説明

車両の乗員保護装置

【課題】カーテンエアバッグをより有効に機能させることができる乗員保護装置を得る。
【解決手段】リヤカーテンエアバッグ12のセンターシート3に対応する前方の膨張部分12aFと、跳ね上げ式リヤシート4に対応する後方の膨張部分12aRとの間の連結部分12bに、所定以上の引張り力で破断するミシン目21を形成することにより、リヤカーテンエアバッグ12が展開途中でリヤシート4に引っ掛かって展開抵抗力が発生すると、ミシン目21が破断して前方の膨張部分12aFに引張り力が作用するのを防止できるため、リヤカーテンエアバッグ12は前方の膨張部分12aFでスムーズな展開および正規の展開状態を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグを備えた車両の乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の乗員保護装置として、従来、側面衝突時やロールオーバー時等の側方荷重が働く緊急時に、乗員の頭部や肩が車室内の側面、つまり、ドアガラスやピラー等に干渉した際の衝撃を緩和させるカーテンエアバッグを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
カーテンエアバッグは、前後方向に配列される複数の袋体を備え、それら袋体は通常時には側面上部に配置されるルーフライニングの内部に格納されており、緊急時に車室内の側面に沿って下方に向かって膨張・展開するようになっている。
【特許文献1】特開2004−182038号公報(第6−7頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる従来のカーテンエアバッグは、展開時のバタ付きを抑制するため、各袋体を前後方向に連結して、一続き(一枚)のカーテンエアバッグが展開される構造としてある。
【0005】
よって、カーテンエアバッグの展開範囲に障害物が存在する場合には、展開しつつあるカーテンエアバッグの一部分が当該障害物に引っ掛かってカーテンエアバッグがスムーズに展開できなくなったり、障害物と干渉した部分が捲れ上がった状態となり、障害物から外れた部分でも当該捲れ上がった部分に引っ張られてカーテンエアバッグが傾いたりして、正規の展開状態が得られなくなってしまう虞があった。
【0006】
特に、車室内側面に沿って収納される折り畳み式シート(跳ね上げシート)が設定された車両では、当該折り畳み式シートが上記障害物となるため、折り畳みシートに対応する部分にはカーテンエアバッグを設定できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、カーテンエアバッグをより有効に機能させることができる車両の乗員保護装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる車両の乗員保護装置は、車室内の側面上部から下方に向けて当該側面に沿って膨張・展開し、側面衝突時に乗員に作用する衝撃を緩和するカーテンエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、前記カーテンエアバッグを前後方向に区画して複数の膨張部分を設定し、少なくとも一組の前後に隣接する膨張部分同士を易分離部を介して結合し、前記易分離部を介して結合された膨張部分同士の膨張・展開時における展開抵抗力の差によって、それら膨張部分同士を当該易分離部で分離させるようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カーテンエアバッグの展開範囲に跳ね上げ式シートや荷物等の障害物が存在する場合にあっても、展開途中でその一部分が障害物と干渉することによって生じる展開抵抗力によって、膨張部分同士が易分離部で分離される。
【0010】
したがって、カーテンエアバッグが障害物と干渉することによる影響を小さくすることができる。すなわち、障害物と干渉しない膨張部分についてはスムーズに展開することができるし、また、障害物と干渉した膨張部分によって他の部分が引っ張られるような事態も抑制することができ、以て、カーテンエアバッグをより有効に機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかる車両の乗員保護装置におけるカーテンエアバッグの通常の展開状態を車室内から見た正面図、図2は、カーテンエアバッグの一部分が障害物に引っ掛かった状態を示す車室内から見た正面図、図3は、易分離部を示す図1中A部の拡大図である。なお、本実施形態では、本発明を、フロントシート2、センターシート3、およびリヤシート4とを備えた所謂ワンボックスタイプの車両1において実施した場合について例示する。
【0012】
本実施形態では、側面衝突時やロールオーバー時等の側方荷重が働く緊急時に、車室内の側面上部から下方に向かって当該側面に沿って膨張・展開するカーテンエアバッグ10を備えた乗員保護装置Pが構成されている。
【0013】
このカーテンエアバッグ10は、膨張・展開した状態で、車室内の側面となるフロントドア5のフロントドアガラス5a部分、リアドア6のリヤドアガラス6a部分、およびそのリヤドアガラス6aの車両後方に位置する嵌め込み式ウインドガラス(図示省略)部分の車室内面を覆うようになっている。
【0014】
また、本実施形態では、カーテンエアバッグ10は、フロントシート2の乗員に対応してフロントドアガラス5a部分を覆うフロントカーテンエアバッグ11と、センターシート3の乗員およびリヤシート4の乗員にそれぞれ対応してリヤドアガラス6a部分および嵌め込み式ウインドガラス部分を覆うリヤカーテンエアバッグ12と、によって構成される。
【0015】
これらフロントカーテンエアバッグ11とリヤカーテンエアバッグ12とは互いに分離独立して構成されている。また、リヤカーテンエアバッグ12は、センターシート3とリヤシート4の乗員に対応させて車両前後方向に一続きに長く形成されており、本発明は、特にこのリヤカーテンエアバッグ12に対して適用されている。
【0016】
そして、フロントカーテンエアバッグ11、およびリヤカーテンエアバッグ12は、いずれも隣接されるもの同士が互いに連結された状態で前後方向に配列される複数の袋体11a,12aを備えており、緊急時には、図示しない制御機構によって動作制御されたインフレータ13から、高圧ガスがフロントチューブ14Fを介してフロントカーテンエアバッグ11の袋体11aに供給されると同時に、リヤチューブ14Rを介してリヤカーテンエアバッグ12の袋体12aにも供給され、車室内の側面上部に格納されていたフロントカーテンエアバッグ11およびリヤカーテンエアバッグ12の双方が展開されることになる。
【0017】
リヤカーテンエアバッグ12については、前後方向の略中央部において、前後に隣接する袋体12a,12a同士の間隔(連結部分12b)を広くとるとともに、その前後に袋体12aを複数個ずつ含む集合体を形成し、これら集合体を、それぞれ、センターシート3に対応した部分(センターシート3に着座した乗員の側方)の膨張部分12aF、およびリヤシート4に対応した部分(リヤシート4に着座した乗員の側方)の膨張部分12aRとしている。
【0018】
ここで、リヤシート4は、図2に示すように、車室内の側面に沿った収納位置に跳ね上げて収納される折り畳み式シート(跳ね上げ式シート)となっており、図示のようにこの跳ね上げ式のリヤシート4を収納した場合には、ラゲッジルームを広く使用することができる。
【0019】
ただし、このリヤシート4は、収納状態では、リヤカーテンエアバッグ12の後半部分の展開位置(後方の膨張部分12aRの展開部分)に配置され、リヤカーテンエアバッグ12の展開に対して障害物となってしまう。
【0020】
そこで、本実施形態では、リヤカーテンエアバッグ12の一部に所定以上の展開抵抗力が作用した際に、そのリヤカーテンエアバッグ12の前後方向の適宜箇所を、リヤカーテンエアバッグ12の気密性を保持しつつ前後方向に分離するようにしてある。具体的には、センターシート3に対応する部分とリヤシート4に対応する部分との間で、気密性を保持しつつリヤカーテンエアバッグ12を前後に分離するようにしてある。
【0021】
より詳しくは、前方の膨張部分12aFと後方の膨張部分12aRとの間の連結部分12b(基布)に、下端部から上方に向けて線状に伸びる(ただし上端部の手前まで)易分離部20を設け、リヤカーテンエアバッグ12の膨張・展開時に生じた所定値以上の大きさの展開抵抗力によって、相互に連結された膨張部分12aF,12aR同士がこの易分離部20で分離され、それぞれ独立して膨張・展開するようにしてある。
【0022】
本実施形態では、図3に示すように、易分離部20に、連結部分12bの基布に下端から上方に伸びる(ただし上端部の手前まで)ミシン目21を設けている。このミシン目21の大きさ、形状、数等は適宜に設定される。
【0023】
したがって、上記構成によれば、図2に示すように、跳ね上げ式のリヤシート4が収納状態にある場合には、当該リヤシート4がリヤカーテンエアバッグ12の展開範囲に障害物となって存在することになり、リヤカーテンエアバッグ12の展開途中でその後半部分(後方の膨張部分12aR)がリヤシート4に干渉して展開抵抗力が発生する。
【0024】
一方、リヤカーテンエアバッグ12の前半部分(前方の膨張部分12aF)に対しては障害物は存在せず、当該前半部分は特に大きな展開抵抗力を受けることなくそのまま膨張・展開しようとする。
【0025】
したがって、障害物(リヤシート4)との干渉によって膨張・展開が抑制される膨張部分12aRと、障害物が無く膨張・展開が特に抑制されない膨張部分12aFとの境界部分、すなわち連結部分12bには、それら二つの膨張部分12aF,12aRを相互に分離しようとする方向(すなわち前後方向)に引張力が作用し、当該引張力が所定値を超えた場合に、ミシン目21が破断し、易分離部20において二つの膨張部分12aF,12aRが分離する。
【0026】
以上の本実施形態にかかる乗員保護装置Pによれば、リヤカーテンエアバッグ12の膨張・展開時にリヤカーテンエアバッグ12の一部が障害物と干渉して所定以上の展開抵抗力が作用した際には、リヤカーテンエアバッグ12の前後方向の適宜箇所を、その気密性を保持しつつ前後に分離することができる。
【0027】
すなわち、本実施形態では、リヤカーテンエアバッグ12を前後方向に区画して複数の膨張部分12aF,12aRを設定し、前後に隣接する膨張部分12aF,12aR同士を易分離部20を介して結合し、それら膨張部分12aF,12aRを、リヤカーテンエアバッグ12の膨張・展開時における展開抵抗力の差によって易分離部20で分離するようにしている。
【0028】
したがって、障害物と干渉しない膨張部分12aFについてはスムーズに展開させることができるし、また、障害物と干渉した膨張部分12aRによって他の部分が引っ張られるような事態も抑制することができ、以て、リヤカーテンエアバッグ12が障害物と干渉することによる影響を小さくして、リヤカーテンエアバッグ12をより有効に機能させることができる。
【0029】
また、易分離部20を、膨張部分12aF,12aR間、すなわち相互に隣接する袋体12a,12a間の連結部分12b(基布)に設けてあるので、ガスが封入されて乗員干渉時の緩衝部分となる袋体12aの気密性をより確実に保持して乗員の衝撃緩和効果を低下することなく、リヤカーテンエアバッグ12を分離することができる。
【0030】
そして、本実施形態では、易分離部20を介して連結される二つの膨張部分12aF,12aRのうち一の膨張部分12aRを、当該膨張部分12aRの膨張・展開時に展開抵抗力を与える障害物に対応させて設ける一方、他の膨張部分12aFを、当該障害物の前または後に隣接した障害物の無い領域に対応させて設けたため、車室内の障害物が予め想定される場合において、障害物の無い領域に対応する膨張部分12aFをより確実に膨張・展開させ、リヤカーテンエアバッグ12をより効果的に機能させることができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、車室内の側面に沿って収納される折り畳み式のリヤシート4を障害物とし、後側の膨張部分12aRを、当該リヤシート4に着座する乗員用として設けるとともに、前側の膨張部分12aFを、使用時のリヤシート4とは別のシート(本実施形態ではセンターシート3)に着座する乗員用として設けたため、リヤシート4をリンク機構やヒンジ機構によって着座使用時の位置に対してほぼ真横の位置(シートクッションのほぼ真横の位置)に跳ね上げて収納するタイプの車両1において、リヤシート4の着座使用時には、膨張部分12aF,12aRを双方とも膨張・展開させてリヤシート4の乗員およびセンターシート3の乗員の双方の保護に供することができる上、リヤシート4の収納時においても、少なくとも膨張部分12aFをより確実に膨張・展開させてセンターシート3の乗員の保護に供することができる。
【0032】
また、本実施形態のように、易分離部20を、予め想定される障害物(一例としては上記収納状態のリヤシート4)の端部に隣接して、さらに好適には当該端縁に沿って設けるようにすれば、易分離部20に作用する引張力がより大きくなって分離状態をより確実に得られるようになる上、膨張・展開する領域をより広く確保できるようになって有利である。
【0033】
また、本実施形態では、連結部分12bにミシン目21を設けることで易分離部20極めて容易に構成することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、障害物として、車室内の側面に沿って収納される跳ね上げ式のリヤシート4を想定したが、着脱式のシートの他、ラゲッジルームやセンターシート3、リヤシート4等に搭載した荷物等、他の物が障害物となる場合にも、本発明は有効である。例えば、リヤカーテンエアバッグ12の前半部分に何らかの障害物が位置することが想定される場合には、その障害物の後方近傍に易分離部20を設けることによって、膨張・展開する後半部分の範囲をより広く取ることができる。
【0035】
(第2実施形態)図4は、本実施形態にかかる乗員保護装置の易分離部の拡大図、図5は、易分離部の分離状態を示す拡大図である。なお、本実施形態にかかる乗員保護装置Pは、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、共通の構成要素には同一の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0036】
本実施形態は、易分離部20の両側の膨張部分12aF,12aR同士を予め分離形成しておき、それら膨張部分12aF,12aR同士を分離可能に連結する連結手段を易分離部20として設けた点を特徴としている。
【0037】
すなわち、図4に示すように、第1実施形態と同様に前方の膨張部分12aFと後方の膨張部分12aRとの間の連結部分12bに易分離部20が設けられており、当該易分離部20を構成する連結手段を、リヤカーテンエアバッグ12の分離部分22の対向縁22a,22bに沿って取り付けられるファスナ23によって構成してある。
【0038】
ファスナ23は、例えば、対向縁22a,22bにそれぞれ一列に(線状に)取り付けられる細かいファスナエレメント(務歯)23a,23bが、それぞれ噛み合わされたり分離されたりして、分離部分22を開閉できるように構成される。
【0039】
そして、通常時はファスナエレメント23a,23b同士を相互に噛み合わせて閉じておき、この状態でリヤカーテンエアバッグ12に所定以上の展開抵抗力が生じて引張力が作用した場合には、ファスナエレメント23a,23b同士が強制的に分離されてファスナ23が開くようにしてある。
【0040】
以上の本実施形態によれば、リヤカーテンエアバッグ12の展開途中で展開抵抗力が作用した場合には、ファスナ23が引き離されて分離部分22が開くことで膨張部分12aF,12aR同士が分離されるため、第1実施形態と同様に、リヤカーテンエアバッグ12の障害物と干渉しない部分がスムーズに展開して正規の展開状態を維持でき、上記実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、膨張部分12aF,12aR同士を予め分離形成した分、より確実に所定の分離状態を得ることができるとともに、連結手段を設けた分、分離条件を設定しやすくなるため、リヤカーテンエアバッグ12を膨張・展開時に分離させることによる効果をより一層確実に得ることができるという利点がある。
【0042】
(第3実施形態)図6は、本実施形態にかかる乗員保護装置の連結手段の拡大図である。なお、本実施形態にかかる乗員保護装置Pは、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、共通の構成要素には同一の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0043】
本実施形態も、易分離部20の両側の膨張部分12aF,12aR同士を予め分離形成しておき、それら膨張部分12aF,12aR同士を分離可能に連結する連結手段を易分離部20として設けている。
【0044】
ただし、本実施形態では、図6に示すように、連結手段として、リヤカーテンエアバッグ12の分離部分22の両側の膨張部分12aF,12aR同士を重ね合わせ部分24に面ファスナ25を設け、これを易分離部20としている。
【0045】
面ファスナ25は、例えば、鉤状の細かい突起を一面に林立させた一方の布(ファスナテープ)と、パイル状の細かい突起を一面に林立させた他方の布(ファスナテープ)と、を備え、重ね合わせ部分24の一方に一方の布を取り付けるとともに、他方に他方の布を取り付けることで構成される。
【0046】
そして、通常時は双方の布の鉤状突起とパイル状突起とが絡み合って係止することにより重ね合わせ部分24を閉じており、この状態でリヤカーテンエアバッグ12に所定以上の展開抵抗力が作用することにより、係止した鉤状突起とパイル状突起とが強制的に引き離されて分離部分22が開く(分離する)ようになっている。
【0047】
したがって、本実施形態にあっても、リヤカーテンエアバッグ12の展開途中で展開抵抗力が作用した場合には、面ファスナ25が引き離されて分離部分22が開くことで膨張部分12aF,12aR同士が分離されるため、リヤカーテンエアバッグ12の障害物と干渉しない部分がスムーズに展開して正規の展開状態を維持でき、上記実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第4実施形態)図7は、本実施形態にかかる乗員保護装置の連結手段の拡大図である。なお、本実施形態にかかる乗員保護装置Pは、上記実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、共通の構成要素には同一の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0049】
本実施形態も、易分離部20の両側の膨張部分12aF,12aR同士を予め分離形成しておき、それら膨張部分12aF,12aR同士を分離可能に連結する連結手段を易分離部20として設けている。
【0050】
ただし、本実施形態では、図7に示すように、連結手段を、リヤカーテンエアバッグ12の分離部分22の対向縁22a,22bに形成した重ね合わせ部分24の一方に設けられて、他方に設けたボタン穴(ボタン受容部)26aに係脱するボタン26によって構成してある。
【0051】
そして、通常時はボタン26がボタン穴26aに係止することにより重ね合わせ部分24を閉じておき、この状態でリヤカーテンエアバッグ12に所定以上の展開抵抗力が作用することにより、係止したボタン26がボタン穴26aから強制的に外されて分離部分22が開く(分離する)ようにしてある。
【0052】
したがって、本実施形態にあっても、リヤカーテンエアバッグ12の展開途中で展開抵抗力が作用した場合には、ボタン26がボタン穴26aから外れて分離部分22が開くことで膨張部分12aF,12aR同士が分離されるため、リヤカーテンエアバッグ12の障害物と干渉しない部分がスムーズに展開して正規の展開状態を維持でき、上記実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0053】
以上、本発明を例示する実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【0054】
例えば、本発明をフロントカーテンエアバッグに適用してもよく、また、これらフロント・リヤカーテンエアバッグは分離独立させることなく連続一体化して、その全体のカーテンエアバッグに本発明を適用することもできる。
【0055】
また、易分離部は、連結部分を所定位置で分離させることができる構成や形状であればよく、例えば、連結部分(基布)の一部を薄くするなどして脆弱部として形成してもよいし、下縁や、表面、裏面等に切り込みを設けるなどして、引張力による応力集中を生じさせ、よりスムーズに分離させるようにしてもよい。また、連結手段としても、ホックやスナップ等、種々の構成を採用することができる。さらに、易分離部の形状や、大きさ(長さ)、位置等も適宜に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態におけるカーテンエアバッグの通常の展開状態を示す車室内から見た正面図。
【図2】本発明の第1実施形態におけるカーテンエアバッグの一部分が障害物と干渉した状態を示す車室内から見た正面図。
【図3】本発明の第1実施形態における連結手段を示す図1中A部の拡大図。
【図4】本発明の第2実施形態における連結手段の拡大図。
【図5】本発明の第2実施形態における連結手段の分離状態を示す拡大図。
【図6】本発明の第3実施形態における連結手段の拡大図。
【図7】本発明の第4実施形態における連結手段の拡大図。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
4 跳ね上げ式リヤシート(障害物)
12 リヤカーテンエアバッグ(カーテンエアバッグ)
12a 袋体
12b 連結部分
20 易分離部
21 ミシン目
22 分離部分
23 ファスナ(連結手段)
24 重ね合わせ部分
25 面ファスナ(連結手段)
26 ボタン(連結手段)
26a ボタン穴(連結手段)
P 乗員保護装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の側面上部から下方に向けて当該側面に沿って膨張・展開し、側面衝突時に乗員に作用する衝撃を緩和するカーテンエアバッグを備えた車両の乗員保護装置であって、
前記カーテンエアバッグを前後方向に区画して複数の膨張部分を設定し、
少なくとも一組の前後に隣接する膨張部分同士を易分離部を介して結合し、
前記易分離部を介して結合された膨張部分同士の膨張・展開時における展開抵抗力の差によって、それら膨張部分同士を当該易分離部で分離させるようにしたことを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記易分離部を介して結合された二つの膨張部分のうち一の膨張部分を、当該膨張部分の膨張・展開時に展開抵抗力を与える障害物に対応させて設ける一方、他の膨張部分を、当該障害物の前または後に隣接した領域に対応させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記障害物は、車室内の側面に沿って収納されたシートであることを特徴とする請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記車室内の側面に沿って収納されたシートは折り畳み式シートであり、
前記一の膨張部分を、前記折り畳み式シートに着座する乗員用として設けるとともに、前記他の膨張部分を、使用時の前記折り畳み式シートとは別のシートに着座する乗員用として設けたことを特徴とする請求項3に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記易分離部にミシン目を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置。
【請求項6】
前後に隣接する膨張部分同士を予め分離形成しておき、それら膨張部分同士を分離可能に連結する連結手段を前記易分離部として設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置。
【請求項7】
前記連結手段として、各膨張部分に線状に設けたファスナエレメント同士を噛み合わせてなるファスナを設けたことを特徴とする請求項6に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項8】
前後に隣接する膨張部分の境界部同士を重ね合わせ、
前記連結手段として、重ね合わせた部分の相互に対向する面のそれぞれに設けたファスナテープ同士を貼り合わせてなる面ファスナを設けたことを特徴とする請求項6に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項9】
前記連結手段を、前後に隣接する膨張部分のうち一方に設けたボタンと、他方に設けたボタン受容部と、によって形成したことを特徴とする請求項6に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項10】
カーテンエアバッグを車室内の側面上部から下方に向けて当該側面に沿って膨張・展開することにより、側面衝突時に乗員に作用する衝撃を緩和する車両の乗員保護装置であって、
カーテンエアバッグの膨張・展開時に当該カーテンエアバッグの一部に所定以上の展開抵抗力が作用した際には、カーテンエアバッグの前後方向の適宜箇所を、その気密性を保持しつつ前後に分離するようにしたことを特徴とする車両の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−237914(P2007−237914A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62845(P2006−62845)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】