説明

車両洗浄装置

【目的】 本発明は、洗浄する車両の種類を任意に設定することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 操作パネル44で設定した新規の車種設定を記憶するメモリ42と、メモリ42に記憶した車種設定における洗浄範囲A内で台車3及びノズル装置4を所定の洗浄パターンで動作させる洗浄制御部41を備えた。操作パネル44は、台車3とノズル装置4を任意の位置に移動させる位置決めキー48と、この位置決めキー48を操作して台車3とノズル装置4を移動させ、任意の洗浄開始点P1とこの洗浄開始点P1の対角点P2を指定する決定キー49を備えている。また、台車エンコーダ13と、ノズルエンコーダ25とを備え、メモリ42には設定した洗浄開始点P1及び対角点P2を台車3及びノズル装置4の位置データとして記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水を噴射して車体に付着した泥土等を洗浄除去するために使用される車両洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な車両の中で、工事現場等で使用される車両は、作業環境から見て著しく汚れてしまう傾向にある。特に、ブルドーザ等の無限軌道部を有する車両は、足場の悪い中での作業となるので、作業後は無限軌道部にたくさんの泥土が付着してしまう。この付着した泥土は、時間の経過とともに乾燥したり凍結したりして無限軌道部に固着するので、作業者はこの固着した泥土を剥離する作業に多大な労力と時間を要していた。
【0003】
そこで、特許文献1に見られるような車両洗浄装置が提案された。この装置は、停車させた車両の側面に沿って走行する台車と、この台車に昇降可能で且つ揺動可能に支持されるノズル装置とを備え、台車とノズル装置を相互に動作させながら、ノズル装置から超高圧の洗浄水と大流量の洗浄水を無限軌道部に作用させて、無限軌道部に付着した泥土を剥離するものである。
【0004】
ところで、このような洗浄装置で洗浄しようとする車両の種類は意外と多く、予め全ての車種に対応した洗浄コースを設定登録しておくことは、莫大な記憶容量が必要となったり、選択動作が面倒になったりして都合が悪い。
【特許文献1】特許第2583156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、洗浄する車両の種類を任意に設定することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、車両の側面に沿って配置したガイドレールと、該ガイドレール上を移動する台車と、該台車上を上下方向に移動するノズル装置と、該ノズル装置に洗浄水を供給するポンプとを備え、前記台車とノズル装置を動作させながらノズル装置から洗浄水を噴射させて前記車両を洗浄する洗浄装置において、洗浄する車両の種類を設定する車種選択手段と、該選択手段で選択可能な車種を追加登録する車種設定手段と、該設定手段で設定した車種を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶した車種洗浄エリア内で前記台車及びノズル装置を所定の洗浄パターンで動作させる洗浄制御手段とを備えたものである。
【0007】
車種設定手段は、前記台車を任意の位置に移動させる台車操作手段と、前記ノズル装置を任意の位置に移動させるノズル操作手段と、該台車操作手段及びノズル操作手段を操作して洗浄開始点とこの洗浄開始点の対角点を指定する指定手段とからなる。
【0008】
また、台車操作手段で移動させた台車の移動位置を検出する台車位置検出手段と、前記ノズル操作手段で移動させたノズル装置の移動位置を検出するノズル位置検出手段とを備え、記憶手段には指定手段で指定した洗浄開始点及び対角点を、台車位置検出手段及びノズル位置検出手段で検出される台車及びノズル装置の位置データとして記憶するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、あらゆるタイプの車両が設定でき、しかも1度の設定作業を行えば、通常の車種選択と同じ手順で設定した車種の洗浄が実行できる。そして、車種の設定は、台車とノズル装置を実際に動作させて、希望する洗浄開始点とその洗浄開始点の対角点を指定することで行われるので、正確な設定が可能である。また、設定された洗浄開始点と対角点は、台車とノズル装置の実動データで記憶されるので、車種に応じた洗浄を実行するができる。
【実施例1】
【0010】
以下、図面を基に本発明の実施例1について説明する。図1は実施例1の無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体のレイアウト図、図2〜4は洗浄装置の構成を示す説明図である。
1,1は洗浄装置で、洗車スペースAに停車した無限軌道式車両Cを挟んだ位置に設けられるガイドレール2,2と、このガイドレール上を往復走行する台車3,3と、この台車上を昇降するノズル装置4,4とから構成されている。
【0011】
台車3は、断面I型をなすガイドレール2の上面フラット面を挟持するベース3aと、ノズル装置4を昇降支持するフレーム3bとから構成する。
ベース3aには、ガイドレール2を挟む車輪5・5と、台車3の前進及び後進の走行限界を検出する非接触式(例えばマグネット式や光電式)のリミットスイッチ6a・6bを備えるとともに、走行方向の前端と後端にワイヤー7が接続されている。ワイヤー7は、ガイドレール2の前端付近に設けたモータ室8内に装備されるウインチドラム9と、ガイドレール2の後端付近に設けたプーリ室10内のプーリ11との間に巻回され、ベース3aを無端状に連係している。ウインチドラム9は、正逆可能な走行モータ12により駆動され、ワイヤー7を巻き取り/巻き戻ししながら台車3をガイドレール2に沿って往復走行する。駆動モータ12の出力軸には、走行エンコーダ13を接続し、台車の走行位置を検出している。また、モータ室8とプーリ室10は、それぞれ前記リミットスイッチが反応するスイッチ板14a・14bをガイドレール側に突出し、台車の走行範囲を与えている。フレーム3bは、内部に昇降モータ15と、このモータによってノズル装置4を昇降する駆動部16と、昇降リミットスイッチ17a,17bとを備え、ノズル装置4が昇降リミットスイッチ17a,17bをスイッチングする昇降範囲内で台車上を昇降する。
【0012】
ノズル装置4は、車両に対面する内面側に、低圧で大流量の洗浄水を噴射する低圧ノズル20と高圧で小流量の洗浄水を噴射する高圧ノズル21を前後に並べて配置したノズル体22を備えるとともに、ノズル体22を上下方向に揺動する首振りモータ23と、振幅リミットスイッチ24a,24bを備え、振幅リミットスイッチ24a,24bがスイッチングすることで与えられる揺動範囲内でノズル体22を揺動する。首振りモータ23の出力軸には、振動エンコーダ25を接続し、ノズル体22の揺動位置を検出している。
【0013】
図5は無限軌道式車両洗浄装置が設置された洗車場全体の平面図であり、この図を用いて給水系及び給電系について説明する。
洗車スペースAは、出入口側が高くなるように傾斜しており、洗車時に発生した泥水や剥離した泥土が洗車スペースA前方の集水溝27に流れるようになっている。28は濾過槽で、集水溝27に流れ込んだ洗車排水をフィルター等で濾過して貯留するものであり、内部に低圧ポンプ29,29を設け、この貯留水を配管30,30を通じて低圧ノズル20,20に給水する。31は水タンクで、水道等の給水源と接続して常時満水の状態を保持されており、高圧ポンプ32,32が接続され、この貯留水を配管33,33を通じて高圧ノズル21,21に給水する。34は料金受付や洗車コース選択などを行う受付ユニットで、使用者が操作しやすい高さに操作パネルや電装品を備え、入出力ケーブル35,35で各ポンプ、モータ、スイッチ等と接続している。
【0014】
続いて、図6を用いて上記実施例1の制御系について説明する。
40は制御部で、前記受付ユニット34の内部に設けられ、マイクロコンピューター41とメモリ42を備え、I/Oポート43において台車3の走行モータ12、走行エンコーダ13、走行リミットスイッチ6a,6b、ノズル装置4の昇降モータ15、昇降リミットスイッチ17a,17b、首振りモータ23、首振りエンコーダ25、振幅リミットスイッチ24a,24b、低圧ポンプ29、高圧ポンプ32及び受付ユニット前面に設けた操作パネル44と接続している。
【0015】
操作パネル44には、洗浄する車両の種類を選択するための車種選択キー45、洗浄車両の汚れ度合いによって洗浄回数を設定するための汚れ度合いキー46、左右に設けられる洗浄装置の使用する側を切り替える切替キー47、台車3やノズル装置4を任意に移動させるための位置決めキー48、設定した内容を決定登録するための決定キー49、決定された内容のプログラムをスタートさせたり一時停止するためのスタート/一時停止キー50、噴射を停止させるための停止キー51の各操作キーと、7セグ表示パネル52とを備えている。
【0016】
さて、このように構成する本実施例1において、メモリ42内には複数の車種に対応した洗浄コースが記憶されている。よって、洗浄する車両が、記憶された洗浄コースの中から選択できるものであれば、車種選択キー45を用いて表示パネル52に希望する洗浄コースを表示させてスタートさせればよい。一方、車種選択キー45で選択できない特殊な車両を洗浄する場合は、無理に既存の洗浄コースを用いて洗浄すると、洗浄水を掛けたくない部位に高圧の洗浄水が当たったり、逆に汚れを落としたい部位に洗浄水が当たらなかったりするため、新規に洗浄コースを設定し、車種設定として登録しておく必要がある。
【0017】
以下、図7,8を用いてこの車種設定の方法について説明する。
洗車スペースに洗浄車両を停止させたら、まず車種選択キー45を入力し、表示パネル52に”TEACH”を表示させて決定キー49を入力する。次に、車両の汚れ度合いキー46を入力し、表示パネル52の表示を切替ながら希望する洗浄回数を表示させて決定キー49を入力する。ここまでの操作を行うと、低圧ポンプ29が作動して低圧ノズル20から洗浄水が噴射されるので、作業者は、この洗浄水が当たっている場所を見ながら位置決めキー48を用いて台車3とノズル装置4を操作し、希望する洗浄開始点P1に低圧ノズル20からの洗浄水が当たるように移動させる。つまり、位置決めキー48の左右キーで台車3を走行させるとともに、位置決めキー48の上下キーでノズル装置4を首振りさせ、希望する洗浄開始点P1に合わせるのである。所望の位置に合わせた後、決定キー49を入力すると設定が有効となり、洗浄開始点P1が登録される。次に、再び位置決めキー48を用いて台車3とノズル装置4を操作し、洗浄開始点P1の対角点P2に低圧ノズル20からの洗浄水が当たるように移動させて、決定キー49を入力する。これにより、点P1と点P2を対角とした矩形の洗浄範囲Aが設定され、この洗浄範囲A内で後述する洗浄動作が行われる。
【0018】
こうして、新規な車種の設定は、作業者が実際に装置を動かしながら目視により洗浄水が当たっている場所を確認して行われる。設定される各点は、走行リミット6aで検出する台車3の走行後端位置と、振幅リミット24aで検出するノズル装置4の首振り下向き位置とをそれぞれX軸・Y軸の原点とし、走行エンコーダ13で検出される走行位置をX座標、首振りエンコーダ25で検出される首振り位置をY座標としてメモリ42に記憶されるため、PC等の編集装置で数値設定するものに比べて遙かに正確に洗浄範囲を特定した車種設定ができる。図7に示す点P1の場合、台車3を走行距離a、ノズル装置4を首振り距離bまで移動させた位置であるから、座標(a,b)として記憶され、点P2は(c,d)として記憶される。この設定は、メモリ42内にユーザ登録され、新たな車種として車種設定キー45で選択できるようになるのである。
尚、上下方向の調整は、ノズルを首振り上限まで揺動させても目標に届かない場合に昇降で補うようにしてもよい。また、昇降エンコーダを設け、ノズルを所定の首振り位置に固定した状態で、昇降位置を設定するようにしても良い。
【0019】
続いて、洗浄動作について説明する。
上記の手順で新規に登録した車種設定を車種選択キー45で選択し、位置決めキー49で洗浄開始点P1を指定してスタートキー50を入力すると、ポンプ29,30が起動してノズル装置4から高圧及び大流量の洗浄水が噴射される。こうして、洗浄がスタートすると、台車3の走行位置を変えながらノズル装置4を上下方向に動かして、車両に固着した泥土等を垂直方向に裁断するカッティング洗浄が実行される。カッティング洗浄は、図9に示すような洗浄軌跡を描いて洗浄面に洗浄水を作用するもので、位置決めした洗浄開始点P1を基点として動作を開始し、首振りモータ23を駆動してノズル装置4を点P1’(点P1上方の点P2高さの点)と洗浄開始位置P1の間で昇降させる。その後、走行モータ12を駆動して台車3を単位距離s前進させ、その位置で再びノズル装置4を昇降させる。こうして、ノズル装置4を昇降−台車3を前進という動作を交互に実行していき、台車3が点P2’(点P2下方の点P1高さの点)まで走行すると、その位置でノズル装置4を昇降させて台車3の前進を停止する。
【0020】
次に、ノズル装置5の昇降位置を変えながら台車3を前後方向に動かすことで、車両に固着した泥土等を水平方向に裁断するスイープ洗浄が実行される。スイープ洗浄は、図10に示すような洗浄軌跡を描いて洗浄面に洗浄水を作用するもので、点P2を基点として動作を開始し、走行モータ12を駆動して台車3を点P1’と点P2の間で往復させる。その後、首振りモータ23を駆動して台車3を単位距離hだけ下降させ、その高さ位置で再び台車3を往復走行させる。こうして、台車3を往復−ノズル装置4を下降という動作を交互に実行していき、台車3が洗浄開始点P2’まで下降すると、その位置で台車3を往復させてノズル装置4の下降を停止する。このようなカッティング洗浄とスイープ洗浄により、洗浄エリアは格子状に洗浄水が噴射され、頑固な凍土や固着した泥土が高圧噴射で裁断されながら大流量の低圧噴射で柔和されて車体から剥離するようになる。
【0021】
本装置において噴射される洗浄水は、例えば、低圧大流量ノズルからは約300リットル/分、0.3MPaであり、高圧低流量ノズルからは10リットル/分、20MPaであって、このような2種類の洗浄水噴射により、凍土のように非常に堅く固着しているものに対しても、高圧によりブロック状にカットすると同時に大流量によりカットしたブロックを落としていくという洗浄形態により、確実に落とすことができる。尚、台車走行動作における走行距離s、ノズル首振り動作における揺動距離hは、それぞれ走行エンコーダ13及び首振りエンコーダ25によって検出される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の車両洗浄装置が設置された洗車場全体のレイアウト図である。
【図2】実施例1の車両洗浄装置の構成を示す正面図である。
【図3】同装置の平面図である。
【図4】同装置の側面断面図である。
【図5】同装置が設置された洗車場全体の平面図である。
【図6】実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図7】車種を設定する手順を示す説明図である。
【図8】位置決めを実行する手順を示す説明図である。
【図9】カッティング洗浄でのノズル軌跡を示す説明図である。
【図10】スイープ洗浄でのノズル軌跡を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 洗浄装置
2 ガイドレール
3 台車
4 ノズル装置
20 低圧ノズル
21 高圧ノズル
40 制御部
42 メモリ(記憶手段)
44 操作パネル(設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面に沿って配置したガイドレールと、該ガイドレール上を移動する台車と、該台車上を上下方向に移動するノズル装置と、該ノズル装置に洗浄水を供給するポンプとを備え、前記台車とノズル装置を動作させながらノズル装置から洗浄水を噴射させて前記車両を洗浄する洗浄装置において、
洗浄する車両の種類を設定する車種選択手段と、該選択手段で選択可能な車種を追加登録する車種設定手段と、該設定手段で設定した車種を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶した車種洗浄エリア内で前記台車及びノズル装置を所定の洗浄パターンで動作させる洗浄制御手段とを備えたことを特徴とする車両洗浄装置。
【請求項2】
前記車種設定手段は、前記台車を任意の位置に移動させる台車操作手段と、前記ノズル装置を任意の位置に移動させるノズル操作手段と、該台車操作手段及びノズル操作手段を操作して洗浄開始点とこの洗浄開始点の対角点を指定する指定手段とからなる上記請求項1記載の車両洗浄装置。
【請求項3】
前記台車操作手段で移動させた台車の移動位置を検出する台車位置検出手段と、前記ノズル操作手段で移動させたノズル装置の移動位置を検出するノズル位置検出手段とを備え、前記記憶手段は、前記指定手段で指定した洗浄開始点及び対角点を、該台車位置検出手段及びノズル位置検出手段で検出される台車及びノズル装置の位置データとして記憶することを特徴とする上記請求項2記載の車両洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−62869(P2008−62869A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245258(P2006−245258)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】