車両の走行制御装置
【課題】燃費を向上させることができると共に、自動変速機の変速に際して変速ショックを抑制させることができる車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】
容量係数制御手段126は、アップシフト開始判断手段128により自動変速機8のアップシフトの開始が判断されることに応答して、容量係数Cを低下させるため、トルクコンバータ6の滑りが大きくなり、その滑り伴うトルクコンバータ6の減衰効果が増大する。したがって、減衰効果の増大に伴い、変速ショックを抑制することができる。また、通常走行時においては、容量係数の高いトルクコンバータ6を使用することで、燃費を向上させることができる。
【解決手段】
容量係数制御手段126は、アップシフト開始判断手段128により自動変速機8のアップシフトの開始が判断されることに応答して、容量係数Cを低下させるため、トルクコンバータ6の滑りが大きくなり、その滑り伴うトルクコンバータ6の減衰効果が増大する。したがって、減衰効果の増大に伴い、変速ショックを抑制することができる。また、通常走行時においては、容量係数の高いトルクコンバータ6を使用することで、燃費を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に係り、特に、トルクコンバータの容量係数を制御可能な手段を備えた車両の走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ翼車と、タービン翼車と、そのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを、有するトルクコンバータがよく知られている。このような従来のトルクコンバータでは、ステータ翼車が一方向クラッチを介して非回転部材に連結されており、可変容量特性を備えない。一般に、トルクコンバータの流体特性としては、燃費指向であるときは高い容量(容量係数)であることが望まれるが、上記従来の構造では、ポンプ翼車、タービン翼車、ステータ翼車の形状によって一義的に定められてしまうため、走行パターンに拘わらず同一流体特性となり、燃費性能および動力性能を同時に向上させることには限界があった。
【0003】
例えば、トルクコンバータの容量係数が高い場合、ポンプ翼車の回転速度すなわち駆動源の回転速度とタービン翼車の回転速度の回転速度差が小さいので、例えば定常状態から運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速しようとしたとき、タービン翼車の回転速度の引き上がりが遅くなり、駆動力を迅速に発生させられない。これにより、高容量のトルクコンバータを採用した場合、踏み込み時にトルクを発生しやすいように定常走行時においても駆動源を高回転低負荷の領域で運転させる必要がある。一方、トルクコンバータの容量係数が低い場合、ポンプ翼車の回転速度とタービン翼車の回転速度との回転速度差が大きいため、アクセルペダル踏み込み時の応答性は向上する。但し、定常走行時でもポンプ翼車の回転速度とタービン翼車の回転速度との回転速度差が大きくなるため、トルクコンバータの内部損失が大きくなる。
【0004】
これに対し、特許文献1に示されているように、ステータ翼車と非回転部材との間にブレーキ手段を設け、そのブレーキ手段の制動トルクを調節して容量を可変とした可変容量型トルクコンバータが提案されている。これによれば、ブレーキ手段による制動トルクを調節することによって、トルクコンバータのトルク比および容量係数を無段階或いは多段階に変化させることが可能となり、運転条件や走行条件に応じて最適なトルク比および容量係数を設定でき、車両の走行性能を高めることができる。
【0005】
また、未公知ながら、ステータ翼車に電動機などの動力源を動力伝達可能に連結し、その動力源によってステータ翼車の回転を制御することで、トルクコンバータの容量係数を可変にした構成のものが提案されている。上記構成によれば、例えばステータ翼車を正回転させることで容量係数を低下させることが可能となり、容量係数の可変領域を特許文献1よりもさらに広範囲に拡大させることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開平1−169170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、燃費向上を目的にして、トルクコンバータの基本性能が高容量係数側(タイト側)に設定される傾向にある。このようにトルクコンバータの容量係数が高めに設定されると、燃費が向上される一方、下記のような問題が発生する。例えば、トルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に配設される自動変速機が変速されるとき、トルクコンバータはその変速の際に生じる変速ショックを減衰させる機能を有するが、容量係数が高いとその減衰効果が低下するため、変速ショックが増大する可能性があった。すなわち、容量係数が高くなると、ポンプ翼車とタービン翼車との滑りが抑制されるため、その滑りによって生じる減衰効果が抑制されて変速ショックが増大する可能性があった。
【0008】
これに対して、自動変速機の変速中の係合油圧を低下させることで、変速ショックを和らげることが考えられるが、変速時間が長くなるため、ドライバビリティー上のフィーリングが悪化する可能性があった。また、変速時間の増大は、自動変速機の摩擦係合装置での発熱を増加させることに繋がり、摩擦材の耐久性を悪化させる可能性があった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、燃費を向上させることができると共に、自動変速機の変速に際して変速ショックを抑制させることができる車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)ポンプ翼車と、タービン翼車と、そのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを有するトルクコンバータと、そのトルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に配設された自動変速機とを、備えた車両の走行制御装置において、(b)前記自動変速機のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段と、(c)前記トルクコンバータの容量係数を制御する容量係数制御手段とを、備え、(d)前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断手段により前記自動変速機のアップシフトの開始が判断されることに応答して、前記容量係数を低下させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両の走行制御装置において、前記容量係数制御手段は、前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機によって、前記容量係数を低下させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両の走行制御装置において、前記ステータ翼車と非回転部材とを選択的に連結するブレーキ装置と、前記ステータ翼車と前記電動機とを選択的に連結するクラッチ装置とを、備え、前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断時に、前記ブレーキ装置を解放させると共に、前記クラッチ装置を係合させる制御を開始することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3車両の走行制御装置において、前記容量係数制御手段は、前記ブレーキ装置のトルク容量が低下するまで、前記電動機による制御開始を遅延させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4の車両の走行制御装置において、前記ブレーキ装置のトルク容量の低下は、前記ステータ翼車の回転速度が逆回転したか否かに基づいて判断されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項5の車両の走行制御装置において、前記ブレーキ装置は、油圧式の摩擦係合装置であり、前記自動変速機のアップシフトが開始されてから前記ステータ翼車が逆回転されるまでの時間が予め設定された目標時間となるように、前記ブレーキ装置の油圧値を学習する学習制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記目標時間は、前記自動変速機のアップシフト開始を基準としてトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至7のいずれか1つの車両の走行制御装置において、前記容量係数制御手段は、前記自動変速機の変速終了が判定されても、所定の時間だけ容量係数を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、自動変速機のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段と、前記トルクコンバータの容量係数を制御する容量係数制御手段とを、備え、前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断手段により前記自動変速機のアップシフトの開始が判断されることに応答して、前記容量係数を低下させるものである。このようにすれば、アップシフト開始の判断に応答して、トルクコンバータの容量係数が低下されるため、トルクコンバータの滑りが大きくなり、その滑り伴うトルクコンバータの減衰効果が増大する。したがって、減衰効果の増大に伴い、変速ショックを抑制することができる。また、通常走行時においては、容量係数の高いトルクコンバータを使用することで、燃費を向上させることができる。すなわち、通常走行時においては、トルクコンバータの容量係数を高くして燃費を向上させ、変速時に容量係数を低下させて変速ショックを低減させることで、燃費向上と変速ショック低減とを両立させることができる。
【0019】
また、請求項2にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機によって、前記容量係数を低下させるため、容量係数を目標となる容量係数まで精度良く低下させることができる。
【0020】
また、請求項3にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断時に、前記ブレーキ装置を解放させると共に、前記クラッチ装置を係合させる制御を開始するため、ステータ翼車と電動機とが動力伝達可能に連結され、ステータ翼車の電動機による回転速度制御が実施可能となる。
【0021】
また、請求項4にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記ブレーキ装置のトルク容量が低下するまで、前記電動機による制御開始を遅延させるため、ブレーキ装置係合中の電動機のトルク制御を回避することができ、電動機の捩り(負のトルク)の発生を防止することができる。
【0022】
また、請求項5にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記ブレーキ装置のトルク容量の低下は、前記ステータ翼車の回転速度が逆回転したか否かに基づいて判断されるため、ブレーキ装置のトルク容量の低下を迅速、且つ、正確に判定することができる。これにより、電動機によるステータ翼車の制御開始タイミングが好適に設定される。
【0023】
また、請求項6にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、自動変速機のアップシフトが開始されてから前記ステータ翼車が逆回転されるまでの時間が予め設定された目標時間となるように、前記ブレーキ装置の油圧値を学習する学習制御手段を備えるため、ステータ翼車が逆回転される時間を好適に調整することができる。
【0024】
また、請求項7にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記目標時間は、前記自動変速機のアップシフト開始からトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されるため、変速ショックが顕著になるイナーシャ相までに容量係数が低下されるので、変速ショックを効果的に低減させることができる。
【0025】
また、請求項8にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記自動変速機の変速終了が判定されても、所定の時間だけ容量係数を低下させるため、変速終了後も継続される変速ショックを効果的に低減することができる。
【0026】
ここで、好適には、前記容量係数制御手段は、ステータ翼車の回転速度が目標となる回転速度となるように、電動機トルクのフィードバック制御を実施するものである。このようにすれば、トルクコンバータの容量係数を予め設定された容量係数に精度良く到達させることができる。
【0027】
また、好適には、前記自動変速機が低速ギヤ段である程、変速終了後に容量係数を低下させる前記所定の時間を長く設定するものである。このようにすれば、低速ギヤ段である程、長時間発生する変速ショックを好適に低減させることができる。
【0028】
また、好適には、トルクコンバータの基本特性として容量係数の高いものが使用されるものである。このようにすれば、通常の走行において燃費が向上するので、本発明の効果を効果的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の一実施例のトルクコンバータ6(可変容量型トルクコンバータ)が適用された車両用駆動装置7の骨子図である。この車両用駆動装置7は縦置き型の自動変速機8を有するものであって、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の駆動力源としてエンジン9を備えている。内燃機関にて構成されるエンジン9の出力は、流体伝動装置として機能するトルクコンバータ6、自動変速機8、図示しない差動歯車装置(終減速機)、一対の車軸などを介して左右の駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0031】
トルクコンバータ6は、エンジン9のクランク軸に連結され、そのエンジン9から回転駆動されることによってトルクコンバータ6内の作動油の流動による流体流を発生させるポンプ翼車6pと、自動変速機8の入力軸22に連結され、そのポンプ翼車6pからの流体流を受けて回転させられるタービン翼車6tと、タービン翼車6tからポンプ翼車6pへの流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車6sとを備えており、作動油(流体)を介して動力伝達を行うようになっている。
【0032】
また、上記ポンプ翼車6pとタービン翼車6tとの間にはロックアップクラッチL/Cが設けられており、後述の油圧制御回路30によってそのロックアップクラッチL/Cの係合状態、スリップ状態、或いは解放状態が制御されるようになっており、完全係合状態とされることによってポンプ翼車6pおよびタービン翼車6tが一体回転させられるすなわちエンジン9のクランク軸および入力軸22が相互に直結状態とされるようになっている。
【0033】
また、車両用駆動装置7は、トルクコンバータ6のステータ翼車6sを回転駆動するために動力伝達可能に連結された電動モータ(電動機)10と、その電動モータ10とステータ翼車6sとの間の動力伝達経路を選択的に連結(断続)させるクラッチCsと、ステータ翼車6sと非回転部材であるトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11との間を選択的に連結(断続)させるブレーキBsとを、備えている。なお、電動モータ10が本発明の電動機に対応しており、クラッチCsが本発明のクラッチ装置に対応しており、ブレーキBsが本発明のブレーキ装置に対応している。
【0034】
上記電動モータ10は、その駆動によってステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(a)に示すように後述の電子制御装置78から回転駆動のために電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記正回転方向の駆動トルクTDが与えられる。また、電動モータ10は、その駆動によってステータ翼車6sの負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記負回転方向の駆動トルクTDが与えられる。
【0035】
また、電動モータ10は、その制動(回生)によってもステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(b)に示すように例えば車両に設けられた蓄電装置等に供給すなわち蓄電される発電電流IGの大きさに比例する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動(回生)トルクTBが与えられる。
【0036】
上記クラッチCsおよびブレーキBsは、油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により摩擦係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。ステータ翼車6sは、ブレーキBsが係合されることによりケース11に固定され回転不能にされる。また、ステータ翼車6sは、ブレーキBsの係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによっても、上記正回転方向に回転するポンプ翼車6pに対して相対的にその正回転方向とは反対の負回転方向に回転させられるようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば上記係合圧が大きくなるとともに増大する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクTBが与えられる。また、ステータ翼車6sには、クラッチCsが係合されることにより上記電動モータ10による駆動トルクTDあるいは制動トルクTBがそのまま伝達されるようになっており、また、クラッチCsの係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによりその係合圧の大きさに応じて上記駆動トルクTDあるいは制動トルクTBの伝達割合が変化させられるようになっている。
【0037】
自動変速機8は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン9からの動力により回転駆動されるトルクコンバータ6のタービン軸でもある。なお、このトルクコンバータ6および自動変速機8はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはそれら軸心の下半分が省略されている。
【0038】
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリアCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0039】
図1において、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2は、クラッチCsおよびブレーキBsと同様に油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置であって、第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリアCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されるようになっている。
【0040】
また、第2回転要素RM2(キャリアCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。なお、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0041】
図3は、自動変速機8において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図3に示すように、本実施例の自動変速機8は、上記各係合装置すなわち複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2)が選択的に係合させられることにより変速比(=自動変速機8の入力軸回転速度NIN/自動変速機8の出力軸回転速度NOUT)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
【0042】
図4は、図1のエンジン9や自動変速機8、あるいはトルクコンバータ6などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。電子制御装置78には、エンジン回転速度センサ80からのエンジン回転速度NEを示す信号、タービン回転速度センサ82からのタービン回転速度NTすなわち入力軸回転速度NINを示す信号、ステータ回転速度センサ83からのステータ回転速度NSを示す信号、吸入空気量センサ84からの吸入空気量QAを示す信号、吸入空気温度センサ86からの吸入空気温度TAを示す信号、車速センサ88からの車速Vすなわち出力軸回転速度NOUTを示す信号、スロットルセンサ90からのスロットル弁開度θTHを示す信号、冷却水温センサ92からの冷却水温TWを示す信号、油温センサ94からの油圧制御回路30の作動油温度TOILを示す信号、アクセル操作量センサ96からのアクセルペダル98等のアクセル操作部材の操作量Accを示す信号、フットブレーキスイッチ100からの常用ブレーキであるフットブレーキ102の操作の有無を示す信号、レバーポジションセンサ104からのシフトレバー106のレバーポジション(操作位置)PSHを示す信号などが供給されるようになっている。
【0043】
電子制御装置78は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って上記各入力信号を処理し、電子スロットル弁108や燃料噴射装置110、点火装置112、油圧制御回路30のリニアソレノイド弁等、あるいは電動モータ10などに信号すなわち出力信号をそれぞれ出力するようになっている。電子制御装置78は、このような入出力信号処理を行うことにより、エンジン9の出力制御やトルクコンバータ6のステータ6sの回転制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用などに分けて構成される。
【0044】
本実施例においては、上記エンジン9の出力制御は、電子スロットル弁108、燃料噴射装置110、点火装置112などによって行われる。
【0045】
自動変速機8の変速制御は、油圧制御回路30によって行われ、例えば予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機8の変速すべきギヤ段を決定し、その決定されたギヤ段を成立させるように前記図3に示す作動表に従ってクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の係合解放状態を切り換える。
【0046】
トルクコンバータ6のステータ翼車6sの回転制御は、油圧制御回路30のクラッチCsやブレーキBs、あるいは電動モータ10によって行われる。具体的には、先ず、ブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる命令を油圧制御回路30へ出力する。そして、電子制御装置78の指令に従って図示しないインバータから電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する駆動トルクTD、あるいは例えばその電動モータ10から出力される発電電流IGの大きさに比例する制動トルクTBが適宜調整されることにより実行される。
【0047】
ここで、本実施例のトルクコンバータ6において、遠心力により外周側に張り付く作動油は、トルクコンバータ6の断面において図1の流線FLに沿うようにポンプ翼車6p、タービン翼車6t、スタータ翼車6sの順に循環する。図5に示すように、ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、ステータ翼車6sは、周方向において一定間隔に隔てられた複数の羽根を備えている。図5は、各翼車におけるトルクコンバータ6内の作動油の流線FLに沿った羽根の形状をそれぞれ表している。ポンプ翼車6pの羽根によってエネルギーが与えられることにより流動させられた作動油は、タービン翼車6tの羽根に作用してタービン翼車6tを回転させる。タービン翼車6tを通過した作動油は、コンバータ領域では、ステータ翼車6sの羽根に当たって方向変換させられた後、ポンプ翼車6pへ循環させられる。上記ステータ翼車6sの羽根に作動油が当たって方向変換させられることにより、そのステータ翼車6sに反力トルクが発生させられる。この反力トルクは、上記作動油の方向変換量(角度)に対応しており、後述のトルク比tの大きさに対応している。
【0048】
角運動量の定義によれば各翼車(ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、およびステータ翼車6s)が作動油(流体)に与えるトルクT[N・m]は、次式(1)のように表される。
【0049】
T=(γ/g)×Q×△(r×vU) ・・・式(1)
【0050】
式(1)において、γはトルクコンバータ6内の作動油の比重量[kg/m3]、gは重力加速度[m/s2]、Qは上記作動油の体積流量[m3/s]、△(r×vU)は各翼車における流体流の出口と入口とにおける作動油の各絶対速度のモーメントr×vU[m2/s]の差である。
【0051】
上記式(1)から、ポンプ翼車6pが作動油に与えるトルクT1[N・m]、タービン翼車6tが作動油に与えるトルクT2[N・m]、およびステータ翼車6sが作動油に与えるトルクT3[N・m]は、次式(2)乃至(4)のように表される。式(2)乃至(4)において、TPはポンプトルク[N・m]すなわちエンジントルク、TTはタービントルク[N・m]すなわち出力トルク、TSはステータ翼車6sの反力トルクの大きさと一致するステータトルク[N・m]すなわちステータ翼車6sにより作動油の流れの向きが変えられる際にそのステータ翼車6sに対してポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に作用するトルクである。
【0052】
T1= TP =(γ/g)×Q×(VUP×r2−VUS×r1)・・・式(2)
T2=−TT=(γ/g)×Q×(VUT×r3−VUP×r2)・・・式(3)
T3= TS =(γ/g)×Q×(VUS×r1−VUT×r3)・・・式(4)
【0053】
式(2)乃至(4)において、r1はポンプ翼車6pの流体流の出口bpおよびタービン翼車6tの流体流の入口atにおける回転軸心すなわち自動変速機8の入力軸(タービン軸)22からの距離[m]、r2はタービン翼車6tの流体流の出口btおよびステータ翼車6sの流体流の入口asにおける回転軸心からの距離[m]、r3はステータ翼車6sの流体流の出口bsおよびポンプ翼車6pの流体流の入口apにおける回転軸心からの距離[m]である。また、式(2)乃至(4)中において、VUPはポンプ翼車6pの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUTはタービン翼車6tの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUSはステータ翼車6sの絶対速度の円周分速度[m/s]である。
【0054】
式(2)乃至(4)からT1+T2+T3=0(零)が成立するため、ポンプトルクTP、タービントルクTT、およびステータトルクTSは次式(5)のように表される。つまり、トルクコンバータ6におけるポンプトルクTPに対するタービントルクTTのトルク増加分は、ステータトルクTSに一致する。
【0055】
TT=TP+TS ・・・式(5)
【0056】
ここで、本実施例のトルクコンバータ6は、ステータ翼車6sの反力が前述の電動モータ10の回転制御により調整される駆動トルクTDあるいは制動トルクTBにより増減されることから、タービン翼車から出力される出力トルクが従来の一定容量のトルクコンバータで得られる出力トルクに対して増減させられるようになっている。
【0057】
図6および図7は、上述の内容を示す本実施例のトルクコンバータ6の特性を示す図である。図6は、タービン翼車6tのタービン回転数NT[rpm]とポンプ翼車6pのポンプ回転数NP[rpm]との回転速度比すなわち速度比e(=NT/NP)に対する、タービントルクTTとポンプトルクTPとのトルク比(トルク増幅率)t(=TT/TP)を示す図であり、図7は、上記速度比e(=NT/NP)に対する、容量係数C(=TP/NP2)[N・m/rpm2]を示す図である。
【0058】
図6および図7において、制動トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキBsが係合されることにより、ステータ翼車6sがケース11に固定され、図6の実線に示すベースラインBtで示すように従来の一定容量のトルクコンバータと同様に設計上定まる所定のトルク比tでトルクの伝達が行われる。なお、このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7の実線で示すベースラインBCで示すようになる。
【0059】
また、クラッチCsが適宜係合された状態で電動モータ10により駆動トルクTDが所定の値に調整されてステータ翼車6sがポンプ翼車6pと同一回転方向で回転させられると、ステータトルクTSが増加し、図6のステータ正転を示す長鎖線のように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも大きいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7のステータ正転を示す長鎖線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても、電動モータ10により駆動トルクTDがさらに増減されることにより図6および図7の矢印a、dに示すように図6のベースラインBtからステータ正転を示す長鎖線以上または図7のベースラインBCからステータ正転を示す長鎖線以下の範囲で適宜設定される。
【0060】
また、クラッチCsおよびブレーキBsが解放されることによりステータトルクTSが零とされると、図6のステータフリーを示す1点鎖線で示すようにトルクの増大が行われず、トルク比t=1でトルクの伝達が行われる。その結果、トルクコンバータ6が流体継手として作動するようになる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7のステータフリーを示す1転鎖線のようになる。
【0061】
また、制動(回生)トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキBsの係合圧が所定の値に調整されてブレーキBsがスリップさせられると、ステータトルクTSがステータ翼車6sが固定される場合に比較して減少し、図6のステータモータ回生で示す短鎖線で示すように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも小さいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図6のステータモータ回生で示す短鎖線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても、制動(回生)トルクTBあるいはブレーキBsの係合圧がさらに増減されることにより図6および図7の矢印b、cに示すようにベースラインBt又はBCからステータフリーで示す1点鎖線までの範囲で適宜設定される。
【0062】
つまり、本実施例における電動モータ10は、ステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に回転制御することによりトルク比tを増加させるものである。さらに、本実施例における電動モータ10は、その制動(回生)によってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することによりトルク比tを減少させるものである。さらに、本実施例におけるブレーキBsは、そのスリップによってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することによりトルク比tを減少させるものである。
【0063】
図8は、電子制御装置78による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。変速制御手段120は、自動変速機8の変速を行う制御手段として機能するものである。変速制御手段120は、予め記憶された変速線図から実際の車速Vとエンジン9の出力を操作するスロットル弁開度θTH(またはアクセル開度Acc)に基づいて、自動変速機8の変速すべき変速段を判定し、その変速段となるように、油圧制御回路30に対して変速指令を出力する。
【0064】
車両状態算出手段122は、エンジン回転速度NE、タービン回転速度NT、ステータ回転速度NS、出力軸回転速度NOUTに対応する車速V、スロットル弁開度θTH等に基づいて、エンジントルクTE、トルクコンバータ6の速度比eやトルク比t、容量係数C等の車両状態を示す値を算出する。
【0065】
具体的には、車両状態算出手段114は、例えば、トルクマップと称されるスロットル弁開度θTHをパラメータにしてエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとの予め実験的に求められて記憶された関係から、実際のスロットル弁開度θTHおよびエンジン回転速度NEに基づいて実際のエンジントルクTEを算出する。
【0066】
また、車両状態算出手段114は、予め設定された関係(e=NT/NE)から、実際のタービン回転速度NTおよび実際のエンジン回転速度NEに基づいてトルクコンバータ6の実際の速度比eを算出する。
【0067】
また、車両状態算出手段114は、予め設定された関係(C=TE/NE2)から、実際のエンジン回転速度NEおよび上記算出された実際のエンジントルクTEに基づいてトルクコンバータ6の実際の容量係数Cを算出する。
【0068】
また、車両状態算出手段114は、トルクコンバータ6のトルク比tと速度比eと容量係数Cとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)から、上記算出された実際の速度比eおよび容量係数Cに基づいて実際のトルク比tを算出する。
【0069】
容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sを正転、逆転、或いは制動(回生)させて回転速度を制御する、或いは、ブレーキBsの係合圧を変更することで、トルクコンバータ6の容量係数Cを車両の状態に応じて好適に制御する。
【0070】
具体的には、容量係数手段126は、例えば車両の発進時あるいは加速走行時に、クラッチCsを係合させると共に、電動モータ10によりステータ翼車6sをポンプ翼車6pと同回転方向へ回転させる制御を行う。これにより、前述のようにトルクコンバータ6のトルク比tが増大されると共に、容量係数Cが低減制御る。このトルク比tの増大により発進トルクあるいは加速トルクが増大し、容量係数Cの低減によりエンジン回転のスムーズな上昇が可能となる。このような制御は、高アクセル開度等の加速(動力性能)指向走行時において有効であり、特に、エンジン回転のよりスムーズな上昇が求められるターボチャージャーエンジン等にて実行されると有効である。
【0071】
また、容量係数制御手段126は、例えば車両の発進時あるいは加速走行時に、クラッチCsを係合させるとともに、電動モータ10をステータ翼車6sに作用するトルクにより回転させられるようにする制御を行う。これにより、車両の発進時あるいは加速走行時にトルクコンバータ6がトルク増幅を行っている場合において、前述のようにステータ翼車6sが流体流から受けるトルクすなわち反力トルクによりポンプ翼車6pの回転方向とは反対方向の負回転方向に回転されるに伴う電動モータ10の回生量を制御する。これにより、トルクコンバータ6のトルク比tが低減されると共に、容量係数Cが増大される。このような制御は、低アクセル開度等の低燃費指向走行時において有効である。さらに、電動モータ10の回生による燃費向上が可能となる。
【0072】
また、容量係数制御手段126は、容量係数Cを制御することでエンジン9の作動領域を燃料消費特性の優れた領域に変更することができる。具体的には、容量係数Cを変更することで、エンジン9にかかる負荷を変更することができるため、同じ要求駆動力に対して、エンジン9の作動領域を燃料消費特性の優れた領域(例えば低回転高トルク領域)で作動されるように制御する。
【0073】
また、容量係数制御手段126は、ブレーキBsの係合圧を制御することで容量係数Cを制御する。例えば、容量係数制御手段126は、トルクコンバータレンジにおいて、ブレーキBsの係合圧をブレーキBsが完全係合される大きさまで増圧させることで、ステータ翼車6sを回転停止させる。これより、トルクコンバータ6の容量係数Cが図7に示すベースラインBCとなるように制御される。また、トルクコンバータ6がカップリングレンジとなるとブレーキBsを解放させることで、ステータ翼車6sを空転させる。また、容量係数制御手段126は、例えば走行中の駆動トルクを低減させる必要が生じた場合などにおいて、ブレーキBsの係合圧を制御してブレーキBsをスリップ係合させることにより、容量係数Cを増大する。
【0074】
また、容量係数制御手段126は、自動変速機8のアップシフトが開始されることに応答して、容量係数Cを低下させることで、自動変速機8の変速ショックを低減させる。以下、上記制御について詳細に説明する。なお、本実施例のトルクコンバータ6は、ステータ翼車6sが回転停止された(例えばブレーキBsが係合)状態では容量係数Cが高く、燃費性に適している一方、変速ショックを低減(減衰)する効果は低いものが使用されるものとする。
【0075】
アップシフト開始判断手段128は、車両の走行状態に基づいて、自動変速機8のアップシフトが開始されるか否かを判断する。具体的には、アップシフト開始判断手段128は、例えば、予め記憶された車速Vとスロットル弁開度θTHとで規定された変速線図のアップシフト線を跨いだか否かに基づいて、自動変速機8のアップシフト(アップ変速)が開始されるか否かを判定する。そして、アップシフト開始判断手段128によってアップシフトの開始が判断されると、変速制御手段120による変速制御が開始される。
【0076】
ここで、容量係数制御手段126が実施されない状態では、通常、ブレーキBsが係合されると共に、クラッチCsが解放された状態、すなわち従来のトルクコンバータとして機能する状態であるため、自動変速機8のアップシフト開始が判断されると、容量係数制御手段126は、油圧制御手段130に対して、ブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる命令を出力する。
【0077】
油圧制御手段130は、上記のように、自動変速機8のアップシフト開始が判断されると、速やかにブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる制御を開始する。図9は、自動変速機8のアップシフト時において、容量係数Cを低下させる制御作動を説明するタイムチャートである。図9に示すように、t1時点において、自動変速機8の変速が開始されると、油圧制御手段130は、ブレーキBsのブレーキ油圧PBsを急激に低下させた後、所定の待機圧PBs1で待機させる。これと同時に、油圧制御手段130は、クラッチCsのクラッチ油圧PCsを急激に上昇させた後、徐々に上昇させる。なお、図9のブレーキ油圧PBsおよびクラッチ油圧PCsは、それぞれ指令値であって、実際の油圧値とは異なるものである。
【0078】
そして、油圧制御手段130によってクラッチCsのトルク容量が大きくなると、電動モータ10とステータ翼車6sとが動力伝達可能となるが、ブレーキBsのトルク容量が大きい状態で電動モータ10のトルク制御を開始すると、電動モータ10のトルクがステータ翼車6sに有効に伝達されず、電動モータ10に捩り(負のトルク)が生じることとなる。一方、電動モータ10によるトルク制御開始タイミングが遅れると、ステータ翼車6sがトルク遮断される可能性があった。したがって、電動モータ10によるトルク制御開始時期を好適に設定しなければならない。
【0079】
そこで、トルク制御開始判定手段132は、電動モータ10によるトルク制御開始時期を好適に設定する。具体的には、トルク制御開始判定手段132は、ステータ翼車6sの回転速度NSをステータ回転速度センサ83によって検出し、そのステータ回転速度NSが逆回転(アンダーシュート)したか否かに基づいて、電動モータ10によるトルク制御開始時期を判定する。ブレーキBsのトルク容量が低下すると、ステータ翼車6sに作用するトルクに対して反力トルクを発生させることが不可能となり、ステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)することとなる。トルク制御開始判定手段132は、上記に基づいて、ステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)すると、電動モータ10によるトルク制御の開始を判断する。上記より、トルク制御開始判定手段132によって電動モータ10によるトルク制御の開始が判断されるまで、容量係数制御手段126は、電動モータ10によるトルク制御開始を遅延させる。
【0080】
また、油圧学習手段134は、自動変速機8の変速が開始されてからステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)するまでの時間tu、すなわち変速開始からトルク制御が開始されるまでの時間tu(図9においてt1時点〜t2時点)が予め設定された目標時間tmとなるように、ブレーキBsの待機圧PBs1の学習制御を実施する。ここで、上記目標時間tmは、予め実験や解析的に設定される時間であり、例えば、自動変速機8のアップシフトが開始される時間を基準として、トルク相が開始される時間に設定される。すなわち、自動変速機8のトルク相開始と略同時に電動モータ10のトルク制御が開始されるように設定される。なお、目標時間tmは、上記トルク相開始の時間に限定されるものではなく、自動変速機8のアップシフトが開始される時点を基準として、トルク相開始時点からイナーシャ相開始時点までの間に設定されるのが好ましく、少なくとも、イナーシャ相開始に間に合うような時間に設定される。また、目標時間tmは、例えば自動変速機8の変速段等に応じて変更されるなど適宜変更されても構わない。したがって、変速時における変速開始時点からステータ翼車6sの逆転(アンダーシュート)が発生するまでの時間tuが変速毎に検出され、時間tuと目標時間tmとの時間差に基づいて、ブレーキBsの待機圧PBs1が逐次好適な油圧値に変更される。
【0081】
そして、ステータ翼車6sの逆転(アンダーシュート)が検出されると、t2時点において電動モータ10によるトルク制御が開始される。容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sの回転速度NS(ステータ回転速度NS)が予め設定された目標回転速度NSPとなるように、電動モータ10のトルク制御を実施する。具体的には、ステータ回転速度NSと目標回転速度NSPとの回転速度差に基づいて、電動モータ10のトルク量を変更する所謂フィードバック制御が実施される。ここで、前記目標回転速度NSPは、予め実験的または解析的に設定される値であり、トルクコンバータ6の容量係数Cが予め設定された所定値CPとなる値に設定される。上記所定値CPが容量係数Cを低下させたときの目標となる容量係数であり、予め実験的または解析的に設定されて、変速時に発生する変速ショックを好適に低減(減衰)させることができる値に設定される。
【0082】
上記制御が実施されることで、図9に示すようにt2時点〜t4時点において、エンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとの回転速度差が徐々に大きくなる、すなわち滑り量が大きくなり、自動変速機8の変速ショックを低減(減衰)させる効果が増大する。そして、t4時点において自動変速機8のイナーシャ相が開始されると、図に示すように、自動変速機8の出力軸24のトルク変動が減衰させられる。したがって、イナーシャ相中の変速ショックが低減される。
【0083】
同期判定手段136は、自動変速機8の入力軸回転速度NIN(NT)が自動変速機8の変速後に予測される入力軸回転速度NINPと同期したか否かを判定する。すなわち、同期判定手段136は、自動変速機8の変速が完了したか否かを判定する。なお、変速後に設定される回転速度NINPは、変速開始前の出力軸回転速度NOUTと変速後の自動変速機8の変速比との積で算出される。なお、同期判定手段136は、図9において、t5時点の検出に対応している。
【0084】
また、図9に示すように、自動変速機8の変速がt5時点で完了しても、変速ショックが急に停止するものでなく所定時間継続するものであるため、容量係数制御手段126は、所定の待機時間tnを設定し、t5時点から待機時間tnだけ容量係数を低下させる制御を継続する。なお、所定の待機時間tnは、予め実験的または解析的に設定され、変速終了後に継続される変速ショックを考慮した時間に設定される。例えば、変速ショックは、自動変速機8が低速ギヤ段である程継続時間も長くなるので、低速ギヤ段である程、待機時間tnが長く設定される。
【0085】
そして、t5時点から所定の待機時間tn経過すると、t6時点において、容量係数制御手段126は、容量係数Cを通常の状態に復元する。具体的には、容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sの回転速度NSを電動モータ10によって速やかに低下させる制御を実施すると共に、ブレーキBsのブレーキ油圧を上昇させる。次いで、ステータ翼車6sの回転速度が零となると、クラッチCsのクラッチ油圧を低下させる。
【0086】
図10は、電子制御装置78の制御作動の要部すなわち自動変速機8の変速時に発生する変速ショックを低減すると共に、燃費を向上させることができる制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施されるものである。
【0087】
先ず、アップシフト開始判断手段128に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、自動変速機8のアップシフトが開始されるか否かが判定される。このSA1は、図9のt1時点に対応している。SA1が否定されると、本ルーチンは終了させられる。
【0088】
SA1が肯定されると、油圧制御手段130(容量係数制御手段126)に対応するSA2において、ブレーキBsが解放されると共に、クラッチCsが係合されるようにそれぞれの油圧制御が開始される。このSA2は、図9のt1時点に対応している。そして、油圧制御手段130(容量係数制御手段126)に対応するSA3において、ブレーキBsのブレーキ油圧PBsが待機圧PBs1に維持制御される。このSA3は、t1時点〜t2時点の間に対応している。次いで、トルク制御開始判定手段132に対応するSA4において、ステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)したか否かが判定される。このSA4は、t2時点に対応している。SA4が否定される場合、SA4が肯定されるまで同様の判定が繰り返し実施される。
【0089】
一方、SA4が肯定されると、油圧学習手段134に対応するSA5において、ブレーキBsの待機圧PBs1の学習制御が実施される。次いで、容量係数制御手段126に対応するSA6において、電動モータ10によるフィードバック制御が開始される。具体的には、ステータ翼車6sのステータ回転速度NSが目標回転速度NSPとなるようにトルク制御を実施することで、トルクコンバータの容量係数Cを所定値CPまで低下させる。このSA6は、t2時点〜t6時点に対応している。そして、同期判定手段136に対応するSA7において、自動変速機8の入力軸回転速度NINが変速後に予測される回転速度と同期したか否か、すなわち自動変速機8のアップシフトが完了したか否かが判定される。SA7が否定されると、上記同期が完了するまで同様の判定が繰り返し実施される。SA7が肯定されると、容量係数制御手段126に対応するSA8において、変速が終了されても、予め設定された所定の待機時間tnだけ容量係数の低下制御が継続される。このSA7は、t5時点〜t6時点に対応している。そして、待機時間tnが経過すると、容量係数制御手段126に対応するSA9において、電動モータ10のトルク低下制御が実施され、ステータ翼車の回転速度NSが零回転となるように制御される。そして、油圧制御手段130(容量係数制御手段126)に対応するSA10において、ブレーキBsが係合されると共に、クラッチCsが解放されるように油圧が制御される。
【0090】
上述のように、本実施例によれば、自動変速機8のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段128と、トルクコンバータ6の容量係数Cを制御する容量係数制御手段126とを、備え、容量係数制御手段126は、アップシフト開始判断手段128により自動変速機8のアップシフトの開始が判断されることに応答して、容量係数Cを低下させるものである。このようにすれば、アップシフト開始の判断に応答して、トルクコンバータ6の容量係数Cが低下されるため、トルクコンバータ6の滑りが大きくなり、その滑り伴うトルクコンバータ6の減衰効果が増大する。したがって、減衰効果の増大に伴い、変速ショックを抑制することができる。また、通常走行時においては、容量係数の高いトルクコンバータ6を使用することで、燃費を向上させることができる。すなわち、通常走行時においては、トルクコンバータ6の容量係数を高くして燃費を向上させ、変速時に容量係数Cを低下させて変速ショックを低減させることで、燃費向上と変速ショック低減とを両立させることができる。
【0091】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sに動力伝達可能に連結された電動モータ10によって、容量係数Cを低下させるため、容量係数Cを目標となる容量係数CPまで精度良く低下させることができる。
【0092】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、アップシフト開始判断時に、ブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる制御を開始するため、ステータ翼車6sと電動モータ10とが動力伝達可能に連結され、ステータ翼車6sの電動モータ10による回転速度制御が実施可能となる。
【0093】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、ブレーキBsのトルク容量が低下するまで、電動モータ10による制御開始を遅延させるため、ブレーキBs係合中の電動モータ10のトルク制御を回避することができ、電動モータ10の捩り(負のトルク)の発生を防止することができる。
【0094】
また、本実施例によれば、ブレーキBsのトルク容量の低下は、ステータ翼車6sの回転速度NSが逆回転したか否かに基づいて判断されるため、ブレーキBsのトルク容量の低下を迅速、且つ、正確に判定することができる。これにより、電動モータ10によるステータ翼車6sの制御開始タイミングが好適に設定される。
【0095】
また、本実施例によれば、自動変速機8のアップシフトが開始されてからステータ翼車6sが逆回転されるまでの時間tuが予め設定された目標時間tmとなるように、ブレーキBsの油圧値を学習する学習制御手段134を備えるため、ステータ翼車6sが逆回転される時間を好適に調整することができる。
【0096】
また、本実施例によれば、目標時間tmは、自動変速機8のアップシフト開始を基準としてトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されるため、変速ショックが顕著になるイナーシャ相までに容量係数Cが低下されて変速ショックを効果的に低減させることができる。
【0097】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、自動変速機8の変速終了が判定されても、所定の時間tnだけ容量係数Cを低下させるため、変速終了後も継続される変速ショックを効果的に低減することができる。
【0098】
また、本実実施例によれば、容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sの回転速度NSが目標となる回転速度NSPとなるように、電動モータ10のフィードバック制御を実施するため、トルクコンバータ6の容量係数Cを予め設定された容量係数CPに精度良く到達させることができる。
【0099】
また、本実施例によれば、自動変速機8が低速ギヤ段である程、変速終了後に容量係数Cを低下させる所定の時間tnを長く設定するものであるため、低速ギヤ段である程、長時間発生する変速ショックを好適に低減させることができる。
【0100】
また、本実施例によれば、トルクコンバータ6の基本特性として容量係数Cの高いものが使用されるため、通常の走行において燃費が向上するので、本発明の効果を効果的に得ることができる。
【0101】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0102】
図11は、本発明の他の実施例であるトルクコンバータ140の構成を説明する骨子図である。トルクコンバータ140は、前述したトルクコンバータ6のクラッチCsが省略された構成であり、他の構成は同様であるためその説明を省略する。クラッチCsが省略されることで、電動モータ10とステータ翼車6sとは常時動力伝達可能に連結されている。上記のような構成であっても本発明を適用することができる。
【0103】
ステータ翼車6sと電動モータ10が常時連結される場合、クラッチCsの係合および解放制御が不要となるだけであって、他の制御は前述の実施例と同様である。そして、電動モータ10のトルク制御のタイミングは、前述の実施例と同様にトルク制御開始判定手段132に基づいて実施すればよく、トルク制御を実施しないときは電動モータ10を空転させることで、クラッチCsが解放された状態と略同様となり、前述の実施例と同様の効果が得られることとなる。
【0104】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0105】
例えば、前述の実施例において、自動変速機8の構造は前述の実施例のものに限定されず、遊星歯車装置又はクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2などの各係合要素の数や変速段数、および上記各係合要素が上記遊星歯車装置のどの要素と選択的に連結されているか等に特に限定はない。また、たとえば、FF型、4WD型、あるいはその他の駆動形式の車両にも適用されうる。また、内燃機関にて構成されるエンジン9の他に、例えば、電動機等が設けられて駆動輪が駆動される例えばTHS等のハイブリッド車両等であっても本発明は適用されうる。
【0106】
また、前述の実施例において、図9のフローチャートに示す油圧学習手段134に対応するSA5は、ステータ翼車6sの逆転(アンダーシュート)直後に実施されているが、SA5は、ステータ翼車6sのアンダーシュート検出後であれば学習可能であり、他のステップの後に実施されても構わない。
【0107】
また、前述の実施例では、電動モータ10によってステータ翼車6sを回転駆動させていたが、上記電動モータ10に限定されず、例えばステータ翼車6sと自動変速機8の入力軸22とを選択的に連結する摩擦係合装置を設け、その摩擦係合装置を適宜係合またはスリップ係合させることでステータ翼車6sを回転させなど、他の方法でステータ翼車6sを回転させても構わない。
【0108】
また、前述の実施例では、電動モータ10とステータ翼車6sとを選択的に連結するクラッチCsおよびケース11とステータ翼車6sとを選択的に連結するブレーキBsが設けられているが、例えばさらに、電動モータ10と入力軸22とを選択的に連結するクラッチを設けた構成などであっても構わない。すなわち、電動モータ10と入力軸22とが連結されることで、電動モータ10をハイブリッド用の電動機として兼用することもできる。
【0109】
また、前述の実施例では、電動モータ10とステータ翼車6sとがクラッチCsを介して直接的に連結されているが、例えば、遊星歯車装置をこれらの間に介装させるなどして、遊星歯車装置によるトルク変換を可能とする構成であっても構わない。
【0110】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施例のトルクコンバータが適用された車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1のトルクコンバータの電動モータにおける駆動電流と駆動トルクとの関係を示す図である。
【図3】図1の自動変速機において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する作動表である。
【図4】図1のエンジンや自動変速機、あるいはトルクコンバータなどを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。
【図5】図1のトルクコンバータにおいて、ポンプ翼車、タービン翼車、ステータ翼車の羽根の流線に沿った断面形状をそれぞれ展開して示す図である。
【図6】図1のトルクコンバータの特性を示す図であって、速度比に対するトルク比を示す図である。
【図7】図1のトルクコンバータの特性を示す図であって、速度比に対する容量係数を示す図である。
【図8】図1のトルクコンバータを有する車両の走行制御装置として機能する電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】自動変速機のアップシフト時において、容量係数を低下させるときの制御作動を説明するタイムチャートである。
【図10】電子制御装置の制御作動の要部すなわち自動変速機の変速時に発生する変速ショックを低減すると共に、燃費を向上させることができる制御作動を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施例であるトルクコンバータの構成を説明する骨子図である。
【符号の説明】
【0112】
6:トルクコンバータ
6p:ポンプ翼車
6t:タービン翼車
6s:ステータ翼車
8:自動変速機
10:電動モータ(電動機)
126:容量係数制御手段
128:アップシフト開始判断手段
Bs:ブレーキ(ブレーキ装置)
Cs:クラッチ(クラッチ装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に係り、特に、トルクコンバータの容量係数を制御可能な手段を備えた車両の走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ翼車と、タービン翼車と、そのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを、有するトルクコンバータがよく知られている。このような従来のトルクコンバータでは、ステータ翼車が一方向クラッチを介して非回転部材に連結されており、可変容量特性を備えない。一般に、トルクコンバータの流体特性としては、燃費指向であるときは高い容量(容量係数)であることが望まれるが、上記従来の構造では、ポンプ翼車、タービン翼車、ステータ翼車の形状によって一義的に定められてしまうため、走行パターンに拘わらず同一流体特性となり、燃費性能および動力性能を同時に向上させることには限界があった。
【0003】
例えば、トルクコンバータの容量係数が高い場合、ポンプ翼車の回転速度すなわち駆動源の回転速度とタービン翼車の回転速度の回転速度差が小さいので、例えば定常状態から運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速しようとしたとき、タービン翼車の回転速度の引き上がりが遅くなり、駆動力を迅速に発生させられない。これにより、高容量のトルクコンバータを採用した場合、踏み込み時にトルクを発生しやすいように定常走行時においても駆動源を高回転低負荷の領域で運転させる必要がある。一方、トルクコンバータの容量係数が低い場合、ポンプ翼車の回転速度とタービン翼車の回転速度との回転速度差が大きいため、アクセルペダル踏み込み時の応答性は向上する。但し、定常走行時でもポンプ翼車の回転速度とタービン翼車の回転速度との回転速度差が大きくなるため、トルクコンバータの内部損失が大きくなる。
【0004】
これに対し、特許文献1に示されているように、ステータ翼車と非回転部材との間にブレーキ手段を設け、そのブレーキ手段の制動トルクを調節して容量を可変とした可変容量型トルクコンバータが提案されている。これによれば、ブレーキ手段による制動トルクを調節することによって、トルクコンバータのトルク比および容量係数を無段階或いは多段階に変化させることが可能となり、運転条件や走行条件に応じて最適なトルク比および容量係数を設定でき、車両の走行性能を高めることができる。
【0005】
また、未公知ながら、ステータ翼車に電動機などの動力源を動力伝達可能に連結し、その動力源によってステータ翼車の回転を制御することで、トルクコンバータの容量係数を可変にした構成のものが提案されている。上記構成によれば、例えばステータ翼車を正回転させることで容量係数を低下させることが可能となり、容量係数の可変領域を特許文献1よりもさらに広範囲に拡大させることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開平1−169170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、燃費向上を目的にして、トルクコンバータの基本性能が高容量係数側(タイト側)に設定される傾向にある。このようにトルクコンバータの容量係数が高めに設定されると、燃費が向上される一方、下記のような問題が発生する。例えば、トルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に配設される自動変速機が変速されるとき、トルクコンバータはその変速の際に生じる変速ショックを減衰させる機能を有するが、容量係数が高いとその減衰効果が低下するため、変速ショックが増大する可能性があった。すなわち、容量係数が高くなると、ポンプ翼車とタービン翼車との滑りが抑制されるため、その滑りによって生じる減衰効果が抑制されて変速ショックが増大する可能性があった。
【0008】
これに対して、自動変速機の変速中の係合油圧を低下させることで、変速ショックを和らげることが考えられるが、変速時間が長くなるため、ドライバビリティー上のフィーリングが悪化する可能性があった。また、変速時間の増大は、自動変速機の摩擦係合装置での発熱を増加させることに繋がり、摩擦材の耐久性を悪化させる可能性があった。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、燃費を向上させることができると共に、自動変速機の変速に際して変速ショックを抑制させることができる車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)ポンプ翼車と、タービン翼車と、そのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを有するトルクコンバータと、そのトルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に配設された自動変速機とを、備えた車両の走行制御装置において、(b)前記自動変速機のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段と、(c)前記トルクコンバータの容量係数を制御する容量係数制御手段とを、備え、(d)前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断手段により前記自動変速機のアップシフトの開始が判断されることに応答して、前記容量係数を低下させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両の走行制御装置において、前記容量係数制御手段は、前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機によって、前記容量係数を低下させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両の走行制御装置において、前記ステータ翼車と非回転部材とを選択的に連結するブレーキ装置と、前記ステータ翼車と前記電動機とを選択的に連結するクラッチ装置とを、備え、前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断時に、前記ブレーキ装置を解放させると共に、前記クラッチ装置を係合させる制御を開始することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3車両の走行制御装置において、前記容量係数制御手段は、前記ブレーキ装置のトルク容量が低下するまで、前記電動機による制御開始を遅延させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4の車両の走行制御装置において、前記ブレーキ装置のトルク容量の低下は、前記ステータ翼車の回転速度が逆回転したか否かに基づいて判断されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項5の車両の走行制御装置において、前記ブレーキ装置は、油圧式の摩擦係合装置であり、前記自動変速機のアップシフトが開始されてから前記ステータ翼車が逆回転されるまでの時間が予め設定された目標時間となるように、前記ブレーキ装置の油圧値を学習する学習制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記目標時間は、前記自動変速機のアップシフト開始を基準としてトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至7のいずれか1つの車両の走行制御装置において、前記容量係数制御手段は、前記自動変速機の変速終了が判定されても、所定の時間だけ容量係数を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、自動変速機のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段と、前記トルクコンバータの容量係数を制御する容量係数制御手段とを、備え、前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断手段により前記自動変速機のアップシフトの開始が判断されることに応答して、前記容量係数を低下させるものである。このようにすれば、アップシフト開始の判断に応答して、トルクコンバータの容量係数が低下されるため、トルクコンバータの滑りが大きくなり、その滑り伴うトルクコンバータの減衰効果が増大する。したがって、減衰効果の増大に伴い、変速ショックを抑制することができる。また、通常走行時においては、容量係数の高いトルクコンバータを使用することで、燃費を向上させることができる。すなわち、通常走行時においては、トルクコンバータの容量係数を高くして燃費を向上させ、変速時に容量係数を低下させて変速ショックを低減させることで、燃費向上と変速ショック低減とを両立させることができる。
【0019】
また、請求項2にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機によって、前記容量係数を低下させるため、容量係数を目標となる容量係数まで精度良く低下させることができる。
【0020】
また、請求項3にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断時に、前記ブレーキ装置を解放させると共に、前記クラッチ装置を係合させる制御を開始するため、ステータ翼車と電動機とが動力伝達可能に連結され、ステータ翼車の電動機による回転速度制御が実施可能となる。
【0021】
また、請求項4にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記ブレーキ装置のトルク容量が低下するまで、前記電動機による制御開始を遅延させるため、ブレーキ装置係合中の電動機のトルク制御を回避することができ、電動機の捩り(負のトルク)の発生を防止することができる。
【0022】
また、請求項5にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記ブレーキ装置のトルク容量の低下は、前記ステータ翼車の回転速度が逆回転したか否かに基づいて判断されるため、ブレーキ装置のトルク容量の低下を迅速、且つ、正確に判定することができる。これにより、電動機によるステータ翼車の制御開始タイミングが好適に設定される。
【0023】
また、請求項6にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、自動変速機のアップシフトが開始されてから前記ステータ翼車が逆回転されるまでの時間が予め設定された目標時間となるように、前記ブレーキ装置の油圧値を学習する学習制御手段を備えるため、ステータ翼車が逆回転される時間を好適に調整することができる。
【0024】
また、請求項7にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記目標時間は、前記自動変速機のアップシフト開始からトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されるため、変速ショックが顕著になるイナーシャ相までに容量係数が低下されるので、変速ショックを効果的に低減させることができる。
【0025】
また、請求項8にかかる発明の車両の走行制御装置によれば、前記容量係数制御手段は、前記自動変速機の変速終了が判定されても、所定の時間だけ容量係数を低下させるため、変速終了後も継続される変速ショックを効果的に低減することができる。
【0026】
ここで、好適には、前記容量係数制御手段は、ステータ翼車の回転速度が目標となる回転速度となるように、電動機トルクのフィードバック制御を実施するものである。このようにすれば、トルクコンバータの容量係数を予め設定された容量係数に精度良く到達させることができる。
【0027】
また、好適には、前記自動変速機が低速ギヤ段である程、変速終了後に容量係数を低下させる前記所定の時間を長く設定するものである。このようにすれば、低速ギヤ段である程、長時間発生する変速ショックを好適に低減させることができる。
【0028】
また、好適には、トルクコンバータの基本特性として容量係数の高いものが使用されるものである。このようにすれば、通常の走行において燃費が向上するので、本発明の効果を効果的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の一実施例のトルクコンバータ6(可変容量型トルクコンバータ)が適用された車両用駆動装置7の骨子図である。この車両用駆動装置7は縦置き型の自動変速機8を有するものであって、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の駆動力源としてエンジン9を備えている。内燃機関にて構成されるエンジン9の出力は、流体伝動装置として機能するトルクコンバータ6、自動変速機8、図示しない差動歯車装置(終減速機)、一対の車軸などを介して左右の駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0031】
トルクコンバータ6は、エンジン9のクランク軸に連結され、そのエンジン9から回転駆動されることによってトルクコンバータ6内の作動油の流動による流体流を発生させるポンプ翼車6pと、自動変速機8の入力軸22に連結され、そのポンプ翼車6pからの流体流を受けて回転させられるタービン翼車6tと、タービン翼車6tからポンプ翼車6pへの流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車6sとを備えており、作動油(流体)を介して動力伝達を行うようになっている。
【0032】
また、上記ポンプ翼車6pとタービン翼車6tとの間にはロックアップクラッチL/Cが設けられており、後述の油圧制御回路30によってそのロックアップクラッチL/Cの係合状態、スリップ状態、或いは解放状態が制御されるようになっており、完全係合状態とされることによってポンプ翼車6pおよびタービン翼車6tが一体回転させられるすなわちエンジン9のクランク軸および入力軸22が相互に直結状態とされるようになっている。
【0033】
また、車両用駆動装置7は、トルクコンバータ6のステータ翼車6sを回転駆動するために動力伝達可能に連結された電動モータ(電動機)10と、その電動モータ10とステータ翼車6sとの間の動力伝達経路を選択的に連結(断続)させるクラッチCsと、ステータ翼車6sと非回転部材であるトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11との間を選択的に連結(断続)させるブレーキBsとを、備えている。なお、電動モータ10が本発明の電動機に対応しており、クラッチCsが本発明のクラッチ装置に対応しており、ブレーキBsが本発明のブレーキ装置に対応している。
【0034】
上記電動モータ10は、その駆動によってステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(a)に示すように後述の電子制御装置78から回転駆動のために電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記正回転方向の駆動トルクTDが与えられる。また、電動モータ10は、その駆動によってステータ翼車6sの負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記負回転方向の駆動トルクTDが与えられる。
【0035】
また、電動モータ10は、その制動(回生)によってもステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(b)に示すように例えば車両に設けられた蓄電装置等に供給すなわち蓄電される発電電流IGの大きさに比例する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動(回生)トルクTBが与えられる。
【0036】
上記クラッチCsおよびブレーキBsは、油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により摩擦係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。ステータ翼車6sは、ブレーキBsが係合されることによりケース11に固定され回転不能にされる。また、ステータ翼車6sは、ブレーキBsの係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによっても、上記正回転方向に回転するポンプ翼車6pに対して相対的にその正回転方向とは反対の負回転方向に回転させられるようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば上記係合圧が大きくなるとともに増大する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクTBが与えられる。また、ステータ翼車6sには、クラッチCsが係合されることにより上記電動モータ10による駆動トルクTDあるいは制動トルクTBがそのまま伝達されるようになっており、また、クラッチCsの係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによりその係合圧の大きさに応じて上記駆動トルクTDあるいは制動トルクTBの伝達割合が変化させられるようになっている。
【0037】
自動変速機8は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン9からの動力により回転駆動されるトルクコンバータ6のタービン軸でもある。なお、このトルクコンバータ6および自動変速機8はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはそれら軸心の下半分が省略されている。
【0038】
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリアCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0039】
図1において、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2は、クラッチCsおよびブレーキBsと同様に油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置であって、第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリアCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されるようになっている。
【0040】
また、第2回転要素RM2(キャリアCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。なお、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0041】
図3は、自動変速機8において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図3に示すように、本実施例の自動変速機8は、上記各係合装置すなわち複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2)が選択的に係合させられることにより変速比(=自動変速機8の入力軸回転速度NIN/自動変速機8の出力軸回転速度NOUT)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
【0042】
図4は、図1のエンジン9や自動変速機8、あるいはトルクコンバータ6などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。電子制御装置78には、エンジン回転速度センサ80からのエンジン回転速度NEを示す信号、タービン回転速度センサ82からのタービン回転速度NTすなわち入力軸回転速度NINを示す信号、ステータ回転速度センサ83からのステータ回転速度NSを示す信号、吸入空気量センサ84からの吸入空気量QAを示す信号、吸入空気温度センサ86からの吸入空気温度TAを示す信号、車速センサ88からの車速Vすなわち出力軸回転速度NOUTを示す信号、スロットルセンサ90からのスロットル弁開度θTHを示す信号、冷却水温センサ92からの冷却水温TWを示す信号、油温センサ94からの油圧制御回路30の作動油温度TOILを示す信号、アクセル操作量センサ96からのアクセルペダル98等のアクセル操作部材の操作量Accを示す信号、フットブレーキスイッチ100からの常用ブレーキであるフットブレーキ102の操作の有無を示す信号、レバーポジションセンサ104からのシフトレバー106のレバーポジション(操作位置)PSHを示す信号などが供給されるようになっている。
【0043】
電子制御装置78は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って上記各入力信号を処理し、電子スロットル弁108や燃料噴射装置110、点火装置112、油圧制御回路30のリニアソレノイド弁等、あるいは電動モータ10などに信号すなわち出力信号をそれぞれ出力するようになっている。電子制御装置78は、このような入出力信号処理を行うことにより、エンジン9の出力制御やトルクコンバータ6のステータ6sの回転制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用などに分けて構成される。
【0044】
本実施例においては、上記エンジン9の出力制御は、電子スロットル弁108、燃料噴射装置110、点火装置112などによって行われる。
【0045】
自動変速機8の変速制御は、油圧制御回路30によって行われ、例えば予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機8の変速すべきギヤ段を決定し、その決定されたギヤ段を成立させるように前記図3に示す作動表に従ってクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の係合解放状態を切り換える。
【0046】
トルクコンバータ6のステータ翼車6sの回転制御は、油圧制御回路30のクラッチCsやブレーキBs、あるいは電動モータ10によって行われる。具体的には、先ず、ブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる命令を油圧制御回路30へ出力する。そして、電子制御装置78の指令に従って図示しないインバータから電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する駆動トルクTD、あるいは例えばその電動モータ10から出力される発電電流IGの大きさに比例する制動トルクTBが適宜調整されることにより実行される。
【0047】
ここで、本実施例のトルクコンバータ6において、遠心力により外周側に張り付く作動油は、トルクコンバータ6の断面において図1の流線FLに沿うようにポンプ翼車6p、タービン翼車6t、スタータ翼車6sの順に循環する。図5に示すように、ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、ステータ翼車6sは、周方向において一定間隔に隔てられた複数の羽根を備えている。図5は、各翼車におけるトルクコンバータ6内の作動油の流線FLに沿った羽根の形状をそれぞれ表している。ポンプ翼車6pの羽根によってエネルギーが与えられることにより流動させられた作動油は、タービン翼車6tの羽根に作用してタービン翼車6tを回転させる。タービン翼車6tを通過した作動油は、コンバータ領域では、ステータ翼車6sの羽根に当たって方向変換させられた後、ポンプ翼車6pへ循環させられる。上記ステータ翼車6sの羽根に作動油が当たって方向変換させられることにより、そのステータ翼車6sに反力トルクが発生させられる。この反力トルクは、上記作動油の方向変換量(角度)に対応しており、後述のトルク比tの大きさに対応している。
【0048】
角運動量の定義によれば各翼車(ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、およびステータ翼車6s)が作動油(流体)に与えるトルクT[N・m]は、次式(1)のように表される。
【0049】
T=(γ/g)×Q×△(r×vU) ・・・式(1)
【0050】
式(1)において、γはトルクコンバータ6内の作動油の比重量[kg/m3]、gは重力加速度[m/s2]、Qは上記作動油の体積流量[m3/s]、△(r×vU)は各翼車における流体流の出口と入口とにおける作動油の各絶対速度のモーメントr×vU[m2/s]の差である。
【0051】
上記式(1)から、ポンプ翼車6pが作動油に与えるトルクT1[N・m]、タービン翼車6tが作動油に与えるトルクT2[N・m]、およびステータ翼車6sが作動油に与えるトルクT3[N・m]は、次式(2)乃至(4)のように表される。式(2)乃至(4)において、TPはポンプトルク[N・m]すなわちエンジントルク、TTはタービントルク[N・m]すなわち出力トルク、TSはステータ翼車6sの反力トルクの大きさと一致するステータトルク[N・m]すなわちステータ翼車6sにより作動油の流れの向きが変えられる際にそのステータ翼車6sに対してポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に作用するトルクである。
【0052】
T1= TP =(γ/g)×Q×(VUP×r2−VUS×r1)・・・式(2)
T2=−TT=(γ/g)×Q×(VUT×r3−VUP×r2)・・・式(3)
T3= TS =(γ/g)×Q×(VUS×r1−VUT×r3)・・・式(4)
【0053】
式(2)乃至(4)において、r1はポンプ翼車6pの流体流の出口bpおよびタービン翼車6tの流体流の入口atにおける回転軸心すなわち自動変速機8の入力軸(タービン軸)22からの距離[m]、r2はタービン翼車6tの流体流の出口btおよびステータ翼車6sの流体流の入口asにおける回転軸心からの距離[m]、r3はステータ翼車6sの流体流の出口bsおよびポンプ翼車6pの流体流の入口apにおける回転軸心からの距離[m]である。また、式(2)乃至(4)中において、VUPはポンプ翼車6pの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUTはタービン翼車6tの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUSはステータ翼車6sの絶対速度の円周分速度[m/s]である。
【0054】
式(2)乃至(4)からT1+T2+T3=0(零)が成立するため、ポンプトルクTP、タービントルクTT、およびステータトルクTSは次式(5)のように表される。つまり、トルクコンバータ6におけるポンプトルクTPに対するタービントルクTTのトルク増加分は、ステータトルクTSに一致する。
【0055】
TT=TP+TS ・・・式(5)
【0056】
ここで、本実施例のトルクコンバータ6は、ステータ翼車6sの反力が前述の電動モータ10の回転制御により調整される駆動トルクTDあるいは制動トルクTBにより増減されることから、タービン翼車から出力される出力トルクが従来の一定容量のトルクコンバータで得られる出力トルクに対して増減させられるようになっている。
【0057】
図6および図7は、上述の内容を示す本実施例のトルクコンバータ6の特性を示す図である。図6は、タービン翼車6tのタービン回転数NT[rpm]とポンプ翼車6pのポンプ回転数NP[rpm]との回転速度比すなわち速度比e(=NT/NP)に対する、タービントルクTTとポンプトルクTPとのトルク比(トルク増幅率)t(=TT/TP)を示す図であり、図7は、上記速度比e(=NT/NP)に対する、容量係数C(=TP/NP2)[N・m/rpm2]を示す図である。
【0058】
図6および図7において、制動トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキBsが係合されることにより、ステータ翼車6sがケース11に固定され、図6の実線に示すベースラインBtで示すように従来の一定容量のトルクコンバータと同様に設計上定まる所定のトルク比tでトルクの伝達が行われる。なお、このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7の実線で示すベースラインBCで示すようになる。
【0059】
また、クラッチCsが適宜係合された状態で電動モータ10により駆動トルクTDが所定の値に調整されてステータ翼車6sがポンプ翼車6pと同一回転方向で回転させられると、ステータトルクTSが増加し、図6のステータ正転を示す長鎖線のように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも大きいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7のステータ正転を示す長鎖線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても、電動モータ10により駆動トルクTDがさらに増減されることにより図6および図7の矢印a、dに示すように図6のベースラインBtからステータ正転を示す長鎖線以上または図7のベースラインBCからステータ正転を示す長鎖線以下の範囲で適宜設定される。
【0060】
また、クラッチCsおよびブレーキBsが解放されることによりステータトルクTSが零とされると、図6のステータフリーを示す1点鎖線で示すようにトルクの増大が行われず、トルク比t=1でトルクの伝達が行われる。その結果、トルクコンバータ6が流体継手として作動するようになる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7のステータフリーを示す1転鎖線のようになる。
【0061】
また、制動(回生)トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキBsの係合圧が所定の値に調整されてブレーキBsがスリップさせられると、ステータトルクTSがステータ翼車6sが固定される場合に比較して減少し、図6のステータモータ回生で示す短鎖線で示すように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも小さいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図6のステータモータ回生で示す短鎖線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても、制動(回生)トルクTBあるいはブレーキBsの係合圧がさらに増減されることにより図6および図7の矢印b、cに示すようにベースラインBt又はBCからステータフリーで示す1点鎖線までの範囲で適宜設定される。
【0062】
つまり、本実施例における電動モータ10は、ステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に回転制御することによりトルク比tを増加させるものである。さらに、本実施例における電動モータ10は、その制動(回生)によってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することによりトルク比tを減少させるものである。さらに、本実施例におけるブレーキBsは、そのスリップによってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することによりトルク比tを減少させるものである。
【0063】
図8は、電子制御装置78による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。変速制御手段120は、自動変速機8の変速を行う制御手段として機能するものである。変速制御手段120は、予め記憶された変速線図から実際の車速Vとエンジン9の出力を操作するスロットル弁開度θTH(またはアクセル開度Acc)に基づいて、自動変速機8の変速すべき変速段を判定し、その変速段となるように、油圧制御回路30に対して変速指令を出力する。
【0064】
車両状態算出手段122は、エンジン回転速度NE、タービン回転速度NT、ステータ回転速度NS、出力軸回転速度NOUTに対応する車速V、スロットル弁開度θTH等に基づいて、エンジントルクTE、トルクコンバータ6の速度比eやトルク比t、容量係数C等の車両状態を示す値を算出する。
【0065】
具体的には、車両状態算出手段114は、例えば、トルクマップと称されるスロットル弁開度θTHをパラメータにしてエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとの予め実験的に求められて記憶された関係から、実際のスロットル弁開度θTHおよびエンジン回転速度NEに基づいて実際のエンジントルクTEを算出する。
【0066】
また、車両状態算出手段114は、予め設定された関係(e=NT/NE)から、実際のタービン回転速度NTおよび実際のエンジン回転速度NEに基づいてトルクコンバータ6の実際の速度比eを算出する。
【0067】
また、車両状態算出手段114は、予め設定された関係(C=TE/NE2)から、実際のエンジン回転速度NEおよび上記算出された実際のエンジントルクTEに基づいてトルクコンバータ6の実際の容量係数Cを算出する。
【0068】
また、車両状態算出手段114は、トルクコンバータ6のトルク比tと速度比eと容量係数Cとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)から、上記算出された実際の速度比eおよび容量係数Cに基づいて実際のトルク比tを算出する。
【0069】
容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sを正転、逆転、或いは制動(回生)させて回転速度を制御する、或いは、ブレーキBsの係合圧を変更することで、トルクコンバータ6の容量係数Cを車両の状態に応じて好適に制御する。
【0070】
具体的には、容量係数手段126は、例えば車両の発進時あるいは加速走行時に、クラッチCsを係合させると共に、電動モータ10によりステータ翼車6sをポンプ翼車6pと同回転方向へ回転させる制御を行う。これにより、前述のようにトルクコンバータ6のトルク比tが増大されると共に、容量係数Cが低減制御る。このトルク比tの増大により発進トルクあるいは加速トルクが増大し、容量係数Cの低減によりエンジン回転のスムーズな上昇が可能となる。このような制御は、高アクセル開度等の加速(動力性能)指向走行時において有効であり、特に、エンジン回転のよりスムーズな上昇が求められるターボチャージャーエンジン等にて実行されると有効である。
【0071】
また、容量係数制御手段126は、例えば車両の発進時あるいは加速走行時に、クラッチCsを係合させるとともに、電動モータ10をステータ翼車6sに作用するトルクにより回転させられるようにする制御を行う。これにより、車両の発進時あるいは加速走行時にトルクコンバータ6がトルク増幅を行っている場合において、前述のようにステータ翼車6sが流体流から受けるトルクすなわち反力トルクによりポンプ翼車6pの回転方向とは反対方向の負回転方向に回転されるに伴う電動モータ10の回生量を制御する。これにより、トルクコンバータ6のトルク比tが低減されると共に、容量係数Cが増大される。このような制御は、低アクセル開度等の低燃費指向走行時において有効である。さらに、電動モータ10の回生による燃費向上が可能となる。
【0072】
また、容量係数制御手段126は、容量係数Cを制御することでエンジン9の作動領域を燃料消費特性の優れた領域に変更することができる。具体的には、容量係数Cを変更することで、エンジン9にかかる負荷を変更することができるため、同じ要求駆動力に対して、エンジン9の作動領域を燃料消費特性の優れた領域(例えば低回転高トルク領域)で作動されるように制御する。
【0073】
また、容量係数制御手段126は、ブレーキBsの係合圧を制御することで容量係数Cを制御する。例えば、容量係数制御手段126は、トルクコンバータレンジにおいて、ブレーキBsの係合圧をブレーキBsが完全係合される大きさまで増圧させることで、ステータ翼車6sを回転停止させる。これより、トルクコンバータ6の容量係数Cが図7に示すベースラインBCとなるように制御される。また、トルクコンバータ6がカップリングレンジとなるとブレーキBsを解放させることで、ステータ翼車6sを空転させる。また、容量係数制御手段126は、例えば走行中の駆動トルクを低減させる必要が生じた場合などにおいて、ブレーキBsの係合圧を制御してブレーキBsをスリップ係合させることにより、容量係数Cを増大する。
【0074】
また、容量係数制御手段126は、自動変速機8のアップシフトが開始されることに応答して、容量係数Cを低下させることで、自動変速機8の変速ショックを低減させる。以下、上記制御について詳細に説明する。なお、本実施例のトルクコンバータ6は、ステータ翼車6sが回転停止された(例えばブレーキBsが係合)状態では容量係数Cが高く、燃費性に適している一方、変速ショックを低減(減衰)する効果は低いものが使用されるものとする。
【0075】
アップシフト開始判断手段128は、車両の走行状態に基づいて、自動変速機8のアップシフトが開始されるか否かを判断する。具体的には、アップシフト開始判断手段128は、例えば、予め記憶された車速Vとスロットル弁開度θTHとで規定された変速線図のアップシフト線を跨いだか否かに基づいて、自動変速機8のアップシフト(アップ変速)が開始されるか否かを判定する。そして、アップシフト開始判断手段128によってアップシフトの開始が判断されると、変速制御手段120による変速制御が開始される。
【0076】
ここで、容量係数制御手段126が実施されない状態では、通常、ブレーキBsが係合されると共に、クラッチCsが解放された状態、すなわち従来のトルクコンバータとして機能する状態であるため、自動変速機8のアップシフト開始が判断されると、容量係数制御手段126は、油圧制御手段130に対して、ブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる命令を出力する。
【0077】
油圧制御手段130は、上記のように、自動変速機8のアップシフト開始が判断されると、速やかにブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる制御を開始する。図9は、自動変速機8のアップシフト時において、容量係数Cを低下させる制御作動を説明するタイムチャートである。図9に示すように、t1時点において、自動変速機8の変速が開始されると、油圧制御手段130は、ブレーキBsのブレーキ油圧PBsを急激に低下させた後、所定の待機圧PBs1で待機させる。これと同時に、油圧制御手段130は、クラッチCsのクラッチ油圧PCsを急激に上昇させた後、徐々に上昇させる。なお、図9のブレーキ油圧PBsおよびクラッチ油圧PCsは、それぞれ指令値であって、実際の油圧値とは異なるものである。
【0078】
そして、油圧制御手段130によってクラッチCsのトルク容量が大きくなると、電動モータ10とステータ翼車6sとが動力伝達可能となるが、ブレーキBsのトルク容量が大きい状態で電動モータ10のトルク制御を開始すると、電動モータ10のトルクがステータ翼車6sに有効に伝達されず、電動モータ10に捩り(負のトルク)が生じることとなる。一方、電動モータ10によるトルク制御開始タイミングが遅れると、ステータ翼車6sがトルク遮断される可能性があった。したがって、電動モータ10によるトルク制御開始時期を好適に設定しなければならない。
【0079】
そこで、トルク制御開始判定手段132は、電動モータ10によるトルク制御開始時期を好適に設定する。具体的には、トルク制御開始判定手段132は、ステータ翼車6sの回転速度NSをステータ回転速度センサ83によって検出し、そのステータ回転速度NSが逆回転(アンダーシュート)したか否かに基づいて、電動モータ10によるトルク制御開始時期を判定する。ブレーキBsのトルク容量が低下すると、ステータ翼車6sに作用するトルクに対して反力トルクを発生させることが不可能となり、ステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)することとなる。トルク制御開始判定手段132は、上記に基づいて、ステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)すると、電動モータ10によるトルク制御の開始を判断する。上記より、トルク制御開始判定手段132によって電動モータ10によるトルク制御の開始が判断されるまで、容量係数制御手段126は、電動モータ10によるトルク制御開始を遅延させる。
【0080】
また、油圧学習手段134は、自動変速機8の変速が開始されてからステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)するまでの時間tu、すなわち変速開始からトルク制御が開始されるまでの時間tu(図9においてt1時点〜t2時点)が予め設定された目標時間tmとなるように、ブレーキBsの待機圧PBs1の学習制御を実施する。ここで、上記目標時間tmは、予め実験や解析的に設定される時間であり、例えば、自動変速機8のアップシフトが開始される時間を基準として、トルク相が開始される時間に設定される。すなわち、自動変速機8のトルク相開始と略同時に電動モータ10のトルク制御が開始されるように設定される。なお、目標時間tmは、上記トルク相開始の時間に限定されるものではなく、自動変速機8のアップシフトが開始される時点を基準として、トルク相開始時点からイナーシャ相開始時点までの間に設定されるのが好ましく、少なくとも、イナーシャ相開始に間に合うような時間に設定される。また、目標時間tmは、例えば自動変速機8の変速段等に応じて変更されるなど適宜変更されても構わない。したがって、変速時における変速開始時点からステータ翼車6sの逆転(アンダーシュート)が発生するまでの時間tuが変速毎に検出され、時間tuと目標時間tmとの時間差に基づいて、ブレーキBsの待機圧PBs1が逐次好適な油圧値に変更される。
【0081】
そして、ステータ翼車6sの逆転(アンダーシュート)が検出されると、t2時点において電動モータ10によるトルク制御が開始される。容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sの回転速度NS(ステータ回転速度NS)が予め設定された目標回転速度NSPとなるように、電動モータ10のトルク制御を実施する。具体的には、ステータ回転速度NSと目標回転速度NSPとの回転速度差に基づいて、電動モータ10のトルク量を変更する所謂フィードバック制御が実施される。ここで、前記目標回転速度NSPは、予め実験的または解析的に設定される値であり、トルクコンバータ6の容量係数Cが予め設定された所定値CPとなる値に設定される。上記所定値CPが容量係数Cを低下させたときの目標となる容量係数であり、予め実験的または解析的に設定されて、変速時に発生する変速ショックを好適に低減(減衰)させることができる値に設定される。
【0082】
上記制御が実施されることで、図9に示すようにt2時点〜t4時点において、エンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとの回転速度差が徐々に大きくなる、すなわち滑り量が大きくなり、自動変速機8の変速ショックを低減(減衰)させる効果が増大する。そして、t4時点において自動変速機8のイナーシャ相が開始されると、図に示すように、自動変速機8の出力軸24のトルク変動が減衰させられる。したがって、イナーシャ相中の変速ショックが低減される。
【0083】
同期判定手段136は、自動変速機8の入力軸回転速度NIN(NT)が自動変速機8の変速後に予測される入力軸回転速度NINPと同期したか否かを判定する。すなわち、同期判定手段136は、自動変速機8の変速が完了したか否かを判定する。なお、変速後に設定される回転速度NINPは、変速開始前の出力軸回転速度NOUTと変速後の自動変速機8の変速比との積で算出される。なお、同期判定手段136は、図9において、t5時点の検出に対応している。
【0084】
また、図9に示すように、自動変速機8の変速がt5時点で完了しても、変速ショックが急に停止するものでなく所定時間継続するものであるため、容量係数制御手段126は、所定の待機時間tnを設定し、t5時点から待機時間tnだけ容量係数を低下させる制御を継続する。なお、所定の待機時間tnは、予め実験的または解析的に設定され、変速終了後に継続される変速ショックを考慮した時間に設定される。例えば、変速ショックは、自動変速機8が低速ギヤ段である程継続時間も長くなるので、低速ギヤ段である程、待機時間tnが長く設定される。
【0085】
そして、t5時点から所定の待機時間tn経過すると、t6時点において、容量係数制御手段126は、容量係数Cを通常の状態に復元する。具体的には、容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sの回転速度NSを電動モータ10によって速やかに低下させる制御を実施すると共に、ブレーキBsのブレーキ油圧を上昇させる。次いで、ステータ翼車6sの回転速度が零となると、クラッチCsのクラッチ油圧を低下させる。
【0086】
図10は、電子制御装置78の制御作動の要部すなわち自動変速機8の変速時に発生する変速ショックを低減すると共に、燃費を向上させることができる制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施されるものである。
【0087】
先ず、アップシフト開始判断手段128に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、自動変速機8のアップシフトが開始されるか否かが判定される。このSA1は、図9のt1時点に対応している。SA1が否定されると、本ルーチンは終了させられる。
【0088】
SA1が肯定されると、油圧制御手段130(容量係数制御手段126)に対応するSA2において、ブレーキBsが解放されると共に、クラッチCsが係合されるようにそれぞれの油圧制御が開始される。このSA2は、図9のt1時点に対応している。そして、油圧制御手段130(容量係数制御手段126)に対応するSA3において、ブレーキBsのブレーキ油圧PBsが待機圧PBs1に維持制御される。このSA3は、t1時点〜t2時点の間に対応している。次いで、トルク制御開始判定手段132に対応するSA4において、ステータ翼車6sが逆転(アンダーシュート)したか否かが判定される。このSA4は、t2時点に対応している。SA4が否定される場合、SA4が肯定されるまで同様の判定が繰り返し実施される。
【0089】
一方、SA4が肯定されると、油圧学習手段134に対応するSA5において、ブレーキBsの待機圧PBs1の学習制御が実施される。次いで、容量係数制御手段126に対応するSA6において、電動モータ10によるフィードバック制御が開始される。具体的には、ステータ翼車6sのステータ回転速度NSが目標回転速度NSPとなるようにトルク制御を実施することで、トルクコンバータの容量係数Cを所定値CPまで低下させる。このSA6は、t2時点〜t6時点に対応している。そして、同期判定手段136に対応するSA7において、自動変速機8の入力軸回転速度NINが変速後に予測される回転速度と同期したか否か、すなわち自動変速機8のアップシフトが完了したか否かが判定される。SA7が否定されると、上記同期が完了するまで同様の判定が繰り返し実施される。SA7が肯定されると、容量係数制御手段126に対応するSA8において、変速が終了されても、予め設定された所定の待機時間tnだけ容量係数の低下制御が継続される。このSA7は、t5時点〜t6時点に対応している。そして、待機時間tnが経過すると、容量係数制御手段126に対応するSA9において、電動モータ10のトルク低下制御が実施され、ステータ翼車の回転速度NSが零回転となるように制御される。そして、油圧制御手段130(容量係数制御手段126)に対応するSA10において、ブレーキBsが係合されると共に、クラッチCsが解放されるように油圧が制御される。
【0090】
上述のように、本実施例によれば、自動変速機8のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段128と、トルクコンバータ6の容量係数Cを制御する容量係数制御手段126とを、備え、容量係数制御手段126は、アップシフト開始判断手段128により自動変速機8のアップシフトの開始が判断されることに応答して、容量係数Cを低下させるものである。このようにすれば、アップシフト開始の判断に応答して、トルクコンバータ6の容量係数Cが低下されるため、トルクコンバータ6の滑りが大きくなり、その滑り伴うトルクコンバータ6の減衰効果が増大する。したがって、減衰効果の増大に伴い、変速ショックを抑制することができる。また、通常走行時においては、容量係数の高いトルクコンバータ6を使用することで、燃費を向上させることができる。すなわち、通常走行時においては、トルクコンバータ6の容量係数を高くして燃費を向上させ、変速時に容量係数Cを低下させて変速ショックを低減させることで、燃費向上と変速ショック低減とを両立させることができる。
【0091】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sに動力伝達可能に連結された電動モータ10によって、容量係数Cを低下させるため、容量係数Cを目標となる容量係数CPまで精度良く低下させることができる。
【0092】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、アップシフト開始判断時に、ブレーキBsを解放させると共に、クラッチCsを係合させる制御を開始するため、ステータ翼車6sと電動モータ10とが動力伝達可能に連結され、ステータ翼車6sの電動モータ10による回転速度制御が実施可能となる。
【0093】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、ブレーキBsのトルク容量が低下するまで、電動モータ10による制御開始を遅延させるため、ブレーキBs係合中の電動モータ10のトルク制御を回避することができ、電動モータ10の捩り(負のトルク)の発生を防止することができる。
【0094】
また、本実施例によれば、ブレーキBsのトルク容量の低下は、ステータ翼車6sの回転速度NSが逆回転したか否かに基づいて判断されるため、ブレーキBsのトルク容量の低下を迅速、且つ、正確に判定することができる。これにより、電動モータ10によるステータ翼車6sの制御開始タイミングが好適に設定される。
【0095】
また、本実施例によれば、自動変速機8のアップシフトが開始されてからステータ翼車6sが逆回転されるまでの時間tuが予め設定された目標時間tmとなるように、ブレーキBsの油圧値を学習する学習制御手段134を備えるため、ステータ翼車6sが逆回転される時間を好適に調整することができる。
【0096】
また、本実施例によれば、目標時間tmは、自動変速機8のアップシフト開始を基準としてトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されるため、変速ショックが顕著になるイナーシャ相までに容量係数Cが低下されて変速ショックを効果的に低減させることができる。
【0097】
また、本実施例によれば、容量係数制御手段126は、自動変速機8の変速終了が判定されても、所定の時間tnだけ容量係数Cを低下させるため、変速終了後も継続される変速ショックを効果的に低減することができる。
【0098】
また、本実実施例によれば、容量係数制御手段126は、ステータ翼車6sの回転速度NSが目標となる回転速度NSPとなるように、電動モータ10のフィードバック制御を実施するため、トルクコンバータ6の容量係数Cを予め設定された容量係数CPに精度良く到達させることができる。
【0099】
また、本実施例によれば、自動変速機8が低速ギヤ段である程、変速終了後に容量係数Cを低下させる所定の時間tnを長く設定するものであるため、低速ギヤ段である程、長時間発生する変速ショックを好適に低減させることができる。
【0100】
また、本実施例によれば、トルクコンバータ6の基本特性として容量係数Cの高いものが使用されるため、通常の走行において燃費が向上するので、本発明の効果を効果的に得ることができる。
【0101】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0102】
図11は、本発明の他の実施例であるトルクコンバータ140の構成を説明する骨子図である。トルクコンバータ140は、前述したトルクコンバータ6のクラッチCsが省略された構成であり、他の構成は同様であるためその説明を省略する。クラッチCsが省略されることで、電動モータ10とステータ翼車6sとは常時動力伝達可能に連結されている。上記のような構成であっても本発明を適用することができる。
【0103】
ステータ翼車6sと電動モータ10が常時連結される場合、クラッチCsの係合および解放制御が不要となるだけであって、他の制御は前述の実施例と同様である。そして、電動モータ10のトルク制御のタイミングは、前述の実施例と同様にトルク制御開始判定手段132に基づいて実施すればよく、トルク制御を実施しないときは電動モータ10を空転させることで、クラッチCsが解放された状態と略同様となり、前述の実施例と同様の効果が得られることとなる。
【0104】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0105】
例えば、前述の実施例において、自動変速機8の構造は前述の実施例のものに限定されず、遊星歯車装置又はクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2などの各係合要素の数や変速段数、および上記各係合要素が上記遊星歯車装置のどの要素と選択的に連結されているか等に特に限定はない。また、たとえば、FF型、4WD型、あるいはその他の駆動形式の車両にも適用されうる。また、内燃機関にて構成されるエンジン9の他に、例えば、電動機等が設けられて駆動輪が駆動される例えばTHS等のハイブリッド車両等であっても本発明は適用されうる。
【0106】
また、前述の実施例において、図9のフローチャートに示す油圧学習手段134に対応するSA5は、ステータ翼車6sの逆転(アンダーシュート)直後に実施されているが、SA5は、ステータ翼車6sのアンダーシュート検出後であれば学習可能であり、他のステップの後に実施されても構わない。
【0107】
また、前述の実施例では、電動モータ10によってステータ翼車6sを回転駆動させていたが、上記電動モータ10に限定されず、例えばステータ翼車6sと自動変速機8の入力軸22とを選択的に連結する摩擦係合装置を設け、その摩擦係合装置を適宜係合またはスリップ係合させることでステータ翼車6sを回転させなど、他の方法でステータ翼車6sを回転させても構わない。
【0108】
また、前述の実施例では、電動モータ10とステータ翼車6sとを選択的に連結するクラッチCsおよびケース11とステータ翼車6sとを選択的に連結するブレーキBsが設けられているが、例えばさらに、電動モータ10と入力軸22とを選択的に連結するクラッチを設けた構成などであっても構わない。すなわち、電動モータ10と入力軸22とが連結されることで、電動モータ10をハイブリッド用の電動機として兼用することもできる。
【0109】
また、前述の実施例では、電動モータ10とステータ翼車6sとがクラッチCsを介して直接的に連結されているが、例えば、遊星歯車装置をこれらの間に介装させるなどして、遊星歯車装置によるトルク変換を可能とする構成であっても構わない。
【0110】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施例のトルクコンバータが適用された車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1のトルクコンバータの電動モータにおける駆動電流と駆動トルクとの関係を示す図である。
【図3】図1の自動変速機において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する作動表である。
【図4】図1のエンジンや自動変速機、あるいはトルクコンバータなどを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。
【図5】図1のトルクコンバータにおいて、ポンプ翼車、タービン翼車、ステータ翼車の羽根の流線に沿った断面形状をそれぞれ展開して示す図である。
【図6】図1のトルクコンバータの特性を示す図であって、速度比に対するトルク比を示す図である。
【図7】図1のトルクコンバータの特性を示す図であって、速度比に対する容量係数を示す図である。
【図8】図1のトルクコンバータを有する車両の走行制御装置として機能する電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図9】自動変速機のアップシフト時において、容量係数を低下させるときの制御作動を説明するタイムチャートである。
【図10】電子制御装置の制御作動の要部すなわち自動変速機の変速時に発生する変速ショックを低減すると共に、燃費を向上させることができる制御作動を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施例であるトルクコンバータの構成を説明する骨子図である。
【符号の説明】
【0112】
6:トルクコンバータ
6p:ポンプ翼車
6t:タービン翼車
6s:ステータ翼車
8:自動変速機
10:電動モータ(電動機)
126:容量係数制御手段
128:アップシフト開始判断手段
Bs:ブレーキ(ブレーキ装置)
Cs:クラッチ(クラッチ装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ翼車と、タービン翼車と、該タービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを有するトルクコンバータと、該トルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に配設された自動変速機とを、備えた車両の走行制御装置であって、
前記自動変速機のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段と、
前記トルクコンバータの容量係数を制御する容量係数制御手段とを、備え、
前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断手段により前記自動変速機のアップシフトの開始が判断されることに応答して、前記容量係数を低下させることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記容量係数制御手段は、前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機によって、前記容量係数を低下させることを特徴とする請求項1の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記ステータ翼車と非回転部材とを選択的に連結するブレーキ装置と、前記ステータ翼車と前記電動機とを選択的に連結するクラッチ装置とを、備え、
前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断時に、前記ブレーキ装置を解放させると共に、前記クラッチ装置を係合させる制御を開始することを特徴とする請求項2の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記容量係数制御手段は、前記ブレーキ装置のトルク容量が低下するまで、前記電動機による制御開始を遅延させることを特徴とする請求項3の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記ブレーキ装置のトルク容量の低下は、前記ステータ翼車の回転速度が逆回転したか否かに基づいて判断されることを特徴とする請求項4の車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記ブレーキ装置は、油圧式の摩擦係合装置であり、
前記自動変速機のアップシフトが開始されてから前記ステータ翼車が逆回転されるまでの時間が予め設定された目標時間となるように、前記ブレーキ装置の油圧値を学習する学習制御手段を備えることを特徴とする請求項5の車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記目標時間は、前記自動変速機のアップシフト開始を基準としてトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されることを特徴とする請求項6の車両の走行制御装置。
【請求項8】
前記容量係数制御手段は、前記自動変速機の変速終了が判定されても、所定の時間だけ容量係数を低下させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つの車両の走行制御装置。
【請求項1】
ポンプ翼車と、タービン翼車と、該タービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを有するトルクコンバータと、該トルクコンバータと駆動輪との間の動力伝達経路に配設された自動変速機とを、備えた車両の走行制御装置であって、
前記自動変速機のアップシフト開始を判断するアップシフト開始判断手段と、
前記トルクコンバータの容量係数を制御する容量係数制御手段とを、備え、
前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断手段により前記自動変速機のアップシフトの開始が判断されることに応答して、前記容量係数を低下させることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記容量係数制御手段は、前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機によって、前記容量係数を低下させることを特徴とする請求項1の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記ステータ翼車と非回転部材とを選択的に連結するブレーキ装置と、前記ステータ翼車と前記電動機とを選択的に連結するクラッチ装置とを、備え、
前記容量係数制御手段は、前記アップシフト開始判断時に、前記ブレーキ装置を解放させると共に、前記クラッチ装置を係合させる制御を開始することを特徴とする請求項2の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記容量係数制御手段は、前記ブレーキ装置のトルク容量が低下するまで、前記電動機による制御開始を遅延させることを特徴とする請求項3の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記ブレーキ装置のトルク容量の低下は、前記ステータ翼車の回転速度が逆回転したか否かに基づいて判断されることを特徴とする請求項4の車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記ブレーキ装置は、油圧式の摩擦係合装置であり、
前記自動変速機のアップシフトが開始されてから前記ステータ翼車が逆回転されるまでの時間が予め設定された目標時間となるように、前記ブレーキ装置の油圧値を学習する学習制御手段を備えることを特徴とする請求項5の車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記目標時間は、前記自動変速機のアップシフト開始を基準としてトルク相開始、或いはイナーシャ相開始までの時間に設定されることを特徴とする請求項6の車両の走行制御装置。
【請求項8】
前記容量係数制御手段は、前記自動変速機の変速終了が判定されても、所定の時間だけ容量係数を低下させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つの車両の走行制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−38274(P2010−38274A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202410(P2008−202410)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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