説明

車両機器遠隔制御向け通信システムおよび車両機器遠隔制御向け通信方法

【課題】複数のアンテナを用いることなく、マルチパス干渉による通信不能領域を削減する。
【解決手段】携帯機との間で無線通信を行う車載器10において、ドア検知部11が車両のドアの開状態を検知すると、判定部12が送信部13に指示して、携帯機からの応答信号を受信するまで定期的に質問信号を送信させる。これにより、複数のアンテナを用いることなく、移動中の携帯機との間で異なる位置とタイミングで複数回通信を試行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載器と携帯機との間で無線通信を行って車両機器を遠隔制御する車両機器遠隔制御向け通信システムおよびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両機器遠隔制御システムは、携帯機の操作部を操作して車両のドアの施錠/開錠を行う遠隔操作機能(いわゆるキーレスエントリ機能)に加えて、この操作部を操作することなく施錠/開錠を行うスマートエントリ機能を備える。スマートエントリ機能では、車載器からの質問信号に対して携帯機が自動的に応答コード信号を返送し、車載器側でこのコードを照合して照合結果に応じてドアの施錠/開錠を行う。
【0003】
例えば特許文献1には、携帯無線装置と車載無線装置とからなるキーレスエントリシステムが提案されている。このシステムにおいて、携帯無線装置は、呼出信号を受信する第1の受信手段と、この第1の受信手段で呼出信号が受信されると応答信号を送信する第1の送信手段とを備える。他方の車載無線装置は、所定の時間間隔で呼出信号を送信する第2の送信手段と、第1の送信手段からの応答信号を受信する第2の受信手段と、この第2の受信手段で応答信号が受信されると車両のドアを開錠するための信号を出力し、応答信号が受信されなければ所定時間経過後に車両のドアを施錠するための信号を出力する制御手段とを備える。
【0004】
このような従来の車両機器遠隔制御システムでは、携帯機と車載器が通信によるコード照合を実施するため、マルチパス干渉の影響により通信不能な領域が発生する場合があった。そのため、携帯機が通信不能領域にある場合には通信によるコード照合ができず、車両機器を制御できないという課題があった。
そこで、特許文献2では、携帯機と車載器にそれぞれ複数のアンテナを設けて、複数のアンテナ間で通信路を確保することで通信不能領域を削減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−106376号公報([0005]段落、図1)
【特許文献2】特開2007−51471号公報([0046]段落、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2のように、通信不能領域を削減するために複数のアンテナを用いる構成ではコストが増大してしまうという課題があった。また、複数のアンテナを携帯機に搭載することにより、携帯機が大きくなってしまうという課題もあった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、複数のアンテナを用いることなく、マルチパス干渉による通信不能領域を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両機器遠隔制御向け通信システムは、車載器と携帯機とから構成され、車載器は、車両のドアの開閉状態を検知するドア検知部と、アンテナを有して携帯機との間で無線通信を行う第1の送受信部と、第1の送受信部を制御して信号を送受信させる第1の判定部とを備え、当該第1の判定部は、ドア検知部がドアの開状態を検知した場合、携帯機からの応答信号を受信するまで定期的に第1の送受信部から質問信号を送信させ、携帯機は、アンテナを有して車載器との間で無線通信を行う第2の送受信部と、第2の送受信部を制御して信号を送受信させる第2の判定部とを備え、当該第2の判定部は、第2の送受信部が車載器からの質問信号を受信した場合、車両機器を遠隔制御して所定動作を行わせるための応答信号を第2の送受信部から送信させるようにしたものである。
【0009】
この発明に係る車両機器遠隔制御向け通信方法は、車載器が、車両のドアの開状態を検知した場合、携帯機からの応答信号を受信するまで定期的に質問信号を送信する質問信号送信ステップと、携帯機が、質問信号送信ステップで車載器から送信された質問信号を受信した場合、車両機器を遠隔制御して所定動作を行わせるための応答信号を送信する応答信号送信ステップとを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、車載器においてドアの開状態を検知して、携帯機からの応答信号を受信するまで定期的に質問信号を送信するようにしたので、車載器にてユーザに保持された携帯機が移動するタイミングを推定して、携帯機の移動中に複数回の無線通信を試すことで、複数のアンテナを用いることなく異なる位置とタイミングで複数回通信を試行でき、通信不能な領域を削減することができる。この結果、車両周辺での確実なコード照合が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車載器の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る携帯機の構成を示すブロック図である。
【図3】車載器が備える電力制御部の内部構成を示すブロック図である。
【図4】携帯機が備える起動回路部の内部構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1に係る車載器が備える判定部の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1に係る携帯機が備える判定部の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る車載器と携帯機によるスマートエントリ機能実現のための通信方法を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る携帯機が備える受信部の内部構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態2に係る車載器が備える判定部の動作を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る携帯機が備える判定部の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係る車載器と携帯機によるスマートエントリ機能実現のための通信方法を示すタイムチャートである。
【図12】この発明の実施の形態3に係る車載器が備える判定部の動作を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態3に係る携帯機が備える判定部の動作を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態3に係る車載器と携帯機によるスマートエントリ機能実現のための通信方法を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る車両機器遠隔制御向け通信システムは、図1に示す車載器10と、図2に示す携帯機20とから構成される。ここでは、車両に搭載された車載器10とユーザが所持する携帯機20との間で無線通信を行ってコード照合し、照合結果に基づいて、この車両のドアを施錠/開錠するドアロック部(不図示)などの車両機器を制御するために、本通信システムを使用する。以下、車両機器の一例としてドアロック部を用いて説明する。
【0013】
図1に示す車載器10は、ドア検知部11と、判定部12と、送信部13と、電力制御部14と、送受切替部15と、アンテナ部16とおよび受信部17とから構成される。
ドア検知部11は、この車載器10が搭載された車両のドアの開閉状態を検知し、判定部12に通知する。
【0014】
判定部12は、ドア検知部11からのドア開状態または閉状態の検知信号を受け、ドアの開閉状態に応じた信号を送信部13へ出力する。また、判定部12は電力制御部14を制御して送信電力を調整したり、受信した信号を受信部17から取得したりする。また、判定部12は、携帯機20との間で信号を送受信できるように送受切替部15の送信機能/受信機能を切り替える。さらに、受信した信号に応じてドアロック部の施錠/開錠を制御する。
なお、第1の判定部は判定部12により構成される。
【0015】
送信部13は、判定部12が出力する信号を所定の変調方式で変調するなどの送信処理を行い、電力制御部14および送受切替部15を経由してアンテナ部16から送信する。送受切替部15は、送受切替部15に接続され、判定部12の制御により送信機能と受信機能の選択を切り替える。アンテナ部16は、例えばUHF帯(315MHz)の電波を携帯機20との間で送受信する。受信部17は、アンテナ部16が受信した電波を送受切替部15を経由して受け取ると、所定の変調方式で変調されたその電波を検波(復調)するなどの受信処理を行って、判定部12へ出力する。
なお、第1の送受信部は送信部13、送受切替部15、アンテナ部16、受信部17により構成される。
【0016】
電力制御部14は、判定部12の指示に応じて送信電力を制御する。詳細は後述する。
【0017】
図2に示す携帯機20は、アンテナ部21と、送受切替部22と、送信部23と、判定部24と、操作検知部25と、受信部26と、起動回路部27と、起動レベル制御部28と、ポーリング回路部29とから構成される。
【0018】
アンテナ部21は、例えばUHF帯(315MHz)の電波を車載器10との間で送受信する。送受切替部22は、アンテナ部21に接続され、判定部24の制御により送信機能と受信機能の選択を切り替える。送信部23は、判定部24が出力する信号を所定の変調方式で変調するなどの送信処理を行い、送受切替部22を経由してアンテナ部21から送信する。受信部26は、アンテナ部21が受信した電波を送受切替部22を経由して受け取り所定の変調方式で変調された電波を検波(復調)するなどの受信処理を行って、判定部24へ出力する。
なお、第2の送受信部はアンテナ部21、送受切替部22、送信部23、受信部26により構成される。
【0019】
判定部24は、操作検知部25からの施錠/開錠操作検知信号を受け、操作内容に応じた信号を送信部23へ出力する。また、判定部24は起動レベル制御部28を制御して携帯機20の起動レベルを調整したり、受信した信号を受信部26から取得したりする。また、判定部24は、車載器10との間で信号を送受信できるように送受切替部22の送信機能/受信機能を切り替える。さらに、判定部24はタイマ24aを内蔵しており、タイマ割り込みを実施可能である。
なお、第2の判定部は判定部24により構成される。
【0020】
操作検知部25は、ユーザが携帯機20を操作して入力したドアの施錠/開錠の指示を検知し、判定部24へ施錠/開錠操作検知信号を通知する。
【0021】
起動回路部27は、信号の受信に必要な携帯機20の各部を、起動レベル制御部28に設定された起動レベルで起動させる。起動レベル制御部28は、判定部24の指示に応じて、起動回路部27の起動レベルを制御する。ポーリング回路部29は、起動回路部27および起動レベル制御部28を周期的に動作させる。
【0022】
図3は、車載器10の電力制御部14の内部構成を示すブロック図である。電力制御部14には、ある増幅量をもつ増幅部が複数段設けられ、各増幅部には判定部12からのON/OFF信号が入力される。図3の例では、4段の増幅部141〜144が設けられている。各増幅部141〜144がON/OFF信号に応じて送信電力を増幅することにより、送信電力の制御を実現する。
なお、図示は省略するが、携帯機20の起動レベル制御部28も電力制御部14と同様に、ある増幅量をもつ増幅部が複数段設けられ、判定部24からのON/OFF信号に応じた起動レベルの制御を実現する。なお、起動レベルを下げるためには、前段で車載器10からの信号を増幅する必要があるので、起動レベルを下げると消費電流が増加することになる。
【0023】
図4は、携帯機20の起動回路部27の内部構成を示すブロック図である。起動回路部27には検波部271と同期信号判定部272とが設けられている。検波部271は、車載器10からの受信信号強度を検出すると共に、例えばASK(Amplitude Shift Keying)変調された同期部分を検波する。同期信号判定部272は、検波部271で検波された同期信号が所望の同期信号か否かを確認し、所望の同期信号の場合に携帯機20の各部を起動させる。携帯機20が起動すれば、車載器10との間で無線通信を実施可能である。
これにより、不用意に携帯機20を起動することなく、所望の車載器10からの信号で起動することができるようになる。
【0024】
次に、図5に示すフローチャートを用いて、本実施の形態1に係る車載器10の判定部12の動作を説明する。
ステップST1は初期状態であり、判定部12はドア検知部11からのドア開検知信号待ちとなる。判定部12は、ドア開検知信号の通知を受けると(ステップST2)、送受切替部15を送信機能に切り替えて(ステップST3)、電力制御部14にON/OFF信号を出力して送信電力を「弱」に制御する(ステップST4)。そして、判定部12から送信部13へ質問信号を出力し、携帯機20に向けてこの質問信号を送信させる(ステップST5)。
【0025】
続いて判定部12は、携帯機20からの応答信号を受信するために、送受切替部15を受信機能に切り替えて(ステップST6)、受信部17による応答信号の受信待ちとなる(ステップST7)。判定部12は、一定時間内に応答信号があると(ステップST7“YES”)、続いてドア検知部11からのドア閉検知信号を待つ(ステップST8)。ドア閉検知信号の通知があると(ステップST8“YES”)、送受切替部15を送信機能に切り替えて(ステップST10)、電力制御部14の送信電力を「強」に制御し(ステップST11)、送信部13へ送信停止信号を出力し、携帯機20に向けてこの送信停止信号を送信させる(ステップST12)。送信停止信号を送信した後は、再びステップST2に戻ってドア開検知信号が入力されるのを待つ。
【0026】
一方、ステップST7にて一定時間内に応答信号がない場合(ステップST7“NO”)、判定部12は続いてドア検知部11からのドア閉検知信号を待つ(ステップST9)。ドア閉検知信号の通知もないと(ステップST9“NO”)、再びステップST3に戻り、質問信号を携帯機20へ再送信する処理を行う。また、応答信号がなくとも、ドア閉検知信号の通知があった場合には(ステップST7“NO”、ステップST9“YES”)、ステップST10へ進んで送信停止信号を携帯機20へ送信する処理を行う。
【0027】
次に、図6に示すフローチャートを用いて、本実施の形態1に係る携帯機20の判定部24の動作を説明する。
ステップST21は初期状態であり、続くステップST22で待ち受け状態となり、各種割り込みを待つ状態となる。判定部24への割り込みとしては、起動回路部27からの割り込み、内蔵するタイマ24aの割り込み、操作検知部25からの割り込みの3種類がある。判定部24は、割り込み信号を受けるとそれがどこからの割り込みか判定する(ステップST23)。
【0028】
起動回路部27からの割り込みの場合(ステップST24)、この割り込みはスマートエントリ機能実現のために、所望の車載器10からの質問信号が届き携帯機20が起動したことを示す。そこで、判定部24は送受切替部22を受信機能に切り替えて(ステップST25)、受信部26が車載器10からの質問信号を受信したか否かを判定する(ステップST26)。判定部24は、一定時間以内に質問信号があると(ステップST26“YES”)、続いて送受切替部22を送信機能に切り替えて(ステップST27)、送信部23へコード照合のための情報を含む応答信号を出力し、車載器10に向けてこの応答信号を送信させる(ステップST28)。そして、応答信号を定期的に送信するタイミングをカウントするタイマ24aを起動して(ステップST29)、再びステップST22の待ち受け状態へと戻る。
一方、ステップST26にて一定時間内に質問信号がない場合(ステップST26“NO”)、判定部24は続いて受信部26が車載器10からの送信停止信号を受信したか否かを判定する(ステップST30)。送信停止信号があると(ステップST30“YES”)、起動中のタイマ24aを停止し(ステップST31)、再びステップST22の待ち受け状態へと戻る。送信停止信号がなければ(ステップST30“NO”)、そのままステップST22の待ち受け状態へと戻る。
【0029】
タイマ24aからの割り込みの場合(ステップST32)、この割り込みはスマートエントリ機能実現のための応答信号の定期的な送信タイミングを示す。そこで、判定部24は送受切替部22を送信機能に切り替えて(ステップST33)、応答信号を携帯機20へ送信する処理を行い(ステップST34)、応答信号を定期的に送信するためのタイマ24aを起動して(ステップST35)、再びステップST22の待ち受け状態へと戻る。
【0030】
操作検知部25からの割り込みの場合(ステップST36)、この割り込みは遠隔操作機能(いわゆるキーレスエントリ機能)のために、ユーザが操作検知部25を操作して車両のドアロック部を施錠/開錠させる操作を行ったことを示す。そこで、判定部24は送受切替部22を送信機能に切り替えて(ステップST37)、操作検知部25から割り込んだユーザ操作信号に応じた開錠信号または施錠信号を送信部23へ出力し、車載器10に向けてこの信号を送信させる(ステップST38)。そして再びステップST22の待ち受け状態へと戻る。
【0031】
なお、スマートエントリ機能を実現するためには、車載器10が上記通信方法により携帯機20から受信した応答信号に含まれるコードを照合し、ドア閉状態の検知後にドアロック部を操作して施錠すればよい。
【0032】
図7に、本実施の形態1に係る車載器10と携帯機20によるスマートエントリ機能実現のための通信方法を説明するための図を示す。図7(a)は携帯機20(不図示)を持ったユーザが車両のドアを開けて乗り込む様子を示し、図7(b)はその際の車載器10が送信した電波の受信電力の推移例を示す。
電波を用いた信号の送信では、直接波と車体からの反射波との合成により、図7(b)の(I)および(III)に示すような電界強度が落ち込む、いわゆるヌル点が存在する。そこで、携帯機20がユーザに保持されユーザと共に移動することを利用して、車載器10が携帯機20の移動タイミングを推定して、移動中に車載器10から定期的に質問信号を送信する。ユーザが移動するか否かの推定は、判定部12がドア検知部11からドア開検知信号の通知を受けることによる。このように定期的に質問信号を送信することで、図7(b)の(I)では携帯機20が質問信号を受信できなくとも、(II)にて受信可能となる。このように、本来は通信不能であった場合でも、車載器10から複数回通信を試みることで、通信を成功させることができる。
また、車載器10から携帯機20へ質問信号を弱い電力で送信することで、質問信号が不必要なエリアに飛ぶことを抑制できる。
【0033】
また、ドアが閉状態になると、車載器10から携帯機20へ送信停止信号を強い電力で送信することで、携帯機20が図7(b)の(III)のようにヌル点に存在している場合でも、携帯機20の応答信号の定期送信を止めることができるようになっている。
また、ユーザが車両のドアを閉じて次の動作に移るまで、携帯機20から応答信号の定期送信を行うことができ、さらに通信不能な領域を削減できる。
【0034】
以上より、実施の形態1によれば、車載器10は、車両のドアの開閉状態を検知するドア検知部11と、送受切替部15でアンテナ部16を切り替えて携帯機20との間で無線通信を行う送信部13および受信部17と、ドア検知部11でドア開状態を検知した場合に受信部17で携帯機20からの応答信号を受信するまで送信部13から定期的に質問信号を送信させる判定部12とを備える構成にした。また、携帯機20は、送受切替部22でアンテナ部21を切り替えて車載器10との間で無線通信を行う送信部23および受信部26と、受信部26で車載器10からの質問信号を受信した場合にドアロック部を遠隔制御してドアを施錠させるためのコードを含む応答信号を送信部23から送信させるようにした。このため、車載器10にて携帯機20が移動するタイミングを推定して、移動中に複数回通信を試すことで、複数のアンテナを用いることなく異なる位置とタイミングで複数回通信を試行できるようになり、通信不能な領域を削減することができる。この結果、車両周辺での確実なコード照合を実現可能となる。
【0035】
また、実施の形態1によれば、携帯機20の判定部24を、受信部26で車載器10からの質問信号を受信した場合に、当該車載器10から送信停止信号を受信するまで送信部23から定期的に応答信号を送信させる構成にし、車載器10の判定部12を、受信部17で携帯機20からの応答信号を受信し、かつ、ドア検知部11でドア閉状態を検知した場合に送信部13から送信停止信号を送信させる構成にした。このため、ユーザが車両のドアを閉じて次の動作に移るまで、携帯機20からの応答信号の送信を繰り返し行うことができるようになり、更に通信不能な領域を削減できる。
【0036】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、車載器10から送信する質問信号と送信停止信号を予め設定された電力「弱」と電力「強」にすることで、質問信号が不必要なエリアに飛ぶことを抑制しつつ、送信停止信号が携帯機20に確実に受信されるようにしていた。これに対し、本実施の形態2では、携帯機20の起動レベルを車載器10から受信した応答信号の受信電力を元に制御することで、車載器10からの送信停止信号をより確実に受信できるようにする。
なお、本実施の形態2の車載器10および携帯機20は、図1および図2に示す車載器10および携帯機20と図面上では同様の構成であるため、以下では図1および図2を援用して説明する。
【0037】
図8は、本発明の実施の形態2に係る携帯機20の受信部26の内部構成を示すブロック図である。受信部26には復調部261と電界強度取得部262とが設けられている。復調部261は、車載器10からの質問信号などを復調する。電界強度取得部262は、受信した質問信号の電界強度を計測する。
【0038】
次に、図9に示すフローチャートを用いて、本実施の形態2に係る車載器10の判定部12の動作を説明する。判定部12の動作は、図5に示すフローチャートの動作と略同様であるが、本実施の形態2ではステップST3,ST10の送信切り替え後に、質問信号または送信停止信号の送信電力を変更することなく各信号を送信する。また、携帯機20からの応答信号を受信したら(ステップST7“YES”)、新たにステップST51にて送受切替部15を送信機能に切り替えて、ステップST52にて受信応答信号を携帯機20に送信する。
【0039】
次に、図10に示すフローチャートを用いて、本実施の形態2に係る携帯機20の判定部24の動作を説明する。判定部24の動作は、図6に示すフローチャートの動作と略同様であるが、本実施の形態2ではステップST28,ST34の応答信号送信の後に、ステップST61,ST64にて送受切替部22を受信機能に切り替えて、ステップST62,ST65にて一定時間内に車載器10からの受信応答信号を受信したか否かを判定する。受信応答信号を受信した場合(ステップST62“YES”,ST65“YES”)、判定部24は続いてステップST63,ST66にて受信部26から受信応答信号の電界強度を取得し、起動レベル制御部28をその電界強度にて起動可能なレベルに制御する。起動レベルの制御方法としては、例えば「受信電界強度>起動レベル」となるように制御する。なお、起動レベル制御部28の内部構成は図3に示すとおりであるため、説明は省略する。
【0040】
次に、図11に示すタイムチャートを用いて、本実施の形態2に係る車載器10と携帯機20によるスマートエントリ機能実現のための通信方法を説明する。
車載器10がドア開状態を検知して質問信号を送信すると(ステップST101)、携帯機20がその質問信号を受信して起動し、応答信号を繰り返し返送する(ステップST102)。車載器10は、応答信号を受信すると受信応答信号を返送し、携帯機20がこの受信応答信号を受信して電界強度を測定して電界強度に応じた起動レベルを設定し(ステップST103)、引き続き応答信号を繰り返し返送する(ステップST104)。車載器10はドア閉状態を検知すると送信停止信号を送信し(ステップST105)、携帯機20は設定された起動レベルでこの送信停止信号を受信し、応答信号の返送を終了する。
【0041】
このような構成により、通信不能な領域を削減することができる。また、車載器10の送信する送信停止信号を携帯機20が確実に受信できるようにこの携帯機20の起動レベルを制御することができ、不必要に携帯機20からの応答信号の送信を繰り返すことによる過剰な電池消費を抑制できる。
【0042】
以上より、実施の形態2によれば、車載器10の判定部12を、受信部17で携帯機20からの応答信号を受信した場合に送信部13から受信応答信号を送信させる構成にした。また、携帯機20を、車載器10からの受信応答信号の電界強度を測定する電界強度取得部262と、携帯機20の起動レベルを制御する起動レベル制御部28とを備える構成にして、判定部24が、電界強度取得部262で測定した電界強度に基づいて起動レベル制御部28の起動レベルを設定するようにした。このため、ドア閉状態を検知した時点で携帯機20がヌル点で移動停止した場合でも、携帯機20が車載器10からの送信停止信号を受信して応答信号の定期送信を確実に停止することができるようになり、携帯機20の消費電流を抑制できる。
【0043】
なお、上記実施の形態2では、車載器10の質問信号および送信停止信号の電力制御は特に行わなかったが、これに限定されるものではなく、上記実施の形態1と同様に質問信号の送信電力を「弱」、送信停止信号の送信電力を「強」に制御してもよい。この構成の場合にはより確実に携帯機20が送信停止信号を受信できる。
【0044】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、車載器10から送信する送信停止信号を予め設定された電力に一定制御していたが、本実施の形態3では、車載器10から送信する送信停止信号の電力を、携帯機20からの応答信号の受信電力を元に可変制御する構成にする。
なお、本実施の形態3の車載器10および携帯機20は、図1および図2に示す車載器10および携帯機20と図面上では同様の構成であるため、以下では図1および図2を援用して説明する。また、本実施の形態3の受信部26の内部構造は、図8に示すとおりである。
【0045】
次に、図12に示すフローチャートを用いて、本実施の形態3に係る車載器10の判定部12の動作を説明する。判定部12の動作は、図5および図9に示すフローチャートの動作と略同様であるが、本実施の形態3ではステップST3の送信切り替え後に、新たにステップST71にて送信電力を「最弱」にするよう電力制御部14を制御し、続くステップST5にて質問信号を最弱の電力で送信する。また、ステップST7にて携帯機20からの応答信号を受信した場合(ステップST7“YES”)、判定部12はステップST51にて送受切替部15を送信機能に切り替えて、ステップST52にて受信応答信号を携帯機20に送信する。そして、ステップST72にて再び送受切替部15を受信機能に切り替え、受信した応答信号の受信電力に基づいて電力制御部14の送信電力を制御する(ステップST73)。これにより、送信停止信号は、応答信号の電力に基づいた送信電力にて送信される(ステップST12)。
判定部12は、応答信号の電力に基づいた送信電力値を、例えば「携帯機20の送信電力−応答信号受信電力<電力制御部14の送信電力−携帯機20の起動レベル」となるように制御することで、送信停止信号を確実に携帯機20に伝えることができる。なお、携帯機20からの応答信号中には、車載器10が送信電力値を決定するために必要な情報(電界強度)が含まれる。
【0046】
次に、図13に示すフローチャートを用いて、本実施の形態3に係る携帯機20の判定部24の動作を説明する。判定部24の動作は、図6および図10に示すフローチャートの動作と略同様であるが、本実施の形態3ではステップST62,ST65にて車載器10からの受信応答信号を受信した後、新たにステップST81,ST83にてその受信応答信号の電界強度を測定して保持する。そして、判定部24はステップST32以降のタイマ24aの割り込みにより送信する応答信号に、前回測定して保持している電界強度を付与する(ステップST82)。これにより、車載器10へ電界強度を通知できる。
【0047】
次に、図14に示すタイムチャートを用いて、本実施の形態3に係る車載器10と携帯機20によるスマートエントリ機能実現のための通信方法を説明する。
車載器10がドア開状態を検知して最弱の電力で質問信号を送信すると(ステップST111)、携帯機20がその質問信号を受信して起動し、応答信号を繰り返し返送する(ステップST112)。車載器10は、応答信号を受信すると受信応答信号を送信し、携帯機20がこの受信応答信号を受信して電界強度を測定し(ステップST113)、応答信号に電界強度の情報を付与して引き続き繰り返し返送する(ステップST114)。車載器10は応答信号に含まれる電界強度に応じて送信電力を設定し、ドア閉状態を検知するとその送信電力で送信停止信号を送信する(ステップST115)。携帯機20はこの送信停止信号を受信し、応答信号の返送を終了する。
【0048】
このような構成により、通信不能な領域を削除することができる。また、車載器10からの送信停止信号を受信するために、携帯機20にて起動レベルを下げる必要がないので、起動レベル低下に伴う消費電流の増加を招くことがない。さらに、携帯機20からの応答信号の電力より携帯機20と車載器10の間の伝搬ロスを推定し、車載器10の送信電力を制御することができるので、車載器10の信号を不要なエリアに送信することなく、適切に携帯機20に通達できる。
【0049】
以上より、実施の形態3によれば、車載器10を、信号を送信する電力を制御する電力制御部14を備える構成にして、判定部12が、送信部13で携帯機20からの応答信号を受信した場合に受信応答信号を送信させると共に、受信部17で携帯機20からの電界強度の情報が付与された応答信号を受信した場合に当該電界強度に基づいて電力制御部14の電力を設定して、送信停止信号を送信部13から当該電力で送信させるようにした。また、携帯機20を、車載器10からの受信応答信号の電界強度を測定する電界強度取得部262を備える構成にして、判定部24が、送信部23から定期的に送信させる応答信号に、電界強度取得部262が測定した電界強度の情報を付与して車載器10に通知するようにした。このため、ドア閉状態を検知した時点で携帯機20がヌル点で移動停止した場合でも、携帯機20が起動レベルを下げることにより受信に必要な消費電流を増加させてしまうことなく、確実に車載器10からの送信停止信号を受信して応答信号の定期送信を停止することができるようになり、携帯機20の消費電流を抑制できる。
【0050】
なお、上記実施の形態1〜3では、車両機器遠隔制御向け通信システムを用いて遠隔制御する車両機器として、車両のドアを施錠/解錠するドアロック部を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、車両のエンジンを始動させるエンジン制御部を遠隔制御する構成にしてもよい。
【0051】
この他にも、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 車載器、11 ドア検知部、12 判定部、13 送信部、14 電力制御部、15 送受切替部、16 アンテナ部、17 受信部、20 携帯機、21 アンテナ部、22 送受切替部、23 送信部、24 判定部、24a タイマ、25 操作検知部、26 受信部、27 起動回路部、28 起動レベル制御部、29 ポーリング回路部、141〜144 増幅部、261 復調部、262 電界強度取得部、271 検波部、272 同期信号判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載器と携帯機との間で無線通信を行い、携帯機からの応答信号を車載器が受信すると当該応答信号に基づいて車両機器を制御する車両機器遠隔制御向け通信システムにおいて、
前記車載器は、
車両のドアの開閉状態を検知するドア検知部と、
アンテナを有して前記携帯機との間で無線通信を行う第1の送受信部と、
前記第1の送受信部を制御して信号を送受信させる第1の判定部とを備え、
当該第1の判定部は、前記ドア検知部がドアの開状態を検知した場合、前記携帯機からの応答信号を受信するまで定期的に前記第1の送受信部から質問信号を送信させ、
前記携帯機は、
アンテナを有して前記車載器との間で無線通信を行う第2の送受信部と、
前記第2の送受信部を制御して信号を送受信させる第2の判定部とを備え、
当該第2の判定部は、前記第2の送受信部が前記車載器からの質問信号を受信した場合、前記車両機器を遠隔制御して所定動作を行わせるための応答信号を前記第2の送受信部から送信させることを特徴とする車両機器遠隔制御向け通信システム。
【請求項2】
携帯機の第2の判定部は、第2の送受信部が車載器からの質問信号を受信した場合、当該車載器からの送信停止信号を受信するまで定期的に応答信号を送信させ、
前記車載器の第1の判定部は、第1の送受信部が前記携帯機からの応答信号を受信し、かつ、ドア検知部がドアの閉状態を検知した場合、当該応答信号の定期的な送信を停止させるための送信停止信号を当該第1の送受信部から送信させることを特徴とする請求項1記載の車両機器遠隔制御向け通信システム。
【請求項3】
車載器の第1の判定部は、第1の送受信部が携帯機からの応答信号を受信した場合、当該第1の送受信部から受信応答信号を返送させ、
前記携帯機は、
前記車載器からの受信応答信号の電界強度を測定する電界強度取得部と、
当該携帯機の起動レベルを制御する起動レベル制御部とを備え、
第2の判定部は、前記電界強度取得部が測定した電界強度に基づいて前記起動レベル制御部の起動レベルを設定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両機器遠隔制御向け通信システム。
【請求項4】
携帯機は、
車載器からの受信応答信号の電界強度を測定する電界強度取得部を備え、
第2の判定部は、第2の送受信部から定期的に送信させる応答信号に、前記電界強度取得部が測定した電界強度の情報を付与して車載器に通知し、
前記車載器は、
信号を送信する電力を制御する電力制御部を備え、
第1の判定部は、第1の送受信部が前記携帯機からの応答信号を受信した場合に受信応答信号を返送させ、前記第1の送受信部が前記携帯機からの電界強度の情報が付与された応答信号を受信した場合に当該電界強度に基づいて前記電力制御部の電力を設定して前記第1の送受信部から当該電力で送信停止信号を送信させることを特徴とする請求項2記載の車両機器遠隔制御向け通信システム。
【請求項5】
車載器と携帯機との間で無線通信を行い、携帯機からの応答信号を車載器が受信すると当該応答信号に基づいて車両機器を制御する車両機器遠隔制御向け通信方法において、
前記車載器が、車両のドアの開状態を検知した場合、前記携帯機からの応答信号を受信するまで定期的に質問信号を送信する質問信号送信ステップと、
前記携帯機が、前記質問信号送信ステップで前記車載器から送信された質問信号を受信した場合、前記車両機器を遠隔制御して所定動作を行わせるための応答信号を送信する応答信号送信ステップとを備えることを特徴とする車両機器遠隔制御向け通信方法。
【請求項6】
応答信号送信ステップでは、携帯機が応答信号を定期的に送信し、
車載器は、前記応答信号送信ステップで前記携帯機から送信された応答信号を受信し、かつ、車両のドアの閉状態を検知した場合、当該応答信号の定期的な送信を停止させるための送信停止信号を送信する送信停止信号送信ステップと、
前記携帯機は、前記送信停止信号送信ステップで前記車載器から送信された前記送信停止信号を受信した場合、応答信号の定期的な送信を停止する応答信号送信停止ステップとを備えることを特徴とする請求項5記載の車両機器遠隔制御向け通信方法。
【請求項7】
車載器が、応答信号送信ステップで携帯機から送信された応答信号を受信した場合、受信応答信号を返送する受信応答信号送信ステップと、
前記携帯機が、前記受信応答信号送信ステップで前記車載器から送信された受信応答信号を受信した場合、当該受信応答信号の電界強度を測定し、測定した電界強度に基づいて前記携帯機の起動レベルを制御する起動レベル制御ステップとを備え、
応答信号送信停止ステップでは、前記携帯機が前記起動レベル制御ステップで制御した起動レベルで前記車載器からの送信停止信号を受信することを特徴とする請求項6記載の車両機器遠隔制御向け通信方法。
【請求項8】
車載器が、応答信号送信ステップで携帯機から送信された応答信号を受信した場合、受信応答信号を返送する受信応答信号送信ステップと、
前記携帯機が、前記受信応答信号送信ステップで前記車載器から送信された受信応答信号を受信した場合、当該受信応答信号の電界強度を測定し、定期的に送信する応答信号に当該電界強度の情報を付与して車載器に通知する電界強度通知ステップと、
前記車載器が、前記電界強度通知ステップで前記携帯機から送信された電界強度の情報が付与された応答信号を受信した場合、当該電界強度に基づいて送信停止信号を送信する電力を制御する送信電力制御ステップとを備え、
送信停止信号送信ステップでは、前記車載器が前記送信電力制御ステップで制御した電力で送信停止信号を送信することを特徴とする請求項6記載の車両機器遠隔制御向け通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−184544(P2012−184544A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46362(P2011−46362)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】