説明

車両用の電源装置

【課題】非常用バッテリ上がりを回避して確実にDC/DCコンバータを始動させることのできる電源装置を提供する。
【解決手段】 電源装置10は、据付け型のメインバッテリ12と、メインバッテリ12の出力電圧を降圧するDC/DCコンバータ14と、DC/DCコンバータ14を制御する制御部31と、制御部31に接続された据付け型のサブバッテリ30と、を備えている。DC/DCコンバータ14の稼働していない期間であって、サブバッテリ30の電圧値が制御部31の定格電圧値を下回っている場合には、制御部31に繋がる電源端子54に携帯型の外部電源52を接続することによって外部電源52から制御部31に電力が供給される。制御部31は外部電源52からの電力供給によりDC/DCコンバータ14を始動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関と回転電機を駆動源とするいわゆるハイブリッド車両においては、電力源となるバッテリが搭載されている。バッテリは回転電機や車両の駆動制御等を行う制御部、更にはオーディオ、パワーステアリングシステム等の補機類にも電力を供給している。
【0003】
制御部や補機類の定格電圧はバッテリの定格電圧よりも低く設定されている。このため、バッテリの出力電圧を制御部や補機類の定格電圧まで降圧させるために、バッテリと制御部及び補機類との間にはDC/DCコンバータが設けられている。
【0004】
また、DC/DCコンバータは上述した制御部によって制御される。上述した様にバッテリからDC/DCコンバータを介して制御部に電力が供給されることから、DC/DCコンバータが稼動していない期間にはバッテリから制御部への電力供給が途絶えることになる。この状態が継続するとDC/DCコンバータを始動できないので、上述したバッテリの他にも、DC/DCコンバータが稼動していない期間に制御部に電力を供給し、DC/DCコンバータを始動可能とするためのバッテリが車両に設けられている。以下、DC/DCコンバータの稼動している期間に制御部に電力を供給するバッテリを「メインバッテリ」と呼び、DC/DCコンバータの稼動していない期間に制御部に電力を供給するバッテリを「サブバッテリ」と呼ぶ。
【0005】
サブバッテリは制御部や補機類の定格電圧と同等の定格電圧を有しており、DC/DCコンバータが稼動していない期間に制御部や補機類に電力を供給している。また、DC/DCコンバータが稼動している期間はメインバッテリからDC/DCコンバータを介してサブバッテリに電力が供給され、これによりサブバッテリが充電される。
【0006】
ここで、サブバッテリの放電が長期間に及び、サブバッテリの定格電圧が制御部や補機類の定格電圧を下回る、いわゆるサブバッテリ上がりが生じてしまうと、DC/DCコンバータの稼動停止期間において制御部に電力が供給されなくなってしまい、その結果DC/DCコンバータを始動することができなくなってしまう。そこで、このようなサブバッテリ上がり時におけるDC/DCコンバータの始動方法が従来から提案されている。
【0007】
例えば特許文献1においてはパワーステアリングシステムに使用されるアシストモータを発電機として使用している。すなわち、運転者がハンドルを回転させることによってアシストモータが発電し、この電力が制御部に供給される。また、特許文献2、3においては、図9に示すように、車両内に据え付け型の非常用バッテリ100を搭載し、この非常用バッテリ100を制御部130に接続し、サブバッテリ120が上がった際には非常用バッテリ100から制御部130に電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−281822号公報
【特許文献2】特開2006−50779号公報
【特許文献3】特開2006−254565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非常用バッテリによってサブバッテリ上がりに対処する特許文献2、3においては、非常用バッテリが長時間車両内に搭載されていると自然放電により充電容量が減り、非常用バッテリも上がってしまうおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は非常用バッテリ上がりを回避して確実にDC/DCコンバータを始動させることのできる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は車両用の電源装置に関する。当該電源装置は、据付け型の第一電源と、第一電源の出力電圧を降圧するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータを制御する制御部と、制御部に接続された据付け型の第二電源と、を備えている。DC/DCコンバータの稼働している期間には、DC/DCコンバータを介して第一電源から制御部に電力が供給される。また、DC/DCコンバータの稼働していない期間であって、第二電源の電圧が所定の閾値以上である場合には、第二電源から制御部に電力が供給される。また、DC/DCコンバータの稼働していない期間であって、第二電源の電圧が閾値を下回る場合には、制御部に繋がる電源端子に携帯型の第三電源を接続することによって第三電源から制御部に電力が供給される。制御部は第二電源または第三電源からの電力供給によりDC/DCコンバータを始動させることが可能となる。
【0012】
また、本発明は車両用の電源装置に関する。当該電源装置は、据付け型の第一電源と、第一電源の出力電圧を降圧する第一のDC/DCコンバータと、第一電源と第一のDC/DCコンバータとを結ぶ回路の切断及び接続を行うリレーと、を備えている。さらに、第一のDC/DCコンバータ及びリレーを制御する第一の制御部と、第一の制御部に接続された据え付け型の第二電源と、を備えている。さらに、リレーを介さずに第一電源と第一の制御部とを繋ぐ配線に接続された第二のDC/DCコンバータと、第二のDC/DCコンバータを制御する第二の制御部と、を備えている。リレーが接続状態かつ第一のDC/DCコンバータの稼働している期間には、リレー及び第一のDC/DCコンバータを介して第一電源から第一の制御部に電力が供給される。また、リレーが切断状態または第一のDC/DCコンバータが稼働していない期間の少なくともいずれか一方の状態であって、第二電源の電圧が所定の閾値以上である場合には、第二電源から第一の制御部に電力が供給される。また、リレーが切断状態または第一のDC/DCコンバータが稼働していない期間の少なくともいずれか一方の状態であって、第二電源の電圧が閾値を下回る場合には、第二の制御部に繋がる電源端子に携帯型の第三電源を接続することによって第三電源から第二の制御部に電力が供給される。この場合において、第二の制御部が第二のDC/DCコンバータを駆動させることにより、第二のDC/DCコンバータを介して第一電源から第一の制御部に電力が供給される。第二電源または第二のDC/DCコンバータを介した第一電源からの電力供給により、第一の制御部は、リレーを接続状態に切り換え、第一のDC/DCコンバータを始動させることが可能となる。
【0013】
また、上記発明において、第三電源は、車両のドア開閉信号を発信可能な鍵に内蔵された電池であり、鍵には、電池から電源端子に電力を供給可能な接続端子が設けられていることが好適である。
【0014】
また、上記発明において、車両には、鍵が挿入されるキースロットが設けられ、また、接続端子は、キースロットへの挿入方向から見て鍵の先端部に設けられていることが好適である。さらに、キースロットには、鍵の先端部と当接する当接板が設けられ、当接板には、鍵がキースロットに挿入された際に接続端子に対向する位置に開口部が設けられ、キースロットの、当接板より挿入方向の奥側には、開口部に対応する位置に電源端子が設けられるとともに、当接板を挿入方向に弾性支持する弾性体が設けられていることが好適である。この場合において、鍵を介して弾性体の弾性力に抗して当接板を挿入方向に押すことにより、開口部から電源端子が露出して接続端子と電源端子とが接続可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非常用バッテリ上がりを回避して確実にDC/DCコンバータを始動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る電源装置を例示する図である。
【図2】車両のダッシュボードを例示する図である。
【図3】スマートキーを例示する図である。
【図4】スマートキーをキースロットに挿入したときの図である。
【図5】スマートキーをキースロットに挿入したときの図である。
【図6】本実施形態に係る電源装置がDC/DCコンバータを始動させる際のフローチャートである。
【図7】別の実施形態に係る電源装置を例示する図である。
【図8】上記別の実施形態に係る電源装置がDC/DCコンバータを始動させる際のフローチャートである。
【図9】従来の電源装置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る電源装置を図1に例示する。電源装置10は図示しない車両に搭載されている。車両は好適には内燃機関と回転電機を駆動源とするいわゆるハイブリッド車両である。
【0018】
電源装置10はメインバッテリ12を備えている。メインバッテリ12は据え付け型の二次電池であり、車両内の所定の据え付け位置に固定される。メインバッテリ12は例えば定格電圧が約200Vの高圧電源であり、好適にはニッケル水素バッテリのセルを複数個積層させた積層体として構成されている。メインバッテリ12は図示しない昇圧コンバータやインバータを介して回転電機に電力を供給したり、DC/DCコンバータ14を介して後述する制御部31や補機類に電力を供給している。
【0019】
DC/DCコンバータ14は好適にはフルブリッジ・コンバータやハーフブリッジ・コンバータ等の絶縁型のコンバータから構成されている。また、メインバッテリ12とDC/DCコンバータ14とは高圧配線16によって繋がれており、さらに高圧配線16にはシステムメインリレー18が設けられている。システムメインリレー18は、コイルと、コイルに発生する磁界によってオン/オフ動作を行うスイッチとを含んで構成されている。後述するHVECU36からの指令信号(指令電流)がコイルに流れることによりスイッチが動作し、これによって高圧配線16が切断または接続される。
【0020】
また、DC/DCコンバータ14と後述するサブバッテリ30、制御部31およびその他の補機類との間は低圧配線19によって結ばれており、DC/DCコンバータ14によって降圧された直流電力が低圧配線19に供給される。好適には、DC/DCコンバータ14はメインバッテリ12からの直流電圧を11.5〜15.0Vに降圧し、降圧後の直流電力が低圧配線19に供給される。さらに詳細に説明すると、DC/DCコンバータ14により降圧された直流電力は、低圧配線19及びサブバッテリ用配線20を経由してサブバッテリ30に供給され、低圧配線19および制御部用配線22を経由して制御部31に供給される。さらにこの直流電力は、制御部用配線22から常時電源配線24、アクセサリ配線26、イグニッション配線28を経由して各種の補機類に供給される。
【0021】
サブバッテリ12は据え付け型の二次電池であり、車両内の所定の据え付け位置に固定される。また、サブバッテリ30は定格電圧が12Vの鉛バッテリであると好適である。なお、サブバッテリ30の定格電圧はDC/DCコンバータ14が降圧する電圧値とほぼ等しければよく、したがって11.5〜15.0Vの間の任意の定格電圧値を採る事ができる。DC/DCコンバータ14の稼動していない期間、またはシステムメインリレー18が切断されている期間の少なくともいずれか一方の期間、つまりメインバッテリ12からの電力供給が途絶えている期間であっても、サブバッテリ12の電圧値が後述する制御部の31の定格電圧以上であるときには、サブバッテリ30から低圧配線19及び制御部用配線22を経由して制御部31に電力を供給することができる。これにより制御部31はDC/DCコンバータ14を起動することができる。また、DC/DCコンバータ14の駆動時かつシステムメインリレー18の接続時、つまりメインバッテリ12から電力が供給されているときには、DC/DCコンバータ14によって降圧されたメインバッテリ12からの電力が低圧配線19及びサブバッテリ用配線20を経由してサブバッテリ30に充電される。
【0022】
また、常時電源配線24はバックアップ配線とも呼ばれ、後述する制御部31のメモリや車両内に設置された時計など、車両の停止時であっても電力の供給が必要な機器が接続されている。アクセサリ配線26には、オーディオ等、いわゆるアクセサリポジションにおいて使用される電気機器が接続されている。イグニッション配線28には、パワーステアリングシステムやパワーウインドウインドウシステム等の電気機器が接続されている。また、アクセサリ配線26及びイグニッション配線28にはリレー29が設けられており、リレー29は後述する電源ECU32からの指令信号(指令電流)を受ける。この指令信号に応じてリレー29はアクセサリ配線26及びイグニッション配線28を切断または接続する。
【0023】
制御部用配線22には制御部31が接続されている。制御部は、車両を制御するための様々な電子制御ユニット(ECU、Electric Control Unit)を含んで構成されている。具体的には制御部31は、電源ECU32、照合ECU34、HV−ECU36、MG−ECU38、DC/DC−ECU40を含んで構成される。これらの電子制御ユニットは何れもCPU、メモリ等からなるコンピュータから構成されている。これらの電子制御ユニットの定格電圧は好適には11.0〜15.0Vであり、より好適には12Vに設定されている。また、図1においては機能別に制御部31の各ECUを独立して示しているが、1台のコンピュータがこれらのECUをまとめて構成するようにしてもよい。
【0024】
電源ECU32は車両内の電源システムを制御する。すなわち、アクセサリ配線26およびイグニッション配線28のリレー29を制御してこれらの配線の電力供給を制御する。また、HV−ECU36の上流に設けられたHVリレー42を制御して、HV−ECU36の起動及び停止を制御している。また、電源ECU32は後述するスタートスイッチ44および照合ECU34、および、図示しないシフトポジションセンサやストップランプスイッチと電気的に接続しており、これらの機器の動作状態に応じて、アクセサリ配線26、イグニッション配線28、HV−ECU36への電力供給の可否を判断する。
【0025】
照合ECU34は後述するスマートキー56から発信された識別IDを受信し、当該識別IDが予め記憶された登録IDと一致するか照合する。照合結果は電源ECU32に送られ、識別IDと登録IDとが一致する場合、電源ECU32はスタートスイッチ44、図示しないシフトポジションセンサやストップランプスイッチの動作位置状態をもとにアクセサリ配線26、イグニッション配線28、HV−ECU36への電力供給を行う。一方、識別IDと登録IDとが一致しない場合にはいずれの配線にも電力を供給しない。
【0026】
HV−ECU36はハイブリッド車両(Hybrid Vehicle)用の電子制御ユニットであって、車両の駆動システムであるハイブリッドシステムを制御する。具体的には、図示しない車両のアクセルペダルの踏み込み量等から要求トルクを算出し、当該要求トルクを図示しない内燃機関への要求出力と図示しない回転電機への要求出力とに分配する。また、HV−ECU36はDC/DC−ECU40及びシステムメインリレー18に指令信号を送ることによりこれらの動作を制御している。また、HV−ECU36はMG−ECU38の配線上流側に設けられたMGリレー45の切断/接続制御も行っている。当該制御によってMG−ECU38の起動及び停止を制御している。
【0027】
MG−ECU38は回転電機の制御ユニットであり、図示しない昇圧インバータやインバータを制御してメインバッテリ12の直流電力を昇圧、直交変換し、HV−ECU36から送られた要求出力に応じた電力変換を行い、回転電機に変換された電力を供給している。また、内燃機関の動力や回生ブレーキ等により回転電機を発電機として使用する際には、MG−ECU38はインバータを制御して回転電機で発電された交流電力を直流電力に変換し、さらに昇圧コンバータを制御して直流電力を降圧する。降圧された直流電力はメインバッテリ12に供給される。
【0028】
DC/DC−ECU40は、DC/DCコンバータ14の図示しないスイッチング素子のオン/オフ動作を制御することにより、DC/DCコンバータ14の降圧電圧がHV−ECU36に指示された電圧値になるように定電圧制御を行う。DC/DC−ECU40には図示しない電圧センサが設けられており、メインバッテリ12の電圧を計測している。また、DC−DC/ECU40にはHV−ECU36から目標とする降圧電圧値が指令信号として送られる。DC/DC−ECU40は計測された電圧値と指令信号とに応じてスイッチング素子の駆動条件を算出し、スイッチング素子の動作制御を行う。
【0029】
また、制御部用配線22には非常用配線50が接続されている。非常用配線50には外部電源52が接続可能な電源端子54が設けられている。外部電源52は車両内に常駐する据え付け型の電源ではなく、車両の外部から携行できる携帯型の電源を指す。後述する様に、システムメインリレー18が切断状態であるか、DC/DCコンバータ14の稼動していない期間の少なくともいずれ一方の状態であって、かつ、サブバッテリ30の電圧値が制御部31の定格電圧を下回ったとき、すなわち、メインバッテリ12からもサブバッテリ30からも制御部31に電力が供給されない場合であっても、電源端子54に外部電源52を接続することで、非常用配線50及び制御部用配線22を介して制御部31に電力を供給することができる。制御部31の各ECUに電力が供給されることにより、システムメインリレー18が操作されて接続状態となり、また、DC/DCコンバータ14が始動する。これにより、システムメインリレー18およびDC/DCコンバータ14を介してメインバッテリ12から電力が供給される。
【0030】
このように、本実形態においては非常用配線50に接続する非常用電源として、車両に常駐する据付型の電源の代わりに携帯型の外部電源52を使用している。したがって本実施形態においては据付型の非常用電源を配置する必要がなく、その分、車両内の機器を配置するレイアウトの自由度が向上する。
【0031】
なお、外部電源52は図2に示すスマートキー(登録商標)56に内蔵された電池58であることが好適である。スマートキー56は車両のドア開閉信号や識別IDを発信可能な車両の鍵であって、電池58はスマートキー56に内蔵された図示しない発信手段の電源となる。スマートキー56の電池58を外部電源52として使用することで、別途外部電源52を携行する必要がない。また、外部電源52としてスマートキー56を使用する際には、スマートキー56が挿入されるキースロット71に電源端子54を設けることが好適である。通常、車両の起動時においてはスマートキー56をキースロット71に挿入し、スタートスイッチ44を入れることによって車両を起動させる。キースロット71内に電源端子54を設けることで、通常の車両起動操作に沿って非常用電源による各ECUの始動操作を行うことができる。
【0032】
スマートキー56は略直方体形状の電子機器であり、主に照合ECU34との情報のやり取りを行う。スマートキー56にはドアロックボタン60およびアンロックボタン62が設けられている。いずれかのボタンを押すと、スマートキー56の図示しない発信機からスマートキー56の識別IDとドアロック指令またはアンロック指令が発信される。照合ECU34はスマートキーからの信号を受信して識別IDと登録IDとを照合し、識別IDと登録IDとが一致しているときには車両の図示しないドアロックスイッチにドアの開閉指示を送る。また、ドアロックボタン60またはアンロックボタン62を押した際にはスマートキー56に設けられたインジケータランプ64が点灯する。この点灯の有無により電池58が容量切れか否かを判断することができる。
【0033】
また、電池58の定格電圧は制御部31の定格電圧以上であることが好適である。例えば電池58は直列に接続された4個の3Vコイン形リチウム電池であると好適である。さらに、スマートキー56を後述するキースロット71に挿入する際の挿入方向Aから見て、スマートキー56の先端部69には接続端子70が露出している。接続端子70は電池58と接続しており、後述するキースロット71内の電源端子54と接続可能になっている。
【0034】
また好適には、スマートキー56内にはメカニカルキー66が収容されている。挿入方向Aから見てスマートキー56の後方にはスライドピン67が設けられており、スライドピン67をスライド移動させることによってスマートキー56からメカニカルキー66を抜き出すことができる。また好適には、挿入方向Aから見てスマートキー56の両側面には、キースロット71挿入時にキースロット71内のインターロックピンが嵌合されるピンホール68が設けられている。
【0035】
図3には、スタートスイッチ44及びキースロット71の配置関係が示されている。スタートスイッチ44及びキースロット71は、車両の進行方向前方に設けられたダッシュボード72の運転席側に互いに近接して設けられている。運転者がキースロット71にスマートキー56を挿入し、続けてスタートスイッチ44を押すことによって車両が始動する。
【0036】
キースロット71の断面図を図4に示す。キースロット71にはスマートキー56の先端部69と当接する当接板74が設けられている。さらにスマートキー56の挿入方向から見て当接板74よりも奥側にはばね等の弾性体76が設けられている。弾性体76は当接板74を弾性支持しており、当接板74はスマートキー56の挿入方向に対してスライド移動が可能となっている。したがって、図5に示すようにスマートキー56の先端部69を当接板74に当接させた後に更にスマートキー56を挿入方向Aに押すと弾性体76の弾性力に抗して当接板74が挿入方向奥側に移動する。
【0037】
また、当接板74には開口部78が設けられている。開口部78はスマートキー56の先端部69に設けられた接続端子70に対向する位置に設けられている。さらに、当接板74の奥側には、弾性体76と並ぶようにして、非常用配線50に繋がる電源端子54が設けられている。電源端子54は開口部78に対応する位置に設けられている。電源端子54は弾性体76がスマートキー56の挿入方向に押されていない状態(通常の挿入状態)では当接板74から露出することはなく、当接板74が挿入方向に押されてスライド移動したときにのみ当接板74の開口部78から露出するような長さに構成されている。スマートキー56の電池58を非常用電源として使用する際には、スマートキー56を深押ししてスマートキー56先端部69の接続端子70と非常用配線50の電源端子54とを当接させて両者を接続させ、電池58の電力を非常用配線50に供給する。
【0038】
次に、サブバッテリ上がり時の車両の始動フローを図6を用いて説明する。なお、図6においてはスマートキー56の電池58を非常用電源として使用している。また、車両が始動する前、つまり車両の駆動システム(ハイブリッドシステム)が停止しているときにはシステムメインリレー18は切断状態であり、またDC/DCコンバータ14の稼動も停止している。
【0039】
運転者はスマートキー56をキースロット71に挿入し、スタートスイッチ44を押した際に車両が起動しないことに気付く。このとき、運転者はスマートキー56をキースロット71に深押しするとともにスタートスイッチ44を押す(S1)。スマートキー56が深押しされることによってスマートキー56の電池58と非常用配線50とが導通する。さらに非常用配線50及び制御部用配線22を経由して制御部31に電池58の電力が供給される。これにより照合ECU34が起動する。また、DC/DC−ECU40に電力が供給される。さらにスタートスイッチ44を押すことにより電源ECU32が起動する(S2)。
【0040】
照合ECU34はスマートキー56から発信される識別IDを受信して登録IDとの照合を行い、照合結果を電源ECU32に送る(S3)。識別IDと登録IDとが一致したときには電源ECU32はHVリレー42のコイルに電流を送り、HVリレー42を切断状態から接続状態に切り換える。これによりHV−ECU36が起動する(S4)。HV−ECU36はシステムメインリレー18のコイルに指令信号(電流)を送り、システムメインリレー18を切断状態から接続状態に切り換える。これによりメインバッテリ12とDC/DCコンバータ14とが導通する。
【0041】
さらにHV−ECU36はDC/DCコンバータ14が降圧すべき電圧値を算出し、これを指令信号としてDC/DC−ECU40に送る。指令信号を受けたDC/DC−ECU40はDC/DCコンバータ14のスイッチング素子を駆動させる(S5)。なお、DC/DC−ECU40に各ECU(DC/DC−ECU40自身を含む)の定格電圧を予め記憶させておき、HV−ECU36の指令信号を待たずにDC/DC−ECU40がメインバッテリ12の電圧を各ECUの定格電圧まで降圧させるようにしてもよい。
【0042】
システムメインリレー18が接続状態となり、かつ、DC/DCコンバータ14が駆動することによりメインバッテリ12からの電力がシステムメインリレー18及びDC/DCコンバータ14を介して電源ECU32、照合ECU34、HV−ECU36、DC/DC−ECU40に供給される。また、サブバッテリ30、常時電源配線24にもメインバッテリ12からの電力が供給される。これによりサブバッテリ30が充電される。以上のフローにより、各ECUの電源が電池58からメインバッテリ12に切り換わり、車両を正常に始動させることができる。
【0043】
上記フローに加えて、HV−ECU36がMGリレー45を切断状態から接続状態に切り替え、MG−ECU38を起動させるフローを追加させてもよい。MG−ECU38は回転電機を内燃機関の始動機として動作させて内燃機関を始動させる。さらに内燃機関の回転に応じて回転電機が発電し、メインバッテリ12を充電する。
【0044】
また、各ECUの電源が電池58からメインバッテリ12に切り換わったときに電源ECU32はリレー29を接続状態に切り換えてアクセサリ配線26に電力を供給する。これに伴いスタートスイッチ44のインジケータランプ79(図3参照)が点灯することから、運転者は車両が正常に始動したことを知り、スマートキー56の深押しを解除する。これによりスマートキー56と電源配線54との導通が切断される。
【0045】
なお、図1で示した電源装置10においては電池58が各ECUの電力を賄っている為、電力消費が大きい。そこで、電池58の電力負担を軽減させるために、DC/DCコンバータを2台設けるとともに、どちらか一方のDC/DCコンバータのECUのみに電池58からの電力を供給するようにしてもよい。
【0046】
図7には図1とは異なる実施形態に係る電源装置10が示されている。電源装置10は、メインDC/DCコンバータ80と、非常用DC/DCコンバータ82とを備えている。メインDC/DCコンバータ80と非常用DC/DCコンバータ82はメインバッテリ12に対して並列に接続されている。さらに、メインバッテリ12とメインDC/DCコンバータ80との間にはシステムメインリレー18が設けられているが、非常用DC/DCコンバータ82はシステムメインリレー18よりもメインバッテリ12側に接続されており、システムメインリレー18を介さずにメインバッテリ12と接続されている。また、メインDC/DCコンバータ80は低圧配線19に接続され、一方で非常用DC/DCコンバータ82は制御部用配線22に接続されている。さらにメインDC/DCコンバータ80を制御するメインDC/DC−ECU84は制御部用配線22に接続され、一方で非常用DC/DCコンバータ82を制御する非常用DC/DC−ECU86はスタートスイッチ44を介して非常用配線50に接続されている。すなわち、本実施形態においては、非常用配線50は非常用DC/DC−ECU86のみに接続され、図1において制御部31で示した各ECUには非常用配線50は接続されていない。
【0047】
上述した電源装置10による、サブバッテリ上がり時の車両の始動フローを図8に示す。また、車両が始動する前、つまり車両の駆動システム(ハイブリッドシステム)が停止しているときにはシステムメインリレー18は切断状態であり、またメインDC/DCコンバータ14の稼動も停止している。
【0048】
運転者がキースロット71内でスマートキー56を深押しすることにより、キースロット71の電源端子54とスマートキー56の接続端子70とが導通する(S7)。これにより非常用配線50にスマートキー56の電池58から電力が供給され、非常用DC/DC−ECU86に接続された非常用DC/DC−ECU86が起動する(S8)。非常用DC/DC−ECU86には各ECUの定格電圧が予め記憶されており、非常用DC/DC−ECU86はメインバッテリ12の電圧を各ECUの定格電圧まで降圧する。
【0049】
非常用DC/DCコンバータ82および制御部用配線22を介してメインバッテリ12の電力が電源ECU32、照合ECU34、メインDC/DC−ECU84に供給され、これらのECUが起動する(S9)。照合ECU34はスマートキー56から発信された識別IDを受信し、予め記憶された登録IDとの照合を行い、照合結果を電源ECU34に送る(S10)。識別IDと登録IDとが一致する場合には電源ECU34はHVリレー42を切断状態から接続状態に切り換えてHV−ECU36に電力を供給する。これによりHV−ECU36が起動する(S11)。HV−ECU36はシステムメインリレー18のコイルに指令信号(電流)を供給し、システムメインリレー18を切断状態から接続状態に切り換える。これによりメインバッテリ12とメインDC/DCコンバータ80とが導通する。さらにHV−ECU36は降圧電圧値を指令信号としてメインDC/DC−ECU84に送る。メインDC/DC−ECU84は指令信号に応じてメインDC/DCコンバータ80のスイッチング素子を駆動させる(S12)。これにより、メインバッテリ12からシステムメインリレー18及びメインDC/DCコンバータ80を介して各ECU、サブバッテリ30等に電力が供給される。
【0050】
メインDC/DCECU84に指令信号を送った後、電源ECU32はアクセサリ配線26に設けられたリレーを接続状態に切り換える。これによりスタートスイッチ44のインジケータランプ79が点灯し、運転者は車両が正常に始動したことを理解し、スマートキー56の深押しを解除する。深押しの解除により非常用DC/DC−ECU86への電力供給が途絶えるため、非常用DC/DCコンバータ82の駆動が停止する。
【0051】
上述の実施形態においては非常用DC/DCコンバータ82がシステムメインリレー18を介さずにメインバッテリ12と接続されているため、システムメインリレー18の切り替えを行うHV−ECU36に電力供給を行わなくてもよい。すなわち非常用DC/DC−ECU86に電力を供給するのみでメインバッテリ12の電力を各ECUに供給することができる。したがって非常用電源である外部電源52は、非常用DC/DC−ECU86に電力を供給するのみで足りる。このような構成を備えることにより、外部電源52がスマートキー56の内臓電池58のように出力電力の小さい場合であっても確実に車両を始動させることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 電源装置、12 メインバッテリ、14 DC/DCコンバータ、16 高圧配線、18 システムメインリレー、19 低圧配線、20 サブバッテリ用配線、22 制御部用配線、24 常時電源配線、26 アクセサリ配線、28 イグニッション配線、29 リレー、30 サブバッテリ、31 制御部、32 電源ECU、34 照合ECU、36 HV−ECU、38 MG−ECU、40 DC/DC−ECU、42 HVリレー、44 スタートスイッチ、45 MGリレー、50 非常用配線、52 外部電源、54 電源端子、56 スマートキー、58 電池、60 ドアロックボタン、62 アンロックボタン、64 スマートキーのインジケータランプ、66 メカニカルキー、67 スライドピン、68 ピンホール、69 スマートキー先端部、70 接続端子、71 キースロット、72 ダッシュボード、74 当接板、76 弾性体、78 開口部、79 スタートスイッチのインジケータランプ、80 メインDC/DCコンバータ、82 非常用DC/DCコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電源装置であって、
据付け型の第一電源と、
前記第一電源の出力電圧を降圧するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、
前記制御部に接続された据付け型の第二電源と、
を備え、
前記DC/DCコンバータの稼働している期間には、前記DC/DCコンバータを介して前記第一電源から前記制御部に電力が供給され、
前記DC/DCコンバータの稼働していない期間であって、前記第二電源の電圧が所定の閾値以上である場合には、前記第二電源から前記制御部に電力が供給され、
前記DC/DCコンバータの稼働していない期間であって、前記第二電源の電圧が前記閾値を下回る場合には、前記制御部に繋がる電源端子に携帯型の第三電源を接続することによって前記第三電源から前記制御部に電力が供給され、
前記制御部は前記第二電源または前記第三電源からの電力供給により前記DC/DCコンバータを始動させることが可能であることを特徴とする、車両用の電源装置。
【請求項2】
車両用の電源装置であって、
据付け型の第一電源と、
前記第一電源の出力電圧を降圧する第一のDC/DCコンバータと、
前記第一電源と前記第一のDC/DCコンバータとを結ぶ回路の切断及び接続を行うリレーと、
前記第一のDC/DCコンバータ及び前記リレーを制御する第一の制御部と、
前記第一の制御部に接続された据え付け型の第二電源と、
前記リレーを介さずに前記第一電源と前記第一の制御部とを繋ぐ配線に接続された第二のDC/DCコンバータと、
前記第二のDC/DCコンバータを制御する第二の制御部と、
を備え、
前記リレーが接続状態かつ前記第一のDC/DCコンバータの稼働している期間には、前記リレー及び前記第一のDC/DCコンバータを介して前記第一電源から前記第一の制御部に電力が供給され、
前記リレーが切断状態または前記第一のDC/DCコンバータが稼働していない期間の少なくともいずれか一方の状態であって、前記第二電源の電圧が所定の閾値以上である場合には、前記第二電源から前記第一の制御部に電力が供給され、
前記リレーが切断状態または前記第一のDC/DCコンバータが稼働していない期間の少なくともいずれか一方の状態であって、前記第二電源の電圧が前記閾値を下回る場合には、前記第二の制御部に繋がる電源端子に携帯型の第三電源を接続することによって前記第三電源から前記第二の制御部に電力が供給され、前記第二の制御部が前記第二のDC/DCコンバータを駆動させることにより、前記第二のDC/DCコンバータを介して前記第一電源から前記第一の制御部に電力が供給され、
前記第二電源または前記第二のDC/DCコンバータを介した前記第一電源からの電力供給により、前記第一の制御部は前記リレーを接続状態に切り換え、前記第一のDC/DCコンバータを始動させることが可能であることを特徴とする、車両用の電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用の電源装置であって、
前記第三電源は、車両のドア開閉信号を発信可能な鍵に内蔵された電池であり、
前記鍵には、前記電池から前記電源端子に電力を供給可能な接続端子が設けられていることを特徴とする、車両用の電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用の電源装置であって、
前記車両には、前記鍵が挿入されるキースロットが設けられ、
前記鍵の接続端子は、前記キースロットへの挿入方向から見て前記鍵の先端部に設けられ、
前記キースロットには、前記鍵の先端部と当接する当接板が設けられ、
前記当接板には、前記鍵が前記キースロットに挿入された際に前記接続端子に対向する位置に開口部が設けられ、
前記キースロットの、前記当接板より前記挿入方向の奥側には、前記開口部に対応する位置に前記電源端子が設けられるとともに、前記当接板を前記挿入方向に弾性支持する弾性体が設けられ、
前記鍵を介して前記弾性体の弾性力に抗して前記当接板を前記挿入方向に押すことにより、前記開口部から前記電源端子が露出して前記接続端子と前記電源端子とが接続可能であることを特徴とする、車両用の電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115056(P2012−115056A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262171(P2010−262171)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】