説明

車両の後部車体構造

【課題】 後方から大きな荷重が加わった場合にスペアタイヤの離脱を防止することができ、更に、その上、後方からの種々の方向における荷重に対応して、スペアタイヤを効果的に傾斜させ得る後部車体構造を提供する。
【解決手段】 車両の後部荷室にてスペアタイヤをほぼ水平に収納するように構成された車両の後部車体構造。後部荷室の床面をなすフロアパネルに、スペアタイヤを固定して保持するためのタイヤ受け部を設け、また、該フロアパネルの下面側には、該タイヤ受け部に対応して、車両の前後方向に延びる補強部材を設ける。上記補強部材は、上記タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位に対応しつつ、その後端側で、上記フロアパネルより後方に位置する縦壁部材から所定間隔離間して対向するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後部荷室においてスペアタイヤが格納されるように構成された車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部荷室においてスペアタイヤが格納されるように構成された車両の後部車体構造としては、後突荷重などの後方からの大きな荷重を受けた場合に、シートが設置されたエリアへのスペアタイヤの進入を回避すべく、スペアタイヤの離脱を防止し得るものが種々提案されている。例えば特開平11−11359号公報には、スペアタイヤパンの下面に沿って、車両の前後方向に延びる荷重伝達部材を設け、該荷重伝達部材の前方に取り付けられたフランジによりスペアタイヤを固定する後部車体構造が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−11359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される後部車体構造では、フロアパネルの下面に沿って延びる荷重伝達部材の後端に取り付けられたけん引フックに入力された後突荷重が、荷重伝達部材によりスペアタイヤのホイール部に伝達されることにより、スペアタイヤが、その前端がタイヤパンの前端の側壁に接触するまで前方へ移動するに伴い発生する反力を利用し、スペアタイヤを立ち上げるようにして、スペアタイヤの離脱を回避しつつ、車両の前方に後突荷重を伝達しないようにする。しかしながら、その構造上、後方からの種々の方向における荷重に対応し得ず、後突する車両等の物の形状によっては、衝突時にスペアタイヤを立ち上げるモーメントが減少し、スペアタイヤを効果的に傾斜させることができなかった。
【0005】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、後方から大きな荷重が加わった場合にスペアタイヤの離脱を防止することができ、更に、その上、後方からの種々の方向における荷重に対応して、スペアタイヤを効果的に傾斜させ得る後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本願の請求項1に係る発明は、車両の後部荷室にてスペアタイヤをほぼ水平に収納するように構成された車両の後部車体構造において、該後部荷室の床面をなすフロアパネルに、スペアタイヤを固定して保持するためのタイヤ受け部が設けられ、該フロアパネルの下面側には、該タイヤ受け部に対応して、車両の前後方向に延びる補強部材が設けられており、該補強部材は、上記タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位に対応しつつ、その後端側で、上記フロアパネルより後方に位置する縦壁部材から所定間隔離間して対向するように延びることを特徴としたものである。
【0007】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記補強部材が、車両の前後方向において、水平に対して前方上向きに傾斜していることを特徴としたものである。
【0008】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、上記補強部材が、その後端側で、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部を有し、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より下方に位置していることを特徴としたものである。
【0009】
また、更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記補強部材が、車両の前後方向において、水平に対して前方下向きに傾斜していることを特徴としたものである。
【0010】
また、更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、上記補強部材が、その後端側で、水平に対して後方下向きに傾斜する傾斜部を有し、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より上方に位置していることを特徴としたものである。
【0011】
また、更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記補強部材が、その前端側で、略水平方向に延びる一方、その後端側で、水平に対して後方下向きに傾斜する傾斜部を有しており、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より下方に突出していることを特徴としたものである。
【0012】
また、更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記補強部材が、その前端側で、略水平方向に延びる一方、その後端側で、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部を有しており、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より上方に突出していることを特徴としたものである。
【0013】
また、更に、本願の請求項8に係る発明は、請求項1〜5に係る発明のいずれか一において、上記補強部材が、その後端側で、該補強部材の本体より後方へ突出し、上記縦壁部材から所定間隔離間して対向する突出部を有していることを特徴としたものである。
【0014】
また、更に、本願の請求項9に係る発明は、請求項1〜8に係る発明のいずれか一において、上記縦壁部材が、上記フロアパネルの後方にて、車両上下方向に幅を有し車幅方向に延設される延設部材からなることを特徴としたものである。
【0015】
また、更に、本願の請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明において、上記延設部材が、上記フロアパネルの後端に連続して設けられたリヤエンドパネルであることを特徴としたものである。
【0016】
また、更に、本願の請求項11に係る発明は、請求項9に係る発明において、上記延設部材が、上記フロアパネルの後方に位置するバンパーレインフォースメントであることを特徴としたものである。
【0017】
また、更に、本願の請求項12に係る発明は、請求項11に係る発明において、上記バンパーレインフォースメントと上記タイヤ受け部との間に所定の上下幅を有して車幅方向に延びるリヤエンドパネルが設けられ、該リヤエンドパネルには、上記補強部材をその後端側で挿通させる開口部が設けられていることを特徴としたものである。
【0018】
また、更に、本願の請求項13に係る発明は、請求項8〜12に係る発明のいずれか一において、上記縦壁部材が、上記突出部と対向する部位に、後方へ窪むように形成された凹部を有していることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に係る発明によれば、上記補強部材によりスペアタイヤの取付け剛性が高められるため、例えば後突荷重など車両後方から大きな荷重が加わった場合にも、タイヤの離脱を抑制し得ることに加え、補強部材と縦壁部材との間に所定間隔が設けられることで、後方からの様々な方向における荷重に対応して、その荷重により招来される縦壁部材の傾斜の方向に依らず、タイヤを傾斜させることができ、後部荷室側で衝撃吸収ストロークを確保することができる。
【0020】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、補強部材を水平に対して前方上向き(すなわち後方下向き)に予め傾斜させることで、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、その前端部が持ち上がる方向へのスペアタイヤの回転及び傾斜を助長し、後部荷室側で衝撃吸収ストロークをより容易に確保することができる。
【0021】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部が設けられることで、補強部材の回転に伴う前端部の移動量は小さく、その結果、スペアタイヤは車両前後方向におけるほぼ中間位置を中心として回転することとなり、スペアタイヤの車両上下方向における移動量を抑制することができる。
【0022】
また、更に、本願の請求項4に係る発明によれば、補強部材を水平に対して前方下向き(すなわち後方上向き)に予め傾斜させることで、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、その前端部が下方に移動する方向へのスペアタイヤの回転及び傾斜を助長し、後部荷室側で衝撃吸収ストロークをより容易に確保することができる。
【0023】
また、更に、本願の請求項5に係る発明によれば、水平に対して後方下向きに傾斜する傾斜部が設けられることで、補強部材の回転に伴う前端部の移動量は小さく、その結果、スペアタイヤは車両前後方向におけるほぼ中間位置を中心として回転することとなり、スペアタイヤの車両上下方向における移動量を抑制することができる。
【0024】
更に、本願の請求項6に係る発明によれば、補強部材の後端側に水平に対して後方下向きに傾斜する傾斜部を設けることで、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、その前端部が持ち上がる方向へのスペアタイヤの回転及び傾斜を助長し、後部荷室側で衝撃吸収ストロークをより容易に確保することができる。
【0025】
また、更に、本願の請求項7に係る発明によれば、補強部材の後端側に水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部を設けることで、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、その前端部が下方に移動する方向へのスペアタイヤの回転及び傾斜を助長し、後部荷室側で衝撃吸収ストロークをより容易に確保することができる。
【0026】
また、更に、本願の請求項8に係る発明によれば、上記補強部材の後端側に該補強部材の本体より後方へ突出する突出部を設けることで、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、縦壁部材が突出部を介して補強部材に先当たりすることを助長し、スペアタイヤを介して伝達された荷重の影響によりスペアタイヤが離脱することを防止することができる。
【0027】
また、更に、本願の請求項9に係る発明によれば、上記縦壁部材がフロアパネルの後方にて車両上下方向に幅を有し車幅方向に延設される延設部材からなるため、補強部材はその後端側で広範囲でカバーされ、後方からの様々な方向における荷重が補強部材に伝達され易く、スペアタイヤの回転及び傾斜を助長することができる。
【0028】
また、更に、本願の請求項10に係る発明によれば、リヤエンドパネルを利用して、後方からの様々な方向における荷重に対応することができ、補強部材やスペアタイヤをスムーズに傾斜させることができる。
【0029】
また、更に、本願の請求項11に係る発明によれば、バンパーレインフォースメントを延設部材とすることで、上記突出部の幅よりも幅広の衝撃エリアからの荷重を補強部材に伝達することができる。
【0030】
また、更に、本願の請求項12に係る発明によれば、補強部材がその後端側でリヤエンドパネルの開口部に挿通させられることが可能であるので、リヤエンドパネルの傾斜方向に依らず、補強部材やスペアタイヤをスムーズに傾斜させることができる。
【0031】
また、更に、本願の請求項13に係る発明によれば、上記縦壁部材の上記突出部と対向する部位に車両後方へ窪む凹部が、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、突出部を受け入れることで、縦壁部材がスムーズに補強部材に対して付勢され、スペアタイヤをよりスムーズに回転させ傾斜させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
実施形態1.
図1は、スペアタイヤが収納されるように構成された後部車体構造を車両後方から見た図である。この車両1では、後部シート2の後側に、車両後方に向かって開口する後部荷室4が規定されている。後部荷室4の開口3は、伸縮可能なダンパー29を含む各種の部材を介して該開口3の縁部近傍に取り付けられたリフトゲート(不図示)により、開閉自在に覆われる。開口3の下方には、リヤバンパー14が、車両1の最も後方側に位置しつつ、車幅方向に延びるように設けられている。また、後部荷室4は、その下側で、取外し可能なフロアボード7により仕切られ、該フロアボード7の下方側には、スペアタイヤ5用の収納スペース6(図2及び3参照)が構成されている。
【0033】
また、図2は、フロアボード7が取り外され、スペアタイヤ5が収納された状態にある収納スペース6、図3は、更に、スペアタイヤ5が取り外された状態にある収納スペース6を車両側方から見た図である。収納スペース6は、車両1の後方側において、後部荷室4の開口3の周縁部をなすリヤエンドパネル12(図5参照)の内壁部12Aにより規定され、車両1の前方側において、車幅方向に延びるクロスメンバ18により規定されている。フロアボード7が取り外された状態では、後部車室4を含む車室の床面をなすフロアパネル10がその後端側で露出する。このフロアパネル10には、スペアタイヤ5を受け入れる凹状のスペアタイヤパン(以下、タイヤパンという)9が形成され、該タイヤパン9の中央には、スペアタイヤ5を締結固定するためのブラケット11が溶接されて取り付けられている。このブラケット11には、ボルト(不図示)を挿通させる取付け孔11aが形成され、その取付け孔11に対応して、ブラケット11の下面側には、ナット(不図示)が溶接されている。スペアタイヤ5は、その収納に際し、タイヤパン9内に位置決めされた上で、ボルト(不図示)がホイール5Aを介しつつブラケット11にねじ込まれることで締結固定される。
【0034】
本実施形態1では、フロアパネル10の下面側に、タイヤパン9に対応して、車両1の前後方向に延びる補強部材(以下、レインフォースメントという)20が取り付けられている。このレインフォースメント20は、その前端側で、タイヤパン9に対するスペアタイヤ5の固定部位、すなわちブラケット11が設けられる部位に対応して位置する一方、その後端側で、フロアパネル10の後方に構成されるリヤエンドパネル12(図5参照)から所定間隔離間して位置するように取り付けられている。レインフォースメント20がフロアパネル10に対して取り付けられる態様については、図5を参照して詳細に説明する。
【0035】
図4は、レインフォースメント20の斜視図である。このレインフォースメント20は、車両1の前後方向に沿って、図中左下の端部が前方に向く一方、図中右上の端部が後方に向くように取り付けられるもので、車幅方向における断面が略コ字状をなすように形成された本体21と、該本体21の上端部から車幅方向外方に延びるフランジ23と、を有している。また、本実施形態では、レインフォースメント20は、その後端側で、後方上向きへ延びるように本体21に対して傾斜させられた傾斜部22を有している。なお、本実施形態では、レインフォースメント20が金属プレート材から製作され、本体21の車幅方向及び上下方向における寸法は、それぞれ、90ミリメートル及び12ミリメートルに設定されている。また、本体21及びフランジ23の肉厚は、約1.0〜1.4ミリメートルである。
【0036】
更に、本体21には、スペアタイヤ5を固定するためのボルト(不図示)を挿通させる挿通孔21aと、インシュレータ15(図5参照)をレインフォースメント20の下面側に固定するためのボルト(不図示)を挿通させる挿通孔21bと、が形成されている。フランジ23は、フロアパネル10の下面に対向する部分で、フロアパネル10に対して溶接され、これにより、レインフォースメント20がフロアパネル10に取り付けられる。
【0037】
図5は、レインフォースメント20がフロアパネル10に取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。図中の左側が車両前側に対応し、右側が車両後側に対応する。なお、図面の簡略化を図り、スペアタイヤ5を固定するためのボルト,インシュレータ15を固定するためのボルト,レインフォースメント20の詳細構造等については、その図示を省略する。
【0038】
図5に示す状態では、後部荷室4の床面をなすフロアボード7の下側に形成された収納スペース6において、ホイール5Aとタイヤ5Bとからなるスペアタイヤ5が、タイヤパン9内に位置決めされ、該タイヤパン9の中央に取り付けられたブラケット11に対して締結固定されている。また、図5から分かるように、収納スペース6の後方には、後部荷室4の開口3の周縁部をなしつつ該収納スペース6を規定する内壁部12Aと、該内壁部12Aと一体的に成形され、該内壁部12Aの後方側に位置する縦壁部12Bとからなるリヤエンドパネル12が構成されている。リヤエンドパネル12の内壁部12Aは、タイヤパン9の上端部近傍まで下方に延び、他方、縦壁部12Bは、内壁部12Aより後方にて、内壁部12Aに対向し、更に、タイヤパン9やレインフォースメント20が存在する領域に対応するように下方へ延びている。また、リヤエンドパネル12の後方側には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント13が取り付けられている。更に、車幅方向に延び、バンパーレインフォースメント13をその後方から取り囲むリヤバンパー14が車両1の最も後方側に位置するように取り付けられている。
【0039】
本実施形態では、フロアパネル10が全体として水平に形成され、該フロアパネル10の下面側に取り付けられたレインフォースメント20は、その本体21が水平になる一方、その傾斜部22が水平に対して後方上向きに傾斜し突出するように保持されている。そして、その傾斜部22の後端部は、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置している。
【0040】
なお、図5に示すように、収納スペース6を構成するフロアパネル10の下方には、エンジン排気系を構成する円筒状のサイレンサ16が車幅方向に延びるように配置されている。また、サイレンサ16から放たれる排気熱から、収納スペース6内に収納されるスペアタイヤ5等の収納物を保護するために、レインフォースメント20の下面側には、サイレンサ16をその上方側で囲うような形状をなすインシュレータ15が取り付けられている。
【0041】
図6は、レインフォースメント20が取り付けられた後部車体構造に対して後方から荷重が加わった場合における、スペアタイヤ5の移動をあらわす説明図である。かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合に、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント20の傾斜部22に対して付勢されると、レインフォースメント20には、その傾斜部22の傾斜によって、その前端部が下方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされる。また、レインフォースメント20が取り付けられたフロアパネル10(厳密にはタイヤパン9)にも同様の回転モーメントがもたらされる。かかる回転モーメントにより、レインフォースメント20及びタイヤパン9が回転させられ、更に、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5もその前端部が下方へ移動させられるように回転させられる。図6では、回転後のスペアタイヤ5とタイヤパン9が形成されたフロアパネル10とが仮想線(一点鎖線)で示される。この図からよく分かるように、スペアタイヤ5は、リヤシート2が配置されたエリアに進入することなく回転し傾斜する。この回転に伴い、フロアパネル10は、タイヤパン9の前方にて、スペアタイヤ5の前端部により下方へ押し付けられて変形する。
【0042】
本実施形態1では、レインフォースメント20によりスペアタイヤ5の取付け剛性が確保されることから、上記のようにスペアタイヤ5が回転する間に、スペアタイヤ5の離脱を防止することができるのに加え、更に、レインフォースメント20が、その後端側で、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置させられるため、水平方向のみならず、後方からの様々な方向における荷重に対応して、その荷重により招来される縦壁部12Bの傾斜の方向に依らず、スペアタイヤ5を効果的に傾斜させることができる。これにより、リヤシート2が配置されたエリアより後方のエリアおいて、衝撃吸収ストロークを稼ぐことができ、リヤシート2が配置されたエリアへのスペアタイヤ5の進入を防止することができる。特に、ここでは、レインフォースメント20が、その後端側で、車両1の上下方向に幅を有しかつ車幅方向に延びるリヤエンドパネル12の縦壁部12Bに対向させられ広範囲でカバーされるため、後方からの様々な方向における荷重がレインフォースメント20に伝達され易く、上記の効果がより確実に実現可能である。
また、本実施形態1では、レインフォースメント20の後端側で、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部22が設けられることで、スペアタイヤ5をその前後方向におけるほぼ中間部を中心としてほぼその場で回転させることができ、スペアタイヤ5の上下移動量を抑制することができる。
【0043】
以下では、上記実施形態1における場合と異なるレインフォースメントやフロアパネルから構成される実施形態2〜8について順に説明する。なお、以下、同一の構成については同じ符号を付し、それ以上の説明を省略する。
実施形態2.
図7は、本発明の実施形態2に係るレインフォースメントの斜視図である。このレインフォースメント30は、車両1の前後方向に沿って、図中左下の端部が前方に向く一方、図中右上の端部が後方に向くように取り付けられるもので、車幅方向における断面が略コ字状をなすように形成された本体31と、該本体31の上端部から車幅方向外方に延びるフランジ33と、を有している。また、本実施形態では、レインフォースメント30は、その後端側で、後方下向きへ延びるように本体31に対して傾斜させられた傾斜部32を有している。更に、本体31には、スペアタイヤ5を固定するためのボルト(不図示)を挿通させる挿通孔31aと、インシュレータ15をレインフォースメント30の下面側に固定するためのボルト(不図示)を挿通させる挿通孔31bと、が形成されている。フランジ33は、フロアパネル10の下面に対向する部分で、フロアパネル10に対して溶接され、これにより、レインフォースメント30がフロアパネル10に取り付けられる。
【0044】
図8は、レインフォースメント30がフロアパネル10に取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。本実施形態2では、フロアパネル10が全体として水平に形成されており、レインフォースメント30は、フロアパネル10の下面側にて、その本体31が水平になる一方、該本体31の後部に取り付けられた傾斜部32が水平に対して後方下向きに傾斜し突出するように保持されている。そして、その傾斜部22の後端部は、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置している。
【0045】
図9は、レインフォースメント30が取り付けられた後部車体構造に対して後突荷重が加わった場合における、スペアタイヤ5の移動をあらわす説明図である。かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント30の傾斜部32に対して付勢されると、レインフォースメント30には、傾斜部32の傾斜によって、その前端部が上方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされる。また、レインフォースメント30が取り付けられたフロアパネル10にも同様の回転モーメントがもたらされる。かかる回転モーメントにより、レインフォースメント30及びタイヤパン9が回転させられ、更に、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5もその前端部が上方へ移動させられるように回転させられる。図9では、回転後のスペアタイヤ5とタイヤパン9が形成されたフロアパネル10とが仮想線(一点鎖線)で示される。この図からよく分かるように、スペアタイヤ5は、リヤシート2が配置されたエリアに進入することなく回転し傾斜する。この回転に伴い、フロアパネル10は、タイヤパン9のレインフォースメント30が取り付けられた部分より前方にて変形する。
【0046】
本実施形態2では、上記実施形態1と同様に、レインフォースメント30によりスペアタイヤ5の取付け剛性が確保されることから、上記のようにスペアタイヤ5が回転する間に、スペアタイヤ5の離脱を防止することができるのに加え、更に、レインフォースメント30が、その後端側で、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置させられることにより、水平方向のみならず、後方からの様々な方向における荷重に対応して、その荷重により招来される縦壁部12Bの傾斜の方向に依らず、スペアタイヤ5が効果的に傾斜させられ得る。これにより、リヤシート2が配置されたエリアより後方のエリアおいて、衝撃吸収ストロークを稼ぐことができ、リヤシート2が配置されたエリアへのスペアタイヤ5の進入を防止することができる。更に、その上、本実施形態2では、レインフォースメント30の後端側で、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部32が設けられることで、スペアタイヤ5は車両前後方向におけるほぼ中間位置を中心としてその場で回転することとなり、スペアタイヤ5の車両上下方向における移動量を抑制することができる。
【0047】
実施形態3.
前述した実施形態1及び2では、レインフォースメントとして、その後端側で後方上向き又は後方下向きに傾斜する傾斜部22又は32を有するものを取り上げたが、これに限定されることなく、スペアタイヤ5をリヤシート2が配置されたエリアへのスペアタイヤ5の進入を防止すべく効率的に傾斜させるには、以下の実施形態3及び4について説明するようにしてもよい。
【0048】
図10は、本発明の実施形態3に係るレインフォースメント40が取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。このレインフォースメント40は、その後端側に傾斜部を有するものでなく、その前端部から後端部まで一直線状に延びるように構成されており、前述した実施形態と同様に、フロアパネル10Aの下面側に、その前端側で、タイヤパン9に対するスペアタイヤ5の固定部位、すなわちブラケット11が設けられる部位に対応して位置する一方、その後端側で、フロアパネル10の後方に構成されるリヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置するように取り付けられている。また、本実施形態3では、図10から分かるように、フロアパネル10Aが、水平に対して前方下向きに傾斜しており、これにより、フロアパネル10Aに取り付けられたレインフォースメント40も、その前端側で前方下向きになる一方、その後端側で後方上向きになるように傾斜している。図10中の符号Sを付した破線は、水平線をあらわす。
【0049】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント40の後端側に付勢されると、レインフォースメント40には、その傾斜によって、該レインフォースメント40の前端部が下方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされる。また、レインフォースメント40が取り付けられたフロアパネル10Aにも同様の回転モーメントがもたらされる。かかる回転モーメントにより、レインフォースメント40及びタイヤパン9が回転させられ、更に、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5もその前端部が下方へ移動させられるように回転させられる。これにより、スペアタイヤ5は、リヤシート2が配置されたエリアに進入することなく回転し傾斜する。このように、本実施形態3では、上記実施形態1における場合とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0050】
実施形態4.
また、図11は、本発明の実施形態4に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。この実施形態4では、レインフォースメントとして、上記実施形態3における場合と同じレインフォースメント40が採用されるが、フロアパネル10Bが、水平に対して前方上向きに傾斜している。これにより、フロアパネル10Bに取り付けられたレインフォースメント40は、その前端側で前方上向きになる一方、その後端側で後方下向きになるように傾斜している。図11中の符号Sを付した破線は、水平線をあらわす。レインフォースメント40は、前述した実施形態と同様に、フロアパネル10Bの下面側に、その前端側で、タイヤパン9に対するスペアタイヤ5の固定部位、すなわちブラケット11が設けられる部位に対応して位置する一方、その後端側で、フロアパネル10の後方に構成されるリヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置するように取り付けられている。
【0051】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント40の後端側に付勢されると、レインフォースメント40には、その傾斜によって、該レインフォースメント40の前端部が上方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされる。また、レインフォースメント40が取り付けられたフロアパネル10Aにも同様の回転モーメントがもたらされる。かかる回転モーメントにより、レインフォースメント40及びタイヤパン9が回転させられ、更に、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5もその前端部が上方へ移動させられるように回転させられる。これにより、スペアタイヤ5は、リヤシート2が配置されたエリアに進入することなく回転し傾斜する。このように、本実施形態4では、上記実施形態2における場合とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0052】
実施形態5.
前述した実施形態3及び4では、それぞれ、水平に対して前方下向き及び前方上向きに傾斜しフロアパネル10A及び10Bに対して、その前端部から後端部まで一直線状に延びるように構成されたレインフォースメント40が用いられたが、これに限定されることなく、その後端側に傾斜部を有するレインフォースメントを用いてもよい。
【0053】
図12は、本発明の実施形態5に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。この実施形態5では、水平に対して前方下向きに傾斜したフロアパネル10Aに対して、その後端側に後方下向きに傾斜する傾斜部32を備えたレインフォースメント30が取り付けられている。レインフォースメント30は、その前端側で前方下向きになる一方、その後端側で後方上向きになるように傾斜した上で、傾斜部32において後方下向きに傾斜している。図12中の符号Sを付した破線は、レインフォースメント30の前端部の高さに対応する水平線をあらわしており、これから分かるように、傾斜部32の後端部は、車両上下方向において、レインフォースメント20の前端部より上方に位置している。
【0054】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント30の後端側に付勢されると、レインフォースメント30の傾斜部32には、該レインフォースメント30の前端部及び後端部の傾斜や位置関係によって前上がりの荷重が加えられることとなり、後端部が上方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされる。図13には、レインフォースメント30が移動する様子を概念的に示す。かかる回転モーメントにより、レインフォースメント30とともに、タイヤパン9が回転させられ、更に、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5もその後端部が上方へ移動させられるように回転させられる。これにより、スペアタイヤ5は、リヤシート2が配置されたエリアに進入することなく回転し傾斜する。このように、本実施形態5では、上記実施形態1における場合とほぼ同様の効果を奏することができる。更に、その上、かかる後部車体構造によれば、図13からよく分かるように、レインフォースメント30の回転に伴う前端部の移動量は小さく、その結果、スペアタイヤ5は車両前後方向におけるほぼ中間位置を中心としてその場で回転することとなり、スペアタイヤ5の車両上下方向における移動量を抑制することができる。
【0055】
実施形態6.
図14は、本発明の実施形態6に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。この実施形態6では、上記実施形態5とは逆に、水平に対して前方上向きに傾斜したフロアパネル10Bに対して、その後端側に後方上向きに傾斜する傾斜部22を備えたレインフォースメント20が取り付けられている。レインフォースメント20は、その前端側で前方上向きになる一方、その後端側で後方下向きになるように傾斜した上で、傾斜部22において後方上向きに傾斜している。図14中の符号Sを付した破線は、レインフォースメント20の前端部の高さに対応する水平線をあらわしており、これから分かるように、傾斜部22の後端部は、車両上下方向において、レインフォースメント20の前端部より下方に位置している。
【0056】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント20の後端側に付勢されると、レインフォースメント20の傾斜部22には、該レインフォースメント20の前端部及び後端部の傾斜や位置関係によって前下がりの荷重が加えられることとなり、後端部が下方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされる。図15には、レインフォースメント20が移動する様子を概念的に示す。かかる回転モーメントにより、レインフォースメント20とともに、タイヤパン9が回転させられ、更に、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5もその後端部が下方へ移動させられるように回転させられる。これにより、スペアタイヤ5は、リヤシート2が配置されたエリアに進入することなく回転し傾斜する。このように、本実施形態6では、上記実施形態2における場合とほぼ同様の効果を奏することができる。更に、その上、かかる後部車体構造によれば、図15からよく分かるように、レインフォースメント20の回転に伴う前端部の移動量は小さく、その結果、スペアタイヤ5は車両前後方向におけるほぼ中間位置を中心として回転することとなり、スペアタイヤ5の車両上下方向における移動量を抑制することができる。
【0057】
実施形態7.
図16は、本発明の実施形態5に係るレインフォースメントの斜視図である。このレインフォースメント50は、車両1の前後方向に沿って、図中左下の端部が前方に向く一方、図中右上の端部が後方に向くように取り付けられるもので、車幅方向における断面が略コ字状をなすように形成された本体51と、該本体51の上端部から車幅方向外方に延びるフランジ53と、を有している。また、レインフォースメント50は、その後端側で、後方上向きへ延びるように本体51に対して傾斜させられた傾斜部52を有している。
【0058】
本体51には、スペアタイヤ5を固定するためのボルト(不図示)を挿通させる挿通孔51aと、インシュレータ15をレインフォースメント50の下面側に固定するためのボルト(不図示)を挿通させる挿通孔51bと、が形成されている。フランジ53は、フロアパネル10の下面に対向する部分で、フロアパネル10に対して溶接され、これにより、レインフォースメント50がフロアパネル10に取り付けられる。更に、本実施形態5では、レインフォースメント50が、その後端側で、傾斜部52よりも後方へ延びる突出部54を有している。
【0059】
図17は、レインフォースメント50がフロアパネル10に取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。この図に示す状態では、後部荷室4の床面をなすフロアボード7の下側に形成された収納スペース6において、スペアタイヤ5が、タイヤパン9内に位置決めされ、該スペアタイヤ9の中央に取り付けられたブラケット11に対して締結固定されている。本実施形態5では、フロアパネル10が全体として水平に形成されており、該フロアパネル10の下面側に取り付けられたレインフォースメント50は、その本体51が水平になる一方、その傾斜部52が水平に対して後方上向きに傾斜するように保持されている。また、傾斜部52の下側では、突出部54が後方に向かって水平に延び、傾斜部52よりも後方に位置している。また、かかるレインフォースメント50の傾斜部52に対応して、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bには、車両後方へ窪む凹部12aが形成されている。
【0060】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合に、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、突出部54が凹部12a内に押し付けられるように、レインフォースメント50に先当たりし、その後、傾斜部52に対して付勢される。すなわち、本実施形態5では、突出部54を設けることにより、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5に対してまず付勢されることがなく、スペアタイヤ5を介して伝達された荷重によりブラケット11がタイヤパン9から剥がれスペアタイヤ5が離脱することを防止することができる。
また、本実施形態5では、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bに、突出部54を受け入れる凹部12aが設けられることで、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bがスムーズに傾斜部52に対して付勢されることとなり、レインフォースメント50及びスペアタイヤ9がスムーズに回転させられ傾斜させられ得る。
【0061】
実施形態8.
上記実施形態7では、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bに凹部12aが設けられたが、レインフォースメント50の傾斜部52に対して縦壁部12Bがスムーズに付勢されるためには、これに限定されることなく、次に説明するような実施形態であってもよい。図18は、本発明の実施形態6に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。本実施形態6では、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bにおいて、レインフォースメント50側の突出部54に対応する部位に、開口部12bが形成されている。そして、突出部54は、開口部12bに挿通させられ、縦壁部12Bよりも後方に突出している。
【0062】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合に、突出部54が開口部12bに挿通させられつつ、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが前方へ移動し、レインフォースメント50の傾斜部52に対して付勢される。これにより、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bがスムーズに傾斜部52に対して付勢されることとなり、レインフォースメント50及びスペアタイヤ9がスムーズに回転させられ傾斜させられ得る。
【0063】
実施形態9.
上記実施形態8では、開口部12bが形成されたリヤエンドパネル12の縦壁部12Bに対して、その後端側で突出部54を有するレインフォースメント50が採用される例が取り上げられたが、これに限定されることなく、次に説明するような実施形態であってもよい。図19は、本発明の実施形態9に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。本実施形態9では、レインフォースメントとして、上記実施形態3及び4における場合と同様に、その前端部から後端部まで一直線状に延びるように構成されるレインフォースメント60が用いられる。また、フロアパネル10Aが、水平に対して前方下向きに傾斜しており、これにより、フロアパネル10Aに取り付けられたレインフォースメント60も、その前端側で前方下向きになる一方、その後端側で後方上向きになるように傾斜している。図19中の符号Sを付した破線は、水平線をあらわす。そして、このレインフォースメント60は、その後端側で、開口部12bに挿通させられ、縦壁部12Bよりも後方に突出し、バンパーレインフォースメント13から所定距離離間して位置させられている。
【0064】
かかる後部車体構造によれば、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形する場合に、レインフォースメント60が、その後端側で、リヤエンドパネル12の開口部12bに挿通させられ、かつ、バンパーレインフォースメント13から所定距離離間しているので、仮想線で示すように前方へ変形してきたバンパーレインフォースメント13に対してレインフォースメント60の後端がスペアタイヤ5よりも先に衝突して前方へ押し出され、レインフォースメント60の前端部が下方へ移動するような回転モーメントがもたらされる。これにより、レインフォースメント60が、水平方向のみならず、後方からの様々な方向における荷重に対応して、その荷重により招来される縦壁部12Bやバンパーレインフォースメント13の傾斜の方向に依らず、レインフォースメント60及びスペアタイヤ5をスムーズに傾斜させることができる。
【0065】
なお、本発明は、例示された実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
前述した実施形態では、レインフォースメントをその前端部が上向き又は下向きになるように傾斜させるために、フロアパネルが予め傾斜するように設定されたが、これに限定されることなく、例えば、水平に設定されたフロアパネルに、車両の前後方向において厚さの異なる部材を介在させつつレインフォースメントを取り付けることにより、レインフォースメント本体を傾斜させるようにしてもよい。また、前述した実施形態では、レインフォースメントが、その前端側で、ブラケット11に対応する部位まで延びるように設けられたが、これに限定されることなく、例えば、車両1の前後方向において、ブラケット11に対応しつつタイヤパン9の直径にわたり延びるように設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】スペアタイヤが収納されるように構成された後部車体構造を車両後方から見た図である。
【図2】スペアタイヤが収納されるように構成された後部車体構造を車両側方から見た図である。
【図3】スペアタイヤを取り外した状態にある後部車体構造を車両側方から見た図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るレインフォースメントの斜視図である。
【図5】上記実施形態1に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図6】上記実施形態1に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造に対して後突荷重が加わった場合における、スペアタイヤの移動をあらわす説明図である。
【図7】本発明の実施形態2に係るレインフォースメントの斜視図である。
【図8】上記実施形態2に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図9】上記実施形態2に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造に対して後突荷重が加わった場合における、スペアタイヤの移動をあらわす説明図である。
【図10】本発明の実施形態3に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図12】本発明の実施形態5に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図13】本発明の実施形態5に係る後部車体構造に対して後突荷重が加わった場合における、レインフォースメントの移動を概念的にあらわす説明図である。
【図14】本発明の実施形態6に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図15】本発明の実施形態6に係る後部車体構造に対して後突荷重が加わった場合における、レインフォースメントの移動を概念的にあらわす説明図である。
【図16】本発明の実施形態7に係るレインフォースメントの斜視図である。
【図17】上記実施形態7に係るレインフォースメントが取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図18】本発明の実施形態8に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図19】本発明の実施形態9に係る後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1…車両,4…後部荷室,5…スペアタイヤ,6…収納スペース,9…スペアタイヤパン,10,10A,10B…フロアパネル,11…ブラケット,12…リヤエンドパネル,12B…縦壁部,12a…凹部,12b…開口部,13…バンパーレインフォースメント,20,30,40,50,60…レインフォースメント,21,31,51…本体,22,32,52…傾斜部,23,33,53…フランジ,54…突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部荷室にてスペアタイヤをほぼ水平に収納するように構成された車両の後部車体構造において、
上記後部荷室の床面をなすフロアパネルに、スペアタイヤを固定して保持するためのタイヤ受け部が設けられ、該フロアパネルの下面側には、該タイヤ受け部に対応して、車両の前後方向に延びる補強部材が設けられており、
上記補強部材は、上記タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位に対応しつつ、その後端側で上記フロアパネルより後方に位置する縦壁部材から所定間隔離間して対向するように延びることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記補強部材が、車両の前後方向において、水平に対して前方上向きに傾斜していることを特徴とする請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記補強部材が、その後端側で、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部を有し、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より下方に位置していることを特徴とする請求項2記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記補強部材が、車両の前後方向において、水平に対して前方下向きに傾斜していることを特徴とする請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記補強部材が、その後端側で、水平に対して後方下向きに傾斜する傾斜部を有し、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より上方に位置していることを特徴とする請求項4記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記補強部材が、その前端側で、略水平方向に延びる一方、その後端側で、水平に対して後方下向きに傾斜する傾斜部を有しており、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より下方に突出していることを特徴とする請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
上記補強部材が、その前端側で、略水平方向に延びる一方、その後端側で、水平に対して後方上向きに傾斜する傾斜部を有しており、該傾斜部の後端部は、車両上下方向において、該補強部材の前端部より上方に突出していることを特徴とする請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項8】
上記補強部材が、その後端側で、該補強部材の本体より後方へ突出し、上記縦壁部材から所定間隔離間して対向する突出部を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の車両の後部車体構造。
【請求項9】
上記縦壁部材が、上記フロアパネルの後方にて、車両上下方向に幅を有し車幅方向に延設される延設部材からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の車両の後部車体構造。
【請求項10】
上記延設部材が、上記フロアパネルの後端に連続して設けられたリヤエンドパネルであることを特徴とする請求項9記載の車両の後部車体構造。
【請求項11】
上記延設部材が、上記フロアパネルの後方に位置するバンパーレインフォースメントであることを特徴とする請求項9記載の車両の後部車体構造。
【請求項12】
上記バンパーレインフォースメントと上記タイヤ受け部との間に所定の上下幅を有して車幅方向に延びるリヤエンドパネルが設けられ、該リヤエンドパネルには、上記補強部材をその後端側で挿通させる開口部が設けられていることを特徴とする請求項11記載の車両の後部車体構造。
【請求項13】
上記縦壁部材が、上記突出部と対向する部位に、後方へ窪むように形成された凹部を有していることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−193046(P2006−193046A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6586(P2005−6586)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】