説明

車両の操舵方向の制御方法

本発明は、モニタリングしている車両の操舵方向の制御方法に関し、前記車両は各々が他のホイールから独立して自然な方向角度に操舵することができる少なくとも2つのステアリングホイールを備え、前記ホイールは車両のトレインに属する。前記方法は、横方向加速度設定ポイントを収集するステップ、及び前記横方向加速度設定ポイントに基づいて、各ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算するステップを含む。ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算する処理の間に、前記トレインのホイールの各々の方向設定ポイントを、路面に対する前記ホイールのグリップ力μの差が閾値未満になるように計算する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は概して、互いに独立した方向に方向付けることができる複数のホイールを有する車両の、同一のステアリングアクスルアセンブリのステアリングホイールの方向付けの分野に関する。
具体的には、本発明は、少なくとも2つのステアリングホイールを備える車両の操舵方向を駆動中に制御する方法に関し、これらのステアリングホイールの各々の方向は、他のホイールから独立して固有の方向角度に調整することができ、これらのホイールは車両のアクスルアセンブリに属する。この方法は、横方向加速度設定ポイントを収集するステップ、及び前記横方向加速度設定ポイントの関数として各ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算するステップとを含む。
【0002】
少なくとも2つのホイールを備え、各ホイールを他のホイールから独立して方向付けることができるステアリングアクスルアセンブリを備える車両の挙動を向上させ、その結果として車両の搭乗者の安全性を高めるために、自動車製造業者によって、これらホイールを方向付けるための種々の方式が開発されている。
この車両のこのようなステアリングホイールの方向付けを可能にする上述の種類の制御方法は、例えば欧州特許第1147960号に記載されている。
【0003】
この文献には、路面から車両の各ホイールに加わる横方向の荷重の測定値を使用して、車両の走行軌跡を制御する方法が記載されている。この方法を実現するために、測定値に応じて車両のフロントサスペンション及びリアサスペンションに働きかけることが提案されている。
これに関連して、本発明の目的は、車両の運転者によって決定される設定ポイントに応じて車両の複数のホイールに荷重を動的に分散させるための別の解決方法を可能にする、操舵方向の制御方法を提供することである。
【0004】
この目的を達成するために、本明細書の冒頭で既述の概要的定義に加えて、本発明の方法は、ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算する処理の間に、前記アクスルアセンブリのホイールの路面に対するグリップ力μの差が限界値未満となるように、これらホイールの各々について方向設定ポイントを計算することを、基本的な特徴とする。
本発明によって、同一のアクスルアセンブリのホイール群に加わる荷重を良好に分散することができ、よってこのアクスルアセンブリのホイール群の各々のグリップ性能をより効果的に利用することができる。
【0005】
具体的には、本発明は、同一のアクスルアセンブリのホイール群のグリップ力を、これらホイールの各々の方向角度を制御することにより均等にすることを目的とする。同一のアクスルアセンブリのホイール群のグリップ力を完全に均等にするのは実際には非常に難しく、このために、これらのホイールのグリップの差の限界許容値に対応する限界値が導入される。従って、グリップ力の均等化は、できる限り最小化される許容値に収まるように行なわれる。同一のアクスルアセンブリのホイール群のグリップ力を均等化すること難しさは、例えば計算モデルの不完全性、ホイール群の方向角度を制御するシステムの応答時間、車道の不完全性に関連している。
つまり、本発明では、運転者が要求する横方向加速度設定ポイントを、ステアリングホイールの角度設定ポイントに変換することにより、フロントアクスルアセンブリの2つのタイヤに第1の均等なグリップ力を伝達する。同一のアクスルアセンブリのホイール群のグリップ力を均等化するこのような試みにより、本発明は、運転者により決定される走行軌跡設定ポイントに従いながら、車両の安定性及びハンドル操作性を向上させることができる。
【0006】
例えば、種々の事項を考慮して、4つのステアリングホイールを備え、これらホイールの各々を他のホイールとは無関係に固有の方向角度に方向付けることができる車両であって、これらのホイールの内、2つのホイールが車両のフロントアクスルアセンブリに属し、他の2つのホイールが車両のリアアクスルアセンブリに属する車両に本方法を実施することができ、本方法は、更に、ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算する処理の間に:
−フロントアクスルアセンブリのホイール群の各々の方向設定ポイントを、路面に対するこれらのホイールのグリップ力の差が第1限界値よりも小さくなるように計算すること、及び
−リアアクスルアセンブリのホイール群の各々の方向設定ポイントを、路面に対するこれらのホイールのグリップ力の差が第2限界値よりも小さくなるように計算すること
を特徴とする。
この実施形態によって、同一のアクスルアセンブリに含まれるホイール群のグリップ力は、最小化される限界値(第1及び第2限界値)内で互いにほぼ等しくなる。各アクスルアセンブリ、即ちフロントアクスルアセンブリ及びリアアクスルアセンブリのグリップ力は、車両の各アクスルアセンブリに固有の要件に応じて調整され、このために、フロントアクスルアセンブリ及びリアアクスルアセンブリのグリップ力は、必ずしも互いに等しくならない。
【0007】
このように、各アクスルアセンブリは当該アセンブリ固有の等しいグリップ力を保持するので、車両のハンドル操作性は全体として向上する。
また、種々の事項を考慮して、ホイールのグリップ力μを、式μ=F/Fを適用することにより計算することができる。この場合、Fは路面によりこのホイールに加わる車幅方向の力を表わし、Fは路面によりこのホイールに加わる垂直方向の力を表わす。
【0008】
特定の実施形態によれば、各ホイールの垂直方向の荷重は荷重センサによって測定することができる。
また、種々の事項を考慮して、ホイールに加わる垂直方向の力を、少なくとも車両の縦方向加速度と車幅方向加速度とに基づいて、車両の静的荷重と、長さ方向及び車幅方向の動的荷重の移動とを考慮に入れることにより、推定することができる。
【0009】
また、種々の事項を考慮して、車両の縦方向加速度及び車幅方向加速度の少なくとも一方を、少なくとも一つのセンサから供給される測定信号により構成又は取得することができる。
長さ方向及び車幅方向加速度信号は、車両に取り付けられる一つ以上の加速度計から出力できるか、又は例えば、車両に取り付けられる一つ以上の速度センサから出力される信号を分離することにより出力できる。
【0010】
また、種々の事項を考慮して、車両の縦方向加速度を、車両の瞬間速度の少なくとも一つの測定値に基づいて取得することができる。
また、種々の事項を考慮して、車両の車幅方向加速度を、車両の瞬間速度の測定値、及びこの車両のステアリングホイールの回転角度の測定値に基づいて推定することができる。瞬間速度の測定値をステアリングホイールの回転角度の測定値と一緒に使用することにより、測定速度を運転者が希望する走行軌跡に関する合図と相関させることができ、よって時間の経過と共に車両の実際の速度に近似することが可能になり、且つ近似速度から、車幅方向加速度及び縦方向加速度を推定することができる。
【0011】
また、車両のフロントアクスルアセンブリの第1ホイールのグリップ力μを、関数

を使用して計算することができる。上の式において、Fz11は、路面によってフロントアクスルアセンブリのこの第1ホイール(R11)に加わる垂直方向の力を表わし、Fz12は、路面によってこのフロントアクスルアセンブリの第2ホイール(R12)に加わる垂直方向の力を表わし、Mfrontは、このフロントアクスルアセンブリに分配される車両の総質量を表わし、γは、この車両の重心(G)で測定又は評価される車両の横方向加速度を表わし、Lは、車両のフロントアクスルアセンブリと重心(G)の間の距離を表わし、ψは、車両のヨー運動の加速度を表わす。
また、車両のリアアクスルアセンブリの第1ホイールのグリップ力μを、関数

を使用して計算することができる。上の式において、Fz21は、路面によってリアアクスルアセンブリのこの第1ホイール(R21)に加わる垂直方向の力を表わし、Fz22は、路面によってこのリアアクスルアセンブリの第2ホイール(R22)に加わる垂直方向の力を表わし、Mrearは、このリアアクスルアセンブリに分配される車両の総質量を表わし、γは、この車両の重心(G)で測定又は評価される車両の横方向加速度を表わし、Lは、車両のリアアクスルアセンブリと重心Gの間の距離を表わし、ψは、車両のヨー運動の加速度を表わす。
【0012】
ヨー運動の加速度ψは、この車両の重心(G)を通る垂直軸に対する車両の回転運動の、時間の経過に伴う2次微分に対応する。
また、各ステアリングホイールの方向の設定ポイントを、基準計算モデルを反転することにより計算することができ、前記モデルは、ホイールに加わる車幅方向の力を、このホイールの方向、及び車両の動的挙動のパラメータの関数として計算することからなる処理を含む。このモデルの詳細な実施例は、後述の詳細な説明に記載する。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して非制限的に示す後述の本発明に関する詳細な説明により明らかになる。
【実施例】
【0014】
既に述べたように、本発明は、駆動された自動車の操舵方向の制御方法に関する。本方法によって、車両の走行軌跡を変更することなく4個のホイールの角度を制御するシステムを装備する車両の、横方向性能を最適化することができる。
これにより、例えば車両に加わる車幅方向加速度が大きく、且つ縦方向加速度が小さい場合の、車両の安定性を高めることができる。
【0015】
本発明は、4つの横方向荷重をステアリングホイール全体に分配することにより車両の挙動を改善し、その結果として運転者の安全性を高める制御方式に関する。
本発明は特に、互いに独立して方向付けすることができるホイールの切れ角とも記載する4つの方向角度を持つことを可能にするシステムに適合される(このようなシステムは、「ステアバイワイヤ」と表現される技術分野において既知である)。
【0016】
本発明は、4つのステアリングホイールの角度を駆動する少なくとも一つの装置と、車両速度の測定、及び縦方向加速度の推定又は測定、ステアリングホイールの角度の推定又は測定、及び車幅方向加速度の推定又は測定を可能にする一つ以上のセンサと、一つ以上の電子計算手段とを備える車両に実施される。
本発明では、運転者が要求する横方向加速度設定ポイントを4つの角度設定ポイントに変換し、これらの角度設定ポイントを、フロントアクスルアセンブリの2つのタイヤの第1グリップ力が常に均等となり、且つリアアクスルアセンブリの2つのタイヤの第2グリップ力が常に均等となるようにステアリングホイールに分配する。
【0017】
この方式では、各アクスルアセンブリの横方向性能を均等にすることにより、運転者が要求する横方向加速度設定ポイントに適合させる。
この方式は、ホイールにおける推定垂直方向荷重を考慮する。従って、カーブでは、横方向荷重が伝達されることにより、切れ角が外側で大きくなり、内側で小さくなる。
【0018】
従って、例えば車両に大きな車幅方向加速度、及び小さな縦方向加速度が加わる場合のような臨界フェーズにおいて、安定性が向上する。本発明によって、車両の走行摩擦を小さくし、運転者が要求する車幅方向加速度設定ポイント(横方向加速度設定ポイントとも呼ぶ)に従いながらカーブでの快適感を高めることができる。
【0019】
注記及び略記
・M(kg):車両総質量
・Mfront(kg):フロントアクスルアセンブリの合計質量
・Mrear(kg):リアアクスルアセンブリの合計質量
・Iz(N.m):車両の重心Gを通る垂直軸の周りの車両の慣性
・h(m):重心Gにおける車両の高さ
・L(m):Gからフロントアクスルまでの距離
・L(m):Gからリアアクスルまでの距離
・e:フロントトラック
・e:リアトラック
・L(m):車両のホイールベース(フロントアクスルアセンブリとリアアクスルアセンブリの間の距離)
・D(N/rad):フロントアクスルアセンブリの横剛性
・D(N/rad):リアアクスルアセンブリの横剛性
・Dij(N/rad):ホイールijの横剛性
・H(N/rad):フロントキャンバ剛性
・H(N/rad):リアキャンバ剛性
・Bal(m):フロント旋回半径
・Dem(s.u.):ステアリングホイールの切れ角からホイールの切れ角への縮小割合
・α(1、2)(rad):(フロント/リア)アクスルアセンブリの平均切れ角
・αij cond(rad):運転者が要求するホイールijの切れ角(αi、jとも表記する)
・αij(rad):方式によって必要になるホイールijの切れ角
・V(m/s):車両の速度
・ψ(rad/s):ヨーレート(yaw_rate_mとも表記する)、垂直軸に沿った車両の重心を中心とする車両の旋回速度
・ψ(rad/s):ヨー加速度(yaw_accel_mとも表記する)、垂直軸に沿った車両の重心を中心とする車両の旋回加速度
・γ(m/s):横方向加速度(gammaT_mとも表記する)、重心Gで測定される(gammaTとも表記する)
・γ(m/s):縦方向加速度、重心Gで測定される(gammaLとも表記する)
・d(rad):横滑り角、車両の速度ベクトルが車両の縦軸となす角度
・dij(rad):ホイールijの横滑り角
・FYij:横方向の力、又はホイールに対する車幅方向の力:ホイールの横軸に沿って路面からホイールが受ける反作用の予測値
・FZij:ホイールに対する垂直方向の力:ホイールの縦軸に沿って路面からホイールが受ける反作用の予測値
・μ=F/F:横方向性能
【0020】
i、j:ホイールのインデックス、第1インデックスはフロント/リアを表わし、第2インデックスは左/右を表わす
例えば、1、1はフロントの左ホイールを表わし、2、1はリアの左ホイールを表わし、2、2はリアの右ホイールを表わし、1、2はフロントの右ホイールを表わす。
【0021】
本制御方法は、5つの部分に細分化することができる構造である。
−入力信号(ブロック番号2−図1)
−垂直方向荷重Fの推定値(ブロック番号3−図1)
−基準モデル(ブロック番号4−図1)
−横方向荷重FYijの分配、即ち計算上のLFD(ブロック番号5−図1)
−基準モデルを反転させることによる所望の角度αijの計算(ブロック番号6−図1)
【0022】
各構成要素の説明
1−入力信号(ブロック番号2−図1)
本発明の方法を実施するために、次の測定値又は信号が必要である:
・車両の速度:この信号は、例えばアクスル/アクスルアセンブリのホイールの速度ABSの平均を取ることにより得られる。
・4つのホイールの切れ角αij:この信号は、例えば、センサによって得られる。
・車両の縦方向加速度γ:この信号は、例えば、センサによって又は推定によって得られる。
・車両の車幅方向加速度γ:この信号は、例えば、センサによって又は推定によって得られる。
【0023】
横方向加速度及び縦方向加速度の推定の実施例:
縦方向加速度は、観測器(センサを装備するシステム)によって、車両の速度、及び運転者の制動要求に基づき、次の原理に従って推定される:
運転者の要求によって、加速度の第1推定値γが与えられる。モデルの誤差をモデル化する、次式により表わされるモデル化誤差(質量誤差など)dが導入される。

上式中、(ν)は車両の測定速度を表わし、

は車両の推定速度を表わし、k、kはそれぞれ、フロントアクスルアセンブリ及びリアアクスルアセンブリに対する観測器の収束利得を表わす。
【0024】
第1推定値は、「Brake_Force_Request」と表記される運転者による制動設定ポイントを、Mass_Maxと表記される車両の最大質量で割ることにより得られる。特に、信号を小さく評価して荷重の伝達を小さく見積もることが好ましい。

(導出速度)/(ノイズの影響)の妥協点は、パラメータk及びkを操作することにより調整される。
【0025】
別の構成として、又は上述した車両の横方向加速度を計算するモードの補完として、この加速度は、センサによって、又はモデルを援用した推定によって得ることもできる。
車幅方向加速度は、例えば車両の2ホイールモデル(以下の方程式1を参照)により推定される。
【0026】
このために、本モデルは、次の方程式に従って、考察対象のアクスルアセンブリのホイールの平均切れ角の測定値α、及び車両の速度Vを使用する:

方程式1:2ホイールモデル
【0027】
本発明の特定の実施形態では、検証関数を取り入れてセンサ間の一貫性をチェックすることができる。
具体的には、フロントホイールの平均切れ角の測定値、車両速度Vの測定値、並びに縦方向加速度及び車幅方向加速度の測定値を利用できる場合、加速度計の信号と、2ホイールモデルによって、且つ観測器によって推定される加速度とを比較することにより、複数のセンサの間の一貫性を検証することができる。
【0028】
非一貫性が検出される場合、分配悪化モードを用いる。悪化モードでは、例えば荷重分配方式を完全に停止するか、又は中央処理ユニットに不一致信号を送信することができる。
【0029】
2−垂直方向荷重Fの推定(ブロック番号3−図1)
上記で詳述したブロック2で得られた縦方向加速度γ及び車幅方向加速度は、各ホイールの垂直方向荷重FZijの計算機能を有するブロック3に送信される。
これらの垂直方向荷重は、次の方程式により、縦方向及び横方向の動的荷重伝達特性、及び静的荷重を考慮することにより推定される。

方程式2:垂直方向荷重を推定する手順
上の式では、K及びKは車両のサスペンションに関連する係数である。
【0030】
3−基準モデル(ブロック番号4−図1)
ブロック番号3と並行して、ブロック番号4の機能は、車両のヨー加速度ψに加えて、車両の車幅方向加速度gammaT又はγ、及びヨーレート

を、ブロック番号2で得られるデータ、即ち車両の速度及びステアリングホイールの切れ角の測定値を使用して計算することである。
これらの計算は、例えば次の方程式によって定義することができる基準モデルを使用して行なわれる。

方程式3:基準モデルの例
このモデルでは、「s」は、一時的な過渡的現象を考慮することを可能にするラプラス変換を表わす。
【0031】
4−LFD(ブロック番号5−図1)
ブロック番号5では、ブロック番号3及び4で計算されるデータ、即ち各ホイールでの垂直方向荷重F、ヨー加速度、車幅方向加速度gammaT、及びヨーレートを使用して、各ステアリングホイールに加える必要のある荷重を求める。
横方向荷重の分配は、次の目標に叶うものでなければならない。
・所定のアクスルアセンブリの各ホイールijに関して、垂直方向荷重に対する横方向荷重の比によって定義される横方向性能がμに等しい(フロント又はリア)。
・運転者が要求する横方向加速度を達成する必要がある。
従って、分配は次の方程式を満たす必要がある。

方程式4:分配の方程式
これらの方程式を解くことにより、横方向荷重を分配できる。

方程式5:問題を解決する横方向荷重の分配
【0032】
グリップ力の変動を管理するために、荷重の飽和レベルを追加する必要がある。荷重の飽和レベルは、縦方向加速度及び車幅方向加速度等の車両の種々の測定変数によって変わり得る。
このブロック5の基本図は図3に詳細に描かれており、図3では、
−ブロック5の入力はブロック3から得られる4つの荷重FZijと、ブロック4から得られる車幅方向加速度gammaT_m、ヨーレートyaw_rate_mである。
−ブロック5の出力は路面から各ホイールに加わる車幅方向荷重である。
ブロック5は、フロントアクスルアセンブリのホイールに加わる車幅方向荷重を計算するサブブロック、及びリアアクスルアセンブリのホイールに加わる車幅方向荷重を計算するサブブロックから成る。
【0033】
フロントアクスルアセンブリのサブブロックで行われる演算では、ヨー加速度に距離L1を乗算することにより第1の結果が生成され、第1の結果が車幅方向加速度(gammaT_m)に加算されることにより第2の結果が生成される。次に、このようにして得られる第2の結果に、フロントアクスルアセンブリに分配される質量を乗算することにより第3の結果が生成される。並行して、このアクスルアセンブリのフロントホイールの垂直方向荷重を加算することにより第4の結果が生成される。次に、第3の結果を第4の結果で割ることにより第5の結果が生成される。
次に、この第5の結果にフロントアクスルアセンブリの一のホイールに加わる垂直方向荷重を乗算し、このホイールに加わる車幅方向荷重を確認する。
【0034】
リアアクスルアセンブリに加わる車幅方向荷重を計算するサブブロックは、リアアクスルアセンブリに加わる荷重を計算するサブブロックと、距離L1が距離L2に置き換わり、フロントアクスルアセンブリに分配される車両質量がリアアクスルアセンブリに分配される車両質量に置き換わり、ホイールに加わる垂直方向荷重がリアアクスルアセンブリのホイールに加わる垂直方向荷重に置き換わることを除いて同じである。
次に、ブロック5においてこのようにして得られたデータはブロック6に送信される。
【0035】
5−基準モデルを反転することによる所望角度の計算(ブロック番号6−図1)
このブロックの目的は、考察対象の基準モデル(例えば、ブロック番号4について説明したパート3、及びその基準モデルを参照)を反転して、車両に適用するべきホイールの角度を求めることである。
ブロック番号5について説明したパート4で計算された横方向荷重、並びにブロック番号2で得られる車両速度、車幅方向加速度gammaT及びヨーレートが、ブロック番号6のこの反転モデルの入力の一部を形成する。
【0036】
ブロック番号4のモデルを反転してステアリングホイールに適用される角度を取得する操作は次のように行なわれる:
−方程式Gに基づき、且つこの方程式の他の要素の全てが既知であることにより、

が得られ、
−次に、

を積分してdが得られ、
−これらの方程式の他の全ての要素が既知であるので、次いで、d11、d12、d21、d22が方程式Hによって得られ、
−次に、それぞれの方程式C、D、E、Fにおいて、d11、d12、d21、d22及びdにこれらの値を代入することにより、各ステアリングホイールに付与される角度方向αijの値を得ることができる。
【0037】
図2は、各ホイールに付与される操舵角を計算する変形例を示している。この変形例は、更に別の入力と、ホイールの4つの角度を計算する異なる方法とを使用するという点で異なっている。
この変形例では、ホイールに加わる4つの横方向荷重Fyi、jをセンサによって測定する。
【0038】
車両に適用されるべきホイールの角度は、前述したような基準モデルの反転ではなく、横方向荷重に追従する4つの値を援用して得られる。このような追従(図2のブロック番号6)は、例えば「PID」(比例積分微分)又は内部モデルにより実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】基準モデルを反転することにより各ステアリングホイールの切れ角を取得する、本発明の基本図を表わしている。
【図2】横方向荷重に追従することにより各ステアリングホイールの切れ角を取得する、本発明の基本図を示している。
【図3】図1及び2に参照番号5で示されるサブブロック(ブロックLFDと表記)であって、各ステアリングホイールに加わる横方向且つ車幅方向荷重の計算を可能にするサブブロックの基本図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が他のホイールから独立して固有の方向角度に方向付けることが可能な、車両のアクスルアセンブリに接続された少なくとも2つのステアリングホイールを備える駆動状態の車両の操舵方向の制御方法であって、横方向加速度設定ポイントを収集するステップ、及び前記横方向加速度設定ポイントの関数として各ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算するステップを含み、ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算する処理の間に、前記アクスルアセンブリのホイールの路面に対するグリップ力μの差が限界値よりも小さくなるように、これらホイールの各々について方向設定ポイントを計算することを特徴とする、方法。
【請求項2】
各々が他のホイールから独立して固有の方向角度に方向付けることが可能な4つのステアリングホイールを備える車両であって、これらホイールの内、2つが車両のフロントアクスルアセンブリに接続され、他の2つが車両のリアアクスルアセンブリに接続されている車両に対して実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法であって、更に、ステアリングホイールの方向設定ポイントを計算する処理の間に、
−フロントアクスルアセンブリのホイールの路面に対するグリップ力の差が前記第1限界値よりも小さくなるように、これらホイールの各々について方向設定ポイントを計算し、且つ
−リアアクスルアセンブリのホイールの路面に対するグリップ力の差が第2限界値よりも小さくなるように、これらホイールの各々について方向設定ポイントを計算すること
を特徴とする方法。
【請求項3】
式μ=F/Fを適用することによりホイールのグリップ力μを計算し、ここでFは路面によってこのホイールに加わる車幅方向の力を表わし、Fは路面によってこのホイールに加わる垂直方向の力を表わすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
ホイールに加わる垂直方向の力を、車両の縦方向加速度及び車幅方向加速度に少なくとも基づいて、車両の静的荷重、並びに長さ方向及び車幅方向の動的荷重の伝達を考慮することにより推定することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
車両の縦方向加速度及び車幅方向加速度の内の少なくとも一方を、少なくとも一つのセンサから供給される測定信号により構成するか、又は当該測定信号から導出することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
車両の縦方向加速度を、車両の瞬間速度の少なくとも一つの測定値に基づいて取得することを特徴とする、請求項4又は5に記載の制御方法。
【請求項7】
車両の車幅方向加速度を、車両の瞬間速度の測定値、及びこの車両のステアリングホイールの回転角度の測定値に基づいて推定することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
車両のフロントアクスルアセンブリの第1ホイールのグリップ力μを、関数

を使用して計算し、ここでFz11は、路面によりフロントアクスルアセンブリのこの第1ホイールに加わる垂直方向の力を表わし、Fz12は、路面によりこのフロントアクスルアセンブリの第2ホイールに加わる垂直方向の力を表わし、Mfrontは、このフロントアクスルアセンブリに分配される車両総質量を表わし、γは、この車両の重心(G)で測定又は評価される車両の横方向加速度を表わし、Lは、車両のフロントアクスルアセンブリと重心Gの間の距離を表わし、ψは、車両のヨー運動の加速度を表わすことを特徴とする、請求項2と組み合わせた前記請求項のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
車両のリアアクスルアセンブリの第1ホイールのグリップ力μを、関数

を使用して計算し、ここでFz21は、路面によってリアアクスルアセンブリのこの第1ホイールに加わる垂直方向の力を表わし、Fz22は、路面によってこのリアアクスルアセンブリの第2ホイールに加わる垂直方向の力を表わし、Mrearは、このリアアクスルアセンブリに分配される車両総質量を表わし、γは、この車両の重心(G)で測定又は評価される車両の横方向加速度を表わし、Lは、車両のリアアクスルアセンブリと重心(G)の間の距離を表わし、ψは、車両のヨー運動の加速度を表わすことを特徴とする、請求項2と組み合わせた前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各ステアリングホイールの方向の設定ポイントを、基準計算モデルを反転することにより計算し、前記モデルが、ホイールに加わる車幅方向の力を、このホイールの方向、及び車両の動的挙動のパラメータの関数として計算する演算を含むことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−502621(P2009−502621A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523418(P2008−523418)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050559
【国際公開番号】WO2007/012770
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】