説明

車両前部構造

【課題】車両の前面衝突時におけるダッシュパネルへの荷重伝達を抑制することを目的とする。
【解決手段】車両36の前面衝突時における前突荷重により動力ユニット20が後退してクロスメンバ12と当接すると、該動力ユニット20からクロスメンバ12に前突荷重が伝達される。クロスメンバ12は、車幅方向に延びて両側のサイドメンバ10に夫々結合されているので、動力ユニット20からクロスメンバ12に伝達された前突荷重を、両側のサイドメンバ10に伝達して分散させることができる。またクロスメンバ12は、動力ユニット20とダッシュパネル46との間に該ダッシュパネル46と非連結状態で配設されているので、該クロスメンバ12が動力ユニット20からの前突荷重により変形しても、その変形がダッシュパネル46に伝わり難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部の片側が障害物に衝突した場合に、このときの入力荷重によってフロントサイドメンバに発生した曲げモーメントが、二股部をなす一方のサイドメンバインサイドを介して、ダッシュクロスメンバと、このダッシュクロスメンバに連結されたセンターメンバとの2部材に伝達されると共に、二股部をなす他方のサイドメンバアウトサイドを介して、サイドシル(ロッカ)と、このサイドシルの前端部とダイアゴナルメンバとの2部材に伝達されるようにした構造が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、サイドシル(ロッカ)の前端部に傾斜面を設けることで、衝突時のフロントボディのつぶれ変形により前輪が後退した場合に、該前輪の後端が車幅方向外側に向けて回動するように案内するようにした構造が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−237636号公報
【特許文献2】特開平5−85414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来例において、ダッシュパネルクロスメンバは、フロントコンパートメントとキャビンとを隔成するダッシュパネルの下縁に沿って配置される部材であるため、衝突時にフロントサイドメンバからダッシュクロスメンバに伝達された荷重は、更にダッシュパネルにも伝達されると考えられる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、車両の前面衝突時におけるダッシュパネルへの荷重伝達を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車幅方向の両側において夫々車両前後方向に延びるサイドメンバと、エンジンコンパートメント内に配設される動力ユニットと、該エンジンコンパートメントと車室とを区画するダッシュパネルとの間に、該ダッシュパネルと非連結状態で配設され、車幅方向に延びて両側の前記サイドメンバに夫々結合されたクロスメンバと、を有している。
【0007】
請求項1に記載の車両前部構造では、車両の前面衝突時における前突荷重により動力ユニットが後退してクロスメンバと当接すると、該動力ユニットからクロスメンバに前突荷重が伝達される。クロスメンバは、車幅方向に延びて両側のサイドメンバに夫々結合されているので、動力ユニットからクロスメンバに伝達された前突荷重を、両側のサイドメンバに伝達して分散させることができる。またクロスメンバは、動力ユニットとダッシュパネルとの間に該ダッシュパネルと非連結状態で配設されているので、該クロスメンバが動力ユニットからの前突荷重により変形しても、その変形がダッシュパネルに伝わり難い。このため、クロスメンバからダッシュパネルへの荷重伝達を抑制することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両前部構造において、前記サイドメンバの車幅方向両側には、夫々車両前後方向に延びるロッカが配設され、前記クロスメンバは、前記サイドメンバよりも更に車幅方向外側へ延びて、両側の前記ロッカに夫々結合されている。
【0009】
請求項2に記載の車両前部構造では、サイドメンバの車幅方向両側に、夫々車両前後方向に延びるロッカが配設されており、クロスメンバが、サイドメンバよりも更に車幅方向外側へ延びて、両側のロッカに夫々結合されているので、車両の前面衝突時に動力ユニットからクロスメンバに前突荷重が伝達された際に、該前突荷重を、サイドメンバだけでなく、該サイドメンバの車幅方向両側のロッカにも伝達して分散させることができる。このため、クロスメンバの変形を抑制して、該クロスメンバからダッシュパネルへの荷重伝達を更に抑制することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両前部構造において、前記ロッカの前端部は、前輪の車両後方に配置されており、該前端部には、前面衝突による前輪の後退時に該前輪を車幅方向外側へ逃がすための案内面が設けられている。
【0011】
請求項3に記載の車両前部構造では、前面衝突により前輪が後退した際に、ロッカの前端部に設けられている案内面により、該前輪を車幅方向外側へ逃がすことができる。これにより、車両前部のオーバハングを変えることなく、前面衝突時における該車両前部の変形ストロークを従来以上に確保することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両前部構造において、前記案内面は、前記前端部の車幅方向外側の側壁に設けられ、車両後方に向かうに従って車幅方向外側へ延びるように傾斜して構成されている。
【0013】
請求項4に記載の車両前部構造では、ロッカの前端部の案内面が、該前端部の車幅方向外側の側壁に設けられ、車両後方に向かうに従って車幅方向外側へ延びるように傾斜して構成されているので、前輪が該案内面に沿って後退するに従って、車幅方向外側へ押し出されることとなる。このため、前面衝突時に後退する前輪を、円滑に車幅方向外側へ逃がすことができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両前部構造において、前記動力ユニットの車両前方側には、ステアリングギヤボックスが、前記サイドメンバに固定されて配設され、オフセット前面衝突による該ステアリングギヤボックスの後退時に該ステアリングギヤボックスと前記動力ユニットとが嵌合可能に構成されている。
【0015】
請求項5に記載の車両前部構造では、動力ユニットの車両前方側に、ステアリングギヤボックスが、サイドメンバに固定されて配設されており、オフセット前面衝突により該ステアリングギヤボックスが後退した際に、該ステアリングギヤボックスと動力ユニットとが嵌合することで、サイドメンバにおける該動力ユニットの支持剛性を高めて、該動力ユニットの回転変位を抑制することができる。これにより、オフセット前面衝突時における動力ユニットの後退量を抑制して、該動力ユニットとダッシュパネルとの間に配設されているクロスメンバへの入力を抑制することができる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両前部構造前記ステアリングギヤボックスには、車両後方側に突出する突起部が設けられ、前記動力ユニットの前部における前記ステアリングギヤボックスの車両後方部位には、前記突起部と嵌合可能な凹部が設けられている。
【0017】
請求項6に記載の車両前部構造では、オフセット前面衝突により該ステアリングギヤボックスが後退した際に、該ステアリングギヤボックスに設けられている突起部が、動力ユニットの凹部に嵌合する。これにより、サイドメンバにおける動力ユニットの支持剛性をより高めることができ、該動力ユニットの回転変位を更に抑制することができる。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6に記載の車両前部構造において、前記突起部及び前記凹部は、車幅方向の両側に設けられている。
【0019】
請求項7に記載の車両前部構造では、突起部及び前記凹部が、車幅方向の両側に設けられているので、オフセット前面衝突の位置が、車両前部の左右の何れであっても、動力ユニットの回転変位を同様に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両前部構造によれば、車両の前面衝突時におけるダッシュパネルへの荷重伝達を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項2に記載の車両前部構造によれば、クロスメンバの変形を抑制して、該クロスメンバからダッシュパネルへの荷重伝達を更に抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0022】
請求項3に記載の車両前部構造によれば、車両前部のオーバハングを変えることなく、前面衝突時における該車両前部の変形ストロークを従来以上に確保することができる、という優れた効果が得られる。
【0023】
請求項4に記載の車両前部構造によれば、前面衝突時に後退する前輪を、円滑に車幅方向外側へ逃がすことができる、という優れた効果が得られる。
【0024】
請求項5に記載の車両前部構造によれば、オフセット前面衝突時における動力ユニットの後退量を抑制して、該動力ユニットとダッシュパネルとの間に配設されているクロスメンバへの入力を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0025】
請求項6に記載の車両前部構造によれば、動力ユニットの回転変位を更に抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0026】
請求項7に記載の車両前部構造によれば、オフセット前面衝突の位置が、車両前部の左右の何れであっても、動力ユニットの回転変位を同様に抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1,図2において、本実施の形態に係る車両前部構造Sは、サイドメンバ10と、クロスメンバ12とを有している。
【0028】
サイドメンバ10は、車幅方向の両側において夫々車両前後方向に延びる骨格部材であり、例えば断面コ字状の鋼材が車幅方向に対向した状態で接合されている。これにより、サイドメンバ10は、例えば中空かつ矩形状の閉断面に構成されている。サイドメンバ10の前端には、例えばクラッシュボックス14を介してバンパリインフォースメント16が取り付けられている。
【0029】
車両平面視において、車両前部における両側のサイドメンバ10の間は、エンジンコンパートメント18となっており、該エンジンコンパートメント18には、エンジン22やトランスミッション24(図2)、ディファレンシャルギヤ26等の動力ユニット20が配設されている。この動力ユニット20は、図示しないエンジンマウントブラケットやブッシュ等を介して、両側のサイドメンバ10に支持されている。
【0030】
動力ユニット20の車両前方側には、ステアリングギヤボックス28が、サイドメンバ10に固定されて配設されている。このステアリングギヤボックス28は、ステアリングシャフト30を介してステアリングホイール(図示せず)と連結されている。ステアリングギヤボックス28は、車幅方向に沿って配設されており、その両端からはタイロッド32が車幅方向両側に夫々突出している。各々のタイロッド32の端部は、前輪34のハブ(図示せず)に夫々連結されている。即ち、このステアリングギヤボックス28により、操舵時にステアリングホイールに入力された回転変位を、タイロッド32の車幅方向の変位に変換して前輪34のハブに伝達し、該前輪34の向きを変化させることができるようになっている。なお、前輪34は、サスペンションアーム35を介して、サイドメンバ10や、該サイドメンバ10に設けられているサスペンションメンバ(図示せず)に懸架されている。
【0031】
ステアリングギヤボックス28のケーシングのうち、ステアリングシャフト30が連結される部位には、例えばピニオンギヤを収納するための突起部28Aが、車両後方側に突出して設けられている。この突起部28Aは、ステアリングギヤボックス28における車幅方向の両側に設けられており、所謂右ハンドル車と左ハンドル車とでステアリングギヤボックス28を共用できるようになっている。図示の例では、車両36が右ハンドル車であり、車両右側の突起部28Aにステアリングシャフト30が連結されている。車両左側の突起部28Aには、例えば蓋体38が取り付けられて封止されているが、左ハンドル車の場合には、該車両左側の突起部28Aにピニオンギヤが収納されてステアリングシャフトが連結され、車両右側の突起部28Aが封止される。
【0032】
図1,図2に示されるように、サイドメンバ10におけるステアリングギヤボックス28の車両前方側には、例えばサスペンションメンバ40が配設されている。このサスペンションメンバ40は、ステアリングギヤボックス28の車両前方側において、該ステアリングギヤボックス28に沿うように車幅方向に延び、両端において車両上方に延びて両側のサイドメンバ10に夫々結合されている。そしてステアリングギヤボックス28のケーシングは、このサスペンションメンバ40の車両後方側に固定されている。
【0033】
図1において、サイドメンバ10の車幅方向両側には、夫々車両前後方向に延びるロッカ42が配設されている。このロッカ42は、例えば中空かつ略矩形状の閉断面に構成されている。ロッカ42の前端部42Aは、前輪34の車両後方に配置されている。この前端部42Aには、前面衝突による前輪34の後退時に該前輪34を車幅方向外側へ逃がすための案内面42Bが設けられている。この案内面42Bは、ロッカ42の前端部42Aの車幅方向外側の側壁に設けられ、車両後方に向かうに従って車幅方向外側へ延びるように傾斜して構成されている。車両前後方向に対する案内面42Bの傾斜角度は、前面衝突に対する車両前部の変形ストロークを考慮して適宜設定される。なお、案内面42Bは、平面形状には限られず、曲面形状であってもよい。
【0034】
図1において、クロスメンバ12は、エンジンコンパートメント18内に配設される動力ユニット20と、該エンジンコンパートメント18と車室44(図2)とを区画するダッシュパネル46との間に、該ダッシュパネル46と非連結状態で配設され、車幅方向に延びて両側のサイドメンバ10に夫々結合されている。またクロスメンバ12は、該サイドメンバ10よりも更に車幅方向外側へ延びて、両側のロッカ42に夫々結合されている。図2に示されるように、クロスメンバ12は、サイドメンバ10を貫くように配設されている。
【0035】
動力ユニット20の前部におけるステアリングギヤボックス28の車両後方部位には、該ステアリングギヤボックス28の突起部28Aと嵌合可能な凹部48が設けられている。この凹部48は、車幅方向の両側に設けられている。具体的には、動力ユニット20においては、ディファレンシャルギヤ26が、車両前方側に台形状に突出している。一方、動力ユニット20の車幅方向の両端部には、車両前方側に突出する突堤50が設けられている。即ち、凹部48は、該突堤50とディファレンシャルギヤ26との間に形成されている。車両36のオフセット前面衝突によるステアリングギヤボックス28の後退時には、該ステアリングギヤボックス28の突起部28Aが凹部48内に入り込むことで、該ステアリングギヤボックス28と動力ユニット20とが嵌合可能に構成されている。
【0036】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図3,図4において、車両前部構造Sを有する車両36の右側前部に衝突体52が衝突した場合、前突荷重がバンパリインフォースメント16の主として車両右側部に入力される。この前突荷重により、バンパリインフォースメント16とサイドメンバ10とを連結している車両右側のクラッシュボックス14が軸圧縮変形することで、衝突初期における衝撃吸収がなされる。
【0037】
また前突荷重は、バンパリインフォースメント16及びクラッシュボックス14を介して、主として車両右側のサイドメンバ10に入力される。このサイドメンバ10は、クロスメンバ12を介して車両左側のサイドメンバ10と結合されており、該クロスメンバ12は更に車幅方向両側に延びて両側のロッカ42にも結合されているので、前突荷重は左右のサイドメンバ10及びロッカ42にも伝達される。これにより、前突荷重を、車両骨格の各部に分散させることができる。
【0038】
前突荷重によりサイドメンバ10が軸圧縮変形すると、サスペンションメンバ40及び該サスペンションメンバ40に固定されているステアリングギヤボックス28が後退し、該ステアリングギヤボックス28に設けられている突起部28Aが、動力ユニット20の凹部48に嵌合する。これにより、サイドメンバ10における動力ユニット20の支持剛性が高まるので、図5,図6に示されるように、車両前部の変形の進行に伴う、該動力ユニット20の回転変位を抑制することができる。この回転変位は、車両36の右側前部へのオフセット前面衝突の場合、車両平面視で時計回りに生ずる。
【0039】
なお、図示の例では、ステアリングギヤボックス28と動力ユニット20とが嵌合した状態であっても、該ステアリングギヤボックス28は、動力ユニット20の突堤50には当接しない。従って、ステアリングギヤボックス28から動力ユニット20への前突荷重の伝達は、例えば突起部28Aの車幅方向内側の根元部近傍において行われる。
【0040】
図7,図8において、車両前部の変形が更に進行すると、動力ユニット20は、車両平面視で時計回りに若干回転変位した状態で後退して行き、その右側後部20Aがクロスメンバ12に当接する。このとき、ステアリングギヤボックス28と動力ユニット20との嵌合により、該動力ユニット20の回転変位が抑制されているので、該動力ユニット20における右側後部20Aの後退量も抑制される。換言すれば、動力ユニット20が大きく回転変位しないので、車両前部の変形ストロークをより多く確保することができる。
【0041】
動力ユニット20の右側後部20Aがクロスメンバ12に当接すると、前突荷重は、該右側後部20Aを通じてクロスメンバ12に伝達される。このとき、クロスメンバ12は、動力ユニット20とダッシュパネル46との間に、該ダッシュパネル46と非連結状態で配設されているので、該クロスメンバ12が動力ユニット20の右側後部20Aからの前突荷重により変形しても、その変形がダッシュパネル46に伝わり難い。このため、クロスメンバ12からダッシュパネル46への荷重伝達を抑制することができる。
【0042】
クロスメンバ12は、両側のサイドメンバ10及びロッカ42に夫々結合されているので、動力ユニット20の右側後部20Aから伝達された前突荷重を、サイドメンバ10だけでなく、該サイドメンバ10の車幅方向両側のロッカ42にも伝達して分散させることができる。このため、図9,図10に示されるように、更に車両前部の変形が進行しても、クロスメンバ12の変形を抑制して、該クロスメンバ12からダッシュパネル46への荷重伝達を抑制することができる。
【0043】
補足すると、前突荷重がステアリングギヤボックス28から動力ユニット20に伝達された際、該動力ユニット20には車両平面視で時計回りのモーメントが生じる。一方、動力ユニット20の右側後部20Aがクロスメンバ12に当接することで反力が生じることから、該動力ユニット20には、車両平面視で反時計回りのモーメントも生じる。動力ユニット20の右側後部20Aは、突起部28Aの車幅方向内側の根元部よりも車幅方向外側に位置しているので、前突荷重による車両平面視で時計回りのモーメントを、クロスメンバ12からの反力による反時計回りのモーメントにより相殺することが容易である。これによって、動力ユニット20の回転変位を更に抑制して、車両前部の変形ストロークをより一層確保することができる。
【0044】
更に、図9に示されるように、衝突体52により押圧されて前輪34が後退した際には、ロッカ42の前端部42Aに設けられている案内面42Bにより、該前輪34を車幅方向外側へ逃がすことができる。具体的には、ロッカ42の前端部42Aの案内面42Bが、該前端部42Aの車幅方向外側の側壁に設けられ、車両後方に向かうに従って車幅方向外側へ延びるように傾斜して構成されているので、前輪34が該案内面42Bに沿って後退するに従って、車幅方向外側へ押し出されることとなる。このため、前面衝突時に後退する前輪34を、円滑に車幅方向外側へ逃がすことができる。これにより、車両前部のオーバハングを変えることなく、前面衝突時における該車両前部の変形ストロークを従来以上に確保することができる。
【0045】
本実施形態では、車両36の右側前部へのオフセット前面衝突が生じた場合の作用について説明したが、突起部28A及び凹部48は、車幅方向の両側に設けられているので、オフセット前面衝突の位置が、車両36の左側前部であっても、動力ユニット20の回転変位を同様に抑制することができる。
【0046】
なお、上記構成においては、クロスメンバ12が、サイドメンバ10だけでなく、ロッカ42の前端部42Aにも結合されているとしたが、これに限られず、サイドメンバ10のみに結合される構成としてもよい。
【0047】
またロッカ42の前端部42Aに、前面衝突による前輪34の後退時に該前輪34を車幅方向外側へ逃がすための案内面42Bを設けるものとしたが、そのように動力ユニット20を逃がさなくても車両前部の変形ストロークを確保できる場合には、該案内面42Bを設けなくてもよい。
【0048】
車両36のオフセット前面衝突によるステアリングギヤボックス28の後退時に、該ステアリングギヤボックス28の突起部28Aと、動力ユニット20の凹部48とが嵌合するものとしたが、これに限られず、例えばステアリングギヤボックス28側に凹部(図示せず)を設け、該凹部48に対応する突起部(図示せず)を動力ユニット20側に設けてもよい。この他、オフセット前面衝突時における動力ユニット20の回転変位を少なくするような他の対策を講じることで、ステアリングギヤボックス28と動力ユニット20との嵌合構造を設けないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】通常時における車両前部構造を示す平面図である。
【図2】通常時における車両前部構造を示す断面図である。
【図3】車両前部の右側にオフセット前面衝突が生じた場合における、衝突初期の状態を示す平面図である。
【図4】図3に対応する衝突初期の状態を示す断面図である。
【図5】図3の状態に続いて、更に変形が進行した状態を示す平面図である。
【図6】図5に対応する状態を示す断面図である。
【図7】図5の状態に続いて、更に変形が進行した状態を示す平面図である。
【図8】図7に対応する状態を示す断面図である。
【図9】図7の状態に続いて、更に変形が進行した状態を示す平面図である。
【図10】図9に対応する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 サイドメンバ
12 クロスメンバ
18 エンジンコンパートメント
20 動力ユニット
28 ステアリングギヤボックス
28A 突起部
34 前輪
42 ロッカ
42A 前端部
42B 案内面
44 車室
46 ダッシュパネル
48 凹部
S 車両前部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向の両側において夫々車両前後方向に延びるサイドメンバと、
エンジンコンパートメント内に配設される動力ユニットと、該エンジンコンパートメントと車室とを区画するダッシュパネルとの間に、該ダッシュパネルと非連結状態で配設され、車幅方向に延びて両側の前記サイドメンバに夫々結合されたクロスメンバと、
を有する車両前部構造。
【請求項2】
前記サイドメンバの車幅方向両側には、夫々車両前後方向に延びるロッカが配設され、
前記クロスメンバは、前記サイドメンバよりも更に車幅方向外側へ延びて、両側の前記ロッカに夫々結合されている請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記ロッカの前端部は、前輪の車両後方に配置されており、
該前端部には、前面衝突による前輪の後退時に該前輪を車幅方向外側へ逃がすための案内面が設けられている請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記案内面は、前記前端部の車幅方向外側の側壁に設けられ、車両後方に向かうに従って車幅方向外側へ延びるように傾斜して構成されている請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記動力ユニットの車両前方側には、ステアリングギヤボックスが、前記サイドメンバに固定されて配設され、
オフセット前面衝突による該ステアリングギヤボックスの後退時に該ステアリングギヤボックスと前記動力ユニットとが嵌合可能に構成されている請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記ステアリングギヤボックスには、車両後方側に突出する突起部が設けられ、
前記動力ユニットの前部における前記ステアリングギヤボックスの車両後方部位には、前記突起部と嵌合可能な凹部が設けられている請求項5に記載の車両前部構造。
【請求項7】
前記突起部及び前記凹部は、車幅方向の両側に設けられている請求項6に記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−298214(P2009−298214A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152776(P2008−152776)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】