車両フレームの製造方法
【課題】締結部品を不要にすると共に、締結部品を使用する際に必要な孔開け加工をも不要にして、コストダウンや軽量化を図ると共に車両積載重量の増加を図り、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないようにして荷台架装性の向上を図り、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプを不要にして組み立て工数を削減することによりコストダウンを図り、又更に、近接多点打ちを可能にして設計の自由度を向上させ、更に又、車両フレームの寸法精度を向上させ、又、接合点数を削減してコストダウンを図り、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる車両フレームの製造方法を提供する。
【解決手段】車両フレームのサイドレール21、ガセット22、クロスメンバ23を摩擦攪拌接合により接合する。
【解決手段】車両フレームのサイドレール21、ガセット22、クロスメンバ23を摩擦攪拌接合により接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両フレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドレール、クロスメンバ、ガセットといった車両フレームを構成する部材の接合は、従来、ボルト・ナットやリベットによる機械締結により行なうか、又は、溶接により行なうか、若しくは樹脂製の接着剤により行なっている。
【0003】
而して、車両フレームを構成する部材の接合をボルトやリベットにより行なうようにした先行技術文献としては、特許文献1、2があり、樹脂製の接着剤により行なうようにした先行技術文献としては、特許文献3がある。
【特許文献1】特開平11−78960号公報
【特許文献2】特開平6−329046号公報
【特許文献3】実開平3−77785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、車両フレームの構成部材をボルトやリベットにより締結する場合には、ボルトやリベットのような締結部品が必要であるため、コストアップを招来すると共に、重量の増加により車両積載重量が低下し、又、車両フレームに対し孔開け加工が必要で工数が増加するためコストアップを招来し、更に、接合すべき部材の表裏面(外内面)にボルトやナット若しくはリベットの頭が突起物として張り出すため、これらの突起物の占有スペースを設計上で確保しなければならないという制約があり、しかも、ボルト・ナットによる締結では緩みや脱落等の虞があり、更に又、ボルトやナット若しくはリベットの頭が突起物として部材の外部に突出した場合は、例えば、クレーン車のフレーム補強板に逃げ孔の加工が必要となるといったように、荷台の架装性が低下し、部材の内部に突出した場合は、フレームの内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるための対策としてクランプが必要となり、組み立て工数の増加によるコストアップを招来する。
【0005】
車両フレームの構成部材を溶接により締結する場合、溶接間隔が狭い近接多点打ちでは電流が分流する虞があって良好な溶接を行なうことができないうえ、設計の自由度が低下し、又、接合時に熱による歪みが生じて製品の寸法精度が低下し、更に、高い接合強度を得ることが困難であるため、接合点数が多くなってコストアップを招来する。
【0006】
車両フレームの構成部材の接合に接着剤を採用した場合には、作業性や作業環境が悪いという問題に加え、リサイクル時に部材から接着剤を分離するのが困難であるため、リサイクル性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、締結部品を不要にすると共に、締結部品を使用する際に必要な孔開け加工をも不要にして、コストダウンや軽量化を図ると共に車両積載重量の増加を図り、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないようにして荷台架装性の向上を図り、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプを不要にして組み立て工数を削減することによりコストダウンを図り、又更に、近接多点打ちを可能にして設計の自由度を向上させ、更に又、車両フレームの寸法精度を向上させ、又、接合点数を削減してコストダウンを図り、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる車両フレームの製造方法を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両フレームの製造方法は、車両フレームを構成する部材を摩擦攪拌接合により接合するものである。
【0009】
本発明の車両フレームの製造方法は、二つ以上の部材が予め定める接合方向に並んで構成される被接合物における前記部材の接合方向一方側表面部に裏当て部材の平坦面を当接させ、前記部材の接合方向他方側表面部であって裏当て部材に対向する位置に回転する接合ツールを押し当て、摩擦攪拌接合により前記部材を接合する車両フレームの製造方法であって、
略円柱状に形成され、且つ軸線方向一方側端面部において径方向外方側部分が径方向内方側部分よりも周方向全周に亘って軸線方向一方側に突出するショルダ部と、
該ショルダ部と同軸に形成されて、ショルダ部から離反するにつれて縮径し、ショルダ部に連なる部分の外径がショルダ部の外径よりも小径の略截頭円錐状のピン部を備えた接合ツールを用いて前記摩擦攪拌接合を行なうものである。
【0010】
又、本発明の車両フレームの製造方法は、ショルダ部の軸線方向一方側端面には、ショルダ部に同軸でピン部に向かうにつれて拡径する断面略傘形状の環状凹部が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なうものであり、更に、本発明の車両フレームの製造方法は、ピン部の外周部に軸線まわりを回転するにつれてショルダ部に向かって進む螺旋状のねじ溝が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なうものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両フレームの製造方法によれば、車両フレームを構成する部材の接合に摩擦攪拌接合を用いて行なうようにしているため、ボルト、ナットのような締結部品や締結部品のための孔開け加工が不要となって、コストダウンや軽量化が可能となると共に、軽量化により車両積載重量が増加し、締結部品が不要となるため緩みや脱落がなくなって製品としての信頼性が向上し、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないため、例えばクレーン車のフレーム補強板に逃げ孔加工が不要となって荷台架装性が向上し、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプが不要になるため、組み立て工数を削減することができてコストダウンが可能となり、又更に、近接多点打ちが可能となるため、設計の自由度が向上してトラック等の他用途車両には大きな利点となり、更に又、車両フレームの寸法精度が向上するため、車両姿勢が向上してその直進性や操舵性等、車両の基本性能が向上し、又、接合強度が高いため、接合点数を削減できる結果、コストダウンが可能になり、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態においては、車両フレームを形成するサイドレールとガセット、ガセットとクロスメンバといった部材のスポット接合を摩擦攪拌接合により行なうようにしており、斯かる摩擦攪拌接合を行なうための接合ツールは図8、図9に示されている。なお、以下の説明では、同一のものには同一の符号が付してある。
【0013】
図8、図9中、1は軸線L1を中心として回転可能で且つ軸線L1と平行な方向へ往復移動可能に設置された接合ツールである。ここで、摩擦攪拌接合装置は、車両フレームを構成するサイドレール、ガセット、クロスメンバといった部材を摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding:略称FSW)により接合するための装置であり、鋼板やアルミ材等、金属材料の被接合物に点在する複数の接合箇所を順次、摩擦攪拌によりスポット接合するようになっている。
【0014】
接合ツール1は、略円柱状に形成されて一端側が摩擦攪拌装置の駆動装置に把持されたショルダ部2と、ショルダ部2の駆動装置側とは反対側の軸線方向一方側端面部においてショルダ部2と同軸に形成され、且つ、軸線方向一方側端面部から離反する方向へ突出するピン部3を備えている。
【0015】
ピン部3は外径がショルダ部2よりも小径で且つショルダ部2に対し滑らかに連なって一体的に形成されており、ショルダ部2の軸線方向一方側端面部は、ショルダ部2の径方向外方側部分2aが径方向内方側部分よりも周方向全周に亘って軸線方向一方側に突出している。而して、ショルダ部2の軸線方向一方側端面部には、径方向外方側部分2aから径方向中心に向かってショルダ部2内に後退する斜面4が形成されており、斜面4とショルダ部2の径方向外方側部分2aにより、軸線L1に沿いピン部3に向かうにつれ拡径する断面略傘形状の環状凹部5が形成されている。斜面4は、ショルダ部2の径方向外方側部分2aの2点を径方向へ結んで形成した径方向線R1に対し角度θとなっている。
【0016】
ピン部3は、基端部側であるショルダ部2側が大径で、先端部側であるショルダ部2から離反した側が小径の截頭円錐状に形成されており、外周面には、軸線L1まわりを回転するにつれてショルダ部2に向かう螺旋状のねじ溝6が、ピン部3の軸線L1方向全長に亘り設けられている。
【0017】
ショルダ部2とピン部3とは、ピン部3の基端部の直径をD1、ピン部3の先端部の直径をD2、ショルダ部2の直径をDs、ピン部3のショルダ部2における径方向外方側部分2aから先端部までの長さをP1とした場合、D1/Ds≧0.5、(D1−D2)/P1≒1となるように形成されている。
【0018】
又、ピン部3のショルダ部2径方向外方側部分2aから先端部までの長さP1は、摩擦攪拌接合時に、ショルダ部2が被接合物13に深さH1が約1mm程度となるよう没入した状態で、ピン部3の先端が被接合物13内にあって被接合物13を貫通しない長さに形成する。更に、被接合物13のうちショルダ部2側の被接合部材11の厚さをT1、裏当て材14側の被接合部材12の厚さをT2とし、接合後の被接合物13のうち最も薄くなっている部分の厚さを残母材厚をS1(図12参照)とした場合、ピン部3の長さP1は、P1≧(T1+1)mm、P1≧(T1+T2−1−S1)となるように形成されている。
【0019】
因みに、図8、図9に示す接合ツール1の場合、ショルダ部2の直径Ds=30mm、ピン部3の基端部の直径D1=16mm、ピン部3の先端部の直径D2=6mm、ピン部3の長さP1=16mm、斜面4の径方向線R1に対する角度θ=30度である。
【0020】
次に、上記接合ツール1により被接合部材を摩擦攪拌接合する手順について、図10(1)〜図10(4)により説明する。ここで摩擦攪拌接合の対象とする被接合部材は車両フレームのサイドレールとガセット、及びガセットとクロスメンバである。図10(1)〜図10(4)中、11はクロスメンバ又はガセットである被接合部材、12はガセット又はサイドレールである被接合部材、13は被接合部材11,12により形成された車両フレームである被接合物、14は摩擦攪拌接合時に被接合部材12の被接合部材11とは反対側の面が変形しないよう支持する裏当て部材、15は摩擦攪拌接合時に軟化した被接合部材11,12が混ぜ合わされて形成される攪拌領域、矢印は接合ツール1の移動方向である。
【0021】
被接合部材11,12を板厚方向に重ね合わせて並列させた被接合物13を、被接合部材12の被接合部材11とは反対側の面が裏当て材14の平坦面に当接するよう、裏当て材14に支持させ、待機位置にある接合ツール1を、図示してない駆動装置により駆動して軸線L1の回りに回転させ、軸線L1に沿い被接合部材11に近接するよう移動させる(図10(1)参照)。
【0022】
接合ツール1が被接合物13に近接して前進しつつ被接合部材11に押し当てられると、ピン部3の先端部は回転しつつ被接合物13の被接合部材11に没入される(図10(2)参照)。又、被接合物13の被接合部材11に先端部が没入して回転しているピン部3を被接合物13に押し当てつつ更に深く被接合物13に没入されるよう移動させると、ショルダ部2の斜面4が被接合部材11に没入される。
【0023】
そうすると、接合ツール1は連続して回転しながら被接合物13に押し当てられているため、ショルダ部2及びピン部3と、被接合物13との回転接触により生じる摩擦熱によって、被接合部材11,12が軟化し、軟化した被接合部材11,12は接合ツール1により引きずられて、塑性流動して攪拌され、その結果、ピン部3の周囲において被接合部材11,12は混ぜ合わされて攪拌領域15が形成され、一体化する(図10(3)参照)。
【0024】
続いて、摩擦攪拌接合装置の制御部では、図示してないセンサにより検出した温度等のデータ及びピン部3が被接合部材11に没入を開始してからの経過時間等から、予め定めた終了条件を満たしているか否かが判断され、終了条件を満たしていると判断された場合は、接合ツール1は被接合物13から離反する方向へ移動して(図10(4)参照)待機位置に戻り、接合ツール1は回転を停止する。従って、この位置でのスポット接合が終了する。
【0025】
ある位置でのスポット接合が終了したら、接合ツール1と裏当て材14とを被接合物13に対し移動させ、上述した手順を繰返して接合ツール1により被接合部材11、12の摩擦攪拌接合を行なう。
【0026】
次に、接合ツール1を用いて摩擦攪拌接合する際の被接合物13の状態を図11(1)〜図11(3)により説明する。図11(1)〜図11(3)中、16はピン部3の先端部と裏当て材14とにより挟まれた部分、17はピン部3の先端部と裏当て材14とで挟まれた部分16よりもピン部3から径方向外方へ離れた部分であり、矢印は接合ツール1の移動方向を示す。
【0027】
接合ツール1のピン部3先端部を被接合物13に押し当てて、被接合物13に没入させると、被接合部材11のピン部3に接している部分は、ピン部3から接合ツール1の移動方向へ向けた力f1を受ける。本実施の形態では、ピン部3は逆截頭円錐状に形成されているため、被接合部材11はピン部3の先端部からだけではなく、外周部からも接合ツール1の移動方向へ向けた力f1を受ける(図11(1)参照)。
【0028】
この場合、裏当て材14が被接合物13を支持しているため、被接合物13における被接合部材12の裏当て材14に対する当接面が裏当て材14側に変形することはない。従って、被接合物13のピン部3の先端部と裏当て材14とで挟まれた部分16は、ピン部3と裏当て材14とによって圧縮されると共に、その一部がピン部3の径方向外方へ向かって移動する。
【0029】
又、被接合物13において、ピン部3の先端部と裏当て材14とで挟まれた部分16よりもピン部3から径方向外方へ離れた部分17は、部分16からピン部3の径方向外方へ向かう力f2を与えられて被接合部材12は、他の部分よりもショルダ部2の斜面4側に向かって隆起する(図11(1)参照)。
【0030】
本図示例では、ピン部3が逆截頭円錐状に形成されることで、ショルダ部2の斜面4とピン部3の基端部及び外周面で被接合物13をピン部3の径方向外方へ押し出すことができ、従って、裏当て材14に凹凸形状を形成しなくても、被接合部材12の押出された部分17の隆起を大きくすることができる。又、ピン部3は逆截頭円錐形に形成されているため、隆起した部分17は、軸線L1からピン部3の半径方向へ離れた位置に形成することができる。
【0031】
接合ツール1が更に被接合物13側へ移動して、ショルダ部2のピン部3側端部が被接合物13の被接合部材11に没入すると、被接合物13はピン部3及びショルダ部2の外形形状に沿った形状に変形する(図11(2)参照)。本図示例では、ショルダ部2の斜面4部には、軸線L1周りを一周する環状凹部5が形成されているので、被接合部材11の軟化した部分は、環状凹部5に入り込み、従って、被接合部材12の隆起する部分17の大きさを大きくでき、その縮小を抑えることができるため、被接合物13は接合ツール1のピン部3及びショルダ部2の斜面4の外形形状に沿った形状に変形する。
【0032】
被接合物13に没入したピン部3及びショルダ部2の僅かの部分が、被接合物13に対し摺動回転することにより、被接合物13のうちピン部3付近の部分が流動化してピン部3に引きずられ、軸線L1の回りを回転する。而して、被接合物13のうちで流動化する攪拌領域15は、時間と共に拡大成長し、ピン部3の外周部に形成されているねじ溝6に入り込んだ流動化している被接合物13は、ピン部3の回転により、ピン部3の小径の先端部側から大径の基端部側へ、ねじ溝6に案内されつつ移動する(図11(3)参照)。
【0033】
被接合物13の流動化している部分が、ピン部3の先端部側から基端部側へ移動することで、隆起している部分17も又ピン部3の先端部側から基端部側へ移動し、被接合部材12に形成される部分17の隆起が促進され、攪拌領域15で被接合部材11,12が混ぜ合わされる結果、被接合部材11,12が接続される。
【0034】
次に、図8、図9に示す接合ツール1により被接合部材11、12が接合された状態を、図8、図9をも参照して図12により説明する。
被接合物13のうち、没入したピン部3が当接した部分には、攪拌領域15が形成される。又、接合部材11の攪拌領域15の近傍には、隆起した部分17が形成され、隆起した部分17は軸線L1の周りを一周して略リング状に形成される。
【0035】
被接合物13のうちショルダ部2の斜面4に臨む部分が裏当て材14から離反した方向へ隆起することで、かしめ作用が生じる隆起した部分17が形成される。又、隆起した部分17の一部が、被接合部材11,12の接合後も残存することによって、その隆起した部分17は接合された互いの被接合部材11,12が分離するのを阻止する抵抗部分として作用する。従って、摩擦攪拌接合と共に、かしめ変形による強度向上を図ることができ、接合された被接合部材11,12の接合強度が向上する。
【0036】
図8、図9に示す接合ツール1で摩擦攪拌接合を行った車両フレームの一例は図1〜図4に示されている。図中、21はサイドレール、22はガセット、23はクロスメンバ、24はガセット22とサイドレール21を接合する攪拌摩擦溶接部、25はクロスメンバ23とガセット22を接合する摩擦攪拌接合部である。
【0037】
図1〜図4に示す車両フレームにおいては、例えば、先ず、クロスメンバ23とガセット22とが図8、図9の接合ツール1を用いて摩擦攪拌接合が行なわれ、クロスメンバ23にガセット22が接合された状態で、ガセット22とサイドレール21が摩擦攪拌接合される。
【0038】
図8、図9に示す接合ツールで摩擦攪拌接合を行なった車両フレームの他の例は図5〜図7に示されている。本例ではガセット22は平板状ではなく、L形のブラケット状に形成されている。図中、図1〜図4に示すものと同一のものには同一の符号が付してある。しかして、本図示例でも、先ず、クロスメンバ23とガセット22とが摩擦攪拌接合され、クロスメンバ23にガセット22が接合された状態で、ガセット22とサイドレール21が摩擦攪拌接合される。
【0039】
上記図1〜図4、図5〜図7の各図示例における車両フレームは、鋼板或はアルミ板製で板厚が約6mm程度以上の厚板である。
【0040】
本図示例においては、上述した車両フレームのサイドレール21、ガセット22、クロスメンバ23の接合を摩擦攪拌接合により行なうようにしているため、ボルト、ナットのような締結部品や締結部品のための孔開け加工が不要となって、コストダウンや軽量化が可能となると共に、軽量化により車両積載重量が増加し、締結部品が不要となるため緩みや脱落がなくなって製品としての信頼性が向上し、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないため、例えばクレーン車のフレーム補強板に逃げ孔加工が不要となって荷台架装性が向上し、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプが不要になるため、組み立て工数を削減することができてコストダウンが可能となり、又更に、近接多点打ちが可能となるため、設計の自由度が向上してトラック等の他用途車両には大きな利点となり、更に又、車両フレームの寸法精度が向上するため、車両姿勢が向上してその直進性や操舵性等、車両の基本性能が向上し、又、接合強度が高いため、接合点数を削減できる結果、コストダウンが可能になり、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【0041】
なお、本発明の車両フレームの製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】摩擦攪拌接合により組み付けられた車両フレームの一例の部分的な斜視図である。
【図2】図1の車両フレームの平面図である。
【図3】図2のIII−III方向矢視図である。
【図4】図3のIV−IV方向矢視図である。
【図5】摩擦攪拌接合により組み付けられた車両フレームの他の例の部分的な平面図である。
【図6】図5のVI−VI方向矢視図である。
【図7】図6のVII−VII方向矢視図である。
【図8】摩擦攪拌接合に使用する接合ツールの斜視図である。
【図9】図8の接合ツールの断面図である。
【図10】図8の接合ツールを用いて行なう摩擦攪拌接合の手順を説明するための断面図である。
【図11】図8の接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なう場合において、被接合物の接合状態が変化して行く状態を示す断面図である。
【図12】図8の接合ツールを用いて摩擦攪拌接合された被接合物の接合状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 接合ツール
2 ショルダ部
3 ピン部
5 環状凹部
6 ねじ溝
14 裏当て材
21 サイドレール(部材)
22 ガセット(部材)
23 クロスメンバ(部材)
f1 力
【技術分野】
【0001】
本発明は車両フレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドレール、クロスメンバ、ガセットといった車両フレームを構成する部材の接合は、従来、ボルト・ナットやリベットによる機械締結により行なうか、又は、溶接により行なうか、若しくは樹脂製の接着剤により行なっている。
【0003】
而して、車両フレームを構成する部材の接合をボルトやリベットにより行なうようにした先行技術文献としては、特許文献1、2があり、樹脂製の接着剤により行なうようにした先行技術文献としては、特許文献3がある。
【特許文献1】特開平11−78960号公報
【特許文献2】特開平6−329046号公報
【特許文献3】実開平3−77785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、車両フレームの構成部材をボルトやリベットにより締結する場合には、ボルトやリベットのような締結部品が必要であるため、コストアップを招来すると共に、重量の増加により車両積載重量が低下し、又、車両フレームに対し孔開け加工が必要で工数が増加するためコストアップを招来し、更に、接合すべき部材の表裏面(外内面)にボルトやナット若しくはリベットの頭が突起物として張り出すため、これらの突起物の占有スペースを設計上で確保しなければならないという制約があり、しかも、ボルト・ナットによる締結では緩みや脱落等の虞があり、更に又、ボルトやナット若しくはリベットの頭が突起物として部材の外部に突出した場合は、例えば、クレーン車のフレーム補強板に逃げ孔の加工が必要となるといったように、荷台の架装性が低下し、部材の内部に突出した場合は、フレームの内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるための対策としてクランプが必要となり、組み立て工数の増加によるコストアップを招来する。
【0005】
車両フレームの構成部材を溶接により締結する場合、溶接間隔が狭い近接多点打ちでは電流が分流する虞があって良好な溶接を行なうことができないうえ、設計の自由度が低下し、又、接合時に熱による歪みが生じて製品の寸法精度が低下し、更に、高い接合強度を得ることが困難であるため、接合点数が多くなってコストアップを招来する。
【0006】
車両フレームの構成部材の接合に接着剤を採用した場合には、作業性や作業環境が悪いという問題に加え、リサイクル時に部材から接着剤を分離するのが困難であるため、リサイクル性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、締結部品を不要にすると共に、締結部品を使用する際に必要な孔開け加工をも不要にして、コストダウンや軽量化を図ると共に車両積載重量の増加を図り、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないようにして荷台架装性の向上を図り、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプを不要にして組み立て工数を削減することによりコストダウンを図り、又更に、近接多点打ちを可能にして設計の自由度を向上させ、更に又、車両フレームの寸法精度を向上させ、又、接合点数を削減してコストダウンを図り、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる車両フレームの製造方法を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両フレームの製造方法は、車両フレームを構成する部材を摩擦攪拌接合により接合するものである。
【0009】
本発明の車両フレームの製造方法は、二つ以上の部材が予め定める接合方向に並んで構成される被接合物における前記部材の接合方向一方側表面部に裏当て部材の平坦面を当接させ、前記部材の接合方向他方側表面部であって裏当て部材に対向する位置に回転する接合ツールを押し当て、摩擦攪拌接合により前記部材を接合する車両フレームの製造方法であって、
略円柱状に形成され、且つ軸線方向一方側端面部において径方向外方側部分が径方向内方側部分よりも周方向全周に亘って軸線方向一方側に突出するショルダ部と、
該ショルダ部と同軸に形成されて、ショルダ部から離反するにつれて縮径し、ショルダ部に連なる部分の外径がショルダ部の外径よりも小径の略截頭円錐状のピン部を備えた接合ツールを用いて前記摩擦攪拌接合を行なうものである。
【0010】
又、本発明の車両フレームの製造方法は、ショルダ部の軸線方向一方側端面には、ショルダ部に同軸でピン部に向かうにつれて拡径する断面略傘形状の環状凹部が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なうものであり、更に、本発明の車両フレームの製造方法は、ピン部の外周部に軸線まわりを回転するにつれてショルダ部に向かって進む螺旋状のねじ溝が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なうものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両フレームの製造方法によれば、車両フレームを構成する部材の接合に摩擦攪拌接合を用いて行なうようにしているため、ボルト、ナットのような締結部品や締結部品のための孔開け加工が不要となって、コストダウンや軽量化が可能となると共に、軽量化により車両積載重量が増加し、締結部品が不要となるため緩みや脱落がなくなって製品としての信頼性が向上し、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないため、例えばクレーン車のフレーム補強板に逃げ孔加工が不要となって荷台架装性が向上し、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプが不要になるため、組み立て工数を削減することができてコストダウンが可能となり、又更に、近接多点打ちが可能となるため、設計の自由度が向上してトラック等の他用途車両には大きな利点となり、更に又、車両フレームの寸法精度が向上するため、車両姿勢が向上してその直進性や操舵性等、車両の基本性能が向上し、又、接合強度が高いため、接合点数を削減できる結果、コストダウンが可能になり、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
本発明の実施の形態においては、車両フレームを形成するサイドレールとガセット、ガセットとクロスメンバといった部材のスポット接合を摩擦攪拌接合により行なうようにしており、斯かる摩擦攪拌接合を行なうための接合ツールは図8、図9に示されている。なお、以下の説明では、同一のものには同一の符号が付してある。
【0013】
図8、図9中、1は軸線L1を中心として回転可能で且つ軸線L1と平行な方向へ往復移動可能に設置された接合ツールである。ここで、摩擦攪拌接合装置は、車両フレームを構成するサイドレール、ガセット、クロスメンバといった部材を摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding:略称FSW)により接合するための装置であり、鋼板やアルミ材等、金属材料の被接合物に点在する複数の接合箇所を順次、摩擦攪拌によりスポット接合するようになっている。
【0014】
接合ツール1は、略円柱状に形成されて一端側が摩擦攪拌装置の駆動装置に把持されたショルダ部2と、ショルダ部2の駆動装置側とは反対側の軸線方向一方側端面部においてショルダ部2と同軸に形成され、且つ、軸線方向一方側端面部から離反する方向へ突出するピン部3を備えている。
【0015】
ピン部3は外径がショルダ部2よりも小径で且つショルダ部2に対し滑らかに連なって一体的に形成されており、ショルダ部2の軸線方向一方側端面部は、ショルダ部2の径方向外方側部分2aが径方向内方側部分よりも周方向全周に亘って軸線方向一方側に突出している。而して、ショルダ部2の軸線方向一方側端面部には、径方向外方側部分2aから径方向中心に向かってショルダ部2内に後退する斜面4が形成されており、斜面4とショルダ部2の径方向外方側部分2aにより、軸線L1に沿いピン部3に向かうにつれ拡径する断面略傘形状の環状凹部5が形成されている。斜面4は、ショルダ部2の径方向外方側部分2aの2点を径方向へ結んで形成した径方向線R1に対し角度θとなっている。
【0016】
ピン部3は、基端部側であるショルダ部2側が大径で、先端部側であるショルダ部2から離反した側が小径の截頭円錐状に形成されており、外周面には、軸線L1まわりを回転するにつれてショルダ部2に向かう螺旋状のねじ溝6が、ピン部3の軸線L1方向全長に亘り設けられている。
【0017】
ショルダ部2とピン部3とは、ピン部3の基端部の直径をD1、ピン部3の先端部の直径をD2、ショルダ部2の直径をDs、ピン部3のショルダ部2における径方向外方側部分2aから先端部までの長さをP1とした場合、D1/Ds≧0.5、(D1−D2)/P1≒1となるように形成されている。
【0018】
又、ピン部3のショルダ部2径方向外方側部分2aから先端部までの長さP1は、摩擦攪拌接合時に、ショルダ部2が被接合物13に深さH1が約1mm程度となるよう没入した状態で、ピン部3の先端が被接合物13内にあって被接合物13を貫通しない長さに形成する。更に、被接合物13のうちショルダ部2側の被接合部材11の厚さをT1、裏当て材14側の被接合部材12の厚さをT2とし、接合後の被接合物13のうち最も薄くなっている部分の厚さを残母材厚をS1(図12参照)とした場合、ピン部3の長さP1は、P1≧(T1+1)mm、P1≧(T1+T2−1−S1)となるように形成されている。
【0019】
因みに、図8、図9に示す接合ツール1の場合、ショルダ部2の直径Ds=30mm、ピン部3の基端部の直径D1=16mm、ピン部3の先端部の直径D2=6mm、ピン部3の長さP1=16mm、斜面4の径方向線R1に対する角度θ=30度である。
【0020】
次に、上記接合ツール1により被接合部材を摩擦攪拌接合する手順について、図10(1)〜図10(4)により説明する。ここで摩擦攪拌接合の対象とする被接合部材は車両フレームのサイドレールとガセット、及びガセットとクロスメンバである。図10(1)〜図10(4)中、11はクロスメンバ又はガセットである被接合部材、12はガセット又はサイドレールである被接合部材、13は被接合部材11,12により形成された車両フレームである被接合物、14は摩擦攪拌接合時に被接合部材12の被接合部材11とは反対側の面が変形しないよう支持する裏当て部材、15は摩擦攪拌接合時に軟化した被接合部材11,12が混ぜ合わされて形成される攪拌領域、矢印は接合ツール1の移動方向である。
【0021】
被接合部材11,12を板厚方向に重ね合わせて並列させた被接合物13を、被接合部材12の被接合部材11とは反対側の面が裏当て材14の平坦面に当接するよう、裏当て材14に支持させ、待機位置にある接合ツール1を、図示してない駆動装置により駆動して軸線L1の回りに回転させ、軸線L1に沿い被接合部材11に近接するよう移動させる(図10(1)参照)。
【0022】
接合ツール1が被接合物13に近接して前進しつつ被接合部材11に押し当てられると、ピン部3の先端部は回転しつつ被接合物13の被接合部材11に没入される(図10(2)参照)。又、被接合物13の被接合部材11に先端部が没入して回転しているピン部3を被接合物13に押し当てつつ更に深く被接合物13に没入されるよう移動させると、ショルダ部2の斜面4が被接合部材11に没入される。
【0023】
そうすると、接合ツール1は連続して回転しながら被接合物13に押し当てられているため、ショルダ部2及びピン部3と、被接合物13との回転接触により生じる摩擦熱によって、被接合部材11,12が軟化し、軟化した被接合部材11,12は接合ツール1により引きずられて、塑性流動して攪拌され、その結果、ピン部3の周囲において被接合部材11,12は混ぜ合わされて攪拌領域15が形成され、一体化する(図10(3)参照)。
【0024】
続いて、摩擦攪拌接合装置の制御部では、図示してないセンサにより検出した温度等のデータ及びピン部3が被接合部材11に没入を開始してからの経過時間等から、予め定めた終了条件を満たしているか否かが判断され、終了条件を満たしていると判断された場合は、接合ツール1は被接合物13から離反する方向へ移動して(図10(4)参照)待機位置に戻り、接合ツール1は回転を停止する。従って、この位置でのスポット接合が終了する。
【0025】
ある位置でのスポット接合が終了したら、接合ツール1と裏当て材14とを被接合物13に対し移動させ、上述した手順を繰返して接合ツール1により被接合部材11、12の摩擦攪拌接合を行なう。
【0026】
次に、接合ツール1を用いて摩擦攪拌接合する際の被接合物13の状態を図11(1)〜図11(3)により説明する。図11(1)〜図11(3)中、16はピン部3の先端部と裏当て材14とにより挟まれた部分、17はピン部3の先端部と裏当て材14とで挟まれた部分16よりもピン部3から径方向外方へ離れた部分であり、矢印は接合ツール1の移動方向を示す。
【0027】
接合ツール1のピン部3先端部を被接合物13に押し当てて、被接合物13に没入させると、被接合部材11のピン部3に接している部分は、ピン部3から接合ツール1の移動方向へ向けた力f1を受ける。本実施の形態では、ピン部3は逆截頭円錐状に形成されているため、被接合部材11はピン部3の先端部からだけではなく、外周部からも接合ツール1の移動方向へ向けた力f1を受ける(図11(1)参照)。
【0028】
この場合、裏当て材14が被接合物13を支持しているため、被接合物13における被接合部材12の裏当て材14に対する当接面が裏当て材14側に変形することはない。従って、被接合物13のピン部3の先端部と裏当て材14とで挟まれた部分16は、ピン部3と裏当て材14とによって圧縮されると共に、その一部がピン部3の径方向外方へ向かって移動する。
【0029】
又、被接合物13において、ピン部3の先端部と裏当て材14とで挟まれた部分16よりもピン部3から径方向外方へ離れた部分17は、部分16からピン部3の径方向外方へ向かう力f2を与えられて被接合部材12は、他の部分よりもショルダ部2の斜面4側に向かって隆起する(図11(1)参照)。
【0030】
本図示例では、ピン部3が逆截頭円錐状に形成されることで、ショルダ部2の斜面4とピン部3の基端部及び外周面で被接合物13をピン部3の径方向外方へ押し出すことができ、従って、裏当て材14に凹凸形状を形成しなくても、被接合部材12の押出された部分17の隆起を大きくすることができる。又、ピン部3は逆截頭円錐形に形成されているため、隆起した部分17は、軸線L1からピン部3の半径方向へ離れた位置に形成することができる。
【0031】
接合ツール1が更に被接合物13側へ移動して、ショルダ部2のピン部3側端部が被接合物13の被接合部材11に没入すると、被接合物13はピン部3及びショルダ部2の外形形状に沿った形状に変形する(図11(2)参照)。本図示例では、ショルダ部2の斜面4部には、軸線L1周りを一周する環状凹部5が形成されているので、被接合部材11の軟化した部分は、環状凹部5に入り込み、従って、被接合部材12の隆起する部分17の大きさを大きくでき、その縮小を抑えることができるため、被接合物13は接合ツール1のピン部3及びショルダ部2の斜面4の外形形状に沿った形状に変形する。
【0032】
被接合物13に没入したピン部3及びショルダ部2の僅かの部分が、被接合物13に対し摺動回転することにより、被接合物13のうちピン部3付近の部分が流動化してピン部3に引きずられ、軸線L1の回りを回転する。而して、被接合物13のうちで流動化する攪拌領域15は、時間と共に拡大成長し、ピン部3の外周部に形成されているねじ溝6に入り込んだ流動化している被接合物13は、ピン部3の回転により、ピン部3の小径の先端部側から大径の基端部側へ、ねじ溝6に案内されつつ移動する(図11(3)参照)。
【0033】
被接合物13の流動化している部分が、ピン部3の先端部側から基端部側へ移動することで、隆起している部分17も又ピン部3の先端部側から基端部側へ移動し、被接合部材12に形成される部分17の隆起が促進され、攪拌領域15で被接合部材11,12が混ぜ合わされる結果、被接合部材11,12が接続される。
【0034】
次に、図8、図9に示す接合ツール1により被接合部材11、12が接合された状態を、図8、図9をも参照して図12により説明する。
被接合物13のうち、没入したピン部3が当接した部分には、攪拌領域15が形成される。又、接合部材11の攪拌領域15の近傍には、隆起した部分17が形成され、隆起した部分17は軸線L1の周りを一周して略リング状に形成される。
【0035】
被接合物13のうちショルダ部2の斜面4に臨む部分が裏当て材14から離反した方向へ隆起することで、かしめ作用が生じる隆起した部分17が形成される。又、隆起した部分17の一部が、被接合部材11,12の接合後も残存することによって、その隆起した部分17は接合された互いの被接合部材11,12が分離するのを阻止する抵抗部分として作用する。従って、摩擦攪拌接合と共に、かしめ変形による強度向上を図ることができ、接合された被接合部材11,12の接合強度が向上する。
【0036】
図8、図9に示す接合ツール1で摩擦攪拌接合を行った車両フレームの一例は図1〜図4に示されている。図中、21はサイドレール、22はガセット、23はクロスメンバ、24はガセット22とサイドレール21を接合する攪拌摩擦溶接部、25はクロスメンバ23とガセット22を接合する摩擦攪拌接合部である。
【0037】
図1〜図4に示す車両フレームにおいては、例えば、先ず、クロスメンバ23とガセット22とが図8、図9の接合ツール1を用いて摩擦攪拌接合が行なわれ、クロスメンバ23にガセット22が接合された状態で、ガセット22とサイドレール21が摩擦攪拌接合される。
【0038】
図8、図9に示す接合ツールで摩擦攪拌接合を行なった車両フレームの他の例は図5〜図7に示されている。本例ではガセット22は平板状ではなく、L形のブラケット状に形成されている。図中、図1〜図4に示すものと同一のものには同一の符号が付してある。しかして、本図示例でも、先ず、クロスメンバ23とガセット22とが摩擦攪拌接合され、クロスメンバ23にガセット22が接合された状態で、ガセット22とサイドレール21が摩擦攪拌接合される。
【0039】
上記図1〜図4、図5〜図7の各図示例における車両フレームは、鋼板或はアルミ板製で板厚が約6mm程度以上の厚板である。
【0040】
本図示例においては、上述した車両フレームのサイドレール21、ガセット22、クロスメンバ23の接合を摩擦攪拌接合により行なうようにしているため、ボルト、ナットのような締結部品や締結部品のための孔開け加工が不要となって、コストダウンや軽量化が可能となると共に、軽量化により車両積載重量が増加し、締結部品が不要となるため緩みや脱落がなくなって製品としての信頼性が向上し、又、車両フレームの外部や内部にボルト頭やナットが突出しないため、例えばクレーン車のフレーム補強板に逃げ孔加工が不要となって荷台架装性が向上し、更に、車両フレーム内部のブレーキ配管や電線配索と締結部材との干渉を避けるためのクランプが不要になるため、組み立て工数を削減することができてコストダウンが可能となり、又更に、近接多点打ちが可能となるため、設計の自由度が向上してトラック等の他用途車両には大きな利点となり、更に又、車両フレームの寸法精度が向上するため、車両姿勢が向上してその直進性や操舵性等、車両の基本性能が向上し、又、接合強度が高いため、接合点数を削減できる結果、コストダウンが可能になり、更に又、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【0041】
なお、本発明の車両フレームの製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】摩擦攪拌接合により組み付けられた車両フレームの一例の部分的な斜視図である。
【図2】図1の車両フレームの平面図である。
【図3】図2のIII−III方向矢視図である。
【図4】図3のIV−IV方向矢視図である。
【図5】摩擦攪拌接合により組み付けられた車両フレームの他の例の部分的な平面図である。
【図6】図5のVI−VI方向矢視図である。
【図7】図6のVII−VII方向矢視図である。
【図8】摩擦攪拌接合に使用する接合ツールの斜視図である。
【図9】図8の接合ツールの断面図である。
【図10】図8の接合ツールを用いて行なう摩擦攪拌接合の手順を説明するための断面図である。
【図11】図8の接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なう場合において、被接合物の接合状態が変化して行く状態を示す断面図である。
【図12】図8の接合ツールを用いて摩擦攪拌接合された被接合物の接合状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 接合ツール
2 ショルダ部
3 ピン部
5 環状凹部
6 ねじ溝
14 裏当て材
21 サイドレール(部材)
22 ガセット(部材)
23 クロスメンバ(部材)
f1 力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フレームを構成する部材を摩擦攪拌接合により接合することを特徴とする車両フレームの製造方法。
【請求項2】
二つ以上の部材が予め定める接合方向に並んで構成される被接合物における前記部材の接合方向一方側表面部に裏当て部材の平坦面を当接させ、前記部材の接合方向他方側表面部であって裏当て部材に対向する位置に回転する接合ツールを押し当て、摩擦攪拌接合により前記部材を接合する車両フレームの製造方法であって、
略円柱状に形成され、且つ軸線方向一方側端面部において径方向外方側部分が径方向内方側部分よりも周方向全周に亘って軸線方向一方側に突出するショルダ部と、
該ショルダ部と同軸に形成されて、ショルダ部から離反するにつれて縮径し、ショルダ部に連なる部分の外径がショルダ部の外径よりも小径の略截頭円錐状のピン部を備えた接合ツールを用いて前記摩擦攪拌接合を行なう請求項1記載の車両フレームの製造方法。
【請求項3】
ショルダ部の軸線方向一方側端面には、ショルダ部に同軸でピン部に向かうにつれて拡径する断面略傘形状の環状凹部が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なう請求項2記載の車両フレームの製造方法。
【請求項4】
ピン部の外周部に軸線まわりを回転するにつれてショルダ部に向かって進む螺旋状のねじ溝が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なう請求項2又は3に記載の車両フレームの製造方法。
【請求項1】
車両フレームを構成する部材を摩擦攪拌接合により接合することを特徴とする車両フレームの製造方法。
【請求項2】
二つ以上の部材が予め定める接合方向に並んで構成される被接合物における前記部材の接合方向一方側表面部に裏当て部材の平坦面を当接させ、前記部材の接合方向他方側表面部であって裏当て部材に対向する位置に回転する接合ツールを押し当て、摩擦攪拌接合により前記部材を接合する車両フレームの製造方法であって、
略円柱状に形成され、且つ軸線方向一方側端面部において径方向外方側部分が径方向内方側部分よりも周方向全周に亘って軸線方向一方側に突出するショルダ部と、
該ショルダ部と同軸に形成されて、ショルダ部から離反するにつれて縮径し、ショルダ部に連なる部分の外径がショルダ部の外径よりも小径の略截頭円錐状のピン部を備えた接合ツールを用いて前記摩擦攪拌接合を行なう請求項1記載の車両フレームの製造方法。
【請求項3】
ショルダ部の軸線方向一方側端面には、ショルダ部に同軸でピン部に向かうにつれて拡径する断面略傘形状の環状凹部が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なう請求項2記載の車両フレームの製造方法。
【請求項4】
ピン部の外周部に軸線まわりを回転するにつれてショルダ部に向かって進む螺旋状のねじ溝が形成されている接合ツールを用いて摩擦攪拌接合を行なう請求項2又は3に記載の車両フレームの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−44446(P2008−44446A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219970(P2006−219970)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
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