説明

車両内蔵用天井材の基材

【課題】本発明は、材料の軽量化による燃費向上を通じて排気ガスを減少させると共に優れた剛性を持つばかりでなく、車両廃棄時にリサイクル性を高めることができ、且つ、人体に無害である車両内蔵用天井材基材を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20と、その上部及び下部に天然繊維及び合成繊維からなる補強材層30とを持つことを特徴とする車両内蔵用天井材基材10により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内蔵用天井材の基材に関するものであって、さらに詳しくはリサイクルに優れているばかりでなく、軽量でありながらも優れた剛性を持つ車両内蔵用天井材の基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内蔵用天井材の基材として用いられるものでは、レジンフェルト(Resin felt)、天然繊維強化ボード、ペーパーボード(paper board)、ウッドファイバー(Wood Fiber)硬質ポリウレタンなどがあり、例えば、レジンフェルトが用いられた車両用内装材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記レジンフェルトとペーパーボードは、フェノール樹脂などを含浸させて製造したものである。硬化剤のフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との縮合反応により生成される熱硬化性樹脂の一種であって、フェノール樹脂の焼却時に未反応又は不完全燃焼に起因して放出されるフェノール及びアルデヒドは、作業環境を含めた生活環境の公害物質として作用する。これにより、特許文献1に示される技術においては有毒性ガスを排出するという欠点があった。
【0004】
従来のガラス繊維又はガラス破片を含めた車両内蔵用天井材の基材の場合、製造過程及び移送過程において生じるガラス粉塵により作業者らに有害な影響を与えるばかりでなく、前記材料を接着させるための揮発性有機溶剤含有の接着剤を使用した場合、作業環境及び人体に有害であるという短所があった。
【0005】
また、ポリウレタン硬質発泡体の場合、断熱性及び軽量性には優れているが、リサイクル性が低下し、耐衝撃性がよくないことから、基材を製造するための成形工程における脆性破壊が生じやすい。
【0006】
前述した従来の車両内蔵用天井材構造物の基材材料は、防音性及び断熱性に優れておらず、製造コストが高く、高重量であると共に長期間使用時に変形を招きやすい。しかも、人体に有害であり、リサイクルしにくいという問題があった。
【特許文献1】特開平9−39177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、前記問題等に鑑みて成されたものであって、材料の軽量化による燃費向上を通じて排気ガスを減少させると共に優れた剛性を持つばかりでなく、車両廃棄時にリサイクル性を高めることができ、且つ、人体に無害であるという特長を持つように改善された構造からなる車両内蔵用天井材基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記本発明の目的は、ポリオレフィン系発泡シートからなる心材と、その上部及び下部に天然繊維及び合成繊維からなる補強材層とを持つことを特徴とする車両内蔵用天井材基材により達成される。
【0009】
本発明によれば、前記ポリオレフィン系発泡シートの発泡倍率は、剛性及び成形性を向上し得るように5倍率以上30倍率以下であることが好ましい。
【0010】
前記ポリオレフィン系発泡シートの上下部には剛性を向上させるための補強材層が積層されるが、前記補強材層は天然繊維及び合成繊維からなるシートにより成されることが好ましい。
【0011】
本発明の心材に適用し得るポリオレフィン系発泡体は、架橋ポリオレフィン系発泡体が適用され得る。架橋ポリオレフィン系発泡体は、化学架橋と物理架橋とから分けられるが、本発明に適用のポリオレフィン系発泡体は架橋方式により限定されるのではないものの、物理的架橋方式による製造工法が、本発明に適用するのに好適であると判断される。
【0012】
架橋ポリオレフィン系発泡体を製造するための樹脂は、ポリオレフィン系と、線形低密度ポリエチレンとの混合形態がもっとも望ましい。ポリプロピレン系の単独使用の場合は、架橋のために物理的架橋方法である電子線を照射する電子線照射過程において、ポリオレフィン系の鎖が切断されやすく、架橋効率がそれほど高くない。そのことから、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)を一定量添加する。線形低密度ポリエチレンの使用時、最終製品の伸率が急激に向上されることから、優れた成形性を持つことになる。
【0013】
線形低密度ポリエチレンに代わって、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPM)などを使用することができる。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂を架橋するためには、架橋助剤が必須的に添加されなければならないものの、これら架橋助剤は、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリアリルシアヌレート(triallylcyanurate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethyol propane triacrylate)、ニトロソベンゼン(nitrosobenzene)、ジフェニルグアニジン(diphenylguanidine)、及びエチレングリコールジメチルアクリレート(ethylene glycol dimethylacrylate)、トリメチロールプロパン−トリメタアクリレート(trimethylol propane trimethaacrylate)のような多官能性ビニル単量体が好適である。架橋助剤の添加量は、0.5重量部ないし3.0重量部であり、さらに好ましくは0.8重量部ないし1.5重量部である。また、前記重量部範囲下で一種以上の架橋助剤を混合添加することができる。
【0015】
前記電子線照射過程を介して架橋されたポリオレフィン系シートの架橋率(gel content)は、30%ないし60%が好ましい。架橋度の測定は、ASTM D−2765により測定され得る。
【0016】
本発明が架橋ポリオレフィン系シートを製造するための発泡剤は、熱分解性発泡剤が一般的に用いられるが、アゾジカルボナミド(azodicarbonamide、ADCA)が有用である。ADCAの添加量は、発泡倍率によって異なるが、5phrないし20phrの添加が好ましい。
【0017】
また、必要に応じて前記添加剤の他にも、無機充電剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、着色剤を添加することができる。
【0018】
本発明の架橋発泡シートの製造方法は、前記樹脂及び添加剤を、バンバリーミキサー(banbury mixer)により混合した後、圧出成形装置を介して一定厚みのシート状に圧出し、電子線を照射する。照射済みのシートを熱オーブンに通過させることによって連続状の発泡シートを製造する。製造された架橋ポリオレフィン系シートは、厚みが3mm〜8mmであり、且つ、製品の幅は、100mm〜1600mmである。
【発明の効果】
【0019】
以上で述べたように、本発明の車両内蔵用天井材基材は、防音及び断熱に優れると共に剛性が高く、人体に無害であるという特徴を持つ。このように、本発明の内蔵用基材は、剛度、形態安定性、吸遮音性及び断熱性に優れているため、特に車両天井材であるヘッドライナー(headliner)に好適である。
【0020】
また、本発明の一実施例により、天井材基材をポリオレフィン系の材料のみに構成する場合、車両の廃車時に簡単且つ容易にリサイクルすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて詳細に説明する。図面において、図1は、従来の車両用ヘッドライナーを説明するための天井材構造物の概略を示した図面である。天井材構造物1は、基材層11と表皮層12とからなる。図2は、本発明による車両内蔵用天井材基材の概略を示した斜視図であり、本発明の天井材基材10は、ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20と、天然繊維とポリプロピレンからなる補強材層30とにより構成される。
【0022】
本発明の望ましい実施例による天井材基材10の材料となる前記ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20の発泡倍率は、5倍ないし30倍であることが好ましい。つまり、発泡倍率が5倍未満である場合は、心材層20の吸音性向上に影響を与えず、重量が比較的に重く、発泡倍率が30倍を超過する場合は、吸音性及び軽量性は向上するが、剛度、形態安定性が低下するという短所を持っているからである。
【0023】
前記ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20は、車両内蔵用天井材構造物に使用されるから、一定寸法に形成しなければならない。即ち、その厚みは、3mmないし8mmであることが好ましく、より望ましくは3mmないし6mmであることが好適である。ポリオレフィン系発泡シートは、3mmないし4mmの発泡シートを二重にラミネートし、6mmないし8mmの厚みを持つように製造することも可能である。
【0024】
本発明の望ましい実施例による車両内蔵用天井材基材10は、図3に示されたように、前記ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20の一側面或いは両側面に補強材層30が積層される。前記補強材層30は、天然繊維及び合成繊維からなる。好ましくは、例えば、補強材層30は、天然繊維とポリプロピレン(PP)樹脂からなるシート層により構成される。ポリオレフィン系繊維と天然繊維の混合比率は、30:70重量%ないし70:30重量%からなり、且つ、1mmないし3mmの厚みを持つことが好ましい。
【0025】
天然繊維は、供給時、太さが40μmないし120μmであり、長さは、40mmないし80mmであることが好ましく、混合工程での打綿によるフェルト内の天然繊維の太さは、20μmないし60μm、長さは、3mmないし15mmとなるように打綿して混合されたものであり、且つ、ポリオレフィン系繊維は、太さが、6デニールないし15デニールであることが好適であり、長さは、40mmないし80mmであることが好ましい。
【0026】
本発明の天井材基材10は、上部及び下部繊維層間に発泡層を挿入させ、例えば、これらをニードルパンチ方法により組み合わせたものである。下部繊維層と発泡層と上部繊維層とが積層結合され、必要に応じて、上部繊維層上に高剛性表皮層がさらに積層結合される構造である。
【0027】
天然繊維とオレフィン系繊維とを混合し、上部及び下部繊維層間に発泡層を挿入させた後、上部繊維層と発泡層及び、発泡層と下部繊維層とをそれぞれニードルパンチするという段階など、順次的な工程により製造される。
【0028】
したがって、本発明の天井材基材10は、上部繊維層、発泡層、下部繊維層が接着剤及び熱接着又はニードルパンチにより補強材を成している繊維が、心材層20と相互物理的に組み合わされている多層構造物である。
【0029】
前記材料等を、ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20の一側面或いは両側面に積層させることによって、天井材構造物10の剛度と形態安定性を向上させることができる。また、前記天然繊維及びポリプロピレン樹脂からなるシート層が積層された状態で金型内で成形を行うと、金型との離型性がよくなるため、作業効率が向上する。
【0030】
図3を参照して、前記ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20の両側面に積層されている補強材層30であって、車両室内と接触するところに表皮層40がさらに積層される。この表皮層40は、ポリオレフィン系不織布又はポリエステル系不織布が用いられる。
【0031】
前述したように、ポリオレフィン系発泡シートからなる心材層20を心材とし、補強材層30と表皮層40を順次に積層させて製造した材料を金型により加工することによって、図3に示されたような本発明による車両内蔵用天井材構造物10の製造が完了する。このように製造された車両内蔵用天井材基材10は、寸法安定性を損なうことがなく優れた剛性を有するという長所を持つ。
【0032】
本実施例において、前記ポリオレフィン系不織布からなる表皮層40を前記天然繊維及びPP樹脂からなるシート層に積層させるに際し、溶剤形接着剤やホットメルト形接着剤を使用せず、単なる熱による溶融接着が可能である。これにより、作業が非常に簡素化されるばかりでなく、従来の接着剤を用いる際に生じた汚臭などの問題も解決することができる。また、心材としてポリオレフィン系発泡シートを適用する場合、表皮層40に用いられた不織布系列の材料であるから、製造時に不良が生じず、廃車時に表皮層40と心材層20とが分離せず、そのままの状態で粉砕してリサイクルすることができるので、省資源に資すると共に、環境に優しいという特長を持つ。
【0033】
本発明は、添付図面に示されている一実施例を参照として説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野において通常の知識を有するものであれば、これにより様々な変形及び均等な他の実施例が可能であることを理解されたい。よって、本発明における真の保護範囲とは、添付した特許請求の範囲のみにより定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の車両用ヘッドライナーを説明するための天井材構造物の概略を示した図面である。
【図2】本発明による車両内蔵用天井材基材の概略を示した図面である。
【図3】本発明の基材を適用した天井材構造物を概略表示した拡大図である。
【符号の説明】
【0035】
10 天井材基材
20 心材層(ポリオレフィン系発泡シート)
30 補強材層
40 表皮層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリオレフィン系発泡シートからなる心材と、その上部及び下部に天然繊維及び合成繊維から構成される補強材層とを持つことを特徴とする車両内蔵用天井材基材。
【請求項2】
前記架橋ポリオレフィン系発泡シートは、ポリプロピレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)、及びエチレンプロピレン共重合体ゴム(EPM)からなる群から選ばれた一つ以上の成分を含めることを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項3】
前記架橋ポリオレフィン系発泡シートは、700mm〜1600mmの製品幅を持つことを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項4】
前記架橋ポリオレフィン系発泡シートの発泡倍率は5倍ないし30倍であり、厚みは、3mmないし8mmであることを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項5】
前記架橋ポリオレフィン系発泡シートは、3mmないし4mmの発泡シートを二重にラミネートすることによって、6mmないし8mmの厚みを持つようになることを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項6】
前記補強材層のポリオレフィン系繊維と前記天然繊維の混合比率は、重量比で30:70ないし70:30であり、補強材層の厚さは、1mmないし3mmであることを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項7】
前記天然繊維は、太さが、20μmないし120μm、長さは、3mmないし80mmであり、前記ポリオレフィン系繊維は、太さが、6デニールないし15デニール、長さは、40mmないし80mmであることを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項8】
前記天然繊維は、黄麻、ケナフ及びシザル麻からなる群から選ばれた繊維を一つ以上含むことを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。
【請求項9】
前記合成繊維は、低融点ポリエステル、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群から選ばれた繊維を一つ以上包含することを特徴とする請求項1に記載の車両内蔵用天井材基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−23634(P2009−23634A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212395(P2007−212395)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(507276520)韓一理化株式会社 (1)
【Fターム(参考)】