説明

車両用の電源装置

【課題】車両のフロアに搭載して、上面を十分な強度の耐荷重床にする。
【解決手段】車両用の電源装置は、ケース1の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア30に搭載される。ケース1は、ベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口のプラスチックケース3と、プラスチックケース3の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート4とを備える。ケース1は、内部に、電池モジュール21を収納しているホルダーケース5を収納する電池収納部6と、電池モジュール21を冷却する送風機構8を収納する送風機収納部7とを設けている。さらに、電源装置は、送風機収納部7において、カバープレート4の下面を支持するサポートボス10を、プラスチックケース3とカバープレート4との間に配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車を駆動するモーターの電源用に使用される電源装置に関し、とくに、上面を耐荷重床とする状態で車両のフロアに搭載される電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を走行させるモーターを駆動する電源装置は、大きな電池を多数に収納するので相当な重量となる。重い電源装置を搭載して、車両の重心を高くしないために、電源装置をフロアの下に搭載する車両は開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−115516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の公報に記載される車両は、フロアパネルの下にバッテリー室を設けて、ここにバッテリーを内蔵する電源装置を収納する。この構造は、電源装置の上面にフロアパネルがあるので、フロアパネルが邪魔になって電源装置のメンテナンスを簡単にできない。この欠点は、フロアパネルを開口して、開口部に電源装置を収納して解消できる。ただ、この構造は、開口したフロアパネルを十分な強度のパネルで閉塞する必要がある。とくに、電源装置が荷台のフロアパネルに搭載される場合、開口部を極めて強靭な床パネルで閉塞する必要がある。強靭な床パネルでフロアパネルの開口部を閉塞する構造は、床パネルをしっかりとフロアパネルにネジ止等の構造で連結する必要があり、開口部の開閉に手間がかかる。このため、電源装置のメンテナンスを簡単にできない。フロアパネルに凹部を設け、ここに電源装置を搭載して電源装置の上面を耐荷重床とする構造は、フロアパネルを開口することなく電源装置をメンテナンスできる。しかしながら、この構造で車両に搭載される電源装置は、上面を極めて強靭な構造とする必要がある。
【0004】
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、車両のフロアに搭載されて、上面を十分な強度の耐荷重床にできる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の車両用の電源装置は、ケース1の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア30に搭載される。ケース1は、ベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口のプラスチックケース3と、プラスチックケース3の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート4とを備える。ケース1は、内部に、電池モジュール21を収納しているホルダーケース5を収納する電池収納部6と、電池モジュール21を冷却する送風機構8を収納する送風機収納部7とを設けている。さらに、電源装置は、送風機収納部7において、カバープレート4の下面を支持するサポートボス10を、プラスチックケース3とカバープレート4との間に配設している。
【0006】
本発明の請求項2の車両用の電源装置は、ケース1の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア30に搭載される。ケース1は、ベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口のプラスチックケース3と、プラスチックケース3の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート4とを備える。ケース1は、内部に、電池モジュール21を収納しているホルダーケース5を収納する電池収納部6と、電池モジュール21を冷却する送風機構8を収納する送風機収納部7とを設けている。さらに、電源装置は、送風機収納部7において、カバープレート4の下面を支持する支柱11をプラスチックケース3に一体的に成形して設けている。
【0007】
本発明の請求項3の車両用の電源装置は、ケース1の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア30に搭載される。ケース1は、ベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口のプラスチックケース3と、プラスチックケース3の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート4とを備える。ケース1は、内部に、電池モジュール21を収納しているホルダーケース5を収納する電池収納部6と、電池モジュール21を冷却する送風機構8を収納する送風機収納部7とを設けている。カバープレート4は、電池収納部6の上方をカバーする前カバープレート4Aと、送風機収納部7の上方をカバーする後カバープレート4Bに分割している。後カバープレート4Bは、複数枚の金属板を積層して固定している積層金属板としている。
【0008】
本発明の請求項4の車両用の電源装置は、請求項3に記載される車両用の電源装置であって、積層金属板を、接着層の両面を金属板で挟着して固定してなる構造としている。
【0009】
本発明の請求項5の車両用の電源装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載される車両用の電源装置であって、電池収納部6において、プラスチックケース3とカバープレート4との間に、電池モジュール21を収納するホルダーケース5を収納しており、このホルダーケース5にカバープレート4の下面を支持するホルダーボス12を設けている。
【0010】
本発明の請求項6の車両用の電源装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載される車両用の電源装置であって、ベースプレート2とカバープレート4を、電池収納部6と送風機収納部7の境界部分で分割している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1ないし請求項3の電源装置は、車両のフロアに搭載されて、上面を十分な強度の耐荷重床にできる特長がある。それは、本発明の電源装置が、ケース内に電池収納部と送風機収納部とを設けており、この送風機収納部において、カバープレートの下面を支持するサポートボスを配設し、あるいは、カバープレートの下面を支持する支柱をプラスチックケースに一体成形して設け、あるいはまた、カバープレートを、複数枚の金属板を積層して固定している積層金属板としているからである。
【0012】
とくに、以上の構造の電源装置は、機構上から、下面の支持が難しい送風機収納部のカバープレートをしっかりと強靭な構造で支持できる特長がある。送風機収納部のカバープレートを下面から支持するのが難しいのは、ここに空気ダクトやモーターやファン等を収納するので、これ等を上下に連結する状態で支持する部分を設けることが難しいからである。本発明の電源装置は、送風機収納部のカバープレートを、サポートボスや支柱で局部的に支持し、あるいは、この部分のカバープレートを積層金属板とするので、カバープレート全面をしっかりと強靭な耐荷重床にできる。
【0013】
以上のように、本発明の電源装置は、車両に搭載される状態では、その上にフロアパネルに匹敵する重くて強い金属板等を配置する必要がない。このため、車両に搭載される実質的な重量を軽くしながら、フロアを十分な強度の耐荷重床にできる。上面をフロアパネルに匹敵する金属板でカバーする必要のない本発明の電源装置は、上面のカバープレートを開いて内部を点検できるので、メンテナンスを簡単にできる特長がある。また、車両に搭載する状態で実質的な重量を軽くできる特長がある。
【0014】
さらに、本発明の請求項5の電源装置は、電池収納部に収納されるホルダーケースにカバープレートの下面を支持するホルダーボスを設けているので、極めて簡単な構造で電池収納部のカバープレートを下面から支持して、十分な強度の耐荷重床にできる特長がある。
【0015】
また、本発明の請求項6の電源装置は、ベースプレートとカバープレートを、電池収納部と送風機収納部の境界部分で前後に分割しているので、後ろの車に追突されるときには、全体をそのままの状態で前方に移動させることなく、電池収納部と送風機収納部とに分割してクラッシュできる。このため、クラッシュされる状態では前後の幅を狭くして、電源装置が搭乗者を後ろから突いて損傷を与えるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0017】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0018】
図2に示す車両用の電源装置は、ケース1の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア30に搭載される。この電源装置は、車両のフロア30、たとえば、図1の実線で示すように後部座席の後方に設けている荷台32に、あるいは鎖線で示すように後部座席と前部座席との間のフロア30に搭載される。電源装置は、ケース1上面のカバープレート4を車両のフロアパネル31と同一平面となるように搭載して、カバープレート4を車両のフロアパネル31の一部に使用する。したがって、カバープレート4にはフロアパネル31に要求される耐荷重が要求される。車両の荷台32に搭載される電源装置は、カバープレート4の上面に直接に荷物が載せられる。このため、カバープレート4には荷台32の積載量に相当する耐荷重が要求される。カバープレート4が荷台32の積載量に相当する耐荷重を有する電源装置は、カバープレート4の上を、フロアパネル31に匹敵する強度の耐荷重床で補強する必要はない。この電源装置は、フロアパネル31に凹部や開口部を設け、凹部や開口部に電源装置を搭載して、その上面をフロアパネル31に匹敵する耐荷重床にできる。電源装置を設けるための凹部や開口部を、フロアパネル31に匹敵する強度の耐荷重床で閉塞する必要はない。
【0019】
電源装置のケース1を車両の前後方向に切断した断面を図3に示す。この図のケース1は、車両のシャーシーやフロアパネル31に固定される金属製のベースプレート2と、このベースプレート2の上に固定している上方開口のプラスチックケース3と、プラスチックケース3の上方開口部を閉塞するように固定している金属製のカバープレート4とを備える。ただ、ベースプレートとカバープレートは、必ずしも金属製とする必要はなく、硬質プラスチックで製造することもできる。
【0020】
図に示すケース1は、電池収納部6と送風機収納部7とを内部に設けている。電源装置は、ケース1の電池収納部6が送風機収納部7よりも車両の前方に位置する姿勢で車両に搭載される。ケース1の前方に位置する電池収納部6は、ホルダーケース5を介して複数本の電池モジュールを収納する。複数の電池モジュールは、ホルダーケース5に収納され、このホルダーケース5が電池収納部6に配設される。ケース1の後方に位置する送風機収納部7は、図4に示すように、ホルダーケース5の電池モジュールを強制冷却する送風機構8を収納する。送風機構8は、ホルダーケース5に連結されて、ホルダーケース5に冷却空気を強制送風して電池モジュールを冷却する。
【0021】
さらに、電源装置のケース1は、ベースプレート2とプラスチックケース3とカバープレート4を、電池収納部6と送風機収納部7の境界部分で前後に分割して連結している。ケース1を前後に分割している電源装置は、追突事故のときに、電池収納部6の下に送風機収納部7が押し込まれて安全にクラッシュできる。
【0022】
ベースプレート2を図5に示す。このベースプレート2は、境界部分より前方の前ベースプレート2Aと後方にある後ベースプレート2Bに分割している。前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bは、境界部分を、衝突の衝撃で破断される切断ピン9で連結している。さらに、前ベースプレート2Aは、後端部に後ろに向かって上り勾配の傾斜面を設けており、後ベースプレート2Bは、この傾斜面の下面に沿う傾斜面を設けている。前ベースプレート2Aと後ベースプレート2Bは、傾斜面を積層して切断ピン9で連結している。この構造のベースプレート2は、追突されて切断ピン9が切れると、傾斜面で摺動しながら、後ベースプレート2Bが前方に押される。後ベースプレート2Bが前進すると、傾斜面が摺動して前ベースプレート2Aの下に滑り込んで、前ベースプレート2Aの後端を押し上げる。このため、前ベースプレート2Aは垂直な方向に傾動して、この下に後ベースプレート2Bが滑り込んで、安全にクラッシュする。
【0023】
プラスチックケース3を図6に示す。このプラスチックケース3は、境界部分より前方の前プラスチックケース3Aと後方にある後プラスチックケース3Bに分割している。前プラスチックケース3Aと後プラスチックケース3Bに分離するプラスチックケース3は、衝突の衝撃で前後に分離される。分離された後プラスチックケース3Bは後ベースプレート2Bと一緒に前方に移動し、前プラスチックケース3Aは前ベースプレート2Aと一緒に傾動する。ただし、ベースプレートの上に固定しているプラスチックケースは、必ずしも前プラスチックケースと後プラスチックケースに分離してプラスチックで成形する必要はない。クラッシュして、ベースプレート2とカバープレート4が前後に分離されるときに破壊して分離されるからである。
【0024】
カバープレート4を図7と図8に示す。カバープレート4は、境界部分より前方にあって電池収納部6の上面をカバーする前カバープレート4Aと、後方にあって送風機収納部7の上面をカバーする後カバープレート4Bに分割している。前カバープレート4Aと後カバープレート4Bは、耐荷重の優れた金属板で製作される。カバープレート4は、好ましくはアルミニウム合金で製作される。アルミニウム合金のカバープレート4は、軽くて強靭にできる。とくに、焼き入れできるアルミニウム合金が適している。このカバープレート4は、アルミニウム板をプレス成形した後、焼き入れしてさらに強度を向上する。
【0025】
前カバープレート4Aは1枚の金属板で、後カバープレート4Bは複数枚の金属板を積層して固定している積層金属板である。後カバープレート4Bは、積層金属板として前カバープレート4Aよりも曲げ強度を強くしている。曲げ強度の強い後カバープレート4Bは、下面からの支持を少なくして、優れた耐荷重床にできる。このため、後カバープレート4Bでカバーする送風機収納部7に設ける支持部を少なくできる。
【0026】
後カバープレート4Bは、2枚アルミニウム合金板を積層して固定している積層金属板である。後カバープレートは、3枚以上の金属板を積層、固定して製作することもできる。積層金属板からなる後カバープレート4Bは、積層した金属板を全面ないし一部で接着し、さらに局部的にスポット溶接して製作される。一部を接着材で接着する積層金属板は、十分な強度とするために、接着面積を全積層面積の50%以上とする。この積層金属板は、金属板の全面あるいは部分的に、金属板を強固に接着できるエポキシ系等の接着材を塗布して重ね、接着材を未硬化とする状態で、両面から溶接の電極で挟着して金属板を互いに接触させる状態でスポット溶接して固定する。この構造は、スポット溶接して固定する状態で、接着材を硬化できるので、接着材の硬化を待つ必要がなく、積層した金属板を能率よく固定できる。この構造の積層金属板からなる後カバープレート4Bは、極めて強靭な構造にできる。とくに、アルミニウム合金を2枚に重ねて製作される積層金属板は、軽くて耐荷重を大きくできる。また、この構造の積層金属板は、厚い金属板をプレス成形しないで、各々の金属板を別々に成形して積層するので、簡単かつ容易に、しかも理想的な形状に能率よくプレス成形して固定できる特徴がある。さらに、この構造の積層金属板は、金属板の間に接着材をサンドイッチする3層構造となる。接着材をエポキシ系の接着剤のように硬化状態で硬くなるものを使用すると、強度のある接着層を両面の金属板でサンドイッチする構造となる。接着層は金属板に比較して比重が小さくて軽い。このため、サンドイッチ構造は、軽くて硬い層の両面を金属板で挟着する構造となる。この構造の積層金属板は、全体を厚くして曲げ強度を大きくしながら軽くできる。曲げ強度に影響の大きい両面を強靭な金属板として、厚くするための中間層を軽い接着層とするからである。
【0027】
ただし、後カバープレートの積層金属板は、積層している金属板を接着し、あるいはスポット溶接し、あるいはまたネジ止して固定し、あるいはこれ等を組み合わせて結合して製作することもできる。
【0028】
カバープレート4を下面から支持して、耐荷重床とする構造を図9に示す。この図の電源装置は、プラスチックケース3とカバープレート4との間に、カバープレート4の下面を支持するサポートボス10を配設している。サポートボス10はプラスチックケース3とは別部品で、下端をプラスチックケース3に連結して、上端をカバープレート4の下面に配置して、カバープレート4を下面から支持する。サポートボス10は、プラスチックケース3とカバープレート4との間に垂直な姿勢で配置される。サポートボス10は、下端をプラスチックケース3に設けた垂直穴に嵌入して垂直な姿勢で連結され、あるいは下端に雄ネジを設けて、これをプラスチックケース3に設けた雌ネジにねじ込んで垂直に固定される。サポートボス10は、下端部に鍔を設け、この鍔から嵌入部を突出させ、あるいは雄ネジを突出させて、鍔をプラスチックケース3に設けた台座に当接させる構造でカバープレート4の耐荷重を大きくできる。サポートボス10は、カバープレート4の下面に当接して、カバープレート4の耐荷重を大きくし、あるいは上端をカバープレート4に防水構造でねじ止して、カバープレート4の耐荷重を大きくする。上端をカバープレート4にねじ止するサポートボス10は、下端もプラスチックケース3をねじ止して、カバープレート4とプラスチックケース3を連結する。
【0029】
さらに図9の電源装置は、カバープレート4を下面から支持するために、プラスチックケース3に支柱11を一体的に成形して設けている。支柱11は、その上端をカバープレート4の下面に当接する高さに成形されて、カバープレート4を下面から支持する。
【0030】
支柱11とサポートボス10は、送風機収納部7に配設されて、後カバープレート4Bを下面から支持する。さらに、図9の電源装置は、電池収納部6の側方に部品収納部13を設けて、部品収納部13にもサポートボス10を配設している。この図において、電池収納部6の左側の部品収納部13にサポートボス10を配設している。サポートボス10は、下端をプラスチックケース3に連結しており、支柱11は下端をプラスチックケース3に一体的に成形して連結している。カバープレート4の荷重は、サポートボス10や支柱11で支持され、サポートボス10や支柱11の荷重はプラスチックケース3を介してベースプレート2で支持される。すなわち、カバープレート4の荷重はサポートボス10と支柱11とプラスチックケース3を介してベースプレート2で支持される。ベースプレート2がサポートボス10と支柱11を介してカバープレート4を支持できるように、プラスチックケース3のサポートボス10や支柱11の下端を連結しているプラスチックケース3の耐荷重部分は、その下面にベースプレート2を配設する。プラスチックケース3の下面をベースプレート2に当接して、ベースプレート2はプラスチックケース3と支柱11とサポートボス10を介してカバープレート4を十分な強度で支持する。
【0031】
以上のように、送風機収納部7に支柱11とサポートボス10を配設して、後カバープレート4Bを下面から支持し、さらに、後カバープレート4Bを積層金属板とする構造は、空気ダクトやモーターやファン等を収納する送風機収納部7のカバープレート4を強靭な耐荷重床にできる特長がある。このことは、図1に示すように、車両の荷台32に搭載される電源装置、とくにケース1の電池収納部6が送風機収納部7よりも車両の前方に位置する姿勢で搭載される電源装置において重要である。車両の荷台32は、通常、荷物を載せるスペースであるが、このとき、荷物は、例外なく、まず荷台32の後部に載せられるからである。しかも、荷台32の後部は、荷物の積み下ろしのために人が乗る部分でもあるので、荷台32に乗る人の体重がかかる部分でもある。したがって、送風機収納部7のカバープレート4を強靭な耐荷重床にできる電源装置は、車両の荷台32に搭載されて、前方に配置される電池収納部6よりも荷重を受ける機会が多くなる送風機収納部7のカバープレート4を、効果的に補強できる。
【0032】
さらに、図3、図4及び図9に示す電源装置は、プラスチックケース3とカバープレート4との間に、電池モジュールを収納するホルダーケース5を収納している。このホルダーケース5は、カバープレート4の下面を支持するホルダーボス12を設けている。ホルダーケース5は、多数の電池モジュールを水平に並べて収納しており、プラスチックケース3に収納される。図3の電源装置は、電池モジュール21を2段に並べて収納しているが、電池モジュール21は1段に、あるいは3段以上に収納することもできる。図のホルダーケース5は、これを貫通する止ネジ14を介してベースプレート2に固定される。
【0033】
このホルダーケース5は、カバープレート4を下面から支持するホルダーボス12を上方に突出して一体的に成形して設けている。ホルダーボス12の下方に位置して、プラスチックケース3の連結凸部15を嵌入する連結凹部16を設けている。ホルダーケース5は、連結凸部15を連結凹部16に入れて、プラスチックケース3の定位置に配置される。連結凸部15を連結凹部16に入れる状態で、連結凸部15の上端面と連結凹部16の下面は互いに接触する水平面で、ホルダーケース5に作用する荷重をプラスチックケース3で支持する。この構造は、カバープレート4に作用する荷重をホルダーボス12で受け、ホルダーボス12の荷重をプラスチックケース3で支持し、プラスチックケース3の荷重をベースプレート2で支持するので、ホルダーボス12がカバープレート4を支持する耐荷重を大きくできる。とくに、ホルダーケース5の荷重をプラスチックケース3でしっかりと受け止めることができる。
【0034】
ホルダーケース5は、プラスチックを成形して内部を中空状にしているが、この中空部には電池モジュール21を収納している。すなわち、内部の中空部に電池モジュール21を収納して、上下方向の耐荷重を大きくしている。
【0035】
ホルダーケース5が電池モジュール21を収納する状態を図10と図11に示す。図の電源装置は、ホルダーケース5を上下2段に重ねて、電池モジュール21を2段に収納している。下段のホルダーケース5は、上段のホルダーケース5を上下反転している。各段のホルダーケース5は、図示しないが、内部に複数本の電池モジュールを平行な姿勢で水平に配設している。ただ、本発明の電源装置は、図示しないが、ホルダーケースを1段として、電池モジュールを1段に収納することもできる。
【0036】
ホルダーケース5は、電池モジュール21を定位置にセットして簡単に組み立てできるように、主ケース5Bと蓋ケース5Aに分割している。ホルダーケース5は、主ケース5Bと蓋ケース5Aとを互いの当接面で連結して、内部に電池モジュール21を収納する独立室17を設けている。ホルダーケース5は、主ケース5Bと蓋ケース5Aとで電池モジュール21を挟着して定位置に保持する。蓋ケース5Aと主ケース5Bは、全体をプラスチックで成形している。
【0037】
上下2段に積層するホルダーケース5は、上段のホルダーケース5を、主ケース5Bの上に蓋ケース5Aを配置した構造とし、下段のホルダーケース5を、主ケース5Bの下に蓋ケース5Aを配置した構造として、2つの主ケース5Bを上下の中間で連結している。上下の主ケース5Bは周壁18で連結しており、互いに連結される主ケース5Bの間に、各々の電池モジュール21に冷却空気を送風する通風ダクト19を設けている。通風ダクト19は、その一端に通風口(図示せず)を開口しており、この通風口に送風機構8の送風ファン8Aを連結している。送風ファン8Aは、通風ダクト19に冷却空気を強制的に送風して、電池モジュール21を冷却する。ホルダーケース5は、送風ファン8Aで送風される冷却空気を各々の電池モジュール21に強制的に送風するために、主ケース5Bと蓋ケース5Aとに通気口20を開口している。通気口20は、強制的に送風される冷却空気を通過させて、電池モジュール21に送風して冷却する。この通気口は、図示しないが、各々の電池モジュールの上下に位置して、電池モジュールの軸方向に延長されたスリット状に開口される。この形状のホルダーケース5は、電池モジュール21の表面に沿って、冷却空気を速やかに流動させて、効率よく冷却できる特長がある。
【0038】
電池モジュール21は、ホルダーケース5の内部に形成される独立室17に配設される。電池モジュール21を独立室17の定位置に配設するために、図11に示すように、電池モジュール21は電池の連結部をエラストマ筒22でカバーして、電池の外径よりも太くしている。エラストマ筒22は、独立室17の内面に挟着されて、独立室17の内面と電池表面との間に、空気を通過できる隙間を設けている。この構造は、独立室17の内面と電池モジュール21の表面との間に一定の隙間を設けて、冷却空気をスムーズに流動できる。
【0039】
電池モジュール21は、複数の二次電池を直列接続して直線状に連結している。電池モジュール21は、4〜8本の、たとえば5又は6本の二次電池を、直列接続して直線状に連結している。ただし、電池モジュール21は、1本の二次電池で構成することもできる。電池モジュール21は、円筒型あるいは角型の二次電池を、金属板の接続体を介して、あるいは接続体を介することなく電池端面を直接に直列接続して直線状に連結している。電池モジュール21の両端には、正極端子と負極端子からなる電極端子を連結している。電極端子は、金属板のバスバー(図示せず)をネジ止して、隣接する電池モジュール21を直列に、あるいは並列に連結する。
【0040】
電池モジュール21の二次電池は、ニッケル−水素電池である。ただ、電池モジュールの二次電池は、ニッケル−カドミウム電池やリチウムイオン二次電池等を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置を車両に搭載する状態を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置の斜視図である。
【図3】図2に示す電源装置の横端面図である。
【図4】図2に示す電源装置のカバープレートを外した状態を示す斜視図である。
【図5】ベースプレートの斜視図である。
【図6】プラスチックケースの斜視図である。
【図7】カバープレートの斜視図である。
【図8】後カバープレートの斜視図である。
【図9】図2に示す電源装置の分解斜視図である。
【図10】図4に示す電源装置の縦端面図である。
【図11】図10に示す電源装置のホルダーケースの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ケース
2…ベースプレート 2A…前ベースプレート
2B…後ベースプレート
3…プラスチックケース 3A…前プラスチックケース
3B…後プラスチックケース
4…カバープレート 4A…前カバープレート
4B…後カバープレート
5…ホルダーケース 5A…蓋ケース
5B…主ケース
6…電池収納部
7…送風機収納部
8…送風機構 8A…送風ファン
9…切断ピン
10…サポートボス
11…支柱
12…ホルダーボス
13…部品収納部
14…止ネジ
15…連結凸部
16…連結凹部
17…独立室
18…周壁
19…通風ダクト
20…通気口
21…電池モジュール
22…エラストマ筒
30…フロア
31…フロアパネル
32…荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア(30)に搭載される電源装置であって、
ケース(1)が、ベースプレート(2)と、このベースプレート(2)の上に固定している上方開口のプラスチックケース(3)と、プラスチックケース(3)の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート(4)とを備え、
ケース(1)内に、電池モジュール(21)を収納しているホルダーケース(5)を収納する電池収納部(6)と、電池モジュール(21)を冷却する送風機構(8)を収納する送風機収納部(7)とを設けており、
送風機収納部(7)において、カバープレート(4)の下面を支持するサポートボス(10)をプラスチックケース(3)とカバープレート(4)との間に配設している車両用の電源装置。
【請求項2】
ケース(1)の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア(30)に搭載される電源装置であって、
ケース(1)が、ベースプレート(2)と、このベースプレート(2)の上に固定している上方開口のプラスチックケース(3)と、プラスチックケース(3)の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート(4)とを備え、
ケース(1)内に、電池モジュール(21)を収納しているホルダーケース(5)を収納する電池収納部(6)と、電池モジュール(21)を冷却する送風機構(8)を収納する送風機収納部(7)とを設けており、
送風機収納部(7)において、カバープレート(4)の下面を支持する支柱(11)をプラスチックケース(3)に一体的に成形して設けている車両用の電源装置。
【請求項3】
ケース(1)の上面を耐荷重床とする状態で車両のフロア(30)に搭載される電源装置であって、
ケース(1)が、ベースプレート(2)と、このベースプレート(2)の上に固定している上方開口のプラスチックケース(3)と、プラスチックケース(3)の上方開口部を閉塞するように固定してなるカバープレート(4)とを備え、
ケース(1)内に、電池モジュール(21)を収納しているホルダーケース(5)を収納する電池収納部(6)と、電池モジュール(21)を冷却する送風機構(8)を収納する送風機収納部(7)とを設けており、
カバープレート(4)は、電池収納部(6)の上方をカバーする前カバープレート(4A)と、送風機収納部(7)の上方をカバーする後カバープレート(4B)に分割しており、後カバープレート(4)が、複数枚の金属板を積層して固定している積層金属板である車両用の電源装置。
【請求項4】
積層金属板が、接着層の両面を金属板で挟着して固定している請求項3に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
電池収納部(6)において、プラスチックケース(3)とカバープレート(4)との間に、電池モジュール(1)を収納するホルダーケース(5)を収納しており、このホルダーケース(5)にカバープレート(4)の下面を支持するホルダーボス(12)を設けている請求項1ないし4のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
ベースプレート(2)とカバープレート(4)を、電池収納部(6)と送風機収納部(7)の境界部分で分割している請求項1ないし5のいずれかに記載される車両用の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−35940(P2006−35940A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215965(P2004−215965)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】