説明

車両の検出方法及び装置

【課題】検知エリア内の車両を確実に追尾することができる車両の検出方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る車両の検出方法は、検知エリアSの入口に初期検知エリアPを設定し、レーザ光Lの第n次走査結果(nは1以上の整数)から初期検知エリアPに存在する車両1を追尾対象車両1xと設定するとともに追尾対象車両1xの初期位置を把握し、初期位置から追尾サーチエリアCを設定し、レーザ光Lの第n+1次走査結果から追尾サーチエリアCに含まれる車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上に存在する車両を検出するための車両の検出方法及び装置に関し、特に、初期検出された車両の追尾に適した車両の検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路の渋滞情報や事故情報等は円滑な交通を確保するために重要な情報となっている。これらの情報は、交通量、渋滞末尾位置、停止車両等を検出することによって提供される。かかる車両の検出方法として、例えば、特許文献1に記載された発明が提案されている。特許文献1に記載された発明は、レーザレーダを用いた移動体の検出方法であって、検出結果にIDを付し、速度による予測及び移動体の大きさ等を判定し、フレーム間の検出結果の同一性を判定するようにしている。
【特許文献1】特開2004−280372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された検出方法では、検出結果の同一性を判断するに際し、検出速度から未来位置を予測する旨は記載されているものの具体的な手段が記載されていない。特に、検知エリアにおいて新規検出された車両については、速度を計測することができないため、未来位置を予測することができない。したがって、新規検出された車両を次のフレームでどのようにして同一車両を検出するかが問題となる。
【0004】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、検知エリア内の車両を確実に追尾することができる車両の検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、道路上に設定された検知エリアにレーザ光を走査して前記検知エリア内に進入した車両を検出する車両の検出方法であって、前記検知エリアの入口に初期検知エリアを設定し、前記レーザ光の第n次走査結果(nは1以上の整数)から前記初期検知エリアに存在する車両を追尾対象車両と設定するとともに該追尾対象車両の初期位置を把握し、該初期位置から追尾サーチエリアを設定し、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断する、ことを特徴とする車両の検出方法が提供される。
【0006】
前記検知エリアにおいて初期検出された車両について、該車両を検出したレーザ光の第n次走査結果から追尾対象車両に設定するとともに該追尾対象車両の初期位置を把握し、該初期位置から少なくとも道路の進行方向に追尾サーチエリアを設定し、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断するようにしてもよい。また、前記追尾サーチエリアを前記追尾対象車両の前後に設定してもよい。
【0007】
前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両が存在しない場合には、前記初期位置及び前記追尾サーチエリアに近い車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断するようにしてもよい。
【0008】
新規検出された車両以外の追尾対象車両については、前記レーザ光の第n次走査結果及び第n+1次走査結果から前記追尾対象車両の速度を算出し、前記レーザ光の第n+2次走査時における前記追尾対象車両の予測移動エリアを算出し、前記レーザ光の第n+2次走査結果から前記予測移動エリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断することが好ましい。また、前記レーザ光の第n+2次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両が存在しない場合には、前記第n+1次走査結果及び前記予測移動エリアに近い車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断するようにしてもよい。
【0009】
前記レーザ光の第n+1次走査結果において初期検出された車両であるか否かは、第n次走査結果における追尾対象車両と同一車両と判断される車両を除外してから判断するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明によれば、道路上に設定された検知エリアにレーザ光を走査して前記検知エリア内に進入した車両を検出する車両の検出装置であって、前記検知エリアにレーザ光を照射するとともに物体からの反射光を受光して前記検知エリア内の物体の距離を測定するレーザ距離測定装置と、該レーザ距離測定装置の計測データから車両を検出する車両検出部と、該車両検出部の検出結果を外部機器に出力するデータ送信部と、を有し、前記車両検出部は、前記検知エリアの入口に初期検知エリアを設定し、前記レーザ光の第n次走査結果(nは1以上の整数)から前記初期検知エリアに存在する車両を追尾対象車両と設定するとともに該追尾対象車両の初期位置を把握し、該初期位置から追尾サーチエリアを設定し、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断することにより車両の検出処理を行う、ことを特徴とする車両の検出装置が提供される。
【0011】
前記車両検出部は、前記検知エリアにおいて初期検出された車両について、該車両を検出したレーザ光の第n次走査結果から追尾対象車両に設定するとともに該追尾対象車両の初期位置を把握し、該初期位置から少なくとも道路の進行方向に追尾サーチエリアを設定し、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断するようにしてもよい。また、前記追尾サーチエリアを前記追尾対象車両の前後に設定してもよい。
【0012】
前記車両検出部は、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両が存在しない場合には、前記初期位置及び前記追尾サーチエリアに近い車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断するようにしてもよい。
【0013】
前記車両検出部は、新規検出された車両以外の追尾対象車両については、前記レーザ光の第n次走査結果及び第n+1次走査結果から前記追尾対象車両の速度を算出し、前記レーザ光の第n+2次走査時における前記追尾対象車両の予測移動エリアを算出し、前記レーザ光の第n+2次走査結果から前記予測移動エリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断することが好ましい。また、前記レーザ光の第n+2次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両が存在しない場合には、前記第n+1次走査結果及び前記予測移動エリアに近い車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断するようにしてもよい。
【0014】
前記車両検出部は、前記レーザ光の第n+1次走査結果において初期検出された車両であるか否かは、第n次走査結果における追尾対象車両と同一車両と判断される車両を除外してから判断するようにしてもよい。
【0015】
前記データ送信部は、前記検出結果の出力時間に合わせて前記車両検出部の検出結果を補正して前記外部機器に送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明の車両の検出方法及び装置によれば、初期検知エリアで検出された追尾対象車両に対して追尾サーチエリアを設定したことにより、追尾対象車両の速度が不明な場合であっても次のレーザ光の走査結果から追尾対象車両を検出することができ、追尾対象車両を確実に追尾することができる。また、検知エリア内においては追尾対象車両の速度から予測移動エリアを設定したことにより、追尾対象車両を追尾することができる。
【0017】
また、検知エリアにおいて初期検出された車両に対して追尾サーチエリアを適用することにより、追尾対象車両の速度が不明な場合であっても次のレーザ光の走査結果から追尾対象車両を検出することができ、大型車両の影に隠れて初期検知エリアをすり抜けた車両を追尾することができる。特に、追尾サーチエリアを車両の前後に設定することにより、車両の進行方向が不明な場合であっても確実に追尾対象車両を追尾することができる。
【0018】
また、レーザ光の第n+1次走査結果において初期検出された車両であるか否かは、第n次走査結果における追尾対象車両と同一車両と判断される車両を除外してから判断することにより、容易に初期検出された車両であるか否かを判断することができる。
【0019】
さらに、検出結果を外部機器に出力する場合に、出力時間に合わせて出力結果を補正して送信することにより、擬似的なリアルタイムの情報を外部機器に出力することができ、出力結果の利用者に対してリアルタイムの情報を提供することができ、利便性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1〜図9を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係る車両の検出方法を示す図であり、(A)は初期検知エリアを設定した状態、(B)は第n次走査結果から初期検知エリアで車両を検出した状態、(C)は追尾サーチエリアを設定した状態、(D)は第n+1次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、を示している。
【0021】
図1に示した本発明に係る車両の検出方法は、道路R上に設定された検知エリアSにレーザ光Lを走査して検知エリアS内に進入した車両1を検出する車両1の検出方法であり、検知エリアSの入口に初期検知エリアPを設定し、レーザ光Lの第n次走査結果(nは1以上の整数)から初期検知エリアPに存在する車両1を追尾対象車両1xと設定するとともに追尾対象車両1xの初期位置を把握し、初期位置から追尾サーチエリアCを設定し、レーザ光Lの第n+1次走査結果から追尾サーチエリアCに含まれる車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する。
【0022】
前記道路Rは、図1(A)に示すように、車線R1と対向車線R2とを有し、それぞれ一車線により構成されている。車線R1は車両1の進行方向が図の右向きの車線であり、対向車線R2は車両1の進行方向が図の左向きの車線である。また、前記レーザ光Lは、道路Rの脇に配置されたレーザ距離測定装置2により検知エリアS及び初期検知エリアPに照射される。
【0023】
前記検知エリアSは、図1(A)に示したように、道路Rの両車線R1,R2に渡って設定されており、その車線方向幅Wsは、例えば、100〜150mに設定される。また、初期検知エリアPは、車線R1及び対向車線R2の各入口に両車線R1,R2に渡って設定されており、その車線方向幅Wpは、例えば、10〜15mに設定される。初期検知エリアPの車線方向幅Wpは、道路Rを走行する車両1が出し得る速度vとレーザ光Lの走査間隔tとから、道路Rを走行する車両1を必ず初期検知エリアPで検出できるように設定することが好ましい。例えば、速度vが120km/時で走査間隔tが0.3秒の場合には車線方向幅Wpは10mに設定され、速度vが180km/時で走査間隔tが0.3秒の場合には車線方向幅Wpは15mに設定される。
【0024】
レーザ距離測定装置2の第n次走査結果を図1(B)に示す。ここで、走査結果とは、レーザ距離測定装置2で初期検知エリアP及び検知エリアSを一通りレーザ光Lで走査した結果を意味し、第n次とはn回目のレーザ光Lの照射であることを意味している。なお、走査結果のことをフレームと呼ぶこともある。今、図1(B)に示すように、第n次走査結果により、初期検知エリアP,Pに車両1,1が進入したことを検出したとする。
【0025】
初期検知エリアPで検出された車両1は、データが一つしかないため、車両1の速度を算出することができない。車両1の速度は、2つの検出結果から車両1の移動距離を求め、レーザ光Lの走査間隔tから算出されるためである。したがって、第n次走査結果で検出された車両1の第n+1次走査結果の予測移動位置を推測することができない。そこで、本発明では、図1(C)に示すように、追尾サーチエリアCを導入している。追尾サーチエリアCは、道路Rに沿った長さCxと各車線R1,R2に渡った横幅Cyとを有する。長さCxは、道路Rを走行する車両1が出し得る速度vとレーザ光Lの走査間隔tとから設定される。次のレーザ光Lの走査(第n+1次走査結果)で確実に車両1を検出するためには、速度vは最高速度に設定することが好ましいが、道路Rにおける平均速度や第n次走査結果により算出された他の車両の速度を利用して算出した速度に設定してもよい。追尾サーチエリアCは、図1(C)に示すように、長さCxの先端側で拡大した形状であってもよいし、長さCxと横幅Cyを有する矩形形状であってもよい。
【0026】
次に、図1(C)に示した状態に至るまでの処理について説明する。まず、図1(B)の第n次走査結果により検出された車両1を追尾対象車両1xと設定し、その初期位置を特定する。そして、第n+1次走査結果において追尾対象車両1xの初期位置から追尾サーチエリアCを設定する。このとき、車線R1及び対向車線R2における初期検知エリアPにおいて検出された各車両1はそれぞれ進行方向が特定できるため、図1(C)に示すように、追尾サーチエリアCは、それぞれ各車線R1,R2の進行方向に展開するように設定される。
【0027】
そして、図1(D)に示すように、第n+1次走査結果から各追尾サーチエリアCに全体又は一部が含まれる車両1cを検出する。車線R1の追尾サーチエリアCにおいて検出された車両1cは全体が追尾サーチエリアCに含まれているため、直ちに追尾対象車両1xと同一車両であると判断され、車両1cが追尾対象車両1xとして認識される。具体的には、追尾対象車両1xが初期検出された時点で所定の認識IDが付与されており、車両1cがそのIDを引き継ぐ。なお、ID引継処理の具体的な内容については処理フローを用いて後述する。
【0028】
一方、対向車線R2のように、レーザ光Lの第n+1次走査結果から追尾サーチエリアCに全体が含まれる車両が存在しない場合には、追尾対象車両1xの初期位置及び追尾サーチエリアCに近い車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する。したがって、対向車線R2の追尾サーチエリアCに一部が含まれる車両1cが存在する場合には、その車両1cが追尾対象車両1xの初期位置に近い場合に追尾対象車両1xと同一車両であると判断され、車両1cが追尾対象車両1xとして認識される。勿論、追尾サーチエリアCに一部が含まれる車両1cが1台しか存在しない場合には、直ちに追尾対象車両1xと同一車両であると判断され、追尾サーチエリアCに一部が含まれる車両1cが複数台存在している場合には、追尾対象車両1xの初期位置に最も近い車両1cが追尾対象車両1xと同一車両であると判断される。
【0029】
このように、本発明では、初期検知エリアPで検出された追尾対象車両1xに対して追尾サーチエリアCを設定したことにより、追尾対象車両1xの速度が不明な場合であっても次のレーザ光Lの走査結果から追尾対象車両1xを検出することができ、追尾対象車両1xを確実に追尾することができる。
【0030】
次に、追尾サーチエリアCで検出された追尾対象車両1xを検知エリアS内で追尾する方法について説明する。ここで、図2は、検知エリアにおける車両の検出方法を示す図であり、(A)は予測移動エリアを設定した状態、(B)は第n+2次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、(C)は第n+3次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、を示している。
【0031】
図2は、図1(D)に示した第n+1次走査結果により追尾対象車両1xが検出された後、第n+2次走査結果から追尾対象車両1xを検出する処理を示している。具体的には、図1(B)の第n次走査結果及び図1(D)の第n+1次走査結果から追尾対象車両1xの速度を算出し、レーザ光Lの第n+2次走査時における追尾対象車両1xの予測移動エリアEを算出し、レーザ光Lの第n+2次走査結果から予測移動エリアEに含まれる車両1eを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する処理である。
【0032】
まず、図2(A)に示すように第n+2次走査結果において予測移動エリアEを設定する。予測移動エリアEは、図1(B)の第n次走査結果及び図1(D)の第n+1次走査結果から追尾対象車両1xの速度を算出し、レーザ光Lの走査間隔tから追尾対象車両1xの移動位置を予測して設定される。このとき、予測移動エリアEは、追尾対象車両1xの大きさよりも若干大きく設定されることが好ましい。レーザ光Lの走査間隔tは、例えば、0.3秒という短い間隔であるが、その間に追尾対象車両1xが若干左右に移動したり、追尾対象車両1xの実際の速度が算出された速度よりも若干速くなったり遅くなったりすることを考慮したものである。
【0033】
そして、図2(B)に示すように、第n+2次走査結果から各予測移動エリアEに全体又は一部が含まれる車両1eを検出する。車線R1の予測移動エリアEにおいて検出された車両1eは全体が予測移動エリアEに含まれているため、直ちに追尾対象車両1xと同一車両であると判断され、車両1eが追尾対象車両1xとして認識される。
【0034】
一方、対向車線R2のように、レーザ光Lの第n+2次走査結果から予測移動エリアEに全体が含まれる車両が存在しない場合には、追尾対象車両1xの第n+1次走査結果における検出位置及び予測移動エリアEに近い車両1eを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する。したがって、対向車線R2の予測移動エリアEに一部が含まれる車両1eが存在する場合には、その車両1eが追尾対象車両1xの第n+1次走査結果における検出位置に近い場合に追尾対象車両1xと同一車両であると判断され、車両1eが追尾対象車両1xとして認識される。勿論、予測移動エリアEに一部が含まれる車両1eが1台しか存在しない場合には、直ちに追尾対象車両1xと同一車両であると判断され、予測移動エリアEに一部が含まれる車両1eが複数台存在している場合には、追尾対象車両1xの第n+1次走査結果における検出位置に最も近い車両1eが追尾対象車両1xと同一車両であると判断される。
【0035】
また、第n+2次走査結果以降の検知エリアSにおいては、追尾対象車両1xの速度のみならず進行方向(ベクトル)も算出することができるため、予測移動エリアEを略正確に設定することができる。例えば、図2(C)における車線R1において追尾対象車両1xは、路肩に車両を停止させようとして車線R1の左端に寄っている状態である。このような状態であっても、第n+3次走査結果において、追尾対象車両1xの第n+1次走査結果と第n+2次走査結果の速度及び進行方向を参酌することにより予測移動エリアEを図2(C)に示したように設定することができる。
【0036】
次に、車両が初期検知エリアPをすり抜けて検知エリアSにおいて初期検出された場合について説明する。ここで、図3は、検知エリアにおいて車両が初期検出された場合の処理を示す図であり、(A)は車両が初期検知エリアをすり抜ける状態、(B)第n次走査結果から検知エリアで車両を検出した状態、(C)は追尾サーチエリアを設定した状態、(D)は第n+1次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、を示している。
【0037】
図3(A)は、第n次走査結果の初期検知エリアPにおいて、大型車両1bの陰に隠れた潜伏車両1hが存在している状態を示している。このように、潜伏車両1hとレーザ距離測定装置2との間にトラック等の大型車両1bが介在している場合には、潜伏車両1hにレーザ光Lが照射されず、潜伏車両1hを検出することができない。したがって、潜伏車両1hは初期検知エリアPをすり抜けてしまうこととなる。そして、例えば、図3(B)に示したように、潜伏車両1hにレーザ光Lが照射され得る状態になった時点で潜伏車両1hはレーザ距離測定装置2により初期検出される。かかる潜伏車両1hは、検知エリアSが設定される道路Rが複車線である場合に存在し易い。
【0038】
図3(B)は、第n+1次走査結果を示している。大型車両1bについては、図1の説明と同様の処理に基づいて、追尾対象車両1xとして認識され、その初期位置から追尾サーチエリアCが設定されている。そして、追尾サーチエリアCに全体が含まれている車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する。図3(B)では追尾サーチエリアCに潜伏車両1hの一部が含まれているが、ここでは全体が含まれている車両1cが存在しているため、車両1cが優先的に追尾対象車両1xと同一車両であると判断される。このとき、レーザ距離測定装置2では車両1の大きさを検出することもできるため、追尾対象車両1xの大きさを考慮して車両1cを追尾対象車両1xと同一車両と判断するようにしてもよい。また、図3(B)において、潜伏車両1hについては、該当する追尾対象車両1xが第n次走査結果に存在しないため、第n+1次走査結果において初期検出された追尾対象車両1xと判断され、所定の認識IDが付与される。
【0039】
図3(C)は、第n+2次走査結果を示している。なお、追尾対象車両1xであった大型車両1bについては説明の便宜上、図を省略した。図3(C)に示すように、検知エリアSにおいて初期検出された潜伏車両1hについて、潜伏車両1hを検出したレーザ光の第n+1次走査結果から追尾対象車両1xに設定するとともに追尾対象車両1xの初期位置を把握し、その初期位置から追尾対象車両1xの前後に追尾サーチエリアC,Cを設定する。ここで、追尾対象車両1xは検知エリアS内の車線R1において初期検出されているが、検知エリアSでは車線R1と対向車線R2とを区別していないため、追尾対象車両1xの進行方向が不明である。そこで、追尾対象車両1xの前後に追尾サーチエリアC,Cを設定し、どちらの進行方向であっても追尾対象車両1xを検出できるようにしている。勿論、追尾対象車両1x(車両1h)が初期検出された位置から車線を割り出し、その車線の進行方向にのみ追尾サーチエリアCを設定するようにしてもよい。
【0040】
そして、図3(D)に示すように、レーザ光Lの第n+2次走査結果から追尾サーチエリアCに含まれる車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断し、認識IDを車両1cに引き継ぐ。なお、図3の説明では潜伏車両1hが初期検知エリアPをすり抜ける第n次走査結果から説明したため、第n+1次走査結果において潜伏車両1hを追尾対象車両1xとして判断しているが、潜伏車両1hを初期検出した走査結果を第n次走査結果とすれば、検知エリアPにおいて初期検出された潜伏車両1hについて、潜伏車両1hを検出したレーザ光の第n次走査結果から追尾対象車両1xに設定するとともに追尾対象車両1xの初期位置を把握し、その初期位置から追尾対象車両1xの前後に追尾サーチエリアCを設定し、レーザ光Lの第n+1次走査結果から追尾サーチエリアCに含まれる車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断することとなる。その後の追尾対象車両1xの検出方法については、図2に示した説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、初期検知エリアPの設定方法の変形例について説明する。ここで、図4は、初期検知エリアの設定方法の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、である。
【0042】
図4(A)に示した第一変形例は、同じ進行方向の2つの車線R1,R1を有する二車線の道路Rに初期検知エリアPを設定した場合を示している。この場合、検知エリアSに進入する車両は全て同じ進行方向(図の矢印方向)であるため、検知エリアSの片側の入口にのみ初期検知エリアPを設定している。また、かかる道路Rにおいて、初期検知エリアPをすり抜けて検知エリアSで初期検出された車両が存在する場合には、車両の進行方向が一方向であるため、車両の前方にのみ追尾サーチエリアCを設定することもできる。
【0043】
図4(B)に示した第二変形例は、図1に示した道路Rと同様に、車線R1と対向車線R2を有する道路Rの各車線R1,R2に初期検知エリアPを設定した場合を示している。この変形例では、各車線R1,R2の検知エリアSの入口にのみそれぞれに対応した初期検知エリアPを設定している。このように初期検知エリアPを設定した場合であっても、図1に示した検出方法と同様の処理により車両を検出することができる。なお、車線R1の初期検知エリアPに隣接した対向車線R2のエリア又は対向車線R2の初期検知エリアPに隣接した車線R1のエリアを検知エリアSに設定してもよい。
【0044】
続いて、本発明に係る車両の検出装置について説明する。ここで、図5は、本発明に係る車両の検出装置を示す構成図である。また、図6は、車両の検出状況を示す外観図である。
【0045】
図5に示すように、本発明の車両の検出装置は、道路R上に設定された検知エリアSにレーザ光Lを走査して検知エリアS内に進入した車両1を検出する車両1の検出装置であり、検知エリアSにレーザ光Lを照射するとともに物体からの反射光L´を受光して検知エリアS内の物体の距離を測定するレーザ距離測定装置2と、レーザ距離測定装置2の計測データから車両1を検出する車両検出部3と、車両検出部3の検出結果を外部機器5に出力するデータ送信部4と、を有し、車両検出部3は、検知エリアSの入口に初期検知エリアPを設定し、レーザ光Lの第n次走査結果(nは1以上の整数)から初期検知エリアPに存在する車両1を追尾対象車両1xと設定するとともに追尾対象車両1xの初期位置を把握し、初期位置から追尾サーチエリアCを設定し、レーザ光Lの第n+1次走査結果から追尾サーチエリアCに含まれる車両1cを追尾対象車両1xと同一車両であると判断する。
【0046】
前記レーザ距離測定装置2は、レーザ光Lの発光と同時に発光同期信号iを発信する投光部21と、レーザ光Lを水平方向に走査させるポリゴンミラー22と、レーザ光Lを垂直方向に走査させる平面ミラー23と、レーザ光L及び反射光L´を透過させる照射窓24と、反射光L´を受光して受光信号jを発信する受光部25と、発光同期信号i及び受光信号jを受信して投光されたレーザ光Lが物体に反射して受光されるまでの時間(以下、「飛光時間Δt」と称する)を計測する時間計測部26と、受光信号jと投光条件等を関連付けた計測データdを車両検出部3に送信する信号処理部27と、を有している。
【0047】
前記投光部21は、検知エリアS及び初期検知エリアP内の物体に対してレーザ光Lを発光して照射する機器である。かかる投光部21は、例えば、光源となるレーザダイオード21aと、レーザ光Lをコリメートする投光レンズ21bと、レーザダイオード21aを操作するLDドライバ21cとから構成される。LDドライバ21cは、信号処理部27からのトリガー信号kに基づいてレーザ光Lを発光するようにレーザダイオード21aを操作し、レーザ光Lの発光と同時にパルス状の発光同期信号iを時間計測部26及び信号処理部27に発信する。なお、発光同期信号iは、トリガー信号kにより代用するようにしてもよい。
【0048】
投光レンズ21bを透過したレーザ光Lは、回転駆動されるポリゴンミラー22と回動駆動される平面ミラー23とにより構成される光学系により、略水平方向及び略鉛直方向に走査される。前記ポリゴンミラー22は、例えば、6面体の4側面が鏡面化されており、対峙する2面(上下面)の中心を回転軸としてモータ22aにより高速回転されるように構成されている。モータ22aは、モータドライバ22bにより操作される。前記平面ミラー23は、例えば、モータ23aにより回動される回動軸の側面に接続されている。モータ23aは、モータドライバ23bにより操作される。また、モータドライバ22b,23bは、信号処理部27からの信号により制御されるとともに、スキャン角度やスイング角度等の投光条件信号を信号処理部27に発信する。なお、かかる光学系は単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0049】
前記受光部25は、物体に照射されたレーザ光Lの反射光L´を受光する機器である。ここでは、投光部21と受光部25を個別に設けて投光軸と受光軸とがずれるように構成しているが、投光軸と受光軸とが一致するように投光部21と受光部25が一体に形成されていてもよい。かかる受光部25は、例えば、反射光L´を集光する受光レンズ25aと、集光された反射光L´を受光して電圧に変換する光電変換素子25bと、増幅・圧縮・デコード等の処理を施す機器等を有する受光部本体25cとから構成される。照射窓24を透過した反射光L´は、投光されるレーザ光Lと同様に、ポリゴンミラー22及び平面ミラー23を介して受光レンズ25aに導かれる。そして、反射光L´を受光した受光部本体25cは、電圧値に変換された受光信号jを時間計測部26に発信する。なお、光電変換素子25bは、受光素子とも呼ばれる部品であり、例えば、フォトダイオードが使用される。
【0050】
前記時間計測部26は、時間を計測する時計機能を有しており、発光同期信号iの受信により時間の計測を開始し、受光信号jを受信した時間を把握することによって、レーザ光Lの飛光時間Δtを計測する。また、時間計測部26は、計測した飛光時間Δtと受光信号jとを関連付けて信号処理部27に送信する。
【0051】
前記信号処理部27は、受信した飛光時間Δtと光の速度から受光信号jを距離データに変換し、距離データ信号を生成する。受光信号jは、例えば、(光の速度)×(飛行時間Δt)/2の計算式により距離データに変換される。距離データ信号は、ポリゴンミラー22のスキャン角度や平面ミラー23のスイング角度等の投光条件と関連付けられて車両検出用の計測データdとして車両検出部3に発信される。このように距離データ信号と投光条件等を関連付けることによって、レーザ光Lを反射した物体の形状、位置、距離、高さ等を把握することができ、車両1や車種の判別をすることができる。
【0052】
前記車両検出部3は、例えば、レーザ距離測定装置2のレーザレーダヘッド2aから離隔して配置された制御装置2bに配置されており、計測データdから物体の形状、位置、距離、高さ等の情報を算出して車両1の存在を検出する。例えば、車両1の高さ情報は、特許第3472815号に記載された方法により算出され、所定の高さ閾値以上の計測データdを抽出してグループ化し、車両1や車種等を識別して検出する。この高さ情報や形状から、大型トレーラー、トラック、バン、普通自動車、軽自動車、二輪車、歩行者等を識別することができる。また、車両検出部3は、計測データdに基づいて検知エリアS及び初期検知エリアP内の画像を生成する画像処理機能を有し、データ送信部4を介して測定結果をディスプレイ、プリンタ、警報機等の外部機器5に出力することができるように構成されている。なお、車両検出部3は、ポリゴンミラー22のスキャン角度やスキャン速度、平面ミラー23のスイング角度やスイング速度、レーザ光Lのトリガー信号の発信タイミング等を制御する機能も有しており、これらの制御信号hを信号処理部27に発信している。
【0053】
前記データ送信部4は、制御装置2bから離隔して配置された外部機器5に車両検出部3の検出結果を出力する。レーザ光Lの反射光L´を受光して車両検出部3が検出結果を算出するまでには一定の時間を要する。また、車両検出部3の検出結果を外部機器5に出力するまでデータを一定時間蓄積する場合もある。すなわち、レーザ光Lの反射光L´を受光してから外部機器5に検出結果を出力するまでの間に時間差が生じる。したがって、外部機器5に出力された情報はリアルタイムの情報ではなく、時間差分だけ遅れた情報となる。一方、本発明では車両1の速度情報やベクトル情報を取得しているため、時間差分だけ車両1の位置を補正して出力することが可能である。そこで、データ送信部4に、検出結果の出力時間に合わせて車両検出部3の検出結果を補正して外部機器5に送信することが好ましい。勿論、時間差が数秒又は1秒以下のように短時間の場合には、検出結果を補正することなく外部機器5に送信してもよい。また、補正前の検出結果をハードディスク等の記憶装置に保存しておき、分析等のために後から検出結果を出力できるようにしてもよい。
【0054】
上述したレーザ距離測定装置2は、例えば、図6に示したように、検知エリアSが設定される道路Rの脇に立設された支柱2cにレーザレーダヘッド2aが配置され、略水平方向及び略垂直方向にスキャンしながら検知エリアS及び初期検知エリアPにレーザ光Lを照射し、道路R上の物体(例えば、車両1)の反射光L´を受光することができるように構成されている。なお、支柱2cは、レーザレーダヘッド2aが検知エリアS及び初期検知エリアPを俯瞰して全面にレーザ光Lを照射できる構成であればよく、図示した構成に限定されるものではない。
【0055】
続いて、車両検出部3の処理フローについて説明する。ここで、図7〜図9は、車両検出の処理フローを示す図であり、図7は第n次フレームに追尾対象車両が存在しない場合の処理フロー、図8は第n次フレームで予測移動エリアを設定した追尾対象車両のID引継処理を行う場合の処理フロー、図9は第n次フレームで追尾サーチエリアを設定した追尾対象車両のID引継処理を行う場合の処理フロー、である。なお、各処理フローは、図1〜図3に示した車両の検出方法を実行する処理フローである。
【0056】
第n次フレームの車両検出処理が終了し、次の第n+1次フレームの処理を行う場合について説明する。図7に示すように、車両検出部3は、まず第n次フレームに追尾対象車両1xが存在するか否かを確認する(Step1)。第n次フレームに追尾対象車両1xが存在する場合(Y)には、処理フローAへ移行する。第n次フレームに追尾対象車両1xが存在しない場合(N)には、第n+1次フレームにおいて検出された車両1は全て新規検出された車両1である。したがって、車両検出部3は、第n+1次フレームにおいて検出された車両1に新規の認識IDを付与する(Step2)。この時点で車両1は追尾対象車両1xとして設定される。次に、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出されたか否かを確認する(Step3)。そして、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出された場合(Y)には追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前方に展開する(Step4)。また、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出されていない場合(N)、すなわち、検知エリアSで検出された場合には、追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前後に展開する(Step5)。なお、Step5において、車線情報を利用してStep4と同様に追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前方にのみ展開するようにしてもよい。
【0057】
次に、処理フローAについて説明する。図8に示すように、車両検出部3は、まず第n次フレームの追尾対象車両1xが第n次フレームで新規検出された追尾対象車両1xであるか否かを確認する(Step1)。第n次フレームの追尾対象車両1xが第n次フレームで新規検出された追尾対象車両1xである場合(Y)には、処理フローBへ移行する。第n次フレームの追尾対象車両1xが第n次フレームで新規検出された追尾対象車両1xでない場合(N)には、この追尾対象車両1xには第n次フレームにおいて予測移動エリアEが展開されている。したがって、車両検出部3は、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの予測移動エリアEに全体が含まれる車両1eであるか否かを確認する(Step2)。そして、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの予測移動エリアEに全体が含まれる車両1eである場合(Y)には、その予測移動エリアEが設定された追尾対象車両1xと同一車両であると判断してID引継処理を行う(Step3)。さらに、ID引継処理がなされた追尾対象車両1xに対しては、第n+1次フレームと第n次フレームとから予測移動エリアEを新たに算出して展開する(Step4)。
【0058】
また、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの予測移動エリアEに全体が含まれる車両1eでない場合(N)、例えば、車両1が予測移動エリアEに一部のみ含まれる車両1eである場合には、第n次フレームの検出結果に近いか否かを確認する(Step5)。このStep5は、特に、予測移動エリアEに一部が含まれる車両1eが複数台存在する場合に有効に作用する。そして、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの検出結果に近い場合(Y)には、その予測移動エリアEが設定された追尾対象車両1xと同一車両であると判断してID引継処理を行う(Step3)。予測移動エリアEに一部が含まれる車両1eが複数台存在する場合には、最も近い車両1eを選択してID引継処理を行う。
【0059】
また、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの検出結果に近くない場合(N)、すなわち、Step5においてID引継処理のなされなかった場合には、検知エリアSにおいて新規検出された車両1hであると判断し、新規の認識IDを付与する(Step6)。この時点で車両1は追尾対象車両1xとして設定される。そして、追尾対象車両1xは検知エリアSで初期検出されているため、追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前後に展開する(Step7)。なお、Step7において、車線情報を利用して追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前方にのみ展開するようにしてもよい。ところで、道路Rが渋滞している場合には、予測移動エリアEが必ずしも検知エリアSに展開されるとは限らない。一方、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出された場合には、追尾対象車両1xの進行方向を把握することができる。そこで、処理フローAのStep7は、図7に示した処理フローのStep3〜Step5に置き換えるようにしてもよい。
【0060】
次に、処理フローBについて説明する。処理フローBは、第n次フレームの追尾対象車両1xが第n次フレームで新規検出された追尾対象車両1xである場合の処理フローである。したがって、図9に示すように、車両検出部3は、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの追尾サーチエリアCに全体が含まれる車両1cであるか否かを確認する(Step1)。そして、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの追尾サーチエリアCに全体が含まれる車両1cである場合(Y)には、その追尾サーチエリアCが設定された追尾対象車両1xと同一車両であると判断してID引継処理を行う(Step2)。さらに、ID引継処理がなされた追尾対象車両1xに対しては、第n+1次フレームと第n次フレームとから予測移動エリアEを新たに算出して展開する(Step3)。
【0061】
また、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの追尾サーチエリアCに全体が含まれる車両1cでない場合(N)、例えば、車両1が追尾サーチエリアCに一部のみ含まれる車両1cである場合には、第n次フレームの検出結果に近いか否かを確認する(Step4)。このStep4は、特に、追尾サーチエリアCに一部が含まれる車両1cが複数台存在する場合に有効に作用する。そして、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの検出結果に近い場合(Y)には、その追尾サーチエリアCが設定された追尾対象車両1xと同一車両であると判断してID引継処理を行う(Step2)。追尾サーチエリアCに一部が含まれる車両1cが複数台存在する場合には、最も近い車両1cを選択してID引継処理を行う。
【0062】
また、第n+1次フレームにおいて検出された車両1が第n次フレームの検出結果に近くない場合(N)、すなわち、Step4においてID引継処理のなされなかった場合には、新規検出された車両1であると判断し、新規の認識IDを付与する(Step5)。この時点で車両1は追尾対象車両1xとして設定される。この追尾対象車両1xは、予測移動エリアEにも追尾サーチエリアCにも関与しない新規検出の車両1である。そこで、まず、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出されたか否かを確認する(Step6)。そして、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出された場合(Y)には追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前方に展開する(Step7)。また、追尾対象車両1xが初期検知エリアPで検出されていない場合(N)、すなわち、検知エリアSで検出された場合には追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前後に展開する(Step8)。なお、Step8において、車線情報を利用してStep7と同様に追尾サーチエリアCを追尾対象車両1xの前方にのみ展開するようにしてもよい。
【0063】
上述した処理フローにより、第n+1次フレームにおいて、第n次フレームにおける追尾対象車両1xのID引継処理を行って予測移動エリアEを設定することができ、新規検出された車両1に対しては追尾サーチエリアCを設定することができる。また、レーザ光Lの第n+1次フレームにおいて初期検出された車両1であるか否かを、第n次フレームにおける追尾対象車両1xと同一車両と判断される車両のID引継処理を行って除外してから判断することにより円滑に新規車両を検出することができる。この第n+1次フレームのデータに基づいて再び第n+2次フレームにおいて同様の処理を行う。この処理を繰り返すことにより、時々刻々と変化する道路R上の検知エリアS及び初期検知エリアPに進入した車両1を確実に追尾することができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る車両の検出方法を示す図であり、(A)は初期検知エリアを設定した状態、(B)は第n次走査結果から初期検知エリアで車両を検出した状態、(C)は追尾サーチエリアを設定した状態、(D)は第n+1次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、を示している。
【図2】検知エリアにおける車両の検出方法を示す図であり、(A)は予測移動エリアを設定した状態、(B)は第n+2次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、(C)は第n+3次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、を示している。
【図3】検知エリアにおいて車両が初期検出された場合の処理を示す図であり、(A)は車両が初期検知エリアをすり抜ける状態、(B)第n次走査結果から検知エリアで車両を検出した状態、(C)は追尾サーチエリアを設定した状態、(D)は第n+1次走査結果から追尾対象車両を検出した状態、を示している。
【図4】初期検知エリアの設定方法の変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、である。
【図5】本発明に係る車両の検出装置を示す構成図である。
【図6】車両の検出状況を示す外観図である。
【図7】第n次フレームに追尾対象車両が存在しない場合の処理フローである。
【図8】第n次フレームで予測移動エリアを設定した追尾対象車両のID引継処理を行う場合の処理フローである。
【図9】第n次フレームで追尾サーチエリアを設定した追尾対象車両のID引継処理を行う場合の処理フローである。
【符号の説明】
【0066】
1,1c,1e 車両
1b 大型車両
1h 潜伏車両
1x 追尾対象車両
2 レーザ距離測定装置
2a レーザレーダヘッド
2b 制御部
2c 支柱
3 車両検出部
4 データ送信部
5 外部機器
21 投光部
21a レーザダイオード
21b 投光レンズ
21c LDドライバ
22 ポリゴンミラー
22a モータ
22b ドライバユニット
23 平面ミラー
23a モータ
23b ドライバユニット
24 照射窓
25 受光部
25a 受光レンズ
25b 光電変換素子
25c 受光部本体
26 時間計測部
27 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に設定された検知エリアにレーザ光を走査して前記検知エリア内に進入した車両を検出する車両の検出方法であって、
前記検知エリアの入口に初期検知エリアを設定し、前記レーザ光の第n次走査結果(nは1以上の整数)から前記初期検知エリアに存在する車両を追尾対象車両と設定するとともに該追尾対象車両の初期位置を把握し、該初期位置から追尾サーチエリアを設定し、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断する、ことを特徴とする車両の検出方法。
【請求項2】
前記検知エリアにおいて初期検出された車両について、該車両を検出したレーザ光の第n次走査結果から追尾対象車両に設定するとともに該追尾対象車両の初期位置を把握し、該初期位置から少なくとも道路の進行方向に追尾サーチエリアを設定し、前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両の検出方法。
【請求項3】
前記追尾サーチエリアを前記追尾対象車両の前後に設定する、ことを特徴とする請求項2に記載の車両の検出方法。
【請求項4】
前記レーザ光の第n+1次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両が存在しない場合には、前記初期位置及び前記追尾サーチエリアに近い車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の検出方法。
【請求項5】
前記レーザ光の第n次走査結果及び第n+1次走査結果から前記追尾対象車両の速度を算出し、前記レーザ光の第n+2次走査時における前記追尾対象車両の予測移動エリアを算出し、前記レーザ光の第n+2次走査結果から前記予測移動エリアに含まれる車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両の検出方法。
【請求項6】
前記レーザ光の第n+2次走査結果から前記追尾サーチエリアに含まれる車両が存在しない場合には、前記第n+1次走査結果及び前記予測移動エリアに近い車両を前記追尾対象車両と同一車両であると判断する、ことを特徴とする請求項5に記載の車両の検出方法。
【請求項7】
前記レーザ光の第n+1次走査結果において初期検出された車両であるか否かは、第n次走査結果における追尾対象車両と同一車両と判断される車両を除外してから判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両の検出方法。
【請求項8】
道路上に設定された検知エリアにレーザ光を走査して前記検知エリア内に進入した車両を検出する車両の検出装置であって、
前記検知エリアにレーザ光を照射するとともに物体からの反射光を受光して前記検知エリア内の物体の距離を測定するレーザ距離測定装置と、該レーザ距離測定装置の計測データから車両を検出する車両検出部と、該車両検出部の検出結果を外部機器に出力するデータ送信部と、を有し、
前記車両検出部は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載された車両の検出方法により車両の検出処理を行う、ことを特徴とする車両の検出装置。
【請求項9】
前記データ送信部は、前記検出結果の出力時間に合わせて前記車両検出部の検出結果を補正して前記外部機器に送信する、ことを特徴とする請求項8に記載の車両の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−44496(P2010−44496A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207003(P2008−207003)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】