説明

車両の衝突回避支援装置

【課題】車両の衝突回避支援装置に関し、最大高さが変化する車両の最高部位が障害物に衝突することを回避もしくは衝突速度を低減できるようにする。
【解決手段】最大高さが変化する車両に装備され、車両前方に位置する障害物Oとの衝突を回避するための衝突回避支援装置において、車両3の最大高さHを検知する最大高さ検知手段11と、車両前方で前記最大高さHと同一高さに位置する障害物Oを検知する障害物検知手段12と、前記最大高さH以下に障害物Oがあることを車両3のドライバに警報する警報手段13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の衝突回避支援装置に関し、特に、車両の荷台に積載された積荷が走行路面上方の高架橋等に衝突することを回避する、もしくは衝突速度を低減する衝突回避支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダー等により自車両前方の他車両あるいは障害物を検知し、自車とそれらが衝突する危険性がある場合にはドライバに警告し、なおも接近し、衝突が避けられないと判断した場合には自動でブレーキを作動させる前方障害物衝突被害軽減装置が実用化されている。前方障害物衝突被害軽減装置については、例えば特許文献1に開示されている。
また、特許文献2には、ルーフパネルとフロントウインドガラスとの間のフロントヘッダー部にセンサを固定し、自車両の前方に車体の最高部位よりも下端が低くなった障害物(ガードやパーキングタワーの入出庫口のかまち等)を上記センサで検知した場合に、車高が自動的に低くなるように車高を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−157472号公報
【特許文献2】特開平4−365611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラック等の貨物車両特有の事故として、積荷上部(車両の最高部位)と走行路面上方の高架橋や電線等とが接触するものがある。このような接触は、車両の高さに関する着目のない特許文献1記載の技術では自動的に回避することが難しい。
また、特許文献2記載の技術は、位置の固定されたセンサで障害物を検知し、障害物との接触を防止するために車高を低くするものであるため、トラック等のように積荷によって高さが異なる(車両の最大高さが変化する)場合には対応できず、また、車高の調整ストロークにも限度があり、対応できない場合が多い。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、最大高さが変化する車両の最高部位が障害物に衝突することを回避もしくは衝突速度を低減できるようにした、車両の衝突回避支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両の衝突回避支援装置は、最大高さが変化する車両に装備され、前記車両前方に位置する障害物との衝突を回避するための衝突回避支援装置であって、前記車両の最大高さを検知する最大高さ検知手段と、前記車両前方で前記最大高さと同一高さに位置する障害物を検知する障害物検知手段と、前記最大高さ以下に障害物があることを前記車両のドライバに警報する警報手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
なおこのとき、例えば、前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とで検知された情報に基づき前記最大高さ以下に障害物があるか否かを判断し、前記最大高さ以下に障害物があると判断した場合に前記警報手段を作動させる制御手段を設けるようにする。
また、前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とが取り付けられ、前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とを車両高さ方向に移動させる昇降手段を備え、前記制御手段は、前記昇降手段を駆動して前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とを車両高さ方向に移動させることが好ましい。
【0008】
また、前記車両を自動的に制動させる自動制動手段を備え、前記制御手段は、前記最大高さ以下に障害物があると判断した場合に前記自動制動手段に制動指示を行なうことが好ましく、さらには、前記制御手段は、前記警報手段の警報後、ドライバのブレーキ操作が予め設定された所定時間以上行なわれない場合に、前記自動制動手段に制動指示を行ない、前記車両を制動させることがより好ましい。
【0009】
また、該最大高さ検知手段は、超音波を発信し、その反射波で前記最大高さを検知する超音波式検知手段であることが好ましい。
また、前記障害物検知手段は、前記車両前方且つ路面に平行にレーザーを照射し、その反射波で障害物を検知するレーザー式検知手段であることが好ましい。
また、前記障害物検知手段による障害物の検知を行なう検知条件が予め設定され、前記検知条件が成立しない場合には前記障害物検知手段による障害物の検知を禁止する禁止手段をさらに備えることが好ましい。例えば、検知条件としては、(1)降雨・降雪・濃霧でないこと、(2)車両のピッチが小さいこと、(3)走行路面に勾配がないこと、等が挙げられる。
【0010】
したがって、前記車両のピッチ角を検知するピッチ角検知手段をさらに備え、前記ピッチ角検知手段で検知されたピッチ角が予め設定された許容値を超えた場合には、前記禁止手段により前記障害物検知手段による障害物の検知を禁止することが好ましい。
また、前記車両の走行する路面の勾配を検知する勾配検知手段をさらに備え、前記勾配検知手段で検知された路面の勾配が予め設定された許容値を超えた場合には、前記禁止手段により前記障害物検知手段による障害物の検知を禁止することが好ましい。
【0011】
また、雨又は雪を検知する雨天検知手段をさらに備え、前記雨天検知手段により雨又は雪が検知された場合には、前記禁止手段により前記障害物検知手段による障害物の検知を禁止することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両の衝突回避支援装置によれば、最大高さ検知手段で自車両の最大高さを検知し、障害物検知手段でその最大高さと同一高さに位置する障害物を検知し、警報手段が障害物の存在をドライバに警報するので、ドライバは自動的に自車両の最高部位が障害物に衝突する危険性を認知することが可能になる。そして、ドライバが積極的にブレーキ操作をする、あるいは、自動制動手段を備えて自動ブレーキをかける等して、障害物との衝突を回避もしくは衝突速度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置の全体像を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置の超音波ソナー及びレーザーセンサの検知範囲を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置の昇降装置及び揺動装置を示す模式図であって、(a)はその上面図、(b)はその側面図である。
【図4】(a),(b)ともに、本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置を備えたトラックが勾配路を走行する際に衝突のおそれのない物体を障害物として検知することを説明するための模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置のブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置のメインECUが実行する制御順序を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態の車両の衝突回避支援装置の昇降装置の変形例を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明の車両の衝突回避支援装置の実施の形態について説明する。
<構成>
図1に示すように、本実施形態の衝突回避支援装置1は、積荷2の最大高さ(車両の最大高さ)Hが積荷2の積載状態等に応じて異なる(変化する)トラック(車両)3に適用されるものであって、荷台4に積載された積荷2が車両前方且つ走行路面上方の障害物Oに衝突することを回避する、もしくは衝突速度を低減するものである。障害物Oとしては、例えば高架橋の桁や電線やゲートのバー等の、車両前方で車幅方向にある程度の長さを持って延在する物体が想定される。
【0015】
衝突回避支援装置1は、超音波ソナー(最大高さ検知手段)11と、レーザーセンサ(障害物検知手段)12と、警報ブザー(警報手段)13と、昇降装置(昇降手段)20と、揺動装置(揺動手段)30と、ブレーキECU(自動制動手段)14と、勾配センサ(勾配検知手段)41と、ピッチ角センサ(ピッチ角検知手段)42と、レインセンサ(雨天検知手段)43と、メインECU(制御手段・禁止手段)15と、を備えている。
【0016】
超音波ソナー11は、超音波を自車両3の高さ方向と直交する方向に向けて発射し、その反射波で自車両3の積荷2の最大高さを検知する超音波式検知手段である。超音波ソナー11は、周知のバックソナーやコーナーソナーと同様に構成されるものであって、数m程度先の物体を検知可能である。超音波ソナー11の検知距離は数m程度先であるので、自車両3の積荷2のみを良好に把握することができる。
【0017】
また、図3に示すように、超音波ソナー11に対しては後で詳述する揺動装置30が設けられている。超音波ソナー11は、図2に模式的に示すように、揺動装置30によって超音波の発信方向が車幅方向に揺動し、1方向の超音波発信での検知幅Lが狭くても自車両3の積荷2の略全域を検知可能範囲とすることができる。検知幅Lが狭く設定されているのは、検知幅Lが過剰に広いことにより自車両3の積荷2以外のものも検知してしまうことを避けるためである。検知幅Lが狭いので自車両3の荷物だけを把握することができる。このとき、超音波ソナー11は対象物までの距離を測ることが可能であるので、あらかじめ超音波指向角度が車体前後方向に対して何度のときには何mまでの対象物を自車両3の積荷2とするということを設定しておくと、検知した対象物が自車両3の荷台4内にあるか外にあるかを判別することができる。
【0018】
レーザーセンサ12は、車両前方且つ車両高さ方向と直交する方向に(換言すれば、車両走行方向の路面に平行に)レーザーを照射し、その反射波で車両前方の障害物Oを検知するレーザー式検知手段である。レーザーセンサ12には、指向性が高く、数10〜100m程度先の物体を検知可能であり、例えば電線のような細長い物体も良好に検知することができるものを使用することが好ましい。
【0019】
警報ブザー13は、キャビン5内に設けられ、ブザー音を鳴動させることで自車両3のドライバに警報を発してブレーキ操作を促すようになっている。
昇降装置20は、超音波ソナー11及びレーザーセンサ12を車両高さ方向に移動させる装置であって、図3(a)及び(b)に示すように、ステー21と、スティック22と、ブラケット23と、昇降用アクチュエータ24(図5参照)と、を有している。なお、車両高さ方向は、車両3の傾きによって路面に対しての高さ方向(上下方向)と一致する場合もあれば微妙に異なる場合もある。
【0020】
ステー21は、車両高さ方向に延在する柱状の部材であって、キャビン5のバックプレート5aの車幅方向中央に設置されている。そして、車両高さ方向に延びるレール溝21aが車両後方を向いて形成されている。ステー21の長さは、その設置状態でキャビン5の高さを超えない長さであるとともに、レール溝21aの長さを十分に確保できる長さに設定されている。ここでは、ステー21の上端がキャビン5の上端と同レベルまで延在している。レール溝21aの十分な長さとは、スティック22がレール溝21aの最頂点までスライドしたときに、スティック22の上端部が予め設定された高さ(例えば、法定車高制限の高さ)にまで余裕をもって到達することが可能な長さである。
【0021】
スティック22は、車両高さ方向に延在する棒状の部材であって、レール溝21aに嵌合する断面形状に形成され、レール溝21aに案内されて車両高さ方向に移動するようになっている。また、スティック22の上端部に設けられたブラケット23には、車両後方側に後述の揺動装置30を介して超音波ソナー11が取り付けられているとともに、車両前方側にレーザーセンサ12が取り付けられている。
【0022】
昇降用アクチュエータ24は、スティック22をレール溝21aに沿って移動させることで、超音波ソナー11とレーザーセンサ12とを同時に車両高さ方向に移動させる駆動手段であり、電動モータで構成されていることが好ましい。
揺動装置30は、超音波ソナー11を車幅方向に揺動させる装置であって、車両高さ方向に延びる軸体31と、軸体31の軸心を中心に揺動するアーム32と、揺動用アクチュエータ33(図5参照)と、を有している。揺動用アクチュエータ33は電動モータで構成されていることが好ましい。
【0023】
ブレーキECU14は、ブレーキ装置(図示略)を制御する電子制御ユニット(Electric Control Unit)であり、後述のメインECU15の制御信号を受けて、ドライバによるブレーキペダルの踏込操作がなくてもブレーキ装置を作動させ、車両3を自動的に制動させるものである。
勾配センサ41は、自車両3の走行する路面の勾配を検知する手段である。具体的には例えば、周知の荷重センサを利用しても良いし、あるいはカーナビ(GPS)を利用した構成でも良い。カーナビを利用する場合、緯度・経度情報で自車両3が勾配路を走行しているか否かを認識する。
【0024】
勾配センサ41は、検知した勾配が予め設定された許容値を超えたら、メインECU15に信号(勾配検知信号)を送信する。メインECU15はこの勾配検知信号を受信すると、レーザーセンサ12による障害物の検知を禁止し、自車両3と障害物との衝突可能性をドライバの判断に委ねるようにする。これは、車両3の勾配路走行時のレーザーセンサ12による障害物の誤検知を回避するためである。
【0025】
例えば登坂時、車両3は積荷2の荷重変動の影響を受けて車体前後方向の軸(前後軸)が路面に対して前上がり状態になる場合がある。その場合、図4(a)に示すように、レーザーセンサ12の照射方向も路面に対してわずかに前上がり状態になり、車両前方の高さh(>>H)の位置にある物体O′を、実際にその物体O′のある場所に到達した際には物体O′には衝突しないにもかかわらず、障害物として検知してしまうことがある。また、例えば、車両3が積荷2の荷重変動の影響を受けない場合であっても、図4(b)に示すように、坂の頂上の高さh(>>H)の位置にある物体O′を障害物として検知してしまうことがある。しかしながら、勾配センサ41を備えて、自車両3が許容傾斜角を超える勾配路を走行しているか否かを把握することで、レーザーセンサ12の作動を禁止し、レーザーセンサ12による障害物の誤検知を回避することができる。
【0026】
ピッチ角センサ42は、車両3のピッチ角を検知する手段である。レーザーセンサ12は、車両3のピッチ運動によっても影響を受けて照射方向がピッチ運動し、衝突のおそれのない物体を障害物として検知してしまうおそれがある。そこで、ピッチ角センサ42は、検知したピッチ角が予め設定された許容値を超えたら、メインECU15に信号(ピッチ信号)を送信する。メインECU15はこのピッチ信号を受信して、レーザーセンサ12による障害物の検知を禁止し、自車両3と障害物との衝突可能性をドライバの判断に委ねるようにする。
【0027】
レインセンサ43は、雨(雪も含む)を検知する手段であって、具体的には例えば、ワイパーの動作信号を受信する構成でも良いし、あるいは、水滴を検知する周知のレインセンサで構成されていても良い。降雨時や降雪時はレーザーセンサ12から照射されるレーザーが水滴等で乱反射し、障害物を良好に検知できないことが考えられる。そこで、レインセンサ43は雨ないしは雪を検知したら、メインECU15に信号(雨信号)を送信する。メインECU15はこの雨信号を受信すると、レーザーセンサ12による障害物の検知を禁止し、自車両3と障害物との衝突可能性をドライバの判断に委ねるようにする。
【0028】
メインECU15は、本装置1全体を制御する電子制御ユニットであり、主に、超音波ソナー11及びレーザーセンサ12で検知された情報に基づき積荷2の最大高さH以下に障害物があるか否かを判断し、障害物がある場合にブレーキECU14にブレーキ作動指示を行なうとともに、勾配センサ41,ピッチ角センサ42及びレインセンサ43で検知された情報に基づき、レーザーセンサ12の作動を禁止するものである。
【0029】
メインECU15には、図5に示すように、超音波ソナー11,レーザーセンサ12,警報ブザー13,ブレーキECU14,昇降用アクチュエータ24,揺動用アクチュエータ33,勾配センサ41,ピッチ角センサ42,レインセンサ43が電気的に接続されている。そして、メインECU15は、図6に示すようなフローチャートに従って各部11〜14,24,33,41〜43を作動させるあるいは作動を禁止するようになっている。
【0030】
まず、ステップS10では、昇降用アクチュエータ24及び揺動用アクチュエータ33を駆動して超音波ソナー11を上下動及び揺動させ、超音波ソナー11によって積荷2の最大高さHを検知し、レーザーセンサ12の高さ(レーザーの照射高さ)をその積荷2の最大高さHに一致させる。そしてステップS20に進む。
ステップS20では、レインセンサ43を作動させ、レインセンサ43によって雨か降っているか否かを検知する。雨が検知されなければステップS30に進み、雨が検知された場合には元に戻る。
【0031】
ステップS30では、勾配センサ41を作動させ、勾配センサ41によって路面の勾配を検知する。路面の勾配が許容値以内であればステップS40に進み、許容値を超えた場合には元に戻る。
ステップS40では、ピッチ角センサ42を作動させ、ピッチ角センサ42によってピッチ角を検知する。ピッチ角が許容値以内であればステップS50に進み、許容値を超えた場合には元に戻る。
【0032】
なお、ステップS20〜S40は、予め設定されたレーザーセンサ12用の検知条件としての(1)雨又は雪が降っていないこと、(2)車両のピッチが小さいこと、(3)走行路面に勾配がないこと、が成立しない場合に、レーザーセンサ12による障害物の検知を禁止する機能を果たす。また、ステップS20〜S40の順番はこの間で適宜に入れ替えても良い。
【0033】
ステップS50では、レーザーセンサ12を作動させ、レーザーセンサ12によって積荷2の最大高さH以下の高度にある障害物の検知を開始する。このとき、レーザーセンサ12の照射誤差(±α)を考慮して、積荷2の最大高さHと障害物Oの下端との距離が所定値(α)以内であれば、積荷2の最大高さH以下の高度に障害物があると判断すると好ましい。そしてステップS60に進む。
【0034】
ステップS60では、積荷2の最大高さH以下に障害物が一定時間以上あるか否かを判断する。そして、継続的に一定時間以上障害物が検知されればステップS70に進み、そうでなければ元に戻る。なお、ここでの一定時間の設定は、例えばカラス等の可動物で誤作動しないように、固定物の存在を検知するためである。
ステップS70では、警報ブザー13を作動させ、自車両3のドライバに警報を発して自車両3の停止を促す。そしてステップS80に進む。
【0035】
ステップS80では、ドライバのブレーキペダルの踏込操作があるか、つまり、自車両3を停止させて衝突回避するためのドライバのブレーキ操作があるか否かを判断する。ドライバのブレーキ操作があればステップS90に進み、そうでなければ元に戻る。
ステップS90では、ブレーキECU14に制動信号を送信し、自動ブレーキをかける。これによって、衝突を回避するか、あるいは衝突速度を低減する。このとき、ブレーキECU14によるブレーキ装置の作動に段階を設定しておくと好ましい。つまり、障害物までの距離や走行速度に応じてブレーキングの強弱を設定する。障害物まで遠いか、あるいは走行速度が遅くて障害物との衝突を回避可能な場合には軽いブレーキングを設定し、一方、障害物に接近しているか、あるいは走行速度が速く障害物との衝突の回避が困難な場合には強いブレーキングを設定しておくと好ましい。また、適宜の報知手段により自動ブレーキの作動を報知するようにすると良い(例えばインストルメントパネルに「BRAKE」と表示するようにすると良い)。さらに、自動ブレーキに連動してシートベルトを自動的に引き込んでドライバの身体を拘束するシートベルト自動引込手段を備えておくと好ましい。
【0036】
<作用・効果>
本発明の一実施形態に係る車両の衝突回避支援装置は上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
超音波ソナー11で自車両3の積荷2の高さHを検知し、レーザーセンサ12でその積荷2の高さHと同一高さに存在する障害物Oを検知し、警報ブザー13が障害物Oの存在をドライバに警報するので、ドライバが自動的に自車両3の積荷2と障害物Oとの衝突の危険性を認知することができる。そして、ドライバが警報ブザー13の警報を受けて積極的にブレーキ操作をし、障害物Oとの衝突を回避あるいは衝突速度を低減することができる。また、万一ドライバがブレーキ操作をしない場合には自動ブレーキを作動させるので、確実に障害物Oとの衝突を回避あるいは衝突速度を低減することができる。
【0037】
また、勾配センサ41やピッチ角センサ42やレインセンサ43を備えてレーザーセンサ12の検知条件が成立しているか否かを判定するので、勾配路走行時やピッチ運動時や雨天時にはレーザーセンサ12の作動を禁止して障害物の誤検知を回避することができる。
また、超音波ソナー11とレーザーセンサ12とは比較的安価な検知手段であるのでコストを抑えることができ、ひいては、コスト低減により本装置1の普及拡大が促進されるという利点がある。
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、ドライバに障害物Oの存在を警報する警報手段として警報ブザー13を備えているが、この警報ブザー13をブザー音以外の警告音声を出力する警報手段や、明滅することでドライバに警報する非常ランプ等の警報手段や、ステアリングやシートを振動させてドライバに警報する警報手段に代替しても良い。
また、上記実施形態では、レーザーセンサ12は車幅方向中央に1個取り付けられているが、複数個取り付けられていても良く、例えば車幅方向の両端に1個ずつの計2個取り付けられていても良い。
【0039】
また、昇降装置20の構成も、上述した構成に限らず、例えばエアシリンダ又は油圧シリンダといったシリンダ式アクチュエータを備えて構成しても良い。図7に示すように、シリンダ式アクチュエータ50を備えて構成する場合、シリンダ50のロッド51の上端部に設けたブラケット52に超音波ソナー11及びレーザーセンサ12を取り付け、メインECU15がロッド51を伸縮させることで、超音波ソナー11とレーザーセンサ12とを車両高さ方向に移動させることができる。
【0040】
また、上記実施形態の昇降装置20の構成では、超音波ソナー11とレーザーセンサ12とは同時に車両高さ方向に移動しているが、別々に車両高さ方向に移動する構成にしても良い。ただし、1つのアクチュエータで同時に車両高さ方向に移動させるほうが構成が簡素であり好ましい。
また、上記実施形態では、勾配センサ41やピッチ角センサ42により許容値を超える路面の勾配やピッチ角が検知された場合やレインセンサ43により雨さ検知された場合にはレーザーセンサ12の作動を禁止したが、このとき、レーザーセンサ12の作動が禁止されていることを適宜の報知手段により報知すると好ましい(例えば、インストルメントパネルに「LASER NOT WORK」と表示するようにすると良い)。また、勾配センサ41やピッチ角センサ42により許容値を超える路面の勾配やピッチ角が検知された場合には作動を禁止することなく、勾配センサ41やピッチ角センサ42により検知された路面の勾配やピッチ角に応じて、レーザーセンサ12のレーザー照射方向が路面に平行になるように調整するようにしても良い。このとき、勾配センサ41やピッチ角センサ42で得たデータは、瞬間的な異常値を取り除くために適宜のデータ処理を行なうのが好ましく、例えば移動平均法でデータ処理したり、あるいは、ローパスフィルタをかけたりすると良い。
【0041】
また、ピッチ角センサ42に替えて水平器を備えても良い。この場合、水平器が車体の前後軸の傾きが許容値を超えたことを検知したら、レーザーセンサ12の作動を禁止し、自車両3と障害物との衝突可能性のドライバの判断に委ねるようにする。ただし、ピッチ角センサ42であれば勾配路にも良好に対応することができて好ましい。
また、上記実施形態では、レインセンサ43により雨や雪を検知した場合にはレーザーセンサ12の作動を禁止したが、雨や雪以外に霧を検知した場合にもレーザーセンサ12の作動を禁止するようにすると好ましい。このとき、レインセンサ43を、雨や雪や霧を検知可能なセンサ(天候検知手段)に替えても良いし、あるいは、ドライバが自身で判断して操作する操作スイッチ等の操作手段を備え、この操作手段の操作状態を検知するセンサをレインセンサ43に代替して用いても良い。
【0042】
また、超音波ソナー11とレーザーセンサ12とはそれぞれ、例えばステレオカメラやミリ波レーダーや赤外線レーダー等で代替しても良い。つまり、自車両3の積荷2の最大高さHを検知可能な最大高さ検知手段と、積荷2の最大高さHと同一高さに位置する障害物を検知可能な障害物検知手段とが備えられていれば良い。障害物検知手段をカメラに代替した際には、レーザーセンサ12のようにレーザーの照射方向がぶれて障害物を誤検知することがないので、勾配センサ41やピッチ角センサ42が不要になる。
【0043】
また、上記実施形態では積荷2の高さHが変化するトラック3を例に挙げて説明したが、本装置1は最大高さが変化する車両全般に適用可能である。つまり、屋根部分の車高を変更できるキャンピングカーや、クレーン車等にも適用可能である。また、本装置1は少なくとも最大高さ検知手段と障害物検知手段と警報手段とを備えていれば、最大高さが変化する車両の最高部位が障害物に衝突することを回避もしくは衝突速度を低減することができる。上記実施形態のようにメインECU15を備えて、メインECU15が自動的に各部から得た情報に基づいて各部を作動あるいは作動を禁止することが好ましいが、例えば、最大高さ検知手段が車両の最大高さを検知したら、ドライバが手作業で障害物検知手段の移動や高さの設定を行ない、障害物検知手段は警報手段と直接電気的に接続されて障害物を検知したら警報手段に信号を送信し、警報手段が障害物の存在をドライバに警報するようにしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 衝突回避支援装置
2 積荷
3 トラック(車両)
4 荷台
5 キャビン
11 超音波ソナー(最大高さ検知手段)
12 レーザーセンサ(障害物検知手段)
13 警報ブザー(警報手段)
14 ブレーキECU(自動制動手段)
15 メインECU(制御手段・禁止手段)
20 昇降装置(昇降手段)
21 ステー
22 スティック
23 ブラケット
24 昇降用アクチュエータ
30 揺動装置(揺動手段)
31 軸体
32 アーム
33 揺動用アクチュエータ
41 勾配センサ(勾配検知手段)
42 ピッチ角センサ(ピッチ角検知手段)
43 レインセンサ(雨天検知手段)
50 シリンダ式アクチュエータ
51 ロッド
52 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大高さが変化する車両に装備され、前記車両前方に位置する障害物との衝突を回避するための衝突回避支援装置であって、
前記車両の最大高さを検知する最大高さ検知手段と、
前記車両前方で前記最大高さと同一高さに位置する障害物を検知する障害物検知手段と、
前記最大高さ以下に障害物があることを前記車両のドライバに警報する警報手段とを備えた
ことを特徴とする、車両の衝突回避支援装置。
【請求項2】
前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とで検知された情報に基づき前記最大高さ以下に障害物があるか否かを判断し、前記最大高さ以下に障害物があると判断した場合に前記警報手段を作動させる制御手段を備えた
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の衝突回避支援装置。
【請求項3】
前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とが取り付けられ、前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とを車両高さ方向に移動させる昇降手段を備え、
前記制御手段は、前記昇降手段を駆動して前記最大高さ検知手段と前記障害物検知手段とを車両高さ方向に移動させる
ことを特徴とする、請求項2記載の車両の衝突回避支援装置。
【請求項4】
前記車両を自動的に制動させる自動制動手段を備え、
前記制御手段は、前記最大高さ以下に障害物があると判断した場合に前記自動制動手段に制動指示を行なう
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の車両の衝突回避支援装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記警報手段の警報後、ドライバのブレーキ操作が予め設定された所定時間以上行なわれない場合に、前記自動制動手段に制動指示を行ない、前記車両を制動させる
ことを特徴とする、請求項4記載の車両の衝突回避支援装置。
【請求項6】
該最大高さ検知手段は、超音波を発信し、その反射波で前記最大高さを検知する超音波式検知手段である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両の衝突回避支援装置。
【請求項7】
前記障害物検知手段は、前記車両前方且つ路面に平行にレーザーを照射し、その反射波で障害物を検知するレーザー式検知手段である
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の車両の衝突回避支援装置。
【請求項8】
前記障害物検知手段による障害物の検知を行なう検知条件が予め設定され、前記検知条件が成立しない場合には前記障害物検知手段による障害物の検知を禁止する禁止手段を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の車両の衝突回避支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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