説明

車両の障害物検知装置

【課題】障害物を検知するレーダーユニット1を備えた車両の障害物検知装置において、レーダーユニット1を交換した際に、その交換後のレーダーユニット1の障害物検知軸の向きの調整が確実に行われるようにする。
【解決手段】レーダーユニット1の障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、レーダーユニット1の記憶部1aに予め記憶したレーダIDコードと同じレーダIDコードをコントロールユニット61の記憶部61aに記憶させるとともに、イグニッションスイッチ64のオン時に、上記記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと、上記記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しているか否かを判定して、両レーダIDコードが一致していないと判定したときに、表示装置63により警報を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周辺の障害物を検知するレーダーユニットと、該レーダーユニットからの障害物検知情報を受けて該車両の作動機器(ブレーキやシートベルトプリテンショナ)を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミリ波レーダユニット等のレーダユニットを用いて車両周辺(特に車両前方)の障害物を検知するようにした障害物検知装置はよく知られており、このレーダーユニットにより、先行車両を含む車両前方の障害物を検知し、作動機器制御手段が、この検知情報に基づいて障害物への衝突を予知し、該障害物への衝突が予知される場合には、当該車両のブレーキや、乗員が着用しているシートベルトを巻き取るシートベルトプリテンショナを作動させるようにしている。
【0003】
上記のようなレーダーユニットを搭載した車両の製造工場においては、通常、上記レーダユニットを車両の車体等に取り付けた後に、その障害物検知軸の向きを、予め設定した向きとなるように調整する作業(いわゆるエイミング作業)が行われる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−303672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の製造工場においては、予め決められた工程通りに車両の組立てや各種調整が行われるため、上記のようなエイミング作業は確実に行われるが、車両の修理を行うサービス工場等においては、レーダーユニットを交換したときに、その交換後のレーダーユニットに対してエイミング作業が行われない可能性があり、エイミング作業が確実に行われるようにするためには、改良の余地がある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようにレーダーユニットを備えた車両の障害物検知装置において、レーダーユニットを交換した際に、その交換後のレーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が確実に行われるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、レーダーユニットに、該レーダユニットを個々に識別するための識別コードを予め記憶したレーダ側記憶部を設け、レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に、上記レーダ側記憶部に記憶されている識別コードと同じ識別コードを記憶するようにし、作動機器制御手段が、該識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、上記レーダ側記憶部に記憶されている識別コードと、上記制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが一致しているか否かを判定して、両識別コードが一致していないと判定したときに、警報手段により警報を行う構成とした。
【0007】
具体的には、請求項1の発明では、車両に搭載され、該車両の周辺の障害物を検知するレーダーユニットと、該レーダーユニットからの障害物検知情報を受けて該車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置を対象とする。
【0008】
そして、上記レーダーユニットは、該レーダユニットを個々に識別するための識別コードを予め記憶したレーダ側記憶部を有し、上記作動機器制御手段は、上記識別コードを記憶するための制御手段側記憶部を有し、上記制御手段側記憶部には、上記レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、該レーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードと同じ識別コードが記憶されるようになっており、更に上記作動機器制御手段は、上記識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、上記レーダ側記憶部に記憶されている識別コードと、上記制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが一致しているか否かを判定して、両識別コードが一致していないと判定したときに、警報手段により警報を行うように構成されているものとする。
【0009】
上記の構成により、レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了していれば、レーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードと、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが同じになり、この結果、識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、両識別コードが一致するか否かを判定したときには、一致していると判定されることになる。ここで、例えば車両の修理を行うサービス工場等においてレーダーユニットを交換した場合に、作業者が調整作業を行わなかったとすると、その交換後のレーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードは、交換前のレーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードとは異なるとともに、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コード(交換前のレーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードと同じ)とも異なる。したがって、所定のタイミングで、レーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードと、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが一致するか否かを判定したときには、一致していないと判定されることになる。この場合、警報がなされるので、作業者がこの警報に気付いて調整作業を行うようになる。そして、調整作業が行われて、調整が正常に完了すると、交換後のレーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードが、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に新たに記憶される。この結果、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードは、交換後のレーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードと同じになり、この結果、両識別コードが一致していると判定されて、警報はなされなくなる。よって、車両の修理を行うサービス工場等においてレーダーユニットを交換した際に、その交換後のレーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が確実に行われるようになる。
【0010】
請求項2の発明では、車両に搭載され、該車両の周辺の障害物を検知するレーダーユニットと、該レーダーユニットからの障害物検知情報を受けて該車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置を対象として、上記レーダーユニットは、該レーダユニットを個々に識別するための識別コードを記憶するためのレーダ側記憶部を有し、上記作動機器制御手段は、上記識別コードを記憶するための制御手段側記憶部を有し、上記レーダ側記憶部及び制御手段側記憶部には、上記レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、同じ上記識別コードがそれぞれ記憶されるようになっており、更に上記作動機器制御手段は、上記識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、上記レーダ側記憶部に識別コードが記憶されているか否かを判定しかつ記憶されていると判定したときにおいて該レーダ側記憶部に記憶されている最新の識別コードと、上記制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが一致しているか否かを判定して、レーダ側記憶部に識別コードが記憶されていないと判定したとき、又は両識別コードが一致していないと判定したときに、警報手段により警報を行うように構成されているものとする。
【0011】
このことにより、請求項1の発明と同様に、レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了していれば、レーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている最新の識別コードと、作動機器制御手段の制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが同じになり、識別コードの最初の記憶以降にレーダーユニットを交換しなければ、所定のタイミングで、両識別コードが一致するか否かを判定したときには、一致していると判定されることになる。一方、レーダーユニットを交換した場合に、作業者が調整作業を行わなかったとすると、レーダ側記憶部に識別コードが記憶されていないと判定される(車両に搭載したことがない新しいレーダーユニットを用いた場合)か、又は両識別コードが一致していないと判定され(他の車両に搭載していたレーダーユニットを用いた場合)、警報がなされる。よって、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記所定のタイミングは、上記車両のイグニッションスイッチのオン時であるものとする。
【0013】
こうすることで、レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整がより一層確実に行われるようになる。すなわち、作業者は、通常、車両を移動させる等のためにイグニッションスイッチをオンさせるので、そのときに警報がなされると、その警報に気付き易く、調整作業をほぼ確実に行うようになる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、上記作動機器は、上記車両の乗員が着用しているシートベルトを巻き取って該シートベルトに所定張力を付与することで該乗員を拘束するシートベルトプリテンショナであるものとする。
【0015】
このことで、障害物検知軸の向きの調整が行われたレーダユニットにより障害物を的確に検知することができるとともに、該障害物への衝突等が予知される場合に、シートベルトにより乗員を的確に拘束することができ、乗員の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の車両の障害物検知装置によると、レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、レーダーユニットのレーダ側記憶部と作動機器制御手段の制御手段側記憶部との識別コードが同じになるようにし、識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、両識別コードが一致しているか否かを判定して、一致していないと判定したとき(又はレーダ側記憶部に識別コードが記憶されていないと判定したとき)に、警報手段により警報を行うようにしたことにより、車両の修理を行うサービス工場等においてレーダーユニットを交換しても、その交換後のレーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が確実に行われるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る障害物検知装置を搭載した車両W(本実施形態では自動車である)を示し、この車両Wの前端部に、車両Wの周辺(本実施形態では、車両前方)に存在する障害物を検知するレーダユニット1が設けられている。このレーダユニット1は、ミリ波レーダユニットであって、ミリ波を前方に向けて発信する(水平方向に所定角度で走査しながら発信する)とともに、車両Wの前方の先行車両等の障害物に当たって反射してくる反射波を受信して、その受信したデータに基づいて障害物の検知処理を行う。
【0019】
上記車両Wには、上記レーダユニット1からの障害物検知情報を受けて車両Wの作動機器を制御する作動機器制御手段としてのコントロールユニット61が設けられている。上記作動機器としては、本実施形態では、後述するブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22である。
【0020】
上記ブレーキ作動手段21は、車両Wのブレーキを作動させて各車輪65に制動力を付与するものである。また、シートベルトプリテンショナ22は、車両Wのシート68に着座している乗員が着用しているシートベルト71を巻き取って該シートベルト71に所定張力を付与することで、該乗員を拘束するものである。
【0021】
ここで、車両Wに搭載されているシートベルト装置について説明する。このシートベルト装置は、図1に示すように、上記シートベルト71を巻き取るリトラクタ部73と、このリトラクタ部73から引き出されたシートベルト71の先端部が取り付けられたラップアンカー部74と、シートベルト71の長さ方向中間部に配設されたタング72が着脱可能に係合するバックル部75とを有する3点式に構成されている。上記バックル部75は、シート68の車幅方向内側で車体に固定されている一方、リトラクタ部73及びラップアンカー部74は、シート68を挟んでバックル部75とは反対側である車幅方向外側で車体に固定されている。上記リトラクタ部73から引き出されたシートベルト71は、シート68の車幅方向外側の上方位置に設けられたスリップガイド77により、その引き出し方向が上向きから下向きに変換されて、その先端部が上記ラップアンカー部74に取り付けられている。上記タング72は、上記スリップガイド77とラップアンカー部74との間でシートベルト71に対して摺動可能に設けられており、このタング72が上記バックル部75に係合されることで、シートベルト71の着用状態となる。
【0022】
上記シートベルト装置のリトラクタ部73内に、上記シートベルトプリテンショナ22が設けられている。本実施形態では、シートベルトプリテンショナ22は、図2に示すように、電動モータ等により上記シートベルト71を巻き取る第1プリテンショナ機構22aと、インフレータで発生するガスにより上記シートベルト71を巻き取る第2プリテンショナ機構22bとからなっており、上記コントロールユニット61が上記レーダユニット1からの障害物検知情報に基づいて、車両Wの障害物への衝突を予知したとき(例えば、車両Wが障害物に衝突するまでの予測時間が、予め決めた基準時間よりも短いとき)には、第1プリテンショナ機構22aを作動させることで、シートベルト71に所定張力を付与する一方、車両Wの障害物への衝突を検出するGセンサ62からの衝突信号がコントロールユニット61に入力されたときには、第2プリテンショナ機構22bを作動させることで、上記第1プリテンショナ機構22aを作動させたときよりも大きな張力をシートベルト71に付与するようになっている。
【0023】
上記コントロールユニット61は、上記レーダユニット1からの障害物検知情報に基づいて車両Wの障害物への衝突が予知されるか否かを判定し、衝突が予知されるときには、ブレーキ作動手段21を作動させることで、各車輪65のブレーキを作動させるとともに、シートベルトプリテンショナ22の第1プリテンショナ機構22aを作動させることで、乗員が着用しているシートベルト71に所定張力を付与する。その後、Gセンサ62からの衝突信号を受けたときには、シートベルトプリテンショナ22の第2プリテンショナ機構22bを作動させることで、シートベルト71に更に大きな張力を付与して、衝突時に乗員をシートベルト71により確実に拘束して保護する。
【0024】
図2に示すように、上記レーダユニット1は、該レーダユニット1を個々に識別するための識別コード(以下、レーダIDコードという)を予め記憶した記憶部1a(レーダ側記憶部に相当)を有している。レーダIDコードは、レーダユニット1の製造工程又は製造完了時に、コード記憶部1aに記憶されたものであって、レーダユニット1毎に異なったコードである。
【0025】
上記コントロールユニット61は、上記レーダユニット1と相互通信可能に構成されている。そして、コントロールユニット61は、上記レーダIDコードを記憶するための記憶部61a(制御手段側記憶部に相当)を有していて、後述の如く、レーダーユニット1の障害物検知軸A(図4参照)の向きの調整が正常に完了する毎に、該レーダーユニット1の記憶部1aより、その記憶されているレーダIDコードを取り込んで、該取り込んだレーダIDコードと同じレーダIDコードをコントロールユニット61の記憶部61に記憶させるようになっている。また、コントロールユニット61は、上記レーダIDコードの最初の記憶後における所定のタイミングで(本実施形態では、車両Wのイグニッションスイッチのオン時に)、上記レーダーユニット1の記憶部1aより、その記憶されているレーダIDコードを取り込みかつ該取り込んだレーダIDコードと、コントロールユニット61の記憶部61に記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しているか否かを判定して、両レーダIDコードが一致していないと判定したときに、インストルメントパネルに設けた、警報手段としての表示装置63により、上記調整が正常に完了していない旨の警報を行うように構成されている。本実施形態では、表示装置63の警報インジケータを点灯させるようにするが、ブザー等により警報を行うようにしてもよい。
【0026】
上記コントロールユニット61は、レーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整時に、車両W外にある調整装置の調整用コントローラ91と接続されるようになっており、この調整用コントローラ91との接続状態で、後述の如くレーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整(零点調整)を行うようになっている。
【0027】
上記レーダーユニット1は、図3に示すように、車体の一部としてのラジエーターシュラウド30の前面にブラケット32〜34を介して取り付けられている。尚、ラジエーターシュラウド30の車両前方には、バンパーレインフォースメント20が配設されている。
【0028】
図4に示すように、レーダーユニット1は、平面アンテナ(図示せず)を含レーダー本体部11と、ラジエーターシュラウド30に取り付けられ、内部にそのレーダー本体部11を収容するケース体12と、このケース体12の上面に取り付けられ、レーダー本体部11の障害物検知軸Aの、ケース体12の上面に対する向きのずれに関する調整を行うための(つまり、レーダー本体部11のケース体12に対する向きのずれに関する調整を行うための)調整部材13とを有する。
【0029】
上記ケース体12は、略矩形箱状の筐体である。ケース体12の上面は、不図示のデジタル水準器を設置する基準面を構成している。上記調整部材13は、垂直方向に延びる軸回りに回転可能な略正方形の樹脂製の板状部材であって、底面がケース体12の上面と平行であり、上面が底面(つまり、ケース体12の上面)に対して傾き可能になっている。具体的には、調整部材13を軸回りに90度ずつ回転させることで、調整部材13の上面の底面に対する傾斜角度が所定の角度ずつ変化するようになっている。レーダー本体部11の障害物検知軸Aの、ケース体12の上面に対する向きのずれに関する調整時には、まず、レーダー本体部11の障害物検知軸Aの、ケース体12の上面に対する向きのずれを所定の方法で測定して、それから、調整部材13をその測定されたずれに基づき回転させて、レーダー本体部11の障害物検知軸Aと調整部材13の上面とを互いに平行にする。この調整は、レーダユニット1を車体に取り付ける前に行われる。この調整作業時においては、調整部材13の上面にデジタル水準器が取り付けられる。
【0030】
図3に示すように、上記ラジエーターシュラウド30には、その上端部と下端部との間をほぼ垂直に延びる取付けバー31がボルト及びナットで取り付けられている。この取付けバー31に、上記第1ブラケット32がボルト及びナットで取り付けられている。尚、これらの取付けには、ボルト及びナットを用いる代わりに、例えば、溶接を用いたり、接着剤を用いてもよい。
【0031】
上記第1ブラケット32の車両右側部(図3では左側)の前面及び上記第2ブラケット33の車両左側部(図3では右側)の前面に、上記第3ブラケット34が配設されている。そして、第2ブラケット33と第3ブラケット34との間の空間、及び第3ブラケット34の車両左側部には、レーダユニット1のケース体12の、ラジエーターシュラウド30に対する取付け向きを調整するための既知の調整機構の一部を構成する調整用歯車50´がそれぞれ配置されている(図3では、第3ブラケット34の車両左側部の調整用歯車を図示せず)。
【0032】
上記調整機構は、上述の調整用歯車50´に加えて、フロントグリルの頂壁の直下に配置されかつ調整用歯車50´をそれぞれ操作するための上下方向調整部53及び左右方向調整部53´を有する。これらの上下方向調整部53及び左右方向調整部53´は、調整用歯車50´に可撓性のエクステンションワイヤ54,54´を介してそれぞれ連結されている。尚、調整機構についての詳細な説明は省略するが、その構成は、既知の調整機構の構成とほぼ同様である。
【0033】
そして、レーダユニット1の障害物検知軸Aの上下方向の向きの調整時には、車両Wを水平な路面上に置いて、ボンネットを開けた状態で、デジタル水準器を視認しながら、上下方向調整部53を調整する。これにより、レーダユニット1を、エクステンションワイヤ54及び調整用歯車を介して前方又は後方に回動させて、その障害物検知軸Aの向きを水平に対して前下がりに0.2度だけ傾斜させる。尚、この傾斜角は、車両Wの最大後傾及び前傾を考慮して、レーダユニット1の障害物の認知性がより確実になるように設定される。
【0034】
また、レーダユニット1の障害物検知軸Aの左右方向の向きの調整時には、ボンネットを開けた状態で、左右方向調整部53´を調整する。これにより、レーダユニット1の障害物検知軸Aの向きを左右方向に調整する。
【0035】
上記障害物検知軸Aの上下方向及び左右方向の向きの調整(メカ調整)後に、今度は、障害物検知軸Aの左右方向の向きの零点調整(電気調整)を行う。すなわち、車両W前方の所定位置に物標を置き、レーダユニット1からミリ波を前方に向けて水平方向に上記所定角度だけ走査しながら発信し、上記物標を検知したときの角度位置を零点とする。このとき、零点の角度位置が上記所定角度の中心位置から2度よりも大きくずれているときには、調整結果を異常であるとし、2度以内であれば正常であるとする。調整結果が異常であれば、作業者は、上記メカ調整を再度行った後、再び上記零点調整を行う。
【0036】
上記零点調整を行う際には、上記調整装置を用意して、この調整装置の調整用コントローラ91をコントロールユニット61に接続した状態にする。そして、作業者がスタートスイッチを操作することで調整用コントローラ91から調整開始コマンドがコントロールユニット61に送信され、これにより、零点調整が行われることになる。
【0037】
上記零点調整時における調整用コントローラ91、コントロールユニット61及びレーダユニット1の一連の処理動作を、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
ステップS1で、調整用コントローラ91が調整開始コマンドをコントロールユニット61に送信すると、コントロールユニット61は、その調整開始コマンドをそのままレーダユニット1に送信する。
【0039】
レーダユニット1は、その調整開始コマンドを受けて、ステップS2で、調整処理を実行して、上記零点調整を行う。そして、ステップS3で、その調整結果(正常又は異常)並びにレーダIDコード及び零点角度位置をコントロールユニット61に送信する。
【0040】
コントロールユニット61は、ステップS4で、障害物検知軸Aの向きの調整が正常に完了したか否かを判定し、正常完了したときには、ステップS5で、レーダIDコード及び零点角度位置をコントロールユニット61の記憶部61aに記憶するとともに、「正常」を記憶する。このとき、前回にも零点調整が行われてレーダIDコード及び零点角度位置が記憶されている場合には、本実施形態では、新たなレーダIDコード及び零点角度位置を更新して記憶する(前回のものを記憶保存しておいてもよい)。一方、異常完了したときには、「異常」を記憶する。
【0041】
ステップS7では、調整用コントローラ91がコントロールユニット61に対して調整結果の問い合わせを行うと、ステップS8で、コントロールユニット61は、上記記憶した「正常」又は「異常」の情報(調整結果)を調整用コントローラ91に送信する。尚、調整用コントローラ91からの問い合わせがなくても、コントロールユニット61が調整結果を調整用コントローラ91に送信するようにしてもよい。
【0042】
そして、ステップS9で、調整用コントローラ91は、調整装置に設けた表示画面に上記調整結果を表示する。この表示により、作業者は、調整が正常に完了した否かが分かり、調整が正常に完了したことを確認すると、調整装置の調整用コントローラ91をコントロールユニット61から取り外す。一方、異常であった場合には、上記メカ調整を再度行った後、再び上記零点調整を行う。
【0043】
上記処理動作より、コントロールユニット61は、レーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整が正常に完了すると、レーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと同じレーダIDコードをコントロールユニット61の記憶部61aに記憶させることになる。これにより、レーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとは同じになる。
【0044】
上記零点調整が正常に完了してレーダIDコードがコントロールユニット61の記憶部61aに最初に記憶された後、車両Wのイグニッションスイッチ64(図2参照)からのオン信号が入力されると、レーダーユニット1の記憶部1aより、その記憶されているレーダIDコードを取り込みかつ該取り込んだレーダIDコードと、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しているか否かを判定する。上記レーダIDコードの最初の記憶以降に、レーダーユニット1を交換しなければ、上記両レーダIDコードは同じであるので、後述のような警報はなされない。
【0045】
車両Wの製造工場においては、上記調整が必ず行われるので、レーダーユニット1を交換しなければ、車両Wのユーザがイグニッションスイッチ64をオンしても、警報がなされることはなく、その調整が行われたレーダユニット1により障害物が的確に検知され、乗員の安全性が確保される。
【0046】
一方、例えば車両の修理を行うサービス工場等においてレーダーユニット1を交換した場合に、作業者が調整作業を行わなかったとすると、その交換後のレーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードは、交換前のレーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードとは異なるとともに、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコード(交換前のレーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと同じ)とも異なることになる。したがって、この状態で、車両Wのイグニッションスイッチ64をオンすると、レーダーユニット1の記憶部1aより取り込んだレーダIDコードと、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しないことになる。この場合、表示装置63の警報インジケータを点灯させて、警報を行う。
【0047】
そして、作業者が上記警報に気付いて調整作業を行って、零点調整が正常に完了すると、交換後のレーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードが、コントロールユニット61の記憶部61aに更新記憶される。この結果、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードは、交換後のレーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと同じになり、これにより、車両Wのイグニッションスイッチ64をオンしたとき、警報はなされなくなる。
【0048】
上記イグニッションスイッチ64のオン時におけるコントロールユニット61の処理動作を図6のフローチャートに基づいて説明すると、以下のようになる。
【0049】
すなわち、最初のステップS21で、イグニッションスイッチ64がオンであるか否かを判定し、このステップS21の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、判定がYESであるときには、ステップS22に進んで、レーダーユニット1の記憶部1aより、その記憶されているレーダIDコードを取り込み、次のステップS23で、そのレーダIDコードと、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致するか否かを判定する。
【0050】
上記ステップS23の判定がYESであるときには、そのままリターンする一方、判定がNOであるときには、ステップS24に進んで、表示装置63の警報インジケータを点灯させて警報を行い、しかる後にリターンする。
【0051】
したがって、本実施形態では、レーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整が正常に完了する毎に、レーダーユニット1の記憶部1aに予め記憶したレーダIDコードと同じレーダIDコードをコントロールユニット61の記憶部61aに記憶させるとともに、レーダIDコードの最初の記憶後におけるイグニッションスイッチ64のオン時に、上記記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと、上記記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しているか否かを判定して、両レーダIDコードが一致していないと判定したときに、表示装置63により警報を行うようにしたので、車両の修理を行うサービス工場等においてレーダーユニット1を交換しても、その交換後のレーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整が確実に行われるようになる。
【0052】
尚、上記実施形態では、イグニッションスイッチ64のオン時に、レーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと、コントロールユニット61の記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しているか否かを判定したが、この判定のタイミング(上記所定のタイミング)は、例えばレーダユニット1を作動状態にするための操作スイッチのオン時等のような操作タイミングであってもよい。要するに、コントロールユニット61の記憶部61aにレーダIDコードが最初に記憶された後であれば、どのようなタイミングであってもよい。但し、車両の修理を行うサービス工場等の作業者がほぼ確実に操作を行いかつ異常警報に気付くようなタイミングであることが好ましい。この点、作業者は、通常、車両を移動させる等のために運転席に座ってイグニッションスイッチをオンさせるので、そのときに、インストルメントパネルに設けた表示装置63等により警報がなされると、その警報に気付き易く、このことより、上記所定のタイミングは、上記実施形態の如くイグニッションスイッチ64のオン時とするのが最も好ましい。
【0053】
また、上記実施形態では、レーダーユニット1の記憶部1aに、予めレーダIDコードを記憶しておいて、レーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整が正常に完了する毎に、レーダーユニット1の記憶部1aに記憶されているレーダIDコードと同じレーダIDコードをコントロールユニット61の記憶部61aに記憶させるようにしたが、レーダーユニット1の記憶部1aに予めレーダIDコードを記憶しておくのではなくて、レーダーユニット1の障害物検知軸Aの向きの調整が正常に完了する毎に、レーダーユニット1の記憶部1aにレーダIDコードを記憶させるようにしてもよい。このとき、レーダーユニット1の記憶部1aと同じレーダIDコードをコントロールユニット61の記憶部61aにも記憶させる。そして、コントロールユニット61が、上記レーダIDコードの最初の記憶後における所定のタイミングで(イグニッションスイッチ64のオン時が好ましい)、上記記憶部1aにレーダIDコードが記憶されているか否かを判定しかつ記憶されていると判定したときにおいて該記憶部1aに記憶されている最新のレーダIDコードと、上記記憶部61aに記憶されている最新のレーダIDコードとが一致しているか否かを判定して、記憶部1aにレーダIDコードが記憶されていないと判定したとき(車両に搭載したことがない新しいレーダーユニットを用いた場合)、又は両レーダIDコードが一致していないと判定したとき(他の車両に搭載していたレーダーユニットを用いた場合)に、表示装置63により警報を行うようにすればよい。
【0054】
さらに、レーダユニット1からの障害物検知情報を受けて制御する作動機器は、ブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22に限らず、例えば警報装置等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、レーダーユニットにより車両の周辺の障害物を検知して、このレーダーユニットによる障害物検知情報を受けて車両の作動機器を制御するようにした車両の障害物検知装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る障害物検知装置を搭載した車両前側の構成図である。
【図2】上記障害物検知装置の構成を示すブロック図である。
【図3】レーダーユニットのラジエーターシュラウドに対する取付け状態を示す、斜め正面から見た斜視図である。
【図4】レーダーユニットの断面図である。
【図5】零点調整時における調整用コントローラ、コントロールユニット及びレーダユニットの一連の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】イグニッションスイッチのオン時におけるコントロールユニットの処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
W 車両
1 レーダユニット
1a 記憶部(レーダ側記憶部)
21 ブレーキ作動手段(作動機器)
22 シートベルトプリテンショナ(作動機器)
61 コントロールユニット(作動機器制御手段)
61a 記憶部(制御手段側記憶部)
63 表示装置(警報手段)
64 イグニッションスイッチ
71 シートベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両の周辺の障害物を検知するレーダーユニットと、該レーダーユニットからの障害物検知情報を受けて該車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置であって、
上記レーダーユニットは、該レーダユニットを個々に識別するための識別コードを予め記憶したレーダ側記憶部を有し、
上記作動機器制御手段は、上記識別コードを記憶するための制御手段側記憶部を有し、
上記制御手段側記憶部には、上記レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、該レーダーユニットのレーダ側記憶部に記憶されている識別コードと同じ識別コードが記憶されるようになっており、
更に上記作動機器制御手段は、上記識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、上記レーダ側記憶部に記憶されている識別コードと、上記制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが一致しているか否かを判定して、両識別コードが一致していないと判定したときに、警報手段により警報を行うように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項2】
車両に搭載され、該車両の周辺の障害物を検知するレーダーユニットと、該レーダーユニットからの障害物検知情報を受けて該車両の作動機器を制御する作動機器制御手段とを備えた車両の障害物検知装置であって、
上記レーダーユニットは、該レーダユニットを個々に識別するための識別コードを記憶するためのレーダ側記憶部を有し、
上記作動機器制御手段は、上記識別コードを記憶するための制御手段側記憶部を有し、
上記レーダ側記憶部及び制御手段側記憶部には、上記レーダーユニットの障害物検知軸の向きの調整が正常に完了する毎に、同じ上記識別コードがそれぞれ記憶されるようになっており、
更に上記作動機器制御手段は、上記識別コードの最初の記憶後における所定のタイミングで、上記レーダ側記憶部に識別コードが記憶されているか否かを判定しかつ記憶されていると判定したときにおいて該レーダ側記憶部に記憶されている最新の識別コードと、上記制御手段側記憶部に記憶されている最新の識別コードとが一致しているか否かを判定して、レーダ側記憶部に識別コードが記憶されていないと判定したとき、又は両識別コードが一致していないと判定したときに、警報手段により警報を行うように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の障害物検知装置において、
上記所定のタイミングは、上記車両のイグニッションスイッチのオン時であることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、上記車両の乗員が着用しているシートベルトを巻き取って該シートベルトに所定張力を付与することで該乗員を拘束するシートベルトプリテンショナであることを特徴とする車両の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−248059(P2007−248059A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67853(P2006−67853)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】