説明

車両の車体前部構造

【課題】車両の前突により跳ね上げられた物体が車体の上面に落下して衝突し、車体に衝撃力を与えるとき、衝撃力の反力に因って物体に生じる傷害値を、より効果的に低減できるようにする。
【解決手段】カウルルーバ18が、フード15の後端縁部側から後方に延び、後端縁部がフロントカウル3の上方に位置するアッパルーバ19と、アッパルーバ19の下方域で、アッパルーバ19の前端縁部側から後方に延び、後端縁部がフロントカウル3に連結されるロアルーバ20と、ロアルーバ20から上方に向かって一体的に突出し、上端面33aでアッパルーバ19を支持可能とする支持台33とを有する。支持台33の上端面33aを前下方に向かうよう傾斜させ、アッパルーバ19の上面に対し衝撃力Fが与えられたとき、アッパルーバ19の後部側が支持台33の上端面33aを前下方に向かって摺動可能となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の幅方向に延びるフロントカウルとこのフロントカウルの前方に離れて配置されるフードとの間に配置されるカウルルーバを備えた車両の車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体前部構造には、従来、下記特許文献1,2に示されるものがある。これら公報のものに依れば、車両の車体前部は、車体の幅方向に延びるフロントカウルとこのフロントカウルの前方に離れて配置されるフードとの間に配置されるカウルルーバを備えている。また、このカウルルーバは、車体の幅方向に延びると共に上記フードの後端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの上方に位置するアッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、車体の幅方向に延びると共に上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの下部に連結されるロアルーバとを備えている。
【0003】
上記構成において、従来、カウルルーバが、上記ロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部とを有したものがある。
【0004】
そして、上記車両の走行中に、この車両がその前方の何らかの物体に衝突(前突)したとする。この場合、この前突により跳ね上げられた物体が、上記フードの後端縁部の上面やカウルルーバのアッパルーバの上面など、車体の上面に落下して衝突することがある。そして、この場合には、物体の衝突により、上記アッパルーバの上面には、上記物体から間接に、もしくは直接に衝撃力が与えられる。
【0005】
ここで、上記衝撃力は、この衝撃力に基づくエネルギーが上記支持台とロアルーバとを順次伝達した後、最終的に上記フロントカウルで強固に支持されるが、上記エネルギーの伝達途中において、上記脆弱部が円滑に屈曲することにより、上記エネルギーが吸収される。これにより、上記フロントカウルなど車体側に与えられる衝撃力が緩和されると共に、上記カウルルーバから物体に対し与えられる反力も緩和されて、この物体に生じる傷害値が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−137554号公報
【特許文献2】特開2010−158940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように、前突により車体の上面に落下した物体がアッパルーバの上面に衝突して衝撃力を与えるとき、この衝撃力に基づくエネルギーは、上記ロアルーバに形成された脆弱部の屈曲により吸収される。しかし、上記支持台はアッパルーバを支持するために、ある程度の剛性を有している。このため、上記物体がアッパルーバに衝撃力を与えた当初である「衝突初期」に、この衝撃力に基づくエネルギーが脆弱部に向かって上記支持台を伝わる間では、上記エネルギーは十分には吸収され難い。
【0008】
このため、上記「衝突初期」においては、上記カウルルーバから物体に向かう反力は十分には緩和されないおそれがある。つまり、この反力により物体に生じる傷害値は、十分には低減されないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の前突により跳ね上げられた物体が車体の上面に落下して衝突し、この車体に衝撃力を与えるとき、この衝撃力の反力によって物体に生じる傷害値を、より効果的に低減できるようにすることである。
【0010】
請求項1の発明は、車体2の幅方向に延びるフロントカウル3とこのフロントカウル3の前方に離れて配置されるフード15との間に配置されるカウルルーバ18を備え、このカウルルーバ18が、車体2の幅方向に延びると共に上記フード15の後端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウル3の上方に位置するアッパルーバ19と、このアッパルーバ19の下方域で、車体2の幅方向に延びると共に上記アッパルーバ19の前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウル3に連結されるロアルーバ20と、このロアルーバ20から上方に向かって一体的に突出し、その上端面33aで上記アッパルーバ19を支持可能とする支持台33と、この支持台33の基部周りの上記ロアルーバ20の部分に形成される脆弱部41とを有した車両の車体前部構造において、
上記支持台33の上端面33aを前下方に向かうよう傾斜させ、上記アッパルーバ19の上面に対し衝撃力Fが与えられたとき、このアッパルーバ19の後部側が上記支持台33の上端面33aを前下方に向かって摺動S可能となるようにしたことを特徴とする車両の車体前部構造である。
【0011】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明による効果は、次の如くである。
【0013】
請求項1の発明は、車体の幅方向に延びるフロントカウルとこのフロントカウルの前方に離れて配置されるフードとの間に配置されるカウルルーバを備え、このカウルルーバが、車体の幅方向に延びると共に上記フードの後端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの上方に位置するアッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、車体の幅方向に延びると共に上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルに連結されるロアルーバと、このロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部とを有した車両の車体前部構造において、
上記支持台の上端面を前下方に向かうよう傾斜させ、上記アッパルーバの上面に対し衝撃力が与えられたとき、このアッパルーバの後部側が上記支持台の上端面を前下方に向かって摺動可能となるようにしている。
【0014】
このため、車両の前突により車体の上面に落下した物体がアッパルーバの上面に衝撃力を与えたときには、このアッパルーバの後部側が上記支持台の上端面を前下方に向かって摺動することとなり、この摺動により、上記アッパルーバは下方に向かって円滑に屈曲する。
【0015】
よって、上記したように前突により車体の上面に落下した物体がアッパルーバの上面に衝突して衝撃力を与えるときには、この衝突の当初である「衝突初期」に、上記したアッパルーバの円滑な屈曲によって上記衝撃力に基づくエネルギーが直ちに吸収され、この衝撃力が直ちに緩和される。この結果、上記した「衝突初期」に上記カウルルーバから物体に向かう反力も直ちに緩和されることから、この反力に因り上記物体に生じる傷害値は、より効果的に低減可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図2のI−I線矢視断面図である。
【図2】車体前部の部分平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】カウルルーバの斜視展開図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図4の他の部分拡大図である。
【図7】図1の部分拡大図に相当する図で作用説明図である。
【図8】図1の部分拡大図に相当する図で他の作用説明図である。
【図9】図1の部分拡大図に相当する図で更に他の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両の車体前部構造に関し、車両の前突により跳ね上げられた物体が車体の上面に落下して衝突し、この車体に衝撃力を与えるとき、この衝撃力の反力に因って物体に生じる傷害値を、より効果的に低減できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0018】
即ち、車両の車体前部構造は、車体の幅方向に延びるフロントカウルとこのフロントカウルの前方に離れて配置されるフードとの間に配置されるカウルルーバを備える。また、このカウルルーバは、車体の幅方向に延びると共に上記フードの後端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの上方に位置するアッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、車体の幅方向に延びると共に上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルに連結されるロアルーバと、このロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部とを有している。上記支持台の上端面が前下方に向かうよう傾斜させられる。そして、上記アッパルーバの上面に対し衝撃力が与えられたとき、このアッパルーバの後部側が上記支持台の上端面を前下方に向かって摺動可能とされている。
【実施例】
【0019】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0020】
図1〜6において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての上記車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0021】
上記車両1の車体2は、この車体2の幅方向に延びてその各端部が車体2の骨格部材である左右フロントピラー(不図示)に両端支持されるフロントカウル3を備えている。このフロントカウル3は、上下方向で互いに対向するよう設けられる板金製のアッパ、ロアカウル4,5を有している。
【0022】
上記アッパカウル4は、車体2の側面断面視(図1)で、倒立U字形状とされる。また、上記ロアカウル5は、車体2の側面断面視(図1)で、U字形状とされる。上記アッパ、ロアカウル4,5の各後端縁部は互いにスポット溶接され、各前端縁部は互いに上下に離間し、これら前端縁部の間には前方に向かって開く開口6が形成されている。上記ロアカウル5の下端面にはダッシュパネル7の上端縁部がスポット溶接されている。そして、上記構成のフロントカウル3は十分の強度と剛性とを備えて、車体2の骨格部材とされている。
【0023】
上記フロントカウル3およびダッシュパネル7の後方における車体2の内部が車室10とされ、上記ダッシュパネル7の前方における車体2の内部がエンジンルーム11とされている。上記フロントカウル3の後上方が上記車室10の内外を連通させるウィンド開口12とされている。このウィンド開口12を、その前上方から閉じるウィンドガラス13が設けられ、このウィンドガラス13の前下端縁部は上記フロントカウル3のアッパカウル4の上面に接着剤14により接着されている。一方、上記エンジンルーム11の上端開口を車体2の上方から開閉可能に閉じる板金製のフード15が設けられている。
【0024】
車体2の前後方向で、上記フロントカウル3とフード15の後端縁部との間にカウルルーバ18が配置されている。このカウルルーバ18は、上下方向で互いに対向するよう設けられる樹脂製のアッパ、ロアルーバ19,20を有している。
【0025】
上記アッパルーバ19は、車体2の幅方向に延びると共に上記フード15の後端縁部の下側から後方に延び、その後端縁部は上記フロントカウル3のアッパカウル4の上方、かつ、上記ウィンドガラス13の前下端縁部の上面に当接するよう位置している。上記ロアルーバ20は、上記アッパルーバ19の下方域で、車体2の幅方向に延びると共に上記アッパルーバ19の前端縁部側から後方に延びている。このアッパルーバ19の前端縁部にはシール材21が取り付けられ、このシール材21は上記フード15の後端縁部の下面に圧接し、上記アッパルーバ19の後端縁部は上記フロントカウル3のロアカウル5の前端縁部に他のシール材22を介して連結されている。
【0026】
より具体的には、上記アッパルーバ19は、車体2の側面断面視(図1,3)で、上記アッパルーバ19の前部を構成する縦向きパネル24と、この縦向きパネル24の上端縁部から後方に延出する横向きパネル25と、上記縦向きパネル24の下端縁部から前方に延出する外向きフランジ26と、上記横向きパネル25の後端縁部から後上方に延出する外向きフランジ27とを備えている。上記横向きパネル25には、上下方向に貫通する多数の通気孔28が形成されている。
【0027】
上記ロアルーバ20の前後方向の中途部には上方に膨出する左右一対の支持突起31,31が形成されている。上記アッパルーバ19の前側の外向きフランジ26とロアルーバ20の前縁部とが互いに熱溶着Wされると共に、上記アッパルーバ19と各支持突起31の突出端部とが互いに熱溶着Wされ、これにより、上記アッパ、ロアルーバ19,20の各前部側が互いに強固に結合されている。
【0028】
上記ロアルーバ20における左側部、車体2の幅方向での中央部、および右側部の各部から、それぞれ上方に向かって一体的に突出し、その各上端面が上記アッパルーバ19の後部側を支持可能とする複数(3つ)の左側部支持台33、中央部支持台34、および右側部支持台35が設けられている。そして、上記各支持台33〜35を介してのロアルーバ20によるアッパルーバ19の後部側の支持により、静荷重に対する上記カウルルーバ18の剛性が十分に確保されている。
【0029】
図1,2,4,5において、上記左側部支持台33は、後方に向かって開口する箱形状をなし、互いに一体的に形成される前面板37、左右側面板38,38、および上面板39を備えている。上記支持台33の上端面33aに相当する上記上面板39の上面は前下方に向かうよう傾斜させられている。
【0030】
上記支持台33の基部(下端部)周りの上記ロアルーバ20の部分に脆弱部41が形成されている。この脆弱部41は、上記ロアルーバ20の部分の下面に溝を形成することにより形成されている。また、上記脆弱部41は、上記支持台33の基部の前方近傍と、各側方近傍とにおける上記ロアルーバ20の各部分に形成され、車体2の平面視で、後方に向かって開くコの字形状とされている。
【0031】
上記左側部支持台33の上面板39は、前記フロントカウル3のアッパカウル4の前端縁部の上面に重ね合わされている。上記支持台33の上面板39と上記アッパカウル4の前端縁部とは、これらにそれぞれ形成されたクリップ孔42,43に挿通されたクリップ44により互いに連結されている。一方、上記アッパルーバ19の後部側である後側の外向きフランジ27には、上記クリップ44との接触を回避するよう開口45が形成されている。
【0032】
上記左側部支持台33の上端面33aには、上記アッパルーバ19の後部側である後側の外向きフランジ27が支持可能とされるが、車両1の通常走行状態では、上記上端面33aと外向きフランジ27との間にはわずかの隙間が形成されている。なお、これら上端面33aと外向きフランジ27とは常時当接(圧接含む)していてもよい。
【0033】
図2,4において、上記中央部支持台34は、後方に向かって開口する箱形状をなしている。詳図しないが、この支持台34の上面板、フロントカウル3のアッパカウル4の前端縁部、および上記アッパルーバ19の後側の外向きフランジ27は、互いに重ね合わされてクリップ46により連結されている。
【0034】
図2〜4,6において、上記右側部支持台35の主体は、後方に向かって開口する箱形状をなし、互いに一体的に形成される前面板47、左右側面板48,48、および上面板49を備えている。上記支持台35の上面板49、フロントカウル3のアッパカウル4の前端縁部、および上記アッパルーバ19の後側の外向きフランジ27は、これらに形成されたクリップ孔50に挿通されたクリップ51により互いに重ね合わされて連結されている。また、上記アッパルーバ19の後側の外向きフランジ27に形成されたクリップ孔50の周りの部分には脆弱部52が形成されている。この脆弱部52は、上記外向きフランジ27の下面に溝を十字形状に形成することにより形成されている。
【0035】
図7において、上記車両1の走行中に、この車両1がその前方の何らかの物体に衝突(前突)したとし、この前突により跳ね上げられた物体が、上記フード15の後端縁部の上面やカウルルーバ18のアッパルーバ19の上面など、車体2の上面に落下して衝突したとする。この場合には、物体の衝突により、上記アッパルーバ19の上面には、上記物体から間接に、もしくは直接に衝撃力Fが与えられる。
【0036】
そして、上記したように、アッパルーバ19の上面に衝撃力Fが与えられたとき、上記アッパルーバ19の後部側が上記右側部支持台33の上端面33aを前下方に向かって摺動S可能とされている。
【0037】
このため、車両1の前突により車体2の上面に落下した物体がアッパルーバ19の上面に衝撃力Fを与えたときには、このアッパルーバ19の後部側が上記支持台33の上端面33aを前下方に向かって摺動Sすることとなり、この摺動Sにより、上記アッパルーバ19の横向きパネル25は下方に向かって凸の円弧形状となるよう円滑に屈曲する(図7中一点鎖線)。
【0038】
よって、上記したように前突により車体2の上面に落下した物体がアッパルーバ19の上面に衝突して衝撃力Fを与えるときには、この衝突の当初である「衝突初期」に、上記したアッパルーバ19の横向きパネル25の円滑な屈曲によって上記衝撃力Fに基づくエネルギーが直ちに吸収され、この衝撃力Fが直ちに緩和される。この結果、上記した「衝突初期」に上記カウルルーバ18から物体に向かう反力も直ちに緩和されることから、この反力に因り上記物体に生じる傷害値は、より効果的に低減可能とされる。
【0039】
また、上記の場合、左側部支持台33の前方におけるアッパルーバ19の横向きパネル25には多数の通気孔28が形成され、これら通気孔28により脆弱部が形成されている。
【0040】
このため、上記衝撃力Fによるアッパルーバ19の横向きパネル25の屈曲は更に円滑かつ迅速に達成できる。よって、この点でも、上記した傷害値の低減は、更に効果的に達成される。
【0041】
また、上記アッパルーバ19の上面への衝撃力Fの付与が、上記「衝突初期」から更に進行した「衝突中期」では、上記アッパルーバ19の横向きパネル25の屈曲が更に進行する(図7中二点鎖線)。よって、上記「衝突中期」においても上記衝撃力Fに基づくエネルギーが吸収されて、この衝撃力Fが緩和される。これにより、上記「衝突中期」に生じる傷害値も低減される。
【0042】
図8において、上記アッパルーバ19の上面への衝撃力Fの付与が、上記「衝突中期」から更に進行した「衝突後期」では、上記カウルルーバ18のアッパ、ロアルーバ19,20は、前記脆弱部41を起点として前下方に倒伏する(図8
中三点鎖線)。また、これと共に、上記脆弱部41を起点として上記左側部支持台33が座屈する。よって、上記「衝突後期」においても上記衝撃力Fに基づくエネルギーが吸収されて、この衝撃力Fが緩和される。これにより、上記「衝突後期」に生じる傷害値も低減される。
【0043】
図9において、車両1の前突により車体2の上面に落下した物体が上記左側部支持台33の上端面33aに直接的に衝撃力Fを与えた場合には、まず、上記脆弱部41を起点として上記ロアルーバ20が屈曲し始めると共に左側部支持台33が座屈し始める。
【0044】
上記の場合、前記したように支持台33の上端面33aは前下方に向かうよう傾斜している。このため、上記衝撃力Fは、上記上端面33aから上記アッパルーバ19の横向きパネル25の上面側に案内されて移動しがちとなる。そして、このように衝撃力Fが移動すれば、前記した「衝突初期」と、それ以後の作用が直ちに生じる。
【0045】
なお、以上は図示の例によるが、上記カウルルーバ18と上記中央部支持台34、および/もしくは右側部支持台35との関連構成を、上記したカウルルーバ18と左側部支持台33との関連構成と同様にしてもよい。
【0046】
また、上記右側部支持台35の上面板49とアッパルーバ19の後側の外向きフランジ27とをクリップ51で連結し、かつ、上記アッパルーバ19の外向きフランジ27に脆弱部52を形成した構成を、上記したカウルルーバ18と左側部支持台33との関連構成に適用してもよい。このようにした場合、アッパルーバ19の上面に衝撃力Fが与えられたときには、上記脆弱部52を形成したアッパルーバ19の外向きフランジ27が直ちに破断したり屈曲したりするなどして、上記左側部支持台33の上面板39へのアッパルーバ19の外向きフランジ27のクリップ止めが解除され、前記「衝突初期」の作用が直ちに生じる。
【0047】
また、上記脆弱部41,52は、上記した溝形状の他、スリットを形成したり、全体に薄肉にしたりするなどして、衝撃力Fによる剪断力で破断したり、切断したりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 車体
3 フロントカウル
4 アッパカウル
5 ロアカウル
10 車室
11 エンジンルーム
12 ウィンド開口
13 ウィンドガラス
15 フード
18 カウルルーバ
19 アッパルーバ
20 ロアルーバ
33 支持台
33a 上端面
39 上面板
41 脆弱部
F 衝撃力
S 摺動
W 熱溶着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向に延びるフロントカウルとこのフロントカウルの前方に離れて配置されるフードとの間に配置されるカウルルーバを備え、このカウルルーバが、車体の幅方向に延びると共に上記フードの後端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの上方に位置するアッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、車体の幅方向に延びると共に上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルに連結されるロアルーバと、このロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部とを有した車両の車体前部構造において、
上記支持台の上端面を前下方に向かうよう傾斜させ、上記アッパルーバの上面に対し衝撃力が与えられたとき、このアッパルーバの後部側が上記支持台の上端面を前下方に向かって摺動可能となるようにしたことを特徴とする車両の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−76532(P2012−76532A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221756(P2010−221756)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】