面図、図3は側面図、図4は概略平面図である。図に示すように、リヤボディ構造1においては、左右の後輪の各ホイールハウス2に隣接して長さ方向を車両前後に向けたサイドメンバ3を設け、これらの左右のサイドメンバ3,3間にセンターフロアクロスメンバ4を横設している。そして、このセンターフロアクロスメンバ4は、断面をコ字状に形成されており、閉断面を画成するようにフロアパネル5に接合されている。
【0016】
また、リヤボディ構造1は、センターフロアクロスメンバ4の後上方位置で車両を横切るように、即ち、車幅方向にアッパバックメンバ6を備えている。
さらに、ホイールハウス2の一部位が、リヤサスペンションを支えるサスペンションタワーの上端部の形状に対応して車室空間側へ突出している。なお、このようにホイールハウス自体を部分的に突出形成する代わりに、ホイールハウス3に形成した開口からサスペンションタワーの上端部を車室空間側へ突出させるようにホイールハウス3にリヤサスペンションタワーを取り付けてもよい。以下、このように、突出形成されたホイールハウスの一部位や、ホイールハウス3の開口から車室空間側に突出したサスペンションタワーのことを、リヤサスペンション部7と称する。
【0017】
ここで、本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1においては、リヤサスペンション部7とアッパバックメンバ6とセンターフロアクロスメンバ4との配置関係が、例えば、図に示すように設定されている。即ち、アッパバックメンバ6は、リヤサスペンション部7の上方位置から車両前方にずれた位置で、車両を横切るように、車幅方向に配設されている。さらに、センターフロアクロスメンバ4は、アッパバックメンバ6の前方下方位置に配設され、フロアパネル5に接合されている。
【0018】
さらに、本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1においては、図に示すように、アッパバックメンバ6とリヤサスペンション部7とが第一補強部材10にて結合されている。第一補強部材10は、所謂ガセットであり、図5に示すように、リヤサスペンション部7の上面に固定するベース部11と、ベース部11から立ち上がった骨部材12と、を備えている。なお、骨部材12は一対の骨部12A,12Bを備えており、さらに、骨部材12においては骨部12Aと骨部12Bとの間に窪み12Cが形成されて、各骨部12A,12Bが並設されている。また、各骨部12A,12Bは、図4に示すように、断面をコ字状に形成されている。また、各骨部12A,12Bは、図3に示すように、車両前方に若干傾いて、ベース部11から起立している。さらに、一方の骨部12Aの上端は平面12Dとして構成されており、この平面12Dが図3及び図4に示すように車両右側のアッパバックメンバ6の端部底面に接合されている。これにより、アッパバックメンバ6の後部底面が第一補強部材10によって支持されることになる。
【0019】
また、骨部材12の周縁にはフランジ12Eが延出しており、このフランジ12Eは、車両の後部の側面を構成する部材、例えばインナーパネルやホイールハウスにスポット溶接などによって固定されている。
【0020】
さらに、本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1は、車両後部の右側において、アッパバックメンバ6の端部とセンターフロアクロスメンバ4の端部とが、第二補強部材20によって連結されている。
第二補強部材20は、所謂ストレーナであり、図1,図3及び図6に示すように、平板状の第一傾斜部21と、第一傾斜部21の端から延出した湾曲状の湾曲部22と、湾曲部22の端から延出し、第一傾斜部21と略平行に配設された第二傾斜部23と、から構成されている。なお、第二補強部材20は、第一傾斜部21と湾曲部22と第二傾斜部23とが一体となって、断面をコ字状とする骨格として構成されている。
【0021】
図2に示すように、第一傾斜部21は、その右側の縁部が車両の後部の側面に沿うように形成されており、この縁部からフランジ21Aが延出しており、フランジ21Aは、車両の後部の側面を構成する部材、例えばインナーパネル,ホイールハウス2などにスポット溶接などによって固定される。
【0022】
また、第一傾斜部21の下部はセンターフロアクロスメンバ4の前面に接合し、第一傾斜部21の上部はアッパバックメンバ6の前面に接合している。
さらに、第一傾斜部21は、図2に示すように、左側縁が高さ中ほどが凹むように、弓状に形成されている。
湾曲部22は、その下端の寸法がセンターフロアクロスメンバ4の幅程度に設定されており、上端の寸法がアッパバックメンバ6の幅程度に設定されていて、下端から上端方向に行くにしたがって幅が広くなっており、下部がセンターフロアクロスメンバ4の上面に接合し、上部がアッパバックメンバ6の底面に接合している。
第二傾斜部23は、第一傾斜部21とほぼ同様に構成されるが、アッパバックメンバ6の底面との接合が第一傾斜部21と異なり、図4に示すように、第二傾斜部23の上端部が、第一補強部材10のフランジ12Dとアッパバックメンバ6の底面との連結箇所と重ならないように、アッパバックメンバ6の底面と接合している。例えば、図4に示すように、第二傾斜部23の上端の寸法を第一傾斜部21の上端の幅よりも短くすることで、第一補強部材10のフランジ12Dとアッパバックメンバ6の底面との連結箇所と重ならないようにすることができる。
【0023】
以上の説明では、車両後部の右側の構造例を説明したが、車両後部の左側も同様に、アッパバックメンバ6の左端部が左側のリヤサスペンション部上に固定した第一補強部材によって支持されていると共に、アッパバックメンバ6の左端部とセンターフロアクロスメンバ4の左端部とが第二補強部材によって連結されている。
【0024】
このように本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1においては、閉断面を画成するアッパバックメンバ6を頂点として、センターフロアクロスメンバ4から後方上に配設したアッパバックメンバ6に架け渡すように第二補強部材20を配置し、リヤサスペンション部7から前方上に配設したアッパバックメンバ6に架け渡すように第一補強部材10を配置している。このようにリヤボディ構造1においては、アッパバックメンバ6と第一補強部材10と第二補強部材20とが山型を呈するように配置されている。
【0025】
このように構成された本発明の実施形態に係るリヤボディ構造1では、アッパバックメンバ6がその前後から第一補強部材10や第二補強部材20で支持されているので、車両後部に高い剛性を持たせることができる。このような構造においては、リヤボディ剛性として、ねじり剛性を約7%、横曲げ剛性を約13%向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のリヤボディ構造を示す斜視図であり、特に車両右後部を示している。
【図2】図1の車両のリヤボディ構造の正面図である。
【図3】図1の車両のリヤボディ構造の側面図である。
【図4】図1の車両のリヤボディ構造の平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る第一補強部材を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第二補強部材を示す斜視図である。
【図7】従来の車両のリヤボディ構造の一例を示す斜視図である。
【図8】従来のリヤボディ構造の他の例を示す斜視図である。
【図9】図8のリヤボディ構造の正面図である。
【図10】図8のリヤボディ構造の側面図である。
【図11】従来のリヤボディ構造の別の例を示す斜視図である。
【図12】図11のリヤボディ構造の正面図である。
【図13】図11のリヤボディ構造の側面図である。
【図14】図8のリヤボディ構造の平面図である。
【図15】図11のリヤボディ構造の平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 リヤボディ構造
2 ホイールハウス
3 サイドメンバ
4 センターフロアクロスメンバ
5 フロアパネル
6 アッパバックメンバ
7 リヤサスペンション部
10 第一補強部材
11 ベース部
12 骨部材
12A,12B 骨部
12C 骨部材の窪み
12D 平面
12E フランジ
20 第二補強部材
21 第一傾斜部
21A フランジ
22 湾曲部
23 第二傾斜部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部にアッパバックメンバを備えたトランクスルー仕様の車両のリヤボディ構造であって、
上記アッパバックメンバが左右の各リヤサスペンション部の上方位置から車両前方にずれた位置で車両を横切るように配設され、センターフロアクロスメンバが上記アッパバックメンバの前方下方位置に配設されており、
車両後部の右側と左側において、第一補強部材が上記アッパバックメンバの端部と該端部に近接したリヤサスペンション部とを結合し、第二補強部材が上記アッパバックメンバの端部と該端部の前方下にある上記センターフロアクロスメンバの端部とを結合していることを特徴とする、車両のリヤボディ構造。
【請求項2】
前記第一補強部材が、断面コ字状に形成した骨部を一体に備えており、該骨部の上端に平面が形成され、
該平面を前記アッパバックメンバの底面に接合して、前記アッパバックメンバが該骨部によって支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のリヤボディ構造。
【請求項3】
前記第二補強部材が、断面コ字状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のリヤボディ構造。
【請求項1】
車両後部にアッパバックメンバを備えたトランクスルー仕様の車両のリヤボディ構造であって、
上記アッパバックメンバが左右の各リヤサスペンション部の上方位置から車両前方にずれた位置で車両を横切るように配設され、センターフロアクロスメンバが上記アッパバックメンバの前方下方位置に配設されており、
車両後部の右側と左側において、第一補強部材が上記アッパバックメンバの端部と該端部に近接したリヤサスペンション部とを結合し、第二補強部材が上記アッパバックメンバの端部と該端部の前方下にある上記センターフロアクロスメンバの端部とを結合していることを特徴とする、車両のリヤボディ構造。
【請求項2】
前記第一補強部材が、断面コ字状に形成した骨部を一体に備えており、該骨部の上端に平面が形成され、
該平面を前記アッパバックメンバの底面に接合して、前記アッパバックメンバが該骨部によって支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のリヤボディ構造。
【請求項3】
前記第二補強部材が、断面コ字状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のリヤボディ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−168434(P2006−168434A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360418(P2004−360418)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
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