説明

車両周辺障害物検出装置

【課題】障害物を検出する各センサにおいて、障害物検出処理が困難な環境条件に対して適合的に調整を行い、安定性の高い障害物の検出を実現する。
【解決手段】処理パラメータを参照して、超音波により障害物のセンシングを行う超音波センサ101と、処理パラメータを参照して、センサ出力値に基づいて障害物の情報を検出する超音波信号処理部102と、処理パラメータを参照して、障害物の映像を撮影するカメラ103と、処理パラメータを参照して、撮影された映像に基づいて障害物の情報を検出する映像処理部104と、超音波信号処理部102により検出された障害物の情報と映像処理部104により検出された障害物の情報とを統合して映像を生成する障害物統合検出部105と、生成された映像を表示する表示装置106と、障害物の情報に基づいて、処理パラメータを調整するパラメータ調整部109とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、超音波センサおよびカメラの2種類のセンサを備えた車両に関し、両センサによる障害物検出処理結果に基づいて、各センサの障害物検出処理に用いる処理パラメータを自動調整する車両周辺障害物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両周辺の障害物を自動的に検出する手段として、カメラにより撮影した映像を用いて障害物を検出する手段が存在する。しかし、カメラを用いた障害物の検出処理では、逆光や夜間等の影響により誤検出や検出漏れが生じる。そのため、逆行や夜間などの影響を受けない超音波センサを用いた障害物検出処理とカメラを用いた障害物検出処理を併用した車両周辺障害物検出装置が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される車両周辺障害物検出装置では、駐車場に車両を停止するためギアをバックに入れた際に、後方の映像を撮影するCCDカメラと、同時に後方を超音波によりセンシングする超音波センサとが車両後方に設置されている。
【0004】
このCCDカメラにより撮影された映像は画像障害物検出部に送られ、この映像を画像処理して障害物を検出する。また、超音波センサによる出力結果は超音波障害物検出部に送られ、この出力結果を処理することで障害物を検出する。
【0005】
この画像障害物検出部および超音波障害物検出部による障害物の検出結果は画像処理・制御部に送られる。この画像処理・制御部では、少なくともどちらか一方の手段で障害物が検出された場合、CCDカメラにより撮影された映像上に検出された障害物の箇所を特定できるマークを重畳表示した映像を作成する。この画像処理・制御部により作成された映像はモニタに表示され、運転者に車両後方の障害物に関する警告を与える。
また、画像処理・制御部は、検出した障害物を拡大表示するようCCDカメラを制御して、その拡大映像をモニタに表示することも可能である。これにより運転者は障害物の内容を目視で確認することができる。
【0006】
上記のように特許文献1に開示される車両周辺障害物検出装置では、画像障害物検出部と超音波障害物検出部のどちらか一方で障害物が検出された場合に、これを運転者に提示する。そのため、CCDカメラを用いた障害物検出処理が困難である逆行や夜間の状態においても、障害物の検出漏れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−29345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される車両周辺障害物検出装置では、CCDカメラを用いた障害物検出処理が困難である逆光や夜間などの悪条件に対処するため、特性の異なる超音波センサを併用することにより、障害物の検出漏れを救済する方式が述べられている。しかしながら、超音波センサにおいても、障害物検出処理が困難である環境が存在する。
【0009】
例えば、超音波センサでは、強い雪などの悪天候時に超音波が空気中で乱反射するため障害物の検出が困難となる。その他にも、豪雨/濃霧/高温時/極寒時/傾斜した路面/フェンス/金網などの環境では検出漏れや検出誤りが発生することが知られている。
【0010】
このため、CCDカメラと超音波センサを単純に併用しても、障害物検出処理が困難な状態が存在するという課題がある。
また、各センサによる障害物検出処理自体は、特に処理内容が変更されるわけではなく、例えば悪条件に適応させることで、障害物検出処理の精度を向上させるものではない。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、障害物を検出する各センサにおいて、障害物検出処理が困難な環境条件に対して適合的に調整が行われ、安定性の高い障害物の検出を実現することができる車両周辺障害物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る車両周辺障害物検出装置は、超音波センサパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、超音波により障害物のセンシングを行う超音波センサと、超音波センサパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、超音波センサによるセンサ出力値に基づいて障害物の情報を検出する超音波信号処理部と、カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、障害物の映像を撮影するカメラと、カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、カメラにより撮影された映像に基づいて障害物の情報を検出する映像処理部と、超音波信号処理部により検出された障害物の情報と映像処理部により検出された障害物の情報とを統合して映像を生成する障害物統合検出部と、障害物統合検出部により生成された映像を表示する表示装置と、超音波信号処理部および映像処理部により検出された障害物の情報に基づいて、超音波センサパラメータテーブルまたはカメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを調整するパラメータ調整部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、上記のように構成したので、超音波センサとカメラを用いた両方の障害物検出結果を基に、超音波センサやカメラ、および後段の超音波信号処理部や映像処理部の処理パラメータを自動調整することで、障害物を検出する各センサにおいて、障害物検出が困難な環境条件に対して適合的に調整が行われ、安定性の高い障害物の検出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における超音波センサとカメラの車両への取り付け例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1における良好な条件下での障害物検出結果例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における雪が降っている場合のパラメータ調整前の障害物検出結果例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における雪が降っている場合のパラメータ調整後の障害物検出結果例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における照明が暗い場合のパラメータ調整前の障害物検出結果例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1における照明が暗い場合のパラメータ調整後の障害物検出結果例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるパラメータ調整前の障害物検出結果例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2におけるパラメータ調整後の障害物検出結果例を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3における検出困難状況の障害物検出結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の構成を示すブロック図である。
車両周辺障害物検出装置は、図1に示すように、超音波センサ101、超音波信号処理部102、カメラ103、映像処理部104、障害物統合検出部105、表示装置106、超音波センサパラメータテーブル107、カメラパラメータテーブル108およびパラメータ調整部109から構成される。
【0016】
超音波センサ101は、超音波センサパラメータテーブル107に記載された処理パラメータを参照しながら、超音波により障害物のセンシングを行うものである。図2では、4個の超音波センサ101を車両後方に取り付けた場合を示し、各超音波センサ101のセンシング領域201を示している。この超音波センサ101では、超音波を出射して、障害物からの反射波を入射する。
この超音波センサ101によるセンサ出力値(反射波の強度)を示すセンサ出力情報は超音波信号処理部102に送られる。
【0017】
超音波信号処理部102は、超音波センサパラメータテーブル107に記載された処理パラメータを参照しながら、超音波センサ101によるセンサ出力値に基づいて障害物の有無を検出するものである。
また、超音波信号処理部102は、障害物を検出した際には、この超音波センサ101のセンシング領域201および測定した障害物までの距離に基づいて、この障害物の領域を特定する。この超音波信号処理部102により特定された障害物の領域を示す障害物情報は障害物統合検出部105に送られる。
【0018】
カメラ103は、カメラパラメータテーブル108に記載された処理パラメータを参照しながら、障害物の映像を撮影するものである。図2では、1個のカメラ103が車両後方に取り付けられた場合を示し、このカメラの視野領域202を示している。
このカメラ103により撮影された映像は映像処理部104および障害物統合検出部105に送られる。
【0019】
映像処理部104は、カメラパラメータテーブル108に記載された処理パラメータを参照しながら、カメラ103による映像を解析して障害物の有無を検出するものである。
また、映像処理部104は、障害物を検出した際には、障害物の領域を特定する。この映像処理部104により特定された障害物の領域を示す障害物情報は障害物統合検出部105に送られる。
【0020】
障害物統合検出部105は、超音波信号処理部102と映像処理部104による障害物情報を統合して、この障害物の領域を特定するマークをカメラ103により撮影された映像上に重畳表示した映像を生成するものである。この障害物統合検出部105により生成された映像は表示装置106に送られる。また、障害物統合検出部105に送られた障害物情報はパラメータ調整部109に送られる。
表示装置106は、障害物統合検出部105により生成された映像を表示するものである。
【0021】
超音波センサパラメータテーブル107は、超音波センサ101や超音波信号処理部102が処理を行う際に参照する処理パラメータを保持するものである。この超音波センサパラメータテーブル107には、例えば、超音波信号処理部102において障害物検出を行う際に用いる判定閾値や、超音波センサ101のセンシング領域201の形状を決める制御パラメータの値が記載されている。
【0022】
カメラパラメータテーブル108は、カメラ103や映像処理部104が処理を行う際に参照する処理パラメータを保持するものである。カメラパラメータテーブル108には、例えば、カメラ103の感度や、映像処理部104において障害物検出を行う際に用いる画像処理に関するパラメータ類(エッジ抽出処理のパラメータや、2値化処理の閾値等)が記載されている。
【0023】
パラメータ調整部109は、障害物統合検出部105に送られた各センサによる障害物情報に基づいて、超音波センサパラメータテーブル107とカメラパラメータテーブル108に記載された処理パラメータを調整するものである。
【0024】
次に、上記のように構成された車両周辺障害物検出装置の動作について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の動作を示すフローチャートである。また、図4はこの発明の実施の形態1において良好な条件下での障害物検出結果例を示す図である。
図4において、符号401はカメラ103で撮影した映像、符号402は超音波センサ101のセンサ出力値、符号403は判定閾値、符号404は超音波センサ101による障害物の領域、符号405はカメラ103による障害物の領域を示している。
【0025】
車両周辺障害物装置の動作では、図3に示すように、車両がバックして駐車を行う際に、超音波センサ101は、超音波センサパラメータテーブル107に記載された処理パラメータを参照しながら、超音波により車両後方の障害物をセンシングする(ステップST31)。ここで、図4に示すように、超音波センサ101のセンシング領域201に障害物が存在する場合にはセンサ出力値(反射波の強度)402は高くなる。この超音波センサ101によるセンサ出力値を示すセンサ出力情報は超音波信号処理部102に送られる。
【0026】
次いで、超音波信号処理部102は、超音波センサパラメータテーブル107に記載された処理パラメータを参照しながら、超音波センサ101によるセンサ出力値に基づいて障害物の有無を検出する(ステップST32)。ここで、図4に示すように、超音波信号処理部102では、超音波センサ101によるセンサ出力値402が判定閾値403を超えた場合には、その超音波センサ101のセンシング方向に障害物が存在していると判定する。
【0027】
このステップST32において、超音波信号処理部102は、障害物が存在していると判定した場合には、次いで、その障害物の領域を特定する(ステップST33)。ここで、図4に示すように、例えば、中央2つの超音波センサ101のセンサ出力値402が判定閾値403を超えている場合には、これらのセンシング領域201上に障害物があることが分かる。また、超音波センサ101では、障害物までの距離を測定することができる。そのため、超音波信号処理部102は、この障害物までの距離と障害物が検出された超音波センサ101のセンシング領域201の大きさを基に、障害物の領域404を特定することができる。
この超音波信号処理部102により特定された障害物の領域404を示す障害物情報は障害物統合検出部105に送られる。
【0028】
一方、カメラ103は、カメラパラメータテーブル108に記載された処理パラメータを参照しながら、車両後方の障害物の映像を撮影する(ステップST34)。このカメラ103により撮影された映像は映像処理部104および障害物統合検出部105に送られる。
【0029】
次いで、映像処理部104は、カメラパラメータテーブル108に記載された処理パラメータを参照しながら、カメラ103による映像を解析して障害物の有無を検出する(ステップST35)。なお、この映像処理部104では、例えば、背景映像と現在の映像との差分をとる等の既存手法を用いることで、映像中に存在する障害物を検出する。
【0030】
このステップST35において、映像処理部104は、障害物が存在していると判定した場合には、次いで、その障害物の領域を特定する(ステップST36)。ここで、図4に示すように、映像処理部104は、映像を画像処理することによって、障害物の領域405を特定する。この映像処理部104により特定された障害物の領域405を示す障害物情報は障害物統合検出部105に送られる。
【0031】
次いで、障害物統合検出部105は、超音波信号処理部102と映像処理部104による障害物情報を統合して、この障害物の領域を特定するマークをカメラ103により撮影された映像上に重畳表示して映像を生成する(ステップST37)。ここで、障害物統合検出部105は、図4に示すように、カメラ103により撮影された映像上の、超音波信号処理部102により特定された障害物の領域404を実線で囲み、映像処理部104により特定された障害物の領域405を点線で囲むことによって、障害物の領域をマークした映像401を生成する。
この障害物統合検出部105により生成された映像401は、表示装置106に送られて表示されることによって、運転者に提示される。
また、障害物統合検出部105に送られた超音波信号処理部102および映像処理部104による障害物情報はパラメータ調整部109に送られる。
【0032】
次いで、パラメータ調整部109は、障害物統合検出部105から送られた各センサによる障害物情報に基づいて、超音波センサパラメータテーブル107とカメラパラメータテーブル108に記載された処理パラメータを調整する(ステップST38)。
以下では、このパラメータ調整部109によるパラメータ調整について説明する。
【0033】
まず、超音波信号処理部102による障害物検出処理が困難な条件下でのパラメータ調整部109によるパラメータ調整について説明する。
図5はこの発明の実施の形態1における雪が降っている場合のパラメータ調整前の障害物検出結果例を示す図である。また、図6はこの発明の実施の形態1における雪が降っている場合のパラメータ調整後の障害物検出結果例を示す図である。
図5において、符号501はカメラ103で撮影した映像、符号502は超音波センサ101のセンサ出力値、符号503は判定閾値、符号504は映像処理部104による障害物の領域を示している。
図6において、符号601はカメラ103で撮影した映像、符号602は超音波センサ101のセンサ出力値、符号603は判定閾値、符号604は超音波信号処理部102による障害物の領域、符号605は映像処理部104による障害物の領域を示している。
【0034】
図5に示すように、強い雪が降っている悪天候下の場合、映像処理部104による障害物検出処理では、カメラ103により撮影された映像中に障害物が映っていれば、画像処理的な手法により障害物の領域504を特定することができる。
一方、超音波信号処理部102による障害物検出処理では、超音波が雪で乱反射するため反射波の強度502が弱まり、判定閾値503を超えなくなる。そのため、超音波センサ101では障害物を検出することができない。
【0035】
この場合、どちらか一方の手段により障害物が検出できれば運転者に警告することは可能である。しかしながら、このまま雪の降る悪天候下を移動して暗い場所に入った場合には、カメラ103でも障害物を検出することができなくなるため、障害物が全く検出できなくなる恐れがある。
【0036】
このように、映像処理部104からは障害物が検出されているが超音波信号処理部102からは障害物が検出されない場合、パラメータ調整部109は、超音波センサパラメータテーブル107の内容を更新する。これにより、超音波信号処理部102による障害物検出処理を悪条件下でも行えるように自動適合させる。
【0037】
例えば、図6に示すように、パラメータ調整部109は超音波センサパラメータテーブル107内の判定閾値603の値を低くする。これにより超音波センサ101によるセンサ出力値602が判定閾値603を超えることができる。そのため、超音波信号処理部102は障害物の領域604を特定することができる。
【0038】
その結果、図6に示すように、カメラ103により撮影された映像601上に、超音波信号処理部102による障害物の領域604と映像処理部104による障害物の領域605を強調表示した映像を運転者に提示することができる。
以降の運転中は、この処理パラメータの値を利用することで雪の降る悪天候下を移動して暗い場所に入った場合でも、障害物が検出可能となる。
【0039】
次に、映像処理部104による障害物検出が困難な条件下でのパラメータ調整部109によるパラメータ調整について説明する。
図7はこの発明の実施の形態1における照明が暗い場合のパラメータ調整前の障害物検出結果例を示す図である。また、図8はこの発明の実施の形態1における照明が暗い場合のパラメータ調整後の障害物検出結果例を示す図である。
図7において、符号701はカメラ103で撮影した映像、符号702は超音波センサ101のセンサ出力値、符号703は判定閾値、符号704は超音波信号処理部102による障害物の領域を示している。
図8において、符号801はカメラ103で撮影した映像、符号802は超音波信号処理部102による障害物の領域、符号803は映像処理部104による障害物の領域を示している。
【0040】
図7に示すように、夕暮れ時の暗い環境下の場合、超音波信号処理部102による障害物検出処理では、超音波は影響をうけることはないため、障害物が存在する場合には超音波センサ101によるセンサ出力値702が判定閾値703を超える。これにより、超音波信号処理部102は、障害物の領域704を特定することができる。
一方、映像処理部104による障害物検出処理では、カメラ103により撮影された映像が暗くて障害物と背景の分離が困難となるため、障害物を検出できない。
【0041】
この場合、どちらか一方の手段により障害物が検出できれば運転者に警告することは可能である。しかしながら、この暗い環境下を走行して超音波センサ101が正しく動作しない状況(近くの駐車場や踏み切りに別の超音波センサが存在する等)に出くわした場合には、超音波センサ101でも障害物を検出することができなくなるため、障害物が全く検出できなくなる恐れがある。
【0042】
このように、超音波信号処理部102からは障害物が検出されているが映像処理部104からは障害物が検出されない場合、パラメータ調整部109は、カメラパラメータテーブル108の内容を更新する。これにより、映像処理部104による障害物検出処理を悪条件下でも行えるように自動適合させる。
【0043】
例えば、図8に示すように、パラメータ調整部109は、カメラパラメータテーブル108内のカメラ103の感度を高め、かつ障害物が検出しやすいようにエッジ抽出処理等のパラメータを修正する。これにより映像処理部104は、カメラ103により撮影された映像中から障害物の領域803を特定することができる。
【0044】
その結果、図8に示すように、カメラ103により撮影された映像801上に、超音波信号処理部102による障害物の領域802と映像処理部104による障害物の領域803を強調表示した映像を運転者に提示することができる。
以降の運転中は、このパラメータの値を利用することで夕暮れ時の暗い環境下を移動して雪の降り出した場合でも、障害物が検出可能となる。
【0045】
以上のように、この実施の形態1によれば、超音波信号処理部102と映像処理部104による障害物情報を基に、超音波センサ101やカメラ103、および超音波信号処理部102や映像処理部104のパラメータ値を自動調整するように構成したので、超音波信号処理部102または映像処理部104による障害物検出処理が困難である条件化に対しても、適合的に処理パラメータの調整が行うことができるため、安定性の高い障害物の検出を実現することができる。
【0046】
なお、この実施の形態1におけるパラメータ調整部109では、超音波センサパラメータテーブル107内のパラメータ調整において、判定閾値を変更する場合について説明したが、これに限るものではなく、超音波センサ101の出力を上げたり、指向性を変える等の操作を行っても良い。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態1では、どちらか一方の障害物検出処理でのみ障害物が検出された場合のパラメータ調整について説明したが、実施の形態2では、検出された領域や個数等の情報を用いて自動的に処理パラメータを調整するものについて示す。
なお、この実施の形態2に係る車両周辺障害物検出装置の構成は、図1に示す実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の構成と同様であるため、以下図1を参照しながら説明を行う。
【0048】
また、実施の形態2に係る車両周辺障害物検出装置の動作は、パラメータ調整部109の内部処理を除き、図3に示す実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の動作と同じである。以下では、パラメータ調整部109によるパラメータ調整について説明する。
【0049】
ここで、パラメータ調整部109は、超音波信号処理部102による障害物領域と映像処理部104による障害物領域の重複度合いを示す評価値Dを計算し、その評価値Dが大きくなるようにパラメータ値を自動調整する。例えば、評価値Dとして下記に示す式(1)を用いる。
評価値D=(Area(超音波)∩Area(カメラ))/(Area(超音波)∪Area(カメラ))+f(カメラから検出された障害物領域数,超音波で検出された障害物領域数) (1)
【0050】
式(1)において、Area(X)は、障害物検出処理部X(超音波信号処理部102または映像処理部104)により特定された障害物領域の映像上での領域を表す。また、(Area(超音波)∩Area(カメラ))は2つの領域が重なった部分の面積を示す。(Area(超音波)∪Area(カメラ))は2つの領域のカバーする領域(重ならない部分+重なった部分)の面積を示す。またfは評価関数であり、例えば映像処理部104により検出された障害物領域数と超音波信号処理部102により検出された障害物領域数に差異がある場合には小さい値を示し、同数である場合には大きい値を示す。これにより、超音波センサ101とカメラ103を用いた場合の障害物検出結果の一致性が低いほど、評価値Dの値は小さくなる。
【0051】
次に、具体的な図を参照しながらパラメータ調整部109によるパラメータ調整について説明する。
図9はこの発明の実施の形態2におけるパラメータ調整前の障害物検出結果例を示す図である。また、図10はこの発明の実施の形態2におけるパラメータ調整後の障害物検出結果例を示す図である。
図9において、符号901はカメラ103で撮影した映像、符号902は超音波センサ101のセンサ出力値、符号903は判定閾値、符号904は超音波信号処理部102による障害物の領域、符号905は映像処理部104による障害物の領域、符号906は両手段による障害物領域の重なり領域を示している。
図10において、符号1001はカメラ103で撮影した映像、符号1002は超音波センサ101のセンサ出力値、符号1003は判定閾値、符号1004は超音波信号処理部102による障害物の領域、符号1005は映像処理部104による障害物の領域、符号1006は両手段による障害物領域の重なり領域を示している。
【0052】
図9に示す場合では、超音波信号処理部102による障害物検出処理では、雪による超音波の乱反射の影響のため、一部の障害物のみ(人間)しか検出することができず、障害物の領域904が実際の障害物領域より小さく特定される。
一方、カメラ103による障害物検出では、暗い照明による影響のため、一部の障害物のみ(障害物の上部)しか検出することができず、障害物の領域905が実際の障害物領域より小さく特定される。
【0053】
この場合、超音波信号処理部102と映像処理部104による2つの障害物領域にはずれが生じているため、重なり領域906の面積は小さくなる。そのため、パラメータ調整部109により算出された評価値Dは小さくなる。
【0054】
このように、評価値Dが小さい場合、パラメータ調整部109は、この評価値Dが大きくなるように、超音波センサパラメータテーブル107およびカメラパラメータテーブル108の内容を更新する。
【0055】
例えば、図10に示すように、パラメータ調整部109は、超音波センサパラメータテーブル107内の判定閾値1003を低くする。これにより超音波センサ101によるセンサ出力値1002が判定閾値1003を超えることができるため、超音波信号処理部102は障害物を適切に包含した領域1004を特定することができる。
【0056】
また、パラメータ調整部109は、カメラパラメータテーブル108内のカメラ103の感度を高め、かつ障害物が検出しやすいようにエッジ抽出処理等のパラメータを修正する。これにより映像処理部104は障害物を適切に包含した領域1005を特定することができる。
【0057】
この場合、超音波信号処理部102と映像処理部104による2つの障害物領域のずれが少なくなるため、重なり領域1005の面積は大きくなる。そのため、パラメータ調整部109により算出された評価値Dは大きくなる。
【0058】
以上のように、この実施の形態2によれば、検出された領域や個数等の情報を用いて評価値Dを定義し、この値が大きくなるように自動的に処理パラメータを調整するように構成したので、多様な悪条件下であっても適切にパラメータ調整を行うことが可能となる。
【0059】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、障害物情報を基に処理パラメータを自動調整して極力、障害物を検出することができるようにしたが、実施の形態3では、障害物が正しく検出できない状況(検出困難状況)であると判定した場合に、その旨を運転者に提示するものについて示す。
なお、この実施の形態3に係る車両周辺障害物検出装置の構成は、図1に示す実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の構成と同様であるため、以下図1を参照しながら説明を行う。
【0060】
図11はこの発明の実施の形態3における検出困難状況の障害物検出結果例を示す図である。
図11において、符号1101はカメラ103で撮影した映像、符号1102は超音波センサ101のセンサ出力値、符号1103は判定閾値、符号1104はフェンス示している。
【0061】
例えば、図11に示すように、車両がバックで駐車する際に障害物としてフェンス1104が存在する場合には、超音波センサ101による出射波はフェンス1104をすり抜けるために、その反射波の強度を示すセンサ出力値1102は全て低い値を示す。そのためセンサ出力値1102が判定閾値1103を超えず、超音波信号処理部102では障害物が検出されない。
【0062】
そこで、映像処理部104は、実施の形態1,2で述べた障害物検出処理機能に加えて、カメラ103により撮影された映像中から、超音波信号処理部102による障害物検出処理が困難である特定パターン(フェンスや金網)を画像処理的に検出する機能を有している。フェンス1104等の直線からなる幾何学的な連続パターンは、画像処理的に検出し易く、直線が等間隔に並んでいるかを検定することにより、比較的安易に実現できる。この映像処理部104により特定のパターンが映像中から検出された場合には、その旨が障害物統合検出部105に送られる。
【0063】
障害物統合検出部105は、実施の形態1,2で述べた映像生成処理機能に加えて、映像処理部104から超音波信号処理部102による障害物検出処理が困難である特定パターンが検出された旨が通知された場合に、超音波信号処理部102による障害物検出処理の動作が補償されない状況であることを運転者に対して表示装置106を介して絵や文字、音声等で通知する機能を有している。
【0064】
同様に、映像処理部104は、カメラ103により撮影された映像中から、映像処理部104による障害物検出処理が困難である特定のパターン(画像中の輝度差が少ない、平均輝度値が標準範囲外)を検出する。この映像処理部104により特定のパターンが検出された場合には、その旨が障害物統合検出部105に送られる。
【0065】
障害物統合検出部105は、映像処理部104から映像処理部104による障害物検出が困難である特定パターンが検出された旨が通知された場合に、映像処理部104による障害物検出の動作が補償されない状況であることを運転者に対して表示装置106を介して絵や文字、音声等で通知する。
【0066】
以上のように、この実施の形態3によれば、超音波信号処理部102や映像処理部104による障害物検出処理が適切に動作しないと判断された状況が見つかった場合、その旨を運転者に対して警告するように構成したので、障害物検出処理の動作が保証されない環境においては、運転者の注意を促して安全に駐車を支援することが可能となる。
【0067】
実施の形態4.
実施の形態3では、超音波信号処理部102や映像処理部104による障害物検出処理が適切に動作しないと判断された状況が見つかった場合、その旨を運転者に対して警告したが、実施の形態4では、実施の形態2に示した評価値Dを用いて、障害物検出処理が適切に動作しているか否かを判定するものについて示す。
なお、この実施の形態4に係る車両周辺障害物検出装置の構成は、図1に示す実施の形態1に係る車両周辺障害物検出装置の構成と同様であるため、以下図1を参照しながら説明を行う。
【0068】
パラメータ調整部109により算出される評価値Dは、超音波信号処理部102や映像処理部104による障害物の領域が一致しない場合は、その値が小さくなる。従って、評価値Dが小さい場合は、何らかの環境要因により障害物検出処理の精度が低下している恐れがある。
【0069】
そこで、パラメータ調整部109は、実施の形態1−3で述べた映像生成処理機能に加えて、評価値Dがある閾値よりも小さい場合には、超音波信号処理部102および映像処理部104による障害物検出処理のうち、少なくとも1つ以上の手段が適切に動作しないと判断し、その旨を障害物統合検出部105に通知する機能を有している。
このパラメータ調整部109からの通知を受けた障害物統合検出部105は、障害物検出処理の動作が保証されない状況であることを運転者に対して表示装置を介して絵や文字、音声等で通知する。
【0070】
以上のように、この実施の形態4によれば、評価値Dの値が閾値より小さい場合には、超音波信号処理部102および映像処理部104による障害物検出処理のうち、少なくとも1つ以上の手段が適切に動作しない状況と判定して、その旨を運転者に対して警告するように構成したので、障害物検出処理の動作が保証されない環境においては、運転者の注意を促して安全に駐車を支援することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
101 超音波センサ、102 超音波信号処理部、103 カメラ、104 映像処理部、105 障害物統合検出部、106 表示装置、107 超音波センサパラメータテーブル、108 カメラパラメータテーブル、109 パラメータ調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、超音波により障害物のセンシングを行う超音波センサと、
前記超音波センサパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、前記超音波センサによるセンサ出力値に基づいて障害物の情報を検出する超音波信号処理部と、
カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、障害物の映像を撮影するカメラと、
前記カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを参照して、前記カメラにより撮影された映像に基づいて障害物の情報を検出する映像処理部と、
前記超音波信号処理部により検出された障害物の情報と前記映像処理部により検出された障害物の情報とを統合して映像を生成する障害物統合検出部と、
前記障害物統合検出部により生成された映像を表示する表示装置と、
前記超音波信号処理部および前記映像処理部により検出された障害物の情報に基づいて、前記超音波センサパラメータテーブルまたは前記カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを調整するパラメータ調整部と
を備えた車両周辺障害物検出装置。
【請求項2】
前記パラメータ調整部は、前記映像処理部により障害物の情報が検出され、前記超音波信号処理部により当該障害物の情報が検出されない場合に、前記超音波センサパラメータテーブルの処理パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項1記載の車両周辺障害物検出装置。
【請求項3】
前記パラメータ調整部は、前記超音波信号処理部により障害物の情報が検出され、前記映像処理部により当該障害物の情報が検出されない場合に、前記カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項1記載の車両周辺障害物検出装置。
【請求項4】
前記パラメータ調整部は、前記超音波信号処理部により検出された障害物の領域と、前記映像処理部により検出された障害物の領域との重複度合いを示す評価値を算出し、当該評価値が大きくなるように前記超音波センサパラメータテーブルおよび前記カメラパラメータテーブルに記載された処理パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項1記載の車両周辺障害物検出装置。
【請求項5】
前記映像処理部が前記超音波信号処理部による障害物の情報検出が困難である特定の映像パターンを検出した場合には、前記障害物統合検出部は、前記超音波信号処理部による障害物の情報検出の動作が保証できない旨を前記表示装置を介して通知する
ことを特徴とする請求項1記載の車両周辺障害物検出装置。
【請求項6】
前記映像処理部が前記映像処理部による障害物の情報検出が困難である特定の映像パターンを検出した場合には、前記障害物統合検出部は、前記映像処理部による障害物の情報検出の動作が保証できない旨を前記表示装置を介して通知する
ことを特徴とする請求項1記載の車両周辺障害物検出装置。
【請求項7】
前記障害物統合検出部は、前記パラメータ調整部により算出された評価値の値が所定の閾値よりも低い場合には、前記超音波信号処理部および前記映像処理部による障害物検出の動作が保証できない旨を前記表示装置を介して通知する
ことを特徴とする請求項4記載の車両周辺障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−180688(P2011−180688A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42361(P2010−42361)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】