説明

車両用シート

【課題】簡易な構成で、かつ、収納ボックスへの物品の収納作業性に優れる車両用シートを提供すること。
【解決手段】所定位置において着座部となるシートクッション10と、前記所定位置にあるシートクッション10の後端部上方に設けられる背もたれ部となるシートバック20と、前記所定位置にあるシートクッション10によって上方に向かって開口する収納口31が覆われる収納ボックス30と、を備え、前記シートクッション10は、前記シートバック20の下方に設けられる第一被係合部41に対し前方から係合可能な第一係合部11と、前記第一被係合部41より前方に設けられる第二被係合部42の上方から係合可能な第二係合部12と、を有し、前記第一被係合部41に前記第一係合部11が係合された状態で、前記第二被係合部42に前記第二係合部12が係合されることによって前記シートクッション10が前記所定位置に取り付けられる車両用シート1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、さらに詳しくは、乗員が着座するシートクッションの下方に収納ボックスが設けられた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションの下方に収納ボックスが設けられた車両用シートにおいては、収納ボックスの収納口は所定位置(原位置)にあるシートクッションに覆われている。収納ボックスから荷物等の出し入れを行うときには、シートクッションを回転等させることにより収納ボックスの収納口が開放した状態とする。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、シートクッションの後端部を回動支点としてシートクッションを回転させる構成が記載されている。かかる構成では、シートクッションの後端部上方に設けられたシートバック(背もたれ)に干渉して十分にシートクッションを起こし上げることができないため、荷物等の物品を収納する作業性が悪い(荷物の出し入れがしにくい)という問題がある。一方、下記特許文献2には、シートクッションの前端部を回動支点としてシートクッションを回転させる構成が記載されている。かかる構成おいても、シートクッションを回転させる際、シートバックが回転の妨げとなるという問題がある。
【0004】
これに対し、下記特許文献3には、一旦シートクッションを前方にスライドさせてから、シートクッションを前方に回転させる構成が記載されている。シートクッションを前方にスライドさせると、シートクッションの回転軌跡にシートバックが位置しなくなるため、シートクッションとシートバックの干渉が防止されるという構成である。しかし、下記特許文献3の構成では、スライドアジャスタ機構等が必要となり、構成が複雑になってしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−91100号公報
【特許文献2】特開平7−40784号公報
【特許文献3】特開2001−128790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、シートクッションの下方に収納ボックスが設けられた車両用シートであって、簡易な構成、かつ、収納ボックスへの物品の収納作業性に優れる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、所定位置において着座部となるシートクッションと、前記所定位置にあるシートクッションの後端部上方に設けられる背もたれ部となるシートバックと、前記所定位置にあるシートクッションによって上方に向かって開口する収納口が覆われる収納ボックスと、を備える車両用シートにおいて、前記シートクッションは、前記シートバックの下方に設けられる第一被係合部に対し前方から係合可能な第一係合部と、前記第一被係合部より前方に設けられる第二被係合部の上方から係合可能な第二係合部と、を有し、前記第一被係合部に前記第一係合部が係合された状態で、前記第二被係合部に前記第二係合部が係合されることによって前記シートクッションが前記所定位置に取り付けられることを要旨とする。
【0008】
本発明にかかる車両用シートは、シートクッションが有する第一係合部を第一被係合部に、第二係合部を第二被係合部に係合させることによって所定位置(収納ボックスの収納口を覆う位置)にシートクッションを取り付けることができ、両係合部を両被係合部から外すことで、シートクッション全体を取り外すことができるという簡易な構成である。そして、シートクッション全体を取り外すことができるため、収納ボックスへの物品の収納作業性に優れる。また、シートバックの下方に設けられる第一被係合部に対して前方から第一係合部を係合させる構成であるため、シートクッションの着脱に際してシートバックが妨げとならない。つまり、シートクッションの着脱作業性にも優れる。
【0009】
また、前記第一被係合部は、前記収納ボックスの内側における後端部に設けられ、前記第二被係合部は、前記収納ボックスの内側における前端部に設けられているとよい。
【0010】
このように両被係合部が収納ボックスの内側に設けられていれば、シートクッションが所定位置にある場合(シートクッションを着座部として使用する状態)においては、両被係合部がシートクッションに完全に覆われ露出しないから、意匠性に優れる。また、両被係合部は収納ボックスの前後両端部に設けられているから、収納ボックスに物品を出し入れする際、両被係合部が邪魔にならない。
【0011】
また、前記第一被係合部および前記第二被係合部は、前記収納ボックスの幅方向両内側面に両端が接続された幅方向に延びる軸部材であり、前記第一係合部は、前記第一被係合部を構成する軸部材が内側に係合可能である後方に向かって開口した二股状の部材であり、第二係合部は、前記第二被係合部を構成する軸部材が内側に係合可能である下方に向かって開口した二股状の部材であるとよい。
【0012】
このように、両被係合部を軸部材とし、両係合部をこの軸部材が挟まれるような二股状の形状とすれば、着脱自在のシートクッションをより簡易な構成とすることができる。さらに、第一係合部はシートクッションの前方への動きのみを許容し、第二係合部はシートクッションの上方への動きのみを許容する構成であるため、所定位置に位置するシートクッションが前後方向および下方へ動きにくく、座り心地がよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートクッションの下方に収納ボックスが設けられた車両用シートにおいて、シートクッション全体を取り外すことができる簡易な構成の車両用シートが得られる。また、シートクッション全体を取り外すことができるため、収納ボックスへの物品の収納作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両用シートの断面図であって、シートクッションが所定位置に位置している状態を示したものである。
【図2】本発明の実施形態にかかる車両用シートの断面図であって、第一係合部と第一被係合部が係合状態にあり、第二係合部と第二被係合部が係合が解消された状態を示したものである。
【図3】本発明の実施形態にかかる車両用シートの断面図であって、第一係合部と第一被係合部、第二係合部と第二被係合部の両方の係合が解消された状態を示したものである。
【図4】本発明の実施形態にかかる車両用シートの断面図であって、シートクッションが取り外された状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態にかかる車両用シート1について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に上下方向とは車両用シート1の上下方向(図1における上下方向)をいい、単に前後方向とは車両用シート1の前後方向(図1における左右方向。車両の進行方向を前とする)をいい、単に幅方向とは車両用シート1の幅方向(上下方向および前後方向に直交する方向)をいう。
【0016】
本発明の実施形態にかかる車両用シート1は、シートクッション10と、シートバック20と、収納ボックス30とを備える。以下、各構成について説明する。
【0017】
シートクッション10は、所定位置(原位置)において乗員の着座部となる部材であり、本体部13と、第一係合部11と、第二係合部12とを有する。本体部13は、クッション材(例えば発泡体)等が表皮(カバー)で覆われてなる部材である。かかる本体部13の下面には、硬質の板材で形成された支持板131が設けられている。支持板131には、第一係合部11および第二係合部12が下方に突出するように固定されている。
【0018】
第一係合部11は、シートクッション10(本体部13)の後端部に固定された金属製の部材であり、本実施形態では、シートクッション10(本体部13)の幅方向両側に一つずつ(計二つ)設けられている。図示されるように、第一係合部11は後方に向かって開口した開口部を有する二股状の部材である。別の見方をすれば、半円を後方に向かって延ばした形状(略U字状)に切り欠かれてなる空間が形成された部材である。かかる空間には、詳細を後述する第一被係合部41が係合可能である。一方、第二係合部12は、シートクッション10(本体部13)の前端部に固定された金属製の部材であり、本実施形態では、第一係合部11と同様に、シートクッション10(本外部)の幅方向両側に一つずつ(計二つ)設けられている。図示されるように、第二係合部12は下方に向かって開口した開口部を有する二股状の部材である。別の見方をすれば、半円を下方に向かって延ばした形状(略U字状)に切り欠かれてなる空間が形成された部材である。かかる空間には、詳細を後述する第二被係合部42が係合可能である。
【0019】
シートバック20は、乗員の背もたれ部となる部材であり、クッション材(例えば発泡体)等が表皮(カバー)で覆われてなる。シートバック20は、所定位置にあるシートクッション10の後端部上方に設けられ、図示されないリクライニング機構により、前後方向に傾倒可能である。
【0020】
収納ボックス30は、硬質の板材で構築された箱状の部材である。収納ボックス30には、上方に向かって開口した収納口31から内部に種々の物品を収納することができる所定の大きさの収納空間32が形成されている。収納ボックス30の平面方向(上下方向に直交する平面方向)の大きさは、シートクッション10の平面方向の大きさとほぼ同じであり、所定位置にあるシートクッション10によって収納口31が覆われる(なお、本実施形態では、厳密には収納口31の後端から一部分はシートバック20によって覆われている)。つまり、シートクッション10が所定位置にあるときには、収納ボックス30から物品を出し入れすることはできない。
【0021】
さらに、収納ボックス30の内側には、第一被係合部41および第二被係合部42が設けられている。第一被係合部41は、収納ボックス30の内側における後端部上方に設けられた断面円形の軸部材である。具体的には、収納ボックス30の幅方向両内側面における後端部上方に両端が接続された軸部材である。すなわち、収納ボックス30の後端部上方を橋渡しするように取り付けられている。第一被係合部41は、その軸径が、第一係合部11の二股部分における内側の空間の大きさ(半円の径)よりも若干小さく形成されている。つまり、第一被係合部41は、第一係合部11の二股部分における内側の空間に係合可能である。一方、第二被係合部42は、収納ボックス30の内側における前端部上方に設けられた断面円形の軸部材である。具体的には、収納ボックス30の幅方向両内側面における前端部上方に両端が接続された軸部材である。すなわち、収納ボックス30の前端部上方を橋渡しするように取り付けられている。第二被係合部42は、その軸径が、第二係合部12の二股部分における内側の空間の大きさ(半円の径)よりも若干小さく形成されている。つまり、第二被係合部42は、第二係合部12の二股部分における内側の空間に係合可能である。なお、本実施形態では、第一被係合部41の軸径と第二被係合部42の軸径は同じである。
【0022】
以上の構成を備える車両用シート1におけるシートクッション10の着脱操作について説明する。まず、シートクッション10が所定位置に位置している状態から、シートクッション10を取り外す操作について説明する。なお、シートクッション10を取り外す操作の各手順については、図1〜図4において実線の矢印で示している。
【0023】
図1に示す状態は、シートクッション10が所定位置に位置している状態であり、シートクッション10の第一係合部11が第一被係合部41に、第二係合部12が第二被係合部42に係合している。このとき、乗員はシートクッション10に着座することができる。また、収納ボックス30の収納口31はシートクッション10に覆われているため、収納ボックス30に物品を出し入れすることはできない。
【0024】
この状態から、図2に示すように第二係合部12と第二被係合部42の係合を解消する。具体的には、シートクッション10の前端部を上方に持ち上げ、第二係合部12を上方に引き上げる。上述したように、第二係合部12は下方に向かって開口した二股状に形成されているため、簡単に第二係合部12を上方に引き上げることができる。これにより、二股部分の内側に位置していた第二被係合部42から第二係合部12が外れる。
【0025】
そして、図3に示すように第一係合部11と第一被係合部41の係合を解消する。具体的には、前端部を上方に持ち上げたシートクッション10を、そのまま前方に引き出す。上述したように、第一係合部11は後方に向かって開口した二股状に形成されているため、簡単に第一係合部11を前方に引き出すことができる。これにより、二股部分の内側に位置していた第一被係合部41から第一係合部11が外れる。
【0026】
このようにして第二係合部12と第二被係合部42の係合、および、第一係合部11と第一被係合部41の係合が解消されれば、図4に示すようにシートクッション10を完全に取り外すことができる。この状態では、収納ボックス30の収納口31が開口した状態(シートクッション10に覆われていない状態)にあるから、収納ボックス30に物品を出し入れすることが可能となる。
【0027】
続いて、取り外されたシートクッション10を所定位置に取り付ける操作について説明する。なお、シートクッション10を所定位置に取り付ける操作の各手順については、図1〜図4において点線の矢印で示している。
【0028】
図4に示すシートクッション10が取り外された状態からシートクッション10を取り付ける際には、まず、図3に示すようにシートクッション10の第一係合部11を第一被係合部41に係合させる。具体的には、第一被係合部41の前方から第一係合部11を係合させるため、シートクッション10(第一係合部11)を手前側から後方に向けて押し出すように操作する。上述したように、第一係合部11は後方に向かって開口した二股状に形成されているため、簡単に第一係合部11を第一被係合部41に係合させることができる。
【0029】
続いて、図2に示すように、第一被係合部41に第一係合部11が係合された状態を維持したまま、シートクッション10の第二係合部12を第二被係合部42に係合させる。具体的には、第二被係合部42の上方から第二係合部12を係合させるため、シートクッション10の前端部(第二係合部12)を引き下げるように操作する。上述したように、第二係合部12は下方に向かって開口した二股状に形成されているため、簡単に第二係合部12を第二被係合部42に係合させることができる。
【0030】
このようにして第二係合部12と第二被係合部42の係合、および、第一係合部11と第一被係合部41の係合が完了すれば、図1に示すようにシートクッション10を所定位置(原位置)に取り付けることができる。この状態では、収納ボックス30の収納口31がシートクッション10に覆われている状態にあるから、収納ボックス30に物品を出し入れすることができない。換言すれば、収納ボックス30内に物品が収納された状態にある。
【0031】
以上説明した本実施形態にかかる車両用シート1によれば、次のような作用効果が奏される。
【0032】
本実施形態にかかる車両用シート1は、シートクッション10に設けられた二股状の第一係合部11、第二係合部12、および、収納ボックス30内に設けられた軸状の第一被係合部41、第二被係合部42によってシートクッション10を着脱自在とした構成である。つまり、装置構成を簡易なものとすることができる。いずれの部材も容易に加工(入手)できる部材であるため、コストも抑えられる。さらには、シートクッション10全体を取り外すことができるため、収納ボックス30への物品の出し入れが容易である。
【0033】
また、シートクッション10の着脱操作に関し、シートバック20の下方に設けられる第一被係合部41に対して前方から第一係合部11を係合させる構成である(シートクッション10を取り外す際には第一係合部11を前方に引き出すようにして係合を解消し、シートクッション10を取り付ける際には第一係合部11を後方に押し出すようにして係合させる)ため、シートクッション10の着脱に際してシートバック20が妨げとならない。つまり、シートクッション10の着脱作業性に優れる。
【0034】
また、第一被係合部41および第二被係合部42は、収納ボックス30の内側に設けられているため、シートクッション10が所定位置にある場合(シートクッション10を着座部として使用する状態)においては、両被係合部がシートクッション10に完全に覆われ露出しないから、意匠性に優れる。また、第一被係合部41および第二被係合部42は、収納ボックス30の前後両端部に設けられている(収納口31の中央を分断するように被係合部が設けられていない)から、収納ボックス30に物品を出し入れする際、両被係合部が邪魔にならない。
【0035】
さらに、本実施形態は、軸部材である第一被係合部41および第二被係合部42に対して、二股状の第一係合部11および第二係合部12が係合する構成であり、第一係合部11は、後方に向かって開口し、第二係合部12は下方に向かって開口した形状である。つまり、第一係合部11はシートクッション10の前方への動きのみを許容し、第二係合部12は、シートクッション10の上方への動きのみを許容する構成である。かかる構成であるため、所定位置に位置するシートクッション10が前後方向および下方へ動きにくく、座り心地がよい。つまり、本実施形態にかかる車両用シート1は、容易に着脱できる構成であるものの、所定位置においてはシートクッション10のがたつき等が生じることのない構成である。
【0036】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用シート
10 シートクッション
11 第一係合部
12 第二係合部
20 シートバック
30 収納ボックス
31 収納口
41 第一被係合部
42 第二被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置において着座部となるシートクッションと、
前記所定位置にあるシートクッションの後端部上方に設けられる背もたれ部となるシートバックと、
前記所定位置にあるシートクッションによって上方に向かって開口する収納口が覆われる収納ボックスと、を備える車両用シートにおいて、
前記シートクッションは、
前記シートバックの下方に設けられる第一被係合部に対し前方から係合可能な第一係合部と、
前記第一被係合部より前方に設けられる第二被係合部の上方から係合可能な第二係合部と、を有し、
前記第一被係合部に前記第一係合部が係合された状態で、前記第二被係合部に前記第二係合部が係合されることによって前記シートクッションが前記所定位置に取り付けられることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記第一被係合部は、前記収納ボックスの内側における後端部に設けられ、前記第二被係合部は、前記収納ボックスの内側における前端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第一被係合部および前記第二被係合部は、前記収納ボックスの幅方向両内側面に両端が接続された幅方向に延びる軸部材であり、
前記第一係合部は、前記第一被係合部を構成する軸部材が内側に係合可能である後方に向かって開口した二股状の部材であり、
前記第二係合部は、前記第二被係合部を構成する軸部材が内側に係合可能である下方に向かって開口した二股状の部材であることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−162120(P2012−162120A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22239(P2011−22239)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】