説明

車両用シート装置

【課題】誤動作させてしまった場合や、シートバックを戻そうとした場合でも、すぐに元の状態にすることができる車両用シート装置を提供する。
【解決手段】ロック機構10とロックスプリング20とロック解除機構30とを備えた車両用シート装置である。ロック解除機構30は電動モータ31を有し、電動モータ31に通電してロック解除機構30を初期位置から動作位置へと解除動作させる操作スイッチ50と、操作スイッチ50の操作により、電動モータ31への通電を所定時間維持する制御装置52とを有している。シートバック82が起こされ、ロック機構10がロック解除状態からロック状態にされると、ロックスプリング20によりロック解除機構30が動作位置から初期位置へと復帰動作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動でシートバックを前傾し得る車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された車両用シート装置が知られている。この車両用シート装置は、電動モータと、この電動モータの駆動により回転する減速歯車機群と、この減速歯車群の出力側歯車(ドライブギヤ)に一方を軸着し他方を作動部材に軸着したクランクアームから構成されており、電動モータの一方向の回転をクランクアームの往復運動に変換している。そして、作動部材を作動させて、シートクッションに対するシートバックのロック及びロック解除を行っている。また、リミットスイッチや導電板等からなる制御機構を減速歯車機群に組み込み、この制御機構により電動モータを制御している。
【0003】
特許文献1記載のシート装置によれば、乗員が操作スイッチを押すと、導電板が180度回転し、クランクアームが作動部材を作動させてシートバックがロック解除される。そして、操作スイッチを押している間ロック解除が保持され、操作スイッチを放すと導電板がさらに180度回転して導電板が初期位置に復帰するとともにシートバックがロックされる。そのため、この車両用シート装置によれば、電動モータは一方向のみの回転で使用されるため、電動モータを正逆回転させる場合に比べて制御が簡単である。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の車両用シート装置では、乗員が操作スイッチを押すことによりシートバックがロック解除され、操作スイッチを放すことによりシートバックがロックされるとともに導電板が初期位置に復帰される。すなわち、操作スイッチを押すタイミング及び放すタイミングによりシートバックのロック解除及びロックが行われるため、操作スイッチの操作が面倒であり、操作ミスが生じやすい。また、この車両用シート装置では、多くのリミットスイッチ、配線等を使用しているため、部品点数が増加し、車両用シート装置全体として大型化するとともに各部品の配置に自由度がなくなってしまう。さらに、この車両用シート装置では、導電板を1回転させて導電板を初期位置に復帰させているため、導電板の初期位置復帰までに待ち時間が生じてしまう。そのため、誤動作させてしまった場合や、シートバックを戻そうとした場合には、短時間で導電板を初期位置に復帰させることができず、すぐに車両用シート装置を元の状態にすることができない。かといって、これを防止するため導電板を速く回転させたのでは、慣性力のため初期位置復帰精度が悪くなってしまう。
【0005】
これに対し、特許文献2に記載された車両用シート装置が提案されている。この車両用シート装置は、特許文献1記載の車両用シート装置に比べ、クランクアーム及び導電板がワイヤ及びカムに対応した構成になっており、リミットスイッチの数が減少されている。
【0006】
特許文献2記載のシート装置では、乗員が操作スイッチを押すことにより、シートバックのロック解除、ロック解除保持及びロックが自動的に行われるため、操作スイッチの操作が簡単であり、操作ミスが生じ難い。また、この車両用シート装置では、リミットスイッチの数が減少されるとともに配線も簡素になっているため、車両用シート装置全体としての大型化を防止でき、各部品の配置の自由度も確保することができる。
【特許文献1】特開平5−277018号公報
【特許文献2】特開2003−312326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献2記載の車両用シート装置では、特許文献1記載の車両用シート装置と同様、短時間でカムを初期位置に復帰させることができない。すなわち、特許文献2記載の車両用シート装置では、カムを1回転させてカムを初期位置に復帰させているため、カムの初期位置復帰までに待ち時間が生じてしまう。そのため、誤動作させてしまった場合や、シートバックを戻そうとした場合には、やはり短時間でカムを初期位置に復帰させることができず、すぐに車両用シート装置を元の状態にすることができない。
【0008】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、誤動作させてしまった場合や、シートバックを戻そうとした場合でも、すぐに元の状態にすることができる車両用シート装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る車両用シート装置の特徴は、シートバックをシートクッションに対して所定角度位置で保持するロック状態と、該ロック状態を解除して、前記シートバックを前記シートクッションに対して回動自在に前傾するロック解除状態とをとり得るロック機構と、該ロック機構に連係され、該ロック機構を前記ロック状態に付勢する付勢部材と、前記ロック機構に連係され、初期位置から動作位置への解除動作により前記付勢部材に抗して前記ロック機構をロック解除状態へと変遷させるロック解除機構と、を備えた車両用シート装置であって、前記ロック解除機構は電動モータを有し、該電動モータに通電して前記ロック解除機構を初期位置から動作位置へと解除動作させる操作スイッチと、該操作スイッチの操作により、前記電動モータへの通電を所定時間維持する時制手段とを有し、前記シートバックが起こされ、前記ロック機構がロック解除状態からロック状態にされると、前記付勢部材により前記ロック解除機構が動作位置から初期位置へと復帰動作されることである。
【0010】
請求項2に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1において、前記ロック解除機構には、初期位置及び動作位置を定めるストッパが設けられていることである。
【0011】
請求項3に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1又は2において、前記時制手段により前記電動モータへの通電がなされていない間は、前記電動モータへの電源供給回路が開いていることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る車両用シート装置においては、操作スイッチの操作により、電動モータに通電されてロック解除機構が初期位置から動作位置へと解除動作される。これにより、ロック機構がロック状態からロック解除状態とされ、シートバックがシートクッションに対して前傾される。その後、シートバックが起こされ、ロック機構がロック解除状態からロック状態にされると、付勢部材によりロック解除機構が動作位置から初期位置へと復帰動作される。そのため、次に操作スイッチが操作される際には、すでにロック解除機構が初期位置に復帰されている。したがって、この車両用シート装置によれば、誤動作させてしまった場合や、シートバックを戻そうとした場合でも、すぐに元の状態にすることができる。また、この車両用シート装置では、乗員が操作スイッチを押すことにより、時制手段によってシートバックのロック解除、ロック解除保持が自動的に行われるため、操作スイッチの操作が簡単であり、操作ミスが生じ難い。さらに、この車両用シート装置では、時制手段による電動モータへの通電時間を調整しているため、ロック解除及びロック解除保持時間を変更することができるのみならず、リミットスイッチが不要であり車両用シート装置全体としての大型化を防止でき、各部品の配置の自由度も確保することができる。
【0013】
請求項2に係る車両用シート装置においては、ロック解除機構には、初期位置及び動作位置を定めるストッパが設けられているため、慣性力を抑えて、原点復帰誤差を低減させることができる。
【0014】
請求項3に係る車両用シート装置においては、時制手段により電動モータへの通電がなされていない間は、電動モータへの電源供給回路が開いているため、電動モータによる抵抗を防止でき、小さな力でロック解除機構を初期位置へ復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る車両用シート装置を具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、車両用シート装置の斜視図である。この車両用シート装置は、乗員が着座するシートクッション81と、乗員の背中を支持するシートバック82とを有している。シートクッション81はシートクッションフレーム83によって支持され、シートバック82はシートバックフレーム84によって支持されている。また、シートバックフレーム84には、左右一対のロック機構10とロック解除機構30とが設けられている。ロック機構10は、シートバック82をシートクッション81に対して所定角度位置で保持するロック状態と、ロック状態を解除して、シートバック82をシートクッション81に対して回動自在に前傾するロック解除状態とをとり得る。ロック解除機構30は、ロック機構10に連係され、初期位置から動作位置への解除動作により後述するロックスプリング20に抗してロック機構10をロック状態からロック解除状態へと変遷させるものである。ロック解除機構30にはマニュアルレバー85が連係されている。このマニュアルレバー85が上方に引かれることにより、ロック解除機構30を介してロック機構10がロック状態からロック解除状態へと変遷され、矢印で示すように、シートバック82がシートクッション81に対して前傾される。なお、後述する操作スイッチ50を押すことによっても、シートバック82をシートクッション81に対して前傾させることができる。
【0016】
図2は、車両用シート装置の概要図である。シートクッションフレーム83に固定されるアジャスタアーム87とシートバックフレーム84との間には、ラウンドリクライナ90が設けられている。このラウンドリクライナ90は、図示しないモータによりシートクッション81に対してシートバック82の角度を調整するものであり、例えば、特開2002−119352号公報に記載されているように公知の技術であり、その説明を省略する。シートバックフレーム84を挟んでラウンドリクライナ90と反対側には、ロック機構10が設けられ、ロック機構10の上部には、ロック機構10をロック状態に付勢する付勢部材としてのロックスプリング20が設けられている。
【0017】
シートバックフレーム84の上部の片側には、ベース88が固定されている。ベース88には、ロック解除機構30が固定されている。また、ベース88にはピン88aが立設され、ロック解除レバー86がピン88aを中心にマニュアルレバー85と一体として回動自在に設けられている。ロック解除レバー86は、ワイヤにより左右のロック機構10に連係されている。
【0018】
ロック解除機構30は電動モータ31を有しており、電動モータ31は制御装置52に電気的に接続されている。制御装置52は操作スイッチ50及び定電圧電源回路51に電気的に接続されている。操作スイッチ50は、電動モータ31に通電してロック解除機構30を初期位置から動作位置へと解除動作させるものであり、定電圧電源回路51は、バッテリ電圧を所定電圧に安定させて制御装置52に供給するものである。
【0019】
次に、各部について詳説する。図3はロック機構10の正面図であり、図4はロック機構10の断面図である。ロック機構10は、リクライニングアーム11、ラチェット12、前傾スプリング13、ポール14、リリースプレート15及びカム16を有している。リクライニングアーム11は、シートバックフレーム84に固定され、リクライニングアーム11に装着されたカバー11aとともに収納スペース11bを形成している。収納スペース11bには円盤状のラチェット12が回動可能に収納されており、ラチェット12には同心円上に6個の貫通孔12aが貫設されている。この貫通孔12aにラウンドリクライナ90の内歯部材のボス部が挿入されて溶接されることにより、ラチェット12と内歯部材とが固定されている。
【0020】
また、収納スペース11bの外側には、一端がラチェット12に係止され、他端がリクライニングアーム11に係止された前傾スプリング13が設けられている。この前傾スプリング13により、リクライニングアーム11がアジャスタアーム87に近づく方向に付勢されている。したがって、ロック機構10がロック解除状態とされると、前傾スプリング13によりリクライニングアーム11がラチェット12に対して相対的に回転してシートバック82が前傾される。
【0021】
ラチェット12の上方の収納スペース11bには、リクライニングアーム11に立設されたピン17を中心として回動自在にされたポール14が収納されている。ポール14には凸部14aが形成され、この凸部14aがラチェット12の外周に形成された凹部12aに嵌合するようになっている。ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとが嵌合するとロック機構10がロック状態とされ、凸部14aと凹部12aとの嵌合が外れるとロック機構10がロック解除状態とされる。
【0022】
ポール14の上方の収納スペース11bには、リクライニングアーム11に立設されたピン18を中心として回動自在にされたリリースプレート15とカム16とが一体として収納されている。カム16は反時計方向(図3)に回転することにより、ポール14に当接して押し下げ、ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとを嵌合させる。また、カム16は時計方向(図3)に回転することにより、カム16とポール14との当接を解除して、ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとの嵌合を解除可能にしている。リリースプレート15には長孔15aが設けられており、長孔15aにはポール14に立設された解除ピン14bが貫通している。この長孔15aは、ピン18の中心から同心円上に穿設された第1孔部15bと、第1孔部15bの一端と連続し、右上方(図3)に向かって穿設された第2孔部15cとからなっている。リリースプレート15が時計方向(図3)に回転し、解除ピン14bが第2孔部15cによって時計方向(図3)に回転されると、ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとの嵌合が解除される。なお、解除ピン14bが第1孔部15bにある間はポール14は回転されることはない。
【0023】
ピン18の周りには、一端がピン18に係止され、他端がリリースプレート15及びカム16に係止されたロックスプリング20が配設されている。これにより、リリースプレート15及びカム16は、ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとを嵌合させる方向に付勢されている。
【0024】
ロック解除機構30は、図5に示すように、電動モータ31、ウォームギヤ32、ヘリカルギヤ33、ピニオンギヤ34、大ギヤ35、小ギヤ36、セクタギヤ37及び出力リンク38を有している。電動モータ31の出力軸にはウォームギヤ32が設けられ、ウォームギヤ32にはヘリカルギヤ33が噛合している。ヘリカルギヤ33には、同軸でピニオンギヤ34が固定され、ピニオンギヤ34には大ギヤ35が噛合している。また、大ギヤ35には同軸で小ギヤ36が固定され、小ギヤ36にはセクタギヤ37が噛合している。さらに、セクタギヤ37には同軸で出力リンク38が固定されている。図5に示す出力リンク38は初期位置を示している。この状態から、電動モータ31に通電して出力軸を正転させると、電動モータ31の出力軸の回転は、ウォームギヤ32、ヘリカルギヤ33、ピニオンギヤ34、大ギヤ35、小ギヤ36、セクタギヤ37を介して、減速して出力リンク38に伝達される。そして、出力リンク38は、矢印で示すように、時計方向(図5)に回転される。なお、出力リンク38を反時計方向(図5)に回転させると、出力リンク38の回転は、セクタギヤ37、小ギヤ36、大ギヤ35、ピニオンギヤ34、ヘリカルギヤ33、ウォームギヤ32を介して伝達され、電動モータ31の出力軸が逆転される。
【0025】
図6は、ロック解除機構30をケース40に収納し、図5における下方から見た図である。ただし、ケース40は、ウォームギヤ32、ヘリカルギヤ33、ピニオンギヤ34、大ギヤ35、小ギヤ36、セクタギヤ37及び電動モータ31を収納するものであり、出力リンク38はケース40の外側に配設される。また、図6においては、電動モータ31、ウォームギヤ32、ヘリカルギヤ33、ピニオンギヤ34、大ギヤ35、小ギヤ36を省略している。ケース40の凹部41には樹脂が充填され、凹部41の両端には初期位置及び動作位置を定めるストッパ42が設けられている。
【0026】
図7は、車両用シート装置の電気的接続図である。操作スイッチ50はワンショットタイマ53の入力に接続され、ワンショットタイマ53の出力はリレー駆動回路54の入力に接続されている。また、リレー駆動回路54の出力はリレー55のコイルに接続されている。一方、リレー55のノーマルオープン端子は定電圧電源回路51に接続され、リレー55のコモン端子は電動モータ31に接続されている。ここで、ワンショットタイマ53、リレー駆動回路54及びリレー55により制御装置52が構成され、制御装置52が「時制手段」である。なお、ワンショットタイマ53及びリレー駆動回路54の電源は、定電圧電源回路51から供給されている。図7において、操作スイッチ50が押されると、ワンショットタイマ53から時間Tの間、タイマ出力信号が出力される。このタイマ出力信号は、リレー駆動回路54により電流増幅され、リレー55のコイルに時間Tの間、リレー駆動電流が流れる。その結果、時間Tの間、リレー55のノーマルオープン端子がコモン端子と接続され、電動モータ31が駆動される。
【0027】
次に、以上の構成をした車両用シート装置における動作を説明する。図8は、シートバック82がシートクッション81に対して所定角度位置で保持された状態を示している。ピン88aの周りには図示しないスプリングが配設され、これによりロック解除レバー86が時計方向(図8)に付勢される。さらにロック解除機構30の出力リンク38が反時計方向(図8)に付勢され、ロック解除機構30が初期位置にある。また、ロックスプリング20により、リリースプレート15及びカム16が反時計方向(図8)に付勢されている。これにより、カム16がポール14に当接してポール14を押し下げ、ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとを嵌合させ、ロック機構10がロック状態とされている。
【0028】
操作スイッチ50が押されると、制御装置52により時間Tの間だけ電動モータ31が駆動され、出力リンク38が時計方向(図9)に回転されて、ロック解除機構30が動作位置になる。この際、ストッパ42により、ロック解除機構30の動作位置が確実に定められる。このロック解除機構30の解除動作により、出力リンク38とロック解除レバー86とを連結するワイヤが引かれ、ロック解除レバー86が反時計方向(図9)に回転される。また、ロック解除レバー86とリリースプレート15とを連結するワイヤが上方に引かれ、リリースプレート15及びカム16が時計方向(図9)に回転される。この際、解除ピン14aが第1孔部15b内にある間はポール14は回転されず、カム16とポール14との当接が解除されるのみである。そして、解除ピン14aが第2孔部15c内に入ると、解除ピン14aが時計方向(図9)に回転され、ポール14が時計方向(図9)に回転される。これにより、図9に示すように、ポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとの嵌合が解除され、ロック機構10がロック解除状態とされる。そして、前傾スプリング13の付勢力により、リクライニングアーム11がポール14を伴って図9示反時計方向にラチェット12に対して相対的に回転され、シートバック82がシートクッション81に対して前傾される。そして、時間T経過後は、ロックスプリング20の付勢力により、ポール14の凸部14aとラチェット12の外周(凹部12a以外の部分)とが当接される。
【0029】
シートバック82が起こされると、リクライニングアーム11が戻され、ロックスプリング20の付勢力によりポール14の凸部14aとラチェット12の凹部12aとが嵌合される。また、ロックスプリング20の付勢力により、リリースプレート15及びカム16が反時計方向(図8)に回転される。これにより、ロック解除レバー86とリリースプレート15とを連結するワイヤが下方に引かれ、ロック解除レバー86が時計方向(図8)に回転される。また、出力リンク38とロック解除レバー86とを連結するワイヤが引かれ、ロック解除機構30の出力リンク38が反時計方向(図8)に回転される。こうして、図8に示すように、ロック解除機構30が初期位置に戻され、ロック機構10がロック状態とされる。この際、ストッパ42により、ロック解除機構30の初期位置が確実に定められる。
【0030】
実施形態に係る車両用シート装置においては、操作スイッチ50の操作により、電動モータ31に通電されてロック解除機構30が初期位置から動作位置へと解除動作される。これにより、ロック機構10がロック状態からロック解除状態とされ、シートバック82がシートクッション81に対して前傾される。その後、シートバック82が起こされ、ロック機構10がロック解除状態からロック状態にされると、ロックスプリング20によりロック解除機構30が動作位置から初期位置へと復帰動作される。そのため、次に操作スイッチ50が操作される際には、すでにロック解除機構30が初期位置に復帰されている。したがって、この車両用シート装置によれば、誤動作させてしまった場合や、シートバック82を戻そうとした場合でも、すぐに元の状態にすることができる。また、この車両用シート装置では、乗員が操作スイッチ50を押すことにより、制御装置52によってシートバック82のロック解除、ロック解除保持が自動的に行われるため、操作スイッチ50の操作が簡単であり、操作ミスが生じ難い。さらに、この車両用シート装置では、制御装置52による電動モータへ31の通電時間を調整しているため、ロック解除及びロック解除保持時間を変更することができるのみならず、リミットスイッチが不要であり車両用シート装置全体としての大型化を防止でき、各部品の配置の自由度も確保することができる。
【0031】
また、この車両用シート装置においては、ロック解除機構30には、初期位置及び動作位置を定めるストッパ42が設けられているため、慣性力を抑えて、原点復帰誤差を低減させることができる。
【0032】
さらに、この車両用シート装置においては、制御装置52により電動モータ31への通電がなされていない間は、電動モータ31への電源供給回路が開いているため、電動モータ31による抵抗を防止でき、小さな力でロック解除機構30を初期位置へ復帰させることができる。
【0033】
以上、本発明の車両用シート装置を実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態の車両用シート装置の斜視図。
【図2】実施形態の車両用シート装置の概要図。
【図3】実施形態の車両用シート装置に係り、ロック機構の正面図。
【図4】実施形態の車両用シート装置に係り、図3におけるIV−IV矢視断面図。
【図5】実施形態の車両用シート装置に係り、ロック解除機構の斜視図。
【図6】実施形態の車両用シート装置に係り、ロック解除機構の正面図。
【図7】実施形態の車両用シート装置の電気的接続図。
【図8】実施形態の車両用シート装置に係り、ロック状態を示す図。
【図9】実施形態の車両用シート装置に係り、ロック解除状態を示す図。
【符号の説明】
【0035】
10…ロック機構、20…付勢部材(ロックスプリング)、30…ロック解除機構、31…電動モータ、42…ストッパ、50…操作スイッチ、52…時制手段(制御装置)、81…シートクッション、82…シートバック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックをシートクッションに対して所定角度位置で保持するロック状態と、該ロック状態を解除して、前記シートバックを前記シートクッションに対して回動自在に前傾するロック解除状態とをとり得るロック機構と、
該ロック機構に連係され、該ロック機構を前記ロック状態に付勢する付勢部材と、
前記ロック機構に連係され、初期位置から動作位置への解除動作により前記付勢部材に抗して前記ロック機構をロック解除状態へと変遷させるロック解除機構と、を備えた車両用シート装置であって、
前記ロック解除機構は電動モータを有し、該電動モータに通電して前記ロック解除機構を初期位置から動作位置へと解除動作させる操作スイッチと、
該操作スイッチの操作により、前記電動モータへの通電を所定時間維持する時制手段とを有し、
前記シートバックが起こされ、前記ロック機構がロック解除状態からロック状態にされると、前記付勢部材により前記ロック解除機構が動作位置から初期位置へと復帰動作されることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ロック解除機構には、初期位置及び動作位置を定めるストッパが設けられていることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記時制手段により前記電動モータへの通電がなされていない間は、前記電動モータへの電源供給回路が開いていることを特徴とする車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−230532(P2008−230532A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75918(P2007−75918)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】