説明

車両用コネクタの支持構造

【課題】 コネクタと支持板との間に隙間が存在していても、コネクタ接続部と支持板との接続部位に応力が加わることをなくす。
【解決手段】 コネクタ22に着脱自在にスペーサ部材23を装着し、コネクタ22の支持板3に対する移動を規制し、コネクタ接続部16の支持板3に対する相対的な移動を規制し、コネクタ22と支持板3との間に隙間が存在していても、コネクタ接続部16と支持板3との接続部位に応力が加わることをなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用コネクタの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の燃料タンクは、一般に、床下に設けられ、燃料ポンプや燃料の残量計等の電気機器が燃料タンクの支持部材にアッセンブリとして設けられている。排気ガス中の未燃焼燃料を抑制するため、燃料タンク内の内圧が検出されている。このため、燃料ポンプ等が取り付けられる支持部材には、例えば、半導体を用いた圧力センサが設けられている。圧力センサの信号を制御装置に送るため、ハーネスのコネクタが接続されるコネクタ接続部が支持部材に備えられている。
【0003】
圧力センサを効率的に燃料タンク側に組み付けるために、端子を有するコネクタ接続部のハウジングに圧力センサを一体的に収容した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。コネクタ接続部のハウジングに圧力センサを組み込むことで、圧力センサとコネクタ接続部とをそれぞれ燃料タンク側に組み付ける必要がなくなり、設置スペースを抑制してコストを低減することができる。
【0004】
圧力センサのコネクタ接続部には圧力センサの信号を制御装置に送るためのハーネスのコネクタが接続される端子が開口する部位(コネクタが接続される部位)が設けられ、端子が開口する部位は燃料タンクの支持部材(上面)から隙間があいた位置に配されている。このため、燃料タンクが床下に設けられてフロアパネルと燃料タンクの上面との間のスペースが狭くなっていても、コネクタ接続部に対するコネクタの嵌合を容易に行うことができ、配線作業の作業性を低下させることがない。
【0005】
しかし、コネクタ接続部にコネクタを嵌合した際に、燃料タンクの支持部材(上面)から離れた位置にコネクタが存在することになり、コネクタや燃料タンクに外力が加わると、コネクタが燃料タンク側に相対的に移動することが考えられ、コネクタ接続部(圧力センサ)と燃料タンク(支持部材)の接続部位に応力が加わってしまうことがある。
【0006】
このような状況は、燃料タンクの圧力センサに限らず、油圧系統の圧力センサや空調装置の冷媒圧の圧力センサ等、狭い場所でコネクタと基部材との間に隙間が存在する車両用のセンサのコネクタの支持、センサ以外であっても車両用の機器におけるコネクタの支持に関しても同様である。
【0007】
【特許文献1】実開平6−79073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、コネクタと基部材との間に隙間が存在していても、コネクタ接続部と基部材との接続部位に応力が加わることがない車両用コネクタの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車両用コネクタの支持構造は、車両の基部材側に設けられるコネクタ接続部にコネクタを嵌合する車両用コネクタの支持構造において、前記基部材に対する前記コネクタ接続部の相対的な移動を規制する移動規制部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、規制部材によりコネクタの基部材側に対する相対的な移動が規制され、コネクタと基部材との間に隙間が存在していても、コネクタ接続部と基部材との接続部位に応力が加わることがない。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の車両用コネクタの支持構造は、請求項1に記載の車両用コネクタの支持構造において、前記移動規制部材は、前記コネクタに着脱自在に装着されるスペーサ部材であり、前記スペーサ部材は、前記コネクタが前記コネクタ接続部に嵌合される際に前記基部材側の面に摺接することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、コネクタにスペーサ部材を装着することでコネクタの基部材側に対する相対的な移動が規制されると共に、コネクタをコネクタ接続部材に嵌合する際にコネクタを基部材側の面に摺接させることで、コネクタの嵌合を案内することができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の車両用コネクタの支持構造は、請求項2に記載の車両用コネクタの支持構造において、前記スペーサ部材は、前記コネクタと前記基部材の面との間に介在するスペーサと、弾性変形することにより前記コネクタに係止する保持爪部とで構成されることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、保持爪部を弾性変形させてコネクタに係止させることでスペーサを所定の位置に保持してスペーサ部材を装着することができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の車両用コネクタの支持構造は、請求項3に記載の車両用コネクタの支持構造において、前記基部材は燃料タンクであり、前記コネクタ接続部には、前記燃料タンク内の圧力を検出するための圧力センサの端子が設けられ、前記コネクタは、前記圧力センサの信号を制御装置に送るための車両側のハーネスが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、燃料タンクに備えられた圧力センサのコネクタ嵌合部材に圧力センサの信号を制御装置に送るための車両側のハーネスのコネクタを嵌合した際に、コネクタと燃料タンクとの間に隙間が存在していても、コネクタ接続部と燃料タンクとの接続部位に応力が加わることがない。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の車両用コネクタの支持構造は、請求項4に記載の車両用コネクタの支持構造において、前記圧力センサは、前記燃料タンクの燃料ポンプアッセンブリの支持板部材に備えられ、前記コネクタ接続部は、前記支持板部材と前記車両のフロアパネルとの間における前記支持板部材に平行な方向に前記端子が臨み、前記スペーサ部材の前記スペーサは、前記コネクタが前記コネクタ接続部に嵌合される際に、前記支持板部材の面を摺動することを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、燃料ポンプアッセンブリの支持板部材に対してスペーサ部材のスペーサを摺動させてコネクタをコネクタ接続部材に嵌合することにより、狭いスペースであっても端子に対してコネクタを同じ高さで移動させることができ、こじりが発生しない状態でコネクタの嵌合を行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用コネクタの支持構造は、コネクタと基部材との間に隙間が存在していても、コネクタ接続部と基部材との接続部位に応力が加わることをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1には本発明の一実施形態例に係る車両用コネクタの支持構造が適用される燃料タンクの外観、図2には図1中の要部外観、図3には図2中のIII−III線矢視、図4にはスペーサ部材の外観、図5にはスペーサ部材を装着した状態のコネクタの外観、図6にはコネクタの接続部位の側面、図7にはスペーサ部材が装着されていない状態のコネクタの接続部の側面を示してある。本実施形態例の車両用コネクタの支持構造は、圧力センサの信号を制御装置に送るための車両用のコネクタを接続した場合を例に挙げて説明してある。
【0021】
図1〜図3に示すように、車両の基部材である燃料タンク1には燃料ポンプアッセンブリ2が備えられている。燃料ポンプアッセンブリ2は、支持板部材である支持板3に燃料ポンプ4やゲージ類が固定され、支持板3が燃料タンク1に固定されることにより燃料ポンプ4やゲージ類が燃料タンク1に取り付けられる。燃料タンク1は車両のフロアパネル5の下側に収容され、支持板3に対応する部位のフロアパネル5にはメンテナンス用のサービス穴6が形成されている。フロアパネル5のサービス穴6にはねじ部材7を介して蓋部材8が取り付けられ、蓋部材8はフロアパネル5の上面側から取り外し自在とされている。
【0022】
支持板3の上面側(フロアパネル5の蓋部材8の下側)には電気系統のハーネス11を備えたコネクタ12が接続されている。また、支持板3には燃料タンク1内の圧力を検出するための半導体素子を内蔵する圧力センサ15が設けられ、圧力センサ15は支持板3側に固定されて圧力導入部となるニップルが備えられている。そして、圧力センサ15には端子が臨むコネクタ接続部16が形成されている。コネクタ接続部16は、支持板3に対して平行な方向で端子が臨むように開口部16aが設けられ、開口部16aは支持板3に対して隙間が設けられて位置している。
【0023】
コネクタ接続部16の開口部16aには、圧力センサ15の信号を図示しない制御装置に送るハーネス21が設けられるコネクタ22が嵌合している。コネクタ22がコネクタ接続部16の開口部16a(図6参照)に嵌合されることで、圧力センサ15の信号を制御装置に送るためのハーネス21を介して圧力センサ15の情報が図示しない制御手段に送られる。コネクタ接続部16の開口部16aは支持板3に対して隙間が設けられて位置しているので、コネクタ22を嵌合する際に支持板3が邪魔になることがない。
【0024】
コネクタ22には移動規制部材としてのスペーサ部材23が着脱自在に装着され、スペーサ部材23がコネクタ22と支持板3の間に僅かな隙間を持って介在するようになっている。スペーサ部材23が介在することにより、コネクタ22の支持板3に対する移動が規制され、支持板3に対してコネクタ接続部16の相対的な移動が規制されてコネクタ22の抜け外れが防止される。
【0025】
また、コネクタ22をコネクタ接続部16に嵌合する際には、スペーサ部材23が支持板3の上面を摺動してコネクタ22が水平状態にガイドされる。このため、蓋部材8と支持板3の間の狭いスペースであってもコネクタ接続部16の端子に対してコネクタ22を同じ高さで移動させることができ、こじりが発生しない状態でコネクタ22を嵌合させることができる。
【0026】
図4、図5に基づいてスペーサ部材23を説明する。
【0027】
図に示すように、スペーサ部材23はコネクタ22と支持板3の面との間に介在する矩形直方体状のスペーサ25を備え、スペーサ25の側部には一対の保持爪部としての爪部材26が立設されている。爪部材26の先端には爪部27がそれぞれ形成され、コネクタ22に一対の爪部材26を嵌合することで一対の爪部材26が弾性変形し爪部27がコネクタ22に係止する(図5の状態)。
【0028】
コネクタ22に対してスペーサ部材23が別体とされていることにより、スペーサ部材23のコネクタ22への着脱を極めて容易に行うことができ、また、スペーサ部材23の形状も既存のコネクタ22の形状に合わせて容易に作成することができる。
【0029】
このため、爪部材26を弾性変形させて爪部27をコネクタ22に係止させることでスペーサ25を所定の位置に保持してスペーサ部材23を装着することができる。
【0030】
図6、図7に基づいてコネクタの支持構造の作用を説明する。
【0031】
図6に示すように、スペーサ部材23が装着されたコネクタ22がコネクタ接続部16の開口部16aに嵌合される。支持板3と開口部16aの間に隙間が設けられていても、スペーサ部材23のスペーサ25が支持板3の上面を摺動してコネクタ22がコネクタ接続部16に嵌合する。このため、蓋部材8と支持板3の間の狭いスペースであってもコネクタ接続部16の端子に対してコネクタ22を同じ高さで移動させて、こじりが発生しない状態でコネクタ22を嵌合させることができる。
【0032】
コネクタ22がコネクタ接続部16の開口部16aに嵌合された状態では、スペーサ部材23のスペーサ25がコネクタ22と支持板3の間に僅かな隙間を持って介在する。スペーサ25が介在することにより、コネクタ22の支持板3側に対しての移動が規制され、支持板3に対してコネクタ接続部16の移動が規制される。
【0033】
つまり、支持板3に対して隙間が設けられて位置する開口部16aにコネクタ22が嵌合しても、コネクタ22と支持板3との間にはスペーサ25により大きな間隔が生じることがなく、コネクタ22や支持板3に外力が加わってもコネクタ接続部16が支持板3に対して移動することがない。また、スペーサ25がコネクタ22と支持板3の間に僅かな隙間を持って介在しているので、コネクタ接続部16へのコネクタ22の嵌合が車両の振動により影響を受けることがない。
【0034】
図7に示すように、コネクタ22にスペーサ部材23が装着されていない場合、支持板3の上面とコネクタ22との間に隙間が生じる。コネクタ22の下側に隙間が生じていると、燃料タンク1やコネクタ22に外力が加わった場合に、コネクタ22が支持板3側に相対的に移動し(図中矢印A方向)、コネクタ接続部16に対して支持板3から外れる方向(図中矢印B方向)に力が加わる。
【0035】
図6に示すように、コネクタ22にスペーサ部材23を装着することにより、コネクタ22や支持板3に外力が加わってもコネクタ接続部16が支持板3に対して移動することがないので、コネクタ接続部16が燃料タンク1から抜け外れて、即ち、圧力センサ15が燃料タンク1から抜け外れてニップル28の挿入部が露出することがない。これにより、車両の万一の衝突等の場合であっても、ニップル28の挿入部から燃料タンク1の燃料が外部に流出することがない。
【0036】
上述したコネクタの支持構造では、コネクタ22と支持板3との間に隙間が存在していても、コネクタ接続部16と支持板3との接続部位に応力が加わることをなくすことができる。
【0037】
尚、上述した実施形態例では、コネクタ22にスペーサ部材23を装着した例を挙げて説明したが、蓋部材8にコネクタ22の支持を行なう部材を設けて規制部材としたり、支持板3側にスペーサ部材を設けて規制部材とすることで、支持板3に対するコネクタ接続部16の相対的な移動を規制することができる。
【0038】
また、上述した実施形態例の支持構造では、圧力センサ15のコネクタ接続部16に対するコネクタ22の支持を例に挙げて説明したが、油圧系統の圧力センサや空調装置の冷媒圧の圧力センサ等、狭い場所でコネクタと基部材との間に隙間が存在する車両用のセンサのコネクタの支持の支持構造として適用することが可能である。更に、センサ以外であっても車両用の機器におけるコネクタの支持の支持構造に対して適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、車両用コネクタの支持構造の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態例に係る車両用コネクタの支持構造が適用される燃料タンクの外観図である。
【図2】図1中の要部外観図である。
【図3】図2中のIII−III線矢視図である。
【図4】スペーサ部材の外観図である。
【図5】スペーサ部材を装着した状態のコネクタの外観図である。
【図6】コネクタの接続部位の側面図である。
【図7】スペーサ部材が装着されていない状態のコネクタの接続部の側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 燃料タンク
2 燃料ポンプアッセンブリ
3 支持板
4 燃料ポンプ
5 フロアパネル
6 サービス穴
7 ねじ部材
8 蓋部材
11、21 ハーネス
12、22 コネクタ
15 圧力センサ
16 コネクタ接続部
23 スペーサ部材
25 スペーサ
26 爪部材
27 爪部
28 ニップル




【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の基部材側に設けられるコネクタ接続部にコネクタを嵌合する車両用コネクタの支持構造において、
前記基部材に対する前記コネクタ接続部の相対的な移動を規制する移動規制部材を設けた
ことを特徴とする車両用コネクタの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用コネクタの支持構造において、
前記移動規制部材は、前記コネクタに着脱自在に装着されるスペーサ部材であり、
前記スペーサ部材は、前記コネクタが前記コネクタ接続部に嵌合される際に前記基部材側の面に摺接する
ことを特徴とする車両用コネクタの支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用コネクタの支持構造において、
前記スペーサ部材は、前記コネクタと前記基部材の面との間に介在するスペーサと、弾性変形することにより前記コネクタに係止する保持爪部とで構成される
ことを特徴とする車両用コネクタの支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用コネクタの支持構造において、
前記基部材は燃料タンクであり、
前記コネクタ接続部には、前記燃料タンク内の圧力を検出するための圧力センサの端子が設けられ、
前記コネクタは、前記圧力センサの信号を制御装置に送るための車両側のハーネスが設けられている
ことを特徴とする車両用コネクタの支持構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用コネクタの支持構造において、
前記圧力センサは、前記燃料タンクの燃料ポンプアッセンブリの支持板部材に備えられ、
前記コネクタ接続部は、前記支持板部材と前記車両のフロアパネルとの間における前記支持板部材に平行な方向に前記端子が臨み、
前記スペーサ部材の前記スペーサは、前記コネクタが前記コネクタ接続部に嵌合される際に、前記支持板部材の面を摺動する
ことを特徴とする車両用コネクタの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−259648(P2009−259648A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108286(P2008−108286)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】