説明

車両内運転者の顔認証方法

【課題】別途のセンサを備えることなく顔認証の確度を向上させることができる車両内運転者の顔認証方法の提供。
【解決手段】照明のオン状態とオフ状態でそれぞれ運転者の顔を撮影する過程と、照明のオン状態で撮影した画像データと照明のオフ状態で撮影した画像データとの差分画像を抽出する過程と、差分画像から境界面を抽出する過程と、境界面の線形形態を判別する過程と、境界面の線形形態の判別結果に従い、生体の顔かどうかの判別をする過程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内運転者の顔認証の方法に係り、より詳しくは、車両内で運転者の顔に反射される光の反射形態を利用して運転者の顔認証を行う認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔認証システムは、認証対象者の顔で個人認証を行うシステムである。
最近用いられている顔認証システムは、認証対象の顔を撮影して認証対象を特定することができる顔の特徴点を登録データとして登録し、認証時、認証対象者の顔を再び撮影して顔の特徴点データを抽出し、抽出した顔の特徴点データと登録データを比べて認証判断する方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の方法では、目の瞬きや瞳孔の動きなどを利用して、写真等によるなりすましかどうかの真偽を確認しているが、写真などを利用する場合、瞳孔の動きや瞬きは人為操作することが可能なので、顔認証の正確さが劣るという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−339048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述したような問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、別途のセンサを備えることなく顔認証の確度を向上させることができる車両内運転者の顔認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明に係る車両内運転者の顔認証方法は、照明のオン状態とオフ状態でそれぞれ運転者の顔を撮影する過程と、照明のオン状態で撮影した画像データと照明のオフ状態で撮影した画像データとの差分画像を抽出する過程と、差分画像から境界面を抽出する過程と、境界面の線形形態を判別する過程と、境界面の線形形態の判別結果に従い顔の判別をする過程とを含む。
【0007】
本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証方法において、差分画像から境界面を抽出する過程は、差分画像を二進化する過程と、二進化された差分画像をラベリングして最大のラベルを抽出する過程と、最大のラベルのノイズを取り除く過程と、ノイズが取り除かれた最大のラベルの境界面を抽出する過程とを含み、最大のラベルのノイズを取り除く過程は、モルフォロジー(Morphology)技法のうち、オープニング(Opening)技法を用いて最大のラベルのノイズを取り除くことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証方法において、ノイズが取り除かれた最大のラベルの境界面を抽出する過程は、チェーンコード技法、又はエッジ抽出技法を用いて境界面を抽出することを特徴とし、境界面の線形形態の判別結果に従い顔の判別をする過程は、境界面が曲線形であれば撮影された運転者の顔が生体の顔と判別し、境界面が直線形であれば撮影された運転者の顔が写真によるものと判別する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、別途のセンサを備えることなく車両内の照明により、車両内で運転者の顔に反射する光の反射形態を利用して運転者の顔認証を行うことにより、顔認証の確度を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両内の運転者の顔認証の方法を示すフローチャートである。
【図3】図2の照明をオフにした状態の顔画像データの例示図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証の方法を説明するための図である。
【図5】図2のモルフォロジー演算を説明するための図である。
【図6】図2の抽出された境界面が曲線形態の場合の例示図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態に係る車両内運転者の顔認証の方法を図1〜図6を参照して詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証システムの構成を示す図である。
【0012】
本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証システムは、カメラ100、照明200及び制御部300を含み、カメラ100は、制御部300の制御により運転者の顔を撮影する。
照明200は、制御部300の制御に従いオンオフされ、車両室内灯210及び赤外線照明220を含む。
【0013】
制御部300は、カメラ100により撮影された画像データの差分画像を抽出し、差分画像を二進化してラベリングし、最大のラベルを抽出した後、モルフォロジー演算によって最大のラベルのノイズを取り除き、チェーンコード技法又はエッジ抽出技法を用いて最大のラベルの境界面を抽出する。
次に、制御部300は、境界面のピクセル位置を分析して境界面の線形形態が曲線形か直線形かを判別し、境界面が曲線形であれば撮影した運転者の顔が生体の顔であると判別し、境界面が直線形であれば撮影した運転者の顔が写真によるものと判別する。
【0014】
以下、図2に示す通り、本発明の実施形態に係る車両内運転者の顔認証の方法を具体的に説明する。
先ず、制御部300は、カメラ100及び照明200を制御して、照明200がオンの状態で運転者の顔を撮影し、更に、照明200をオフにした状態での運転者の顔を撮影する(S100)。
【0015】
その後、制御部300は、照明200がオンの状態で撮影した画像データ(図3a)と、照明200がオフの状態で撮影した画像データ(図3b)との差分画像(図4a)を作成する(S200)。
次に、制御部300は、背景と客体(運転者の顔)を区分する境界を認識するため差分画像を二進化し、図4bに示すように顔領域を抽出した後、図4cに示すように抽出した顔領域をラベリング (グルーピング)し、最大のラベルを抽出する(S300)。
【0016】
その後、制御部300は、モルフォロジー(Morphology)技法のうちオープニング(Opening)技法を用いて最大のラベルのノイズを取り除く(S400)。
モルフォロジー技法は、画像から雑音を除去したり、画像から客体の態様を記述したりする技法であり、膨張(dilatation)演算と浸食(erosion)演算を含む。ここで、膨張演算は画像データの明るい部分を拡張し、浸食演算は画像データの暗い部分を拡張するものである。
特に、モルフォロジー技法のうちのオープニング技法は、膨張演算後に浸食演算を行い、図5に示すように、細く明るい部分10、20、30を取り除く。
【0017】
次に、制御部300は、チェーンコード(Chain code)技法、又はエッジ(Edge)抽出技法を用いて、最大のラベルの境界面を図4eに示すように抽出する(S500)。
【0018】
チェーンコード技法は物体、又は領域の境界線を方向と長さを予め定めた直線成分のチェーンで表現するものであり、最終境界線は、一連のチェーンコードで符号化して表現される。
一方、エッジ抽出技法はモルフォロジー技法を用いてノイズを取り除いた画像データのうち、ピクセルについて真横のピクセルなどの値と比べ、一定値以上であればエッジとして検出する。そして、ピクセルと真横のピクセルとの差が一定値以上であれば白色で表示し、一定値未満であれば黒色で表示して、白色部分が境界線として検出される。
【0019】
その後、制御部300は、境界面のピクセルの位置を分析し、境界面の線形形態を判別し(S600)、境界面の線形形態の判別結果に従い撮影した運転者の顔が、生体の顔によるものであるかどうかの判別を行う(S700)。
このとき、生体の顔を撮影した画像データから境界面を抽出すると、図6aに示すような曲線形態の境界面が抽出され、顔写真を撮影した画像データから境界面を抽出すると、図6bに示すような直線形態の境界面が抽出される。
【0020】
ここにおいて、制御部300は、抽出した境界面が曲線形態であれば、撮影した運転者の顔が生体の顔によるものと判断し、抽出した境界面が直線形態であれば撮影した運転者の顔が写真によるものと判断する。
このように、本発明によれば、車両内で照明をオン及びオフにした状態で運転者の顔を撮影し、照明がオンの状態の画像データと照明がオフの状態の画像データとの差分画像から境界線を抽出し、境界線が曲線形なのか直線形なのかにより、撮影した運転者の顔が生体の顔によるものかどうかを判別する。
【0021】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0022】
10、20、30 : 細く明るい部分
100 : カメラ
200 : 照明
210 : 車両室内灯
220 : 赤外線照明
300 : 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明のオン状態とオフ状態でそれぞれ運転者の顔を撮影する過程と、
前記照明のオン状態で撮影した画像データと前記照明のオフ状態で撮影した画像データとの差分画像を抽出する過程と、
前記差分画像から境界面を抽出する過程と、
前記境界面の線形形態を判別する過程と、
前記境界面の線形形態の判別結果に従い、生体の顔かどうかの判別をする過程と
を含むことを特徴とする車両内運転者の顔認証方法。
【請求項2】
前記差分画像から境界面を抽出する過程は、
前記差分画像を二進化する過程と、
前記二進化された差分画像をラベリングして最大のラベルを抽出する過程と、
前記最大のラベルのノイズを取り除く過程と、
前記ノイズが取り除かれた最大のラベルの境界面を抽出する過程と
を含むことを特徴とする請求項1記載の車両内運転者の顔認証方法。
【請求項3】
前記最大のラベルのノイズを取り除く過程は、
モルフォロジー技法のうちオープニング技法を用いて、前記最大のラベルのノイズを取り除くことを特徴とする請求項1記載の車両内運転者の顔認証方法。
【請求項4】
前記ノイズが取り除かれた最大のラベルの境界面を抽出する過程は、
チェーンコード技法又はエッジ抽出技法を用いて、前記境界面を抽出することを特徴とする請求項2に記載の車両内運転者の顔認証方法。
【請求項5】
前記ノイズが取り除かれた最大のラベルの境界面を抽出する過程は、
チェーンコード技法又はエッジ抽出技法を用いて、前記境界面を抽出することを特徴とする請求項3に記載の車両内運転者の顔認証方法。
【請求項6】
前記境界面の線形形態の判別結果に従い生体の顔かどうかを判別する過程は、
前記境界面が曲線形であれば前記撮影された運転者の顔が生体の顔のものと判別し、
前記境界面が直線形であれば前記撮影された運転者の顔が写真によるものと判別することを特徴とする請求項1に記載の車両内運転者の顔認証方法。
【請求項7】
前記境界面の線形形態の判別結果に従い生体の顔かどうかを判別する過程は、
前記境界面が曲線形であれば前記撮影された運転者の顔が生体の顔のものと判別し、
前記境界面が直線形であれば前記撮影された運転者の顔が写真によるものと判別することを特徴とする請求項2に記載の車両内運転者の顔認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−113687(P2012−113687A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149436(P2011−149436)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】