車両用エアバッグ装置
【課題】 厚さ方向のスペースが小さい部位にも効率的に配設することができる車両用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】 車両室内のインストルメントパネル1にエアバッグ本体23を設け、車両衝突時にこのエアバッグ本体23を室内側に膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体23を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材19,25の周縁部同士19a,25aをリブ17を介して結合している。
【解決手段】 車両室内のインストルメントパネル1にエアバッグ本体23を設け、車両衝突時にこのエアバッグ本体23を室内側に膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体23を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材19,25の周縁部同士19a,25aをリブ17を介して結合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関し、更に詳しくは、一対の樹脂製プレート部材の周縁部同士を結合した薄型の車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車両室内に設けられたインストルメントパネルの下部にニーエアバッグ装置を配設する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このニーエアバッグ装置は、グローブボックス用開口部の外周縁に沿って収納ケースを設け、該収納ケース内にバッグ本体を折り畳んだ状態で収容している。そして、インフレータからバッグ本体内にガスが噴出すると、インストルメントパネルの下部からバッグ本体が膨出して展開するように構成されている。
【特許文献1】特開2000−211458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来例に係るニーエアバッグ装置は、折り畳んだバッグ本体を収納ケース内に収容するという構成になっているため、厚さ方向のスペースが小さい部位に配設することが非常に困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、厚さ方向の小さなスペースにも効率的に配設することができる車両用エアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、車両衝突時にエアバッグ本体を膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材同士を対向させた状態で、これらの周縁部同士を結合することによって構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用エアバッグ装置によれば、車両室内における厚さ方向に限られた小さなスペース、例えばインストルメントパネルの表面部にも効率的に収容することができる。このように、他の部品等を配置する関係で小さいスペースしか確保できない部位にも、本発明に係る車両用エアバッグ装置を好適に配置することができる。また、通常状態では、厚さ方向のスペースが小さい状態で収容されているため、車両室内のスペースを狭めることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による車両用エアバッグ装置を配設した車両前部を示す斜視図である。
【0010】
車両室内の前部には、車幅方向に沿ってインストルメントパネル1が配設されており、該インストルメントパネル1の前側にはフロントウィンドウ3が配置されている。この図1においては、車両右側が運転席に設定されており、ステアリングコラム5を介してステアリングホイール7が車両後方に突出して設けられている。
【0011】
そして、本発明の第1実施形態による車両用エアバッグ装置9,11,13は、運転席側のインストルメントパネル1の下部、ステアリングコラム5のカバーの下面、助手席側のインストルメントパネル1の下部に配設されている。
【0012】
図2は図1のA部を切り欠いた拡大斜視図、図3は図2の車両用エアバッグ装置を示す、一部を切り欠いた斜視図である。なお、図3における上側の樹脂製プレートは、図2のインストルメントパネル表面側(車両後方側)に配置され、図3における下側の樹脂製プレートは、図2のインストルメントパネル裏面側(車両前方側)に配置されている。
【0013】
図2に示すように、インストルメントパネル1の助手席側の下部面には、車両前方に凹んだ平面視略矩形状の凹部15が形成され、該凹部15の周縁部に沿って配置されたリブ17が、車両後方(着座した乗員側)に向けて立設されている。そして、このリブ17の先端には、可撓性を有する矩形状の樹脂製プレート部材19が接合されており、インストルメントパネル1の表面に対して車両用エアバッグ装置13の樹脂製プレート部材19は略同一面に形成されている。また、インストルメントパネル1の内方には、インフレータ21が収容配置されており、該インフレータ21の先端は、エアバッグ本体23の内部に挿入されている。このように、本実施形態による車両用エアバッグ装置13は、2枚の樹脂製プレート部材19,25をリブ17を介して接合することにより、内部を密閉状態に形成したエアバッグ本体23と、該エアバッグ本体23の内部にガスを導入するインフレータ21とを備えている。
【0014】
図4は図3のB部を拡大した斜視図、図5は図3のC部を拡大した斜視図である。
【0015】
インストルメントパネル1の表面側に配置された樹脂製プレート部材19と裏面側に配置された樹脂製プレート25とを結合するリブ17の車両前方側の付け根部分には、脆弱部となるノッチ(溝)27が形成されている。このノッチ27は、図5に示すように、一般部位となる直線部29においては、小さく設定されているが、直線部同士29,29が交差する角部31においては、直線部29のノッチ27よりも大きく形成されている。
【0016】
また、図4,5に示すように、リブ17の先端は、インストルメントパネル1の表面側の樹脂製プレート部材19に接合されており、この接合によって、リブ17の先端と樹脂製プレート部材19の裏面側との突き当て部分に接合部33が形成されている。
【0017】
図6は通常状態における車両用エアバッグ装置の断面図である。
【0018】
通常走行時には、エアバッグ本体23は収縮しており、インストルメントパネル1の表面側に配置された樹脂製プレート部材19と、該樹脂製プレート部材19の車両前方側に配置された樹脂製プレート25とは、所定間隔をおいて対向配置され、かつ、断面でほぼ平行に配置されている。
【0019】
図7はエアバッグ本体内にガスを封入して膨出させた車両用エアバッグ装置の断面図、図8はエアバッグ本体を膨張させた場合のリブ近傍部を示す斜視図である。
【0020】
車両が衝突を検知した場合は、インフレータ21(図2参照)の先端からガスGが吹きだし、エアバッグ本体23内にガスGが流入して膨張する。
【0021】
ここで、エアバッグ本体23が膨張すると、図8に示すように、表面側及び裏面側の樹脂製プレート同士19,25の交差角が徐々に拡大する。しかし、リブ17には、脆弱部であるノッチ27が形成されているため、エアバッグ本体23が容易に膨張する。特に、エアバッグ本体23の角部31は、図5に示すように、他の直線部29よりも樹脂製プレート同士19,25が曲がりにくい部位であるため、この角部31のノッチ27の大きさを直線部29のノッチ27よりも大きく形成すれば、エアバッグ本体23の角部31における膨張も効率的に行うことができる。
【0022】
このようにして、図9に示すように、インストルメントパネル1の助手席側における乗員Pの膝部に対向して配置されたエアバッグ装置13を効率的に膨張及び展開させることができる。
【0023】
以下に、本発明の第1実施形態による作用効果を説明する。
【0024】
車両衝突時にエアバッグ本体23を室内側に膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体23を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材19,25の周縁部同士19a,25aを結合して内部を密閉状態に構成している。
【0025】
このため、厚さ方向に小さなスペースしか確保できない部位、例えばインストルメントパネル1等の表面側にもエアバッグ装置を好適に配設することができる。また、エアバッグ装置を配設しても、車両室内のスペースを狭めることがない。
【0026】
前記エアバッグ本体23を構成する一方側の樹脂製プレート部材19と他方側の樹脂製プレート部材25とを厚さ方向に所定間隔をおいて配置し、これらの樹脂製プレート部材19,25の周縁部同士19a,25aをリブ17を介して周状に結合し、かつ、このリブ17に該リブ17の曲げ変形を容易にするノッチ27(脆弱部、溝部)を形成している。
【0027】
このため、エアバッグ本体23の内部にガスGが封入されると樹脂製プレート部材19,25が膨張し、リブ17が容易に弾性変形して折れ曲がるので、エアバッグ本体23を効率的に膨張させることができる。また、エアバッグ本体23を樹脂で成形するため、エアバッグ13の形状の自由度を高くすることができる。なお、リブ17の先端は表面側の樹脂製プレート部材19に接合されているが、リブ17にノッチ27を形成しているため、エアバッグ本体23を膨張させる際に接合部33への応力集中を軽減させることができ、接合部33が剥離等を起こすことがない。
【0028】
[第2の実施形態]
図10は本発明の第2実施形態による車両用エアバッグ装置のエアバッグ本体を示す斜視図、図11は図10のC−C線による断面図である。
【0029】
図10に示すように、本実施形態による車両用エアバッグ装置35を構成するエアバッグ本体37は、平面視でエアバッグ本体37の略中央部で且つ板厚Tの中心部分に、母材の樹脂に対して非親和性を有するシート材39をインサート成形している。よって、図11に示すように、このシート材39が介設されている中央部分は、2枚の樹脂製プレート部材41,43がシート材39を挟んでそれらの板厚方向に積層された状態になっており、シート材39が介設されていない周縁部37aは、2枚の樹脂製プレート部材41,43が一体形成されて連結された状態になっている。また、インストルメントパネル1の内方側に配置された樹脂製プレート43には、ガス流入孔45が穿設され、該ガス流入孔45には、図外のインフレータが挿入されている。
【0030】
次に、本実施形態によるエアバッグ本体を作成する手順を簡単に説明する。
【0031】
まず、金型のキャビティ内に、樹脂に対して非親和性(剥離性)を有するシート材39を配置し、この状態で、キャビティ内に溶融樹脂を流入させる。
【0032】
すると、前記シート材39の周囲は溶融樹脂で鋳包まれる。そして、金型内で溶融樹脂が冷却及び固化すると、内部にシート材39がインサート成形されたエアバッグ本体37を成形することができる。
【0033】
このエアバッグ本体37は、シート材39が配置されていない周縁部37aで2枚の樹脂製プレート同士41,43が一体に結合されている。また、シート材39が配置されている中央部分においては、2枚の樹脂製プレート部材41,43は結合されておらず、容易に剥離するため、図12に示すように、エアバッグ本体37の内部にガスGが封入されると中央部分の2枚の樹脂製プレート部材41,43は容易に剥離して膨張する。
【0034】
以下に、第2の実施形態による作用効果を説明する。
【0035】
金型のキャビティ内に、樹脂に対して非親和性を有するシート材39を配置した状態で該シート材39の周囲を樹脂で鋳ぐるむインサート成形によって、前記エアバッグ本体37の全体を一体で形成している。このため、エアバッグ本体37の成形を1回の工程で行うことができるので、エアバッグ本体37の成形作業が非常に効率的になる。また、エアバッグ本体37の周縁部37aは一体で成形されるため、樹脂製プレート部材41,43同士の周縁部37aの結合力が大きくなる。
【0036】
[第3の実施形態]
次いで、本発明の第3実施形態について説明する。
【0037】
図13は本発明の第3実施形態による車両用エアバッグ装置の裏面側を示す斜視図、図14は内部にエアを封入した状態の車両用エアバッグ装置を示す断面図である。
【0038】
本実施形態によるエアバッグ本体51は、前述した第2実施形態のエアバッグ本体37に対して、排気部53,61,69を追設したものである。
【0039】
エアバッグ本体37には、図14に示すように、シート材39が介設されている部分に、他の一般部位の板厚t0よりも薄い板厚t1に形成された凹部からなる排気部53が形成されている。この排気部53の凹部は、円錐台に形成されており、この円錐台の頂部が薄肉部55に形成されている。
【0040】
そして、ガス流入孔45からエアバッグ本体51の内部にガスGが導入されるとエアバッグ本体51が徐々に膨張し、エアバッグ本体51の内面に圧力が加わる。この内圧が徐々に上昇して所定値に達すると、図15に示すように、排気部53の薄肉部55が破れてエアバッグ本体51内のガスGが外部に排出される。これによって、エアバッグ本体51内の圧力を適正に保持することができる。
【0041】
また、図16及び図17を用いて、第3実施形態の変形例を説明する。
【0042】
図16は2段階の板厚に形成された排気部の断面図、図17はスリットが設けられた排気部の斜視図である。
【0043】
図16に示す排気部61は、平面視で二重円形に形成されている。中心部となる1段目の薄肉部63は板厚t1が最も薄く(例えば、一般部位の板厚t0の1/4程度)、平面視で直径がdの円盤状に形成されている。また、この中心部の外周側となる2段目の薄肉部は、中心部と一般部位の中間板厚t2(例えば、一般部位の板厚t0の1/2程度)で、平面視で外径Dかつ内径dの円輪状に形成されている。
【0044】
従って、エアバッグ本体65の内部圧力が徐々に上昇すると、まず、1段目の中心部が破れて第1の排気孔(径:d)が開口し、内部圧力が更に上昇すると2段目も破れて第2の排気孔(径:D)が開口する。
【0045】
また、図17に示す排気部は、図16の前記排気部に複数のスリットを形成したものである。このスリット67は、排気部69の中心を通る3本の直線スリット67から構成され、スリット67とスリット67との間に、各々分離された三角片71が周状に設けられている。
【0046】
従って、エアバッグ本体73の内部圧力が上昇すると、まず、三角片71の先端部分が弾性変形して第1の排気孔(径:d)が開口し、内部圧力が更に上昇すると、三角片71の略全体が弾性変形して第2の排気孔(径:D)が開口する。
【0047】
以下に、第3の実施形態による作用効果を説明する。
【0048】
前記エアバッグ本体51,65,73の樹脂製プレート部材43に、エアバッグ本体51の内部圧力が所定値以上のときに開口する排気部53,61,69を設けているため、簡単な構造でエアバッグ装置の反力特性を自由に調整することができる。
【0049】
また、前記排気部53を、エアバッグ本体51の内部圧力に応じて開口の大きさが多段階に変わるように構成している。具体的には、図16に示すように、板厚を2段階に変えた薄肉部分t1,t2を排気部61にし、エアバッグ本体65に導入されたガスGの圧力に応じて、1段目の薄肉部分63を破って第1の排気孔としたり、2段目の薄肉部分64を破って第2の排気孔とすることができる。これにより、簡単な構造で、エアバッグ本体65内の内部圧力を適宜調整することができる。
【0050】
また、図17に示すように、板厚の大きさを2段階に変えた薄肉部分に切り込み(スリット67)を入れて排気部69とし、エアバッグ本体73に導入されたガスGの圧力に応じて、スリット67が入った排気部69の開口の大きさが変化するようにしたため、排気部69からのガスGの排出量を段階的でなく滑らかに変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用エアバッグ装置を配設した車両前部を示す斜視図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2の車両用エアバッグ装置を示す、一部を切り欠いた斜視図である。
【図4】図3のB部を拡大した斜視図である。
【図5】図3のC部を拡大した斜視図である。
【図6】通常状態における車両用エアバッグ装置の断面図である。
【図7】作動させて内部にガスを封入した車両用エアバッグ装置の断面図である。
【図8】車両用エアバッグを膨張させた場合のリブ近傍部を示す斜視図である。
【図9】助手席側の車両用エアバッグ装置が膨張した状態を示す車両室内前部の側面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による車両用エアバッグ装置のエアバッグ本体を示す斜視図である。
【図11】図10のC−C線による断面図である。
【図12】内部にガスを封入した車両用エアバッグ装置の断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による車両用エアバッグ装置の裏面側を示す斜視図である。
【図14】内部にガスを封入した状態の車両用エアバッグ装置を示す断面図である。
【図15】車両用エアバッグ内の圧力が上昇して排気部が開口した状態を示す断面図である。
【図16】2段階の板厚に形成された排気部の断面図である。
【図17】スリットが設けられた排気部の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
9,11,13,35…車両用エアバッグ装置
13…エアバッグ
17…リブ
19,25,41,43…樹脂製プレート部材
19a,25a,37a…周縁部
23,37,51,65,73…エアバッグ本体
27…ノッチ(脆弱部)
53,61,69…排気部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関し、更に詳しくは、一対の樹脂製プレート部材の周縁部同士を結合した薄型の車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車両室内に設けられたインストルメントパネルの下部にニーエアバッグ装置を配設する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このニーエアバッグ装置は、グローブボックス用開口部の外周縁に沿って収納ケースを設け、該収納ケース内にバッグ本体を折り畳んだ状態で収容している。そして、インフレータからバッグ本体内にガスが噴出すると、インストルメントパネルの下部からバッグ本体が膨出して展開するように構成されている。
【特許文献1】特開2000−211458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来例に係るニーエアバッグ装置は、折り畳んだバッグ本体を収納ケース内に収容するという構成になっているため、厚さ方向のスペースが小さい部位に配設することが非常に困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、厚さ方向の小さなスペースにも効率的に配設することができる車両用エアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、車両衝突時にエアバッグ本体を膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材同士を対向させた状態で、これらの周縁部同士を結合することによって構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用エアバッグ装置によれば、車両室内における厚さ方向に限られた小さなスペース、例えばインストルメントパネルの表面部にも効率的に収容することができる。このように、他の部品等を配置する関係で小さいスペースしか確保できない部位にも、本発明に係る車両用エアバッグ装置を好適に配置することができる。また、通常状態では、厚さ方向のスペースが小さい状態で収容されているため、車両室内のスペースを狭めることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による車両用エアバッグ装置を配設した車両前部を示す斜視図である。
【0010】
車両室内の前部には、車幅方向に沿ってインストルメントパネル1が配設されており、該インストルメントパネル1の前側にはフロントウィンドウ3が配置されている。この図1においては、車両右側が運転席に設定されており、ステアリングコラム5を介してステアリングホイール7が車両後方に突出して設けられている。
【0011】
そして、本発明の第1実施形態による車両用エアバッグ装置9,11,13は、運転席側のインストルメントパネル1の下部、ステアリングコラム5のカバーの下面、助手席側のインストルメントパネル1の下部に配設されている。
【0012】
図2は図1のA部を切り欠いた拡大斜視図、図3は図2の車両用エアバッグ装置を示す、一部を切り欠いた斜視図である。なお、図3における上側の樹脂製プレートは、図2のインストルメントパネル表面側(車両後方側)に配置され、図3における下側の樹脂製プレートは、図2のインストルメントパネル裏面側(車両前方側)に配置されている。
【0013】
図2に示すように、インストルメントパネル1の助手席側の下部面には、車両前方に凹んだ平面視略矩形状の凹部15が形成され、該凹部15の周縁部に沿って配置されたリブ17が、車両後方(着座した乗員側)に向けて立設されている。そして、このリブ17の先端には、可撓性を有する矩形状の樹脂製プレート部材19が接合されており、インストルメントパネル1の表面に対して車両用エアバッグ装置13の樹脂製プレート部材19は略同一面に形成されている。また、インストルメントパネル1の内方には、インフレータ21が収容配置されており、該インフレータ21の先端は、エアバッグ本体23の内部に挿入されている。このように、本実施形態による車両用エアバッグ装置13は、2枚の樹脂製プレート部材19,25をリブ17を介して接合することにより、内部を密閉状態に形成したエアバッグ本体23と、該エアバッグ本体23の内部にガスを導入するインフレータ21とを備えている。
【0014】
図4は図3のB部を拡大した斜視図、図5は図3のC部を拡大した斜視図である。
【0015】
インストルメントパネル1の表面側に配置された樹脂製プレート部材19と裏面側に配置された樹脂製プレート25とを結合するリブ17の車両前方側の付け根部分には、脆弱部となるノッチ(溝)27が形成されている。このノッチ27は、図5に示すように、一般部位となる直線部29においては、小さく設定されているが、直線部同士29,29が交差する角部31においては、直線部29のノッチ27よりも大きく形成されている。
【0016】
また、図4,5に示すように、リブ17の先端は、インストルメントパネル1の表面側の樹脂製プレート部材19に接合されており、この接合によって、リブ17の先端と樹脂製プレート部材19の裏面側との突き当て部分に接合部33が形成されている。
【0017】
図6は通常状態における車両用エアバッグ装置の断面図である。
【0018】
通常走行時には、エアバッグ本体23は収縮しており、インストルメントパネル1の表面側に配置された樹脂製プレート部材19と、該樹脂製プレート部材19の車両前方側に配置された樹脂製プレート25とは、所定間隔をおいて対向配置され、かつ、断面でほぼ平行に配置されている。
【0019】
図7はエアバッグ本体内にガスを封入して膨出させた車両用エアバッグ装置の断面図、図8はエアバッグ本体を膨張させた場合のリブ近傍部を示す斜視図である。
【0020】
車両が衝突を検知した場合は、インフレータ21(図2参照)の先端からガスGが吹きだし、エアバッグ本体23内にガスGが流入して膨張する。
【0021】
ここで、エアバッグ本体23が膨張すると、図8に示すように、表面側及び裏面側の樹脂製プレート同士19,25の交差角が徐々に拡大する。しかし、リブ17には、脆弱部であるノッチ27が形成されているため、エアバッグ本体23が容易に膨張する。特に、エアバッグ本体23の角部31は、図5に示すように、他の直線部29よりも樹脂製プレート同士19,25が曲がりにくい部位であるため、この角部31のノッチ27の大きさを直線部29のノッチ27よりも大きく形成すれば、エアバッグ本体23の角部31における膨張も効率的に行うことができる。
【0022】
このようにして、図9に示すように、インストルメントパネル1の助手席側における乗員Pの膝部に対向して配置されたエアバッグ装置13を効率的に膨張及び展開させることができる。
【0023】
以下に、本発明の第1実施形態による作用効果を説明する。
【0024】
車両衝突時にエアバッグ本体23を室内側に膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、前記エアバッグ本体23を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材19,25の周縁部同士19a,25aを結合して内部を密閉状態に構成している。
【0025】
このため、厚さ方向に小さなスペースしか確保できない部位、例えばインストルメントパネル1等の表面側にもエアバッグ装置を好適に配設することができる。また、エアバッグ装置を配設しても、車両室内のスペースを狭めることがない。
【0026】
前記エアバッグ本体23を構成する一方側の樹脂製プレート部材19と他方側の樹脂製プレート部材25とを厚さ方向に所定間隔をおいて配置し、これらの樹脂製プレート部材19,25の周縁部同士19a,25aをリブ17を介して周状に結合し、かつ、このリブ17に該リブ17の曲げ変形を容易にするノッチ27(脆弱部、溝部)を形成している。
【0027】
このため、エアバッグ本体23の内部にガスGが封入されると樹脂製プレート部材19,25が膨張し、リブ17が容易に弾性変形して折れ曲がるので、エアバッグ本体23を効率的に膨張させることができる。また、エアバッグ本体23を樹脂で成形するため、エアバッグ13の形状の自由度を高くすることができる。なお、リブ17の先端は表面側の樹脂製プレート部材19に接合されているが、リブ17にノッチ27を形成しているため、エアバッグ本体23を膨張させる際に接合部33への応力集中を軽減させることができ、接合部33が剥離等を起こすことがない。
【0028】
[第2の実施形態]
図10は本発明の第2実施形態による車両用エアバッグ装置のエアバッグ本体を示す斜視図、図11は図10のC−C線による断面図である。
【0029】
図10に示すように、本実施形態による車両用エアバッグ装置35を構成するエアバッグ本体37は、平面視でエアバッグ本体37の略中央部で且つ板厚Tの中心部分に、母材の樹脂に対して非親和性を有するシート材39をインサート成形している。よって、図11に示すように、このシート材39が介設されている中央部分は、2枚の樹脂製プレート部材41,43がシート材39を挟んでそれらの板厚方向に積層された状態になっており、シート材39が介設されていない周縁部37aは、2枚の樹脂製プレート部材41,43が一体形成されて連結された状態になっている。また、インストルメントパネル1の内方側に配置された樹脂製プレート43には、ガス流入孔45が穿設され、該ガス流入孔45には、図外のインフレータが挿入されている。
【0030】
次に、本実施形態によるエアバッグ本体を作成する手順を簡単に説明する。
【0031】
まず、金型のキャビティ内に、樹脂に対して非親和性(剥離性)を有するシート材39を配置し、この状態で、キャビティ内に溶融樹脂を流入させる。
【0032】
すると、前記シート材39の周囲は溶融樹脂で鋳包まれる。そして、金型内で溶融樹脂が冷却及び固化すると、内部にシート材39がインサート成形されたエアバッグ本体37を成形することができる。
【0033】
このエアバッグ本体37は、シート材39が配置されていない周縁部37aで2枚の樹脂製プレート同士41,43が一体に結合されている。また、シート材39が配置されている中央部分においては、2枚の樹脂製プレート部材41,43は結合されておらず、容易に剥離するため、図12に示すように、エアバッグ本体37の内部にガスGが封入されると中央部分の2枚の樹脂製プレート部材41,43は容易に剥離して膨張する。
【0034】
以下に、第2の実施形態による作用効果を説明する。
【0035】
金型のキャビティ内に、樹脂に対して非親和性を有するシート材39を配置した状態で該シート材39の周囲を樹脂で鋳ぐるむインサート成形によって、前記エアバッグ本体37の全体を一体で形成している。このため、エアバッグ本体37の成形を1回の工程で行うことができるので、エアバッグ本体37の成形作業が非常に効率的になる。また、エアバッグ本体37の周縁部37aは一体で成形されるため、樹脂製プレート部材41,43同士の周縁部37aの結合力が大きくなる。
【0036】
[第3の実施形態]
次いで、本発明の第3実施形態について説明する。
【0037】
図13は本発明の第3実施形態による車両用エアバッグ装置の裏面側を示す斜視図、図14は内部にエアを封入した状態の車両用エアバッグ装置を示す断面図である。
【0038】
本実施形態によるエアバッグ本体51は、前述した第2実施形態のエアバッグ本体37に対して、排気部53,61,69を追設したものである。
【0039】
エアバッグ本体37には、図14に示すように、シート材39が介設されている部分に、他の一般部位の板厚t0よりも薄い板厚t1に形成された凹部からなる排気部53が形成されている。この排気部53の凹部は、円錐台に形成されており、この円錐台の頂部が薄肉部55に形成されている。
【0040】
そして、ガス流入孔45からエアバッグ本体51の内部にガスGが導入されるとエアバッグ本体51が徐々に膨張し、エアバッグ本体51の内面に圧力が加わる。この内圧が徐々に上昇して所定値に達すると、図15に示すように、排気部53の薄肉部55が破れてエアバッグ本体51内のガスGが外部に排出される。これによって、エアバッグ本体51内の圧力を適正に保持することができる。
【0041】
また、図16及び図17を用いて、第3実施形態の変形例を説明する。
【0042】
図16は2段階の板厚に形成された排気部の断面図、図17はスリットが設けられた排気部の斜視図である。
【0043】
図16に示す排気部61は、平面視で二重円形に形成されている。中心部となる1段目の薄肉部63は板厚t1が最も薄く(例えば、一般部位の板厚t0の1/4程度)、平面視で直径がdの円盤状に形成されている。また、この中心部の外周側となる2段目の薄肉部は、中心部と一般部位の中間板厚t2(例えば、一般部位の板厚t0の1/2程度)で、平面視で外径Dかつ内径dの円輪状に形成されている。
【0044】
従って、エアバッグ本体65の内部圧力が徐々に上昇すると、まず、1段目の中心部が破れて第1の排気孔(径:d)が開口し、内部圧力が更に上昇すると2段目も破れて第2の排気孔(径:D)が開口する。
【0045】
また、図17に示す排気部は、図16の前記排気部に複数のスリットを形成したものである。このスリット67は、排気部69の中心を通る3本の直線スリット67から構成され、スリット67とスリット67との間に、各々分離された三角片71が周状に設けられている。
【0046】
従って、エアバッグ本体73の内部圧力が上昇すると、まず、三角片71の先端部分が弾性変形して第1の排気孔(径:d)が開口し、内部圧力が更に上昇すると、三角片71の略全体が弾性変形して第2の排気孔(径:D)が開口する。
【0047】
以下に、第3の実施形態による作用効果を説明する。
【0048】
前記エアバッグ本体51,65,73の樹脂製プレート部材43に、エアバッグ本体51の内部圧力が所定値以上のときに開口する排気部53,61,69を設けているため、簡単な構造でエアバッグ装置の反力特性を自由に調整することができる。
【0049】
また、前記排気部53を、エアバッグ本体51の内部圧力に応じて開口の大きさが多段階に変わるように構成している。具体的には、図16に示すように、板厚を2段階に変えた薄肉部分t1,t2を排気部61にし、エアバッグ本体65に導入されたガスGの圧力に応じて、1段目の薄肉部分63を破って第1の排気孔としたり、2段目の薄肉部分64を破って第2の排気孔とすることができる。これにより、簡単な構造で、エアバッグ本体65内の内部圧力を適宜調整することができる。
【0050】
また、図17に示すように、板厚の大きさを2段階に変えた薄肉部分に切り込み(スリット67)を入れて排気部69とし、エアバッグ本体73に導入されたガスGの圧力に応じて、スリット67が入った排気部69の開口の大きさが変化するようにしたため、排気部69からのガスGの排出量を段階的でなく滑らかに変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用エアバッグ装置を配設した車両前部を示す斜視図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2の車両用エアバッグ装置を示す、一部を切り欠いた斜視図である。
【図4】図3のB部を拡大した斜視図である。
【図5】図3のC部を拡大した斜視図である。
【図6】通常状態における車両用エアバッグ装置の断面図である。
【図7】作動させて内部にガスを封入した車両用エアバッグ装置の断面図である。
【図8】車両用エアバッグを膨張させた場合のリブ近傍部を示す斜視図である。
【図9】助手席側の車両用エアバッグ装置が膨張した状態を示す車両室内前部の側面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による車両用エアバッグ装置のエアバッグ本体を示す斜視図である。
【図11】図10のC−C線による断面図である。
【図12】内部にガスを封入した車両用エアバッグ装置の断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による車両用エアバッグ装置の裏面側を示す斜視図である。
【図14】内部にガスを封入した状態の車両用エアバッグ装置を示す断面図である。
【図15】車両用エアバッグ内の圧力が上昇して排気部が開口した状態を示す断面図である。
【図16】2段階の板厚に形成された排気部の断面図である。
【図17】スリットが設けられた排気部の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
9,11,13,35…車両用エアバッグ装置
13…エアバッグ
17…リブ
19,25,41,43…樹脂製プレート部材
19a,25a,37a…周縁部
23,37,51,65,73…エアバッグ本体
27…ノッチ(脆弱部)
53,61,69…排気部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両衝突時にエアバッグ本体を膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、
前記エアバッグ本体を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材同士を対向させた状態で、これらの周縁部同士を結合することによって構成したことを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記一対の樹脂製プレート部材の周縁部同士をリブを介して周状に結合し、かつ、このリブに曲げ変形を容易にする脆弱部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
金型のキャビティ内に、樹脂に対して非親和性を有するシート材を配置した状態で該シート材の周囲を樹脂で鋳包むインサート成形によって、前記エアバッグ本体を一体成形したことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグ本体の樹脂製プレート部材に、エアバッグ本体内の内部圧力が所定値以上になったときに開口する排気部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記排気部を、エアバッグ本体内の内部圧力が高くなるほど開口が大きくなるように構成したことを特徴とする請求項4に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項1】
車両衝突時にエアバッグ本体を膨出させるようにした車両用エアバッグ装置において、
前記エアバッグ本体を、可撓性を有する一対の樹脂製プレート部材同士を対向させた状態で、これらの周縁部同士を結合することによって構成したことを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記一対の樹脂製プレート部材の周縁部同士をリブを介して周状に結合し、かつ、このリブに曲げ変形を容易にする脆弱部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
金型のキャビティ内に、樹脂に対して非親和性を有するシート材を配置した状態で該シート材の周囲を樹脂で鋳包むインサート成形によって、前記エアバッグ本体を一体成形したことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグ本体の樹脂製プレート部材に、エアバッグ本体内の内部圧力が所定値以上になったときに開口する排気部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記排気部を、エアバッグ本体内の内部圧力が高くなるほど開口が大きくなるように構成したことを特徴とする請求項4に記載の車両用エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−315594(P2006−315594A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142106(P2005−142106)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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