説明

車両廃熱利用システム及び車両廃熱利用方法

【課題】廃熱を十分に利用することができるようにする。
【解決手段】車両に搭載され、熱を発生させる熱発生源と、蓄熱媒体を収容する蓄熱器24と、前記熱発生源と蓄熱器24との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第1の熱伝達媒体を循環させる熱伝達媒体流路と、前記熱発生源と蓄熱器24との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第2の熱伝達媒体を搬送するための熱伝達媒体搬送流路と、前記蓄熱媒体の熱を利用する廃熱利用系とを有する。熱発生源において発生させられた熱は、第1、第2の熱伝達媒体を介して蓄熱媒体に伝達され、廃熱利用系において、蓄熱媒体の熱が利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両廃熱利用システム及び車両廃熱利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両、例えば、エンジンを搭載した車両においては、エンジンを駆動することによって発生させたトルク、すなわち、エンジントルクを駆動輪に伝達することによって、車両を走行させるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の車両においては、エンジンを駆動するのに伴って発生した熱は、冷却水に伝達され、車室内の暖房用として利用される以外はラジエータによって大気中に放出されることになり、廃熱を十分に利用することができない。
【0004】
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、廃熱を十分に利用することができる車両廃熱利用システム及び車両廃熱利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の車両廃熱利用システムにおいては、車両に搭載され、熱を発生させる熱発生源と、蓄熱媒体を収容する蓄熱器と、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第1の熱伝達媒体を循環させる熱伝達媒体流路と、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第2の熱伝達媒体を搬送するための熱伝達媒体搬送流路と、前記蓄熱媒体の熱を所定の目的に利用する廃熱利用系とを有する。
【0006】
本発明の他の車両廃熱利用システムにおいては、さらに、前記蓄熱媒体を循環させる蓄熱媒体循環流路を有する。
【0007】
本発明の更に他の車両廃熱利用システムにおいては、さらに、前記熱伝達媒体流路と接続され、第1の熱伝達媒体を冷却する冷却装置を有する。
【0008】
本発明の更に他の車両廃熱利用システムにおいては、さらに、前記蓄熱器は、第1〜第3の領域を備え、第1の領域に第1の熱伝達媒体が、第1の領域より内方に配設された第2の領域に蓄熱媒体が、第2の領域より内方に配設された第3の領域に第2の熱伝達媒体が供給される。
【0009】
本発明の更に他の車両廃熱利用システムにおいては、さらに、前記第1の熱伝達媒体は冷却水であり、第2の熱伝達媒体は排気浄化装置において浄化された排ガスである。
【0010】
本発明の車両廃熱利用方法においては、車両に搭載された熱発生源によって熱を発生させ、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設された熱伝達媒体流路において第1の熱伝達媒体を循環させ、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設された熱伝達媒体搬送流路において第2の熱伝達媒体を搬送し、第1、第2の熱伝達媒体の熱を蓄熱器に収容された蓄熱媒体に伝達し、該蓄熱媒体の熱を利用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両廃熱利用システムにおいては、車両に搭載され、熱を発生させる熱発生源と、蓄熱媒体を収容する蓄熱器と、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第1の熱伝達媒体を循環させる熱伝達媒体流路と、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第2の熱伝達媒体を搬送するための熱伝達媒体搬送流路と、前記蓄熱媒体の熱を所定の目的に利用する廃熱利用系とを有する。
【0012】
この場合、熱発生源において発生させられた熱は、第1、第2の熱伝達媒体を介して蓄熱媒体に伝達され、廃熱利用系において、蓄熱媒体の熱が所定の目的に利用される。したがって、車両において発生させられる廃熱を十分に利用することができるとともに、大気中に放出される熱量を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態における車両廃熱利用システムを示す図、図2は本発明の第1の実施の形態における蓄熱器の縦断面図、図3は本発明の第1の実施の形態における蓄熱器の横断面図である。
【0015】
図において、11は車両に搭載され、駆動源であるとともに熱を発生させる熱発生源としての、かつ、第1の加熱源としてのエンジンであり、該エンジン11を駆動することによって発生させられたエンジントルクは、図示されない駆動輪に伝達され、車両が走行させられる。また、12は冷却装置としてのラジエータであり、前記エンジン11の外周に形成された図示されない冷却水路とラジエータ12とは循環流路13、14によって接続され、循環流路13にポンプp1及びバルブv1が、循環流路14にバルブv2が配設される。そして、前記ラジエータ12より前方(図1において左方)に、ファン15が配設され、前記ポンプp1及びファン15はエンジン11の図示されないクランク軸と連結される。前記エンジン11が駆動されるのに伴って、ポンプp1及びファン15が作動させられると、冷却媒体としての冷却水がエンジン11とラジエータ12との間で循環させられるとともに、ファン15及び車両が受ける走行風によってラジエータ12内の冷却水が冷却される。したがって、冷却水を介してエンジン11を冷却することができる。
【0016】
一方、エンジン11を駆動することによって発生させられた排ガスは、排気管18を通り、該排気管18に配設された第2の加熱源としての排気浄化装置21によって浄化された後、第1の排気部としてのマフラー22によって消音され、大気中に排出される。
【0017】
ところで、エンジン11を駆動するのに伴って発生した熱の一部は、冷却水に伝達され、車室内の暖房用として利用され、図示されない放熱器に送られ、該放熱器によって車室内の空気に伝達される。一方、残りの熱は、ラジエータ12によって大気中に放出されることになり、廃熱を十分に利用することができない。
【0018】
そこで、車両に蓄熱器24を搭載し、該蓄熱器24に蓄熱媒体としての水が収容され、前記蓄熱器24において、第1の熱伝達媒体として前記エンジン11から排出された冷却水を、第2の熱伝達媒体として前記排気浄化装置21によって浄化された後の排ガスを利用し、冷却水及び排ガスによって水を加熱し、冷却水の熱、及び排ガスの熱を水に伝達するようにしている。そして、車両のインストルメントパネル等に配設された操作部に、モード選択要素としてのスイッチが配設され、運転者がスイッチを操作して、冷却水によって水を加熱する第1のモードとしての冷却水加熱モード、及び排ガスによって水を加熱する第2のモードとしての排ガス加熱モードを選択することができるようになっている。
【0019】
そのために、前記排気管18とマフラー22との間に排ガス分岐部34が配設され、該排ガス分岐部34において、前記マフラー22と並列に、第2の排気部としての蓄熱排気管36が分岐させられる。前記排気管18及び蓄熱排気管36によって、排ガスを搬送するための熱伝達媒体搬送流路が構成される。
【0020】
また、前記蓄熱器24は、最も外周縁側に配設された第1の領域26、該第1の領域26より内方に配設された第2の領域27、及び第2の領域27より内方に配設され、マフラー22と同様の消音構造を有する第3の領域28を備え、第1の領域26に冷却水が、第2の領域27に水が、第3の領域28に排ガスが供給される。なお、冷却水の温度に対して、排気浄化装置21によって浄化された後の排ガスの温度は極めて高いので、排ガスの熱を水に伝達する際の熱勾(こう)配を、冷却水の熱を水に伝達する際の熱勾配に対して十分に大きくすることができる。したがって、排ガスの熱を水に伝達する際の水の循環量を、冷却水の熱を水に伝達する際の水の循環量より十分に大きくすることができる。
【0021】
そして、前記循環流路13におけるポンプp1とバルブv1との間の分岐部q1と前記第1の領域26の入口i1とが第1の熱伝達媒体流路31によって接続され、前記循環流路14におけるバルブv2とエンジン11との間の分岐部q2と前記第1の領域26の出口j1とが第2の熱伝達媒体流路32によって接続される。前記第1の熱伝達媒体流路31にバルブv3が、第2の熱伝達媒体流路32にバルブv4が配設される。
【0022】
また、前記排ガス分岐部34に、破線で示される排出位置、及び実線で示される蓄熱位置を採る切換弁35が配設され、該切換弁35が排出位置に置かれると、排気管18とマフラー22とが連通させられ、蓄熱位置に置かれると、排気管18と蓄熱排気管36とが連通させられる。そして、蓄熱排気管36と第3の領域28とが接続される。なお、前記切換弁35はスロットル電磁バルブから成る。
【0023】
前記蓄熱器24において、熱を蓄えた水は、外部に供給可能にされ、例えば、家庭において暖房用、給湯用等の熱源として利用したり、冬季における積雪の多い地方で融雪用(融雪槽、ロードヒーティング等)の熱源として利用したりすることができる。
【0024】
そして、運転者の家庭において、前記蓄熱器24に蓄えられた熱を利用する場合、該熱を貯蔵するために図示されない蓄熱タンクが配設され、前記第2の領域27の出口j2と蓄熱タンクの入口とが第1の蓄熱媒体循環流路43によって、蓄熱タンクの出口と第2の領域27の入口i2とが第2の蓄熱媒体循環流路44によって接続される。そして、第1の蓄熱媒体循環流路43にポンプp2及びバルブv5が、第2の蓄熱媒体循環流路44にバルブv6が配設される。さらに、前記ポンプp2とバルブv5との間の分岐部q3と、入口i2とバルブv6との間の分岐部q4とが、第3の蓄熱媒体循環流路45によって接続され、該第3の蓄熱媒体循環流路45にバルブv7が配設される。
【0025】
また、前記第1、第2の蓄熱媒体循環流路43、44において、バルブv5と蓄熱タンクの入口との間、及びバルブv6と蓄熱タンクの出口との間に、着色自在の図示されないコネクタが配設される。したがって、車両を、例えば、走行後に自宅の駐車場等において停止させ、前記コネクタを介して蓄熱器24と蓄熱タンクとを第1、第2の蓄熱媒体循環流路43、44を介して接続した状態で、CPU48の図示されない廃熱利用処理手段は、廃熱利用処理を行い、バルブv5、v7を開放し、ポンプp2を作動させることによって、廃熱によって温められた高温の水を蓄熱タンクに送り、自宅に配設された蓄熱タンク内の低温の水を蓄熱器24に送る。なお、前記蓄熱タンク等によって、水の熱を利用する廃熱利用系が構成される。
【0026】
本実施の形態においては、蓄熱タンク内の低温の水を蓄熱器24に供給するようにしているが、水供給源から供給された水を蓄熱器24に供給することができる。また、前記蓄熱媒体としての水に代えて、アルミナ、水・エチレングリコール混合物、塩化カルシウム水溶液等を使用することができる。さらに、冬季に融雪用として利用する場合には、蓄熱媒体が凍結するのを防止するために、蓄熱媒体としてアルミナ、水・エチレングリコール混合物、塩化カルシウム水溶液等を使用するのが好ましい。
【0027】
前記構成の車両廃熱利用システムの制御を行うために、演算装置としての、かつ、制御部としての前記CPU48が配設され、該CPU48は、図示されない記録装置と共に、各種のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。そして、前記循環流路13におけるエンジン11とポンプp1との間に、エンジン11から排出された冷却水の温度T1を検出するために、第1の温度検出部としての温度センサt1が、前記第2の熱伝達媒体流路32におけるバルブv4と分岐部q2との間に、蓄熱器24から排出された冷却水の温度T2を検出するために、第2の温度検出部としての温度センサt2が、前記第1の蓄熱媒体循環流路43における蓄熱器24とポンプp2との間に、蓄熱器24から排出された水の温度T3を検出するために、第3の温度検出部としての温度センサt3が配設される。
【0028】
次に、前記蓄熱器24の構造について説明する。
【0029】
図2及び3において、蓄熱器24は、筒状の外側筐(きょう)体51、該外側筐体51より径方向内方に配設された筒状の内側筐体52、前記外側筐体51及び内側筐体52の両端に配設された端部壁53、54、前記内側筐体52内に配設された多管式の熱交換器56等を有し、該熱交換器56は、管板57、58、及び該管板57、58間に延在させられる複数の、本実施の形態においては、5本の管59を備える。そして、前記外側筐体51と内側筐体52との間に第1の領域26が、内側筐体52と熱交換器56との間に第2の領域27が、前記各管59内に第3の領域28が形成される。
【0030】
なお、本実施の形態においては、第1の加熱源としてエンジン11を、第2の加熱源として排気浄化装置21を使用するようになっているが、他の加熱源としてブレーキを使用することができる。その場合、ブレーキの、例えばロータと接触するように熱交換器部を配設し、ブレーキを制動することによって発生させられた熱を、熱交換器部において冷却媒体としての水に伝達することができる。また、本実施の形態においては、駆動源としてのエンジン11に代えて、燃料電池等の発電装置を使用することができる。
【0031】
次に、前記構成の車両廃熱利用システムの動作について説明する。
【0032】
図4は本発明の第1の実施の形態における車両廃熱利用システムの動作を示す第1のフローチャート、図5は本発明の第1の実施の形態における車両廃熱利用システムの動作を示す第2のフローチャートである。
【0033】
運転者がエンジン11(図1)を始動すると、CPU48の図示されない蓄熱初期化処理手段は、蓄熱初期化処理を行い、所定の時間、本実施の形態においては、10秒間が経過して、エンジン11の回転数が安定化するのを待機し、エンジン11の回転数が安定化すると、バルブv5、v6を閉鎖した状態で、バルブv7を開放し、ポンプp2を作動させ、水を循環させる。これに伴って、第2の領域27内の水は、第1の蓄熱媒体循環流路43、第3の蓄熱媒体循環流路45、及び第2の蓄熱媒体循環流路44を順に流れ、第2の領域27に戻る。
【0034】
続いて、前記CPU48の図示されない蓄熱要否判定処理手段は、蓄熱要否判定処理を行い、温度センサt3によって検出された温度T3が第1の設定温度、本実施の形態においては、90〔℃〕より低いかどうかを判断する。温度T3が90〔℃〕より低い場合、前記CPU48の図示されない蓄熱開始処理手段は、蓄熱開始処理を行い、蓄熱が必要であると判断し、水への蓄熱を開始し、温度T3が90〔℃〕以上である場合、前記CPU48の図示されない蓄熱停止処理手段は、蓄熱停止処理を行い、蓄熱が不要であると判断し、ポンプp2の作動を停止させ、バルブv7を閉鎖し、水の循環を停止させる。
【0035】
そして、水への蓄熱が開始されると、CPU48の図示されないモード判定処理手段は、モード判定処理を行い、冷却水加熱モードが選択されているかどうかを判断する。冷却水加熱モードが選択されている場合、前記CPU48の図示されない蓄熱制御処理手段は、蓄熱制御処理を行い、温度センサt1によって検出された温度T1が第2の設定温度、本実施の形態においては、80〔℃〕より高いかどうかを判断する。温度T1が80〔℃〕より高い場合、ポンプp1を作動させ、バルブv1、v2を閉鎖し、バルブv3、v4を開放し、冷却水を蓄熱用として循環させる。これに伴って、エンジン11内の冷却水は、循環流路13、第1の熱伝達媒体流路31、第1の領域26、第2の熱伝達媒体流路32、及び循環流路14を順に流れ、エンジン11に戻る。これにより、冷却水によって水が加熱され、蓄熱が行われる。
【0036】
続いて、前記蓄熱制御処理手段は、温度センサt2によって検出された温度T2が第3の設定温度、本実施の形態においては、80〔℃〕より高いかどうかを判断する。温度T3が80〔℃〕より高い場合、前記蓄熱制御処理手段は、バルブv3、v4を閉鎖して、、冷却水の蓄熱用としての循環を停止させ、ポンプp2の作動を停止させ、バルブv7を閉鎖し、水の循環を停止させる。これにより、冷却水による水の加熱が停止され、蓄熱が停止される。
【0037】
また、前記蓄熱制御処理手段は、ポンプp1を作動させたまま、バルブv1、v2を開放し、冷却水を放熱用として循環させる。これに伴って、エンジン11内の冷却水は、循環流路13、ラジエータ12、及び循環流路14を順に流れ、エンジン11に戻る。これにより、ラジエータ12によって冷却水が冷却される。
【0038】
一方、冷却水加熱モードが選択されていない場合、前記モード判定処理手段は、排ガス加熱モードが選択されているかどうかを判断する。排ガス加熱モードが選択されている場合、前記蓄熱制御処理手段は、切換弁35を切り換えて蓄熱位置に置く。これに伴って、排ガスは、排気浄化装置21から排出された後、蓄熱排気管36に送られ、第3の領域28を介して大気中に放出される。これにより、排ガスによって水が加熱され、蓄熱が行われる。
【0039】
続いて、前記蓄熱制御処理手段は、温度センサt2によって検出された温度T2が80〔℃〕より高いかどうかを判断する。温度T2が80〔℃〕より高い場合、前記蓄熱制御処理手段は、切換弁35を排出位置に置く。これにより、バルブv3、v4を閉鎖して、、冷却水の蓄熱用としての循環を停止させ、ポンプp2の作動を停止させ、バルブv7を閉鎖し、水の循環を停止させる。これにより、排ガスはマフラー22を介して大気中に放出され、排ガスによる水の加熱が停止され、蓄熱が停止される。
【0040】
このように、エンジン11を駆動するのに伴って発生した熱は、冷却水及び排ガスを介して水に伝達され、蓄熱されるので、蓄熱タンクにおいて、水の熱を所定の目的に利用することができる。したがって、廃熱を十分に利用することができ、車両において発生させられる廃熱を十分に利用することができるとともに、大気中に放出される熱量を少なくすることができる。
【0041】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 エンジン11を始動する。
ステップS2 エンジン11が安定化するのを待機する。
ステップS3 水を循環させる。
ステップS4 温度T3が90〔℃〕より低いかどうかを判断する。温度T3が90〔℃〕より低い場合はステップS5に、温度T3が90〔℃〕以上である場合はステップS6に進む。
ステップS5 冷却水加熱モードが選択されているかどうかを判断する。冷却水加熱モードが選択されている場合はステップS7に、選択されていない場合はステップS8に進む。
ステップS6 水の循環を停止させ、処理を終了する。
ステップS7 温度T1が80〔℃〕になるのを待機する。
ステップS8 排ガス加熱モードが選択されているかどうかを判断する。排ガス加熱モードが選択されている場合はステップS10に進み、選択されていない場合は処理を終了する。
ステップS9 冷却水を循環させる。
ステップS10 切換弁35を切り換える。
ステップS11 温度T2が80〔℃〕になるのを待機する。
ステップS12 蓄熱を停止させる。
ステップS13 ラジエータ12による冷却を行い、処理を終了する。
【0042】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0043】
図6は本発明の第2の実施の形態における蓄熱器の横断面図である。
【0044】
図において、蓄熱器24は、角筒状の外側筐体151、該外側筐体151より内方に配設された角筒状の内側筐体152、前記外側筐体151及び内側筐体152の両端に配設された図示されない端部壁、前記内側筐体152内に配設された多管式の熱交換器156等を有し、該熱交換器156は、図示されない管板、及び管板間に延在させられる複数の、本実施の形態においては、3本の管159を備える。そして、前記外側筐体151と内側筐体152との間に、第1の領域26が、該第1の領域26内、すなわち、内側筐体152と熱交換器156との間に第2の領域27が、該第2の領域27内、すなわち、前記各管159内に第3の領域28が形成される。
【0045】
本実施の形態においては、モードとして冷却水加熱モード、及び排ガス加熱モードのうちの一方を選択することができるようになっているが、冷却水加熱モード及び排ガス加熱モードのいずれも選択することができる。その場合、蓄熱器において、冷却水及び排ガスの熱が同時に水に伝達される。
【0046】
前記各実施の形態においては、前述されたように、エンジン11を駆動することによって発生させられた排ガスは、排気管18を通り、該排気管18に配設された排気浄化装置21によって浄化された後、マフラー22に送られて消音され、大気中に排出されるか、又は蓄熱器24に送られて、排ガスの熱を水に伝達して熱を回収した後、大気中に排出されるようになっている。
【0047】
また、植物及び土壌から成る植物・土壌系は、地球上における二酸化炭素(CO2 )の最大の固定者となるが、前記植物・土壌系の光合成能力が環境破壊によって低下しているので、固定される二酸化炭素の量を十分に確保することができない。
【0048】
そこで、排ガスの熱を回収することができるだけでなく、排ガスに含まれる二酸化炭素を回収することができるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0049】
図7は本発明の第3の実施の形態における車両廃熱利用システムを示すブロック図、図8は本発明の第3の実施の形態における車両廃熱利用システムの概念図、図9は本発明の第3の実施の形態における二酸化炭素利用システムの概念図である。
【0050】
図において、11はエンジン、18は排気管、21は排気浄化装置、24は蓄熱器、36は前記排気管18から分岐させて形成された蓄熱排気管である。この場合、排気浄化装置21から排出された排ガスの一部はそのまま排気管18を流れ、他の一部は、蓄熱排気管36を流れ、蓄熱器24に送られる。そして、排気管18を流れる排ガスと、蓄熱器24内において熱が回収された後の排ガスとは合流し、更に排気管61を流れて、二酸化炭素を回収し、固定するための二酸化炭素固定システム62に送られる。
【0051】
該二酸化炭素固定システム62は、排気管61を介して供給された排ガスを受けて、排ガス中の二酸化炭素を吸収によって回収する回収部としての二酸化炭素吸収部63、二酸化炭素を吸収するための吸収剤を収納する吸収剤収納部64、二酸化炭素を吸収した後の吸収剤、すなわち、吸収済み吸収剤を収納する吸収済み吸収剤格納部65、二酸化炭素吸収部63の温度を調整する温度調整処理手段としての温度調整部66、二酸化炭素が回収された後の排ガス、すなわち、回収後排ガスを排出するための回収後排ガス排出管67、前記回収後排ガス中の吸収剤をフィルタ等によって除去する吸収剤除去部68等を有する。
【0052】
なお、前記吸収剤によって回収剤が、吸収剤収納部64によって回収剤収納部が、前記吸収済み吸収剤によって回収済み回収剤が、吸収済み吸収剤格納部65によって回収済み回収剤格納部が、吸収剤除去部68によって回収剤除去部が構成される。
【0053】
本実施の形態において、二酸化炭素を吸収するための吸収剤は、二酸化炭素と化学反応を起こし、二酸化炭素を固定化するものであればよく、吸収剤として、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン、2−アミノ−2−メチル−1プロパノール、2−イソプロピルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン等のアミン化合物(アルカノールアミン化合物)の水溶液が使用される。
【0054】
前記アミン化合物は次の化学反応を起こし、化学平衡状態を形成する。
【0055】
【化1】

【0056】
前記二酸化炭素吸収部63に吸収剤収納部64からアミン化合物(2RNH2 )が供給され、該アミン化合物(2RNH2 )と、排ガス中の二酸化炭素とが化学反応を起こし、吸収済み吸収剤(RNH3 + +RNHCOO- )が生成され、該吸収済み吸収剤は、吸収剤格納部65に供給される。二酸化炭素が吸収剤に吸収された後の排ガスは、回収後排ガス排出管67を介して二酸化炭素固定システム62に供給される。
【0057】
前記化学反応においては、二酸化炭素吸収部63内の温度が高くなるほど、平衡状態が、二酸化炭素を放出する側、すなわち、反応式の左辺側に移動する。したがって、二酸化炭素が固定される割合、すなわち、二酸化炭素の固定化率は温度が低いほど高くなる。ところが、温度が低すぎると、化学反応の速度が低くなり、二酸化炭素を吸収する効率が低下してしまう。そこで、温度調整部66は、温度調整処理を行い、二酸化炭素の固定化率を十分に高くし、二酸化炭素を吸収する効率を十分に高くすることができるように、二酸化炭素吸収部63内の温度をあらかじめ設定された温度になるように制御する。
【0058】
なお、前記温度は、吸収剤として使用されるアミン化合物の種類によって異なるので、最適な温度を適宜選択する必要がある。一般に、160〔℃〕より低い温度が好ましいが、アミン化合物として、例えば、2−アミノ−2−メチル−1プロパノールを使用する場合、40〔℃〕以上、かつ、50〔℃〕以下にするのが好ましい。
【0059】
また、アミン化合物の沸点は200〔℃〕以上にするのが好ましい。沸点が低い場合、排気ガス中の吸収剤の分圧が高くなり、吸収剤が外部に排出されてしまう。
【0060】
次に、蓄熱器24において回収された熱、及び二酸化炭素吸収部63において回収された二酸化炭素を利用する方法について説明する。
【0061】
図8において、71は車両であり、該車両71は、蓄熱器24及び吸収済み吸収剤格納部65を備え、蓄熱器24に熱が蓄えられ、吸収済み吸収剤格納部65に吸収済み吸収剤が蓄えられる。また、ST1は、蓄熱器24に蓄えられた熱及び吸収済み吸収剤格納部65に蓄えられた吸収済み吸収剤を回収する回収ステーションである。該回収ステーションST1は、ガソリンスタンド、大型スーパー等に配設され、蓄熱媒体としての水を収容する蓄熱媒体収容部72、及び吸収済み吸収剤を収容する回収済み回収剤収容部としての吸収済み吸収剤収容部73を有する。
【0062】
したがって、回収ステーションST1において、蓄熱器24から高温の水を抜き取り、蓄熱媒体収容部72に収容し、吸収済み吸収剤格納部65から吸収済み吸収剤を抜き取り、吸収剤収容部73に収容することによって、水及び吸収済み吸収剤を回収することができる。
【0063】
また、前記回収ステーションST1において、低温の水を蓄熱器24に供給し、吸収剤を吸収剤収納部64に供給することができる。なお、本実施の形態においては、回収ステーションST1において高温の水と低温の水とを交換するようになっているが、熱交換器によって熱交換を行い、熱だけを回収することができる。
【0064】
次に、前記回収ステーションST1において、抜き取られた水及び吸収済み吸収剤は、収集車両75によって収集され、回収剤再生システムST2に送られる。該回収剤再生システムST2は、加熱装置としての太陽エネルギー収集装置77、吸収済み吸収剤を再生する再生装置78等を備え、該再生装置78は、前記収集車両75によって収集された水及び吸収済み吸収剤を受け、吸収済み吸収剤を水で加熱し、更に太陽エネルギー収集装置77によって集めた太陽エネルギーの熱によって、100〔℃〕以上、かつ、120〔℃〕以下の温度に加熱する。
【0065】
このとき、前記化学反応の平衡状態が左辺側に移動し、吸収済み吸収剤が熱分解され、これに伴って、吸収剤を再生し、二酸化炭素を回収することができる。
【0066】
このようにして、再生された吸収剤、及び吸収剤を加熱するのに伴って冷却された水は、収集車両75によって収集され、回収ステーションST1に送られる。
【0067】
一方、回収剤再生システムST2において回収された二酸化炭素は、回収剤再生システムST2が配設された地区に隣接する農地ARi(i=1、2、…)に第1の供給路としてのパイプラインLN1を介して送られ、各農地ARiで利用される。また、再生装置78において得られた熱も各農地ARiに送られ、各農地ARiで利用される。
【0068】
さらに、二酸化炭素を液化させ、車両79によって遠隔地の農地AR11に送り、該農地ARj(j=11、12、…)で利用することができる。
【0069】
そして、各農地ARiにおいて、図9に示されるような二酸化炭素利用システムで二酸化炭素が利用される。
【0070】
図9において、LN1はパイプライン、81は該パイプラインLN1に配設された制御部としての二酸化炭素供給コントローラ、82は農地ARiの環境条件、本実施の形態においては、二酸化炭素濃度、温度、光量等を検出する環境条件検出部としてのセンサであり、前記二酸化炭素供給コントローラ81の図示されない二酸化炭素供給処理手段は、二酸化炭素供給処理を行い、前記環境条件を読み込み、農地ARiへの二酸化炭素の供給量を制御する。例えば、植物・土壌系の基礎代謝を上回る二酸化炭素の吸収が検出された場合、700〔ppm〕以上、かつ、1000〔ppm〕以下の二酸化炭素を供給する。なお、前記パイプラインLN1は樹脂製のチューブによって形成される。
【0071】
この場合、二酸化炭素供給コントローラ81によって供給量が制御された二酸化炭素は、第2の供給路としてのバイオチューブ83を介して農地ARiに供給される。前記バイオチューブ83は、各所に穴が形成され、該各穴を介して二酸化炭素を植物、特に、葉、茎等の近傍の地面近くの部分に供給する。なお、前記バイオチューブ83は、例えば、休耕期である秋以降に自然に朽ちて有機肥料になる。本実施の形態においては、第2の供給路としてバイオチューブ83を使用するようになっているが、樹脂製のチューブを使用することができる。
【0072】
このように、本実施の形態においては、排ガスに含まれる二酸化炭素を回収して植物に供給し、光合成を促進することができるだけでなく、排ガス中の熱を回収し、該熱によって、吸収済み吸収剤から吸収剤を再生することができる。
【0073】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両廃熱利用システムを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における蓄熱器の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における蓄熱器の横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における車両廃熱利用システムの動作を示す第1のフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における車両廃熱利用システムの動作を示す第2のフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態における蓄熱器の横断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態における車両廃熱利用システムを示すブロック図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における車両廃熱利用システムの概念図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における二酸化炭素利用システムの概念図である。
【符号の説明】
【0075】
11 エンジン
12 ラジエータ
18 排気管
21 排気浄化装置
24 蓄熱器
26〜28 第1〜第3の領域
31、32 第1、第2の熱伝達媒体流路
36 蓄熱排気管
43〜45 第1〜第3の蓄熱媒体循環流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、熱を発生させる熱発生源と、蓄熱媒体を収容する蓄熱器と、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第1の熱伝達媒体を循環させる熱伝達媒体流路と、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設され、前記熱発生源において発生させられた熱を前記蓄熱媒体に伝達する第2の熱伝達媒体を搬送するための熱伝達媒体搬送流路と、前記蓄熱媒体の熱を所定の目的に利用する廃熱利用系とを有することを特徴とする車両廃熱利用システム。
【請求項2】
前記蓄熱媒体を循環させる蓄熱媒体循環流路を有する請求項1に記載の車両廃熱利用システム。
【請求項3】
前記熱伝達媒体流路と接続され、第1の熱伝達媒体を冷却する冷却装置を有する請求項1に記載の車両廃熱利用システム。
【請求項4】
前記蓄熱器は、第1〜第3の領域を備え、第1の領域に第1の熱伝達媒体が、第1の領域より内方に配設された第2の領域に蓄熱媒体が、第2の領域より内方に配設された第3の領域に第2の熱伝達媒体が供給される請求項1に記載の車両廃熱利用システム。
【請求項5】
前記第1の熱伝達媒体は冷却水であり、第2の熱伝達媒体は排気浄化装置において浄化された排ガスである請求項1に記載の車両廃熱利用システム。
【請求項6】
車両に搭載された熱発生源によって熱を発生させ、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設された熱伝達媒体流路において第1の熱伝達媒体を循環させ、前記熱発生源と蓄熱器との間に配設された熱伝達媒体搬送流路において第2の熱伝達媒体を搬送し、第1、第2の熱伝達媒体の熱を蓄熱器に収容された蓄熱媒体に伝達し、該蓄熱媒体の熱を利用することを特徴とする車両廃熱利用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−127403(P2007−127403A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276576(P2006−276576)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】