説明

車両の運転支援装置

【課題】車両前方の歩行者等に対する視認性を向上させる。
【解決手段】本発明による車両の運転支援装置は、車両の前方に紫外光を照射するUV照射手段(80,90)と、前記車両の前方の物標を検知する物標検知手段(20,30,50)と、前記物標検知手段(20,30,50)による検知結果に応じて前記UV照射手段(80,90)の照射方向を変える制御手段(60,70)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の運転支援装置に関し、さらに詳しくは、車両前方の歩行者等に対する運転者の視認性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界では、安全なクルマ社会実現のために、クルマの安全性能を高めるさまざまな技術・装備等の開発と進化に取り組んでいる。その中の1つに、夜間走行時に前方の歩行者に対する視認性を向上させるため、車両前方に紫外光を照射する前照灯を設ける技術がある(特許文献1,2参照)。これによれば、紫外光が前方の歩行者の衣服に反応してこの歩行者を明瞭に浮き上がらせるので、運転者は前方の歩行者を明確に認識することができる。
【特許文献1】特開2000-203335号公報
【特許文献2】特開2000-027128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記特許文献1,2のいずれにおいても、紫外光の照射方向はあらかじめ設定されており固定されている。特許文献1では、UVライト9の照射範囲は、自車両1の車体中心軸線よりも車幅方向外側寄りのみを照射するように設定されている[0014]。また特許文献2では、紫外線出力装置2Bは、常時、上向き照明状態に設定されている[0015][0018][図5]。
【0004】
本発明の目的は、車両前方の歩行者等に対する視認性を向上させることができる車両の運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両の運転支援装置は、車両の前方に紫外光を照射するUV照射手段と、前記車両の前方の物標を検知する物標検知手段と、前記物標検知手段による検知結果に応じて前記UV照射手段の照射方向を変える制御手段とを備える。
【0006】
上記車両の運転支援装置では、UV照射手段から照射される紫外光の照射方向を物標検知手段による検知結果に応じて変えるため、紫外光の照射方向が予め設定された方向に固定されている場合と比べると、運転者の視認性を向上させることができる。
【0007】
好ましくは、前記UV照射手段は、前記車両前部の左右の一方側に設けられ前記車両前方に紫外光を照射する第1のUVライトと、前記車両前部の左右の他方側に設けられ前記車両前方に紫外光を照射する第2のUVライトとを含み、前記制御手段は、前記第1のUVライトの照射方向を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方の方向に変化させる第1の駆動手段と、前記第2のUVライトの照射方向を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方の方向に変化させる第2の駆動手段とを含む。
【0008】
上記車両の運転支援装置では、車両前部の左右両側にそれぞれUVランプを設け、各UVランプの照射方向を変化させる駆動手段を別々に設けたため、左右のUVランプの照射方向を独立に制御することができる。たとえば、車両前方の左右それぞれに物標が存在するような場合には、左側のUVランプの照射方向を左側の物標に向け、右側のUVランプの照射方向を右側の物標に向けることができる。このように、左右に危険物標が存在するときでも両方ともに確認できるようになり、安全性が向上する。
【0009】
好ましくは、前記物標検知手段は、検知された物標について自車両に対する衝突可能性を判断する衝突予知手段を含み、前記制御手段は、前記UV照射手段の照射方向を、前記衝突予知手段によって衝突可能性ありと判断された物標に向ける。
【0010】
好ましくは、前記物標検知手段は、検知された物標が歩行者か否かを判別する判別手段を含み、前記制御手段は、前記UV照射手段による紫外光の照射出力レベルを制御可能であり、前記UV照射手段の照射方向を前記物標検知手段によって検知された物標に向けるとともに、当該物標が歩行者ではないと前記判別手段によって判別されたときは前記UV照射手段の照射出力レベルを第1のレベルにする一方、当該物標が歩行者であると前記判別手段によって判別されたときは前記UV照射手段の照射出力レベルを前記第1レベルよりも低い第2のレベルにする。
【0011】
上記車両の運転支援装置では、物標検知手段により検知された物標が歩行者の場合には紫外光の照射出力が低く設定されるため人体への影響が小さく安全である。
【0012】
好ましくは、前記物標検知手段は、検知された物標が複数ある場合、自車両に対する危険度に応じて各物標に優先順位を付ける手段と、前記優先順位に基づいて前記複数の物標のうち所定の物標を指定する手段とを含み、前記制御手段は、前記UV照射手段の照射方向を前記指定された物標に向ける。
【0013】
好ましくは、前記制御手段は、前記UV照射手段の照射方向を前記指定された物標に向けるとともに、前記UV照射手段による紫外光の照射範囲を広げる。
【0014】
好ましくは、前記物標検知手段は、検知された物標が複数ある場合、当該複数の物標の重心位置を取得する手段を含み、前記制御手段は、前記UV照射手段の照射方向を前記重心位置に向ける。
【0015】
好ましくは、前記制御手段は、前記UV照射手段の照射方向を前記重心位置に向けるとともに、前記UV照射手段による紫外光の照射範囲を広げる。
【0016】
好ましくは、前記物標検知手段は、検知された物標が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する手段を含み、前記制御手段は、前記判定結果に対応する側に設けられたUVライトに対応する駆動手段によって当該UVライトの照射方向を前記検知物標に向ける。
【0017】
好ましくは、前記物標検知手段は、検知された物標が複数ある場合、自車両に対する危険度に応じて各物標に優先順位を付ける手段と、前記優先順位に基づいて前記複数の物標のうち第1および第2の物標を指定する手段とを含み、前記制御手段は、前記第1の駆動手段によって前記第1のUVライトの照射方向を前記第1の物標に向け、前記第2の駆動手段によって前記第2のUVライトの照射方向を前記第2の物標に向ける。
【0018】
好ましくは、前記UV照射手段は、車両前方に可視光を照射する前照灯手段のハイビームユニットで構成されている。
【0019】
好ましくは、前記UV照射手段は、車両前方に可視光を照射する前照灯手段とは別体に構成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明による車両の運転支援装置では、UV照射手段から照射される紫外光の照射方向を物標検知手段による検知結果に応じて変えるため、紫外光の照射方向が予め設定された方向に固定されている場合と比べると、運転者の視認性を向上させることができる。
【0021】
また、車両前部の左右両側にそれぞれUVランプを設け、各UVランプの照射方向を変化させる駆動手段を別々に設けたため、左右のUVランプの照射方向を独立に制御することができる。たとえば、車両前方の左右それぞれに物標が存在するような場合には、左側のUVランプの照射方向を左側の物標に向け、右側のUVランプの照射方向を右側の物標に向けることができる。このように、左右に危険物標が存在するときでも両方ともに確認できるようになり、安全性が向上する。
【0022】
また、物標検知手段により検知された物標が歩行者の場合には紫外光の照射出力が低く設定されるため人体への影響が小さく安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図面において実質的に同一の部分には同じ参照符号を付けてその説明は繰り返さない。
【0024】
[システム構成]
本発明の実施形態による車両の運転支援装置のシステム構成を図1(a)に示す。この運転支援装置は、車速センサ10と、レーダ20と、カメラ30と、ヨーレートセンサ40と、ECU(Electronic Control Unit)50と、アクチュエータ60,70と、UVライト80,90とを備えている。
【0025】
車速センサ10は自車両の走行速度を検出する。図1(b),(c)に示すように、車両前部のフロントグリル付近にレーダ20が配置され、車室内のルーフ前端部にカメラ30が配置される。レーダ20およびカメラ30を利用して、車両前方の物標までの距離や、物標の形状、物標の方向等が検出される。ヨーレートセンサ40は、自車両のヨーレートを検知し、車速センサ10とともに自車両の進行路を推定する。ECU50は、運転支援のための各種演算処理を行うコンピュータである。
【0026】
UVライト80,90は、車両前部の左右にそれぞれ配置され、車両前方に紫外光を照射する。UVライト80,90から照射される紫外光には波長315nm以上のものを使用することが好ましい。UV−Aに分類され、人体への影響がほとんど無いためである。
【0027】
アクチュエータ60,70は、UVライト80,90から照射される紫外光の照射方向を制御する。また、アクチュエータ60,70は、UVライト80,90から照射される紫外光の光束を拡散/集中させて照射範囲を広げる/狭める制御を行う。さらに、アクチュエータ60,70は、UVライト80,90から照射される紫外光の照射出力レベルを制御する。
【0028】
[UVライト80,90の実装形態]
UVライト80,90の実装形態には「独立タイプ」と「ヘッドライト内蔵タイプ」がある。
【0029】
「独立タイプ」では、図1(b)に示すように、UVライト80,90は、車両前方に可視光を照射する前照灯100とは別体に構成されている。UVライト80の光源バルブ81から紫外光が放出され、この紫外光が可動リフレクタ82によって車両前方に反射される。アクチュエータ60は、可動リフレクタ82を鉛直方向および水平方向に回動制御することで紫外光の照射方向を制御する。また、アクチュエータ60は、光源バルブ81と可動リフレクタ82の位置関係を制御して紫外光の光束を拡散/集中させることによって紫外光の照射範囲(照射角)を広げる/狭める制御を行う。UVライト90の内部構造および動作についても同様である。
【0030】
「ヘッドライト内蔵タイプ」では、図1(c)に示すように、UVライト80,90は、車両前方に可視光を照射する前照灯100のハイビームユニットで構成されている。光源バルブ81からは紫外光のみならず可視光も放出されるが、フィルタ83により紫外光のみが透過されて車両前方に照射される。また、上記「独立タイプ」と同様、アクチュエータ60,70により紫外光の照射方向および照射範囲が制御される。なお、フィルタ83は、車両前方に紫外光を照射する時にのみ機能し、車両前方に可視光(ハイビーム)を照射する時には機能しない。また、アクチュエータ60,70による照射方向および照射範囲の制御は、車両前方に紫外光を照射する時にのみ行われ、車両前方に可視光(ハイビーム)を照射する時には行われない。対向車などが眩惑するためである。
【0031】
なお、前照灯100のロービームユニットは、車両の舵角等に応じて照射光軸が上下左右方向にアクチュエータによって可動するように構成されている(Adaptive Front Lighting System)。
【0032】
[動作フロー]
次に、以上のように構成された車両の運転支援装置の動作について図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0033】
[ST100]
車速センサ10によって検出される走行速度がゼロか否かがECU50によって判断される。
【0034】
[ST110]
走行速度がゼロであると判断された場合、ECU50は、アクチュエータ60,70およびUVライト80,90に対して紫外光の照射終了を指示する。これにより、UVライト80,90からの紫外光の照射が終了する。
【0035】
[ST120]
走行速度がゼロではないと判断された場合、物標検知処理が行われる。物標検知処理は、レーダ20,カメラ30,ヨーレートセンサ40,ECU50が協働して以下のように行われる。
【0036】
車速センサ10,ヨーレートセンサ40からの情報に基づいてECU50は自車両の進行路を推定する。推定された進行路の前方に存在する物標がレーダ20,カメラ30により検出される。検出された物標までの距離、物標の形状、物標の移動方向、物標の移動速度などがECU50により算出される。
【0037】
なお、自車両の進行路の推定は、舵角センサ、舵角速度センサなどを用いても良いものである。
【0038】
[ST130]
次にECU50は、検出された各物標について自車両に対する衝突可能性の有無を判定する。衝突可能性の有無の判定は、物標の移動速度/軌跡、自車両の移動速度/軌跡などの情報に基づいて行われる。
【0039】
[ST140]
上記ステップST130において「衝突可能性あり」と判定された物標がUV(紫外光)照射対象として認識される。
【0040】
[ST150]
UV照射対象として認識される物標が存在しない場合はステップST160にすすみ、存在する場合はステップST170にすすむ。
【0041】
[ST160]
UV照射対象として認識される物標が存在しない場合にはUVライト80,90からの紫外光の照射方向を路側の白線に向ける制御が行われる。
【0042】
ECU50は、カメラ30やヨーレートセンサ40等からの情報に基づいて路側の白線を認識し、UVライト80,90の照射方向(配光角)を算出する。なお、実際の道路形状(カーブの形状など)に合った配光制御を行うために、クロソイド曲線等の緩和曲線の情報に対応した計算式に従って配光角を算出することが好ましい。
【0043】
ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60,70は可動リフレクタ82を回動制御する。これにより、UVライト80,90からの紫外光が路側の白線に向けて照射される。
【0044】
[ST170]
UV照射対象として認識される物標が存在する場合、ECU50は、それらの対象物標に優先順位を付ける。優先順位は、自車両に対する危険度に基づいて決定される。自車両に対する危険度を表す指標としては、たとえば、自車両に対する近さあるいは衝突可能性の度合などを使用することができる。
【0045】
[ST180]
次にECU50は、UV照射対象として認識された物標の中に歩行者が存在するか否かを判定する。各物標が歩行者であるか否かの判定は、たとえば、検出された物標の高さと幅との比が所定範囲であるか否かをみることによって判定することができる。
【0046】
[ST190]
UV照射対象として認識された物標の中に歩行者が存在すると判定された場合、ECU50は、UVライト80,90の照射出力レベルを「弱」レベルに設定するようアクチュエータ60,70に指示を出す。これに応答してアクチュエータ60,70は、UVライト80,90から照射される紫外光の照射出力レベルを「弱」レベルに設定する。ここでいう「弱」レベルは、照射される紫外光による人体への影響が(ほとんど)ないと考えられる照射出力レベルである。このように、UV照射対象の物標の中に歩行者が存在する場合には紫外光の照射出力が低く設定されるため、人体への影響が小さく安全である。
【0047】
[ST200]
一方、UV照射対象として認識された物標の中に歩行者が存在しないと判定された場合、ECU50は、UVライト80,90の照射出力レベルを「強」レベルに設定するようアクチュエータ60,70に指示を出す。これに応答してアクチュエータ60,70は、UVライト80,90から照射される紫外光の照射出力レベルを「強」レベルに設定する。ここでいう「強」レベルは、上記「弱」レベルよりも高い所定のレベルである。
【0048】
[ST210]
次にECU50は、UV照射対象として認識された物標がN個以上であるか否かを判定する。ここでは、N=5とする。この判定は、UV照射対象として認識された物標が比較的多数(N個)の場合とそうでない場合とでそれぞれにふさわしいUV照射パターンを実行するために行われる。
【0049】
[ST220]
UV照射対象として認識された物標がN個以上ではないと判定された場合(ここでは4個以下であると判定された場合)、下記UV照射パターン1〜4のうちのいずれかが実行される。
【0050】
[UV照射パターン1]
図3(a)に示すようにUV照射パターン1では、車両中心軸に対して右側に存在する物標210,220の中で優先順位が最も高い物標210を右側のUVライト90で照射し、車両中心軸に対して左側に存在する物標230,240の中で優先順位が最も高い物標230を左側のUVライト80で照射する。この制御は以下のように行われる。
【0051】
ECU50は、上記ステップST170において最も高い優先順位が付けられた物標210が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する。図3(a)の例では右側に存在すると判定される。次にECU50は、判定結果に対応する側、図3(a)の例では右側のUVライト90から照射される紫外光を物標210に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ70は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト90からの紫外光が物標210に向けて照射される。一方でECU50は、上記判定結果と逆側、図3(a)の例では左側において最も高い優先順位が付けられた物標230を指定し、左側のUVライト80から照射される紫外光をこの物標230に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が物標230に向けて照射される。
【0052】
[UV照射パターン2]
図3(b)に示すようにUV照射パターン2では、車両の前方に存在する物標210〜230の中で優先順位が最も高い物標210を左右両側のUVライト80,90で照射する。この制御は以下のように行われる。
【0053】
ECU50は、上記ステップST170において最も高い優先順位が付けられた物標210が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する。図3(b)の例では右側に存在すると判定される。次にECU50は、判定結果に対応する側、図3(b)の例では右側のUVライト90から照射される紫外光を物標210に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ70は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト90からの紫外光が物標210に向けて照射される。一方でECU50は、上記判定結果と逆側、図3(b)の例では左側のUVライト80から照射される紫外光を物標210に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が物標210に向けて照射される。
【0054】
[UV照射パターン3]
図4(a)に示すようにUV照射パターン3では、車両の前方に存在する物標210〜230の中で優先順位が最も高い物標210をその物標と同じ側のUVライト90で照射し、優先順位が2番目に高い物標220を逆側のUVライト80で照射する。この制御は以下のように行われる。
【0055】
ECU50は、上記ステップST170において最も高い優先順位が付けられた物標210が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する。図4(a)の例では右側に存在すると判定される。次にECU50は、判定結果に対応する側、図4(a)の例では右側のUVライト90から照射される紫外光を物標210に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ70は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト90からの紫外光が物標210に向けて照射される。一方でECU50は、上記判定結果と逆側、図4(a)の例では左側のUVライト80から照射される紫外光を、上記ステップST170において2番目に高い優先順位が付けられた物標220に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が物標220に向けて照射される。
【0056】
[UV照射パターン4]
図4(b)に示すようにUV照射パターン4では、車両の前方に存在する物標210〜230の中で優先順位が最も高い物標210をその物標と同じ側のUVライト90で照射し、逆側のUVライト80は路側の白線を照射する。この制御は以下のように行われる。
【0057】
ECU50は、上記ステップST170において最も高い優先順位が付けられた物標210が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する。図4(b)の例では右側に存在すると判定される。次にECU50は、判定結果に対応する側、図4(b)の例では右側のUVライト90から照射される紫外光を物標210に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ70は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト90からの紫外光が物標210に向けて照射される。一方でECU50は、上記判定結果と逆側、図4(b)の例では左側のUVライト80から照射される紫外光を路側の白線に向けるための配光角を算出する。この処理は上記ステップST160と同様にして行われる。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が路側の白線に向けて照射される。
【0058】
[ST230]
上記ステップST210においてUV照射対象の物標がN個(ここでは5個)以上であると判定された場合、ECU50は、UVライト80,90から照射される紫外光の照射範囲を広げるようアクチュエータ60,70に指示する。これに応答してアクチュエータ60,70は、光源バルブ81と可動リフレクタ82の位置関係を制御して紫外光の光束を拡散させUVライト80,90から照射される紫外光の照射範囲(照射角)を広げる。
【0059】
[ST240]
そして下記UV照射パターン5〜6のうちのいずれかが実行される。
【0060】
[UV照射パターン5]
図5(a)に示すようにUV照射パターン5では、車両中心軸に対して右側に存在する物標210,230,250,270の中で優先順位が最も高い物標210を右側のUVライト90で照射し、車両中心軸に対して左側に存在する物標220,240,260,280の中で優先順位が最も高い物標220を左側のUVライト80で照射する。この制御は以下のように行われる。
【0061】
ECU50は、上記ステップST170において最も高い優先順位が付けられた物標210が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する。図5(a)の例では右側に存在すると判定される。次にECU50は、判定結果に対応する側、図5(a)の例では右側のUVライト90から照射される紫外光を物標210に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ70は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト90からの紫外光が物標210に向けて照射される。一方でECU50は、上記判定結果と逆側、図5(a)の例では左側において最も高い優先順位が付けられた物標220を指定し、左側のUVライト80から照射される紫外光をこの物標220に向けるための配光角を算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80からの紫外光が物標220に向けて照射される。
【0062】
[UV照射パターン6]
図5(b)に示すようにUV照射パターン6では、車両の前方に存在する物標210〜280の重心位置300を左右両側のUVライト80,90で照射する。この制御は以下のように行われる。
【0063】
ECU50は、UV照射対象の物標210〜280の重心位置300を算出する。次にECU50は、UVライト80,90から照射される紫外光をこの重心位置300に向けるための配光角をそれぞれ算出する。ECU50によって算出された配光角に基づいてアクチュエータ60,70は可動リフレクタ82を回動制御し、UVライト80,90からの紫外光が重心位置300に向けて照射される。
【0064】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態による車両の運転支援装置では、UVライト80,90から照射される紫外光の照射方向、照射範囲、照射強度を物標検知結果に応じて変えるため、紫外光の照射方向等が予め設定され固定されている場合と比べると、運転者の視認性を向上させることができる。
【0065】
また、車両前部の左右両側にそれぞれUVランプ80,90を設け、各UVランプ80,90の照射方向を変化させるアクチュエータ60,70を別々に設けたため、上記照射パターン1〜6に示したように、左右のUVランプ80,90の照射方向を独立に制御することができる。なお、上記照射パターン1〜6はあくまで制御の一例を示したものであり、これ以外にも種々の照射パターンを実現できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両の運転者の視認性を向上させるための運転支援装置として、特に、夜間走行時に前方の歩行者や障害物に対する視認性を向上させるために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は本発明の実施形態による車両の運転支援装置のシステム構成を示すブロック図である。(b)および(c)はUVライトの実装形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による車両の運転支援装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】紫外光の照射パターンを示す図である。
【図4】紫外光の照射パターンを示す図である。
【図5】紫外光の照射パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 車速センサ
20 レーダ
30 カメラ
40 ヨーレートセンサ
50 ECU(Electronic Control Unit)
60,70 アクチュエータ
80,90 UVライト
81 光源バルブ
82 可動リフレクタ
83 フィルタ
100 前照灯
210〜280 物標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に紫外光を照射するUV照射手段と、
前記車両の前方の物標を検知する物標検知手段と、
前記物標検知手段による検知結果に応じて前記UV照射手段の照射方向を変える制御手段とを備える、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記UV照射手段は、
前記車両前部の左右の一方側に設けられ前記車両前方に紫外光を照射する第1のUVライトと、
前記車両前部の左右の他方側に設けられ前記車両前方に紫外光を照射する第2のUVライトとを含み、
前記制御手段は、
前記第1のUVライトの照射方向を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方の方向に変化させる第1の駆動手段と、
前記第2のUVライトの照射方向を鉛直方向および水平方向の少なくとも一方の方向に変化させる第2の駆動手段とを含む、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記物標検知手段は、
検知された物標について自車両に対する衝突可能性を判断する衝突予知手段を含み、
前記制御手段は、
前記UV照射手段の照射方向を、前記衝突予知手段によって衝突可能性ありと判断された物標に向ける、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記物標検知手段は、
検知された物標が歩行者か否かを判別する判別手段を含み、
前記制御手段は、
前記UV照射手段による紫外光の照射出力レベルを制御可能であり、
前記UV照射手段の照射方向を前記物標検知手段によって検知された物標に向けるとともに、当該物標が歩行者ではないと前記判別手段によって判別されたときは前記UV照射手段の照射出力レベルを第1のレベルにし、当該物標が歩行者であると前記判別手段によって判別されたときは前記UV照射手段の照射出力レベルを前記第1レベルよりも低い第2のレベルにする、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記物標検知手段は、
検知された物標が複数ある場合、自車両に対する危険度に応じて各物標に優先順位を付ける手段と、
前記優先順位に基づいて前記複数の物標のうち所定の物標を指定する手段とを含み、
前記制御手段は、
前記UV照射手段の照射方向を前記指定された物標に向ける、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御手段は、
前記UV照射手段の照射方向を前記指定された物標に向けるとともに、前記UV照射手段による紫外光の照射範囲を広げる、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記物標検知手段は、
検知された物標が複数ある場合、当該複数の物標の重心位置を取得する手段を含み、
前記制御手段は、
前記UV照射手段の照射方向を前記重心位置に向ける、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記制御手段は、
前記UV照射手段の照射方向を前記重心位置に向けるとともに、前記UV照射手段による紫外光の照射範囲を広げる、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項9】
請求項2において、
前記物標検知手段は、
検知された物標が車両中心軸に対して左右のどちら側にあるかを判定する手段を含み、
前記制御手段は、
前記判定結果に対応する側に設けられたUVライトに対応する駆動手段によって当該UVライトの照射方向を前記検知物標に向ける、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項10】
請求項2において、
前記物標検知手段は、
検知された物標が複数ある場合、自車両に対する危険度に応じて各物標に優先順位を付ける手段と、
前記優先順位に基づいて前記複数の物標のうち第1および第2の物標を指定する手段とを含み、
前記制御手段は、
前記第1の駆動手段によって前記第1のUVライトの照射方向を前記第1の物標に向け、前記第2の駆動手段によって前記第2のUVライトの照射方向を前記第2の物標に向ける、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つにおいて、
前記UV照射手段は、
車両前方に可視光を照射する前照灯手段のハイビームユニットで構成されている、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1つにおいて、
前記UV照射手段は、
車両前方に可視光を照射する前照灯手段とは別体に構成されている、
ことを特徴とする車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−226140(P2008−226140A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67045(P2007−67045)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】