車両検査装置
【課題】鉄道車両の車輪部のディスクを対象とした撮像による検査の技術に係わり、ディスクの表面状態を正確に撮像・検出ができる技術を提供する。
【解決手段】本検査装置において、ディスク1面を照明及び撮像する撮像光学系において、カメラ11は、被検査面の法線(n)から所定角度(α)傾けた位置に配置され、照明光源12(12a,12b)は、ディスク1面の被照明領域(例えば左下)に対して隣の領域(例えば右下)に対応する空間で、カメラ11の光軸に対して所定角度(γ)及び法線(n)から所定角度(β)の位置に配置される。これにより撮像画像における不要物の映り込み等が抑止される。
【解決手段】本検査装置において、ディスク1面を照明及び撮像する撮像光学系において、カメラ11は、被検査面の法線(n)から所定角度(α)傾けた位置に配置され、照明光源12(12a,12b)は、ディスク1面の被照明領域(例えば左下)に対して隣の領域(例えば右下)に対応する空間で、カメラ11の光軸に対して所定角度(γ)及び法線(n)から所定角度(β)の位置に配置される。これにより撮像画像における不要物の映り込み等が抑止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の検査の技術に関し、特に、車輪側面等に装架されたブレーキディスク(以下、単にディスクとも称する)の検査の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、その安全運行のため、各箇所についてそれぞれ決められた周期で検査を含む点検・整備などが検査場などにおいて行われている。そのうち頻繁に行われる検査として、車両の構成部品を取り外さない状態で行うものがある。このとき、車輪周辺部(車輪部)の検査については、検査場内に車両を停車させた状態で、検査員による目視確認によって行われる。しかしながら、一般に鉄道車両の車輪部のおおよそ上半分は構造物(台車構造物)に覆われており、その覆われた部分については目視確認することができない。
【0003】
車輪周辺部の検査項目として特に、車輪の両側面等に取り付けられたブレーキ用のディスク(ブレーキディスク)を対象とした点検(検査)がある。ブレーキディスクは、ブレーキライニングで車輪部のディスクをはさみ込むことによる摩擦によりブレーキ力を生じさせ、車両を停止させるものである。このディスクは、様々なストレスがかかるため、異常が発生していないかどうかの点検、特にディスク表面の検査は、重要なものである。
【0004】
上記ブレーキディスクについても、同様に、構造物により覆われた部分については、目視確認による検査はできない。また、頻繁に構成部品を取り外して検査することは手間・コストがかかり現実的ではない。
【0005】
ディスク表面の検査を自動的(高効率)に行うための、先行技術としては、例えば、特開平11−230912号公報(特許文献1)に記載の「表面欠陥検出装置及びその方法」がある。ここでは、シート状レーザ光をディスク面上に照射し、その散乱光と正反射光を別々のセンサでとらえて、それらの強度比から表面の異常(欠陥)を検出する技術が開示されている。
【0006】
また、その他の車輪周辺部の検査項目としては、車輪がレールと接する部分、即ち踏面の検査がある。車輪踏面についても、車両の停車状態では、その全周を目視確認により検査することはできない。
【0007】
車輪踏面の検査に関する先行技術としては、例えば、特開平7−174672号公報(特許文献2)に記載の「車輪踏面欠陥検査装置」がある。これは、車両の走行中にカメラで車輪踏面を撮影することで検査を行うものである。軌道(線路)脇に設置した複数のカメラによって、走行車両の車輪踏面(その全周)を車輪円周方向で複数に分割して複数の画像を撮像し、これにより全周(1周)分の検査画像を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−230912号公報
【特許文献2】特開平7−174672号公報
【特許文献3】特開昭64−405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
鉄道車両の車輪部のディスク(ブレーキディスク)面を対象とした検査に関して、前述の理由から、1回の停車状態で構成部品を取り外さない状態で当該ディスク全面を目視確認等により点検(検査)することは難しい。
【0010】
前記特許文献1の技術では、シート状レーザ光の照射される1直線上の情報しか得られないため、車輪等を回転させるか、照明/検出系(撮像光学系)を円周方向に動かすか等しないと、ディスクの面の情報を得て検査することができない。よって、停車状態の車両のディスクの検査に適用することは難しい。
【0011】
また、車輪踏面の検査についても、ディスク面の検査の場合と同様に、1回の停車状態では、踏面の全周の検査はできない。
【0012】
そこで、前記特許文献2の技術では、前記カメラでの撮像により、走行状態の車両の車輪踏面の検査画像を得ている。しかしながら、これは車輪外周部の検査であるため、本発明で対象とする車輪側面等のディスク面の検査については考慮されておらず、適用することは難しい。
【0013】
上記に基づき、ディスク表面の検査を自動的(高効率)に行うために、車輪側面等のディスク面を撮像して検査する方式を考える。特に、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から撮像することにより、ディスク全面の検査を効率的に且つ精度良く実現したい。しかしながら、このような検査を考えた場合、以下のような問題が挙げられる。
【0014】
即ち、(1)被検査面であるディスク面は、ブレーキライニングで磨かれた状態であることから、表面が金属鏡面状態となり、撮像光学系(カメラ等)自身や周囲物が映り込んでしまう。この映り込みにより、撮像によるディスク表面状態の正確な把握が難しい。(2)ディスク表面には、ブレーキライニングとの摩擦の痕、いわゆる「しゅう動痕」が、無数の同心円状の微細な「きず」のようなものとして生じている。この「しゅう動痕」で照明光が正反射することで、ディスク面の特定の場所で直線上の輝線が発生する。この輝線により、撮像によるディスク表面状態の正確な把握が難しい。
【0015】
上記のような問題により、従来技術では、ディスクの表面状態を正確に(精度良く)撮像・検出することが難しい。特に、ディスク全面の検査を1回で効率的に且つ精度良く実現することは難しい。
【0016】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、鉄道車両の車輪部(車輪周辺部)のディスク(ブレーキディスク)を対象とした撮像による検査の技術に係わり、上記のような問題を解決し、ディスクの表面状態を正確に(精度良く)撮像・検出することができる技術、特に、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から撮像することにより、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。本発明の代表的な実施の形態は、前述のブレーキディスク面を対象として撮像・検査を行う装置(車両検査装置)及び方法等の技術であって、特に走行状態の車両のディスク面を対象として撮像光学系により撮像した画像を処理して検査する方式を用い、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0018】
本形態の検査装置は、被検査面(ディスク面)の撮像を行う撮像光学系(撮像装置)と、撮像した画像の情報をもとに検査のための情報処理を行う装置(検査制御装置)とを有する。撮像装置は、照明光源、カメラ(撮像センサ)等を含んで成る。特に、ディスク面を複数に分けて撮像する方式に対応して、複数の撮像光学系を用いる。
【0019】
(1:カメラの配置) 被検査面が鏡面状態であることから、カメラを被検査面(被照明領域)の法線上に設けた場合、カメラ等の撮像光学系自身がディスク面上に映り込んでしまい撮像画像に影響する。本発明では、それを抑止するため、カメラ(その光軸)を被検査面の法線から上下左右方向などで所定角度以上に傾けた位置に配置する。
【0020】
(2:照明光源の配置) また、本形態は、前記輝線などの発生(その影響)を抑止するため、被検査面のディスク中心を原点とする座標系(2次元平面座標系、極座標系)を仮定したとき、ディスク面は、ディスク中心を原点に4つの象限(面、領域)に分けられ、右上の象限を起点に第1象限として反時計回りに第2、第3象限とし、右下を第4象限とする。このとき、上の第1、第2象限が、前述の説明のように構造物で隠された形になり、左下の第3象限、右下の第4象限が撮像対象となる。以下、第3象限に対応する領域を第2の領域とも称し、第4象限に対応する領域を第1の領域とも称する。このとき、第2の領域を照らす照明光源(第1の照明光源)を、被照明領域とは異なる第1の領域上の空間に配置する。逆に、第1の領域を照らす照明光源(第2の照明光源)は、第2の領域上の空間に配置する。
【0021】
(3:走行時に撮像する構成) 本形態では、照明光源とカメラを含んで成る撮像光学系(撮像装置)を、検査対象の車両の走行する軌道に沿って配置する。軌道上、車輪(ディスク)が撮像光学系での撮像位置になったことを検知するセンサに同期して、ディスク面の領域を撮像して画像を取得する。上記構成により、走行状態の車両の車輪部のディスク面を撮像する。なお、上記センサに同期して撮像する構成については、例えば、特開昭64−405号公報(特許文献3)に記載の方法が使用できる。
【0022】
(4:ディスク面を複数に分けて撮像する構成) また更に、本形態では、ディスク面を複数に分けて撮像する方式に対応して、軌道に沿って撮像光学系(撮像装置)を複数並べて配置する。そして、これら複数の撮像装置(グループ)により、走行車両におけるディスク面(全面)を複数の領域に分けて複数の画像を撮像する。これにより1回の走行でディスク全面の検査画像を得て検査を行う。
【0023】
(5:特徴点の顕在化の特性を考慮した配置構成) また本形態では、ディスク表面に一般に発生する「きず」等のような特徴点を検出(抽出)する。当該特徴点の検出にあたり、撮像の際の特徴点の顕在化の特性(検出感度)は、ディスク面における特徴点の発生方向(形状)とそれに対する照明の方向とに関連性があり、それを考慮して、撮像光学系(照明、カメラ等)の配置等が構成される。
【0024】
(6:検出感度の差の補正) 上記のように特徴点に対する照明方向により特徴点の検出感度が変化する。従って上記のように当該検出感度が優って(高く)撮像できる位置に撮像光学系を配置しても、車両走行に伴うディスク回転に応じて、撮像画像範囲内における特徴点の位置が変わり、特徴点に対する照明方向が変化することで、撮像画像範囲内で検出感度が変化する。従って、本形態は、上記配置構成において、ディスク全面のうち、当該検出感度が相対的に劣る(低い)状態になる箇所(角度位置)については、当該特徴点の当該検出感度が相対的に優る(高い)状態になる時(当該位置に来るとき)の撮像画像を用い、合成(補正)処理等を行うことで検出感度の差を補正し、全体的に精度良い検査画像を得る。
【0025】
(7:照明限定手段) また本形態は、ディスク周辺に存在する台車構造物等の撮像の際の不要部による影響を排除・低減するために、撮像光学系におけるディスク面への照明光の光量面内分布等の構成に関して、上記不要部へ照明光が殆ど当たらないようにする照明限定手段を備える。これにより、鏡面状態のディスク表面への不要部等の映り込みを抑止し、ディスク表面状態が正確に把握できなくなることを防ぐ。
【0026】
上記のような特徴に対応して、本検査装置は、例えば以下のような構成である。
【0027】
(1) 本検査装置は、車両の車輪部のディスク面を撮像して検査する検査装置であって、車両の軌道(線路)に沿って設置され、軌道を通過する車両のディスク面の画像を、照明光源及びカメラを用いて撮像する撮像装置と、撮像装置による撮像画像を処理し、ディスク面における検査対象となる特徴点を抽出する処理を行う処理装置(検査制御装置)と、撮像画像及び特徴点の抽出処理結果を含むデータを保存する保存装置と、を備える。撮像装置は、ディスク面の被撮像領域(被照明領域)へ照明する照明光源と、被撮像領域からの反射光を撮像するカメラと、を備える。
【0028】
撮像装置において、ディスク面の被撮像領域(被照明領域)へ照明する照明光源は、ディスク(円形状領域)の中心(回転中心軸)を原点とする座標系における被照明領域を含む第1の領域に対応する空間ではなく、それとは異なる第2の領域に対応する空間に配置される。
【0029】
撮像装置において、ディスク面の被撮像領域からの光を撮像するカメラは、その光軸が、ディスク面(被照明領域を含む第1の領域)の法線に対して、上下左右等のいずれかの方向に所定角度以上の範囲内に傾けた位置となるように配置される。
【0030】
(2) 特に、上記検査装置において、撮像装置のカメラは、その光軸が、ディスク面(中心)の法線に対して下方向に傾けた位置となるように配置され、カメラの光軸とディスク面(中心)の法線との成す角度(α)は、15度〜30度の範囲内である。照明光源は、カメラの両側に第1及び第2の2つの照明光源が配置される。第1の照明光源は、ディスク面の座標系における第1の領域を照明し第2の領域上の空間に配置され、第2の照明光源は、ディスク面の座標系における第2の領域を照明し第1の領域上の空間に配置される。カメラの光軸と照明光源の光軸との成す角度(γ)は、30度〜70度の範囲内である。照明光源の光軸とディスク面の法線との成す角度(β)は、60度〜80度の範囲内である。
【0031】
(3) また、上記同様に撮像装置、処理装置及び保存装置等を備える検査装置において、前記撮像装置として、車両の走行状態でディスク面の円形状領域の全体を分割して撮像するために、少なくとも第1の系及び第2の系を含む複数の撮像装置を有する。
【0032】
上記撮像装置による撮像画像において、ディスク面における極座標系の角度(位置)に応じて発生する、検査すべき特徴点の検出感度が相対的に低下する角度の状況で前記第1の系の撮像装置により撮像される第1の部位を、当該特徴点の検出感度が相対的に高い角度の状況で撮像することができる位置に配置される第2の系の撮像装置により撮像する。そして、本検査装置は、第1の系の撮像装置による第1の撮像画像と、第2の系の撮像装置による第2の撮像画像とを、ディスク回転角度の違い(検出感度の差)を補正して合成処理し、ディスク面の撮像画像及び特徴点の抽出処理結果を含むデータを得る。これにより、ディスク面での特徴点の検出感度の低下する箇所についての撮像の精度を向上する。
【発明の効果】
【0033】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。本発明の代表的な実施の形態によれば、鉄道車両の車輪部(車輪周辺部)のディスク(ブレーキディスク)を対象とした撮像による検査の技術に係わり、前述のような問題を解決し、ディスクの表面状態を正確に(精度良く)撮像・検出することができる。特に、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から撮像することにより、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における車両検査装置に関する全体の配置等の構成を上側から示す説明図である。
【図2】実施の形態1で、検査対象の車両(車輪、ブレーキディスク等)の構成を側面から示す説明図である。
【図3】実施の形態1で、ディスク面を分割撮像する構成における撮像範囲などの例を示す説明図である。
【図4】実施の形態1で、検査装置における検査制御装置の構成例を示す図である。
【図5】実施の形態1の前提技術として、被検査面(ディスク面)に対する撮像カメラの配置に関し、側面から示す説明図である。
【図6】実施の形態1における撮像光学系の配置構成を示す説明図であり、(a)は、ディスク面の法線に対するカメラ及び照明光源の配置を横側(ディスク側面方向)から示し、(b)は、ディスク面の中心に対するカメラ及び照明光源の配置をディスク正面方向から示す。
【図7】実施の形態1の前提技術として、被検査面(ディスク面)の表面を拡大して側面方向の断面を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の前提技術として、ディスク面における特徴点の方向(形状)に対する照明方向(角度θ1)による影響(特徴点の顕在化の特性)について示す説明図であり、(a)は、ディスク面の座標系(極座標系)における特徴点の長手方向に対する照明光の角度(θ1)を示し、(b)は、当該角度(θ1)に応じた特徴点の顕在化の度合いを表すコントラスト(C)に関する実験データを示す。
【図9】実施の形態1の前提技術として、ディスク面における輝線の発生を示す説明図であり、(a)はシステム全体を示し、(b)は右側の照明のみを抜き出して示したものである。
【図10】実施の形態1に係わり、輝線の発生理由及び輝線に対策する構成を説明するための図であり、(a)は、ディスク面における「しゅう動痕」及び輝線を示し、(b)は、(a)のディスク表面断面を示し、(c)は、照明光源とカメラと輝線を示し、(d)は、「しゅう動痕」及び輝線を考慮した撮像光学系の配置構成を示す。
【図11】実施の形態1に係わり、建築限界等を説明するために、車両及びその周囲の断面を示す図である。
【図12】実施の形態1における、撮像光学系の最良の配置構成例を示す説明図であり、(a)は、ディスク面の中心に対するカメラ及び照明光源の配置をディスク正面方向から示し、(b)は、ディスク面の法線に対するカメラ及び照明光源の配置を横側(ディスク側面方向)から示す。
【図13】実施の形態1における、ディスク面の特徴点の位置に応じた特徴点の顕在化の度合いを説明する図であり、(a)は、ディスク面の座標系における、回転(角度θ2)による特徴点の位置の変化を示し、(b)は、(a)の角度θ2に応じた各位置の特徴点の顕在化の度合い(コントラスト(C))を調べた結果を示す。
【図14】本発明の実施の形態2における検査装置に関し、ディスク面を分割撮像する構成例を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態2における検査装置に関し、画像の合成方法を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態3における検査装置に関し、撮像の際の台車構造物に当たる照明光について説明する図であり、(a)は、ディスク及び台車構造物等を正面方向から示し、(b)は、(a)を側面方向から示す。
【図17】実施の形態3における、照明限定手段を備える撮像光学系等の構成を示す説明図である。
【図18】実施の形態3における、照明光源の内部構成例を示す図である。
【図19】他の実施の形態における、車軸に装架されたディスクブレーキの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0036】
(実施の形態1)
図1〜図13を用いて、本発明の実施の形態1の車両検査装置(以下、単に検査装置とも称する)について説明する。実施の形態1は、(a)車両走行状態でディスク面全面を複数に分割して撮像する構成(図1,図3等)、(b)不要物の映り込み等を避ける撮像光学系の配置構成(図6,図12等)、(c)建築限界を考慮した配置の構成(図11等)、(d)位置関係に応じた特徴点の顕在化の特性を考慮した構成(図8,図13等)、などを有する。
【0037】
<車輪部、軌道、車両検査装置>
図1は、検査対象(車輪部等)、軌道、及び検査装置300(そのうちの撮像光学系100)を含む、全体の配置等の構成を軌道及び車両の上側から示している。図1では、検査対象の車両全体については図示省略し、そのうちの車軸3と車輪2(ディスク1を含む)を1軸分のみを示した。また、検査装置300のうち撮像光学系100を示し、他の要素は後述する。
【0038】
車軸3と車輪2のセットは輪軸と呼び、車軸3に対し、車輪2(2a,2b)、及びブレーキディスク1(1a〜1d)等を有して成る。車輪2(2a,2b)は、線路(軌道)4(4a,4b)上をaの方向に走行する。
【0039】
本ディスク1の検査は、例えば検査場において線路4上を所定速度で走行状態の車両に対して行われる。車両は、aの走行方向に、例えば時速10km程度で走行する。また、aの方向の4つの撮像光学系100による各撮像タイミングを検知するためのセンサ(車輪検知センサ)21(21a〜21d),22(22a〜22d)が、線路4に沿って配置されている。
【0040】
本例では、検査対象となるディスク1(1a〜1d)は、各車輪2(2a,2b)の表裏の両側面に装架されている。即ち、1つの輪軸に対して合計4つのディスク1(1a〜1d)を有する。複数のディスク1(1a〜1d)に対応して、撮像光学系(撮像装置)100は、ディスク1aを撮像する撮像光学系101a、並びにディスク1b,1c,1dを撮像する撮像光学系101b,101c,101dといったように、線路4(4a,4b)の両脇にそれぞれ配置される。
【0041】
また、1つのディスク1(例えば車輪2aの表側に装架されたディスク1a)に対して、その撮像・検査のために、複数(本例では4つ)の撮像光学系(撮像装置)100(例えば101a〜104a)が、線路4(例えば4a)に沿って設置される。複数の撮像光学系100で1つのグループ(系)とする。ディスク1全面を複数(本例では4つ)の領域に分けて撮像するので、グループ毎にaの方向に沿って複数(4つ)の撮像光学系100が順に所定間隔で配置される。
【0042】
1つの撮像光学系100は、詳細は後述するが、主に、カメラ11(TVカメラ等の二次元撮像センサ)と照明光源12(12a,12b)から成る。
【0043】
センサ21,22は、車輪2が線路4上の所定の位置を通過すること(車輪2先端がセンサ21,22間のラインに到達したこと)を検知するものであり、例えばオムロン社製の光電センサE3S−Cのような光電スイッチを用いることができる。センサ21,22により、車輪2(ディスク1)が、対応する撮像光学系100の最適な撮像位置に移動して来たことを検知する。すると、それを基準とする所定のタイミングで、撮像光学系100は、ディスク1面を撮像する。
【0044】
<車両>
図2は、検査対象の車両の構成を示し、線路4上、車両(車両本体)7、台車構造物8、輪軸部(構成要素:3,2,1)などを側面から示している。車輪2は台車構造物8によって支持され、台車構造物8は車両本体7を支えている。車輪2の側面、即ちブレーキディスク1のおおよそ上半分は、台車構造物8により覆われており、容易に見ることはできない。
【0045】
<ディスク面>
図3は、ディスク1面を複数に分割して撮像する構成における撮像範囲などの例を示している。上記のように、ディスク1のおおよそ上半分については視認及び撮像ができないので、実施の形態1では、図3に示すように、ディスク1(例えば1a)の全面(円形状領域)を例えば4つの扇状(四分円)の領域(A〜D)に分割し、車両の走行に伴い、それぞれの領域を対応する撮像光学系100(例えば101a〜104a)により撮像する構成である。1つの撮像光学系100(例えば101a)は、ディスク1面のうち一部の領域(例えば領域Aを含む範囲R1)を撮像する。線路4上、ディスク1の第1の分割面(領域A)が真下になる位置(L1)に来たとき、第1の撮像光学系101aにより当該領域Aを中心にした範囲R1を撮像する。次に、車両の走行により車輪2及びディスク1の回転がbの方向に進んで、ディスク1の第2の分割面(領域B)が真下になる位置(L2)に来たとき、第2の撮像光学系102aにより撮像する。以降同様に、第3の面(C),第4の面(D)について、各位置(L3,L4)で第3、第4の撮像光学系103a,104aによりそれぞれ撮像する。これら4つの撮像光学系100(101a〜104a)によるグループ(第1の系とする)により、ディスク1面の全面(領域A〜D)を、1回の走行時に撮像することができる。
【0046】
矩形状の撮像範囲R1は、カメラ11が実際に撮影する範囲である。この撮像範囲R1の中には、最低限、A〜Dのような扇状の領域(被照明領域を含む)を含んでおり、当該領域を検査に使用する。
【0047】
<検査制御装置>
図4には、本実施の形態1の検査装置300における検査制御装置200の構成例を示している。図1の各撮像光学系(撮像装置)100は、検査制御装置200に接続され、全体として検査装置300が構成されている。図4では1単位の検査装置300を示すが、複数の各撮像装置100に関して同様の構成である。また、複数の撮像装置100を1つの検査制御装置200に接続して処理する形態なども可能である。
【0048】
撮像光学系(撮像装置)100は、例えばカバー(筐体)内に、カメラ11、照明光源12等が配置された構造である。本例では1つの撮像装置100内には2つの照明光源12(12a,12b)が設けられている。
【0049】
検査制御装置200は、タイミング回路211、照明制御回路212、画像入力回路213、画像処理回路214、画像保存回路215などを備える。また、検査制御装置200には、表示装置220や、図示しない検査者(管理者)のための操作入力装置などが接続される。検査制御装置200及びその各機能は、所定のコンピュータや回路のハードウェア及びソフトウェアにより実現される。例えば、PC等においてプロセッサによるメモリ上のプログラム処理実行や、LSI等において専用の回路などにより実現される。
【0050】
センサ21,22により車輪2が所定の位置に来たことが検知されると、それはトリガ信号としてタイミング回路211に入力される。これにより、タイミング回路211は、照明制御回路212に対してストロボ発光するように指令を出す。これにより、照明制御回路212から照明光源12(12a,12b)を制御して、ストロボ照明をディスク1面に対して発光する。またタイミング回路211は、照明光源12の発光期間に同期させるための信号をカメラ11及び画像入力回路213へ出す。
【0051】
カメラ11は、照明によるディスク1面からの反射光を入力することにより撮像する。照明及び撮像に関する配置等の条件については後述する。
【0052】
画像入力回路213は、カメラ11からの画像信号(撮像画像)を、前記発光期間に同期する信号のタイミングに従って入力する。このように、短時間の発光時間の画像を入力することにより、走行状態の車両であっても、静止状態の場合と同様の撮像が可能である。画像入力回路213は、撮像画像を、計算処理可能な形式、例えばデジタル値に変換する。
【0053】
このようにして得られた画像の信号(データ)を、画像処理回路214に入力して検査のための情報処理を行い、その結果の情報(D1)を出力する。特に、画像処理回路214は、デジタル値の入力データに対して、特徴点の抽出処理(所定の画像処理)を行う。これにより、特徴点の位置(座標)、大きさ及び長さなどの、画像上の特徴量が計測される。そして、その特徴点抽出処理結果のデータは、その原画像(撮像画像)またはその処理画像または両方のデータと共に、検査処理結果データ(D1)として、画像保存回路215に送られて保存される。なお詳しい画像処理(検査)の内容については適宜設計が可能である。
【0054】
画像処理回路214での処理により検出した画像等を含む検査処理結果のデータ(D1)は、画像保存回路215に保存される。データ(D1)には、撮像の日時や、車両7、台車8、車輪2、ディスク1などの対象(部位)に関する認識可能な情報(識別番号など)などを共にログ(履歴)として記録、管理する。これにより、後から、追跡、照合などが可能になる。
【0055】
また、画像処理回路214からのデータ(D1)、または画像保存回路215に保存されたデータ(D2)は、表示装置220に出力して画面に表示させることができる。検査者(管理者)は、これらのデータを参照することにより、撮像画像や処理結果等をすぐに確認したり、または後から見直したり、ログを参照して被検査面の状態変化を時間を追って確認したり等が可能である。
【0056】
また、画像処理回路214での処理により、例えばある程度以上大きな特徴点を検出した場合、例えば計測値が予め決められた設定値(閾値)を超えた場合には、外部(管理者等)に対して警報(D3)を発して報せたり、ログとして記録したりすることもできる。
【0057】
<撮像光学系>
次に、図5〜図13等を用いて、撮像光学系(撮像装置)100(カメラ11、照明光源12)の詳しい構成について説明する。
【0058】
前述のように、ディスク1表面は、ブレーキ動作の際にブレーキライニングによって磨かれることにより鏡面状態となっている。このため、撮像光学系100自身や周囲物の映り込みにより、ディスク1の表面状態の正確な把握が難しい。
【0059】
図5は、被検査面(ディスク面)に対するカメラ11の配置に関する問題を説明するために、例えば、車輪2(例えば2a)に装架されたディスク1(例えば1a)と、その被検査面の法線(n)に対する撮像カメラ11の位置関係を側面から示している。
【0060】
図5のように、カメラ11を、被検査面であるディスク1面(s)の法線(n)と同軸上に配置した場合、法線(n)に対する入射角と反射角が等しくなるため、撮像しようとするディスク1面が鏡面状態になっているため、カメラ11自身の姿がディスク1面に映り込んでしまう。そのディスク1面をカメラ11で撮像すると、不要な自身の像を含めて撮像することになり、ディスク1表面状態を正確に検出することができない。
【0061】
<カメラの配置>
そこで、図6(a),(b)に示すように、実施の形態1では、撮像光学系100のカメラ11を、ディスク1面(被照明領域)の法線(n)に対して所定角度(α)で傾けた位置に配置する構成である。なお、ディスク1面の法線(n)とカメラ11の光軸(q)との成す角度をαとする。カメラ11の光軸(q)は、ディスク1の中心(c)よりも少し下の位置の法線(n)に対し下方向に角度αで傾いている。
【0062】
<照明光源の配置>
続いて、照明光源12の配置について説明する。図6(a),(b)には、照明光源12の配置も示している。ディスク1面の法線(n)と照明光源12の光軸(p)との成す角度をβとする。また、カメラ11の光軸(q)と照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))との成す角度をγとする。
【0063】
図7は、被検査面であるディスク1の表面(s)を拡大して側面方向の断面を示す。照明光源12からの照明光32を、ディスク1面の法線(n)31に対し入射角35で傾けて入射する。すると、通常のディスク1の表面37では、当該照明光32が正反射して、入射角35と同じ角度で反対側に反射角36で反射光33として反射する。
【0064】
検出したい対象である「きず」のような特徴点38は、微視的に様々な方向の面を持った凹部である。そのため、特徴点38に対する、上記同様の照明光32の入射の際は、散乱光34として反射する。
【0065】
そこで、上記反射角36(反射光33)とは異なる方向からカメラ11により撮像する配置構成とすれば、通常の(平坦な)ディスク1面では暗くなり、特徴点38では明るくなる撮像画像を得ることができる。
【0066】
従って、本実施の形態1では、例えば図6(a),(b)に示すように、カメラ11の両側に角度γの位置に照明光源12(12a,12b)を配置し、ディスク1面を斜めから照明する配置構成とする。これにより、通常ディスク1面では暗く特徴点38では明るい撮像画像を得ることができる。2つの照明光源12(12a,12b)は、ディスク1中心及びカメラ11の光軸(q)に対して対称的な配置である。
【0067】
<特徴点の顕在化の度合い>
ここで、更に、撮像光学系100のそれぞれの要素(11,12)に関する最適な配置の角度などについて以下に述べる。
【0068】
図8は、ディスク1面における特徴点(38)の方向(形状)に対する照明方向(角度)による影響(特徴点(38)の顕在化の特性)について示す。図8(a)は、特徴点(38)を有するディスク1平面の座標系(極座標系)において、特徴点(38)(例として図8中の縦方向に長い形状)の長手方向に対する照明光(32)の照射の角度θ1を示す。図8(b)は、当該角度θ1に応じた特徴点(38)の顕在化の度合い(検出感度)の特性(実験データ)を示す。
【0069】
特徴点(38)の形状(発生方向)の長手方向に平行な角度を基準としてθ1=0度とする(ここではカメラ11の光軸(q)も同様とする)。照明光32aはθ1=0度のときである。特徴点(38)の長手方向に対し直角な角度がθ1=±90度となる(ここでは反時計回りを+、時計回りを−とする)。照明光32bはθ1=90度のときである。なお実際にはディスク1面に対し所定の仰角(図6(a)の(90度−β))で照明される。またカメラ11(撮像)の位置は基準の位置(θ1=0度)に固定して考える。また「きず」のような特徴点(38)は、例示(図8(a),図13)するように、経験上、ディスク1面の半径方向に長くなるような形状になりやすいことがわかっている。
【0070】
特徴点(38)の顕在化の度合い(検出感度)は、下記式に示すコントラスト(C)を用いた。即ち、[コントラスト(C)]=[特徴点の検出輝度(B)]/[特徴点周囲の通常部の検出輝度(A)]である。本式でAが小さいほど、またBが大きいほど、Cが大きくなる。コントラスト(C)が大きいほど、特徴点(38)の顕在化の度合いが高く、安定して精度良く特徴点(38)を抽出できることを表す。
【0071】
図8(b)に示すように、θ1=±90度の方が、θ1=0度の方よりも、コントラスト(C)、即ち特徴点(38)の顕在化の度合いが高いことがわかる。これは前記図7の通り、検出する特徴点(38)からの光が凹部の角部などからの散乱光34であることから、角度θ1=0度付近の方向では、凹部の角部などに照明光が照射され難く、θ1=±90度付近の方向では照明光が照射されやすいためと考えられる。
【0072】
図8(b)の実験データは、ディスク1面の法線(n)と照明光(p)との角度(図6(a)の角度β)が75度程度とした場合(言い換えればディスク1面(s)と照明光(p)との角度(仰角)が15度程度とした場合)の結果である。
【0073】
上記のことから、図6(b)に示した、カメラ11の検出(撮像)の方向(q)及び配置の位置に対する、照明光源12(12a,12b)の照射の方向(p)及び配置の位置に関する角度γは、0度に近い方ではなく、なるべく90度に近い方が、検出感度が高くなるので望ましいことがわかる。
【0074】
しかしながら、ディスク1面上で特徴点が発生する位置等は特定できない(一定ではない)。そのため、特徴点に対する照明光の角度θ1が図8のように90度付近になったときにいつも撮像するように撮像光学系100(照明光源12)の配置を構成することは、できない。また後述するように、車両に係わる設備には、「建築限界」が存在するので、その観点からも、上記配置構成は難しい。
【0075】
そこで、本実施の形態1では、カメラ11については、図6(a)のように、ディスク1面(被照明領域)の法線(n)から下方で且つ車輪2(下端)よりも下方となる角度αの位置に配置され、それと共に、照明光源12(12a,12b)については、図6(b)のように、カメラ11に対する配置の角度γを70度よりも小さく例えば60度程度とするように構成した。
【0076】
なお、カメラ11及び照明光源12が、車輪2(下端)よりも下方、即ち線路4よりも下方に配置されるが、検査場では線路4よりも下方に空間が設けられているため、当該配置が可能である(図11)。また、その他の場所でも地中に穴などを掘るなどすれば、当該配置が可能である。
【0077】
上記に基づき、前記図6(b)のようにカメラ11の方向(q)に対する照明光源12の配置の角度γを60度付近に設定した場合を考える。
【0078】
<輝線、きず>
次に、図9,図10等を用いて、前述した問題の1つである輝線について考える。
【0079】
図9は、図6(b)の構成(γ=60度)に基づき、輝線の発生について示す。カメラ11の光軸(q)に対して角度γ(60度)で照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))が配置されている。これによりディスク1の撮像面(例えば図3の位置L1における領域Aを中心に含む撮像範囲R1)を照明する。すると、従来技術の場合、41a,41bとして示すように、明るく輝く直線状の部分(a−a´,b−b´)が発生する。本明細書では、これを輝線(41a,41b)と呼ぶ。これは検査(撮像)のためには余計な情報(ノイズ)になる。
【0080】
図10を用いて、輝線の発生理由などについて説明する。図10(a)は、ディスク1面における「しゅう動痕」(42)及び輝線(41)を示す。図10(b)は、図10(a)のディスク1表面断面を示す。図10(c)は、照明光源12とカメラ11と輝線(41)を示す。図10(d)は、「しゅう動痕」(42)及び輝線(41)を考慮した撮像光学系100の配置について示す。
【0081】
ディスク1表面は、前述のようにブレーキ動作の際にブレーキライニングが押え付けられ、その摩擦によりブレーキ力が生じるものである。このとき、ディスク1表面には、一般に極微細な「きず」のような特徴点(38)が生じる。ディスク1は回転中心(c)に対して精度良く回転しているので、図10(a)のように、同心円状の溝のような「しゅう動痕」42(42a,42b,42c)になる。即ち、しゅう動痕(42)の円弧の中心はディスク1の回転中心(c)に等しい。
【0082】
これは、ディスク1面を立体的に考えると、図10(b)の断面(A−A´)のようになる。即ち、ディスク1の表面37(s)に対し、斜め方向から照明光を照射すると、図10(b)のように、溝(「しゅう動痕」42)の無い平らな箇所では、照明方向と反対側へ反射するのに対し、各溝(「しゅう動痕」42)の壁面等に当たった照明光は、当該壁面の法線に従った入射角と反射角の関係により、照明方向と同じ側へ反射(正反射)してくる。この溝(「しゅう動痕」42)は、図10(a)のように、ディスク1平面で考えると同心円状になっている。
【0083】
そこで、図10(c)に示すように、上記正反射する部分がA−A´のように直線状に並び、線状に正反射して明るい部位、即ち輝線41が発生する。溝(「しゅう動痕」42)の壁面の角度は、これら立体的及び平面的な要素から成っている。平面図では入射角と反射角が等しい位置に輝線41(A−A´)が発生していないのは、このためである。
【0084】
この輝線41の発生箇所は、カメラ11と照明光源12とディスク1との位置関係で決まるものであるが、特徴点(38)がこの輝線41の箇所に来たときに撮像する状況となる可能性もある。前述したように、特徴点(38)で発生した散乱光(34)を検出して検査するものであるが、一般的に正反射光の方が輝度は高く、上記状況の場合には特徴点(38)の検出が難しくなる問題がある。
【0085】
そこで、本実施の形態1では、この輝線(41)が発生しないように(撮像画像において輝線の影響をできる限り排除できるように)、カメラ11と照明光源12との位置関係を規定している。
【0086】
図10(d)において、照明光源12(12a)からの照明光32の、しゅう動痕(42)での正反射光は、しゅう動痕(42)の円弧の法線44に対して、入射角35と反射角36が等しくなる方向へ、反射光33のように反射する。従って、しゅう動痕(42)の円弧の法線44が、カメラ11の光軸43(p)(Y軸に重なる)に対して、照明光源12(12a)と反対方向になる場合は、当該光がカメラ11には入射しない(即ち撮像画像における輝線41の影響を排除できる)。
【0087】
図10(d)で、ディスク1面(円形状領域)における中心(c)を座標原点とする座標系(X−Y)を考える。即ち、例示するように、ディスク中心を原点に4つの象限(面、領域)に分けられ、右上(領域45d)の象限を起点に第1象限として、反時計回りに第2象限(領域45c)、第3象限(領域45b)となり、右下(領域45a)が第4象限になる。なおここでいう「象限」は、ディスク1の回転によらずに固定と考える(前記図3のA〜Dのような領域は回転により位置が変動する)。このとき、上の第1象限(対応する領域45d)、及び第2象限(対応する領域45c)は、前述のように構造物(8)で隠された形になり、左下の第3象限(対応する領域45b)、右下の第4象限(対応する領域45a)が撮像対象となる。なお前述のように、第4象限に来る領域(45a)を第1の領域と称し、第3象限に来る領域(45b)を第2の領域と称する。
【0088】
本実施の形態1では、図10(d)の左下の象限に対応する第2の領域(45b)を照明する第1の照明光源12(12a)については、隣の右下の象限に対応する第1の領域(45a)上の空間に配置し、第1の領域(45a)を照明しないようにする(言い換えれば照射中心を図10(d)のように第2の領域寄りにして第1の領域よりも第2の領域への照明量を多くする)。これにより、前述の輝線(41)を発生しない条件を満たすことができる。また、これと対称に、図示しないが、右下の象限に対応する第1の領域(45a)を照明する第2の照明光源12(12b)については、隣の左下の象限に対応する第2の領域(45b)上の空間に配置し、第2の領域(45b)を照明しないようにする。これにより、同様に輝線(41)を発生しない条件を満たすことができる。
【0089】
これら(12a,12b)により、カメラ11の撮像範囲(図3、R1)に含まれる領域(例えばA,B)を照明して撮像することができ、輝線の影響を排除できる。なお実際には、照明光源12については、図6(a)に示すように、ディスク1平面(s)上ではなく、当該平面(s)に対して斜め下(仰角:90度−β)から照射するように配置される。よって、例えば左下の象限の領域を照明する第1の照明光源12aは、右下の象限の領域上の空間に配置されることになる。
【0090】
<建築限界>
さて、鉄道車両を支障無く走行するために、軌道4上に確保すべき空間、即ち「建築限界」と呼ばれる制約が存在し、いかなるものもこの限界(領域)内に入ることは許されない(久保田博著「鉄道工学ハンドブック」(pp54〜55、グランプリ出版)などを参照)。即ち、本実施の形態1における撮像光学系100等の物理的要素についても、この建築限界を超えて車両に近付けて配置することは許されない。
【0091】
図11において、建築限界に係わり、車両7及びその周囲の断面を示している。車両7に対する建築限界46を破線で示す。車両7の下部には、図1のような車輪2(2a,2b)の外側及び内側の各ブレーキディスク1(1a〜1d)を撮像するための各撮像光学系100(101a〜101d)が配置される。しかしながら、建築限界46に従い、各撮像光学系100、特に、車輪2の内側のディスク1b,1cを撮像するための撮像光学系101b,101cについては、線路4(4a,4b)の上面(4c)よりも上には配置することができない。
【0092】
なお、車両7の近隣には、撮像時における外光などの遮光、不要物の映り込みの排除のために、板などの遮光物81の存在(設置)が望ましい。撮像光学系100を用いた撮像は、このように遮光物81などを利用して外光などが入らない暗環境での照明(ストロボ)により行われることが望ましい。
【0093】
<好適な配置例>
以上の説明に基づき、図12以下を用いて、本実施の形態1における撮像光学系100に関する好適な配置構成例(条件)を説明する。図12は、前記図6同様に、撮像光学系100の配置に関して示す。図12(a)は、ディスク1正面方向から見たもの、図12(b)は、ディスク1側面方向から見たものである。
【0094】
まず、カメラ11については、図12(a)のように、ディスク1の正面、ディスク中心(c)に対して光軸(q)を配置する。このとき、図12(b)に示すように、カメラ11の光軸(q)とディスク1面の法線(n)との成す角度αは、15度〜30度の範囲内の値にすると共に、ディスク1面の法線(n)から下方に傾ける。特に角度αを20度程度とする。
【0095】
次に、照明光源12については、図12(a)のように2つの照明光源12a,12bをカメラ11の光軸(q)の両側に対称的に配置し、カメラ11の光軸(q)と各照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))との成す角度γは、30度〜70度の範囲内の値とする。特に角度γを60度程度とする。
【0096】
また、照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))とディスク1面の法線(n)との成す角度βは、60度〜80度の範囲内の値とする。特に角度βを75度程度とする。なお、これは照明光源12の光軸(p)とディスク1面(s)との成す角度で表せば、10度〜30度の範囲内の値(特に15度程度)である。
【0097】
また、前述(図10)したように、第1の照明光源12aについては、図12(a)に斜線で示した53aの範囲内であるディスク1面の左下の象限に対応する第2の領域を中心に照明し、右下の象限に対応する第1の領域を照明しないようにし、第1の領域に対応する空間上の位置に配置される。同様に、第2の照明光源12bについては、ディスク1面の右下の象限に対応する第1の領域を中心に照明し(53aのカメラ光軸に対して線対称位置(図示せず))、左下の象限に対応する第2の領域を照明しないようにし、第2の領域に対応する空間上の位置に配置される。
【0098】
<特徴点の顕在化の特性>
本実施の形態では、走行車両の回転する車輪のディスク面(動いている対象物)を2次元撮像する方式を用いるため、その特有の問題点(精度を下げる要因)として、撮像の際のディスク面における特徴点の顕在化の特性(検出感度)の影響がある。ディスク回転に伴い、ディスク面の座標系における特徴点の位置及び方向(形状)が変化(移動や回転)し、当該特徴点に対する照明方向が変化する。これにより、状況に応じて、検出感度の高低の差が存在する。
【0099】
この点を考慮して、本実施の形態1では、検出感度が高くなる状態で撮像できるように撮像光学系100の配置等が構成される。検出感度が高くない状態の箇所の撮像画像については、検出感度が高い状態に来たときの撮像画像を用いて、合成処理等を行うことで、精度良い検査画像を得る。以下、このような構成について説明する。
【0100】
図13には、図12までの条件(γ=60度、β=15度)を満たす照明光源12(12a,12b)及びカメラ11を持つ撮像光学系100により撮像した場合において、ディスク1面の特徴点の位置(角度θ2)に応じた特徴点の顕在化の度合い(前述のコントラスト(C))を調べた結果を示す。図13(a)は、ディスク1面の座標系における、回転(角度θ2)による特徴点(38)の位置の変化を示す。ディスク1面の座標系における回転による角度をθ2とする。例として特徴点38は図8(a)のような形状である。ディスク1面における同一の特徴点(38)が、カメラ11の光軸(q)の位置(Y軸の負方向、線路4に近い下方向)にあるときを、θ2=0度とする。図13(b)は、図13(a)の角度θ2(±90度の範囲)に応じた各位置の特徴点の顕在化の度合い(コントラスト(C))を調べた結果を示す。
【0101】
ディスク1の回転(角度θ2)により、特徴点の位置・方向が変化し(図13(a))、それに応じて特徴点に対する照明の角度θ1が変化し(図8)、これらに応じて、特徴点の顕在化の度合いが異なる。
【0102】
図13(a),(b)のように、角度θ2により差はあるが、ほぼθ2=±45度の範囲39(例えば図3の位置L1の領域Aに対応する範囲)においては、コントラスト(C)が十分に高く、特徴点が顕在化して検出ができている。
【0103】
本実施の形態1では、上記を考慮して、特徴点の検出感度が高くなる位置で撮像できるように、照明光源12及びカメラ11の配置を図12のように規定している。
【0104】
例として、図13(a)のθ2=−45度の位置(図10(d)では左下の領域)に特徴点(38)が来たとき、図12(a)の第1の照明光源12aにより当該位置(領域)を照明し、カメラ11により撮像する。このとき、検出感度に関しては、図8(a)のθ1=+90度に相当し、図13(b)のθ2=−45度付近に示すように、コントラスト(C)が高く、即ち特徴点(38)を感度良く検出できる。
【0105】
以上のようにして、カメラ11によって撮像された画像は、前述のように図4の検査制御装置200により処理される。
【0106】
実施の形態1によれば、車両走行状態でディスク面全面を複数に分割して撮像する構成において、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる。また、建築限界の制約に適合した構成となっている。また、不要物の映り込み等を避け、特徴点の顕在化の特性を考慮した構成により、特徴点を感度良く正確に検出することができ、安定した精度良い撮像・検査が可能である。
【0107】
(実施の形態2)
次に、図14等を用いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2の構成の基本的な部分は実施の形態1と同じであり、異なる部分としては、撮像光学系を増やし、前述の検出感度の差を補正する合成処理を行う構成を有する。
【0108】
前記実施の形態1では、ディスク1面を図3のように例えば4つの領域(A〜D)に分割して、それらに対応して4つの撮像光学系100(101〜104)(第1の系とする)を設け、これらによる領域毎の撮像によりディスク1全面を撮像する構成としている。一方、実施の形態2では、第1の系の撮像光学系100(101〜104)に対して、更に4つの撮像光学系100(105〜108)を補間するように追加して配置し、合計8つの撮像光学系100による1つのシステムを構成している。なお図示しないが各撮像光学系100に対応して検査制御装置200なども有する。
【0109】
実施の形態1(図3)では、車輪2の回転(b方向)の90度単位での4つの位置L1〜L4に応じた4つの撮像装置100による第1の系である。実施の形態2では、図14のように、第1の系を補間する位置L1’〜L4’に応じた4つの撮像装置100による第2の系を有する。第1、第2の系を合わせて、車輪2の回転(b方向)の45度単位での8つの位置に応じた8つの撮像装置100によるシステムである。
【0110】
実施の形態1(図13)で説明したように、特徴点(38)がディスク1面上のどの箇所に来たときに撮像するかによって、特徴点(38)の顕在化の度合い(検出感度)が異なる。例えば、図3の第1の系における領域A〜Dをそれぞれ中心(対象)にして照明及び撮像する場合、図13のように、角度θ2が45度ずれた位置では検出感度の大小の差がある。
【0111】
そこで、図14に示すように、車両走行及び車輪2及びディスク1の回転により、上記検出感度が相対的に低い位置(例えばθ2=0度)が、検出感度が相対的に高い位置(例えばθ2=±45度)に来たときに撮像できるように、第1の系の位置(L1〜L4)に対して補間する位置、即ちそれぞれ45度ずれた位置(L1’〜L4’)に、第2の系の撮像装置100を設置した。これにより、同じ特徴点の検出に際しても、45度ずれた各位置の撮像画像が得られるので、検出感度が高い方の撮像画像を利用することができる。
【0112】
図14の場合、8つの撮像装置101〜108により、車輪2の45度の回転毎に、各象限の領域を含む撮像範囲R1を撮像するようにしている。例示する撮像基準点Sの45度回転の位置毎に撮像可能である。第1の系により図3のように各領域A〜Dを中心に撮像し、第2の系により各領域A〜Dの境界を中心に撮像する。
【0113】
そして、本システムでは、検査制御装置200により、各撮像光学系100(101〜108)での撮像画像、またはその画像からの特徴点抽出結果をもとに、前述のディスク1面上の位置等による特徴点の検出感度の差(図13)を補正するように合成処理を行うことができる。これにより、検出感度の差を無くす、または低減して、高感度で安定した撮像・検査を実現できる。
【0114】
上記合成処理(補正処理)の例について、図15を用いて説明する。図15(a)は、図14のL1およびL1’の位置にて、撮像光学系101および105にて撮像するときの位置関係の例を示したものである。図15(a)の左側のように、L1の位置にあるとき、特徴点38は、ディスク1のAの領域かつ車輪の真下にあったとする。このとき撮像光学系101で範囲R1を撮像した画像は、図15(b)の92である。車輪およびディスク1がb方向に回転して、L1’の位置に来ると、図15(a)の右側のような位置関係になる。このとき撮像光学系105の同様の画像は93である。図13で説明したように、図15(a)の左側の状態(位置L1)、即ち特徴点がθ2=0度の位置にあるときは、顕在化の度合いが若干低い。このため、画像92のように特徴点が例えば途切れ途切れに検出されることがある。ここで図15(a)の左側の状態(位置L1)においては、Aの領域全面の顕在化の度合いが低い訳ではなく、±45度付近、例えば、図中のAの文字のある付近(境界付近)は顕在化の度合いが高いということに注意が必要である。次に図15(a)の右側の状態(位置L1’)、即ち特徴点がθ2=45度の位置にあるときは、顕在化の度合いが高い(良い)。このため、画像93のように特徴点が正確に検出される。
【0115】
以下、図15(b)により合成処理(補正処理)の例について説明する。画像92と画像93を撮像した際に、撮像対象が45度回転していることは、撮像光学系101,105の設定から既知であるので、例えば画像93を、ディスク中心位置に対応する座標を基準に時計回りに45度回転させれば、ディスク1面の画像92と同じ位置を撮像した画像となる(画像94)。このとき、画像93に写っていない領域は無効であり、かつ、ディスク1面以外は不要であるので、回転後の有効な領域は、画像95の斜線部になる。そこで、画像92と画像94との間で画像95の斜線部を合成することによって、それぞれの角度θ2で撮像した画像の顕在化度合いが低い場所を補正することができる。
【0116】
以下、合成方法について説明する。先に説明したように撮像光学系100は、特徴点を明るく検出するような設定になっている。そこで画像92と画像94の、画像95の斜線部に相当する領域において、画像の同一座標の画素の値が大きい(即ち明るい)方の値を合成後の画像96の当該画像座標の画素の値とする。以上の処理により、画像96のような有効領域全面において、特徴点を正確に捉えた画像を得ることができる。また、前記無効な領域については、他の撮像系で撮った例えばL2,L2’,……の画像から順次得られることは、これまでの説明より明らかである。
【0117】
(実施の形態3)
次に、図16〜図18等を用いて、実施の形態3について説明する。実施の形態3の構成は基本的な部分は実施の形態1と同じであり、異なる部分として、照明限定手段を有する。
【0118】
前記図2のように、車両7における車輪2及びブレーキディスク1のほぼ上半分の領域は、台車構造物8などにより覆われている。また前記図12では好適な撮像光学系100(照明光源12及びカメラ11)の配置の条件を説明した。このとき、照明光源12からの照明光で台車構造物8に当たった光が、ディスク1表面に反射して、カメラ11に検出されることが懸念される。
【0119】
図16は、撮像の際の台車構造物8に当たる照明光について示す。図16(a)は、ディスク1及び台車構造物8等を正面方向(車両7の側面方向)から示す。図16(b)は、図16(a)を側面方向から示す。照明光源12(12a,12b)からの照明光が広がりを持ち、台車構造物8の部位に対しても照射されると、台車構造物8の部位からの光(正反射光または散乱光)51が、ディスク1面(s)で反射して、それを含む光52が、カメラ11に検出される。光52は、ディスク1表面自体の情報、及び台車構造物50の反射像の情報の両方が含まれてしまっている。これら台車構造物8の光51は、ディスク1表面自体の情報ではないため、不要かつ有害なものであり、排除する必要がある。実施の形態3では、この排除の手段として、以下の照明限定手段を備える。
【0120】
図17は、図16(b)に対し、実施の形態3で照明限定手段を備える構成における照明等を示す。実施の形態3では、照明光源12による照明光の照射範囲が、図17の光(照射範囲)61に示すように、台車構造物8に照射されないように構成される。このため、照明光源12に、台車構造物8に光が当たらないようなマスクを設けることにより、輝度分布を制御する。
【0121】
これにより、ディスク1面からカメラ11への光62は、ディスク1表面の情報を含み台車構造物8の反射像を含まない光である。
【0122】
図18には、上記排除(照明限定手段)のための照明光源12の構造例を示す。ストロボランプなどの光源71からの光を、レンズ72により一旦焦点位置に集光し、この集光位置近傍にマスク73が配置されている。マスク73を通った照明光を、レンズ74により、被照明領域となるディスク1面上に結像させる(光75)。この構成により、台車構造物8の部位に照明光を照射することなく、ディスク1表面の対象箇所にのみ照明光を照射することができる。そのため、台車構造物8からの有害な反射光の影響を排除・低減でき、特徴点を高感度に検出することができる。
【0123】
(他の実施の形態)
以上説明した実施の形態では、図1のように車輪2の側面(両側面)にディスク1が装架された方式のディスクブレーキに関する検査の構成を説明した。本発明は、これに限らず、例えば図19のように、車軸3に装架されたディスクブレーキ1Bを対象とした検査の構成についても同様に適用することができる。図19の輪軸部90では、車軸3の両端の車輪2ではなく、その間の一部に円盤形状のディスクブレーキ1Bが装架されている。このディスクブレーキ1Bに対して前述同様に撮像光学系100を配置すればよい。
【0124】
以上説明したように、各実施の形態によれば、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から複数に分けて撮像することにより、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる。特に、被検査面(ディスク面)からの不要な正反射光等を検出せずに、ディスク表面に発生している「きず」等の特徴点を、感度良く正確に検出することができ、安定した精度良い撮像・検査が可能である。
【0125】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、鉄道車両の検査技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
1(1a〜1d),1B…ブレーキディスク(ディスク、ディスクブレーキ)、2(2a,2b)…車輪、3…車軸、4(4a,4b)…線路(軌道)、4c…線路上面、7…車両(車体、車両本体)、8…台車(台車構造物)、11…カメラ(センサ)、12(12a,12b)…照明光源、21(21a〜21d),22(22a〜22d)…センサ(車輪検知センサ)、32,32a,32b…照明光、33…反射光、34…散乱光、35…入射角、36…反射角、37…ディスク表面、38…特徴点、39…範囲、41(41a,41b)…輝線、42(42a〜42d)…しゅう動痕(溝)、43…カメラの光軸、44…しゅう動痕の円弧の法線、45a〜45d…ディスク面の座標系の領域、46…建築限界、51…光、52…光、61…光(照明範囲)、62…光、71…光源、72,74…レンズ、73…マスク、75…光、81…遮光物、90…輪軸部、92,93,94,95,96…画像、100(101〜108)…撮像光学系(撮像装置)、200(201〜208)…検査制御装置、211…タイミング回路、212…照明制御回路、213…画像入力回路、214…画像処理回路、215…画像保存回路、220…表示装置、300(301〜308)…検査装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の検査の技術に関し、特に、車輪側面等に装架されたブレーキディスク(以下、単にディスクとも称する)の検査の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、その安全運行のため、各箇所についてそれぞれ決められた周期で検査を含む点検・整備などが検査場などにおいて行われている。そのうち頻繁に行われる検査として、車両の構成部品を取り外さない状態で行うものがある。このとき、車輪周辺部(車輪部)の検査については、検査場内に車両を停車させた状態で、検査員による目視確認によって行われる。しかしながら、一般に鉄道車両の車輪部のおおよそ上半分は構造物(台車構造物)に覆われており、その覆われた部分については目視確認することができない。
【0003】
車輪周辺部の検査項目として特に、車輪の両側面等に取り付けられたブレーキ用のディスク(ブレーキディスク)を対象とした点検(検査)がある。ブレーキディスクは、ブレーキライニングで車輪部のディスクをはさみ込むことによる摩擦によりブレーキ力を生じさせ、車両を停止させるものである。このディスクは、様々なストレスがかかるため、異常が発生していないかどうかの点検、特にディスク表面の検査は、重要なものである。
【0004】
上記ブレーキディスクについても、同様に、構造物により覆われた部分については、目視確認による検査はできない。また、頻繁に構成部品を取り外して検査することは手間・コストがかかり現実的ではない。
【0005】
ディスク表面の検査を自動的(高効率)に行うための、先行技術としては、例えば、特開平11−230912号公報(特許文献1)に記載の「表面欠陥検出装置及びその方法」がある。ここでは、シート状レーザ光をディスク面上に照射し、その散乱光と正反射光を別々のセンサでとらえて、それらの強度比から表面の異常(欠陥)を検出する技術が開示されている。
【0006】
また、その他の車輪周辺部の検査項目としては、車輪がレールと接する部分、即ち踏面の検査がある。車輪踏面についても、車両の停車状態では、その全周を目視確認により検査することはできない。
【0007】
車輪踏面の検査に関する先行技術としては、例えば、特開平7−174672号公報(特許文献2)に記載の「車輪踏面欠陥検査装置」がある。これは、車両の走行中にカメラで車輪踏面を撮影することで検査を行うものである。軌道(線路)脇に設置した複数のカメラによって、走行車両の車輪踏面(その全周)を車輪円周方向で複数に分割して複数の画像を撮像し、これにより全周(1周)分の検査画像を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−230912号公報
【特許文献2】特開平7−174672号公報
【特許文献3】特開昭64−405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
鉄道車両の車輪部のディスク(ブレーキディスク)面を対象とした検査に関して、前述の理由から、1回の停車状態で構成部品を取り外さない状態で当該ディスク全面を目視確認等により点検(検査)することは難しい。
【0010】
前記特許文献1の技術では、シート状レーザ光の照射される1直線上の情報しか得られないため、車輪等を回転させるか、照明/検出系(撮像光学系)を円周方向に動かすか等しないと、ディスクの面の情報を得て検査することができない。よって、停車状態の車両のディスクの検査に適用することは難しい。
【0011】
また、車輪踏面の検査についても、ディスク面の検査の場合と同様に、1回の停車状態では、踏面の全周の検査はできない。
【0012】
そこで、前記特許文献2の技術では、前記カメラでの撮像により、走行状態の車両の車輪踏面の検査画像を得ている。しかしながら、これは車輪外周部の検査であるため、本発明で対象とする車輪側面等のディスク面の検査については考慮されておらず、適用することは難しい。
【0013】
上記に基づき、ディスク表面の検査を自動的(高効率)に行うために、車輪側面等のディスク面を撮像して検査する方式を考える。特に、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から撮像することにより、ディスク全面の検査を効率的に且つ精度良く実現したい。しかしながら、このような検査を考えた場合、以下のような問題が挙げられる。
【0014】
即ち、(1)被検査面であるディスク面は、ブレーキライニングで磨かれた状態であることから、表面が金属鏡面状態となり、撮像光学系(カメラ等)自身や周囲物が映り込んでしまう。この映り込みにより、撮像によるディスク表面状態の正確な把握が難しい。(2)ディスク表面には、ブレーキライニングとの摩擦の痕、いわゆる「しゅう動痕」が、無数の同心円状の微細な「きず」のようなものとして生じている。この「しゅう動痕」で照明光が正反射することで、ディスク面の特定の場所で直線上の輝線が発生する。この輝線により、撮像によるディスク表面状態の正確な把握が難しい。
【0015】
上記のような問題により、従来技術では、ディスクの表面状態を正確に(精度良く)撮像・検出することが難しい。特に、ディスク全面の検査を1回で効率的に且つ精度良く実現することは難しい。
【0016】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、鉄道車両の車輪部(車輪周辺部)のディスク(ブレーキディスク)を対象とした撮像による検査の技術に係わり、上記のような問題を解決し、ディスクの表面状態を正確に(精度良く)撮像・検出することができる技術、特に、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から撮像することにより、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。本発明の代表的な実施の形態は、前述のブレーキディスク面を対象として撮像・検査を行う装置(車両検査装置)及び方法等の技術であって、特に走行状態の車両のディスク面を対象として撮像光学系により撮像した画像を処理して検査する方式を用い、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0018】
本形態の検査装置は、被検査面(ディスク面)の撮像を行う撮像光学系(撮像装置)と、撮像した画像の情報をもとに検査のための情報処理を行う装置(検査制御装置)とを有する。撮像装置は、照明光源、カメラ(撮像センサ)等を含んで成る。特に、ディスク面を複数に分けて撮像する方式に対応して、複数の撮像光学系を用いる。
【0019】
(1:カメラの配置) 被検査面が鏡面状態であることから、カメラを被検査面(被照明領域)の法線上に設けた場合、カメラ等の撮像光学系自身がディスク面上に映り込んでしまい撮像画像に影響する。本発明では、それを抑止するため、カメラ(その光軸)を被検査面の法線から上下左右方向などで所定角度以上に傾けた位置に配置する。
【0020】
(2:照明光源の配置) また、本形態は、前記輝線などの発生(その影響)を抑止するため、被検査面のディスク中心を原点とする座標系(2次元平面座標系、極座標系)を仮定したとき、ディスク面は、ディスク中心を原点に4つの象限(面、領域)に分けられ、右上の象限を起点に第1象限として反時計回りに第2、第3象限とし、右下を第4象限とする。このとき、上の第1、第2象限が、前述の説明のように構造物で隠された形になり、左下の第3象限、右下の第4象限が撮像対象となる。以下、第3象限に対応する領域を第2の領域とも称し、第4象限に対応する領域を第1の領域とも称する。このとき、第2の領域を照らす照明光源(第1の照明光源)を、被照明領域とは異なる第1の領域上の空間に配置する。逆に、第1の領域を照らす照明光源(第2の照明光源)は、第2の領域上の空間に配置する。
【0021】
(3:走行時に撮像する構成) 本形態では、照明光源とカメラを含んで成る撮像光学系(撮像装置)を、検査対象の車両の走行する軌道に沿って配置する。軌道上、車輪(ディスク)が撮像光学系での撮像位置になったことを検知するセンサに同期して、ディスク面の領域を撮像して画像を取得する。上記構成により、走行状態の車両の車輪部のディスク面を撮像する。なお、上記センサに同期して撮像する構成については、例えば、特開昭64−405号公報(特許文献3)に記載の方法が使用できる。
【0022】
(4:ディスク面を複数に分けて撮像する構成) また更に、本形態では、ディスク面を複数に分けて撮像する方式に対応して、軌道に沿って撮像光学系(撮像装置)を複数並べて配置する。そして、これら複数の撮像装置(グループ)により、走行車両におけるディスク面(全面)を複数の領域に分けて複数の画像を撮像する。これにより1回の走行でディスク全面の検査画像を得て検査を行う。
【0023】
(5:特徴点の顕在化の特性を考慮した配置構成) また本形態では、ディスク表面に一般に発生する「きず」等のような特徴点を検出(抽出)する。当該特徴点の検出にあたり、撮像の際の特徴点の顕在化の特性(検出感度)は、ディスク面における特徴点の発生方向(形状)とそれに対する照明の方向とに関連性があり、それを考慮して、撮像光学系(照明、カメラ等)の配置等が構成される。
【0024】
(6:検出感度の差の補正) 上記のように特徴点に対する照明方向により特徴点の検出感度が変化する。従って上記のように当該検出感度が優って(高く)撮像できる位置に撮像光学系を配置しても、車両走行に伴うディスク回転に応じて、撮像画像範囲内における特徴点の位置が変わり、特徴点に対する照明方向が変化することで、撮像画像範囲内で検出感度が変化する。従って、本形態は、上記配置構成において、ディスク全面のうち、当該検出感度が相対的に劣る(低い)状態になる箇所(角度位置)については、当該特徴点の当該検出感度が相対的に優る(高い)状態になる時(当該位置に来るとき)の撮像画像を用い、合成(補正)処理等を行うことで検出感度の差を補正し、全体的に精度良い検査画像を得る。
【0025】
(7:照明限定手段) また本形態は、ディスク周辺に存在する台車構造物等の撮像の際の不要部による影響を排除・低減するために、撮像光学系におけるディスク面への照明光の光量面内分布等の構成に関して、上記不要部へ照明光が殆ど当たらないようにする照明限定手段を備える。これにより、鏡面状態のディスク表面への不要部等の映り込みを抑止し、ディスク表面状態が正確に把握できなくなることを防ぐ。
【0026】
上記のような特徴に対応して、本検査装置は、例えば以下のような構成である。
【0027】
(1) 本検査装置は、車両の車輪部のディスク面を撮像して検査する検査装置であって、車両の軌道(線路)に沿って設置され、軌道を通過する車両のディスク面の画像を、照明光源及びカメラを用いて撮像する撮像装置と、撮像装置による撮像画像を処理し、ディスク面における検査対象となる特徴点を抽出する処理を行う処理装置(検査制御装置)と、撮像画像及び特徴点の抽出処理結果を含むデータを保存する保存装置と、を備える。撮像装置は、ディスク面の被撮像領域(被照明領域)へ照明する照明光源と、被撮像領域からの反射光を撮像するカメラと、を備える。
【0028】
撮像装置において、ディスク面の被撮像領域(被照明領域)へ照明する照明光源は、ディスク(円形状領域)の中心(回転中心軸)を原点とする座標系における被照明領域を含む第1の領域に対応する空間ではなく、それとは異なる第2の領域に対応する空間に配置される。
【0029】
撮像装置において、ディスク面の被撮像領域からの光を撮像するカメラは、その光軸が、ディスク面(被照明領域を含む第1の領域)の法線に対して、上下左右等のいずれかの方向に所定角度以上の範囲内に傾けた位置となるように配置される。
【0030】
(2) 特に、上記検査装置において、撮像装置のカメラは、その光軸が、ディスク面(中心)の法線に対して下方向に傾けた位置となるように配置され、カメラの光軸とディスク面(中心)の法線との成す角度(α)は、15度〜30度の範囲内である。照明光源は、カメラの両側に第1及び第2の2つの照明光源が配置される。第1の照明光源は、ディスク面の座標系における第1の領域を照明し第2の領域上の空間に配置され、第2の照明光源は、ディスク面の座標系における第2の領域を照明し第1の領域上の空間に配置される。カメラの光軸と照明光源の光軸との成す角度(γ)は、30度〜70度の範囲内である。照明光源の光軸とディスク面の法線との成す角度(β)は、60度〜80度の範囲内である。
【0031】
(3) また、上記同様に撮像装置、処理装置及び保存装置等を備える検査装置において、前記撮像装置として、車両の走行状態でディスク面の円形状領域の全体を分割して撮像するために、少なくとも第1の系及び第2の系を含む複数の撮像装置を有する。
【0032】
上記撮像装置による撮像画像において、ディスク面における極座標系の角度(位置)に応じて発生する、検査すべき特徴点の検出感度が相対的に低下する角度の状況で前記第1の系の撮像装置により撮像される第1の部位を、当該特徴点の検出感度が相対的に高い角度の状況で撮像することができる位置に配置される第2の系の撮像装置により撮像する。そして、本検査装置は、第1の系の撮像装置による第1の撮像画像と、第2の系の撮像装置による第2の撮像画像とを、ディスク回転角度の違い(検出感度の差)を補正して合成処理し、ディスク面の撮像画像及び特徴点の抽出処理結果を含むデータを得る。これにより、ディスク面での特徴点の検出感度の低下する箇所についての撮像の精度を向上する。
【発明の効果】
【0033】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。本発明の代表的な実施の形態によれば、鉄道車両の車輪部(車輪周辺部)のディスク(ブレーキディスク)を対象とした撮像による検査の技術に係わり、前述のような問題を解決し、ディスクの表面状態を正確に(精度良く)撮像・検出することができる。特に、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から撮像することにより、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における車両検査装置に関する全体の配置等の構成を上側から示す説明図である。
【図2】実施の形態1で、検査対象の車両(車輪、ブレーキディスク等)の構成を側面から示す説明図である。
【図3】実施の形態1で、ディスク面を分割撮像する構成における撮像範囲などの例を示す説明図である。
【図4】実施の形態1で、検査装置における検査制御装置の構成例を示す図である。
【図5】実施の形態1の前提技術として、被検査面(ディスク面)に対する撮像カメラの配置に関し、側面から示す説明図である。
【図6】実施の形態1における撮像光学系の配置構成を示す説明図であり、(a)は、ディスク面の法線に対するカメラ及び照明光源の配置を横側(ディスク側面方向)から示し、(b)は、ディスク面の中心に対するカメラ及び照明光源の配置をディスク正面方向から示す。
【図7】実施の形態1の前提技術として、被検査面(ディスク面)の表面を拡大して側面方向の断面を示す説明図である。
【図8】実施の形態1の前提技術として、ディスク面における特徴点の方向(形状)に対する照明方向(角度θ1)による影響(特徴点の顕在化の特性)について示す説明図であり、(a)は、ディスク面の座標系(極座標系)における特徴点の長手方向に対する照明光の角度(θ1)を示し、(b)は、当該角度(θ1)に応じた特徴点の顕在化の度合いを表すコントラスト(C)に関する実験データを示す。
【図9】実施の形態1の前提技術として、ディスク面における輝線の発生を示す説明図であり、(a)はシステム全体を示し、(b)は右側の照明のみを抜き出して示したものである。
【図10】実施の形態1に係わり、輝線の発生理由及び輝線に対策する構成を説明するための図であり、(a)は、ディスク面における「しゅう動痕」及び輝線を示し、(b)は、(a)のディスク表面断面を示し、(c)は、照明光源とカメラと輝線を示し、(d)は、「しゅう動痕」及び輝線を考慮した撮像光学系の配置構成を示す。
【図11】実施の形態1に係わり、建築限界等を説明するために、車両及びその周囲の断面を示す図である。
【図12】実施の形態1における、撮像光学系の最良の配置構成例を示す説明図であり、(a)は、ディスク面の中心に対するカメラ及び照明光源の配置をディスク正面方向から示し、(b)は、ディスク面の法線に対するカメラ及び照明光源の配置を横側(ディスク側面方向)から示す。
【図13】実施の形態1における、ディスク面の特徴点の位置に応じた特徴点の顕在化の度合いを説明する図であり、(a)は、ディスク面の座標系における、回転(角度θ2)による特徴点の位置の変化を示し、(b)は、(a)の角度θ2に応じた各位置の特徴点の顕在化の度合い(コントラスト(C))を調べた結果を示す。
【図14】本発明の実施の形態2における検査装置に関し、ディスク面を分割撮像する構成例を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態2における検査装置に関し、画像の合成方法を示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態3における検査装置に関し、撮像の際の台車構造物に当たる照明光について説明する図であり、(a)は、ディスク及び台車構造物等を正面方向から示し、(b)は、(a)を側面方向から示す。
【図17】実施の形態3における、照明限定手段を備える撮像光学系等の構成を示す説明図である。
【図18】実施の形態3における、照明光源の内部構成例を示す図である。
【図19】他の実施の形態における、車軸に装架されたディスクブレーキの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0036】
(実施の形態1)
図1〜図13を用いて、本発明の実施の形態1の車両検査装置(以下、単に検査装置とも称する)について説明する。実施の形態1は、(a)車両走行状態でディスク面全面を複数に分割して撮像する構成(図1,図3等)、(b)不要物の映り込み等を避ける撮像光学系の配置構成(図6,図12等)、(c)建築限界を考慮した配置の構成(図11等)、(d)位置関係に応じた特徴点の顕在化の特性を考慮した構成(図8,図13等)、などを有する。
【0037】
<車輪部、軌道、車両検査装置>
図1は、検査対象(車輪部等)、軌道、及び検査装置300(そのうちの撮像光学系100)を含む、全体の配置等の構成を軌道及び車両の上側から示している。図1では、検査対象の車両全体については図示省略し、そのうちの車軸3と車輪2(ディスク1を含む)を1軸分のみを示した。また、検査装置300のうち撮像光学系100を示し、他の要素は後述する。
【0038】
車軸3と車輪2のセットは輪軸と呼び、車軸3に対し、車輪2(2a,2b)、及びブレーキディスク1(1a〜1d)等を有して成る。車輪2(2a,2b)は、線路(軌道)4(4a,4b)上をaの方向に走行する。
【0039】
本ディスク1の検査は、例えば検査場において線路4上を所定速度で走行状態の車両に対して行われる。車両は、aの走行方向に、例えば時速10km程度で走行する。また、aの方向の4つの撮像光学系100による各撮像タイミングを検知するためのセンサ(車輪検知センサ)21(21a〜21d),22(22a〜22d)が、線路4に沿って配置されている。
【0040】
本例では、検査対象となるディスク1(1a〜1d)は、各車輪2(2a,2b)の表裏の両側面に装架されている。即ち、1つの輪軸に対して合計4つのディスク1(1a〜1d)を有する。複数のディスク1(1a〜1d)に対応して、撮像光学系(撮像装置)100は、ディスク1aを撮像する撮像光学系101a、並びにディスク1b,1c,1dを撮像する撮像光学系101b,101c,101dといったように、線路4(4a,4b)の両脇にそれぞれ配置される。
【0041】
また、1つのディスク1(例えば車輪2aの表側に装架されたディスク1a)に対して、その撮像・検査のために、複数(本例では4つ)の撮像光学系(撮像装置)100(例えば101a〜104a)が、線路4(例えば4a)に沿って設置される。複数の撮像光学系100で1つのグループ(系)とする。ディスク1全面を複数(本例では4つ)の領域に分けて撮像するので、グループ毎にaの方向に沿って複数(4つ)の撮像光学系100が順に所定間隔で配置される。
【0042】
1つの撮像光学系100は、詳細は後述するが、主に、カメラ11(TVカメラ等の二次元撮像センサ)と照明光源12(12a,12b)から成る。
【0043】
センサ21,22は、車輪2が線路4上の所定の位置を通過すること(車輪2先端がセンサ21,22間のラインに到達したこと)を検知するものであり、例えばオムロン社製の光電センサE3S−Cのような光電スイッチを用いることができる。センサ21,22により、車輪2(ディスク1)が、対応する撮像光学系100の最適な撮像位置に移動して来たことを検知する。すると、それを基準とする所定のタイミングで、撮像光学系100は、ディスク1面を撮像する。
【0044】
<車両>
図2は、検査対象の車両の構成を示し、線路4上、車両(車両本体)7、台車構造物8、輪軸部(構成要素:3,2,1)などを側面から示している。車輪2は台車構造物8によって支持され、台車構造物8は車両本体7を支えている。車輪2の側面、即ちブレーキディスク1のおおよそ上半分は、台車構造物8により覆われており、容易に見ることはできない。
【0045】
<ディスク面>
図3は、ディスク1面を複数に分割して撮像する構成における撮像範囲などの例を示している。上記のように、ディスク1のおおよそ上半分については視認及び撮像ができないので、実施の形態1では、図3に示すように、ディスク1(例えば1a)の全面(円形状領域)を例えば4つの扇状(四分円)の領域(A〜D)に分割し、車両の走行に伴い、それぞれの領域を対応する撮像光学系100(例えば101a〜104a)により撮像する構成である。1つの撮像光学系100(例えば101a)は、ディスク1面のうち一部の領域(例えば領域Aを含む範囲R1)を撮像する。線路4上、ディスク1の第1の分割面(領域A)が真下になる位置(L1)に来たとき、第1の撮像光学系101aにより当該領域Aを中心にした範囲R1を撮像する。次に、車両の走行により車輪2及びディスク1の回転がbの方向に進んで、ディスク1の第2の分割面(領域B)が真下になる位置(L2)に来たとき、第2の撮像光学系102aにより撮像する。以降同様に、第3の面(C),第4の面(D)について、各位置(L3,L4)で第3、第4の撮像光学系103a,104aによりそれぞれ撮像する。これら4つの撮像光学系100(101a〜104a)によるグループ(第1の系とする)により、ディスク1面の全面(領域A〜D)を、1回の走行時に撮像することができる。
【0046】
矩形状の撮像範囲R1は、カメラ11が実際に撮影する範囲である。この撮像範囲R1の中には、最低限、A〜Dのような扇状の領域(被照明領域を含む)を含んでおり、当該領域を検査に使用する。
【0047】
<検査制御装置>
図4には、本実施の形態1の検査装置300における検査制御装置200の構成例を示している。図1の各撮像光学系(撮像装置)100は、検査制御装置200に接続され、全体として検査装置300が構成されている。図4では1単位の検査装置300を示すが、複数の各撮像装置100に関して同様の構成である。また、複数の撮像装置100を1つの検査制御装置200に接続して処理する形態なども可能である。
【0048】
撮像光学系(撮像装置)100は、例えばカバー(筐体)内に、カメラ11、照明光源12等が配置された構造である。本例では1つの撮像装置100内には2つの照明光源12(12a,12b)が設けられている。
【0049】
検査制御装置200は、タイミング回路211、照明制御回路212、画像入力回路213、画像処理回路214、画像保存回路215などを備える。また、検査制御装置200には、表示装置220や、図示しない検査者(管理者)のための操作入力装置などが接続される。検査制御装置200及びその各機能は、所定のコンピュータや回路のハードウェア及びソフトウェアにより実現される。例えば、PC等においてプロセッサによるメモリ上のプログラム処理実行や、LSI等において専用の回路などにより実現される。
【0050】
センサ21,22により車輪2が所定の位置に来たことが検知されると、それはトリガ信号としてタイミング回路211に入力される。これにより、タイミング回路211は、照明制御回路212に対してストロボ発光するように指令を出す。これにより、照明制御回路212から照明光源12(12a,12b)を制御して、ストロボ照明をディスク1面に対して発光する。またタイミング回路211は、照明光源12の発光期間に同期させるための信号をカメラ11及び画像入力回路213へ出す。
【0051】
カメラ11は、照明によるディスク1面からの反射光を入力することにより撮像する。照明及び撮像に関する配置等の条件については後述する。
【0052】
画像入力回路213は、カメラ11からの画像信号(撮像画像)を、前記発光期間に同期する信号のタイミングに従って入力する。このように、短時間の発光時間の画像を入力することにより、走行状態の車両であっても、静止状態の場合と同様の撮像が可能である。画像入力回路213は、撮像画像を、計算処理可能な形式、例えばデジタル値に変換する。
【0053】
このようにして得られた画像の信号(データ)を、画像処理回路214に入力して検査のための情報処理を行い、その結果の情報(D1)を出力する。特に、画像処理回路214は、デジタル値の入力データに対して、特徴点の抽出処理(所定の画像処理)を行う。これにより、特徴点の位置(座標)、大きさ及び長さなどの、画像上の特徴量が計測される。そして、その特徴点抽出処理結果のデータは、その原画像(撮像画像)またはその処理画像または両方のデータと共に、検査処理結果データ(D1)として、画像保存回路215に送られて保存される。なお詳しい画像処理(検査)の内容については適宜設計が可能である。
【0054】
画像処理回路214での処理により検出した画像等を含む検査処理結果のデータ(D1)は、画像保存回路215に保存される。データ(D1)には、撮像の日時や、車両7、台車8、車輪2、ディスク1などの対象(部位)に関する認識可能な情報(識別番号など)などを共にログ(履歴)として記録、管理する。これにより、後から、追跡、照合などが可能になる。
【0055】
また、画像処理回路214からのデータ(D1)、または画像保存回路215に保存されたデータ(D2)は、表示装置220に出力して画面に表示させることができる。検査者(管理者)は、これらのデータを参照することにより、撮像画像や処理結果等をすぐに確認したり、または後から見直したり、ログを参照して被検査面の状態変化を時間を追って確認したり等が可能である。
【0056】
また、画像処理回路214での処理により、例えばある程度以上大きな特徴点を検出した場合、例えば計測値が予め決められた設定値(閾値)を超えた場合には、外部(管理者等)に対して警報(D3)を発して報せたり、ログとして記録したりすることもできる。
【0057】
<撮像光学系>
次に、図5〜図13等を用いて、撮像光学系(撮像装置)100(カメラ11、照明光源12)の詳しい構成について説明する。
【0058】
前述のように、ディスク1表面は、ブレーキ動作の際にブレーキライニングによって磨かれることにより鏡面状態となっている。このため、撮像光学系100自身や周囲物の映り込みにより、ディスク1の表面状態の正確な把握が難しい。
【0059】
図5は、被検査面(ディスク面)に対するカメラ11の配置に関する問題を説明するために、例えば、車輪2(例えば2a)に装架されたディスク1(例えば1a)と、その被検査面の法線(n)に対する撮像カメラ11の位置関係を側面から示している。
【0060】
図5のように、カメラ11を、被検査面であるディスク1面(s)の法線(n)と同軸上に配置した場合、法線(n)に対する入射角と反射角が等しくなるため、撮像しようとするディスク1面が鏡面状態になっているため、カメラ11自身の姿がディスク1面に映り込んでしまう。そのディスク1面をカメラ11で撮像すると、不要な自身の像を含めて撮像することになり、ディスク1表面状態を正確に検出することができない。
【0061】
<カメラの配置>
そこで、図6(a),(b)に示すように、実施の形態1では、撮像光学系100のカメラ11を、ディスク1面(被照明領域)の法線(n)に対して所定角度(α)で傾けた位置に配置する構成である。なお、ディスク1面の法線(n)とカメラ11の光軸(q)との成す角度をαとする。カメラ11の光軸(q)は、ディスク1の中心(c)よりも少し下の位置の法線(n)に対し下方向に角度αで傾いている。
【0062】
<照明光源の配置>
続いて、照明光源12の配置について説明する。図6(a),(b)には、照明光源12の配置も示している。ディスク1面の法線(n)と照明光源12の光軸(p)との成す角度をβとする。また、カメラ11の光軸(q)と照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))との成す角度をγとする。
【0063】
図7は、被検査面であるディスク1の表面(s)を拡大して側面方向の断面を示す。照明光源12からの照明光32を、ディスク1面の法線(n)31に対し入射角35で傾けて入射する。すると、通常のディスク1の表面37では、当該照明光32が正反射して、入射角35と同じ角度で反対側に反射角36で反射光33として反射する。
【0064】
検出したい対象である「きず」のような特徴点38は、微視的に様々な方向の面を持った凹部である。そのため、特徴点38に対する、上記同様の照明光32の入射の際は、散乱光34として反射する。
【0065】
そこで、上記反射角36(反射光33)とは異なる方向からカメラ11により撮像する配置構成とすれば、通常の(平坦な)ディスク1面では暗くなり、特徴点38では明るくなる撮像画像を得ることができる。
【0066】
従って、本実施の形態1では、例えば図6(a),(b)に示すように、カメラ11の両側に角度γの位置に照明光源12(12a,12b)を配置し、ディスク1面を斜めから照明する配置構成とする。これにより、通常ディスク1面では暗く特徴点38では明るい撮像画像を得ることができる。2つの照明光源12(12a,12b)は、ディスク1中心及びカメラ11の光軸(q)に対して対称的な配置である。
【0067】
<特徴点の顕在化の度合い>
ここで、更に、撮像光学系100のそれぞれの要素(11,12)に関する最適な配置の角度などについて以下に述べる。
【0068】
図8は、ディスク1面における特徴点(38)の方向(形状)に対する照明方向(角度)による影響(特徴点(38)の顕在化の特性)について示す。図8(a)は、特徴点(38)を有するディスク1平面の座標系(極座標系)において、特徴点(38)(例として図8中の縦方向に長い形状)の長手方向に対する照明光(32)の照射の角度θ1を示す。図8(b)は、当該角度θ1に応じた特徴点(38)の顕在化の度合い(検出感度)の特性(実験データ)を示す。
【0069】
特徴点(38)の形状(発生方向)の長手方向に平行な角度を基準としてθ1=0度とする(ここではカメラ11の光軸(q)も同様とする)。照明光32aはθ1=0度のときである。特徴点(38)の長手方向に対し直角な角度がθ1=±90度となる(ここでは反時計回りを+、時計回りを−とする)。照明光32bはθ1=90度のときである。なお実際にはディスク1面に対し所定の仰角(図6(a)の(90度−β))で照明される。またカメラ11(撮像)の位置は基準の位置(θ1=0度)に固定して考える。また「きず」のような特徴点(38)は、例示(図8(a),図13)するように、経験上、ディスク1面の半径方向に長くなるような形状になりやすいことがわかっている。
【0070】
特徴点(38)の顕在化の度合い(検出感度)は、下記式に示すコントラスト(C)を用いた。即ち、[コントラスト(C)]=[特徴点の検出輝度(B)]/[特徴点周囲の通常部の検出輝度(A)]である。本式でAが小さいほど、またBが大きいほど、Cが大きくなる。コントラスト(C)が大きいほど、特徴点(38)の顕在化の度合いが高く、安定して精度良く特徴点(38)を抽出できることを表す。
【0071】
図8(b)に示すように、θ1=±90度の方が、θ1=0度の方よりも、コントラスト(C)、即ち特徴点(38)の顕在化の度合いが高いことがわかる。これは前記図7の通り、検出する特徴点(38)からの光が凹部の角部などからの散乱光34であることから、角度θ1=0度付近の方向では、凹部の角部などに照明光が照射され難く、θ1=±90度付近の方向では照明光が照射されやすいためと考えられる。
【0072】
図8(b)の実験データは、ディスク1面の法線(n)と照明光(p)との角度(図6(a)の角度β)が75度程度とした場合(言い換えればディスク1面(s)と照明光(p)との角度(仰角)が15度程度とした場合)の結果である。
【0073】
上記のことから、図6(b)に示した、カメラ11の検出(撮像)の方向(q)及び配置の位置に対する、照明光源12(12a,12b)の照射の方向(p)及び配置の位置に関する角度γは、0度に近い方ではなく、なるべく90度に近い方が、検出感度が高くなるので望ましいことがわかる。
【0074】
しかしながら、ディスク1面上で特徴点が発生する位置等は特定できない(一定ではない)。そのため、特徴点に対する照明光の角度θ1が図8のように90度付近になったときにいつも撮像するように撮像光学系100(照明光源12)の配置を構成することは、できない。また後述するように、車両に係わる設備には、「建築限界」が存在するので、その観点からも、上記配置構成は難しい。
【0075】
そこで、本実施の形態1では、カメラ11については、図6(a)のように、ディスク1面(被照明領域)の法線(n)から下方で且つ車輪2(下端)よりも下方となる角度αの位置に配置され、それと共に、照明光源12(12a,12b)については、図6(b)のように、カメラ11に対する配置の角度γを70度よりも小さく例えば60度程度とするように構成した。
【0076】
なお、カメラ11及び照明光源12が、車輪2(下端)よりも下方、即ち線路4よりも下方に配置されるが、検査場では線路4よりも下方に空間が設けられているため、当該配置が可能である(図11)。また、その他の場所でも地中に穴などを掘るなどすれば、当該配置が可能である。
【0077】
上記に基づき、前記図6(b)のようにカメラ11の方向(q)に対する照明光源12の配置の角度γを60度付近に設定した場合を考える。
【0078】
<輝線、きず>
次に、図9,図10等を用いて、前述した問題の1つである輝線について考える。
【0079】
図9は、図6(b)の構成(γ=60度)に基づき、輝線の発生について示す。カメラ11の光軸(q)に対して角度γ(60度)で照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))が配置されている。これによりディスク1の撮像面(例えば図3の位置L1における領域Aを中心に含む撮像範囲R1)を照明する。すると、従来技術の場合、41a,41bとして示すように、明るく輝く直線状の部分(a−a´,b−b´)が発生する。本明細書では、これを輝線(41a,41b)と呼ぶ。これは検査(撮像)のためには余計な情報(ノイズ)になる。
【0080】
図10を用いて、輝線の発生理由などについて説明する。図10(a)は、ディスク1面における「しゅう動痕」(42)及び輝線(41)を示す。図10(b)は、図10(a)のディスク1表面断面を示す。図10(c)は、照明光源12とカメラ11と輝線(41)を示す。図10(d)は、「しゅう動痕」(42)及び輝線(41)を考慮した撮像光学系100の配置について示す。
【0081】
ディスク1表面は、前述のようにブレーキ動作の際にブレーキライニングが押え付けられ、その摩擦によりブレーキ力が生じるものである。このとき、ディスク1表面には、一般に極微細な「きず」のような特徴点(38)が生じる。ディスク1は回転中心(c)に対して精度良く回転しているので、図10(a)のように、同心円状の溝のような「しゅう動痕」42(42a,42b,42c)になる。即ち、しゅう動痕(42)の円弧の中心はディスク1の回転中心(c)に等しい。
【0082】
これは、ディスク1面を立体的に考えると、図10(b)の断面(A−A´)のようになる。即ち、ディスク1の表面37(s)に対し、斜め方向から照明光を照射すると、図10(b)のように、溝(「しゅう動痕」42)の無い平らな箇所では、照明方向と反対側へ反射するのに対し、各溝(「しゅう動痕」42)の壁面等に当たった照明光は、当該壁面の法線に従った入射角と反射角の関係により、照明方向と同じ側へ反射(正反射)してくる。この溝(「しゅう動痕」42)は、図10(a)のように、ディスク1平面で考えると同心円状になっている。
【0083】
そこで、図10(c)に示すように、上記正反射する部分がA−A´のように直線状に並び、線状に正反射して明るい部位、即ち輝線41が発生する。溝(「しゅう動痕」42)の壁面の角度は、これら立体的及び平面的な要素から成っている。平面図では入射角と反射角が等しい位置に輝線41(A−A´)が発生していないのは、このためである。
【0084】
この輝線41の発生箇所は、カメラ11と照明光源12とディスク1との位置関係で決まるものであるが、特徴点(38)がこの輝線41の箇所に来たときに撮像する状況となる可能性もある。前述したように、特徴点(38)で発生した散乱光(34)を検出して検査するものであるが、一般的に正反射光の方が輝度は高く、上記状況の場合には特徴点(38)の検出が難しくなる問題がある。
【0085】
そこで、本実施の形態1では、この輝線(41)が発生しないように(撮像画像において輝線の影響をできる限り排除できるように)、カメラ11と照明光源12との位置関係を規定している。
【0086】
図10(d)において、照明光源12(12a)からの照明光32の、しゅう動痕(42)での正反射光は、しゅう動痕(42)の円弧の法線44に対して、入射角35と反射角36が等しくなる方向へ、反射光33のように反射する。従って、しゅう動痕(42)の円弧の法線44が、カメラ11の光軸43(p)(Y軸に重なる)に対して、照明光源12(12a)と反対方向になる場合は、当該光がカメラ11には入射しない(即ち撮像画像における輝線41の影響を排除できる)。
【0087】
図10(d)で、ディスク1面(円形状領域)における中心(c)を座標原点とする座標系(X−Y)を考える。即ち、例示するように、ディスク中心を原点に4つの象限(面、領域)に分けられ、右上(領域45d)の象限を起点に第1象限として、反時計回りに第2象限(領域45c)、第3象限(領域45b)となり、右下(領域45a)が第4象限になる。なおここでいう「象限」は、ディスク1の回転によらずに固定と考える(前記図3のA〜Dのような領域は回転により位置が変動する)。このとき、上の第1象限(対応する領域45d)、及び第2象限(対応する領域45c)は、前述のように構造物(8)で隠された形になり、左下の第3象限(対応する領域45b)、右下の第4象限(対応する領域45a)が撮像対象となる。なお前述のように、第4象限に来る領域(45a)を第1の領域と称し、第3象限に来る領域(45b)を第2の領域と称する。
【0088】
本実施の形態1では、図10(d)の左下の象限に対応する第2の領域(45b)を照明する第1の照明光源12(12a)については、隣の右下の象限に対応する第1の領域(45a)上の空間に配置し、第1の領域(45a)を照明しないようにする(言い換えれば照射中心を図10(d)のように第2の領域寄りにして第1の領域よりも第2の領域への照明量を多くする)。これにより、前述の輝線(41)を発生しない条件を満たすことができる。また、これと対称に、図示しないが、右下の象限に対応する第1の領域(45a)を照明する第2の照明光源12(12b)については、隣の左下の象限に対応する第2の領域(45b)上の空間に配置し、第2の領域(45b)を照明しないようにする。これにより、同様に輝線(41)を発生しない条件を満たすことができる。
【0089】
これら(12a,12b)により、カメラ11の撮像範囲(図3、R1)に含まれる領域(例えばA,B)を照明して撮像することができ、輝線の影響を排除できる。なお実際には、照明光源12については、図6(a)に示すように、ディスク1平面(s)上ではなく、当該平面(s)に対して斜め下(仰角:90度−β)から照射するように配置される。よって、例えば左下の象限の領域を照明する第1の照明光源12aは、右下の象限の領域上の空間に配置されることになる。
【0090】
<建築限界>
さて、鉄道車両を支障無く走行するために、軌道4上に確保すべき空間、即ち「建築限界」と呼ばれる制約が存在し、いかなるものもこの限界(領域)内に入ることは許されない(久保田博著「鉄道工学ハンドブック」(pp54〜55、グランプリ出版)などを参照)。即ち、本実施の形態1における撮像光学系100等の物理的要素についても、この建築限界を超えて車両に近付けて配置することは許されない。
【0091】
図11において、建築限界に係わり、車両7及びその周囲の断面を示している。車両7に対する建築限界46を破線で示す。車両7の下部には、図1のような車輪2(2a,2b)の外側及び内側の各ブレーキディスク1(1a〜1d)を撮像するための各撮像光学系100(101a〜101d)が配置される。しかしながら、建築限界46に従い、各撮像光学系100、特に、車輪2の内側のディスク1b,1cを撮像するための撮像光学系101b,101cについては、線路4(4a,4b)の上面(4c)よりも上には配置することができない。
【0092】
なお、車両7の近隣には、撮像時における外光などの遮光、不要物の映り込みの排除のために、板などの遮光物81の存在(設置)が望ましい。撮像光学系100を用いた撮像は、このように遮光物81などを利用して外光などが入らない暗環境での照明(ストロボ)により行われることが望ましい。
【0093】
<好適な配置例>
以上の説明に基づき、図12以下を用いて、本実施の形態1における撮像光学系100に関する好適な配置構成例(条件)を説明する。図12は、前記図6同様に、撮像光学系100の配置に関して示す。図12(a)は、ディスク1正面方向から見たもの、図12(b)は、ディスク1側面方向から見たものである。
【0094】
まず、カメラ11については、図12(a)のように、ディスク1の正面、ディスク中心(c)に対して光軸(q)を配置する。このとき、図12(b)に示すように、カメラ11の光軸(q)とディスク1面の法線(n)との成す角度αは、15度〜30度の範囲内の値にすると共に、ディスク1面の法線(n)から下方に傾ける。特に角度αを20度程度とする。
【0095】
次に、照明光源12については、図12(a)のように2つの照明光源12a,12bをカメラ11の光軸(q)の両側に対称的に配置し、カメラ11の光軸(q)と各照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))との成す角度γは、30度〜70度の範囲内の値とする。特に角度γを60度程度とする。
【0096】
また、照明光源12(12a,12b)の光軸(p(p1,p2))とディスク1面の法線(n)との成す角度βは、60度〜80度の範囲内の値とする。特に角度βを75度程度とする。なお、これは照明光源12の光軸(p)とディスク1面(s)との成す角度で表せば、10度〜30度の範囲内の値(特に15度程度)である。
【0097】
また、前述(図10)したように、第1の照明光源12aについては、図12(a)に斜線で示した53aの範囲内であるディスク1面の左下の象限に対応する第2の領域を中心に照明し、右下の象限に対応する第1の領域を照明しないようにし、第1の領域に対応する空間上の位置に配置される。同様に、第2の照明光源12bについては、ディスク1面の右下の象限に対応する第1の領域を中心に照明し(53aのカメラ光軸に対して線対称位置(図示せず))、左下の象限に対応する第2の領域を照明しないようにし、第2の領域に対応する空間上の位置に配置される。
【0098】
<特徴点の顕在化の特性>
本実施の形態では、走行車両の回転する車輪のディスク面(動いている対象物)を2次元撮像する方式を用いるため、その特有の問題点(精度を下げる要因)として、撮像の際のディスク面における特徴点の顕在化の特性(検出感度)の影響がある。ディスク回転に伴い、ディスク面の座標系における特徴点の位置及び方向(形状)が変化(移動や回転)し、当該特徴点に対する照明方向が変化する。これにより、状況に応じて、検出感度の高低の差が存在する。
【0099】
この点を考慮して、本実施の形態1では、検出感度が高くなる状態で撮像できるように撮像光学系100の配置等が構成される。検出感度が高くない状態の箇所の撮像画像については、検出感度が高い状態に来たときの撮像画像を用いて、合成処理等を行うことで、精度良い検査画像を得る。以下、このような構成について説明する。
【0100】
図13には、図12までの条件(γ=60度、β=15度)を満たす照明光源12(12a,12b)及びカメラ11を持つ撮像光学系100により撮像した場合において、ディスク1面の特徴点の位置(角度θ2)に応じた特徴点の顕在化の度合い(前述のコントラスト(C))を調べた結果を示す。図13(a)は、ディスク1面の座標系における、回転(角度θ2)による特徴点(38)の位置の変化を示す。ディスク1面の座標系における回転による角度をθ2とする。例として特徴点38は図8(a)のような形状である。ディスク1面における同一の特徴点(38)が、カメラ11の光軸(q)の位置(Y軸の負方向、線路4に近い下方向)にあるときを、θ2=0度とする。図13(b)は、図13(a)の角度θ2(±90度の範囲)に応じた各位置の特徴点の顕在化の度合い(コントラスト(C))を調べた結果を示す。
【0101】
ディスク1の回転(角度θ2)により、特徴点の位置・方向が変化し(図13(a))、それに応じて特徴点に対する照明の角度θ1が変化し(図8)、これらに応じて、特徴点の顕在化の度合いが異なる。
【0102】
図13(a),(b)のように、角度θ2により差はあるが、ほぼθ2=±45度の範囲39(例えば図3の位置L1の領域Aに対応する範囲)においては、コントラスト(C)が十分に高く、特徴点が顕在化して検出ができている。
【0103】
本実施の形態1では、上記を考慮して、特徴点の検出感度が高くなる位置で撮像できるように、照明光源12及びカメラ11の配置を図12のように規定している。
【0104】
例として、図13(a)のθ2=−45度の位置(図10(d)では左下の領域)に特徴点(38)が来たとき、図12(a)の第1の照明光源12aにより当該位置(領域)を照明し、カメラ11により撮像する。このとき、検出感度に関しては、図8(a)のθ1=+90度に相当し、図13(b)のθ2=−45度付近に示すように、コントラスト(C)が高く、即ち特徴点(38)を感度良く検出できる。
【0105】
以上のようにして、カメラ11によって撮像された画像は、前述のように図4の検査制御装置200により処理される。
【0106】
実施の形態1によれば、車両走行状態でディスク面全面を複数に分割して撮像する構成において、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる。また、建築限界の制約に適合した構成となっている。また、不要物の映り込み等を避け、特徴点の顕在化の特性を考慮した構成により、特徴点を感度良く正確に検出することができ、安定した精度良い撮像・検査が可能である。
【0107】
(実施の形態2)
次に、図14等を用いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2の構成の基本的な部分は実施の形態1と同じであり、異なる部分としては、撮像光学系を増やし、前述の検出感度の差を補正する合成処理を行う構成を有する。
【0108】
前記実施の形態1では、ディスク1面を図3のように例えば4つの領域(A〜D)に分割して、それらに対応して4つの撮像光学系100(101〜104)(第1の系とする)を設け、これらによる領域毎の撮像によりディスク1全面を撮像する構成としている。一方、実施の形態2では、第1の系の撮像光学系100(101〜104)に対して、更に4つの撮像光学系100(105〜108)を補間するように追加して配置し、合計8つの撮像光学系100による1つのシステムを構成している。なお図示しないが各撮像光学系100に対応して検査制御装置200なども有する。
【0109】
実施の形態1(図3)では、車輪2の回転(b方向)の90度単位での4つの位置L1〜L4に応じた4つの撮像装置100による第1の系である。実施の形態2では、図14のように、第1の系を補間する位置L1’〜L4’に応じた4つの撮像装置100による第2の系を有する。第1、第2の系を合わせて、車輪2の回転(b方向)の45度単位での8つの位置に応じた8つの撮像装置100によるシステムである。
【0110】
実施の形態1(図13)で説明したように、特徴点(38)がディスク1面上のどの箇所に来たときに撮像するかによって、特徴点(38)の顕在化の度合い(検出感度)が異なる。例えば、図3の第1の系における領域A〜Dをそれぞれ中心(対象)にして照明及び撮像する場合、図13のように、角度θ2が45度ずれた位置では検出感度の大小の差がある。
【0111】
そこで、図14に示すように、車両走行及び車輪2及びディスク1の回転により、上記検出感度が相対的に低い位置(例えばθ2=0度)が、検出感度が相対的に高い位置(例えばθ2=±45度)に来たときに撮像できるように、第1の系の位置(L1〜L4)に対して補間する位置、即ちそれぞれ45度ずれた位置(L1’〜L4’)に、第2の系の撮像装置100を設置した。これにより、同じ特徴点の検出に際しても、45度ずれた各位置の撮像画像が得られるので、検出感度が高い方の撮像画像を利用することができる。
【0112】
図14の場合、8つの撮像装置101〜108により、車輪2の45度の回転毎に、各象限の領域を含む撮像範囲R1を撮像するようにしている。例示する撮像基準点Sの45度回転の位置毎に撮像可能である。第1の系により図3のように各領域A〜Dを中心に撮像し、第2の系により各領域A〜Dの境界を中心に撮像する。
【0113】
そして、本システムでは、検査制御装置200により、各撮像光学系100(101〜108)での撮像画像、またはその画像からの特徴点抽出結果をもとに、前述のディスク1面上の位置等による特徴点の検出感度の差(図13)を補正するように合成処理を行うことができる。これにより、検出感度の差を無くす、または低減して、高感度で安定した撮像・検査を実現できる。
【0114】
上記合成処理(補正処理)の例について、図15を用いて説明する。図15(a)は、図14のL1およびL1’の位置にて、撮像光学系101および105にて撮像するときの位置関係の例を示したものである。図15(a)の左側のように、L1の位置にあるとき、特徴点38は、ディスク1のAの領域かつ車輪の真下にあったとする。このとき撮像光学系101で範囲R1を撮像した画像は、図15(b)の92である。車輪およびディスク1がb方向に回転して、L1’の位置に来ると、図15(a)の右側のような位置関係になる。このとき撮像光学系105の同様の画像は93である。図13で説明したように、図15(a)の左側の状態(位置L1)、即ち特徴点がθ2=0度の位置にあるときは、顕在化の度合いが若干低い。このため、画像92のように特徴点が例えば途切れ途切れに検出されることがある。ここで図15(a)の左側の状態(位置L1)においては、Aの領域全面の顕在化の度合いが低い訳ではなく、±45度付近、例えば、図中のAの文字のある付近(境界付近)は顕在化の度合いが高いということに注意が必要である。次に図15(a)の右側の状態(位置L1’)、即ち特徴点がθ2=45度の位置にあるときは、顕在化の度合いが高い(良い)。このため、画像93のように特徴点が正確に検出される。
【0115】
以下、図15(b)により合成処理(補正処理)の例について説明する。画像92と画像93を撮像した際に、撮像対象が45度回転していることは、撮像光学系101,105の設定から既知であるので、例えば画像93を、ディスク中心位置に対応する座標を基準に時計回りに45度回転させれば、ディスク1面の画像92と同じ位置を撮像した画像となる(画像94)。このとき、画像93に写っていない領域は無効であり、かつ、ディスク1面以外は不要であるので、回転後の有効な領域は、画像95の斜線部になる。そこで、画像92と画像94との間で画像95の斜線部を合成することによって、それぞれの角度θ2で撮像した画像の顕在化度合いが低い場所を補正することができる。
【0116】
以下、合成方法について説明する。先に説明したように撮像光学系100は、特徴点を明るく検出するような設定になっている。そこで画像92と画像94の、画像95の斜線部に相当する領域において、画像の同一座標の画素の値が大きい(即ち明るい)方の値を合成後の画像96の当該画像座標の画素の値とする。以上の処理により、画像96のような有効領域全面において、特徴点を正確に捉えた画像を得ることができる。また、前記無効な領域については、他の撮像系で撮った例えばL2,L2’,……の画像から順次得られることは、これまでの説明より明らかである。
【0117】
(実施の形態3)
次に、図16〜図18等を用いて、実施の形態3について説明する。実施の形態3の構成は基本的な部分は実施の形態1と同じであり、異なる部分として、照明限定手段を有する。
【0118】
前記図2のように、車両7における車輪2及びブレーキディスク1のほぼ上半分の領域は、台車構造物8などにより覆われている。また前記図12では好適な撮像光学系100(照明光源12及びカメラ11)の配置の条件を説明した。このとき、照明光源12からの照明光で台車構造物8に当たった光が、ディスク1表面に反射して、カメラ11に検出されることが懸念される。
【0119】
図16は、撮像の際の台車構造物8に当たる照明光について示す。図16(a)は、ディスク1及び台車構造物8等を正面方向(車両7の側面方向)から示す。図16(b)は、図16(a)を側面方向から示す。照明光源12(12a,12b)からの照明光が広がりを持ち、台車構造物8の部位に対しても照射されると、台車構造物8の部位からの光(正反射光または散乱光)51が、ディスク1面(s)で反射して、それを含む光52が、カメラ11に検出される。光52は、ディスク1表面自体の情報、及び台車構造物50の反射像の情報の両方が含まれてしまっている。これら台車構造物8の光51は、ディスク1表面自体の情報ではないため、不要かつ有害なものであり、排除する必要がある。実施の形態3では、この排除の手段として、以下の照明限定手段を備える。
【0120】
図17は、図16(b)に対し、実施の形態3で照明限定手段を備える構成における照明等を示す。実施の形態3では、照明光源12による照明光の照射範囲が、図17の光(照射範囲)61に示すように、台車構造物8に照射されないように構成される。このため、照明光源12に、台車構造物8に光が当たらないようなマスクを設けることにより、輝度分布を制御する。
【0121】
これにより、ディスク1面からカメラ11への光62は、ディスク1表面の情報を含み台車構造物8の反射像を含まない光である。
【0122】
図18には、上記排除(照明限定手段)のための照明光源12の構造例を示す。ストロボランプなどの光源71からの光を、レンズ72により一旦焦点位置に集光し、この集光位置近傍にマスク73が配置されている。マスク73を通った照明光を、レンズ74により、被照明領域となるディスク1面上に結像させる(光75)。この構成により、台車構造物8の部位に照明光を照射することなく、ディスク1表面の対象箇所にのみ照明光を照射することができる。そのため、台車構造物8からの有害な反射光の影響を排除・低減でき、特徴点を高感度に検出することができる。
【0123】
(他の実施の形態)
以上説明した実施の形態では、図1のように車輪2の側面(両側面)にディスク1が装架された方式のディスクブレーキに関する検査の構成を説明した。本発明は、これに限らず、例えば図19のように、車軸3に装架されたディスクブレーキ1Bを対象とした検査の構成についても同様に適用することができる。図19の輪軸部90では、車軸3の両端の車輪2ではなく、その間の一部に円盤形状のディスクブレーキ1Bが装架されている。このディスクブレーキ1Bに対して前述同様に撮像光学系100を配置すればよい。
【0124】
以上説明したように、各実施の形態によれば、走行状態の車両における回転する車輪部のディスク面を軌道の横方向から複数に分けて撮像することにより、ディスク全面の撮像・検査を効率的に且つ精度良く実現することができる。特に、被検査面(ディスク面)からの不要な正反射光等を検出せずに、ディスク表面に発生している「きず」等の特徴点を、感度良く正確に検出することができ、安定した精度良い撮像・検査が可能である。
【0125】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、鉄道車両の検査技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
1(1a〜1d),1B…ブレーキディスク(ディスク、ディスクブレーキ)、2(2a,2b)…車輪、3…車軸、4(4a,4b)…線路(軌道)、4c…線路上面、7…車両(車体、車両本体)、8…台車(台車構造物)、11…カメラ(センサ)、12(12a,12b)…照明光源、21(21a〜21d),22(22a〜22d)…センサ(車輪検知センサ)、32,32a,32b…照明光、33…反射光、34…散乱光、35…入射角、36…反射角、37…ディスク表面、38…特徴点、39…範囲、41(41a,41b)…輝線、42(42a〜42d)…しゅう動痕(溝)、43…カメラの光軸、44…しゅう動痕の円弧の法線、45a〜45d…ディスク面の座標系の領域、46…建築限界、51…光、52…光、61…光(照明範囲)、62…光、71…光源、72,74…レンズ、73…マスク、75…光、81…遮光物、90…輪軸部、92,93,94,95,96…画像、100(101〜108)…撮像光学系(撮像装置)、200(201〜208)…検査制御装置、211…タイミング回路、212…照明制御回路、213…画像入力回路、214…画像処理回路、215…画像保存回路、220…表示装置、300(301〜308)…検査装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキディスク面を撮像して検査する車両検査装置であって、
前記車両の軌道に沿って配置され、前記軌道を通過する車両の前記ブレーキディスク面の画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置による撮像画像を処理し、前記ブレーキディスク面における特徴点を抽出する処理を行う処理装置と、
前記撮像画像及び前記特徴点の抽出処理結果を含むデータを保存する保存装置と、を備え、
前記撮像装置は、前記ブレーキディスク面の被撮像領域へ照明する照明光源と、前記被撮像領域からの反射光を撮像するカメラと、を備え、
前記照明光源は、前記ブレーキディスク面の中心を原点とする座標系における被照明領域となる第1の領域に対して、それとは異なる第2の領域上の空間に配置され、
前記カメラは、その光軸が、前記ブレーキディスク面の法線に対して所定角度以上に傾けた位置となるように配置されること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記カメラは、その光軸が、前記ブレーキディスク面の法線に対して下方向に傾けた位置となるように配置され、
前記カメラの光軸と前記ブレーキディスク面の法線との成す角度は、15度〜30度の範囲内であり、
前記照明光源としては、前記カメラの両側に第1及び第2の2つの照明光源が配置され、
前記第1の照明光源は、前記ブレーキディスク面の座標系における左下の第1の領域を照明し右下の第2の領域上の空間に配置され、
前記第2の照明光源は、前記ブレーキディスク面の座標系における右下の第2の領域を照明し左下の第1の領域上の空間に配置され、
前記カメラの光軸と前記第1及び第2の照明光源の光軸との成す角度は、30度〜70度の範囲内であり、
前記第1及び第2の照明光源の光軸と前記ブレーキディスク面の法線との成す角度は、60度〜80度の範囲内であること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記撮像装置として、前記車両の走行状態で前記ブレーキディスク面の全体を複数の領域に分割して撮像することに対応して、前記車両の軌道に沿って配置される複数の撮像装置を有すること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両検査装置において、
前記複数の撮像装置は、第1の系の撮像装置と、第2の系の撮像装置とを含んで成り、
前記第1の系の撮像装置により、前記ブレーキディスク面の座標系の角度における第1の角度の位置で第1の画像を撮像し、
前記第2の系の撮像装置により、前記ブレーキディスク面の座標系の角度における第2の角度の位置で第2の画像を撮像し、
前記第1、第2の画像を用いて、前記第1、第2の角度の位置の差による特徴点の検出感度の差を補正するように処理して、検査のための画像を得ること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記照明光源は、その照明の発光分布が前記ブレーキディスク面の検査対象領域以外の不要部を照明しないように限定する照明限定手段を備えること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両検査装置において、
前記照明限定手段として、光源からの光を一部遮蔽するマスクを備えること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項1】
車両のブレーキディスク面を撮像して検査する車両検査装置であって、
前記車両の軌道に沿って配置され、前記軌道を通過する車両の前記ブレーキディスク面の画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置による撮像画像を処理し、前記ブレーキディスク面における特徴点を抽出する処理を行う処理装置と、
前記撮像画像及び前記特徴点の抽出処理結果を含むデータを保存する保存装置と、を備え、
前記撮像装置は、前記ブレーキディスク面の被撮像領域へ照明する照明光源と、前記被撮像領域からの反射光を撮像するカメラと、を備え、
前記照明光源は、前記ブレーキディスク面の中心を原点とする座標系における被照明領域となる第1の領域に対して、それとは異なる第2の領域上の空間に配置され、
前記カメラは、その光軸が、前記ブレーキディスク面の法線に対して所定角度以上に傾けた位置となるように配置されること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記カメラは、その光軸が、前記ブレーキディスク面の法線に対して下方向に傾けた位置となるように配置され、
前記カメラの光軸と前記ブレーキディスク面の法線との成す角度は、15度〜30度の範囲内であり、
前記照明光源としては、前記カメラの両側に第1及び第2の2つの照明光源が配置され、
前記第1の照明光源は、前記ブレーキディスク面の座標系における左下の第1の領域を照明し右下の第2の領域上の空間に配置され、
前記第2の照明光源は、前記ブレーキディスク面の座標系における右下の第2の領域を照明し左下の第1の領域上の空間に配置され、
前記カメラの光軸と前記第1及び第2の照明光源の光軸との成す角度は、30度〜70度の範囲内であり、
前記第1及び第2の照明光源の光軸と前記ブレーキディスク面の法線との成す角度は、60度〜80度の範囲内であること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記撮像装置として、前記車両の走行状態で前記ブレーキディスク面の全体を複数の領域に分割して撮像することに対応して、前記車両の軌道に沿って配置される複数の撮像装置を有すること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両検査装置において、
前記複数の撮像装置は、第1の系の撮像装置と、第2の系の撮像装置とを含んで成り、
前記第1の系の撮像装置により、前記ブレーキディスク面の座標系の角度における第1の角度の位置で第1の画像を撮像し、
前記第2の系の撮像装置により、前記ブレーキディスク面の座標系の角度における第2の角度の位置で第2の画像を撮像し、
前記第1、第2の画像を用いて、前記第1、第2の角度の位置の差による特徴点の検出感度の差を補正するように処理して、検査のための画像を得ること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両検査装置において、
前記照明光源は、その照明の発光分布が前記ブレーキディスク面の検査対象領域以外の不要部を照明しないように限定する照明限定手段を備えること、を特徴とする車両検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両検査装置において、
前記照明限定手段として、光源からの光を一部遮蔽するマスクを備えること、を特徴とする車両検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−180107(P2011−180107A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47545(P2010−47545)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】
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