説明

車両の前部構造

【課題】サイドモールのサイドインナ部とフロントピラーとの間の隙間が変化しても、アッパモール及びルーフ部材間の隙間に侵入した水を水抜き孔から確実に排出する。
【解決手段】ウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との間にフロントピラー17が設けられ、ウインドシールドガラスの上辺部にアッパモールが嵌着される。ウインドシールドガラスの側辺部13bにサイドモール28が嵌着され、ウインドシールドガラスの側辺部近傍の内面及び上辺部近傍の内面がフロントピラー及びルーフ部材にそれぞれ接着される。サイドモールのサイドアウタ部28aがウインドシールドガラスの側辺部外面を被覆し、サイドインナ部28bがウインドシールドガラスの側辺部内面を被覆し、サイド連結部28cがウインドシールドガラスの側辺部端面を被覆する。更にサイドモールの上端にサイドインナ部を切欠いて水抜き孔28dが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック、乗用車、バス等の車両において、ウインドシールドガラス側縁とサイドドア前縁との間にフロントピラーが設けられたフロントコーナ部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドシールドガラスの側縁とサイドガラスの前縁との間に、ウインドシールドガラスの側縁及びサイドガラスの前縁に沿って延びるフロントコーナ部材が設けられ、車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が40〜58mmである車両の前部構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この車両の前部構造では、フロントコーナ部材がフロントピラーとドアフレームとガラスフレームとガラスランとにより構成され、フロントピラーがピラーインナパネルの両側縁とピラーアウタパネルの両側縁をそれぞれ接合することにより筒状に形成される。ピラーインナパネルは、トラックの運転席に着席した運転者の視線方向に沿って設けられたピラーインナ本体と、ピラーインナ本体の前縁にこのピラーインナ本体と一体的に形成された第1フロントフランジと、ピラーインナ本体の後縁にこのピラーインナ本体と一体的に形成された第1リヤフランジとを有する。またピラーアウタパネルは、ドアフレームの前面に略対向して設けられたピラーアウタ本体と、ピラーアウタ本体の前縁にこのピラーアウタ本体と一体的に形成された第2フロントフランジと、ピラーアウタ本体の後縁にこのピラーアウタ本体と一体的に形成された第2リヤフランジとを有する。上記第1フロントフランジのピラー外面と第2フロントフランジのピラー内面とを接合することによりフロント重ね合せ部が形成される。またフロント重ね合せ部とウインドシールドガラスの内面との隙間には接着剤が充填され、この接着剤によりウインドシールドガラスの側縁がフロントピラーに取付けられる。更にウインドシールドガラスの周縁の見栄えを向上するためにこのガラスの周縁にモールが嵌着される。
このように構成された車両の前部構造では、車両の運転席に着席した運転者が見たときのフロントコーナ部材の幅が40〜58mmであるので、例えば交差点で右折するために車両の運転者が右斜め前方の車外の対象物に両眼の焦点を合わせたとき、両眼の視差により近くの比較的幅の狭いフロントコーナ部材がぼけて見え、フロントコーナ部材の向こう側の対象物がフロントコーナ部材により遮られることなく、運転者は車両の前方から右側方にかけて連続した視界を見ることができる。この結果、車両の運転者はフロントコーナ部材の向こう側を視認するために上体を左右に動かす必要がなく、首のみを動かしてフロントコーナ部材の方向を正視するだけで車外の対象物を確実に視認できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−96270号公報(請求項1、段落[0007]、段落[0008]、段落[0011]〜段落[0013])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の特許文献1に示された車両の前部構造では、ウインドシールドガラスの側辺部にサイドモールが嵌着され、ウインドシールドガラスの上辺部にアッパモールが嵌着され、サイドモールとフロントピラーとの間に所定の隙間が形成される。この場合、高圧水を用いて洗車すると、ウインドシールドガラスとアッパモールとの間に侵入した水が上記サイドモールとフロントピラーとの間の隙間から排出される。
しかし、上記従来の特許文献1に示された車両の前部構造では、ウインドシールドガラスの側縁がフロントピラーに近付く方向にウインドシールドガラスがフロントピラーに組付けられると、ウインドシールドガラスの側辺部に嵌着されたモールがフロントピラーに当接してしまうため、ウインドシールドガラスとアッパモールとの間に侵入した水を排出できなくなるおそれがあった。
本発明の第1の目的は、サイドモールのサイドインナ部とフロントピラーとの間の隙間が変化しても、アッパモール及びルーフ部材間の隙間に侵入した水を水抜き孔から確実に排出できる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の第2の目的は、洗車時等に用いられる高圧水が水抜き孔からアッパモール及びルーフ部材間の隙間に逆流するのを庇部により確実に防止できる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の第3の目的は、庇部が水抜き孔の車両外側方からの視認を阻止することにより、サイドドアの開放時のサイドモールの見栄えを損うことを防止できる、車両の前部構造を提供することにある。
本発明の第4の目的は、アッパモール及びルーフ部材間の隙間に侵入して水抜き孔から排出された水の一部又は全部を、中空状部の内部を通して車体下部にスムーズに導くことができる、車両の前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、図1及び図4〜図6に示すように、ウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との間にフロントピラー17が設けられ、ウインドシールドガラス13の上辺部13cにアッパモール29が嵌着され、ウインドシールドガラス13の側辺部13bにサイドモール28が嵌着され、ウインドシールドガラス13の側辺部13b近傍の内面がフロントピラー17に接着され、ウインドシールドガラス13の上辺部13c近傍の内面がルーフ部材32に接着された車両の前部構造の改良である。
その特徴ある構成は、サイドモール28が、ウインドシールドガラス13の側辺部13b外面を被覆するサイドアウタ部28aと、ウインドシールドガラス13の側辺部13b内面を被覆するサイドインナ部28bと、ウインドシールドガラス13の側辺部13b端面を被覆するサイド連結部28cとを有し、サイドモール28の上端にサイドインナ部28bを切欠いて水抜き孔28dが形成されたところにある。
この請求項1に記載された車両の前部構造では、ウインドシールドガラス13のフロントピラー17に対する組付けがばらついて、サイドインナ部28bとフロントピラー17との間の隙間が小さくなっている状態で、洗車時等に用いられる高圧水がアッパモール29及びルーフ部材32間の隙間に侵入しても、この水は水抜き孔28dからスムーズに排出される。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1及び図4〜図6に示すように、水抜き孔28dの側縁を構成するサイド連結部28cに庇部28eが設けられ、この庇部28eが水抜き孔28dの車両外側方からの視認を阻止するように構成されたことを特徴とする。
この請求項2に記載された車両の前部構造では、庇部28eが水抜き孔28dの車両外側方からの視認を阻止するので、洗車時等に用いられる高圧水が水抜き孔28dに向けられても、この高圧水は庇部28eにより遮られて水抜き孔28dに侵入しない。またサイドドア14を開放したときに、水抜き孔28dは庇部28eに遮られて見えない。
【0006】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1、及び図2に示すように、サイドモール28のサイドインナ部28bにフロントピラー17に当接する中空状部28fが設けられ、この中空状部28fの上端が水抜き孔28dに臨むように構成されたことを特徴とする。
この請求項3に記載された車両の前部構造では、アッパモール29及びルーフ部材32間の隙間に侵入した水が水抜き孔28dから排出され、この水抜き孔28dから排出された水の一部又は全部が自動的に中空状部28fの内部に流入する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サイドモールのサイドアウタ部がウインドシールドガラスの側辺部外面を被覆し、サイドモールのサイドインナ部がウインドシールドガラスの側辺部内面を被覆し、サイドモールのサイド連結部がウインドシールドガラスの側辺部端面を被覆し、更にサイドモールの上端にサイドインナ部を切欠いて水抜き孔を形成したので、ウインドシールドガラスのフロントピラーに対する組付けがばらついて、サイドインナ部とフロントピラーとの間の隙間が小さくなった状態で、洗車時等に用いられる高圧水がアッパモール及びルーフ部材間の隙間に侵入しても、この水は水抜き孔からスムーズに排出される。この結果、アッパモール及びルーフ部材間の隙間に侵入した水を水抜き孔から確実に排出できる。
また水抜き孔の側縁を構成するサイド連結部に庇部を設け、庇部が水抜き孔の車両外側方からの視認を阻止するように構成すれば、洗車時等に用いられる高圧水が水抜き孔に向けられても、この高圧水は庇部により遮られて水抜き孔に侵入しない。この結果、上記高圧水が水抜き孔を通ってアッパモール及びルーフ部材間の隙間に逆流するのを確実に防止できる。またサイドドアの開放時に水抜き孔が庇部に遮られて見えないので、サイドドアの開放時のサイドモールの見栄えを損うことを防止できる。
更にサイドモールのサイドインナ部にフロントピラーに当接する中空状部を設け、中空状部の上端が水抜き孔に臨むように構成すれば、アッパモール及びルーフ部材間の隙間に侵入した水が水抜き孔から排出され、この水抜き孔から排出された水の一部又は全部が自動的に中空状部の内部に流入する。この結果、上記水抜き孔から排出された水の一部又は全部を、中空状部の内部を通して車体下部にスムーズに導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図7に示すように、トラック10のキャブ11の右側には運転者の着席する運転席が設けられ、キャブ11の前面のフロント開口部11aは透明のウインドシールドガラス13により閉止される。またキャブ11の運転席側の側面には運転者が乗降するためのサイド開口部11bが設けられ、このサイド開口部11bはサイドドア14により開放可能に閉止される(図1、図2及び図7)。上記ウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との間にはフロントピラー17がガラス13の側縁及びドア14の前縁に沿って延びて設けられる。このフロントピラー17は、ピラーインナパネル21の両側縁とピラーアウタパネル22の両側縁をそれぞれ接合することにより、例えば、ほぼ鉛直方向に延びる筒状に形成される。これによりフロントピラー17の横断面は閉断面に形成される。なお、この実施の形態では、運転席側のサイドドア及びフロントピラーについて説明するけれども、本発明は助手席側のサイドドア及びフロントピラーに適用してもよい。
【0009】
ピラーインナパネル21は、トラック10の運転席に着席した運転者の視線方向に沿って設けられたピラーインナ本体21aと、ピラーインナ本体21aの前縁にこのピラーインナ本体21aと一体的に形成されたフロントインナフランジ21bと、ピラーインナ本体21aの後縁にこのピラーインナ本体21aと一体的に形成されたリヤインナフランジ21cとを有する。フロントインナフランジ21bは、ウインドシールドガラス13の内面から所定の隙間をあけたキャブ11内方であって、上記ウインドシールドガラス13の内面に略平行にかつウインドシールドガラス13の側縁に向って延びて設けられる、即ちサイドドア14のドアフレーム14cに近付く方向に延びて設けられる。またリヤインナフランジ21cは、ドアフレーム14cの内面から所定の間隔をあけたキャブ11内方であって、ドアフレーム14cの内面に略平行にかつ後方に向って延びて設けられる。
【0010】
ピラーアウタパネル22は、ドアフレーム14cの前面に略対向して設けられたピラーアウタ本体22aと、ピラーアウタ本体22aの前縁にこのピラーアウタ本体22aと一体的に形成されたフロントアウタフランジ22bと、ピラーアウタ本体22aの後縁にこのピラーアウタ本体22aと一体的に形成されたリヤアウタフランジ22cとを有する。フロントアウタフランジ22bは、ウインドシールドガラス13の内面から所定の隙間をあけたキャブ11内方であって、上記ウインドシールドガラス13の内面に略平行にかつウインドシールドガラス13の側縁とは反対方向に延びて設けられる、即ちドアフレーム14cから離れる方向に延びて設けられる。またリヤアウタフランジ22cは、ドアフレーム14cの内面から所定の間隔をあけたキャブ11内方であって、ドアフレーム14cの内面に略平行にかつ後方に向って延びて設けられる。
【0011】
フロントインナフランジ21bのピラー外面とフロントアウタフランジ22bのピラー内面とを接合することによりフロント重ね合せ部23が形成され、リヤインナフランジ21cのピラー内面とリヤアウタフランジ22cのピラー内面とを接合することによりリヤ重ね合せ部24が形成される(図1及び図2)。上記フロント重ね合せ部23はウインドシールドガラス13の側縁内面に沿って設けられる。これによりフロントピラー17はウインドシールドガラス13により覆われるように構成される。またウインドシールドガラス13の周縁内面にはセラミック塗装により所定の幅の目隠し用膜13a(図1、図2及び図6)が形成され、フロント重ね合せ部23のピラー外面にウインドシールドガラス13の側辺部13b近傍の内面がガラス用接着剤26により接着される。これによりウインドシールドガラス13の接着面をフロントインナフランジ21b及びフロントアウタフランジ22bの2重構造としているため、上記ガラス13の接着面の剛性を高めることができるとともに、トラックを前方から見たときにガラス用接着剤26やフロントピラー17が目隠し用膜13aにより遮られて視認できないようになっている。
【0012】
ウインドシールドガラス13の上辺部13cには合成樹脂製のアッパモール29が嵌着され、ウインドシールドガラス13の側辺部13bには合成樹脂製のサイドモール28が嵌着される(図2〜図6)。アッパモール29の端部(図3の左端部)はサイドモール28の上端部に接続され一体化される。アッパモール29及びサイドモール28のうち横断面形状が長手方向に沿って同一である部分は軟質合成樹脂又はゴムの押し出し成形によりそれぞれ形成されることが好ましい。またアッパモール29及びサイドモール28のうち断面形状が変化する部分、即ちアッパモール29とサイドモール28の接続部分は軟質合成樹脂又はゴムの射出成形により形成されることが好ましい。図3〜図5に示すように、サイドモール28は、ウインドシールドガラス13の側辺部13b外面を被覆するサイドアウタ部28aと、ウインドシールドガラス13の側辺部13b内面を被覆するサイドインナ部28bと、サイドアウタ部28a及びサイドインナ部28bを連結するとともにウインドシールドガラス13の側辺部13b端面を被覆するサイド連結部28cとを有する。
【0013】
サイドモール28の上端にはサイドインナ部28bを切欠いて水抜き孔28dが形成される(図3〜図5)。この水抜き孔28dの側縁を構成するサイド連結部28cには庇部28eが設けられる。この庇部28eはサイド連結部28cと同一材料によりサイド連結部28cと一体的に形成されることが好ましい。また庇部28eは横断面略く字状(図1及び図5)に形成される、即ちサイド連結部28eをフロントピラー17に向って延長した後サイドドア14に向って屈曲して形成される。これにより庇部28eは水抜き孔28dの車両外側方からの視認を阻止するように構成される。またサイドインナ部28bには、フロントピラー17に当接する中空状部28fがサイドインナ部28bの長手方向に沿って設けられる(図2〜図5)。この中空状部28fはサイドインナ部28bと同一材料によりサイドインナ部28bと一体的に成形されることが好ましい。また中空状部28fは成形時に横断面が略逆J字状(図3)になるように形成され、フロントピラー17への当接時に横断面が略扁平リング状(図2及び図4)に弾性変形するように構成され、その肉厚は比較的薄肉、例えば0.5〜2mmに形成されることが好ましい。更に中空状部28fがフロントピラー17に当接することにより、サイドモール28及びフロントピラー17間の隙間が塞がれるようになっている。
【0014】
一方、図3及び図6に示すように、フロントピラー17の上端はルーフ部材32に接続され、ルーフ部材32の前縁にはウインドシールドガラス13の上縁に沿うアッパ重ね合わせ部36が設けられる。具体的には、ルーフ部材32は、ルーフアウタパネル33とルーフインナパネル34とを有する。ルーフアウタパネル33の前縁にはルーフアウタフランジ33aが設けられ、ルーフインナパネル34の前縁にはルーフインナフランジ34aが設けられ、これらのフランジ33a,34aは互いに接合されて上記アッパ重ね合せ部36が構成される。このアッパ重ね合せ部36の外面にはウインドシールドガラス13の上辺部13c近傍の内面がガラス用接着剤26により接着される(図6)。これによりトラックを前方から見たときにガラス用接着剤26やアッパ重ね合せ部36が目隠し用膜13aにより遮られて視認できないようになっている。またウインドシールドガラス13の上辺部13cに嵌着されたアッパモール29は、ウインドシールドガラス13の上辺部13c外面を被覆するアッパアウタ部29aと、ウインドシールドガラス13の上辺部13c内面を被覆するアッパインナ部29bと、アッパアウタ部29a及びアッパインナ部29bを連結するとともにウインドシールドガラス13の上辺部13c端面を被覆するアッパ連結部29cと、アッパアウタ部29a及びアッパ連結部29bの連結部に沿って設けられ上端縁がルーフアウタパネル33外面に当接するアッパ被覆部29dとを有する。このアッパ被覆部29dによりルーフアウタパネル33の段差部33bとウインドシールドガラス13の上縁との隙間が塞がれるように構成される。更にフロントピラー17の下端はカウル部材(図示せず)に接続され、カウル部材の上縁にはウインドシールドガラス13の下縁に沿うロアフランジ(図示せず)が設けられる。
【0015】
一方、サイドドア14は、ドア本体14aと、このドア本体14aの上面に設けられドア窓14bを形成するために略逆U字状に形成されたドアフレーム14cと、ドア窓14bを開放可能に閉止する透明のサイドガラス14dとを有する(図1、図2及び図7)。サイドガラス14dの前縁はガラスラン14fにより包囲され、そのガラスラン14fはサイドガラス14dを保持し案内するためにガラスフレーム14eに装着される(図1及び図2)。またドアフレーム14cは、ドアインナパネル14gとドアアウタパネル14hとを接合することにより形成される。そして、ガラスフレーム14eがドアフレーム14cに挿着され、このドアフレーム14cとウインドシールドガラス13の右側縁との間には、フロントピラー17がウインドシールドガラス13の右側縁及びサイドガラス14dの前縁に沿って設けられる。またドアインナパネル14gには、フロントピラー17及びサイドモール28に当接するドア用ウエザストリップ31が設けられる。このドア用ウエザストリップ31は、ドアインナパネル14gの前面に取付けられたウエザストリップ本体31aと、このウエザストリップ本体31aと一体的に設けられサイドモール28に当接する略波板状の第1シール部31bと、ウエザストリップ本体31aと一体的に設けられフロントピラー17に当接する筒状の第2シール部31cとを有する。なお、図1及び図2の符号37は、ピラーインナ本体21aのピラー外面に沿って設けられたピラーガーニッシュであり、図6の符号38は、アッパ重ね合せ部のキャブ内に露出する面を覆うルーフガーニッシュである、図6の符号39は、ルーフインナパネルのキャブ内に露出する面を覆うルーフトリムである。
【0016】
このように構成されたトラック10の前部構造の動作を説明する。
ウインドシールドガラス13のフロントピラー17に対する組付けがばらついて、サイドインナ部28bとフロントピラー17との間の隙間が小さくなっている場合や、泥により排水性が悪化する場合がある。また高圧水を用いてトラック10を洗浄すると、この高圧水がアッパモール29のアッパ被覆部29dとルーフ部材32のルーフアウタパネル33外面との隙間に侵入する場合がある。この隙間に侵入した水はウインドシールドガラス13の上辺部13cに沿ってウインドシールドガラス13の側縁に向って流れ、サイドモール28上端の水抜き孔28dに達する。このときサイドインナ部28bとフロントピラー17との間の隙間が小さくなっている場合等でも、上記水抜き孔28dは塞がれずに開口しているため、この水は水抜き孔28dからスムーズに排出される。この結果、アッパモール29及びルーフ部材32間の隙間に侵入した水がこの隙間に滞留することはない。上記水抜き孔28dから排出された水の一部は自動的に中空状部28fの内部に流入し、残りの水はフロントピラー17とサイドモール28とドア用ウエザストリップ31とで囲まれた隙間に流入する。この結果、上記水の一部は中空状部28fの内部を通って車体下部にスムーズに導かれ、残りの水は上記フロントピラー17とサイドモール28とドア用ウエザストリップ31とで囲まれた隙間を通って車体下部にスムーズに導かれた後、車体下部の排出孔(図示せず)から車外に排出される。なお、水抜き孔28dから排出された水の量が少ないときは、水抜き孔28dから排出された水の全部が自動的に中空状部28fの内部に流入する場合もある。
【0017】
また洗車時等に用いられる高圧水がウインドシールドガラス13の側縁とサイドドア14の前縁との隙間に向けられると、この高圧水がドア用ウエザストリップ31を弾性変形させて、フロントピラー17とドアフレーム14cと間に侵入する場合がある。そしてこの侵入した高圧水はドア用ウエザストリップ31の第2シール部31cにより遮られるので、キャブ11内に侵入することはない。上記高圧水が水抜き孔28dに向けられても、この高圧水は庇部28eにより遮られて水抜き孔28dに侵入せず、横断面略く字状の庇部28eに沿って第1シール部31bと第2シール部31cとの間にその向きを変えられる。この結果、上記高圧水が水抜き孔28dを通ってアッパモール29及びルーフ部材32間の隙間に逆流することはない。更にサイドドア14を開放しても水抜き孔28dは庇部28eに遮られて見えないので、サイドドア14の開放時のサイドモール28の見栄えを損うことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施形態の車両の前部構造を示す図7のA−A線断面図である。
【図2】図7のB−B線断面図である。
【図3】フロントピラー、モール及びウインドシールドガラスを含む要部分解斜視図である。
【図4】周縁にモールを嵌着したウインドシールドガラスをフロントピラーに組付けた状態を示す要部斜視図である。
【図5】そのモールを裏面から見た状態を示す要部斜視図である。
【図6】アッパモール及びウインドシールドガラスを含むキャブ前面上部の縦断面図である。
【図7】サイドドア、モール及びウインドシールドガラスを含むトラックの要部斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 トラック(車両)
13 ウインドシールドガラス
13b 側辺部
13c 上辺部
14 サイドドア
17 フロントピラー
28 サイドモール
28a サイドアウタ部
28b サイドインナ部
28c サイド連結部
28d 水抜き孔
28e 庇部
28f 中空状部
29 アッパモール
32 ルーフ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドガラス(13)の側縁とサイドドア(14)の前縁との間にフロントピラー(17)が設けられ、前記ウインドシールドガラス(13)の上辺部(13c)にアッパモール(29)が嵌着され、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)にサイドモール(28)が嵌着され、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)近傍の内面が前記フロントピラー(17)に接着され、前記ウインドシールドガラス(13)の上辺部(13c)近傍の内面がルーフ部材(32)に接着された車両の前部構造において、
前記サイドモール(28)が、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)外面を被覆するサイドアウタ部(28a)と、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)内面を被覆するサイドインナ部(28b)と、前記ウインドシールドガラス(13)の側辺部(13b)端面を被覆するサイド連結部(28c)とを有し、
前記サイドモール(28)の上端にサイドインナ部(28b)を切欠いて水抜き孔(28d)が形成された
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
水抜き孔(28d)の側縁を構成するサイド連結部(28c)に庇部(28e)が設けられ、前記庇部(28e)が前記水抜き孔(28d)の車両外側方からの視認を阻止するように構成された請求項1記載の車両の前部構造。
【請求項3】
サイドモール(28)のサイドインナ部(28b)にフロントピラー(17)に当接する中空状部(28f)が設けられ、前記中空状部(28f)の上端が水抜き孔(28d)に臨むように構成された請求項1記載の車両の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−6834(P2008−6834A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175966(P2006−175966)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】