説明

車両の運転支援装置

【課題】車両の後側方の撮像画像を、横方向に変化する倍率で拡大又は圧縮してなる画像を表示器に表示させる場合に、自車両の前後方向に延在するはずの白線等の走行領域区分線が表示器に表示される画像中で曲がって表示されるのを防止する。
【解決手段】車両2の後側方を撮像するカメラ3の撮像画像から表示器5に表示させる表示用画像を生成する表示用画像生成手段7は、設定された横方向拡縮倍率で撮像画像の各部を横方向にスケール修正する横スケール修正処理と、この横スケール修正処理により撮像画像から生成される横スケール修正画像中で曲がって表示される走行領域区分線21の画像が直線状に延在する画像になるように設定された縦方向拡縮倍率で横スケール修正画像を部分的に縦方向にスケール修正する縦スケール修正処理とを実行することにより、表示用画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後側方の撮像画像を運転者に対して表示する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を支援するために、車両に搭載したカメラによって、車両の後側方の撮像画像を横方向に幅広い画角で取得し、その取得した撮像画像を、運転席の前方側の表示器に表示することで、車両の運転者が、ドアミラーに写らない死角領域を含めた車両の後側方の状況を視覚的に確認できるようにした装置が本願出願人等により提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この種の装置では、車載カメラの撮像画像の横方向の画角が広いために、該撮像画像をそのまま表示器で表示するようにすると、該撮像画像のうち、ドアミラー上で運転者が視認し得る領域に存在する他車等の物体が、ドアミラー上で視認される該物体の大きさに比して、撮像画像中で小さくなり過ぎて、運転者が該物体を視認しづらい。あるいは、該撮像画像中の物体と自車両との距離(自車両の前後方向での距離)を、該撮像画像中の物体のサイズに基づいて視覚的に認識しづらいものとなる。
【0004】
このため、特許文献1に見られる技術では、カメラの撮像画像を表示器に表示させる場合に、ドアミラー上で視認し得る領域の画像を横方向に拡大する一方、その領域よりも外側(自車両と反対側)の死角領域の画像を横方向に圧縮して表示器に表示させるようにしている。これにより、表示器の表示画像の横方向の画角を広角に保ちつつ、その表示画像のうち、ドアミラー上で視認し得る領域に存在する物体の画像の大きさが、つまり、遠方に存在する物体の画像の大きさが、ドアミラー上で視認される該物体の大きさとほぼ同等の大きさになるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−22125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に見られる如き技術では、カメラの撮像画像の横方向の拡大及び圧縮は、該撮像画像の横方向での位置に応じて変化するように設定された倍率で行なわれることとなる。そして、表示器に表示される表示画像のうち、ドアミラー上で視認できない死角領域の画像は、ドアミラー上で視認し得る領域の画像に比して横方向に圧縮された画像となるために、車両の前後方向とほぼ同方向に直線状に延在するはずの白線等の走行領域区分線が、表示器の表示画像上では、曲がった走行領域区分線として表示されることとなってしまう。
【0007】
このため、運転者に違和感を及ぼしたり、あるいは、死角領域に存在する他車等の物体の、自車両に対する横方向の位置等が判り難いという不都合があることが本願発明者の検討により判明した。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、車両の後側方の撮像画像を、横方向に変化する倍率で拡大又は圧縮してなる画像を表示器に表示させる場合に、自車両の前後方向に延在するはずの白線等の走行領域区分線が表示器に表示される画像中で曲がって表示されるのを防止することができる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両の運転支援装置は、かかる目的を達成するめに、車両の後側方を撮像するカメラと、該カメラの撮像画像から運転者に視認させる表示用画像を生成する表示用画像生成手段と、該表示用画像生成手段により生成された表示用画像を表示する表示器とを備えた車両の運転支援装置であって、前記表示用画像生成手段は、前記車載カメラの撮像画像の横方向の位置に応じて値が変化するように設定された横方向拡縮倍率で該撮像画像の各部を横方向にスケール修正する横スケール修正処理と、実空間において前記車両の前後方向に直線状に延在する走行領域区分線であって、前記横スケール修正処理により前記撮像画像から生成される横スケール修正画像中で曲がって表示される走行領域区分線の画像が、該横スケール修正画像における前記車両の前後方向に直線状に延在する画像になるように設定された縦方向拡縮倍率で該横スケール修正画像を部分的に縦方向にスケール修正する縦スケール修正処理とを実行することにより、前記表示用画像を生成する手段であることを特徴とする(第1発明)。
【0010】
かかる第1発明によれば、前記表示用画像生成手段は、前記横方向拡縮倍率で該撮像画像の各部を横方向にスケール修正する横スケール修正処理に加えて、前記縦方向拡縮倍率で該横スケール修正画像を部分的に縦方向にスケール修正する縦スケール修正処理を実行することにより、前記表示器に表示させる表示用画像を生成する。
【0011】
これにより、横スケール修正処理よって、前記横スケール修正画像中で曲がって表示されることとなってしまう走行領域区分線の歪みを修正し、前記表示用画像において、前記車両の前後方向に直線状に延在するような画像にすることができることとなる。
【0012】
よって、第1発明によれば、車両の後側方の撮像画像を、横方向に変化する倍率(前記横方向拡縮倍率)で拡大又は圧縮してなる画像を表示器に表示させる場合に、自車両の前後方向に延在するはずの白線等の走行領域区分線が表示器に表示される画像中で曲がって表示されるのを防止することができる。
【0013】
同時に、走行領域区分線に限らず、ガードレールや縁石、あるいは、ビル等の構造物のエッジ等、車両の前後方向と平行な直線(これらは撮像画像の消失点を通る)は、全て、表示される画像中での曲がりを修正することができる。このため、運転者へ与える違和感を低減することができる。
【0014】
なお、前記横スケール修正処理及び縦スケール修正処理により前記表示用画像を生成するために使用する撮像画像は、前記カメラの撮像領域の全体の撮像画像である必要はなく、該撮像領域の一部の撮像画像であってもよい。
【0015】
かかる第1発明では、前記横スケール修正処理における横方向拡縮倍率は、種々様々な形態で、前記撮像画像の横方向の位置に応じて変化させるように設定することが可能である。例えば、前記横スケール修正処理における横方向拡縮倍率は、例えば、前記カメラの撮像画像うち、前記車両のサイドミラーにより視認される領域における横方向の所定範囲で拡大用の所定の一定倍率値になるように設定されていると共に、該所定範囲の外側の範囲では、前記撮像画像の横方向の位置に応じて前記一定倍率値から圧縮用の倍率値に変化するように設定される。
【0016】
このように横方向拡縮倍率を設定することで、前記表示用画像の横方向の画角を、前記サイドミラーにより視認し得る領域よりも広角なものとしつつ、前記サイドミラーにより視認される領域に存在する他車等の物体の画像のサイズが過小なものとなるのを防止して、例えば該物体の画像のサイズを前記サイドミラーにより視認される該物体と同程度の大きさにすることができる。
【0017】
このように横方向拡縮倍率を設定した場合においては、前記縦スケール修正処理は、前記表示用画像における前記走行領域区分線の画像が、前記横スケール修正画像における消失点を通り、且つ、該横スケール修正画像のうちの前記所定範囲での前記走行領域区分線の画像と同方向に直線状に延在する画像になるように該横スケール修正画像の横方向の位置に応じて設定された縦方向拡縮倍率で、該横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分を縦方向に圧縮する処理であることが好ましい(第2発明)。
【0018】
この第2発明によれば、前記横スケール修正画像においては、自車両の前後方向に延在するはずの白線等の走行領域区分線(これは前記消失点を通る)が、前記所定範囲の外側の範囲で曲がった画像となるものの、該横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分が、前記縦スケール修正処理によって、上記の如く設定された縦方向拡縮倍率で縦方向に圧縮される。
【0019】
これにより、前記横スケール修正画像において、前記所定範囲の外側の範囲で曲がった画像となってしまう走行領域区分線の歪みを、前記縦スケール修正処理によって適切に修正し、前記表示用画像における該走行領域区分線の画像が直線状に延在する画像になるようにすることを適切に行うことができる。
【0020】
この第2発明では、より具体的には、前記縦方向拡縮倍率は、前記消失点の位置での前記横方向拡縮倍率の値を基準倍率としたとき、前記横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分における横方向の各位置において、該縦方向拡縮倍率の値が、該位置と前記消失点との間の範囲での前記横方向拡縮倍率の値の前記基準倍率に対する比率の平均値の倍率になるように設定される(第3発明)。
【0021】
これにより、横スケール修正画像における走行領域区分線の曲がりを適切に修正し得る前記縦方向圧縮倍率を簡易に設定することができる。
【0022】
また、上記第2発明又は第3発明では、前記縦スケール修正処理によって、前記横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分を縦方向に圧縮する処理は、該横スケール修正画像における消失点を通って横方向に延在する基準線上における該横スケール修正画像の画素を縦方向に動かさないようにしつつ、該基準線よりも上側の画像と下側の画像とをそれぞれ該基準線に向って圧縮する処理である(第4発明)。
【0023】
すなわち、前記横スケール修正画像における消失点を通って横方向に延在する基準線は、地平線に相当する線であり、前記横スケール修正処理を施す前の撮像画像においても基本的には横方向に延在する直線となる。そして、前記撮像画像において車両の前後方向と同方向に延在する任意の直線(消失点を通る直線)は、前記横スケール修正処理を施した後の前記横スケール修正画像においては、前記所定範囲のうち、前記基準線よりも上側の部分と下側の部分とで逆向きに曲がることとなる。
【0024】
従って、前記縦スケール修正処理においては、横スケール修正画像における消失点を通って横方向に延在する基準線上における該横スケール修正画像の画素を縦方向に動かさないようにしつつ、該基準線よりも上側の画像と下側の画像とをそれぞれ該基準線に向って圧縮することで、該縦スケール修正処理によって、横スケール修正画像における走行領域区分線の曲がりを修正することを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にける運転支援装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施形態における車両の構成を示す図。
【図3】実施形態におけるカメラの撮像領域等を示す図。
【図4】図1に示す表示用画像生成部7の処理を示すフローチャート。
【図5】図5(a),(b)は図4のSTEP1の処理を説明するための図。
【図6】図6(a),(b)は図4のSTEP2の処理を説明するための図。
【図7】図7(a)〜(c)は図4のSTEP3の処理を説明するための図。
【図8】図8(a),(b)は図4のSTEP3の処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態を図1〜図8を参照して以下に説明する。
【0027】
図1を参照して、本実施形態の運転支援装置1は、例えば右ハンドルの車両2(図2を参照)に搭載されたものである。この運転支援装置1は、車両2の左側の後側方を撮像するカメラ3と、ナビゲーション装置4と、カメラ3により取得された撮像画像やナビゲーション情報を表示するための表示器5と、撮像画像の加工処理や表示器5の表示制御等の制御処理を行なう演算処理ユニット6とを備えている。
【0028】
カメラ3は、CCDカメラやCMOSカメラ等により構成されたものであり、図2に示すように車両2の左前側の側部、例えば左側のサイドミラーとしてのドアミラー9Lに装着されている。そして、このカメラ3は、車両2の左側の後側方を撮像し、その撮像データを演算処理ユニット6に出力する。
【0029】
なお、本実施形態における車両2の左右のサイドミラーは、ドアミラーであるが、車体前部の左右の側部(例えばボンネットの側方の車体部分)に取り付けられたものであってもよい。
【0030】
カメラ3は、横方向(路面に平行な方向)に広角な画角を有するカメラであり、車両2の左側の後側方を、車両2の運転者が左側のドアミラー9Lを介して視認し得る領域よりも幅広い領域(主に横方向に幅広い領域)撮像することが可能となっている。
【0031】
具体的には、カメラ3の撮像領域(撮像可能な領域)は、路面に垂直な方向で見た場合に、例えば図3に示すように、直線L1とL6との間の領域となっている。この撮像領域は、車両2の運転者が左側のドアミラー9Lを介して視認し得る領域であるドアミラー領域(図中の直線L3とL4との間の領域)を包含すると共に、特に、ドアミラー領域の外側(直線L3よりも左側)に幅広い画角を有する領域となっている。
【0032】
従って、カメラ3の撮像領域は、ドアミラー領域と、その外側の死角領域(運転者がドアミラー9L上で視認できない領域(図中の直線L2とL3との間の領域))とを含む領域となっている。このため、図3に示すようにドアミラー領域の外側の死角領域に存在する他車等の物体をカメラ3によって撮像することができるようになっている。
【0033】
なお、カメラ3の撮像領域の横方向の画角は例えば100deg程度、ドアミラー領域の横方向の画角は例えば18〜25deg程度である。
【0034】
ナビゲーション装置4は、GPSや慣性航法手法によって車両2(自車両2)の現在位置を逐次検知する機能や、検知した自車両2の位置を地図データと照合する機能、目的地への自車両2の誘導経路を設定する機能等のナビゲーション機能を有する公知のものである。
【0035】
このナビゲーション装置4は、検知した自車両2の現在位置、自車両2の周辺の地図データ(地図画像のデータ)、その地図データでの自車両2の誘導経路等から構成されるナビゲーション情報を演算処理ユニット6に出力する。
【0036】
表示器5は、液晶ディスプレイ等により構成されたモニタであり、図2に示すように、車両2の室内の運転席の前方側の箇所、例えばダッシュボードに、運転者が視認し得るように搭載されている。
【0037】
演算処理ユニット6は、CPU、RAM、ROM、インターフェイス回路等から構成された電子回路ユニットであり、車両2の適所に配置されている。本実施形態では、この演算処理ユニット6は、実装されたプログラム等により実現される機能として、カメラ3の撮像画像から、表示器5に表示させる表示用画像を生成する(撮像画像を表示用画像に加工する)表示用画像生成部7と、表示器5の表示内容を制御する表示制御部8とを備えている。
【0038】
表示用画像生成部7は、本発明における表示用画像生成手段に相当するものであり、その詳細な処理は、後述する。
【0039】
また、表示制御部8は、より詳しくは、表示器5に表示させる画像を、適宜、表示用画像生成部7により生成された表示用画像(以降、表示用撮像画像という)と、ナビゲーション装置4から入力されるナビゲーション情報を表すナビゲーション画像(地図画像や自車両2のマーク、誘導経路マーク等を含む画像)との一方から他方に切替える等、表示器5の表示内容を制御するものである。
【0040】
この場合、表示制御部8は、通常は、表示器5にナビゲーション画像を表示させる。そして、運転者によって図示しない表示切替スイッチが操作された場合や、車両2の左側のウィンカーがON操作された場合(もしくは車両2の操舵角の計測値等に基づいて車両2の左側への進路変更が検知された場合)のように、表示用撮像画像の表示の要求が発生した場合に、表示器5に表示用撮像画像を表示させる。
【0041】
なお、演算処理ユニット6はカメラ3に内蔵してもよい。また、表示用画像生成部7と、表示制御部8とは各別の演算処理ユニットに備えられたものであってもよい。この場合、例えば、表示用画像生成部7を、カメラ3に内蔵する演算処理装置に備え、表示制御部8を、ナビゲーション装置やオーディオ装置の演算処理装置に備えるようにしてもよい。
【0042】
次に、演算処理ユニット6の表示用画像生成部7の詳細な処理を以下に説明する。
【0043】
演算処理ユニット6の表示用画像生成部7には、所定の制御処理周期で、カメラ3の撮像画像が与えられる。この場合、本実施形態では、表示用画像生成部7に与えられる撮像画像は、より詳しくは、カメラ3のレンズ歪に起因する画像の歪みを、公知の補正処理手法によって補正した後の画像である。
【0044】
なお、レンズ歪が十分に微小である場合には、表示用画像生成部7に与えられる撮像画像は、カメラ3から出力される撮像画像そのものでもよい。
【0045】
そして、表示用画像生成部7は、与えられたカメラ3の撮像画像に所定の加工処理(画像処理)を施すことで、表示用撮像画像を生成する。
【0046】
その生成処理は、図4のフローチャートに示すように実行される。
【0047】
以下説明すると、表示用画像生成部7は、まず、STEP1の処理を実行する。このSTEP1では、表示用画像生成部7は、与えられた撮像画像から、その一部分の画像である表示対象撮像画像を取得する。
【0048】
表示対象撮像画像は、カメラ3の撮像画像の全体のうち、表示器5への表示対象とする領域(以下、表示対象領域という)の撮像画像を意味するものである。
【0049】
上記表示対象領域は、図3又は図5(a)に示すように、カメラ3の撮像領域に含まれ、且つ、その横方向の画角がカメラ3の撮像領域の画角よりも若干小さい領域である。この場合、表示対象領域の横方向の画角は、例えば80deg程度である。そして、この表示対象領域は、該領域のうちの自車両2の側面寄りの箇所にドアミラー領域を包含している。そして、表示対象領域のうちのドアミラー領域の外側に隣接する領域の全体を、該表示対象領域のうち、ドアミラー9L上で視認できない死角領域として包含している。
【0050】
なお、表示対象領域の横方向の画角は、カメラ3の撮像領域の画角と一致していてもよい。また、表示対象領域の横方向の境界のうち、自車両2寄りの境界は、ドアミラー領域の内方側(右端側)の境界に一致していてもよい。また、表示対象領域の縦方向の画角は、例えば、運転者がドアミラー9Lにより視認し得る縦方向(上下方向)の領域の画角と同じから2倍程度の画角でよい。
【0051】
そして、STEP1では、表示用画像生成部7は、与えられたカメラ3の撮像画像のうちの表示対象領域の画像全体を、図5(b)に示すように既定のサイズ(表示器5の表示画面のサイズ)に修正したものを表示対象撮像画像として取得する。
【0052】
なお、表示対象領域の画像全体のサイズの修正は、該表示対象領域の画像全体を、横方向及び縦方向の両方又一方に、既定の倍率でスケール修正(拡大又は圧縮)することにより行なわれる。
【0053】
次いで、表示用画像生成部7は、STEP2の処理を実行する。このSTEP2では、表示用画像生成部7は、表示対象撮像画像の横方向でのスケール修正を行なう処理である横スケール修正処理を実行することによって、横スケール修正画像を生成する。
【0054】
この横スケール修正処理は、表示対象撮像画像の横方向の全体の画角を保持したまま、該横方向での表示対象撮像画像の部分的な拡大と圧縮とを行なうことで、横スケール修正画像を生成する処理である。
【0055】
ここで、STEP1で取得される表示対象撮像画像は、ドアミラー領域の外側の死角領域を含めた幅広い画角(横方向の画角)を有する表示対象領域の画像であるので、該表示対象撮像画像をそのまま通常的な画面サイズの表示器5に表示するようにすると、その表示画像内でドアミラー領域に存在する他車等の物体の画像サイズが、ドアミラー9L上で視認される該物体のサイズに比して過剰に小さくなり、視認しづらいものとなる。
【0056】
また、表示対象撮像画像をそのまま表示器5に表示するようにした場合には、その画像中のドアミラー領域に存在する他車等の物体の画像サイズから視覚的に認識される該物体と自車両2との距離(自車両2の前後方向での距離)が、ドアミラー9L上で視認される該物体のサイズから運転者により認識される距離に対して乖離を生じやすい。
【0057】
そこで、STEP2の横スケール修正処理では、表示対象撮像画像のうち、主にドアミラー領域の撮像画像を横方向に拡大する一方、横スケール修正画像の横方向の画角を表示対象撮像画像と同じに保つ(換言すれば、横スケール修正画像に投影される領域の横方向の範囲を、表示対象撮像画像に投影されている領域(表示対象領域)の横方向の範囲と同じにする)ために、ドアミラー9Lに写らない死角領域の撮像画像を横方向に圧縮する。
【0058】
この場合、本実施形態では、表示対象撮像画像を表示する表示器5の表示画面の全体領域(表示領域)は、図6(a)に示すように、横方向に順番に隣接して並ぶ所定幅の複数(N個)の局所領域A(1)〜A(N)に区分けされる。そして、各局所領域A(i)(i=1,2,…,N)の画像の横方向拡縮倍率を表すものとしての横方向圧縮率CRhが、図6(b)のグラフで示すように、横方向での各局所領域A(i)の位置に応じて変化するようにしてあらかじめ設定されている。以降の説明では、第i番目の局所領域A(i)の位置に対応する横方向圧縮率の値をCRh(i)と表記することがある。
【0059】
ここで、各局所領域A(i)の位置に対応する横方向圧縮率CRh(i)は、対応する局所領域A(i)内の画像が、横スケール修正処理の前の元の画像(入力画像)の横幅を1/CRh(i)倍のサイズにスケール修正した後の画像であることを意味する拡縮倍率である。従って、横方向圧縮率CRh(i)は、その値が“1”よりも大きい値である場合に、対応する局所領域A(i)内の画像の元の画像を横方向に圧縮させるための倍率となり、その値が“1”よりも小さい場合に、対応する局所領域A(i)内の画像の元の画像を横方向に拡大させるための倍率となる。
【0060】
本実施形態における図6(b)のグラフで示す横方向圧縮率CRhは、表示画面の全体領域のうち、図中のB1の横方向範囲内においては、その範囲内の各局所領域A(i)の画像が、元の画像から横幅を変化させない画像となるように“1”に設定されている。このB1の横方向範囲は、表示対象撮像画像のうち、最も自車両2寄りの画像の範囲であり、自車両2の側面の画像を有する領域である。
【0061】
また、B1の横方向範囲の外側(B1よりも自車両2から遠ざかる側)に隣接するB2の横方向範囲内においては、その範囲内の各局所領域A(i)の画像が元の画像の横幅を拡大した画像となるようにするために、横方向圧縮率CRhの値が“1”よりも小さい値に設定されている。このB2の範囲は、ドアミラー領域の画像(B1の横方向範囲内の画像を除く)と、ドアミラー領域の外側の死角領域のうちのドアミラー領域寄りの一部の領域の画像とを含む範囲である。
【0062】
この場合、B2の横方向範囲における横方向圧縮率CRhは、ドアミラー領域の大部分の範囲(図中のC1aの範囲)において、所定の一定値(例えば0.8)に保たれるように設定されている。以降、C1aの範囲を横方向圧縮率一定範囲C1aという。
【0063】
そして、B2の横方向範囲のうちの、横方向圧縮率一定範囲C1aよりも自車両2に近い側の範囲では、横方向で自車両2に近づくに伴い、横方向圧縮率CRhが上記一定値から徐々に“1”(B1の横方向範囲での値)に近づいていくように設定されている。同様に、B2の横方向範囲のうちの、横方向圧縮率一定範囲C1aよりも自車両2から遠い側の範囲では、横方向で自車両2から遠ざかるに伴い、横方向圧縮率CRhが上記一定値から徐々に“1”に近づいていくように設定されている。
【0064】
また、B2の横方向範囲の外側(B2よりも自車両2から遠ざかる側)に隣接するB3の横方向範囲(表示画面の全体領域のうち、B1及びB2以外の横方向範囲)内においては、その範囲内の各局所領域A(i)の画像が、元の画像を横幅を圧縮した画像となるようにするために、横方向圧縮率CRhの値が“1”以上の値に設定されている。このB3の横方向範囲は、死角領域のうち、B2の横方向範囲内の領域以外の領域の画像を含む範囲である。この場合、B3の横方向範囲での横方向圧縮率CRhの値は、横方向で自車両2から遠ざかるに伴い、徐々に増加していくように設定されている。
【0065】
なお、横方向圧縮率CRhは、各局所領域A(i)(i=1,2,…,N)に対応するCRh(i)の平均値(=(CRh(1)+CRh(2)+……+CRh(N))/N)が“1”になるように設定されている。
【0066】
STEP2の横スケール修正処理では、表示用画像生成部7は、上記の如くあらかじめ設定された横方向圧縮率CRhに従って、各局所領域A(i)(i=1,2,…,N)の画像の元の画像の横幅のサイズをスケール修正することで、横スケール修正画像を生成する。なお、この場合、画像の拡大又は圧縮に伴う画素補間が必要となるが、その画素補間の手法としては、bilinear補間やbicubic補間等の公知の手法が用いられる。
【0067】
これにより、図6(a)に示すような横スケール修正画像が得られる。この横スケール修正画像の全体のサイズ(横幅及び縦幅)は、表示対象撮像画像と同じである。そして、該横スケール修正画像は、図示の如く、表示対象撮像画像と同じ横方向の画角内の領域(表示対象領域)を投影した画像となっている一方、ドアミラー領域の画像が、表示対象撮像画像よりも横方向に拡大されたものとなっている。
【0068】
これにより、横スケール修正画像内で、ドアミラー領域に存在する他車等の物体のサイズが、ドアミラー9L上でのサイズと概ね同程度のサイズになるようにすることができるようになっている。
【0069】
なお、本実施形態では、前記B3の横方向範囲と、前記B2の横方向範囲のうちのB3寄りの範囲とにおける横方向圧縮率CRhの変化の形態は、表示対象領域の他車等の物体が、自車両2に対して一定速度で接近してくるような場合に、横スケール修正画像のうちのドアミラー領域の画像中での該物体の横方向の移動速度と、死角領域の画像中での該物体の横方向の移動速度とがほぼ一定に保たれるように設定されている。
【0070】
次いで、表示用画像生成部7は、STEP3の処理を実行する。このSTEP3では、表示用画像生成部7は、STEP2で生成した横スケール修正画像の縦方向でのスケール修正を行なう処理である縦スケール修正処理を実行することによって、最終的に表示器5に表示させるべき表示用撮像画像としての縦スケール修正画像を生成する。
【0071】
この縦スケール修正処理は、横スケール修正画像の縦方向での該横スケール修正画像の部分的な圧縮(所定の横方向範囲での横スケール修正画像の縦方向での圧縮)を行なうことで、縦スケール修正画像を生成する処理である。
【0072】
ここで、STEP2の横スケール修正処理においては、特に、死角領域での横方向圧縮率CRhを、自車両2から遠ざかるに伴い増加させるため、死角領域において自車両2の前後方向とほぼ同方向に直線状に延在するはずの白線等の走行領域区分線の画像が、横スケール修正画像において曲がったものとなってしまう。
【0073】
例えば図6(a)に示す如く、自車両2が走行している道路の走行領域区分線としての白線のうち、死角領域に存在する走行領域区分線21(図6(a)では、自車両2が走行している道路のうち、路側帯寄りの箇所の白線)の画像が曲がったものとなる。なお、ドアミラー領域に存在する白線22(図6(a)では、自車両2の走行車線とその左隣の走行車線との間の点線状の白線)の画像は、自車両2の前後方向とほぼ同方向に直線状に延在するものとなる。
【0074】
そこで、STEP3の縦スケール修正処理では、横スケール修正画像のうち、死角領域と、ドアミラー領域のうちの死角領域寄りの領域との画像(横方向での横方向圧縮率CRhの変化率が比較的大きい領域に対応する画像)を縦方向に圧縮することで、横スケール修正画像における死角領域で曲がってしまっている走行領域区分線の画像を自車両2の前後方向とほぼ同方向の真っ直ぐな直線状の画像に補正する。
【0075】
この場合、本実施形態では、STEP2の処理の場合と同様に、縦スケール修正画像を表示する表示器5の表示画面の全体領域は、図7(a)に示すように、横方向に順番に隣接して並ぶ所定幅のN個の局所領域A(1)〜A(N)に区分けされる。そして、各局所領域A(i)(i=1,2,…,N)の画像の縦方向の拡縮倍率を表すものとしての縦方向圧縮率CRvが、図7(c)のグラフで示すように、表示画面の横方向での各局所領域A(i)の位置に応じて変化するようにして設定される。以降の説明では、第i番目の局所領域A(i)の位置に対応する縦方向圧縮率の値をCRv(i)と表記することがある。
【0076】
ここで、各局所領域A(i)の位置に対応する縦方向圧縮率CRv(i)は、横スケール修正画像における対応する局所領域A(i)内の画像の縦幅を1/CRv(i)倍のサイズにスケール修正することを意味する拡縮倍率である。
【0077】
そして、本実施形態における図7(c)のグラフで示す縦方向圧縮率CRvは、表示画面の全体領域のうち、図中のC1の横方向範囲内においては、その範囲内の各局所領域A(i)の画像の縦幅を変化させないように“1”に設定される。このC1の横方向範囲は、ドアミラー領域において、横方向圧縮率CRhの値が一定に維持される前記横方向圧縮率一定範囲C1aの境界のうちの死角領域寄りの境界の位置(CRhの値が、自車両2から遠ざかるに伴い増加し始める位置)よりも自車両2に近い側の範囲である。
【0078】
また、C1よりも死角領域側のC2の横方向範囲(表示画面の全体領域のうち、C1以外の横方向範囲)内においては、その範囲内の各局所領域A(i)の画像の縦幅を圧縮するように、縦方向圧縮率CRvの値が“1”よりも大きい値に設定される。このC2の横方向範囲は、死角領域の画像と、ドアミラー領域のうちの死角領域寄りの一部の領域の画像とを含む範囲である。
【0079】
この場合、C2の横方向範囲内の各局所領域A(i)の位置での縦方向圧縮率CRvは、自車両2から遠ざかるに伴い、徐々に増加していくように設定される。
【0080】
本実施形態では、各局所領域A(i)の位置での縦方向圧縮率CRv(i)の値(より詳しくは、横スケール修正画像のうち、自車両2の前後方向に平行な白線等が交わる点である消失点Pよりも、自車両2から遠ざかる側の範囲(図7(c)中のC3の範囲)における縦方向圧縮率CRv(i)の値)は、消失点Pの位置(横方向での位置)から各局所領域A(i)の位置(横方向での位置)までの範囲における横方向圧縮率CRhの値と、消失点Pの位置での横方向圧縮率CRhの値とに応じて、次式(1)より設定されている。
【0081】
【数1】

【0082】
ここで、図7(c)を参照して、上式(1)におけるCRv(x(n))は、横方向位置がx(n)である局所領域A(i)に対応する縦方向圧縮率の値であり、CRh(x(j))(j=1,2,…,n)は、それぞれx(j)の横方向位置での横方向圧縮率CRhの値である。なお、x(1)、x(2)、…、x(n)は、自車両2の側面から遠ざかる向きに、消失点Pの横方向位置x(0)(消失点Pを含む局所領域A(i)の位置)から一定間隔で順番に並ぶ位置である。また、消失点Pの横方向位置x(0)は、本実施形態では、ドアミラー領域における前記横方向圧縮率一定範囲C1a内の位置となっている。
【0083】
また、式(1)におけるCRh_STDは、消失点Pの横方向位置x(0)での横方向圧縮率CRhの値である。以降、このCRh_STDを基準横方向圧縮率という。この基準横方向圧縮率CRh_STDは、本実施形態では、ドアミラー領域における前記横方向圧縮率一定範囲C1aでの横方向圧縮率CRhの値に一致する。
【0084】
従って、本実施形態では、横方向位置がx(n)である局所領域A(i)に対応する縦方向圧縮率CRv(x(n))は、その横方向位置x(n)と、消失点Pの横方向位置x(0)との間の範囲における横方向圧縮率CRhの基準横方向圧縮率CRh_STDに対する比率の平均値に一致するように設定されている。
【0085】
なお、この場合、横方向圧縮率CRhが、基準横方向圧縮率CRh_STDの値に一定に維持される前記横方向圧縮率一定範囲C1aでは、式(1)により設定される縦方向圧縮率CRv(x(n))は“1”となる。また、消失点Pよりも自車両2寄りの範囲に存する局所領域A(i)に対応する縦方向圧縮率CRv(i)の値は、上記式(1)によらずに、“1”に設定される。
【0086】
補足すると、上記式(1)により縦方向圧縮率CRv(i)の値を設定する場合、前記消失点Pの位置を特定する必要があるが、その特定は、例えば次のように行なうことができる。すなわち、例えば横スケール修正画像から、自車両2に近い側の走行領域区分線(例えば図7(a)白線22)と地平線を抽出して、その走行領域区分線上に引いた補助線(直線)と地平線上に引いた補助線(直線)との交点の位置を、消失点の位置として特定する。
【0087】
なお、消失点の位置を特定するために参照する走行領域区分線として、横スケール修正画像のC2の範囲で曲がってしまうような走行領域区分線(例えば図7(a)の白線21)を用いることも可能である。この場合には、前記横方向圧縮率一定範囲C1aにおける走行領域区分線と同じ傾きの補助線(直線)と地平線上に引いた補助線(直線)との交点の位置を、消失点Pの位置として特定すればよい。
【0088】
また、ハフ変換等により自車両2の前後方向と平行な直線を特定し、それらの直線の交点の位置を、消失点Pの位置として特定するようにすることも可能である。
【0089】
STEP3の縦スケール修正処理では、表示用画像生成部7は、上記の如く設定した縦方向圧縮率CRhに従って、各局所領域A(i)(i=1,2,…,N)の画像の縦幅のサイズをスケール修正することで、縦スケール修正画像を生成する。
【0090】
この場合、横スケール修正画像のうち、縦方向圧縮率CRvが“1”よりも大きい値に設定されているC2の横方向範囲に含まれる各局所領域A(i)の画像が縦方向に圧縮される。そして、このC2の横方向範囲の各局所領域A(i)の画像の圧縮においては、図8(a)に示すように、地平線に相当する線として横方向に延在する圧縮基準線Lcrv(消失点Pを通って横方向に延在する基準線)上の画素が該圧縮基準線Lcrv上の位置に保たれるように該局所領域A(i)の画像が、該局所領域A(i)の位置に対応する縦方向圧縮率CRvの倍率で縦方向に圧縮される。
【0091】
従って、圧縮基準線Lcrvよりも上側の画像(図8(a)のD1の縦方向範囲の画像)は、圧縮基準線Lcrvに向って下向きに圧縮され、圧縮基準線Lcrvよりも下側の画像(図8(a)のD2の縦方向範囲の画像)は、圧縮基準線Lcrvに向って上向きに圧縮される。
【0092】
なお、この場合、横スケール修正画像のうち、C2の横方向範囲内の画像は縦方向に圧縮される一方、C2の横方向範囲以外の画像は縦方向に圧縮されないので、C2の横方向範囲内の画像の圧縮後の縦幅は、C2の横方向範囲以外の画像に比して短くなる。そのため、C2の横方向範囲内の圧縮後の画像の上側及び下側には、それぞれ、カメラ3の撮像画像のうちの表示対象領域の上側、下側で該表示対象領域に隣接する画像を、縦方向に圧縮したものが補充される。
【0093】
以上の縦スケール修正処理によって、図8(b)に示すような縦スケール修正画像が得られる。この縦スケール修正画像(詳しくは、C2の横方向範囲内の圧縮後の画像の上側及び下側に画像の補充を施した後の縦スケール修正画像)の全体のサイズ(横幅及び縦幅)は、横スケール修正画像及び表示対象撮像画像と同じである。この場合、C2の横方向範囲内の縦方向圧縮率CRvを上記の如く設定することによって、横スケール修正画像の死角領域で曲がってしまっていた走行領域区分線としての白線21が自車両2の前後方向と同方向に直線状に延在するような線に修正される。
【0094】
この場合、走行領域区分線に限らず、ガードレールや縁石、あるいは、ビルのエッジ等、実空間において、自車両2の前後方向と同方向に延在する線も、縦スケール修正画像(表示用撮像画像)において、直線状に延在するような線に修正される。
【0095】
本実施形態では、以上のようにして生成される縦スケール修正画像が、表示器5に表示されるべき表示用撮像画像とされる。そして、前記表示制御部8は、カメラ3の撮像画像を表示器5に表示させる要求が発生した場合に、上記の如く表示用画像生成部7により生成された表示用撮像画像(縦スケール修正画像)を表示器5に表示させる。
【0096】
補足すると、前記縦スケール修正処理は、自車両2の前後方向と平行に延在するはずの線が、表示用撮像画像において直線状になるように横スケール修正画像をスケール修正する処理であるので、死角領域での実空間において、自車両2の横方向(自車両2の車幅方向)に延在するような直線(消失点を通る直線を除く)は、表示用撮像画像(縦スケール修正画像)において曲がったものとなる。
【0097】
ただし、自車両2の横方向に延在する直線の曲がりが比較的顕著になるのは、死角領域のうちの自車両2の真横近辺の箇所であり、その箇所に他車等の物体が存在する場合に、該物体と自車両2の接触を回避する上では、その箇所に物体が存在することを運転者が認識できることが重要である。従って、表示用撮像画像における該物体の横方向の線の曲がりは実用上、支障がない。
【0098】
以上説明した本実施形態によれば、表示器5にカメラ3の撮像画像として表示される表示用撮像画像は、前記した如く、表示対象撮像画像のうち、ドアミラー領域の大部分を含む前記B2の横方向範囲において該表示対象撮像画像を横方向に拡大し、また、死角領域に含まれるB3の横方向領域において該表示対象撮像画像を横方向に圧縮したものとなっている。
【0099】
このため、表示用撮像画像の横方向の画角を横方向に広角な範囲に保ちつつ、ドアミラー領域に存在する他車等の物体の画像のサイズが、ドアミラー9L上で視認される該物体のサイズと同程度になるようにすることができる。このため、表示用撮像画像中での該物体の画像のサイズから視覚的に認識される該物体と自車両2との距離(前後方向の距離)を、ドアミラー9L上で視認される該物体のサイズから視覚的に認識される距離に整合させることができる。
【0100】
また、表示用撮像画像のうちのドアミラー領域と死角領域とのいずれの領域においても、該画像中での他車等の物体の横方向の移動速度を基に、自車両2に対する該物体の概略的な移動速度(自車両2の前後方向での移動速度)を同じように視覚的に認識することができる。
【0101】
さらに、自車両2の前後方向とほぼ同方向に直線状に延在するはずの白線等の走行区分線が、表示用撮像画像において顕著に曲がったりすることなく、自車両2の前後方向とほぼ同方向に直線状に延在することとなる。
【0102】
この結果、自車両2の運転者は、表示用撮像画像を視認することで、死角領域を含めた自車両2の後側方の状況、例えば、死角領域に存在する他車と自車両2と相対的な位置関係や、該他車の自車両2に対する運動状態等を、違和感なく適切に確認することができる。
【0103】
なお、以上説明した実施形態では、自車両2の左側の後側方の撮像画像から生成した表示用画像を表示器5に表示させる場合と例にとって説明したが、自車両2が、左ハンドルの車両である場合には、自車両2の右側の後側方の撮像画像をカメラにより取得し、その撮像画像から前記実施形態の場合と同様に生成した表示用画像(横方向及び縦方向の拡縮を行なった画像)を表示器5に表示させるようにしてもよい。
【0104】
また、自車両2の右側及び左側の両方の後側方の撮像画像をそれぞれカメラにより取得するようにして、右側の後側方の撮像画像から生成した表示用画像と、左側の後側方の撮像画像から生成した表示用画像とを選択的に表示器5に表示させるようにしてもよい。
【0105】
また、前記実施形態では、横方向拡縮倍率及び縦方向拡縮倍率を表すものとして、それぞれ圧縮率を用いたが、該圧縮率の代わりに、その逆数値(すなわち拡大率)を用いてもよい。
【0106】
また、前記実施形態では、カメラ3のレンズ歪に起因する画像の歪みを補正した撮像画像(もしくはレンズ歪が十分に微小で有るカメラ3の撮像画像)から、表示用画像を生成する場合を例にとって説明したが、レンズ歪に起因する歪みを補正していない撮像画像に対して、前記横方向スケール修正処理と縦方向スケール処理とを施して、表示用画像を生成するようにしてもよい。
【0107】
この場合においては、縦方向スケール処理における縦方向での画像の圧縮の基準線(前記圧縮基準線Lcrvに相当する基準線)は、横スケール修正処理の前の撮像画像中で、自車両2の前後方向と同方向に延在することとなる直線群のうち、横スケール修正画像においてできるだけ高い直線性を有し、画面上で水平方向に延在する線を使用することが望ましい。この場合、画像上での直線の曲がりの方向が入れ替わる位置に引いた水平線を基準線として使用すればよい。
【0108】
また、縦方向圧縮率CRvは、前記式(1)に基づいて設定する代わりに、レンズ歪に起因する画像歪みを考慮して設定した演算式又はデータテーブルに基づいて設定することが望ましい。
【0109】
また、前記実施形態では、カメラ3の撮像画像のうちの表示対象撮像画像の横方向及び縦方向の画角は、常に一定であるが、車両2の運転状況等に応じて変更するようにしてもよい。例えば、自車両2を後退させて所定の駐車領域に駐車させるような場合に、自車両2の側方に駐車している他車や自車両2の側方に存在する壁と自車両2との横方向の位置関係を確認し易くするために、自車両2の車速が所定値以下である場合や、自車両2のシフトポジションが後退用の位置に設定されている場合に、表示対象撮像画像の横方向の画角を、自車両2の通常走行時における画角(前記実施形態と同じ画角)よりも狭くするようにしてもよい。
【0110】
そして、この場合、横方向の画角を狭くした表示対象撮像画像から表示用画像を生成する際には、横スケール修正処理における横方向拡縮倍率(例えば横方向圧縮率CRh)の横方向位置に応じた変化幅を、横方向の画角が広い表示対象撮像画像から表示用画像を生成する場合よりも小さくして、横方向の拡大及び圧縮のための倍率を、より“1”に近づけた値に設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…運転支援装置、2…車両、3…カメラ、5…表示器、7…表示用画像生成部(表示用画像生成手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後側方を撮像するカメラと、該カメラの撮像画像から運転者に視認させる表示用画像を生成する表示用画像生成手段と、該表示用画像生成手段により生成された表示用画像を表示する表示器とを備えた車両の運転支援装置であって、
前記表示用画像生成手段は、前記カメラの撮像画像の横方向の位置に応じて値が変化するように設定された横方向拡縮倍率で該撮像画像の各部を横方向にスケール修正する横スケール修正処理と、実空間において前記車両の前後方向に直線状に延在する走行領域区分線であって、前記横スケール修正処理により前記撮像画像から生成される横スケール修正画像中で曲がって表示される走行領域区分線の画像が、該横スケール修正画像における前記車両の前後方向に直線状に延在する画像になるように設定された縦方向拡縮倍率で該横スケール修正画像を部分的に縦方向にスケール修正する縦スケール修正処理とを実行することにより、前記表示用画像を生成する手段であることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の運転支援装置において、
前記横スケール修正処理における横方向拡縮倍率は、前記カメラの撮像画像うち、前記車両のサイドミラーにより視認される領域における横方向の所定範囲で拡大用の所定の一定倍率値になるように設定されていると共に、該所定範囲の外側の範囲では、前記撮像画像の横方向の位置に応じて前記一定倍率値から圧縮用の倍率値に変化するように設定されており、
前記縦スケール修正処理は、前記表示用画像における前記走行領域区分線の画像が、前記横スケール修正画像における消失点を通り、且つ、該横スケール修正画像のうちの前記所定範囲での前記走行領域区分線の画像と同方向に直線状に延在する画像になるように該横スケール修正画像の横方向の位置に応じて設定された縦方向拡縮倍率で、該横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分を縦方向に圧縮する処理であることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の運転支援装置において、
前記縦方向拡縮倍率は、前記消失点の位置での前記横方向拡縮倍率の値を基準倍率としたとき、前記横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分における横方向の各位置において、該縦方向拡縮倍率の値が、該位置と前記消失点との間の範囲での前記横方向拡縮倍率の値の前記基準倍率に対する比率の平均値の倍率になるように設定されることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の車両の運転支援装置において、
前記縦スケール修正処理によって、前記横スケール修正画像のうちの前記所定範囲の外側の範囲の部分を縦方向に圧縮する処理は、該横スケール修正画像における消失点を通って横方向に延在する基準線上における該横スケール修正画像の画素を縦方向に動かさないようにしつつ、該基準線よりも上側の画像と下側の画像とをそれぞれ該基準線に向って圧縮する処理であることを特徴とする車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85142(P2013−85142A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224181(P2011−224181)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】