説明

車両の窓ガラスの異物除去装置

【課題】 車両が停車状態であるときに、車両の窓ガラスに付着した異物を除去することができる車両の窓ガラスの異物除去装置を提供する。
【解決手段】 IGスイッチ検出センサ2からの検出信号に基づいて、マイコン10が停車状態であると判断し、かつ撮像部3および撮像画像処理部4ならびに温度センサ5および温度画像処理部6によって得られる撮像画像データおよび温度画像データに基づいて異物を検出し、異物の大きさがしきい値以上であり、異物が除去する必要である位置にあれば、マイコン10がワイパ制御部12を制御し、ノズル部駆動モータ14を駆動させてノズル部24を異物の位置に向けて、ウォッシャ液噴出ポンプによってウォッシャ液を噴出させて、ワイパ駆動モータ15を駆動してフロントガラス22を払拭させる。これによって、車両が停車状態であっても、車両の窓ガラスに付着した異物を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓ガラスに付着した異物を検出して除去することができる車両の窓ガラスの異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来の技術として、移動体のフロントガラスを通した移動体外部の比較物体の画像を取込むカメラと、このカメラによって取込まれた比較物体の画像の状態によってフロントガラスの状態を判断手段と、判断手段の判断結果によってフロントガラスを払拭するワイパの動作を制御するワイパ制御手段とを備える視界状態検出装置がある(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
第2の従来の技術として、カメラで影像を取得し、この影像の現出状態により、演算公式を用いてフロントガラスの汚濁程度の判断に用いる数値を取得し、ワイパーシステムあるいはワイパーシステムと噴水システムを動作させる自動車ワイパの光学式自動制御システムがある(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
第3の従来の技術として、ウインドの汚れを感知し数値化した汚れデータを出力する汚れセンサと、雨量を感知しこの雨量の時間微分成分を数値化した雨量データを出力する雨量センサと、ウインドワイパを駆動するとともにウインドの表面の状態をモータトルクから感知し数値化したウインド表面状態データを出力するワイパモータ駆動ユニットと、汚れデータと雨量データとウインド表面状態データとの各々に対応するウインドワイパの駆動速度およびウインドウォッシャ液の散布量の各々のメンバシップ関数を格納するメンバシップ関数記憶回路と、汚れデータと雨量データとウインド表面状態データとメンバシップ関数記憶回路から読出したメンバシップ関数とを入力しファジィ推論を行って駆動速度の制御信号と散布量の制御信号とを出力するファジィ推論演算ユニットとを備えるウインドワイパ装置がある(たとえば特許文献3参照)。
【0005】
第4の従来の技術として、ウインドウガラス表面上に異物に汚れを検出する異物検出装置と、異物検出装置の検出結果に基づいてウォッシャと連動してワイパ払拭を行うオートワイパ制御装置がある(たとえば特許文献4参照)。
【0006】
第5の従来の技術として、自動車のフロントガラスの外表面上の異物の存在を超音波で検出し、フロントガラスワイパーを作動させる自動制御フロントガラスクリーニングシステムがある(たとえば特許文献5参照)。
【0007】
第6の従来の技術として、ウインドウガラスの物理量に応じた値の信号を出力する物理量センサをウインドウガラスに設け、この物理量センサの出力信号値をイグニッションスイッチのオン投入時に判定し、イグニッションスイッチのオン投入時の物理量センサの出力信号値が雨滴付着時の信号値域と洗浄時の値との間の所定値域内にあればウインドウガラスが汚れていると判定して報知器を作動させる車両のウインドウガラス汚れ検出装置がある(たとえば特許文献6参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−111249号公報
【特許文献2】特開2001−18762号公報
【特許文献3】特許第2949970号公報
【特許文献4】特開2001−330559号公報
【特許文献5】特開平7−83886号公報
【特許文献6】特開平5−185906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1〜第6の従来の技術では、たとえばイグニッションスイッチをオフ状態にして車両を停止状態として、利用者が車両を離れているときに、車両の窓ガラスに鳥の糞などの異物が付着した場合には、この異物を除去することができない。このため、利用者が車両に戻ってきたときには、異物が乾燥して窓ガラスの固着している場合があり、この場合、ウォッシャ液を噴射する、またはワイパを動作させる、あるいはウォッシャ液を噴射してワイパを動作させるだけでは、付着した異物を除去することが困難であるという問題がある。
【0010】
したがって本発明の目的は、車両が停車状態であるときに、車両の窓ガラスに付着した異物を除去することができる車両の窓ガラスの異物除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両の窓ガラスに付着した異物を検出する異物検出手段と、
車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、
異物検出手段によって異物を検出し、かつ停止状態検出手段によって車両が停止状態であることを検出したとき、異物を除去する異物除去手段とを含むことを特徴とする車両の窓ガラスの異物除去装置である。
【0012】
また本発明は、異物検出手段は、車両が停止状態であるとき、予め定める時間間隔をあけて窓ガラスに異物が付着しているか否かを検出することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、異物の大きさを測定する測定手段を含み、
異物除去手段は、測定手段によって測定された異物の大きさが、予め定める大きさ以上であれば、異物を除去することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、窓ガラス上における異物の位置を求める位置測定手段を含み、
異物除去手段は、ワイパ装置を含み、位置測定手段の測定結果に基づいて、ワイパ装置によって窓ガラスが払拭される領域に異物が付着していると判断したとき、異物を除去することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、窓ガラス上における異物の位置を求める位置測定手段を含み、
異物除去手段は、位置測定手段によって求められた異物の位置が、運転に支障のある位置であると判定したとき、異物を除去することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、異物除去手段は、ウォッシャ液噴出装置を含み、位置測定手段によって求められた異物の位置へウォッシャ液を噴出することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、異物除去手段は、ウォッシャ液噴出装置を含み、測定手段によって測定された異物の大きさに基づいて、ウォッシャ液の噴出条件を決定し、決定された噴射条件によって、ウォッシャ液を噴出することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、異物検出手段および異物除去手段は、車両に設けられるバッテリからの電力によって動作し、
バッテリの残電力容量を検出する残容量検出手段と、
バッテリの残電力容量が予め定める値未満のときに、異物検出手段による異物の検出動作および異物除去手段による異物の除去動作の少なくともいずれかを停止させる動作停止手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異物検出手段によって異物が検出され、かつ停止状態検出手段によって車両の停止状態が検出されているとき、異物除去手段によって異物を除去する。車両の停止状態とは、たとえばイグニッションスイッチがオフ状態にあるとき、および車両の移動していない、すなわち車両の速度が0であるときなどをいう。車両を停止状態として、利用者が車両を離れているときに、車両の窓ガラスに鳥の糞などの異物が付着したときには、この異物を異物除去手段によって除去することができるので、利用者が気付かない間に異物が乾燥して窓ガラスの固着してしまうことが防止される。
【0020】
また本発明によれば、異物検出手段は、車両が停止状態であるとき、予め定める時間間隔をあけて窓ガラスに異物が付着しているか否かを検出するので、常時検出する場合と比較して、異物検出手段の負荷を軽減することができる。予め定める時間間隔は、たとえば異物として鳥の糞を想定する場合には、鳥の糞が乾燥して窓ガラスに固着してしまわない程度に選ばれる。
【0021】
また本発明によれば、測定手段によって異物の大きさを測定し、予め定める大きさ以上であれば、異物を除去する。予め定める大きさは、たとえば窓ガラスに付着した異物が、運転に支障のある程度の大きさに選ばれる。異物の大きさが小さければ、除去しなくても運転の支障にならないので、全ての異物を除去するのではなく、予め定める大きさ以上の異物を除去することによって、異物除去手段の負荷を軽減することができる。
【0022】
また本発明によれば、異物除去手段は、ワイパ装置によって窓ガラスを払拭することによって、窓ガラスに付着した異物を除去する。窓ガラスのうち、ワイパ装置によって払拭される領域は、運転時に運転者が安全を確保するために、視界を良好に保持する必要がある範囲である。異物の位置が、ワイパ装置によって払拭される領域であれば、異物除去手段がワイパ装置によって異物を確実に除去するので、運転時に運転者が安全を確保することができる。従来から車両に備え付けられているワイパ装置を利用して異物を除去するので、異物除去手段を容易に実現することができる。
【0023】
また本発明によれば、位置測定手段によって、窓ガラス上における異物の位置を求めた結果、求められた異物の位置が、運転に支障のある位置であると判定したとき、異物を除去するので、車両を動かすときに、運転者が安全を確保することができる。
【0024】
また本発明によれば、ウォッシャ液噴出装置によって、位置測定手段によって求められた異物の位置へウォッシャ液を噴出することによって、ウォッシャ液を効率的に異物に掛けることができるので異物が除去されやすくなる。またウォッシャ液を異物に直接掛けることができるので、ウォッシャ液の使用量を少なくして、ウォッシャ液を無駄に使用してしまうことが防止することができる。
【0025】
また本発明によれば、異物除去手段は、ウォッシャ液噴出装置を含み、測定手段によって測定された異物の大きさに基づいて、ウォッシャ液の噴出条件を決定し、決定された噴射条件によって、ウォッシャ液を噴出するので、たとえば異物が大きければウォッシャ液の噴出時間、噴射力および噴射量などを長くすることによって、異物が除去されやすくなる。また、異物が小さければウォッシャ液の噴出時間、噴射力および噴射量などを短くすることによって、噴出されるウォッシャ液の量を少なくして、ウォッシャ液の使用量を抑制することができる。
【0026】
また本発明によれば、車両に設けられるバッテリの残電力容量が、予め定める値未満のときには、動作停止手段が、異物検出手段による異物の検出動作および異物除去手段による異物の除去動作の少なくともいずれかを停止させるので、利用者が車両を動かすときにバッテリが上がってしまって、動かせなくなってしまうことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の実施の一形態である異物除去装置1の構成を示すブロック図である。異物除去装置1は、イグニッション(IG)スイッチ検出センサ2、撮像部3、撮像画像処理部4、温度センサ5、温度画像処理部6、電圧検出部7、タイマ8、速度センサ9、マイコン10、メモリ11、ワイパ制御部12、ワイパ駆動モータ13、ノズル部駆動モータ14、ウォッシャ液噴出ポンプ15、入力部16およびセキュリティセンサ17を含んで構成される。
【0028】
IGスイッチ検出センサ2は、IGスイッチがオン(ON)状態であるのか、オフ(OFF)状態であるのかを表すIGスイッチ検出信号を、マイコン10に与える。
【0029】
撮像部2は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサによって実現される。撮像部2は、マイコン10からの指令に基づいて、車両の窓ガラスを撮像し、撮像した画像を表し、アナログ信号で表される撮像画像データを撮像画像処理部4に与える。本実施の形態では、車両の窓ガラスは、車両のフロントガラスである。
【0030】
撮像画像処理部4は、マイコン10からの指令に基づいて動作し、撮像部2から与えられるアナログ信号で表される撮像画像データを、アナログ/デジタル(A/D)変換することによって、デジタル信号で表される撮像画像データを生成する。撮像画像処理部4によって生成された画像データは、メモリ11に記憶される。
【0031】
温度センサ5は、マイコン10からの指令に基づいて、車両の窓ガラス、すなわち車両のフロントガラスの表面温度を検出する。温度センサ5は、サーモグラフィによって実現される。温度センサ5は、検出したフロントガラスの表面温度を表し、アナログ信号で表される温度画像データを温度画像処理部6に与える。
【0032】
温度画像処理部6は、マイコン10からの指令に基づいて動作し、温度センサ5から与えられるアナログ信号で表される温度画像データを、アナログ/デジタル(A/D)変換することによって、デジタル信号で表される温度画像データを生成する。温度画像処理部6によって生成された画像データは、メモリ11に記憶される。
【0033】
電圧検出部7は、車両に設けられる電源、すなわちバッテリの電圧を検出する。電圧検出部7は、電圧計によって実現され、検出結果をマイコン10に与える。電圧検出部7は、マイコン10とともにバッテリの残電力容量を検出する残容量検出手段を構成する。
【0034】
タイマ8は、時間を計時し、たとえばリアルタイムクロックによって実現される。またタイマ8は、後述する異物除去処理では、マイコン10からの指令に基づいて設定された時間が経過する度に、マイコン10に起動信号を与える。
【0035】
速度センサ9は、車両の移動速度を表す速度検出信号を、マイコン10に与える。速度センサ9は、たとえば車軸の回転数を検出するパルスカウンタによって実現される。
【0036】
マイコン10は、マイクロコンピュータによって実現される。マイコン10は、中央演算処理処理装置(Central Processing Unit:略称CPU)および制御プログラムが記録されたROMを含んで構成され、前記CPUが前記制御プログラムを実行することによって、装置の各部、すなわちIGスイッチ検出センサ2、撮像部3、撮像画像処理部4、温度センサ5、温度画像処理部6、タイマ8、メモリ11、ワイパ制御部12および入力部16などを制御する。
【0037】
メモリ11は、不揮発性記録媒体によって実現される。不揮発性記録媒体は、フラッシュROM(Read Only Memory)およびEEPROM(Electronic Erasable Programmable Read Only Memory)などである。メモリ11には、撮像画像処理部4によって生成された撮像画像データ、および温度画像処理部6によって生成された温度画像データ、ならびに入力部16から与えられる入力データが記憶される。入力データは、入力部16によって設定される設定データを含む。メモリ11は、マイコン10からの指令に基づいて、前記撮像画像データ、温度画像データおよび入力データをそれぞれ記憶したり、また記憶した前記撮像画像データ、温度画像データおよび入力データをそれぞれ書き換えまたは消去したりする。
【0038】
ワイパ制御部12は、マイコン10からの指令に基づいて、ワイパ駆動モータ13、ノズル部駆動モータ14およびウォッシャ液噴出ポンプ15を制御して、これらを駆動または停止させる。ワイパ制御部12は、たとえばDSP(Digital Signal Processor)によって実現される。
【0039】
ワイパ駆動モータ13は、ワイパ制御部12からの指令に基づいて動作する。ワイパ駆動モータ13の回転軸には、ワイパアームが連結され、前記回転軸が角変位することによってワイパアームが前記回転軸の軸線まわりに角変位する。
【0040】
ノズル部モータ14は、ワイパ制御部12からの指令に基づいて動作する。ノズル部モータ14の回転軸は、後述するノズル部24を移動させるための機構に連結され、モータ軸が回転または角変位することによって、ノズル部24の吐出口をフロントガラス上の所定の領域に向けることができる。
【0041】
ウォッシャ液噴出ポンプ15は、ワイパ制御部12からの指令に基づいて、ウォッシャ液が収容される収容容器からウォッシャ液を吸出して、ノズル部24から噴出させる。
【0042】
入力部16は、操作ボタンを含んで構成される。操作者が前記操作ボタンを操作することによって、操作ボタンに対応する指令がマイコン10に与えられ、設定データをメモリ11に記憶することができる。操作ボタンは、たとえば車両の室内のフロントパネルに設けられる。
【0043】
セキュリティセンサ17は、ドアセンサおよびロックセンサを含んで構成される。ドアセンサは、車両のドアの開閉状態を表すドア検出信号をマイコン10に与える。ロックセンサは、車両のドアのロックがかかっているか否かを表すロック検出信号をマイコン10に与える。
【0044】
図2は、車両の一部を示す模式図である。撮像部3および温度センサ5は、車両の室内21に設けられる。撮像部3は、室内21側からフロントガラス22を撮像し、温度センサ5は、室内21側からフロントガラス22の温度を検出する。撮像部3および温度センサ5を室内21に設けることによって、撮像部3および温度センサ5が風雨に曝されることがなく、安定してフロントガラス22の撮像あるいは温度検出を行うことができる。フロントガラス22には、ワイパ駆動モータ13に連結されているワイパアーム23が接触して設けられる。ワイパアーム23には、ゴムによって形成されるワイパブレードが設けられ、このワイパブレードがフロントガラス22に接触する。ワイパ制御部12、ワイパ駆動モータ13およびワイパアーム23を含んでワイパ装置が構成される。ワイパ装置は、前記ワイパブレードをフロントガラス22の外表面に押し付けて円弧状に動作することによって、フロントガラス22を払拭する。
【0045】
またボンネット51には、ノズル部24が設けられる。ノズル部24はボンネット51の外表面から突出し、ウォッシャ液噴出ポンプ15から供給されるウォッシャ液をフロントガラス22に向けて噴出する。ノズル部24、ノズル部駆動モータ14、ウォッシャ液噴出ポンプ15およびワイパ制御部12を含んでウォッシャ液噴出装置が構成される。
【0046】
図3は、フロントガラス22を模式的に示す平面図である。なお同図では、フロントガラス22を室内側から見て示す。また同図には、ワイパ装置によって払拭可能な領域52、すなわちワイパブレードによって払拭可能な領域が仮想線によって示されている。ワイパ装置は、フロントガラス22のうち、少なくとも運転時に運転者が安全を確保するために、視界を良好に保持する必要がある範囲を払拭することができる。本実施の形態では、ワイパアーム23は、運転席側および助手席側にそれぞれ設けられ、フロントガラス22の下端部に設けられるワイパ駆動モータ13の回転軸線まわりに角変位する。したがって各ワイパアーム23によって払拭されるフロントガラス22の領域は扇形となる。各ワイパアーム23によって払拭される領域は、その一部が重なっている。
【0047】
図4は、ウォッシャ液噴出装置の構成を示す模式図である。ノズル部24は、略円筒形状を有するノズル部本体25と、ノズル部本体25の軸線方向の一端部に、略円筒液状を有し、ノズル部本体25から突出するノズル開口部26とによって形成される。ノズル開口部26は、ノズル部本体25よりも小径に形成される。ノズル部本体25の軸線方向の他端部には、ウォッシャ液噴出ポンプ15に接続されるウォッシャ液供給管27が接続される。ウォッシャ液供給管27を介して供給されるウォッシャ液は、ノズル部本体25を通って、ノズル開口部26に形成される開口から噴出する。
【0048】
ノズル部本体25は、ノズル支持部28に、水平な軸線L1まわりに角変位可能に支持される。ノズル支持部28は、支持台29に設けられる。支持台29は、歯車によって実現される。支持台29の厚み方向の一表面上29Aにノズル支持部28が立設して設けられる。ノズル支持部28は、所定間隔をあけて平行に配置される一対の板部材31を有する。この一対の板部材31の基端部は支持台29に固定され、遊端部には、ノズル部本体25が角変位自在に連結される支持ピン32が設けられる。ノズル部本体25は、前記支持ピン32に挿通して設けられる。前記支持ピン32は、ノズル部本体25のウォッシャ液供給管27寄りの部分に連結される。
【0049】
支持台29は、その厚み方向が鉛直となるように設けられる。支持台29の中央部の下部には、支持台29をその軸線L2まわりに角変位可能に支持する支持台取付け部33が設けられる。支持台取付け部33は、車体に連結される。
【0050】
支持台29の軸線L2まわりの外周部には、第1駆動歯車34が噛合して設けられる。第1駆動歯車34は第1モータ53に連結され、第1モータ53が回転駆動することによってその軸線まわりに回転する。第1モータ53を回転駆動することによって、支持台29を軸線L2まわりに、矢符A1,A2で示す向きに角変位させることができ、これによってノズル部24からのウォッシャ液の吐出方向を水平方向に移動させることができる。
【0051】
ノズル部本体25には、ラック35の一端部36が角変位可能に連結される。ノズル部本体25のノズル開口部26寄りの端部には、支持台29に臨んでラック35に連結される連結ピンが設けられる。ラック35は一端部36から他端部37にわたって直線状に形成され、ラック35の他端部37は、支持台29に設けられるラック挿通部38に挿通される。ラック挿通部38は、支持台29の一表面29A上に形成されており、支持台29の厚み方向に垂直な方向へのラック35の移動を規制し、支持台29の厚み方向へのラック35の移動を許容する。ラック35には、その一端部から他端部間にわたって、歯が形成されている。ラック35には、第2駆動歯車39が噛合して設けられる。第2駆動歯車39は、支持台29に設けられる第2モータ54に連結され、第2モータ54が回転駆動することによってラック35を上下方向に移動させることができ、これによってノズル部24を軸線L1まわりに角変位させて、ノズル部24を矢符B1,B2で示す向きに角変位させることができ、ノズル部24からのウォッシャ液の吐出方向を鉛直方向に移動させることができる。
【0052】
第1および第2モータ53,54は、ノズル部駆動モータ14であり、ワイパ制御部12から与えられる指令に基づいて動作する。ノズル部24は、本実施の形態では1つだけ設けられる。ノズル部24が1つだけであっても、ノズル部24からのウォッシャ液の突出方向を変更することができるので、フロントガラス22の全領域にウォッシャ液を掛けることができる。前記ボンネット51からは、ノズル部24のみが外部に露出する。ノズル部24は、車両の幅方向の中央部に設けられる。前記ワイパ装置およびウォッシャ液噴出装置を含んで異物除去手段が構成される。
【0053】
図5は、異物除去装置1の初期動作処理を示すフローチャートである。この処理はマイコン10が実行する。IGスイッチをOFF状態にしたことを表すIGスイッチ検出センサ2からのIGスイッチ検出信号がマイコン10に与えられることによって、図5の異物除去開始処理が開始される。つまり、IGスイッチ検出センサ2とマイコン10とによって、停止状態検出手段が構成される。ステップa1では、マイコン10は、処理実行許可情報をメモリ11に記憶させ、かつ引数Nを、N=0となるようにメモリ11に設定して処理を終える。
【0054】
図6に示すフローチャートは、マイコン10が実行する異物除去処理を示すものでIGスイッチがOFF状態(IGスイッチ検出センサ2からのIGスイッチ検出信号により判断)で、かつバッテリの残電力容量が予め定めるしきい値以上の状態、言い換えるとメモリ11に処理実行許可情報が記憶されているときに所定時間毎に繰り返し実行される。
【0055】
ステップb1では、マイコン10が撮像部3、撮像画像処理部4、温度センサ5および温度画像処理部6に指令を与えて、これらを制御し、撮像画像データおよび温度画像データを生成させて、生成された撮像画像データおよび温度画像データを取得する。取得した撮像画像データおよび温度画像データは、メモリ11に記憶される。ステップb1が終了すると、ステップb2に移る。
【0056】
ステップb2では、マイコン10は、フロントガラス22に異物が付着しているか否かを判断する。マイコン10は、前記ステップb1で取得した撮像画像データおよび温度画像データと、前回のステップb2の処理においてメモリ11に記憶された撮像画像データおよび温度画像データとを比較する。ステップb2の処理が初回のときには、撮像画像データおよび温度画像データの比較ができないので、異物がないと判断する。撮像部3、撮像画像処理部4、温度センサ5、温度画像処理部6、マイコン10およびメモリ11を含んで異物検出手段が構成される。
【0057】
マイコン10は、撮像画像データを比較するとき、撮像画像データの各画素における輝度同士を比較する。撮像部3は固定して設けられ、撮像部3はフロントガラス22の所定の領域を撮像する。したがって、撮像画像データの各画素における輝度同士を比較することによって、画素における輝度が変化していれば、フロントガラス22のうちその画素に対応する位置に異物が付着しているとマイコン10は、判断する。具体的には、マイコン10は比較した画素における輝度の相違が、予め定める範囲内であれば、異物が付着していないと判断し、輝度の相違が予め定める範囲を超えれば、異物が付着していると判断する。前記予め定める範囲は、たとえば輝度を256階調で表す場合、5階調以内とする。
【0058】
またマイコン10は、温度画像データを比較するとき、温度画像データの各画素における温度同士を比較する。温度センサ5は固定して設けられ、温度センサ5はフロントガラス22の所定の領域の温度を検出する。したがって、温度画像データの各画素における温度同士を比較することによって、画素における温度が変化していれば、フロントガラス22のうちその画素に対応する位置に異物が付着していると判断する。具体的には、マイコン10は比較した画素における温度の相違が、予め定める範囲内であれば、異物が付着していないと判断し、温度の相違が予め定める範囲を超えれば、異物が付着していると判断する。前記予め定める範囲は、2℃未満とする。
【0059】
ステップb2において、マイコン10が、異物が付着していると判断すると、ステップb3に移る。ステップb3では、マイコン10が、異物の大きさを検出する。異物の大きさは、撮像画像データにおいて輝度が変化したと判定された画素の数、および温度画像データにおいて温度が変化したと判定された画素の数によって表される。マイコン10は、前記撮像画像データにおいて輝度が変化したと判定された画素の数、および温度画像データにおいて温度が変化したと判定された画素の数を求める。マイコン10は、異物の大きさを測定する測定手段を構成する。撮像画像データに基づいて得られる異物の大きさと、温度画像データに基づいて得られる異物の大きさとが異なる場合には、マイコン10は、検出された異物の大きさのうち、大きい方を検出結果とする。
【0060】
ステップb3が終了すると、ステップb4に移る。ステップb4では、マイコン10が、ステップb3で求めた異物の大きさが、予め定めるしきい値を超えるか否かを判断する。予め定めるしきい値は、メモリ11に記憶されている。予め定めるしきい値は、入力部16からの入力操作によって利用者が決定してもよい。予め定めるしきい値は、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば1cm程度となるように選ばれる。マイコン10は、フロントガラス22に付着した異物の付着面積が1cm程度となるときに撮像画像データおよび温度画像データにおいて変化する画素数と、ステップb3で検出された画素のうち隣接する画素数とを比較することによって、異物の大きさが、予め定めるしきい値を超えるか否かを判断する。
【0061】
ステップb4において、ステップb3で求めた異物の大きさが、予め定めるしきい値を超えたと判断すると、ステップb5に移る。ステップb5では、マイコン10は、異物の位置を検出する。異物の位置は、前述したステップb3で、撮像画像データにおいて輝度が変化したと判定された画素の位置、および温度画像データにおいて温度が変化したと判定された画素の位置によって表される。撮像画像データおよび温度画像データにおける画素の位置は、フロントガラス22における所定の位置に対応する。マイコン10は、検出された異物の位置を表す情報を、メモリ11に記憶する。
【0062】
ステップb5が終了すると、ステップb6に移る。ステップb6では、マイコン10は、ステップb5で検出した異物の位置が、除去する必要のある位置か否かを判断する。除去する必要がある位置とは、運転に支障のある位置であり、ここではワイパ装置によって払拭可能な領域52であり、図3の仮想線によって示される範囲である。マイコン10は、検出した異物の位置、すなわちステップb5で検出された画素の位置が、撮像画像データおよび温度画像データにおける除去する必要のある領域における画素の位置と一致するか否かを判断することによって、除去する必要のある位置か否かを判断する。
【0063】
ステップb6において、マイコン10が、除去する必要のある位置に異物が付着していると判断する、すなわちステップb5で検出された画素の位置が、撮像画像データおよび温度画像データにおける除去する必要のある領域における画素の位置と一致すると判断すると、ステップb7に移る。
【0064】
ステップb7では、マイコン10は、前回異物が検出された位置と同じ位置で異物を検出したか否かを判断する。マイコン10は、メモリ11に記憶されている前回検出した異物の位置を表す情報を読出して、前回検出した異物の位置と、今回検出した異物の位置とを比較して、同じ位置か否かを判断する。またマイコン10は、前回異物が検出されていない場合には、前回とは異なる位置で異物を検出したと判断する。マイコン10は、複数の位置で異物の付着を検出したときには、複数の位置のいずれか1つが一致していれば、前回、すなわち予め定める時間前に検出された異物の位置と同じ位置で異物を検出したと判断する。
【0065】
ステップb7において、マイコン10が、付着している異物が、前回検出された異物と同じ位置にあると判断すると、ステップb8に移る。
【0066】
ステップb8では、マイコン10が、メモリ11に記憶される引数Nを、N=N+1に変更して、ステップb9に移る。
【0067】
ステップb9では、マイコン10が、メモリ11に記憶される引数Nが、N>3であるか否かを判断する。ステップb9で、N>3であると判断すると、ステップb10に移る。したがって、同じ位置で4回続けて異物を検出したときに、はじめてステップb10に移る。ステップa2において設定されている予め定める時間をTsとすると、動作処理を開始して、同じ位置で4回続けて異物を検出したときには、約4(回)×Ts時間経過していることとなる。この4×Ts時間は、たとえば異物として鳥の糞を想定する場合には、鳥の糞が乾燥して窓ガラスに固着してしまわない程度に選ばれ、たとえば5分程度に選ばれる。したがって、ステップa2における予め定める時間は、5/4分(1分15秒)程度に選ばれる。
【0068】
ステップb10では、マイコン10は、ワイパ制御部12に指令を与えて、ノズル部駆動モータ14を駆動させて、ノズル部24を移動させる。マイコン10は、異物の位置を表す情報をワイパ制御部12に与え、ワイパ制御部12は異物の位置を表す情報に基づいて、ノズル部駆動モータ14を駆動させる。これによって、ノズル部24のウォッシャ液が吐出する開口が、異物が付着している位置に向けられる。
【0069】
ステップb10が終了すると、ステップb11に移る。ステップb11では、マイコン10は、ワイパ制御部12に指令を与えて、ウォッシャ液噴出ポンプ15を駆動させて、ウォッシャ液を噴出させる。マイコン10は、異物の大きさに基づいてウォッシャ液の噴出条件を調整する。本実施の形態では、噴射条件は、噴射時間である。異物の大きさと、ウォッシャ液の噴出時間との関係を表1に示す。表1に示すテーブルは、メモリ11に記憶されている。
【0070】
【表1】

【0071】
表1において、異物の大きさは、A<Bに選ばれる。Aは、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば1cm程度に選ばれ、Bは、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば2cm程度に選ばれる。噴出時間t1<t2<t3に選ばれる。本実施の形態では、ウォッシャ液の噴出速度は一定であり、すなわち噴出時間が長いほどウォッシャ液の噴出量も多くなる。したがって、異物が大きいほどウォッシャ液の噴出量が大きくなる。ウォッシャ液が異物に掛けられることによって、異物が洗い流され、または異物がフロントガラス22から剥離しやすくなる。
【0072】
ステップb12では、マイコン10は、ワイパ制御部12に指令を与えて、ワイパ駆動モータ13を駆動させて、ステップb13に移り処理動作を終了する。マイコン10は、ステップb11において異物にウォッシャ液を噴出させた後、予め定める時間あけて、ステップb12においてワイパ駆動モータ13を動作させる。予め定める時間は、5秒程度に選ばれる。これによってウォッシャ液を異物に掛けて除去しやすくなったときに、ワイパによってフロントガラス22が払拭されることによって、異物が除去されやすくなる。
ワイパ駆動モータ13が駆動されることによってワイパアーム23が動作してフロントガラス22を払拭し、これによってフロントガラス22のワイパアーム23によって払拭される領域から異物を除去することができる。複数の位置に異物が付着している場合には、各異物についてステップb10とステップb11を繰返した後、ステップb12を行う。
【0073】
前記ステップb2において、マイコン10が、異物が付着していないと判断すると、処理動作を終了する。
【0074】
また前記ステップb6において、マイコン10が、付着した異物の位置が、除去する必要のない位置であると判断すると、処理動作を終了する。
【0075】
また前記ステップb7において、マイコン10が、前回と同じ位置で異物を検出していないと判断すると、ステップb14に移る。ステップb14では、マイコン10が引数Nを、N=0としてメモリ11に記憶して処理動作を終了する。
【0076】
またステップb9において、マイコン10が、N>3ではないと判断すると処理動作を終了する。
【0077】
図7は、バッテリの残電力容量をバッテリ電圧により検出する電圧検出処理を示すフローチャートである。この処理はマイコン10が実行する。IGスイッチがOFF状態になったとき、およびIGスイッチがOFF状態で、かつバッテリの残電力容量が予め定めるしきい値以上の状態で、予め定める第1の時間が経過するごとに、この処理が実行される。ステップc1では、マイコン10が、電圧検出部7によるバッテリの電圧の検出結果を取得して、ステップc2に移る。予め定める第1の時間は、たとえば30分程度に選ばれる。
【0078】
ステップc2では、マイコン10が、ステップc1で取得した検出結果に基づいて、バッテリの電圧が、予め定めるしきい値以上であるか、すなわち予め定める電圧以上であるか否かを判断する。マイコン10は、バッテリの電圧に基づいてバッテリの残電力容量を推定し、バッテリ電圧が予め定めるしきい値以上であるとき、バッテリの残電力容量が予め定めるしきい値以上であるとし、バッテリ電圧が予め定めるしきい値未満であるとき、バッテリの残電力容量が予め定めるしきい値未満であると判断する。バッテリの定格電圧が12ボルト(V)とすると、前記予め定めるしきい値は、たとえば10V程度に選ばれる。ステップc2において、予め定めるしきい値未満であると判断すると、ステップc3に移り、処理実行許可情報を処理実行不許可情報に変更してメモリ11に記憶させて、処理動作を終了する。前記ステップc2において、ステップc1で取得した電圧が、しきい値以上であると判断すると、処理動作を終了する。マイコン10は、メモリ11に処理実行不許可情報が記憶されると、図5および図6に示したフローチャートの処理を禁止し(実行しないようにする)、以後、電圧検出処理を行わない。
【0079】
メモリ11に処理実行不許可情報が記憶されているときには、マイコン10は、異物除去処理を行わない。このように、車両に設けられるバッテリの電圧値が、予め定めるしきい値未満のとき、すなわちバッテリの残電力容量が、予め定めるしきい値未満のときには、動作停止手段であるマイコン10が、異物の検出動作および異物の除去動作を停止させるので、利用者が車両を動かすときにバッテリが上がってしまって、動かせなくなってしまうことが防止される。
【0080】
マイコン10は、メモリ11に停止情報が記憶されているときには、予め定める第2の時間が経過するごとに、電圧検出部7によるバッテリの電圧の検出結果を取得して、バッテリの電圧予め定めるしきい値以上になると、メモリ11に記憶される停止情報を消去する。予め定める第2の時間は、予め定める第1の時間よりも長く選ばれ、たとえば1時間程度に選ばれる。
【0081】
以上のように異物除去装置1によれば、フロントガラス22に異物が付着していることが検出され、かつ車両の停止状態が検出されているとき、ウォッシャ液噴出装置およびワイパ装置によって、異物を除去する。車両を停止状態とするのは、車両を駐車しているときなどであり、利用者が車両を離れている場合が多い。このような利用者が車両を離れているときに、車両のフロントガラス22に異物が付着したときには、この異物をウォッシャ液噴出装置およびワイパ装置によって除去することができるので、利用者が気付かない間に、異物が乾燥してフロントガラス22の固着してしまうことが防止される。異物除去装置1は、特に鳥の糞の除去に有効である。
【0082】
また異物除去装置1は、車両が停止状態であるとき、タイマ8に設定される予め定める時間間隔をあけて、フロントガラス22に異物が付着しているか否かを検出するので、常時検出する場合と比較して、検出の負荷を軽減して、電力の消費を抑制することができる。
【0083】
また異物除去装置1は、異物の大きさを測定し、予め定める大きさ以上であれば、異物を除去する。予め定める大きさは、たとえば窓ガラスに付着した異物が、運転に支障のある程度の大きさに選ばれるので、異物の大きさが小さければ、除去しなくても運転の支障にならないので、全ての異物を除去するのではなく、予め定める大きさ以上の異物を除去することによって、ウォッシャ液噴出装置およびワイパ装置の負荷を軽減して、バッテリの消費およびウォッシャ液の消費を抑制することができる。
【0084】
また異物除去装置1は、複数回、同じ位置で異物を検出したときに、ウォッシャ液を噴出して、ワイパアーム23を動作させる。本実施の形態では、引数Nが、N>3となると、すなわち3回を超えて同じ位置で異物を検出したときに、異物を除去する動作に移行する。このように複数回、同じ位置に異物が付着しているとマイコン10が判断したときに、ワイパ装置およびウォッシャ液噴出装置を動作させることによって、異物をより確実に検出したときにだけ、ワイパ装置およびウォッシャ液噴出装置を動作させることができる。したがって、ワイパ装置およびウォッシャ液噴出装置を無駄に動作させることがないので、バッテリの電力が無駄に消費されてしまうことを抑制することができる。
【0085】
また前記引数Nが、N>3となるまでの時間、すなわち4回、同じ位置で異物を検出するまでの時間は、たとえば異物として鳥の糞を想定する場合には、鳥の糞が乾燥して窓ガラスに固着してしまわない程度に選ばれ、たとえば5分程度になるように選ばれる。本発明の他の実施の形態において、ステップb9における条件は、N>3に限らず、引数Nは複数回であればよい。この場合、ステップb10に移る条件となる数(N>3であれば、ステップb10に移る条件となる数は3)と、ステップa2における予め定める時間とを乗算した時間が、たとえば異物として鳥の糞を想定する場合には、鳥の糞が乾燥して窓ガラスに固着してしまわない程度に選ばれればよい。
【0086】
また異物除去装置1は、ワイパ装置によって窓ガラスを払拭することによって、窓ガラスに付着した異物を除去する構成としている。窓ガラスのうち、ワイパ装置によって払拭される領域は、運転時に運転者が安全を確保するために、視界を良好に保持する必要がある範囲である。異物の位置が、ワイパ装置によって払拭される領域であれば、ワイパ装置によって異物を確実に除去するので、運転時に運転者が安全を確保することができる。このようなワイパ装置は、従来から車両に備え付けられており、このようなワイパ装置を利用して異物を除去するので、異物除去装置1を容易に実現することができる。
【0087】
また異物除去装置1は、ウォッシャ液噴出装置によって、マイコン10によって求められた異物の位置へウォッシャ液を噴出することによって、ウォッシャ液を効率的に異物に掛けることができるので異物が除去されやすく、またウォッシャ液を異物に直接掛けることができるので、ウォッシャ液の使用量を少なくして、ウォッシャ液を無駄に使用してしまうことが防止することができる。
【0088】
また異物除去装置1は、マイコン10によって測定された異物の大きさに基づいて、ウォッシャ液の噴出時間を決定し、決定された噴射時間にわたって、ウォッシャ液を噴出するので、異物が大きければウォッシャ液の噴出時間を長くすることによって、噴出されるウォッシャ液の量を多くすることができ、多量のウォッシャ液を異物に掛けることができるので、異物が除去されやすくなる。また、異物が小さければウォッシャ液の噴出時間を短くすることによって、噴出されるウォッシャ液の量を少なくして、ウォッシャ液の使用量を抑制することができる。
【0089】
また異物除去装置1は、マイコン10が、撮像画像データおよび温度画像データの両者を用いて、異物の有無、異物の大きさおよび異物の位置を求めるので、異物が透明であっても異物の温度がフロントガラス22の温度と異なれば異物を検出することができ、また異物の温度がフロントガラス22と同じ温度であっても、撮像したときに異物の輝度がフロントガラスの輝度と異なれば異物を検出することができるので、異物の有無、異物の大きさおよび異物の位置を正確に求めることができる。また夜間は異物が付着したとしても撮像画像データにおける輝度の変化が少ないので、撮像画像データに基づいて、異物を検出することができないおそれがあるが、温度画像データに基づいて異物を検出することができ、夜間であっても異物の検出を行うことができる。
【0090】
また異物除去装置1は、マイコン10が、取得した撮像画像データおよび温度画像データと、前回取得した撮像画像データおよび温度画像データとの比較によって、異物があるか否かを判断することによって、時間の経過とともに変化する外光の明るさ対応する多数の比較画像データをメモリ11に記憶させる必要がない。つまり外光の明るさおよび気温が変化したとしても、予め定める時間毎の外光の明るさの変化の割合および気温の変化の割合は小さいので、撮像画像データおよび温度画像データの全体の輝度および温度の変化は、異物による輝度および温度の変化よりも小さいので、撮像画像データおよび温度画像データの全体の輝度および温度の変化を無視することができ、比較画像データとしては、前回取得した撮像画像データおよび温度画像データをメモリ11に記憶するだけでよいので、メモリ11の容量を大きくする必要がない。
【0091】
また本実施の形態では、図5のフローチャートにおいて、IGスイッチがOFF状態になったことを検出すると、初期動作処理を開始するが、本発明の他の実施の形態において、速度センサ9によって与えられる速度検出信号に基づいて、車両の移動速度が0であるとマイコン10が判断した後、セキュリティセンサ17から与えられるドア検出信号に基づいて、ドアが開けられた後に閉められたと判断し、さらにその後、ロック検出信号によって車両のドアがロックされたと判断したときに、異物検出処理を開始してもよい。このような異物検出処理の開始条件とすると、利用者が車両を離れるときであることがさらに確実となるので、異物除去処理を行う効果が向上する。
【0092】
以後、本発明のさらに他の実施の形態について説明するが、各本発明のさらに他の実施の形態における異物除去装置は、前述した実施の形態の異物除去装置1と同様な構成であり、同様の構成には同様の参照符号を付して、重複する説明を量略して、異なる部分について説明する。
【0093】
また本発明のさらに他の実施の形態では、降雨を検出する降雨検出センサを車両に設け、マイコン10は、降雨検出センサの検出結果に基づいて、雨が降っているときには、異物除去処理を行わない構成としてもよい。雨が降っているときは、窓ガラスに付着した異物が固着してしまうおそれが低減されるので、このような構成とすることによって、ウォッシャ液およびバッテリの電力消費を抑制することができる。
【0094】
またマイコン10は、フロントガラス22上における異物の位置を求めた結果、求められた異物の位置が、運転に支障のある位置であると判定したとき、ワイパ装置およびウォッシャ液噴出装置によって異物を除去する構成としてもよい。運転に支障のある位置は、たとえばワイパ装置によって払拭可能な位置である。
【0095】
また本発明のさらに他の実施の形態では、湿度を検出する湿度検出センサおよび気温を検出する温度センサを車両に設け、マイコン10は、湿度が高く、気温が低いときには、検出間隔を長くして、湿度が低く、気温が高いときには、検出間隔を短くするように、検出の間隔を湿度および温度に応じて変化させて、タイマ8に指令を与える構成としてもよい。湿度が高く、気温が低いときには、鳥の糞などの付着物が固着する間での時間が長くなるので、タイマ8がマイコン10に与える起動信号の時間間隔を長くして、バッテリの消費電力を低減することができ、湿度が低く、気温が高いときには、付着物が固着するまでの時間が短くなるので、タイマ8がマイコン10に与える起動信号の時間間隔を短くして、付着物が固着してしまう前に付着物を除去することができる。
【0096】
また本発明のさらに他の実施の形態において、マイコン10は、温度センサ5によって検出されたフロントガラス22の平均温度に基づいて、前記タイマ8に指令を与えて、タイマ8がマイコン10に与える起動信号の時間間隔を変更する構成としてもよい。たとえば直射日光の当たる場所と、日陰とでは、フロントガラス22の温度には大きな違いがある。直射日光が当たる場所では、フロントガラス22の温度が高く、これによって付着した異物が乾燥して固着するまでの時間が短くなり、日陰では、フロントガラス22の温度が、直射日光が当たる場所よりも低く、これによって付着した異物が乾燥して固着するまでの時間が長くなる。マイコン10は、初期状態から、温度センサ5によって検出されたフロントガラス22の平均温度が予め定める温度T1高くなるごとに、タイマ8がマイコン10に与える起動信号の時間間隔が予め定める時間t短くなるように、タイマ8に指令を与える。これによって、付着した異物が乾燥して固着しないうちに、異物をより確実に除去することができる。
【0097】
また本発明のさらに他の実施の形態において、入力部16に、異物除去処理を実行するか否かを選択することができるモード選択ボタンを設けてもよい。前記操作ボタンによって、異物除去処理を実行する異物除去モードと、異物除去処理を停止する異物除去停止モードとを選択することができる。この場合、図5に示すフローチャートは、IGスイッチがON状態で、かつ異物除去モードが設定され、さらにバッテリの残電力容量が予め定めるしきい値以上の状態で繰り返し実行される。異物除去停止モードに設定すると、たとえばガソリンスタンドなどで一時的に停車したときになどに、異物除去装置1が動作してしまうことが防止され、利便性が向上される。
【0098】
また本発明のさらに他の実施の形態において、前述した図5のフローチャートにおいて、ステップb12でワイパを動作させた後、マイコン10が、再び撮像画像データおよび温度画像データを取得して、前回取得した撮像画像データおよび温度画像データと比較して、異物が除去されたか否かを確認して、異物が除去されていない場合には、再びウォッシャ液噴出装置によってウォッシャ液を噴出し、ワイパ装置を動作させてもよい。この場合、予め定める回数、異物が除去されたか否かを確認する処理を繰返して、異物が除去されていないと判断した場合には、処理動作を終了する。異物が除去されたか否かを確認する処理を繰返して、異物が除去されていないと判断した場合、警報手段によって、異物が除去できなかったことを表す警報情報を出力させてもよい。警報手段は、表示装置およびスピーカ装置などによって構成される。また複数回ウォッシャ液を噴出する場合、噴出する回数が増すごとにウォッシャ液の噴射力を大きくしてもよい。
【0099】
また本発明のさらに他の実施の形態では、マイコン10が、検出した異物の大きさに応じてワイパ制御部12を制御して、ウォッシャ液の噴射力を変更してもよい。異物の大きさとウォッシャ液の噴射力との関係は、表2で表される。表2に示されるテーブルは、メモリ11に記憶される。
【0100】
【表2】

【0101】
表2において、異物の大きさは、A<Bに選ばれる。Aは、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば1cm程度に選ばれ、Bは、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば2cm程度に選ばれる。また表2において噴射力は、たとえばノズル部24から噴射するウォッシャ液の流速によって表される。また表2において噴射力F1<F2<F3である。異物が大きくなるに連れて、噴射力を大きくすることによって、大きな異物が除去されやすくなる。
【0102】
また本発明のさらに他の実施の形態では、マイコン10が、検出した異物の大きさに応じてワイパ制御部12を制御して、ウォッシャ液の噴射量を変更してもよい。異物の大きさとウォッシャ液の噴射量との関係は、表3で表される。表3に示されるテーブルは、メモリ11に記憶される。
【0103】
【表3】

【0104】
表3において、異物の大きさは、A<Bに選ばれる。Aは、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば1cm程度に選ばれ、Bは、フロントガラス22に付着した異物の付着面の面積が、たとえば2cm程度に選ばれる。また表3において噴出量M1<M2<M3である。異物が大きくなるに連れて、噴出量を大きくすることによって、大きな異物が除去されやすくなる。
【0105】
本発明のさらに他の実施の形態では、ワイパアーム23を払拭可能な範囲の全領域にわたって角変位させるのではなく、フロントガラス22のうち、異物が付着した部分を含む所定の領域を払拭するように動作させてもよい。たとえば、異物の位置とワイパブレードの角変位軸線とを結ぶ軸線から、ワイパブレードの角変位軸線まわりに±θ1度の範囲で、ワイパブレードを動作させる。このようにワイパを動作させることによって、ワイパの動作範囲を最小限として、消費電力を抑制しながら異物を除去することができる。前記θ1は、たとえば5°〜10°に選ばれる。
【0106】
また本発明のさらに他の実施の形態において、フロントガラス22に空気を吹付ける空気吹付け手段を設けて、空気を吹付けることによって異物を除去する構成としてもよい。空気吹付け手段の空気を吐出する吐出口は、フロントガラス22の上部に設けられ、吐出口から吐出される空気は、フロントガラス22の上部からボンネット51に向かって、フロントガラス22の外表面に沿って流れる。このような構成とすることによって、ワイパ装置によって払拭可能な範囲よりも、より広い範囲で異物を除去することが可能となる。
【0107】
また本発明のさらに他の実施の形態では、前述した図5に示すフローチャートにおいて、ステップb12でワイパを動作させた後、再びウォッシャ液噴出装置によって、ウォッシャ液を噴出してもよい。これによって、ワイパによってフロントガラス22を払拭した後に、異物の一部が残留している場合に、ウォッシャ液によって残留した異物の一部を洗い流すことができ、さらに異物が除去されやすくなる。
【0108】
また本発明のさらに他の実施の形態では、マイコン10は、アクセサリ(Acc)スイッチがON状態であるのかOFF状態であるのかを検出して、車両が停止状態であるのか否かを判断してもよい。この場合であっても、同様の効果を達成することができる。
【0109】
また本発明のさらに他の実施の形態では、図5に示されるフローチャートにおいて、ステップb10およびステップb11を省略する、またはステップb12を省略してもよい。この場合、異物にウォッシャ液を掛けるか、あるいは異物をワイパ装置によって払拭するだけになるが、このような動作だけであっても異物を除去することができるときには、ウォッシャ液の消費量を抑制し、あるいは消費電力を低減することができるので有効である。
【0110】
また本発明のさらに他の実施の形態では、図5のフローチャートにおいて、ステップb3およびステップb4を省略してもよい。この場合、異物の大きさに拘らず、フロントガラス22に異物が付着していれば、この付着した異物を除去することができる。
【0111】
また図1に示す異物除去装置1では、ノズル部24を移動可能な構成としているが、本発明のさらに他の実施の形態では、ノズル部24はボンネット51に固定されていてもよい。この場合、既存のノズル部を用いて異物除去装置を構成することができるので、異物除去装置を容易に構成することができる。
【0112】
また図1に示す異物除去装置1では、異物検出手段として撮像部3および撮像画像処理部4、ならびに温度センサ5および温度画像処理部6を含んで構成されるが、本発明のさらに他の実施の形態において、異物検出手段は、撮像部3および撮像画像処理部4と、温度センサ5および温度画像処理部6の少なくともいずれか一方を含んで構成されてもよい。このような構成であっても、異物として鳥の糞を想定するのであれば、異物を確実に検出することができるので、装置の構成を簡単にすることができる。
【0113】
本発明のさらに他の実施の形態では、前述した各実施の形態の構成を組合せて異物除去装置を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施の一形態である異物除去装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】車両の一部を示す模式図である。
【図3】フロントガラス22を模式的に示す平面図である。
【図4】ウォッシャ液噴出装置の構成を示す模式図である。
【図5】異物除去装置1の初期動作処理を示すフローチャートである。
【図6】マイコン10が実行する異物除去処理を示すフローチャートである。
【図7】バッテリの残電力容量をバッテリ電圧により検出する電圧検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
1 異物除去装置
2 IGスイッチ検出センサ
3 撮像部
4 撮像画像処理部
5 温度センサ
6 温度画像処理部
7 電圧検出部
8 タイマ
9 速度センサ
10 マイコン
11 メモリ
12 ワイパ制御部
13 ワイパ駆動モータ
14 ノズル部駆動モータ
15 ウォッシャ液噴出ポンプ
16 入力部
17 セキュリティセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスに付着した異物を検出する異物検出手段と、
車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、
異物検出手段によって異物を検出し、かつ停止状態検出手段によって車両が停止状態であることを検出したとき、異物を除去する異物除去手段とを含むことを特徴とする車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項2】
異物検出手段は、車両が停止状態であるとき、予め定める時間間隔をあけて窓ガラスに異物が付着しているか否かを検出することを特徴とする請求項1記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項3】
異物の大きさを測定する測定手段を含み、
異物除去手段は、測定手段によって測定された異物の大きさが、予め定める大きさ以上であれば、異物を除去することを特徴とする請求項1または2記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項4】
窓ガラス上における異物の位置を求める位置測定手段を含み、
異物除去手段は、ワイパ装置を含み、位置測定手段の測定結果に基づいて、ワイパ装置によって窓ガラスが払拭される領域に異物が付着していると判断したとき、異物を除去することを特徴とする請求項1記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項5】
窓ガラス上における異物の位置を求める位置測定手段を含み、
異物除去手段は、位置測定手段によって求められた異物の位置が、運転に支障のある位置であると判定したとき、異物を除去することを特徴とする請求項1記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項6】
異物除去手段は、ウォッシャ液噴出装置を含み、位置測定手段によって求められた異物の位置へウォッシャ液を噴出することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項7】
異物除去手段は、ウォッシャ液噴出装置を含み、測定手段によって測定された異物の大きさに基づいて、ウォッシャ液の噴出条件を決定し、決定された噴射条件によって、ウォッシャ液を噴出することを特徴とする請求項3記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。
【請求項8】
異物検出手段および異物除去手段は、車両に設けられるバッテリからの電力によって動作し、
バッテリの残電力容量を検出する残容量検出手段と、
バッテリの残電力容量が予め定める値未満のときに、異物検出手段による異物の検出動作および異物除去手段による異物の除去動作の少なくともいずれかを停止させる動作停止手段とを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の車両の窓ガラスの異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−55562(P2007−55562A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246678(P2005−246678)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】