説明

車両後部の車体構造

【課題】サスペンション支持部からの入力荷重を分散させつつも、車室内空間を確保できる車両後部の車体構造を提供する。
【解決手段】リヤホイールハウスインナパネル5と、クォータインナパネル6と、リヤピラーリンフォース25と、リヤホイールハウスインナリンフォース21とを有し、リヤピラーリンフォース25とリヤホイールハウスインナリンフォース21とを連続断面となるように接合し、クォータインナパネル6とリヤホイールハウスインナパネル5と相まって閉断面構造を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両後部の車体構造に関するものとして、特許文献1が提案されている。特許文献1では、車両後部側のサスペンション装置の上部を支持するサスペンション支持部からの入力荷重を分散させる目的で、サスペンション支持部と車幅方向に配置されたリヤホイールハウスインナパネルの上方において車幅方向に延設されているリヤシェルフとを、リヤホイールハウスインナパネルの車内側に装着する補強部材で連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−162297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成は、サスペンション支持部からの入力荷重を分散させる点においては1つの手法であるが、電気自動車やハイブリッドカーのような大量のバッテリーを搭載する車両を想定した場合、補強部材がリヤホイールハウスインナパネルの車室内側に配置されているため、車室内空間が狭くなり改善の余地が残されている。
本発明はサスペンション支持部からの入力荷重を分散させつつも、車室内空間を確保できる車両後部の車体構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両後部の車体構造は、車両後輪の車幅方向の内側に設けられ、上部が車幅方向外側へ湾曲し、下部がサイドメンバに結合されたリヤホイールハウスインナパネルと、リヤホイールハウスインナパネルに形成され、後輪側のサスペンション装置の上部を支持するサスペンション支持部と、リヤホイールハウスインナパネルに接合されていて上下に延びるクォータインナパネルと、クォータインナパネルよりも車幅方向の外側に配置され、その上部がクォータインナパネルに接合されたリヤピラーリンフォースと、リヤホイールハウスインナパネルよりも車幅方向外側に配置され、その上端がリヤピラーリンフォースと接合され、その下端側が前記サスペンション支持部に接合されたリヤホイールハウスインナリンフォースとを有し、リヤピラーリンフォースとリヤホイールハウスインナリンフォースとを連続断面となるように接合し、クォータインナパネルとリヤホイールハウスインナパネルと相まって閉断面構造を構成したことを特徴としている。
本発明に係る車両後部の車体構造において、リヤホイールハウスインナパネルの下部は車両前後方向に延びるサイドメンバに接合されたリヤフロアパネルと接合されていることを特徴としている。
車両後部の車体構造において、リヤホイールハウスインナパネルとクォータインナパネルとの接合部には、車幅方向に延びて配されるリヤシェルフの端部が接合されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両後輪の車幅方向の内側に設けられ、上部が車幅方向外側へ湾曲し、下部がサイドメンバに結合されたリヤホイールハウスインナパネルに形成され、後輪側のサスペンション装置の上部を支持するサスペンション支持部と、リヤホイールハウスインナパネルに接合されていて上下に延びるクォータインナパネルと、クォータインナパネルよりも車幅方向の外側に配置され、その上部がクォータインナパネルに接合されたリヤピラーリンフォースと、リヤホイールハウスインナパネルよりも車幅方向外側に配置され、その上端がリヤピラーリンフォースと接合され、その下端側が前記サスペンション支持部に接合されたリヤホイールハウスインナリンフォースとを有し、リヤピラーリンフォースとリヤホイールハウスインナリンフォースとを連続断面となるように接合し、クォータインナパネルとリヤホイールハウスインナパネルと相まって閉断面構造を構成したので、サスペンション支持部から連続的な断面が、リヤホイールハウスインナリンフォースとリヤピラーリンフォースによってリヤホイールハウスインナパネルよりも車外側に形成されるため、サスペンションからの上下方向への入力荷重の分散の構造が可能としながらも従来に比べて車室内空間を確保できる。
また、従来のようにリヤシェルフに補強部材を接合しないため、リヤシェルフ廻りの構造が合理化でき、板厚の低減や断面縮小が可能となり、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る車両後部の車体構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示す車両後部の車体構造を車両斜め下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の主要部を構成するリヤピラーリンフォースの構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示すリヤピラーリンフォースと接続されて一体化されるリヤホイールハウスインナリンフォースの構成を示す斜視図である。
【図5】図1中のA−A線断面図である。
【図6】車両後部の車体構造におけるサイドメンバの変形例を示す断面図である。
【図7】車両後部の車体構造におけるリヤホイールハウスインナパネルとサイドメンバとの別な接合形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1、図2に示すように、本発明に係る車両後部の車体構造は、車両前後方向に延びるサイドメンバ1を備えている。サイドメンバ1はハット形断面のサイドメンバロア2と、サイドメンバロア2の上面開口部を覆うように配設されるリヤフロアパネル3とで構成されている。
【0009】
リヤフロアパネル3の左右両端部には、図示しない後輪を収容するためのリヤホイールハウス4を構成するリヤホイールハウスインナパネル5と、リヤホイールハウスインナパネル5の外側に接合されるクォータインナパネル6が配設される。
【0010】
クォータインナパネル6は、下方部6aがホイールハウス4のアウタ側を構成し、上方部6bはリヤピラー7のインナ側を構成している。クォータインナパネル6は、上方部6bがリヤホイールハウスインナパネル5の内側面に沿って上下に延びている(図5参照)。
【0011】
リヤホイールハウスインナパネル5は、車両後部に荷室側(内側)に膨出した形状を成し(即ち、上部が車幅方向外側へ湾曲している)、リヤホイールハウスインナパネル5の車室の外側に後輪(図示省略)が収容される。リヤホイールハウスインナパネル5の上部5aは、図5に示すように、クォータインナパネル6と接合されて溶接などで一体化されている。リヤホイールハウスインナパネル5の下部5bはサイドメンバ1を構成するリヤフロアパネル3に端部に接合されている。
【0012】
図1に示すように、ホイールハウス4のリヤホイールハウスインナパネル5の壁面の下部中央部には凹状の開口8が形成されている。この開口8の下方には、図2に示す後輪側のサスペンション装置50(ショックアブソーバやばね部材)の上部を支持するサスペンション支持部となるスプリングハウス9が接合されている。スプリングハウス9はホイールハウスインナパネル5の壁面に接合される。
【0013】
リヤフロアパネル3の車両外側部にはスプリングハウス9が嵌合する凹部12が形成され、凹部12に対応する位置でスプリングハウス9がサイドメンバロア2の縦壁に接合されることで、スプリングハウス9がサイドメンバ1に接合された状態になっている。
【0014】
クォータインナパネル6よりも外側には、図3に示すリヤピラーリンフォース25が図2,図5に示すように接合される。リヤピラーリンフォース25は、上部25aがクォータインナパネル6と接合されている。ホイールハウス4の開口8の部位には、図4に示すハット型断面形状のリヤホイールハウスインナリンフォース21が配置される。リヤホイールハウスインナリンフォース21は、図2,図5に示すように、リヤホイールハウスインナパネル5よりも車両外側に配置され、その上端21aがリヤピラーリンフォース25の下部25bに接合され、その下端21bが開口8から内方に進入して、リヤホイールハウスインナパネル5の下部5b側に形成されたサスペンション取付部10の下方に重合して接合されている。つまり、リヤホイールハウスインナリンフォース21の下端21bはリヤホイールハウスインナパネル5の下部5bに接合されている。
【0015】
本形態では、このようなリヤピラーリンフォース25とリヤホイールハウスインナリンフォース21とを連続断面となるように溶接等で固定して接合し、クォータインナパネル6とリヤホイールハウスインナパネル4と相まって、垂直方向への断面が、図5に示すように閉断面構造となるようにしている。
【0016】
図1、図5に示すように、ホイールハウス4の上方には、車幅方向に延びるリヤシェルフ31が配置されている。リヤシェルフ31の両端部は、左右のホイールハウス4の上部の車体壁面となるリヤホイールハウスインナパネル5とクォータインナパネル6との接合部に接合されていて、車体のねじり剛性が確保されている。リヤシェルフ31の端部は板状部材としてのリヤシェルフアッパブレース32とクロスメンバ部材としてのバルクヘッドブレース33とで構成されている。リヤシェルフ31は、車幅方向に延びるリヤシェルフパネル35の下側に車幅方向に延びるクロスメンバ部材としてのリヤシェルフエクステンション36の縁部が接合され、リヤシェルフパネル35と共に車幅方向に垂直な断面が閉断面となるリヤシェルフ閉断面部が形成されている。
【0017】
このような構成の車両後部の車体構造によると、リヤピラーリンフォース25とリヤホイールハウスインナリンフォース21をリヤホイールハウスインナパネル5よりも車幅方向に外側に配置し、リヤピラーリンフォース25の下部25bとリヤホイールハウスインナリンフォース21の上部21aとを溶接等で接合して連続した一体断面を成形し、リヤホイールハウスインナリンフォース21の下部21bをスプリングハウス9と重合させて接合し、これら一体化されたリヤホイールハウスインナリンフォース21及びリヤピラーリンフォース25と、互いに接合されて一体化された断面を構成するクォータインナパネル6とリヤホイールハウスインナパネル5とで閉断面構造を構成するようにしたので、スプリングハウス9から連続的な断面が、リヤホイールハウスインナパネル5よりも車外側に形成される。このため、サスペンション装置50からの上下方向への入力荷重が、車体剛性部材となるリヤピラー7に対して分散する構造を採りながらも従来に比べて車室内空間を確保できる。また、従来のようにリヤシェルフ31に補強部材を接合しないため、リヤシェル31廻りの構造が合理化でき、板厚の低減や断面縮小が可能となり、軽量化を図ることができる。
【0018】
図5において、サイドメンバ1は、サイドメンバロア2とリヤフロアパネル3とで閉断面構造としたが、図6に示すように、サイドメンバロア2とサイドメンバアッパ60とを用いて互いに接合して閉断面構造とし、リヤフロアパネル3の端部をサイドメンバアッパ60に接合した構成としても良い。
【0019】
図5,図6に示す構成では、リヤホイールハウスインナパネル5の下部5bは、サイドメンバ1を構成するリヤフロアパネル3の端部あるいはサイドメンバアッパ60にそれぞれ接合したが、図7に示すように、サイドメンバ1との間にブラケット40を介してサイドメンバ1側と接合する形態としても良い。この場合ブラケット40にサスペンション取付部10Aを形成し、リヤホイールハウスインナリンフォース21の下部21bと重合させて接合することで、サスペンション取付部10Aの強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 サイドメンバ
3 リヤフロアパネル
5 リヤホイールハウスインナパネル
6 クォータインナパネル
9 サスペンション支持部
21 リヤホイールハウスインナリンフォース
21a 上端
21b 下端側
25 リヤピラーリンフォース
25a 上部
31 リヤシェルフ
50 サスペンション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後輪の車幅方向内側に設けられ、上部が車幅方向の外側へ湾曲し、下部がサイドメンバに結合されたリヤホイールハウスインナパネルと、
前記リヤホイールハウスインナパネルに形成され、後輪側のサスペンション装置の上部を支持するサスペンション支持部と、
前記リヤホイールハウスインナパネルに接合されていて上下に延びるクォータインナパネルと、
前記クォータインナパネルよりも車幅方向の外側に配置され、その上部がクォータインナパネルに接合されたリヤピラーリンフォースと、
前記リヤホイールハウスインナパネルよりも車幅方向外側に配置され、その上端が前記リヤピラーリンフォースと接合され、その下端側が前記サスペンション支持部に接合されるリヤホイールハウスインナリンフォースとを有し、
前記リヤピラーリンフォースと前記リヤホイールハウスインナリンフォースとを連続断面となるように接合し、前記クォータインナパネルとリヤホイールハウスインナパネルと相まって閉断面構造を構成してことを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両後部の車体構造において、
前記リヤホイールハウスインナパネルの下部は、車両前後方向に延びるサイドメンバに接合されたリヤフロアパネルと接合されていることを特徴とする車両後部の車体構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両後部の車体構造において、
前記リヤホイールハウスインナパネルとクォータインナパネルとの接合部には、車幅方向に延びて配されるリヤシェルフの端部が接合されていることを特徴とする車両後部の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158268(P2012−158268A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19989(P2011−19989)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】