説明

車両の制御装置、車両、車両の制御方法、およびプログラム

【課題】エコラン制御中の運転者のストレスまたは故障したとの誤認識を解消させること。
【解決手段】制御装置1は、アクセル開度計算部10が調整した結果として実現されている現在のアクセル開度と車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示部15に表示させる表示制御部14を有する。この制御装置1は車両に搭載されるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置、車両、車両の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の省燃費を実現するために、車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御(以下では、このような制御をエコラン制御と称する。)が実施される(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−297903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなエコラン制御の実施中は、たとえば運転者が大きな加速度を得るために、アクセルペダルを最大限に深く踏み込んでも実際のアクセル開度は、運転者の要求どおりにはならない。それは、実際のアクセル開度は、エコラン制御の制御装置が設定しているためであり、急峻な加速度の増加は行われず、控え目な加速度の増加になる。このような車両の挙動は、エコラン制御に不慣れな運転者にとっては、要求どおりの車両の挙動が得られないため、ストレスになる。さらにエコラン制御についての知識が乏しい運転者は、要求どおりの車両の挙動が得られない原因がエコラン制御に起因することがわからずに、車両の故障と誤認識する場合も有り得る。
【0005】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、エコラン制御中の運転者のストレスまたは故障したとの誤認識を解消させることができる車両の制御装置、車両、車両の制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のひとつの観点は、車両の制御装置としての観点である。本発明の車両の制御装置は、車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御手段を有する車両の制御装置において、制御手段が調整した結果として実現されている現在のアクセル開度と車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示する表示手段を有するものである。
【0007】
本発明の他の観点は、車両としての観点である。本発明の車両は、本発明の車両の制御装置を有するものである。
【0008】
本発明のさらに他の観点は、車両の制御方法としての観点である。本発明の車両の制御方法は、車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御ステップを有する車両の制御方法において、制御ステップの処理により調整された結果として実現されている現在のアクセル開度と車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示する表示ステップを有するものである。
【0009】
本発明のさらに他の観点は、プログラムとしての観点である。本発明のプログラムは、コンピュータに、車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御手段を有する車両の制御装置の機能を実現させるプログラムにおいて、制御手段が調整した結果として実現されている現在のアクセル開度と車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示する表示手段の機能を実現させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エコラン制御中の運転者のストレスまたは故障したとの誤認識を解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の車両の制御装置のブロック構成図である。
【図2】図1の目標加速度記憶部に記憶されている車速と目標加速度との関係の一例を示す図である。
【図3】図1の表示装置に表示される要求アクセル開度と制御アクセル開度の表示例を示す図である。
【図4】図1のアクセル開度計算部の動作を示すフローチャートである。
【図5】図1の制御装置による制御結果を示す図であり、エンジン回転速度、要求アクセル開度、エコラン制御によるアクセル開度減少分、実際のアクセル開度、車速、および制御アクセル開度の適用期間の関係を時間の経過と共に示す図である。
【図6】図1の表示装置に表示される要求アクセル開度と制御アクセル開度の表示例の図2とは異なる別の表示例を示す図である。
【図7】図1の表示装置に表示される要求アクセル開度と制御アクセル開度の表示例の図2、図6とは異なる別の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(概要)
本発明の実施の形態の制御装置1は、車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う。制御装置1のこのような制御を、ここでは「エコラン制御」と称することにする。制御装置1では、エコラン制御中には、運転者がアクセルペダルを踏み込むことにより車両に対して要求するアクセル開度(以下では、これを要求アクセル開度と称する。)とエコラン制御によって設定されたアクセル開度(以下では、これを制御アクセル開度と称する。)とを双方共に表示部15の表示画面上に表示させるようにする。
【0013】
(構成)
制御装置1は、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/O(Input/Output)ポートなどを有する。制御装置1によって実行されるプログラムは、制御装置1の内部の不揮発性のメモリにあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータである制御装置1にあらかじめインストールしておくことができる。制御装置1がプログラムを実行すると、アクセル開度計算部(請求項でいう制御手段の一部で制御方法の制御ステップの一部を実行)10、加速度比較部(請求項でいう制御手段の一部で制御方法の制御ステップの一部を実行)11、加速度算出部(請求項でいう制御手段の一部で制御方法の制御ステップの一部を実行)12、目標加速度記憶部(請求項でいう制御手段の一部で制御方法の制御ステップの一部を実行)13、および表示制御部(請求項でいう表示手段で制御方法の表示ステップを実行)14の機能が実現される。
【0014】
アクセル開度計算部10は、不図示のアクセルペダルセンサから出力されるアクセルペダルの踏み込み量などのアクセルぺダル操作情報、加速度比較部11から出力される実際の加速度と目標加速度との差分情報、およびエコラン制御のON/OFF情報にしたがって、アクセル開度制御指示をエンジンECU(Electric Control Unit)16に対して行う。
【0015】
加速度比較部11は、加速度算出部12から出力される実際の加速度情報と、目標加速度記憶部13のメモリを参照して得た目標加速度情報とを比較し、その差分がどれくらいであるかを示す差分情報をアクセル開度計算部10に伝達する。
【0016】
加速度算出部12は、不図示の車速センサから出力される車両の車速情報を微分するなどによって車両の加速度を算出するものである。加速度算出部12が算出した加速度情報は、加速度比較部11に伝達される。
【0017】
目標加速度記憶部13には、図2に示すように、車速に対応する目標加速度の情報が予め記憶されている。目標加速度は、図2に示すように、車両の発進に際し、比較的大きな加速度を必要とするので、車速が小さいほど目標加速度は、大きく設定されている。また、目標加速度は、低燃費で走行することを前提として急加速にならないように控え目に設定されている。目標加速度は、車両のメーカ側が車種毎にテスト走行またはシミュレーションなどを行って適切な値を決定したものであり、この値が目標加速度として目標加速度記憶部13のメモリに記憶されている。このメモリは、コンピュータである制御装置1が有する不揮発性のメモリの一部を利用することができる。これにより、目標加速度記憶部13は、制御装置1の電源がOFF状態であっても記憶内容を保持することができる。
【0018】
表示制御部14は、不図示のアクセルペダルセンサから出力されるアクセルペダルの踏み込み量などのアクセルぺダル操作情報およびアクセル開度計算部10から出力される制御アクセル開度情報を入力し、要求アクセル開度表示指示および制御アクセル開度表示指示を表示部15に対して行う。表示制御部14は、要求アクセル開度表示指示については、アクセルペダルの踏み込み量の情報に基づいて、運転者が要求しているアクセル開度を推定し、その推定結果を要求アクセル開度として要求アクセル開度表示指示を生成する。
【0019】
表示部15は、たとえば液晶表示パネル、有機EL(Electro Luminescence)表示パネルなどにより構成された表示画面を有する。これにより、表示部15は、表示制御部14からの要求アクセル開度表示指示および制御アクセル開度表示指示に基づいて、図3に示すように、表示部15の表示画面に、要求アクセル開度の表示17と制御アクセル開度の表示18とを双方共に表示することができる。
【0020】
なお、アクセルペダルの踏み込み量の情報に基づいて、運転者が要求しているアクセル開度を推定する方法としては、たとえばアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度が記録されたテーブルを、表示制御部14内のメモリに予め記憶しておく。これにより、表示制御部14は、このテーブルを参照してアクセルペダルの踏み込み量の情報に基づいて、運転者が要求しているアクセル開度を推定することができる。
【0021】
また、図1に制御装置1と共に図示されているエンジンECU16は、コンピュータであり、不図示のエンジンの燃料噴射量やバルブタイミングなどを制御する。たとえば、エンジンECU16は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。エンジンECU16は、アクセル開度計算部10のアクセル開度制御指示に基づいて不図示のエンジンのアクセル開度をアクセル開度制御指示どおりに制御する。
【0022】
(動作)
次に、制御装置1の動作について、図1〜図5を参照して説明する。
【0023】
制御装置1の主要な構成要素であるアクセル開度計算部10の基本的な制御は、アクセルペダル操作情報から運転者が要求するアクセル開度を検出し、そのアクセル開度をエンジンECU16に対して指示することである。この際に、アクセル開度計算部10は、エコラン制御がON状態(すなわち不図示のエコラン制御スイッチがON状態)であれば、加速度比較部11から出力される実際の加速度情報と目標加速度記憶部13を参照して得た目標加速度情報とのプラス側の差分(すなわち目標加速度を実際の加速度が超えている分)が無くなるように制御を行う。
【0024】
また、アクセル開度計算部10は、エコラン制御がOFF状態(すなわち不図示のアクセル制御スイッチがOFF状態)であるときには、アクセルペダル操作情報から検出した運転者が要求するアクセル開度を、そのままアクセル開度制御指示としてエンジンECU16に対して出力する。
【0025】
ここで、アクセル開度計算部10の動作を図4のフローチャートを参照しながら説明する。車両のキースイッチがON状態であるときに、コンピュータである制御装置1にアクセル開度計算部10およびその他の各部の機能が実現される。さらに、制御装置1のエコラン制御もON状態であるときにSTARTの条件が整う。なお、図4のフローチャートにおけるSTARTからENDまでの処理は、1周期分の処理であり、上述のSTARTの条件が整っていれば、処理は繰り返し実行される。
【0026】
ステップS1:アクセル開度計算部10は、アクセルペダルの操作情報を取得してステップS2の手続きに進む。
【0027】
ステップS2:アクセル開度計算部10は、取得したアクセルペダルの操作情報に基づいてアクセルの要求開度を計算してステップS3の手続きに進む。アクセルペダルの操作情報に基づいてアクセルの要求開度を計算する方法としては、アクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセルの要求開度が記録されたテーブルなどを用いる方法がある。
【0028】
ステップS3:アクセル開度計算部10は、加速度比較部11から伝達される実際の加速度と目標加速度との差分情報を取得してステップS4の手続きに進む。
【0029】
ステップS4:アクセル開度計算部10は、加速度比較部11から伝達された差分情報がプラスか否かを判定する。ステップS4において、差分情報がプラスであると判定されると、手続きは、ステップS5に進む。一方、ステップS4において、差分情報がゼロ以下であると判定されると、手続きは、ステップS7に進む。
【0030】
ステップS5:アクセル開度計算部10は、エンジンECU16へのアクセル制御指示における指示開度を、要求開度未満として、ステップS6の手続きに進む。
【0031】
ステップS6:アクセル開度計算部10は、加速度比較部11から伝達された差分情報がゼロ以下か否かを判定する。ステップS6において、差分情報がゼロ以下であると判定されると、1周期分の処理を終了する(END)。一方、ステップS6において、差分情報がゼロ以下でない(すなわちプラス)と判定されると、手続きは、ステップS8に進む。
【0032】
ステップS7:アクセル開度計算部10は、エンジンECU16へのアクセル制御指示における指示開度を、要求開度のままとして、1周期分の処理を終了する(END)。
【0033】
ステップS8:アクセル開度計算部10は、エンジンECU16へのアクセル制御指示における指示開度を、さらに低減させて、ステップS6の手続きに戻る。
【0034】
次に、制御装置1による制御結果として、図5に、エンジン回転速度を破線20、要求アクセル開度を破線21、エコラン制御によるアクセル開度減少分を矢示22、実際のアクセル開度を実線23、車速を一点鎖線24でそれぞれ示し、エンジン回転速度、要求アクセル開度、エコラン制御によるアクセル開度減少分、実際のアクセル開度、車速、および制御アクセル開度の適用期間Tの関係を時間の経過と共に示す。
【0035】
図5の例では、時刻t1でアクセルペダルの操作が開始され、実際のアクセル開度(実線23)は、0°から立ち上がり始めている。図5の例では、運転者がアクセルペダルを最大限に深く踏み込んだ場合を例示しており、実際のアクセル開度(実線23)は、時刻t2でほぼ全開の位置に達する。
【0036】
時刻t2で、実際のアクセル開度(実線23)がほぼ全開の位置に達すると、エンジンへの燃料噴射量が最大になり、車両の加速度(不図示)が増加する。このため、エンジン回転速度(破線20)および車速(一点鎖線24)が共に上昇を始める。アクセル開度計算部10は、加速度の増加に対し、エコラン制御を実施する。これにより要求アクセル開度(破線21)と実際のアクセル開度(実線23)との間には、エコラン制御によるアクセル開度減少分(矢示22)が生じる。
【0037】
時刻t2から開始されたエコラン制御によって、アクセル開度が絞られるため、車両の加速度は減少する。その結果、エンジン回転速度(破線20)および車速(一点鎖線24)は、時刻t3に向かって緩やかに上昇する。
【0038】
時刻t3から時刻t4に向かっては、エンジン回転速度(破線20)および車速(一点鎖線24)は、共に減少傾向になる。これは、たとえば車両が登り勾配にさしかかった場合などに見られる挙動である。
【0039】
時刻t4を過ぎると、車両の加速度は、目標加速度にほぼ等しい程度まで低下するので、実際のアクセル開度(実線23)と要求アクセル開度(破線21)との差分は小さくなる。その結果、エンジンの燃料噴射量が増加するので、エンジン回転速度(破線20)および車速(一点鎖線24)は上昇する。
【0040】
時刻t5では、車両の加速度は、目標加速度未満まで低下するので、実際のアクセル開度(実線23)と要求アクセル開度(破線21)との差分は無くなる。その結果、アクセル開度計算部10は、エコラン制御を終了する。これにより、アクセル開度は、要求アクセル開度そのものとなり、エンジンの燃料噴射量が増加するので、エンジン回転速度(破線20)および車速(一点鎖線24)はさらに上昇する。
【0041】
時刻t6では、アクセルペダルが解放されるので、実際のアクセル開度(実線23)は、急に低下する。これに伴って、エンジン回転速度(破線20)および車速(一点鎖線24)も少し遅れて低下する。
【0042】
図5に示すように、実際のアクセル開度(実線23)のうち、制御アクセル開度の適用期間Tについては、要求アクセル開度(破線21)と実際のアクセル開度(実線23)との間に差分がある。このとき、図3に示すように、表示部15の表示画面上に表示される要求アクセル開度の表示17と制御アクセル開度の表示18とは、それぞれ異なるアクセル開度を表示する。なお、要求アクセル開度の表示17と制御アクセル開度の表示18とは、互いに異なる色で表示してもよい。
【0043】
(効果)
制御装置1は、表示部15に、制御アクセル開度と要求アクセル開度とを双方共に表示するので、運転者は、アクセルペダルの踏み込み操作に対する実際のアクセル開度を認識することができる。これにより、エコラン制御中の運転者のストレスまたは故障の誤認識を解消させることができる。
【0044】
また、運転者は、要求アクセル開度に対する制御アクセル開度を知り、要求アクセル開度が制御アクセル開度に近付くように、自己のアクセルペダルの操作量を調整することで、省燃費に有効な車両の加速度を学習することができる。これによれば、この運転者が制御装置1を有さない他の車両に搭乗する際にも学習した省燃費に有効な車両の加速度が得られるようなアクセルペダルの操作を実施することが可能になる。
【0045】
その他には、アクセル開度計算部10のエコラン制御によれば、たとえば運転者が波状なアクセルペダルの操作や過大なアクセルペダルの踏み込み操作を行った場合でも波状の加速度の変化や過大な急加速を抑え、燃費を低く抑えることができる。
【0046】
また、制御装置1による上述した制御は、車速から算出される加速度に基づき行われる。したがって、車両には、車速センサ以外の各種センサを設置する必要はなく、データ算出処理、および車両の諸元データの記憶も不要である。このように、センサ類、データ算出処理、および諸元データの記憶を省くことができるために、制御装置1のコストを低減させることができると共に、信頼性を向上させることができる。また、このことは、車両のコストを低減させることができると共に、信頼性を向上させることにもなる。
【0047】
(その他の実施の形態)
表示部15Aの表示画面における別の表示例を図6に示す。表示部15Aの表示画面は、制御アクセル開度の表示18Aとして、要求アクセル開度の表示17との差分を表示する差分表示領域30を有する。制御アクセル開度の表示18Aでは、差分表示領域30の色を制御アクセル開度表示領域の色とは異なる色とすることが好ましい。これによれば、運転者は、差分表示領域30の面積の大きさにより、制御アクセル開度と要求アクセル開度との差分の大きさを知ることができる。これにより、たとえば運転者は、要求アクセル開度の表示17を見なくても制御アクセル開度の表示18Aのみを見ることによって、要求アクセル開度と制御アクセル開度との差分の大きさを知ることができる。
【0048】
さらに、表示部15Bの表示画面における別の表示例を図7に示す。表示部15Bの表示画面には、制御アクセル開度および要求アクセル開度の表示19として、制御アクセル開度と要求アクセル開度とを重ねて表示している。しかしながら、制御アクセル開度が要求アクセル開度よりも大きくなることはないので、要求アクセル開度のうち、制御アクセル開度よりも大きい分が差分表示領域31として出現する。これによれば、表示部15Bの表示領域を、表示部15、15Aなどと比べておよそ半分にすることができるので、表示部15Bを小型化、低コスト化することができる。また、運転者は、ひとつの表示19のみを見ることによって、要求アクセル開度と制御アクセル開度との差分の大きさを知ることができる。なお、制御アクセル開度の表示に対して差分表示領域31の表示の色を変えることもできる。これにより、差分表示領域31の表示を目立たせることができる。
【0049】
また、図1に示したブロック構成では、説明を判り易くするために、加速度比較部11の外部に目標加速度記憶部13を設けたが、目標加速度記憶部13に記憶されている目標加速度情報を加速度比較部11が記憶するようにすれば、目標加速度記憶部13は省略してもよい。これにより、制御装置1のブロック構成を簡略化することができる。
【0050】
また、アクセル開度計算部10は、エコラン制御がON状態であっても、たとえば方向指示器の操作、オートクルーズの操作、またはABSの制御などの情報にしたがって、これらの操作または制御が行われているときには、アクセルペダル操作情報から検出した運転者が要求するアクセル開度を、そのままアクセル開度制御指示としてエンジンECU16に対して出力するようにしてもよい。
【0051】
たとえば、方向指示器が操作されている状況は、追い越しのための車線変更など、運転者が大きな加速度を車両に要求している状況である。このような状況下では、目標加速度を無視して運転者の要求どおりの加速度で車両を加速させることができる。また、オートクルーズが働いている期間は、加速も減速も行われないため、目標加速度を無視してオートクルーズの要求どおりに車両を走行させることができる。また、ABSなどが車輪のスリップを検出したときには、スリップ脱出のために、エンジン回転速度を上げる必要が生じるので、目標加速度を無視して運転者の要求どおりのアクセル開度とすることができる。これにより、ドライバビリティを良好にすることができる。
【0052】
また、図4のフローチャートでは、アクセル開度計算部10は、ステップS4で「差分はプラスか?」とし、ステップS6で「差分はゼロ以下か?」とし、加速度比較部11から伝達された実際の加速度と目標加速度との差分がゼロであるポイントを境界点にして制御の切り替えを実施した。これに対し、境界点をまたいで差分が上下するような場合、制御の切り替えが頻繁に発生することを防ぐために、たとえばステップS4で「差分は+0.5か?」とし、ステップS6で「差分は−0.5か?」などとして、境界点に応差(ヒステリシス)を設けてもよい。これにより、制御の切り替えが頻繁に発生するモードハンチングを防ぐことができる。
【0053】
また、制御装置1によるエコラン制御において、エンジン回転速度の立ち上がりからエコラン制御が開始されるまでに、一定の期間を設けてもよい。これによれば、エンジン回転速度の立ち上がりでは、エコラン制御が未だ開始されておらず、エンジン回転速度立ち上がりのドライバビリティを運転者の要求どおりとすることができる。これにより、運転者が加速感のドライバビリティに違和感を覚える状況を緩和させることができる。あるいは、方向指示器の動作中には、追い越しなどのための車線変更と判断し、運転者の要求どおりの加速度を実現させるため、エコラン制御を解除するようにしてもよい。
【0054】
また、要求アクセル開度が制御アクセル開度に近付くにしたがって、要求アクセル開度の表示17の表示色と制御アクセル開度の表示18の表示色とが異なる色から次第に同色に変化するようにしてもよい。たとえば、制御アクセル開度の表示18を緑色の表示色とし、要求アクセル開度と制御アクセル開度との差分が比較的大きいときには、要求アクセル開度の表示17の表示色を赤色とし、要求アクセル開度と制御アクセル開度との差分が小さくなるにしたがって、要求アクセル開度の表示17の表示色が赤色から次第に橙色、黄色などを経て緑色に変化するようにする。これによれば、運転者が、要求アクセル開度が制御アクセル開度に近付くように、自己のアクセルペダルの操作量を調整することで、省燃費に有効な車両の加速度を学習する際に、表示17、18の指示値を注視しなくても、色の変化によって、要求アクセル開度が制御アクセル開度に近付いたことを知ることができる。これにより、運転者が省燃費に有効な車両の加速度を学習する際の利便性および効率を高めることができる。
【0055】
また、制御装置1によって実行されるプログラムは、制御装置1にあらかじめインストールされると説明したが、プログラムが記録されている(プログラムを記憶している)リムーバブルメディアを図示せぬドライブなどに装着し、リムーバブルメディアから読み出したプログラムを制御装置1の内部の不揮発性のメモリに記憶することにより、または、有線または無線の伝送媒体を介して送信されてきたプログラムを、図示せぬ通信部で受信し、制御装置1の内部の不揮発性のメモリに記憶することで、コンピュータである制御装置1にインストールすることができる。これによれば、プログラムの更新作業など、プログラムの一部または全部を変更する工程を簡単に行うことができる。
【0056】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0057】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。たとえば、表示部15は、上述した表示の他に、ナビゲーション用地図などを表示するものなど、他の表示にも使用できるものとしてもよい。また、制御装置1は、四輪自動車、二輪自動車、など各種の自動車に搭載させることができるが、自動車以外の車両、たとえば、電車にも搭載できる。さらには、車両以外には、船舶、飛行機などにも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…制御装置、10…アクセル開度計算部(制御手段の一部)、11…加速度比較部(制御手段の一部)、12…加速度算出部(制御手段の一部)、13…目標加速度記憶部(制御手段の一部)、14…表示制御部(表示手段)、15…表示部(表示手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、前記目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御手段を有する車両の制御装置において、
前記制御手段が調整した結果として実現されている現在のアクセル開度と前記車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示する表示手段を有する、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置を有することを特徴とする車両。
【請求項3】
車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、前記目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御ステップを有する車両の制御方法において、
前記制御ステップの処理により調整された結果として実現されている現在のアクセル開度と前記車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示する表示ステップを有する、
ことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項4】
コンピュータに、
車両の車速に対応して予め設定されている目標加速度を、実際の加速度が超えるときには、前記目標加速度に実際の加速度が近付くようにアクセル開度の調整を行う制御手段を有する車両の制御装置の機能を実現させるプログラムにおいて、
前記制御手段が調整した結果として実現されている現在のアクセル開度と前記車両の現在のアクセルペダルの踏み込み量から推定されるアクセル開度とを双方共に表示する表示手段の機能を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19275(P2013−19275A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150912(P2011−150912)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】