説明

車両の制御装置

【課題】 バッテリーの状態に応じて、バッテリーの冷態時にバッテリーを昇温することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】 車両に搭載され、充電により内部発熱するバッテリーと、車両を駆動するモータと、内燃機関により駆動されて発電し、該発電された電力をバッテリー及びモータに供給する発電機と、バッテリーの温度を検出するバッテリー温度検出手段と、車両の状態に基づいて車両に要求される要求電力量を算出する要求電力量算出手段と、バッテリーの温度が所定値以下であって、かつ、要求電力量が所定量以下の際は、発電機により発電される電力によりバッテリーを充電させる制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関(エンジン)とモータとを組み合わせて車両の駆動力を得るようにしたハイブリッド車両の開発、実用化が進んでいる。ハイブリッド車両には、モータのみを動力源として駆動輪を駆動させるEVモードと、モータを動力源とすると共にエンジンをモータの電力供給源として用いるシリーズモード、或いはエンジンとモータとの両方を動力源とするパラレルモードとが運転状況に応じて切り替わるようになっているものがある。
【0003】
このようなモータを動力源として駆動輪を駆動させる場合に、モータを初期駆動するためには、車両に搭載された充電池からの電力供給が必要である。しかしながら、車両に搭載された充電池からの電力供給を行う場合に、充電池が低温状態にあると、充電池から出力できる電力が低下してしまうために始動不良や制御性の劣化が生じる虞がある。
【0004】
このため、例えば、低温時にバッテリーの充放電を繰り返すように制御してバッテリーの内部発熱による暖機を行うバッテリーの制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−28702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したバッテリーの制御装置では、バッテリーの充放電を制御してバッテリーの内部発熱による昇温を行う場合に、バッテリーの状態を確かめずに放電電流によりバッテリーを消費してしまい、バッテリーの容量が不十分となって所望の出力を得ることができない場合等も考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決することにあり、バッテリーの状態に応じて、バッテリーの冷態時にバッテリーを昇温することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両の制御装置は、車両に搭載され、充電により内部発熱するバッテリーと、前記車両を駆動するモータと、内燃機関により駆動されて発電し、該発電された電力を前記バッテリー及び前記モータに供給する発電機と、前記バッテリーの温度を検出するバッテリー温度検出手段と、前記車両の状態に基づいて前記車両に要求される要求電力量を算出する要求電力量算出手段と、検出された前記バッテリーの温度が所定値以下であって、かつ、前記要求電力量が所定量以下の際は、前記発電機により発電される電力を前記バッテリーに供給させて前記バッテリーを充電する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、車両が要求する要求電力量及びバッテリーの状態に基づいて内燃機関の作動を制御して発電機によりバッテリーに充電電流を供給してバッテリーの内部発熱による暖機を行なうことで、バッテリーの状態に応じて、バッテリーの冷態時にバッテリーを昇温させることが可能である。
【0010】
前記バッテリーの残存容量を検出する充電状態検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記残存容量が所定の閾値より小さい際に、前記発電機により発電される電力を前記バッテリーに供給させて前記バッテリーを充電することが好ましい。このようにバッテリーの残存容量が所定値より小さいときにバッテリーを充電させて昇温させるため、バッテリーの過充電によるバッテリー損傷を回避することができる。
【0011】
前記バッテリーの充放電可能な最大電力量を算出する最大電力量算出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記最大電力量算出手段により算出された前記最大電力量と前記要求電力量算出手段により算出された前記要求電力量との和となる電力量を前記発電機に発電させることが好ましい。これにより、バッテリーに充電できる最大電力によってバッテリーを充電することができ、バッテリーの発熱を最大にすることで効率よくバッテリーを昇温させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両の制御装置によれば、バッテリー状態に鑑みて内燃機関を制御して充電制御を行うことで、バッテリーの状態に応じて、バッテリーの低温時にバッテリーを昇温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】実施形態1の制御装置を示すブロック図である。
【図3】実施形態1の充電制御演算を説明するための図である。
【図4】実施形態1の充電制御演算に用いられるマップを説明するための図である。
【図5】実施形態1の充電制御部の制御フローチャートである。
【図6】実施形態1の温度判定部の制御フローチャートである。
【図7】実施形態1の充電判定部の制御フローチャートである。
【図8】実施形態1のSOC判定部の制御フローチャートである。
【図9】実施形態1の充電制御によるタイミングチャートである。
【図10】実施形態2の充電制御演算を説明するための図である。
【図11】実施形態2の充電制御によるタイミングチャートである。
【図12】実施形態3の充電制御演算におけるマップを説明するための図である。
【図13】実施形態3の充電制御によるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両のパワートレイン構成を示す概略図であり、図2はハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両(以下、単に「車両」ともいう)10は、フロントモータ11と、エンジン13とを、走行用の駆動源として備えている。フロントモータ11の駆動力は前駆動伝達機構14を介して前輪15に伝達される。フロントモータ11には、フロントモータインバータ18を介して高圧バッテリーであるバッテリー20が接続されている。そして乗員のペダル操作に応じた電力が、バッテリー20からインバータ18を介してフロントモータ11に供給される。なおバッテリー20は外部の商用電源からの充電が可能に構成されている。
【0017】
エンジン13は、燃料タンク21から供給される燃料が燃焼されることにより駆動される。このエンジン13には出力系22を介して発電機23が接続されている。出力系22は、発電機23に接続される一方、クラッチ24を介して前駆動伝達機構14に接続されている。発電機23は、インバータ18を介してバッテリー20に接続されている。
【0018】
そしてハイブリッド車両の走行状態に応じてエンジン13が駆動されると、エンジン13の駆動力は、まずは出力系22を介して発電機23に伝達される。つまり発電機23は、エンジン13の駆動力により作動し、発電機23で発電された電力が、フロントモータ11及びバッテリー20に適宜供給される。またエンジン13が駆動された状態で、車両の走行状態に応じてクラッチ24が接続されると、エンジン13の駆動力は前駆動伝達機構14を介して前輪15に伝達される。
【0019】
すなわち本実施形態に係る車両10は、いわゆるハイブリッド車両であり、車両の運転状況に応じて運転モードが適宜切り替わるようになっている。運転モードとしては、例えば、EVモードと、シリーズモードと、パラレルモードとが挙げられる。
【0020】
EVモードでは、エンジン13への燃料供給が停止されてエンジンが駆動されることなく、フロントモータ11のみを駆動源として車両を走行させる。シリーズモードでは、フロントモータ11を駆動源とすると共にエンジン13をフロントモータ11の電力供給源として用いる。すなわちクラッチ24が断状態にされて出力系と前駆動伝達機構との間で動力が伝わらない状態になっており、エンジン13の駆動力が発電機23のみに伝達される。パラレルモードでは、フロントモータ11とエンジン13との両方を駆動源として車両を走行させる。例えば、高速走行等でフロントモータ11の駆動力では必要な駆動出力が得られなくなる場合等に、クラッチ24が接続されて、エンジン13の駆動力が前駆動伝達機構14に伝達される。つまりパラレルモードでは、フロントモータ11の駆動力にエンジン13の駆動力が付加されて(もしくは、エンジン13単独の駆動力で)車両を走行させる。
【0021】
次に、このようなハイブリッド車両10に搭載される制御装置の構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、ハイブリッド車両10は、制御手段30を備える。制御手段30は、温度判定部31と、充電判定部32と、SOC判定部33と、充電制御部34とを備える。充電判定部32は要求電力量算出手段32’を備える。SOC判定部33は、充電状態検出手段33’を備える。充電制御部34は、最大電力量算出手段34’を備える。
【0023】
充電制御部34は、例えば始動時に、バッテリー20が冷態状態にあり、かつバッテリー20が充電可能な状態であれば、バッテリー20へ充電電流が供給されるように制御を行う。本実施形態では、このバッテリー20の充電によりバッテリー20に充電電流が流れることでバッテリー20の暖機(昇温)を行い、バッテリー20の温度が上昇する結果、バッテリー20が所望の出力を得ることができる。
【0024】
充電制御部34は、バッテリー20が冷態状態にあるか、即ち、バッテリー20が低温であるかどうかは、温度判定部31が低温であることを示すフラグをオンとしているかどうかにより判断する。また、充電制御部34は、バッテリー20が充電可能な状態であるかどうかは、充電判定部32が車両の走行状態に基づいて車両に要求される要求電力量が所定量以下の際に充電可能な状態であることを示すフラグをオンに設定したかどうか、さらに、SOC判定部33がバッテリー20のSOC(State of Charge、充電状態)状態が低いことを示すフラグが設定されたかどうかにより、判断する。そして、充電制御部34は、これらのフラグが設定された場合には、バッテリー20が低温であり、かつバッテリー20が充電可能な状態であると判定して、バッテリー20へ充電電流が供給されるように制御を行う。
【0025】
各判定部について以下詳細に説明する。
【0026】
温度判定部31は、バッテリー20の温度を、バッテリー20に設けられた温度センサー(バッテリー温度検出手段)41から取得する。温度判定部31は、取得したバッテリー20の温度と温度閾値T1とを比較して、取得したバッテリー20の温度が温度閾値T1以下である場合、温度閾値T1以下であることを示す温度判定フラグをオンに設定する。温度閾値T1よりも大きい場合には、温度判定フラグをオフに設定する。なお、この温度閾値T1は、バッテリー20の温度が温度閾値T1以下になった際にバッテリー20が所望の出力特性を得られないことが顕著になる温度である。
【0027】
充電判定部32は、バッテリー20が充電可能な状態であるかを判定するためにバッテリー20にかかる負荷が、閾値以下であるかどうかを判定する。即ち、バッテリー20にかかる負荷が高すぎるとバッテリー20の放電処理を行う必要があり、バッテリー20の充電処理を行うことができないため、負荷状態をみてバッテリー20の充電制御を行うことができるかどうかを判定する。
【0028】
具体的には、充電判定部32に備えられる要求電力量算出手段32’が、車両の走行状態に基づいて車両に要求される要求電力量を算出する。そして、充電判定部32は、この算出された要求電力量が閾値以下の際に充電可能な状態にあると判定し、充電判定フラグをオンに設定する。また、充電判定部32は、制御手段30において車両全体の統合制御を行う統合制御部の電気負荷系統の制御状態からバッテリー20の負荷情報を取得して、負荷状態を検出してもよい。
【0029】
そして、充電判定部32は、バッテリー20のこの負荷Lが負荷閾値L1以下である場合、閾値L1以下であることを示す充電判定フラグをオンに設定し、負荷閾値L1よりも大きい場合には、充電判定フラグをオフに設定してもよい。なお、この負荷閾値L1は、バッテリー20が放電のみ行う必要がある閾値となる値である。
【0030】
SOC判定部33は、バッテリー20が充電可能な状態であるかを判定するためにバッテリー20のSOCが所定の閾値よりも大きいか、又は小さいかを判定する。即ち、SOC判定部33は、SOCが高すぎる場合には過充電をおこす可能性があり充電を行うことができないので、SOCが所定の閾値内にあるかどうかを判定する。SOC判定部33に設けられた充電状態検出手段33’は、バッテリー20に設けられた電圧センサー42で検出された電圧情報及び電流センサー43で検出された電流情報に基づいて、バッテリー20のSOC(残存容量)を算出する。そして、SOC判定部33は、この算出されたSOCが第1閾値C1以下である場合、SOC判定部33は、第1閾値C1以下であることを示すSOC判定フラグをオンに設定する。SOC判定部33は、SOCが第2閾値C2以上になる場合、SOC判定フラグをオフに設定する。即ち、SOC判定部33は、SOCが第2閾値C2以上である場合には、それ以上充電するのが好ましくないため、SOC判定フラグをオフにしている。
【0031】
充電制御部34は、制御が開始されると、温度判定部31、充電判定部32及びSOC判定部33で、それぞれフラグがオンとなっているかを判定し、フラグが全てオンに設定されていれば、バッテリー20に対する充電制御を開始する。
【0032】
充電制御の概要を図3を用いて説明する。図3は、充電制御において充電制御部34(図1参照)が行う演算内容を説明するための図である。
【0033】
図3に示すように、充電制御部34に備えられた最大電力量算出手段34’は、バッテリー20に設けられた温度センサー41で検出された温度に基づいてバッテリー20の充放電可能な最大電力量(最大充電電力)を算出する。これは、バッテリーの特性から温度に基づいて最大電力量が変化することによる。
【0034】
また、図3に示すように充電制御部34は、バッテリー20の上限電流値、並びにバッテリー20に流れる電流値及びバッテリー20に印加される電圧値からバッテリー20の性能に基づいた充電可能な電力(充電可能電力)を導出する。即ち、バッテリー20の性能及び現在のバッテリー20の状態を参照してバッテリー20の充電可能な最大充電電力を導出しており、このようにバッテリー20の性能に基づいた充電可能電力を規定することで、バッテリー20に充電可能量を超える充電電流が供給されないようにすることができる。
【0035】
充電制御部34は、導出された最大充電電力及び充電可能電力の値のうち、小さい方の値の電力を選択する。即ち、最大充電電力が充電可能電力を越えることがないように最大充電電力及び充電可能電力の値のうち、小さい方の値を選択する。そして、選択された充電電力を、本制御を行わなかった場合、即ち車両の運転者の要求に基づいて設定されたバッテリー20の充放電電力である通常電力に充電側に加算することで、所望の出力を得ることができる目標充電電力を導出する。
【0036】
充電制御部34は、この所望の出力を得ることができる目標充電電力から、図4に示すマップを用いて発電機23(図2参照)の目標回転数を導出する。図4に示すように、充電電力が大きいほど、発電機23の回転数は大きくなる。
【0037】
この図4に示すマップから導出された目標回転数で発電機23が発電を行うことができるように、図3に示す充電制御において充電制御部34は、この発電機23の目標回転数と発電機23に設けられた回転数センサー45(図2参照)で得られた発電機23の実回転数とから、エンジン13(図2参照)の出力トルクを導出する。また、合わせてこのエンジン13の出力トルクに応じた発電機23の出力トルクを導出する。
【0038】
このようにして導出されたエンジン13の出力トルクとなるように、充電制御部34はエンジン13に信号を出力する。これにより、エンジン13が所望の出力トルクで駆動して、同期した発電機23が所望の充電電力となるように発電を行い、バッテリー20には、所望の充電電力となる充電電流が供給される。その結果、バッテリー20が暖機されて、所望の出力で放電電流をフロントモータ11(図1参照)に供給することができる。
【0039】
以下、本実施形態の制御手段30の動作を制御フローチャートに基づいて説明する。
【0040】
図5に示すように、制御がスタートすると、初めにステップS1では、充電制御部34が温度判定部31で温度判定フラグがオンに設定されているか、即ち、バッテリー20の温度が温度閾値T1以下であることを示すかを判定する。なお、本制御は、車両が始動した直後であり、かつ、EVモードで走行中である場合に所定時間毎に行われるものであるが、温度判定フラグがオフに設定された後は実行されない。温度判定部31で温度判定フラグがオンに設定されている場合(YES)、ステップS2へ進む。温度判定部31で温度判定フラグがオンに設定されていない場合(NO)、処理は終了する。
【0041】
ステップS1での温度判定フラグの設定について図6を用いて詳細に説明する。図6に示すように、初めにステップS11で、温度判定部31が、バッテリー20に設けられた温度センサー41から取得した温度情報と温度閾値T1とを比較する。取得したバッテリー20の温度が温度閾値T1以下である場合(YES)、ステップS12へ進み、温度判定部31は温度判定フラグをオンに設定する。温度閾値T1よりも大きい場合には(NO)、ステップS13へ進み、温度判定部31は温度判定フラグをオフに設定する。充電制御部34は、温度判定部31でこの温度判定フラグがオンとなっているかどうかをステップS1で判定している。
【0042】
図5に戻り、ステップS2では、充電制御部34が充電判定部32で充電判定フラグがオンに設定されているかどうかを判定する。充電判定フラグがオンに設定されている場合(YES)、ステップS3へ進む。充電判定フラグがオフに設定されている場合(NO)、処理は終了する。
【0043】
ステップS2の充電判定フラグの設定について、図7を用いて詳細に説明する。初めに、ステップS21で、充電判定部32が、バッテリー20の負荷Lを取得し、このバッテリー20の負荷Lと負荷閾値L1とを比較する。そして、バッテリー20の負荷Lが負荷閾値L1以下である場合には(YES)、充電判定フラグをオンに設定する。バッテリー20の負荷Lが負荷閾値L1よりも大きい場合(NO)には、充電判定フラグをオフに設定する。充電制御部34は、充電判定部32がこの充電判定フラグがオンに設定されているかどうかをステップS2で判定している。
【0044】
図5に戻り、ステップS3では、充電制御部34がSOC判定部33でSOC判定フラグがオンであるかどうかを判定する。SOC判定フラグがオンである場合(YES)、ステップS4に進む。SOC判定フラグがオフである場合(NO)、処理は終了する。
【0045】
ステップS3のSOC判定フラグの設定について図8を用いて詳細に説明する。初めに、ステップS31で、SOC判定部33が、既にSOC判定フラグがオフに設定されているかどうかを判定する。SOC判定フラグがオフに設定されている場合(YES)には、ステップS32へ進む。SOC判定フラグがオンに設定されている場合(NO)には、ステップS33へ進む。
【0046】
ステップS32では、マップから導出された現時点でのバッテリー20のSOCが、第1閾値C1以下であるかどうかを判定する。SOCが第1閾値C1以下である場合(YES)、ステップS34へ進む。SOCが第1閾値C1よりも大きい場合(NO)、処理は終了する。即ち、この状態では、SOC判定フラグはオフが維持される。
【0047】
ステップS33では、マップから導出された現時点でのバッテリー20のSOCが、第2閾値C2以上であるかどうかを判定する。SOCが第2閾値C2以上である場合(YES)、ステップS35へ進む。SOCが、第2閾値C2より小さい場合(NO)、処理は終了する。この状態では、SOC判定フラグはオンが維持される。
【0048】
ステップS34では、SOCが第1閾値C1以下であるので、SOC判定フラグをオンに設定し、処理は終了する。ステップS35では、SOCが第2閾値C2以上であるので、SOC判定フラグをオフに設定し、処理は終了する。充電制御部34は、このSOC判定フラグがオンに設定されているかどうかをステップS3で判定している。
【0049】
図5に戻り、ステップS4では、全てのフラグがオンに設定されているので、即ち、バッテリー20が冷態状態にあり、かつバッテリー20が充電可能な状態であるので、充電制御部34は、所望の充電電流をバッテリー20に供給することができるように、エンジン出力トルクを導出する。以上で処理は終了し、エンジン13が導出された出力トルクで駆動され、発電機23が発電して所望の充電電流をバッテリー20に供給する。これにより、バッテリー20は暖機される。
【0050】
このようにして制御した場合の充電電流について、図9に示すタイミングチャートを用いて説明する。図9では、本制御を行った場合のバッテリー20への充放電電流を実線で、比較としての本制御を行っていない場合のバッテリー20への充放電電流(通常電流)を点線で記載している。
【0051】
始動時である時刻t1〜t2の間では、バッテリー20は冷態状態にあり、かつ、バッテリー20の暖機のための充電が可能であるので、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(+α分)だけ、充電電流が多く流れている。
【0052】
次に、時刻t2〜t3の間では、充電判定フラグがオフとなっており、充電制御を行うことがなく、バッテリー20には通常電流と同一の充放電電流が流れている。
【0053】
時刻t3〜t4の間では、バッテリー20はまだ冷態状態にあり、かつ、バッテリー20の暖機のための充電が可能であるので、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(充電側に+α分)だけ、充電電流が多く流れている。
【0054】
次に、時刻t4〜t5の間では、初めにSOC判定フラグがオフ、その後充電判定フラグがオフとなるために、充電制御を行うことがなく、バッテリー20には通常電流と同一の充放電電流が流れている。具体的には、時刻t4まで充電制御が続いたため、時刻t4でSOCが第2閾値以上となりSOC判定フラグがオフとなり、充放電電流は通常電流に追従する。その後、時刻t4aで高電圧負荷が大きくなって充電判定フラグがオフになり、通常電流は放電を開始する。充放電電流は通常電流に追従する。次に、時刻t4bでは放電が続いたことでSOCが第1閾値C1以下となってSOC判定フラグがオンとなるが、未だ充電判定フラグがオフであるので、充放電電流は通常電流に追従する。その後、時刻t5で高電圧負荷が小さくなって充電判定フラグがオンとなり、これにより、全てのフラグがオンとなる。
【0055】
次いで、時刻t5〜t6の間には、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(+α分)だけ、充電電流が多く流れている。
【0056】
その後、時刻t6以降では、温度判定フラグがオフとなったために、本制御が終了する。このように、本実施形態においては、バッテリー20の暖機を行うために充放電を繰り返すことなく、所定要件が満たされた場合に充電だけを行うことで、バッテリー20の電力がバッテリー20の暖機により消費されて不十分となることがない。
【0057】
なお、この図9に示すタイミングチャートにおいては、バッテリー温度がほぼ一定であったために、最大充電電力は常に一定であったが、バッテリー温度によっては、上述のように最大充電電力が変動するので、これにより本実施形態では一定であった充電電流値(+α)が変動する。
【0058】
本実施形態においては、バッテリー20の温度が閾値よりも低ければ、バッテリー20が充電可能な状態にあるかどうかを判定して充電制御を行ってバッテリー20の暖機を行っている。これにより、充電状態に応じてエンジン13を駆動して充電制御を行うことができるので、すぐに暖機を行うことができると共に、バッテリー20の電力が不足することがない。かつ、充電電流を制御する場合に、車速に応じて最大充電電力を設定しているので、ハイブリッド車両10の走行を阻害することなく所望の出力を得ることが可能である。
【0059】
(実施形態2)
本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態では、実施形態1とは充電制御が異なる。図10に示すように、充電制御部34(図2参照)は、温度センサーからバッテリーの温度を取得せず、最大充電電力を導出することがない。即ち、充電制御部34は、充電制御時には常にバッテリー20の充電可能電力に対応した充電電流が流れるように充電電流を制御する。このように制御することで、実施形態1とは異なり、充電制御部34は、温度に関係なく常に充電可能電力に対応した電流が流れるために、実施形態1より早くバッテリー20を暖機することが可能である。
【0060】
具体的には、充電制御部34は、バッテリー20の上限電流値、並びに現在バッテリーに流れる電池電流値及び現在バッテリー20に印加される電池電圧値から電流下限値を取得すると、これを目標充電電力とする。そして、この目標充電電力から、実施形態1と同様にしてエンジン出力トルクを導出する。
【0061】
この場合には、図11に示すタイミングチャートのように充電電流がバッテリー20に供給される。図11では、本制御を行った場合のバッテリー20への充放電電流を実線で、比較としての本制御を行っていない場合のバッテリー20への充放電電流(通常電流)を点線で記載している。
【0062】
始動時である時刻t1〜t2の間では、バッテリー20は冷態状態にあり、かつ、バッテリー20の暖機のための充電が可能であるので、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電電流が最大値となるように流れている。即ち、本実施形態における充電制御を行う場合には、通常電力に関係なく充電可能電力に基づく充電電流が流れている。
【0063】
次に、時刻t2〜t3の間では、充電判定フラグがオフとなっているために、充電制御を行うことがなく、バッテリー20には通常電流と同一の充放電電流が流れている。
【0064】
次に、時刻t3〜t4’(t4’<t4)の間では、バッテリー20はまだ冷態状態にあり、かつ、バッテリー20の暖機のための放電が可能であるので、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(+α分)だけ、充電電流が多く流れている。そして、十分に充電電流がバッテリー20に供給されたことによりバッテリー20が暖機されて、時刻t4’では、温度判定フラグがオフとなる。これにより、本制御が終了する。
【0065】
即ち、本実施形態においては、実施形態1とは異なり温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている場合には、常にバッテリー20から充電可能電力に対応する電流を送出することで、実施形態1の場合よりも早くバッテリー20を暖機して所望の電力を供給することができるようになる。
【0066】
(実施形態3)
本発明のさらに別の実施形態について説明する。本実施形態では、実施形態1とは充電制御が異なり、充電制御部34(図2参照)に設けられた最大電力量算出手段34’は、温度センサーからバッテリーの温度を取得せず、図2に示す車速センサー44で検出された車速情報に基づいて最大充電電力を導出する。この場合、最大電力量算出手段34’は、最大充電電力を図12に示すマップを用いて導出する。図12に示すマップでは、車速に比例して最大充電電力は連続的に変化する。即ち、車速が早くなるほど、最大充電電力は大きくなる。このように、最大充電電力はバッテリーの温度ではなく車速に応じて導出されてもよく、この場合、車両の走行状態、即ち負荷状態に応じて最大充電電力を求めることができることから、ハイブリッド走行を妨げることのない最大充電電力を簡易に設定することができる。
【0067】
この場合には、図13に示すタイミングチャートのように充電電流がバッテリー20に供給される。図13では、本制御を行った場合のバッテリー20への充放電電流を実線で、比較としての本制御を行っていない場合のバッテリー20への充放電電流(通常電流)を点線で記載している。
【0068】
始動時である時刻t1〜t2の間では、バッテリー20は冷態状態にあり、かつ、バッテリー20の暖機のための充電が可能であるので、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(+α分)だけ、充電電流が多く流れている。この場合の充電電流は、時刻t1〜t2の間車速が一定であることから、一定となっている。
【0069】
次に、時刻t2〜t3の間では、充電判定フラグがオフとなっており、充電制御を行うことがなく、バッテリー20には通常電流と同一の充放電電流が流れている。
【0070】
時刻t3〜t4の間では、バッテリー20はまだ冷態状態にあり、かつ、バッテリー20の暖機のための充電が可能であるので、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(充電側に+α分)だけ、充電電流が多く流れている。この時刻t3〜t4の間の充電電流の+α分は、時刻t3〜t4の間の車速の減少に比例して減少している。これにより、充電電流は通常電流よりも+α分多く流れているが、この値も車速に従って増減している。
【0071】
次に、時刻t4〜t5の間では、初めにSOC判定フラグがオフ、その後充電判定フラグがオフとなるために、充電制御を行うことがなく、バッテリー20には通常電流と同一の充放電電流が流れている。具体的には、時刻t4まで充電制御が続いたため、時刻t4でSOCが第2閾値以上となりSOC判定フラグがオフとなり、充放電電流は通常電流に追従する。その後、時刻t4aで高電圧負荷が大きくなって充電判定フラグがオフになる。充放電電流は通常電流に未だ追従する。次に、時刻t4bでは放電が続いたことでSOCが第1閾値C1以下となってSOC判定フラグがオンとなるが、未だ充電判定フラグがオフであるので、充放電電流は通常電流に追従する。その後、時刻t5で高電圧負荷が小さくなって充電判定フラグがオンとなり、これにより、全てのフラグがオンとなる。
【0072】
次いで、時刻t5〜t6の間には、温度判定フラグ、充電判定フラグ及びSOC判定フラグが全てオンとなっている。この時には、充電制御部34による本制御を行わなかった場合における通常電流よりも常に充電電力の分(+α分)だけ、充電電流が多く流れている。ただし、この場合には、時刻t5〜t5aまでの間、最大充電電力が充電可能電力を上回っているため、充電電流が充電可能電力となるように制御されている。その後、時刻t5a〜t6までの間、最大充電電流が車速の減少に比例して小さくなり、充電可能電力よりも小さくなったため、最大充電電流が目標充電電力となり、これに基づいて充電電流が流れた。
【0073】
その後、時刻t6以降では、温度判定フラグがオフとなったために、本制御が終了する。このように、本実施形態においては、バッテリー20の暖機を行うために充放電を繰り返すことなく、所定要件が満たされた場合に充電だけを行うことで、バッテリー20の電力がバッテリー20の暖機により消費されて不十分となることがない。
【0074】
本実施形態においては、車速、即ち車両の走行状態に応じて適切な充電電流を得ることができることから、ハイブリッド走行を妨げずにバッテリー20を暖機して所望の電力を供給することができるようになる。
【0075】
上述したように、実施形態1〜3では、バッテリー20の状態に鑑みて制御手段30によりエンジン13を駆動し発電機23を駆動することで、バッテリー20への充電電流を制御して、バッテリー20が不足することなくバッテリー20を暖機でき、その結果バッテリー20から所望の出力を得ることができるように構成している。そして、実施形態1では、車両の走行状態に基づいて充電電流を制御することができるので、車両の走行を妨げることがない。また、実施形態2では、より早く暖機することで、バッテリー20がより早く所望の出力を得ることができるように構成している。さらに、実施形態3では、車両の走行状態に応じて適切な制御を行うことができ、ハイブリッド走行を妨げずにバッテリー20を暖機して所望の電力を供給することができるようになる。
【0076】
本発明は、上述した各実施形態に限定されない。実施形態1では、ステップS1〜S3の順で制御を行ったが、例えば、ステップS1、ステップS3、ステップS2の順で制御を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の車両の制御装置は、例えば車両製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 ハイブリッド車両、 13 エンジン、 20 バッテリー、 23 発電機、 30 制御手段、 31 温度判定部、 32 充電判定部 、 33 SOC判定部、 34 充電制御部、 41 温度センサー、 42 電圧センサー、 43 電流センサー 、44 車速センサー、 45 回転数センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、充電により内部発熱するバッテリーと、
前記車両を駆動するモータと、
内燃機関により駆動されて発電し、該発電された電力を前記バッテリー及び前記モータに供給する発電機と、
前記バッテリーの温度を検出するバッテリー温度検出手段と、
前記車両の状態に基づいて前記車両に要求される要求電力量を算出する要求電力量算出手段と、
検出された前記バッテリーの温度が所定値以下であって、かつ、前記要求電力量が所定量以下の際は、前記発電機により発電される電力を前記バッテリーに供給させて前記バッテリーを充電する制御手段とを備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記バッテリーの残存容量を検出する充電状態検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記残存容量が所定の閾値より小さい際に、前記発電機により発電される電力を前記バッテリーに供給させて前記バッテリーを充電することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記バッテリーの充放電可能な最大電力量を算出する最大電力量算出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記最大電力量算出手段により算出された前記最大電力量と前記要求電力量算出手段により算出された前記要求電力量との和となる電力量を前記発電機に発電させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−56468(P2012−56468A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202243(P2010−202243)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】