説明

車両周辺視認装置

【課題】重要な情報を含む車両近辺の映像の画質の劣化を最小限に抑えながら、車両遠方の映像の画質劣化を改善することにより、最適な画像品質を実現することができる車両周辺視認装置を提供すること。
【解決手段】車両周辺を撮像可能に車両に取り付けられた撮像手段(カメラ10)と、前記撮像手段(カメラ10)により撮像された映像を俯瞰変換処理して俯瞰画像とする俯瞰変換処理手段(俯瞰変換装置11)と、前記俯瞰変換処理手段(俯瞰変換装置11)により俯瞰変換された俯瞰画像をフィルタ処理する画質改善フィルタ(12)と、前記画質改善フィルタ(12)によりフィルタ処理された画像を映し出すモニター(13)を備えている。しかも、前記画質改善フィルタ(12)は、前記俯瞰画像の画素を車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理の強さを順次大きくするように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段により撮像される車両周辺の画像の画質を改善するフィルタが設けられた車両周辺視認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、運転初心者やトラック等の後方視界が悪い車両の運転者にとって、駐車エリアへの車両進入は困難を伴うものである。そこで、トランク先端の車幅方向中央部やナンバープレート照明位置などの車両後端にカメラを設定し、このカメラで撮像された映像をナビゲーション等のモニターに映し出すことにより、安全に駐車エリアへの車両誘導が実現できるようにしたものが知られている。
【0003】
このカメラとしては通常広角カメラを使用しており、この広角カメラで駐車場の駐車スペースを撮像した場合、例えば図7(a)のような駐車場の映像1が得られる。
【0004】
この図7(a)では、駐車場の実際には平行な縦ライン2,3とこれらに垂直な横ライン4で設定された駐車スペースNO.3に車両が駐車するための映像1が得られている。
【0005】
しかし、この広角カメラのレンズは周縁部に向かうに従ってレンズ歪が大きくなるものであった。しかも、この広角カメラによる映像1は低い取り付け位置の映像であるために、運転者は車両と周囲の位置関係を正確に把握し難いものであった。このため、映像1では、実際には平行な縦ライン2,3が、広角カメラで撮像された映像では車両後端部から離れるに従って間隔が狭くなると共に、遠方側ではレンズの歪曲収差のために極端に湾曲するような画像となっていた。
【0006】
そこで、このカメラによる視認機能を発展させたものとして、図7(b)に示すように図7(a)のような映像を俯瞰変換して、図7(a)の縦ライン2,3が図7(b)の縦ライン2′、3′のように平行となる画像1′とすることにより上記の問題点を解決するようにした技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。この俯瞰変換では、広角カメラで撮像された映像の手前の映像部は等倍あるいは縮小して、奥の映像部は拡大するような画像処理をしている。
【0007】
ところで、例えば、図8(a)のように広角カメラで撮像された映像5のなかに多数個の円6a1〜6anからなる円列6,多数個の円7a1〜7anからなる円列7,多数個の円8a1〜8anからなる円列8の画像が得られたとする。この図8(a)の映像5では、円列6,7,8が平行且つ円6a1〜6an,円7a1〜7an,円8a1〜8anは、それぞれ同じ直径で且つ真円の画像として得られている。
【0008】
これを図7(b)と同様な俯瞰変換処理したとき、図8(a)の円列6,7,8は図8(b)の画像5′となる。この図8(b)に示したような画像5′の円列6′,7′,8′では、下部では縮小された円となり、画像5′の上部では大きな楕円となる。即ち、円列6′,7′,8′は下部から上部に向かうに従って徐々に楕円が細長くなると共に大きくなり、且つ円列6′の円6a1′〜6an′、円列7′の円7a1′〜7an′、円列8′の円8a1′〜8an′の間隔が大きくなる。
【0009】
このような画像5′の拡大は、元の映像(画像)5の画素を再配置すると共に、これらの間に元画像にない新たな画素(補間画素)を作り出す操作が必要となる。この手法として一般に
(ア).ニアレストネイバー法(最近傍補間法)
(イ).バイリニア法(線形補間法)
(ウ).バイキュービック法(スプライン補間法)
等の補間処理技術が知られている。
【0010】
このような補間処理技術の中で装置をハードを中心として構成した場合には、(ア)のニアレストネイバー法が使われている場合が多い。これは、補間画素として最も近い位置に配置された元画素と同じ値を用いるものである。図9は、このニアレストネイバー法による処理の例を示したものである。この図9(a)は図8(a)の右上の円8anを示し、図9(b)は図8(a)の右上の円8anを補間処理して得られた図8(b)の右上の楕円8an′の一部を拡大して示したものである。
【0011】
また、ソフトウェアで処理を行う場合には、(イ)のバイリニア法が使われる場合も多い。これは、補間画素として最も近い位置に配置された上下・左右の4つの元画素から、線形的に値を補間するものである。図10はこのバイリニア法を用いた場合のフィルタ処理の説明図である。この図10(a)は図8(a)の右上の円8anを示し、図10(b)は図8(a)の右上の円8anをバイリニア法で補間処理して得られた楕円8an′′の一部を拡大して示したものである。
【0012】
尚、(ウ)のバイキュービック法を用いた俯瞰処理は最も画像劣化が少ない手法であるが、三次多項式の演算処理になるために、俯瞰処理に時間が掛かり、適用例は少ない。このバイキュービック法の画質向上の考え方は(イ)のバイリニア法と同様である。
【特許文献1】特開2005−311666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、ニアレストネイバー法を用いた場合の映像の変換結果は、図9(b)に示したように画像変化のブロックが楕円8an′のように大きくなると、楕円8an′の周縁のギザギザ感が目立つような状態となる。このギザギザ感は画像全体の画質を低下させるものであった。
【0014】
このために、実際の装置の場合には画質を改善するために、ニアレストネイバー法を使った場合にはギザギザ感を低減させる「ボカシフィルタ(低域通過フィルタ)」を俯瞰変換部の後段に用いられている。
【0015】
しかし、このボカシフィルタは、広範囲の画素を使って演算する必要があり、結果としてボケがきつい映像となるものであった。
【0016】
また、バイリニア法を使った場合の楕円8an′′にややギザギザ感は残ってしまう。しかし、バイリニア法を使って得られた画像の楕円8an′′は、図9(b)のニアレストネイバー法により得られた画像の楕円8an′のきついギザギザ感と比較すると、図10(b)に示したようにギザギザ感が減少していることがわかる。しかし、このバイリニア法を使った場合には、楕円8an′′の映像の輪郭(周縁部)にボケが発生するのは避けられない。
【0017】
このバイリニア法を使った場合には、輪郭を強調させる「シャープフィルタ(高域強調フィルタ)」を用いている。
【0018】
しかし、この場合、車両近くの部分は過度に輪郭が強調されて、見難い画像となってしまうために好ましくない。
【0019】
そこで、この発明は、重要な情報を含む車両近辺の映像の画質の劣化を最小限に抑えながら、車両遠方の映像の画質劣化を改善することにより、最適な画像品質を実現することができる車両周辺視認装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するため、この発明は、車両周辺を撮像可能に車両に取り付けられた撮像手段と、前記撮像手段により撮像された映像を俯瞰変換処理して俯瞰画像とする俯瞰変換処理手段と、前記俯瞰変換処理手段により俯瞰変換された俯瞰画像をフィルタ処理する画質改善フィルタと、前記画質改善フィルタによりフィルタ処理された画像を映し出すモニターを備える車両周辺視認装置であって、前記画質改善フィルタは、前記俯瞰画像の画素を車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理の強さを順次大きくするように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この構成によれば、画質改善処理を行うためのフィルタ係数を、処理を行う画面の位置に応じて変化させることにより、変換時に画質劣化が激しい車両遠方の画像に強いフィルタ効果を、画質劣化が少ない車両近くの画像に弱いフィルタ効果をかける。
【0022】
このように重要な情報を含む車両近辺の映像の画質の劣化を最小限に抑えながら、車両遠方の映像の画質劣化を改善することにより、最適な画像品質を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、この発明に係る車両周辺視認装置のブロック図である。この図1において、カメラ(広角カメラ)10は、車両後方を撮像するように、図示しないトランク先端の車幅方向中央部やナンバープレート照明位置などの車両後端に取り付けられている。
【0025】
図2(a)は、カメラ10で撮像された車両後部周辺の映像10aを示したものである。この映像10aにおいて、縦ラインL1,L2及び横ラインL3は駐車スペースNO.3を設定するために設けられたものである。この縦ラインL1,L2は実際には平行に設けられている。しかし、広角のカメラ10で撮像された映像10aでは、駐車スペースNO.3を設定している縦ラインL1,L2の間隔が上端(車両から離れた部分)に向かうに従って狭くなると共に、縦ラインL1,L2自体がカメラ10の図示しない広角レンズの歪曲収差のために湾曲している。
【0026】
また、カメラ10で撮像された映像信号は俯瞰変換手段である俯瞰変換装置(俯瞰変換処理回路)11に入力される。この俯瞰変換装置11は、カメラ10で撮像された車両後方周辺の映像10a[図2(a)参照]の縦ラインL1,L2が図2(b)の縦ラインL1′,L2′で示したように平行となるような俯瞰処理をするようになっている。この図2(b)は、俯瞰処理された俯瞰画像10bを示したものである。
【0027】
そして、この俯瞰変換装置11で俯瞰処理された俯瞰画像10bは画質改善フィルタ12に入力され、この画質改善フィルタ12で画質を改善した画像が表示手段であるナビゲーション等のモニター(表示装置)13に入力されて映し出されるようになっている。
【0028】
ここで、図2(b)の俯瞰画像10bの左上端を原点とし、この原点から俯瞰画像10bの横方向の画素位置をi、原点から縦方向の画素位置をjとすると、図2(b)の最下部のVertが画素位置jの値の一つの有効画像縦方向ライン位置となる。尚、俯瞰画像10bの最下部には車両の後端を表すイラストをインポーズする場合が多いので、俯瞰画像10bの最下部の部分はカメラ10で実際に得られる映像の最下端部とは必ずしも一致しない。図2(b)の俯瞰画像10bの最下端部には、マスク処理部10cが設けられている。
【0029】
この俯瞰画像10bの画質は、図3に示したように、映像下部(俯瞰画像10bの下部、即ち車両近辺)が良好で、映像上部(俯瞰画像10bの上部、即ち車両遠方)が悪い。また、俯瞰画像10bの重要度は、図3に示したように、映像下部(俯瞰画像10bの下部、即ち車両近辺)が重く、映像上部(俯瞰画像10bの上部、即ち車両遠方)が軽い。これは、車両近辺の画像を視認しながら駐車のためのハンドル操作を行うことが普通であるからである。
【0030】
従って、俯瞰画像10bのうち車両近辺の画質の良好な部分はフィルタ処理を弱くし、俯瞰画像10bのうち車両遠方の画質の悪い部分はフィルタ処理を強くすると良い。即ち、俯瞰画像10bのフィルタ処理は車両遠方に向かうに従って徐々に強くして行くのが望ましい。
【0031】
この補間処理の画質改善フィルタ12としては、ニアレストネイバー法を用いた場合にはボカシフィルタを使用することができ、又はバイリニア法を用いた場合にはシャープフィルタを使用することができる。
【0032】
図4は、俯瞰処理した俯瞰画像10bの上下(カメラ撮影の遠方・近辺)の部分を画質改善フィルタ12でフィルタ処理する場合において、画質改善フィルタ12としてニアレストネイバー法による補間処理の俯瞰画像10bに対してボカシフィルタを用いた例を示したものである。
【0033】
この図4のボカシフィルタにおいて、俯瞰画像10bを構成する画素(i,j)のうち注目画素P(i,j)をフィルタ処理する場合、例えば注目画素P(i,j)に対して縦横に一つ間隔を置いた菱形状の周囲画素P1〜P8を抽出して、注目画素P(i,j)と周囲画素P1〜P8の合計が1となるようなフィルタの係数a,b,cを設定する。図4では、フィルタの係数a,b,cは、
a=32−4×(b+c) 式(1)
b=2×c 式(2)
c=2−(2×j/vert) 式(3)
に設定される。しかも、例えば係数a,b,cは、
(a)画像最上部では、a=8、b=4、 c=2
(b)有効画像最下部Vertでは、a=32、b=c=0
に設定する。尚、画像最上部と有効画像最下部Vertとの間は、有効画像最下部Vert(車両近辺)から画像最上部(車両遠方)に向かうに従って徐々に係数a,b,cを大きくなるように変化させることにより、画像最上部(車両遠方)に向かうに従って徐々にフィルタ処理の強さを大きくするようになっている。
【0034】
これにより、俯瞰画像10bの上部では大きな拡大率の為に発生したギザギザ感を減少させるために大きなボカシ効果が得られるフィルタ係数となる。しかも、俯瞰画像10bの下部に向かうに従ってフィルタの効果が次第(徐々に)に弱くなり、即ち拡大率が小さく(縮小の場合もある)なるに従ってギザギザ感が更に少なくなる。そして、俯瞰画像10bの下部の車両近辺ではギザギザ感が殆ど発生しないので、俯瞰画像10bの下部の劣化も少ない。また、有効画像最下部Vertでは ボカシ効果 がゼロとなる。これにより、俯瞰画像10bのうち重要な情報を含む車両近辺の画質を不要なボカシによって劣化させることなく画像全体の画質を最適化する事が出来るようになっている。
【0035】
図5は、俯瞰処理した俯瞰画像10bの上下(カメラ撮影の遠方・近辺)の部分を画質改善フィルタ12でフィルタ処理する場合において、画質改善フィルタ12としてバイリニア法による補間処理の俯瞰画像10bに対してシャープフィルタを用いた例を示したものである。
【0036】
この図5のシャープフィルタにおいて、俯瞰画像10bを構成する画素(i,j)のうち注目画素P(i,j)をフィルタ処理する場合、例えば注目画素P(i,j)に対して周囲画素P1〜P8を抽出して、注目画素P(i,j)と周囲画素P1〜P8の合計が1となるようなフィルタの係数a,b,cを設定する。図5では、フィルタの係数a,b,cは、
a=16−4×(b+c) 式(1)
b=2×c 式(2)
c=1−(j/vert) 式(3)
に設定されている。しかも、例えば係数a,b,cは、
(c)画像最上部では、a=4、b=2、 c=1
(d)有効画像最下部では、a=8、b=c=0
に設定されている。
【0037】
これにより、俯瞰画像10bの上部(車両遠方)では大きな拡大率の為に発生したボケ感を減少させるために大きなシャープ効果が得られるフィルタ係数となる。俯瞰画像10bの下部(車両近辺)になるに従って次第にフィルタの効果が弱くなり、即ち拡大率が小さく(縮小の場合もある)なるに従ってボケ感が少なくなる。そして、俯瞰画像10bの劣化も少ない有効画像最下部Vertでは 、シャープ効果がゼロとなる。これにより、重要な情報を含む車両近辺の画質を不要なエッジ強調により劣化させることなく画像全体の画質を最適化する事が出来る。
[作用]
次に、このような構成の車両周辺視認装置の作用を図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
例えば、車両の変速装置がリバース(バック)の位置にシフト操作されたときに、図1のカメラ10の電源がONさせられて、カメラ10の映像信号が俯瞰変換装置11に動画として入力される。この俯瞰変換装置11は、カメラ10の映像信号に基づいて各フレームの画像を俯瞰処理して、この俯瞰処理した画像を画質改善フィルタ12に順次入力する。
【0039】
例えば、車両が駐車場において、変速装置がリバース(バック)の位置にシフト操作されたときには、図2(a)のような映像10aの映像信号がカメラ10から出力されて、この映像信号が俯瞰変換装置11に入力される。そして、俯瞰変換装置11は、図2(a)の映像10aを図2(b)の俯瞰画像10bのように俯瞰変換処理をして図1の画質改善フィルタ12に入力する。
【0040】
この画質改善フィルタ12は、俯瞰変換装置11からの画像が入力されると、図6のフローチャートの処理が開始し、ステップS1の処理画素の取り込みを開始する。
ステップS1
このステップS1の処理画素の取り込みでは、俯瞰変換装置11で俯瞰変換された俯瞰画像10bの中から注目画素P(i,j)を取り込んでステップS2〜ステップS4に移行する。
ステップS2
このステップS2では、注目画素P(i,j)の位置の取り込みをして、ステップS5のフィルタ処理計数の決定を実行し、ステップS4に移行する。
ステップS3
このステップS3では、注目画素P(i,j)の周囲画素P1〜P8の取り込みを実行して、ステップS4にに移行する。
ステップS4
このステップS4では、画質改善フィルタ12によるフィルタ処理のための演算処理が実行され、終了する。この画質改善フィルタ12によるフィルタ処理は、図4のボカシフィルタ又は図5のシャープフィルタを用いて実行される。
【0041】
この際、画質改善フィルタ12に図4のボカシフィルタを用いた場合には、俯瞰画像10bの上部では大きな拡大率の為に発生したギザギザ感を減少させるために大きなボカシ効果が得られるフィルタ係数となる。しかも、俯瞰画像10bの下部に向かうに従ってフィルタの効果が次第(徐々に)に弱くなり、即ち拡大率が小さく(縮小の場合もある)なるに従ってギザギザ感が更に少なくなる。そして、俯瞰画像10bの下部の車両近辺ではギザギザ感が殆ど発生しないので、俯瞰画像10bの下部の劣化も少ない。また、有効画像最下部Vertでは ボカシ効果 がゼロとなる。これにより、俯瞰画像10bは、重要な情報を含む車両近辺の画質を不要なボカシによって劣化させることなく画像全体の画質を最適化されて、モニター13に映し出される。運転者は、このモニター13に映し出される画像を視認しながら、車両を後退操作して、所定の駐車スペース(図2(a)ではNO.3)に駐車する。
【0042】
また、画質改善フィルタ12に図5のシャープフィルタを用いた場合には、俯瞰画像10bの上部(車両遠方)では大きな拡大率の為に発生したボケ感を減少させるために大きなシャープ効果が得られるフィルタ係数となる。俯瞰画像10bの下部(車両近辺)になるに従って次第にフィルタの効果が弱くなり、即ち拡大率が小さく(縮小の場合もある)なるに従ってボケ感が少なくなる。そして、俯瞰画像10bの劣化も少ない有効画像最下部Vertでは 、シャープ効果がゼロとなる。これにより、重要な情報を含む車両近辺の画質を不要なエッジ強調により劣化させることなく画像全体の画質を最適化されて、モニター13に映し出される。運転者は、このモニター13に映し出される画像を視認しながら、車両を後退操作して、所定の駐車スペース(図2(a)ではNO.3)に駐車する。
【0043】
尚、俯瞰変換装置11はカメラ10から出力される動画像の各フレーム毎に画像俯瞰変換処理して画質改善フィルタ12に入力し、この画質改善フィルタ12は各フレーム毎にステップS1〜4の処理を実行して、フィルタ処理がなされた画像がモニター13に順次映し出される。これにより。運転者は、フィルタ処理がなされた動画像をモニター13により視認しながら、車両の後退操作を行うことができる。
【0044】
また、ここまで、カメラ画像の俯瞰変換として画像上部を車両遠方、画像下部を車両近辺の例を説明したが、車両からの距離を画面左右に対応した俯瞰変換の場合でも適用可能である。この場合には、画像の座標軸変数 jの値である有効画像最下部に対応する変数 vertの代わりに画像の座標軸変数 iの値とすればよい。また、発明の範囲はフィルタのオペレータ係数の配置や画像各部における係数によって限定されるものではない(係数が変化する事が重要である)。
【0045】
以上説明したように、この発明の実施の形態の車両周辺視認装置は、車両周辺を撮像可能に車両に取り付けられた撮像手段(カメラ10)と、前記撮像手段(カメラ10)により撮像された映像(10a)を俯瞰変換処理して俯瞰画像(10b)とする俯瞰変換処理手段(俯瞰変換装置11)と、前記俯瞰変換処理手段(俯瞰変換装置11)により俯瞰変換された俯瞰画像(10b)をフィルタ処理する画質改善フィルタ(12)と、前記画質改善フィルタ(12)によりフィルタ処理された画像を映し出すモニター(13)を備えている。しかも、前記画質改善フィルタ(12)は、前記俯瞰画像(10b)の画素を車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理の強さを順次大きくするように設定されている。
【0046】
この構成によれば、画質改善処理を行うためのフィルタ係数を、処理を行う画面の位置に応じて変化させることにより、変換時に画質劣化が激しい車両遠方の画像に強いフィルタ効果を、画質劣化が少ない車両近くの画像に弱いフィルタ効果をかけることができる。このように重要な情報を含む車両近辺の画質の劣化を最小限に押さえながら、車両遠方の画質劣化を改善することにより、最適な画像品質を実現することができる。
【0047】
また、この発明の実施の形態の車両周辺視認装置において、前記画質改善フィルタ(12)は、前記俯瞰変換処理手段(俯瞰変換装置11)によりニアレストネイバー法で俯瞰変換された俯瞰画像(10b)をボカすフィルタ処理をすると共に、前記俯瞰画像(10b)の画素を車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理のボカシ程度を順次大きくするボカシフィルタとしている。
【0048】
この構成によれば、俯瞰画像10bは、重要な情報を含む車両近辺の画質を不要なボカシによって劣化させることなく画像全体の画質を最適化されて、モニター13に映し出される。
【0049】
更に、この発明の実施の形態の車両周辺視認装置において、前記画質改善フィルタ(12)は、前記俯瞰変換処理手段(俯瞰変換装置11)によりバイリニア法で俯瞰変換された俯瞰画像(10b)のエッジを強調するフィルタ処理をすると共に、前記俯瞰画像(10b)の画素を車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理の強調程度を順次大きくするシャープフィルタとしている。
【0050】
この構成によれば、重要な情報を含む車両近辺の画質を不要なエッジ強調により劣化させることなく画像全体の画質を最適化されて、モニター13に映し出される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明に係る車両周辺視認装置のブロック図である。
【図2】(a)は図1の車両周辺視認装置の撮像手段により得られた車両周辺の映像の一例を示す説明図、(b)は(a)の映像を俯瞰処理装置により俯瞰処理した後の説明図である。
【図3】この発明に係る車両周辺の映像の重要度及び画質の良否の説明図である。
【図4】この発明に係る画質改善フィルタの一例を示す説明図である。
【図5】この発明に係る画質改善フィルタの他の例を示す説明図である。
【図6】図1の画質改善フィルタの処理状況を説明するためのフローチャートである。
【図7】(a)は従来の車両周辺視認装置の撮像手段により得られた車両周辺の映像の一例を示す説明図、(b)は(a)の映像を俯瞰処理装置により俯瞰処理した後の説明図である。
【図8】(a)は従来の車両周辺視認装置の撮像手段により得られた映像の一例を示す説明図、(b)は(a)の映像を俯瞰処理装置により俯瞰処理した後の説明図である。
【図9】(a)は図8(a)の映像の一部を拡大して示した説明図、(b)は(a)の映像をニアレストネイバー法を用いて俯瞰処理した後の説明図である。
【図10】(a)は図9(a)の映像の一部と同じ説明図、(b)は(a)の映像をバイリニア法を用いて俯瞰処理した後の説明図である。
【符号の説明】
【0052】
10…カメラ(撮像手段)
10a…映像
10b…俯瞰画像
11…俯瞰変換装置(俯瞰変換処理手段)
12…画質改善フィルタ
13…モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を撮像可能に車両に取り付けられた撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された映像を俯瞰変換処理して俯瞰画像とする俯瞰変換処理手段と、
前記俯瞰変換処理手段により俯瞰変換された俯瞰画像をフィルタ処理する画質改善フィルタと、前記画質改善フィルタによりフィルタ処理された画像を映し出すモニターを備える車両周辺視認装置であって、
前記画質改善フィルタは、前記俯瞰画像の画素を車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理の強さを順次大きくするように設定されていることを特徴とする車両周辺視認装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両周辺視認装置において、前記画質改善フィルタは、前記俯瞰変換処理手段により最近傍補間法で俯瞰変換された俯瞰画像をボカすフィルタ処理をすると共に、車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理のボカシ程度を順次大きくするボカシフィルタであることを特徴とする車両周辺視認装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両周辺視認装置において、前記画質改善フィルタは、前記俯瞰変換処理手段により線形補間法で俯瞰変換された俯瞰画像のエッジを強調するフィルタ処理をすると共に、車両近辺から車両遠方に向かうに従ってフィルタ処理の強調程度を順次大きくするシャープフィルタであることを特徴とする車両周辺視認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−249392(P2007−249392A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69446(P2006−69446)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】