説明

車両の防音構造

【課題】高電圧機器装置で発生した騒音が座席の乗員側に伝わることを防止する。
【解決手段】車両の車室内に設置された座席2と、車両を駆動するために用いる高電圧制御機器ユニット40を備えた高電圧機器装置10と、を有する車両において、高電圧機器装置10で発生した騒音が車室内に伝わることを防止するための防音構造であって、座席2は、背凭れ部分を構成するクッション材3を収容したシートバック3と、シートバック3の正面3a側に形成された凹状の収納部16と、収納部16に対して出し入れが可能な状態で取り付けられたアームレスト15とを備え、高電圧機器装置10は、シートバック3の背面側に設置されており、シートバック3の背面における収納部16に対応する位置と高電圧機器装置10との間には、防音機能を有するシート状の防音部材17が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駆動するために用いる高電圧機器装置で発生した騒音が車室内に伝わることを防止するための車両の防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータを併用して走行する自動車(以下、「ハイブリッド自動車」と称す。)、又は、モータのみを用いて走行する自動車(以下、「電気自動車」と称す。)には、車両を駆動するために用いる高電圧機器装置が搭載されている。この高電圧機器装置は、電力を蓄えると共に電動装置に電力を供給するための蓄電池を有する蓄電池ユニットと、蓄電池の電力を所定電圧に制御するインバータなどの高電圧制御機器を有する高電圧制御機器ユニットとを備えている。特許文献1には、この種の高電圧機器装置を搭載した車両の従来構成例が記載されている。特許文献1の高電圧機器装置は、蓄電池ユニットと高電圧制御機器ユニットを略直方体形状のケースに収容した構成であり、車両の乗員スペースを広く確保するための手法として、高電圧機器装置を後部座席の背凭たれ(シートバック)の背面側に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような高電圧機器装置は、高電圧高周波用途での仕様が要望されるため、例えば、高電圧機器装置に内蔵したインバータ回路のコンデンサから動作音が発生し、これが騒音としてケースの外部に漏れるという問題がある。また、高電圧機器装置では、蓄電池ユニットや高電圧制御機器ユニットを冷却するために、送風ファンの運転で吸入した冷却用空気をケース内の通気路に流通させる冷却構造を備えている。しかしながら、送風ファンの動作音や、ケース内の通気通路に冷却用空気が流通する際の通風音(風切音)が発生することで、これらが騒音としてケースの外部に伝わるおそれがある。
【0005】
特に、特許文献1に示すように、高電圧機器装置を車両の後部座席の背面側に設置している場合、後部座席に座る乗員の耳元から高電圧機器装置が近い位置にあるため、上記の騒音が無視できないレベルになるおそれがある。なお、座席のシートバックに内包したクッション材によって、当該騒音が座席側に伝わることをある程度は抑制することが可能である。
【0006】
しかしながら、座席のシートバックの中央部には、座席の乗員を補助するための補助部材として、回動式のアームレストが設けられていることがある。このアームレストは、シートバックの座面(正面)側の中央部に形成した凹状の収納部に収納されており、下端に設けた回動軸を支点として、上端を回動させながら前方へ倒して引き出すようになっている。このようなアームレストを設けている場合、シートバックの収納部に対応する位置には、クッション材が収容されていないか、あるいはクッション材が収容されていても他の部分よりその量が少なく厚みが薄くなっている。そのため、アームレストを収納部から引き出した状態で、収納部の箇所を通して高電圧機器装置で発生した騒音が車室内へ漏れてしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイブリッド自動車や電機自動車において、車両を駆動するための高電圧機器装置で発生した騒音が座席の乗員側に伝わることを効果的に抑制できる防音構造を備えた車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、車両の車室(9)内に設置された座席(2)と、車両を駆動するために用いる高電圧機器(40)を備えた高電圧機器装置(10)と、を有する車両において、高電圧機器装置(10)で発生した騒音が車室(9)内に伝わることを防止するための防音構造であって、座席(2)は、内部にクッション材(3c)が収容された背凭れ部を構成するシートバック(3)と、シートバック(3)の正面(3a)側に形成された凹状の収納部(16)と、収納部(16)に対して出し入れが可能な状態で取り付けられた補助部材(15)と、を備え、高電圧機器装置(10)は、シートバック(3)の背面(3b)側に設置されており、シートバック(3)の背面(3b)における少なくとも収納部(16)に対応する位置と高電圧機器装置(10)との間には、防音機能を有する防音部材(17)が設置されていることを特徴とする。なお、ここでいう収納部に対して出し入れが可能な補助部材とは、座席の乗員を補助するための部材であり、このような補助部材としては、例えば、座席の乗員が肘を乗せるためのアームレストが該当する。しかしながら、補助部材はアームレストには限定されず、カップホルダーなど他の機能を備えた部材であってもよい。
【0009】
本発明にかかる車両の防音構造によれば、シートバックの背面側における少なくとも凹状の収納部に対応する位置と高電圧機器装置との間に、防音機能を有する防音部材が設置されているので、シートバックにおけるクッション材が収容されていないか又はその量が他の部分よりも少ない収納部の箇所を通して高電圧機器で発生した騒音が車室内に漏れることを効果的に防止できる。
【0010】
また、上記の防音構造では、防音部材(17)は、いずれもシート状の部材である吸音部材(18)と遮音部材(19)とを積層した構成であるとよい。この構成によれば、吸音部材による吸音効果と遮音部材による遮音効果とを合わせた効果によって、防音部材の防音効果を高めることができる。また、吸音部材と遮音部材とをいずれもシート状の部材としたことで、シートバックの背面と高電圧機器装置との間が狭小なスペースであっても、当該スペースに防音部材を効率的に設置することが可能となる。
【0011】
また、上記の防音構造では、防音部材(17)は、シートバック(3)の背面(3b)側の収納部(16)に対応する位置のみに設置するとよい。この構成によれば、防音部材のサイズを必要最小限に小型化することができるので、防音部材の構成材料を少なく抑えることができ、車両の製造コストの低減及び軽量化を図ることができる。
【0012】
また、上記の防音構造では、高電圧機器装置(10)は、高電圧機器(40)を収納するためのケース(60)を備え、ケース(60)は、高電圧機器(40)を収納した本体部(61)と、本体部(61)の一面に設けた開口部(61a)を覆う板状の蓋部材(63)とで構成されており、防音部材(17)は、蓋部材(63)に接した状態で設置されているとよい。この構成によれば、高電圧機器の動作時の振動がケースの蓋部材に伝わる場合でも、防音部材によって蓋部材の振動を抑制することができる。したがって、防音部材を設けたことで、高電圧機器装置で発生する騒音の低減と、高電圧機器装置で発生する振動による蓋部材を含むケースの共振の低減との両方が可能となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両の防音構造によれば、簡単な構成で、高電圧機器装置で発生した騒音が座席の乗員側に伝わることを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる防音構造を備えた車両の座席及びその背面側に設置した高電圧機器装置の分解斜視図である。
【図2】高電圧機器装置を正面側から見た概略の斜視図である。
【図3】シートバック及び高電圧機器装置を示す図で、図2のZ−Z矢視に対応する断面を示す切断平面図である。
【図4】防音構造の作用を説明するための図で、(a)は、図3のX−X矢視に対応する箇所の側断面図、(b)は、図3のY−Y矢視に対応する箇所の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる防音構造を備えた車両の座席2及びその背面側に設置した高電圧機器装置10の分解斜視図である。また、図2は、高電圧機器装置を正面側から見た概略の斜視図である。図3は、シートバック3及び高電圧機器装置10を示す図で、図2のZ−Z矢視に対応する断面を示す切断平面図である。図4は、後述する防音構造の作用を説明するための図で、(a)は、図3のX−X矢視に対応する箇所の側断面図、(b)は、図3のY−Y矢視に対応する箇所の側断面図である。
【0016】
本実施形態の防音構造を備えた車両は、エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車の車両であって、車室9内に設置された座席2と、車両を駆動するために用いる高電圧機器装置10とを備えている。なお、以下の説明で前側又は正面側というときは、後述する高電圧機器装置10のケース60の蓋板63及び前壁60a側を指し、後側又は背面側というときは、ケース60の後壁60b側を指すものとする。また、左右というときは、高電圧機器装置10のケース60を正面側(蓋板63側)から見た状態での左右を指すものとする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態における座席2は、車両の後部座席(リアシート)である。座席2は、乗員が着席する座部4と、座部4の後方に立設された背凭れ部分を構成するシートバック(センターシートバック)3とを備えて構成されている。なお、シートバック3の両側には、サイドカバー(サイドシートバック)6,6が取り付けられている。サイドカバー6,6は、合成樹脂製の成型品からなるカバー部材である。座席2は、座部4の座面4a及びシートバック3の座面(正面)3a側が車室9内を向いており、シートバック3の背面3b側は、リアトレイ7の下方における車体の下部フレーム1との間に設けたトランクルーム5に面している。したがって、シートバック3及びサイドカバー6によって、車室9とトランクルーム5とが仕切られている。高電圧機器装置10は、シートバック3の背面3b側のトランクルーム5内に設置されている。
【0018】
シートバック3は、座席2の背凭れ部分を構成する部材で、内部にクッション材3cが収容されている。シートバック3の幅方向の中央部には、回動式のアームレスト(補助部材)15が設けられている。アームレスト15は、座席2の乗員が肘を乗せるための部材ある。このアームレスト15は、シートバック3の座面(正面)3a側に形成した凹状の収納部16に収納されており、図4(b)に示すように、下端15bの近傍に設けた回動軸15cを支点として、上端15aを回動させることで前方へ倒して引き出すようになっている。収納部16は、アームレスト15の外形に沿う縦長の略直方体状の凹部であり、シートバック3における収納部16の箇所には、クッション材3cが収容されていないか、あるいは、クッション材3cが収容されていても他の部分(両側の座席部分)よりもその量が少なく厚みが薄くなっている。
【0019】
高電圧機器装置10は、図1に示すように、バッテリ(蓄電池)を含むバッテリユニット(蓄電池ユニット)20と、バッテリの電力を所定電圧に制御するための高電圧制御機器であるインバータユニット41及びDC/DCコンバータ43などを内蔵した高電圧制御機器ユニット40と、これらバッテリユニット20及び高電圧制御機器ユニット40を収容した箱型のケース60とを備えて構成されている。この高電圧機器装置10は、図4に示すように、座席2のシートバック3の背面3b側に沿う位置に設置されている。
【0020】
ケース60は、前側の全面に開口部61aを有する長方形状の箱型の本体部61と、本体部61の開口部61aを塞ぐ平板状の蓋板(蓋部材)63とで構成されている。蓋板63は、ケース60の前壁60aを構成している。本体部61は、後壁60bとその周囲に設けた上壁60c及び下壁60dと一対の側壁60e,60eとで囲まれた有底の容器状に形成されている。高電圧機器装置10は、ケース60の前壁60aがシートバック3の背面3bに沿うように、若干後方に傾斜した状態で設置されている。
【0021】
バッテリユニット20は、ケース60内の横方向の中央より右側の部分(右半分)に設置した前面が開口する箱型のバッテリボックス21と、バッテリボックス21内に装着した複数のバッテリ(蓄電池)22と、バッテリボックス21の前面側に被せて取り付けた板状のフレーム23とを備えている。バッテリボックス21は、アルミニウムやマグネシウム等の剛性の高い材料で形成されている。バッテリボックス21の内部に装着したバッテリ22を構成するセル電池同士の隙間には、冷却用空気を流通させるための冷却流路65が形成されている。
【0022】
また、高電圧制御機器ユニット40は、ケース60内の横方向の中央より左側の部分(左半分)に配置されており、インバータを含むインバータユニット41とDC/DCコンバータ43、及びそれらを設置するための板状のトレイ44及び配線類42などがユニット化された装置である。トレイ44の前側及び後側には、インバータユニット41の構成部品が設置されており、トレイ44の前側には、DC/DCコンバータ43が設置されている。トレイ44とインバータユニット41及びDC/DCコンバータ43との間には、冷却用空気を流通させるための冷却流路80が形成されている。
【0023】
また、ケース60内に冷却用空気を導入するための吸気ダクト45が設置されている。吸気ダクト45は、バッテリユニット20の右側部に設置されており、正面側を向いて開口する吸気口46を備えている。吸気口46は、サイドカバー6に設けた開口部6aに接続されており、開口部6aを介して車室9内の空気が吸入されてケース60内に導入されるようになっている。
【0024】
ケース60内には、送風ファン90が設置されている。送風ファン90は、ケース60内の左側の端部における高電圧制御機器ユニット40の後側に設置されている。また、図2に示すように、ケース60内の冷却用空気を外部へ導出するための排気ダクト55が設置されている。排気ダクト55は、送風ファン90から出てケース60の後側の左上方に延伸している。排気ダクト55の先端(下流端)には、排気口56が設けられている。排気口56は、トランクルーム5内に開口している。
【0025】
送風ファン90を回転させると、吸気ダクト45の吸気口46からケース60内に冷却用空気が導入される。この冷却用空気が冷却流路65,80を流通することで、バッテリユニット20及び高電圧制御機器ユニット40が冷却される。送風ファン90から排出された冷却用空気は、排気ダクト55を介して排気口56からトランクルーム5に排出される。
【0026】
上記構成の高電圧機器装置10では、ケース60内に設置した高電圧制御機器であるインバータユニット41が有するコンデンサの動作音(高周波音)や、送風ファン90の動作音及び冷却用空気がケース60内を流通する際の通風音(風切音)などが発生する。これらの音は、その一部がケース60の外部に騒音として漏れ出す。そこで、本実施形態の車両は、高電圧機器装置10で発生した上記の動作音などによる騒音が車室9側に伝わることを防止するための防音構造を備えている。この防音構造は、座席2のシートバック3における収納部16に対応する位置の背面3bと高電圧機器装置10との間に、防音機能を有する防音部材17を設置したものである。
【0027】
図1及び図2に示すように、防音部材17は、いずれも薄板状(シート状)の部材である吸音部材18と遮音部材19とを積層した構造である。これら吸音部材18と遮音部材19は、図2に示すように、ケース60の蓋板63の前面63aにこの順番で貼り付けられている。吸音部材18は、吸音性を有する布状の部材などで構成することができる。このような吸音部材18としては、例えば、ポリプロピレンなどの合成繊維からなるマイクロファイバーの不織布を用いるとよい。また、遮音部材19には、遮音性を有するゴム製のシート状部材(セプタムシート)を用いることができる。防音部材17は、上記のような吸音部材18と遮音部材19を重ね合わせたものである。この防音部材17は、図3及び図4に示すように、シートバック3の背面3bと蓋板63の前面63aとの間に挟まれた状態で設置される。
【0028】
また、本実施形態の防音部材17は、シートバック3の背面3b側における収納部16に対向する位置(シートバック3の中央部及びその周辺)のみに設置されている。また、防音部材17は、蓋板63の前面63aに対して面状に接触した状態で設置されている。詳細には、蓋板63側に設置した吸音部材18が蓋板63の前面63aに貼り付けられている。防音部材17は、吸音部材18の上に貼り付けられている。
【0029】
高電圧機器装置10内のインバータユニット41などで発生した動作音は、図4に矢印で示すように、その一部が高電圧機器装置10の蓋板63を通過して蓋板63の前面63a側に伝わる。そして、シートバック3のクッション材3cが収容された箇所の背面3b側では、図4(a)に示すように、クッション材3cが防音部材として機能することによって、蓋板63を通過した高電圧機器装置10の騒音がシートバック3を貫通して車室9側へ伝わることを抑制できる。
【0030】
その一方で、シートバック3の収納部16に対応する箇所の背面3b側では、図4(b)に示すように、アームレスト15を収納部16から引き出した状態では、収納部16の箇所にクッション材3cが無いか、あるいはクッション材3cが有ってもその厚みが他の部分よりも薄いため、仮に、防音部材17を設置していなければ、収納部16の箇所を通して蓋板63を通過した高電圧機器装置10の騒音が車室9内へ漏れてしまう。しかしながら、本実施形態の防音構造では、シートバック3の背面3bにおける収納部16に対応する位置と高電圧機器装置10との間に防音部材17を設置しているので、蓋板63を通過した騒音が収納部16の箇所から車室9側へ漏れることを防止できる。したがって、高電圧機器装置10で発生した騒音を座席2の乗員が感知することを効果的に抑制でき、騒音のレベルを無視できる程度にまで低減することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態の防音構造では、防音部材17は、吸音部材18と遮音部材19とを積層した構造であるため、吸音部材18による吸音効果と遮音部材19による遮音効果を合わせた効果によって、防音部材17の防音性能をより一層高めることができる。また、吸音部材18と遮音部材19をいずれもシート状の部材としたことで、シートバック3と高電圧機器装置10との間の狭小なスペースに防音部材17を効率的に設置することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の防音構造では、防音部材17は、シートバック3の背面3b側における収納部16に対応する位置とその周辺のみに設置したことで、防音部材17のサイズを必要最小限に小型化している。これにより、防音部材17の構成材料を少なく抑えることができるので車両の製造コストを低減できる。また、車両の軽量化を図ることもできる。
【0033】
また、本実施形態の防音構造では、防音部材17は、ケース60の蓋板63に接した状態で設置されている。そのため、防音部材17によって蓋板63の振動を抑制することができる。したがって、バッテリユニット20内のバッテリ22や高電圧制御機器ユニット40内のインバータユニット41などで発生する動作時の振動がケース60の蓋板63に伝わっても、防音部材17によって蓋板63の振動を抑制することができる。したがって、防音部材17を設けたことで、高電圧機器装置10で発生する騒音の低減と、高電圧機器装置10で発生する振動による蓋板63を含むケース60の共振の低減との両方が可能となる。
【0034】
また、本実施形態の高電圧機器装置10では、高電圧機器装置10内の主な騒音源であるコンデンサを含むインバータユニット41は、ケース60内の幅方向(左右方向)の中央付近に設置されている。そのため、シートバック3の幅方向の中央部に設けた収容部16の箇所には、インバータユニット41からの騒音が伝わり易い。これに対して、本実施形態では、ケース60の中央部に対応する位置に上記の防音部材17を設置していることで、インバータユニット41で発生する騒音を防音部材17で効果的に遮断することができる。したがって、騒音の発生源に対して効果的な防音が可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した防音部材17を構成する吸音部材18や遮音部材19の具体的な材質や構成は一例であり、吸音部材18や遮音部材19は、吸音性や遮音性を有する部材であれば、他の材質などからなる部材であってもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、防音部材17は、吸音部材18と遮音部材19の両方を備えたものであるが、これ以外にも、吸音部材18と遮音部材19のいずれか一方のみを設置することも可能である。またここでは、防音部材17をシートバック3の収納部16に対応する位置とその周辺にのみに設置した場合を示したが、防音部材17は、ケース60の前壁60a(蓋板63)の全面を覆うように設置してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、収納部に対して出し入れ可能な状態で設置した補助部材として、乗員が肘を乗せるためのアームレスト15を示したが、補助部材は、アームレスト15には限らず、他の部材であってもよい。例えば、飲物の容器を置くためのカップホルダーなどを備えた部材であってもよい。また、上記実施形態における自動車はハイブリッド自動車であったが、本発明にかかる高電圧機器装置を備えた車両の防音構造は、モータのみで走行する電気自動車にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 下部フレーム
2 座席
3 シートバック
3a 座面(正面)
3b 背面
3c クッション材
4 座部
5 トランクルーム
9 車室
10 高電圧機器装置
15 アームレスト(補助部材)
16 収納部
17 防音部材
18 吸音部材
19 遮音部材
20 バッテリユニット
21 バッテリボックス
22 バッテリ
23 フレーム
40 高電圧制御機器ユニット
41 インバータユニット
42 配線類
43 DC/DCコンバータ
45 吸気ダクト
46 吸気口
55 排気ダクト
56 排気口
60 ケース
61 本体部
61a 開口部
63 蓋板(蓋部材)
63a 前面
90 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に設置された座席と、
前記車両を駆動するために用いる高電圧機器を備えた高電圧機器装置と、を有する車両において、前記高電圧機器装置で発生した騒音が前記車室内に伝わることを防止するための防音構造であって、
前記座席は、内部にクッション材が収容された背凭れ部を構成するシートバックと、前記シートバックの正面側に形成された凹状の収納部と、前記収納部に対して出し入れが可能な状態で取り付けられた補助部材と、を備え、
前記高電圧機器装置は、前記シートバックの背面側に設置されており、
前記シートバックの背面における少なくとも前記収納部に対応する位置と前記高電圧機器装置との間には、防音機能を有する防音部材が設置されている
ことを特徴とする車両の防音構造。
【請求項2】
前記防音部材は、いずれもシート状の部材である吸音部材と遮音部材とを積層した構成である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の防音構造。
【請求項3】
前記防音部材は、前記シートバックの前記背面側の前記収納部に対応する位置のみに設置した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の防音構造。
【請求項4】
前記高電圧機器装置は、前記高電圧機器を収納するためのケースを備え、
前記ケースは、前記高電圧機器を収納した本体部と、前記本体部の一面に設けた開口部を覆う板状の蓋部材とで構成されており、
前記防音部材は、前記蓋部材に接した状態で設置されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の防音構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−148582(P2012−148582A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6400(P2011−6400)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】