説明

車両用シート

【課題】シートバックを大倒しするレバー操作とシートバックを中間位置まで倒すレバー操作とで、操作性に差が出ないようにする。
【解決手段】シートバック2を前方側の大倒し位置まで倒し込む大倒し操作と、この大倒し位置よりも手前側の中間位置まで倒し込むウォークイン操作と、が可能な車両用シート1であり、解除レバー4と、ストッパリンク7と、切替レバー6と、を有する。解除レバー4は、シートバック2の背凭れ角度の固定状態を解除して、シートバック2を前倒し可能な状態にする。ストッパリンク7は、シートバック2の倒し込み位置を中間位置に係止させて規制する。切替レバー6は、ストッパリンク7を係止機能させる状態と係止機能させない状態とに切り替える。切替レバー6の切替え操作によって、解除レバー4の操作によるシートバック2の倒し込みの係止位置が大倒し位置と中間位置とに切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックを前方側の大倒し位置まで倒し込む大倒し操作と、この大倒し位置よりも手前側の中間位置まで倒し込むウォークイン操作と、が可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックの肩口に2つのレバーが並んで設けられ、一方のレバーを引くことでシートバックを大倒し、他方のレバーを引くことでシートバックをウォークイン状態、すなわち中間位置まで倒し込んでシート本体を前方側へスライドさせられる状態にすることができる技術が開示されている(特許文献1)。具体的には、外側に配されたレバーが、大倒し操作用のレバーとされ、内側に配されたレバーが、ウォークイン操作用のレバーとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4447515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、内側に配されたレバーは、外側に配されたレバーよりも掴みにくく、操作性に差が出る使用性の悪いものとなっている。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバックを大倒しするレバー操作とシートバックを中間位置まで倒すレバー操作とで、操作性に差が出ないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックを前方側の大倒し位置まで倒し込む大倒し操作と、この大倒し位置よりも手前側の中間位置まで倒し込むウォークイン操作と、が可能な車両用シートであり、解除レバーと、ストッパと、切替レバーと、を有する。解除レバーは、シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除して、シートバックを前倒し可能な状態にする。ストッパは、シートバックの倒し込み位置を中間位置に係止させて規制する。切替レバーは、ストッパを係止機能させる状態と係止機能させない状態とに切り替える。切替レバーの切替え操作によって、解除レバーの操作によるシートバックの倒し込みの係止位置が大倒し位置と中間位置とに切り替えられるようになっている。
【0006】
この第1の発明によれば、シートバックの大倒し操作とウォークイン操作は、共に、解除レバーの操作によって行われる。詳しくは、この解除レバーの操作は、切替レバーの切り替え操作によって、ストッパの位置が切り替えられることで、その操作によりシートバックを倒し込める位置が、大倒し位置と、その手前側の中間位置までと、に切り替えられる。このように、レバーを解除レバーと切替レバーとに分けて構成したことにより、シートバックを大倒しするレバー操作とシートバックを中間位置まで倒すレバー操作とで、操作性に差が出ないようにすることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成となっているものである。すなわち、切替レバーは、切替レバーの操作により附勢方向が切り替わるターンオーバー式の第1のバネの附勢力により、ストッパを係止機能させる状態と係止機能させない状態とにそれぞれ切り替えた位置にて保持される構成とされている。ストッパは、切替レバーにケーブルを介して繋がれており、第2のバネの附勢力により係止機能する状態か係止機能しない状態かのいずれか一方に向かって移動附勢された構成とされている。第1のバネによって切替レバーが移動附勢される力が、第2のバネによってストッパが移動附勢される力よりも大きく設定されている。
【0008】
この第2の発明によれば、上記のように第1のバネと第2のバネとの強弱を設定したことにより、切替レバー自体が、第1のバネの附勢力によって、大倒し操作の切替位置とウォークイン操作の切替位置とにそれぞれ安定して保持されるようになる。また、この切替レバーにケーブルを介して繋がれたストッパも、上記各バネの附勢力によって、係止機能する状態と係止機能しない状態の各位置にて安定して保持されるようになる。すなわち、ストッパは、上記第2のバネの附勢力によって、係止機能する状態か係止機能しない状態かのいずれか一方の位置にて安定して保持される。また、ストッパは、上記第2のバネの附勢力に抗して切替レバーによって他方の位置に切り替えられた時には、切替レバーにかかる第1のバネの附勢力によって、上記他方の位置にて安定して保持されるようになる。したがって、切替レバーの切替操作を簡便かつ的確に行えるようにすることができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、解除レバーが、シートバックの外側の肩口に設けられ、切替レバーが、シートバックの外側の側部に設けられているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、シートバックを大倒ししたり中間位置まで倒し込んだりする操作が、車両の乗降ドア側に立った位置や後席側の位置から手を届かせ易いシートバックの外側の肩口に設けられた解除レバーに手を掛けて簡便に行えるようになる。また、上記解除レバーによる操作を大倒し操作からウォークイン操作、或いはウォークイン操作から大倒し操作へと切り替える操作が、上記解除レバーとは混同しないシートバックの側部箇所に設けられた切替レバーに手を掛けて的確に行えるようになる。
【0011】
第4の発明は、上述した第2又は第3の発明において、次の構成となっているものである。すなわち、ストッパは、切替レバーがウォークイン操作の切替位置に切り替えられることで、この切替レバーに繋がれたケーブルが弛められて第2のバネの附勢力によりシートバックの構成部材に押し付けられた状態となり、シートバックの倒れ込みをシートバックに形成された係止突起との当接により係止させることのできる状態となる。そして、ストッパは、切替レバーが大倒し操作の切替位置に切り替えられることにより、ケーブルを介して牽引されて、上記シートバックの構成部材との当接状態から離されて係止機能しない状態となる。
【0012】
この第4の発明によれば、シートバックが大倒し位置に倒し込まれた状態で、切替レバーが誤ってウォークイン操作の切替位置に切り替えられても、ケーブルは、弛められる方向に操作される。したがって、このような誤操作があっても、ケーブルに無理な負荷がかからないため、部品の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の車両用シートの構成を表した斜視図である。
【図2】シートバックを大倒し位置まで倒し込んだ状態を表した側面図である。
【図3】シートバックを中間位置まで倒し込んだ状態を表した側面図である。
【図4】図1のIV-IV線断面図である。
【図5】切替レバーが大倒し操作の切替位置とされた状態を表した車両用シートの要部側面図である。
【図6】図5のVI-VI線断面図である。
【図7】シートバックを大倒し位置まで倒し込んだ状態を表した要部側面図である。
【図8】切替レバーがウォークイン操作の切替位置に切り替えられた状態を表した車両用シートの要部側面図である。
【図9】図8のIX-IX線断面図である。
【図10】シートバックを中間位置まで倒し込んだ状態を表した要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図10を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、3列シートを備えた車両の2列目の座席用シートとして構成され、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えている。上記シートバック2は、図4に示すように、その骨格を成すシートバックフレーム2Fの左右両サイドの下端部が、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置5を間に介して、シートクッション3の骨格を成すシートクッションフレーム3Fの左右両サイドの後端部と連結されている。各リクライニング装置5は、常時は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態に保持されており、図1に示すように、シートバック2の外側(乗降ドアが隣接する側)の肩口に設けられた解除レバー4の前倒し操作をすることにより、それらのロック状態が一斉に解除されて、シートバック2の背凭れ角度を変えられる状態に切り替えられるようになっている。
【0016】
ここで、上記シートバック2は、常時は、シートクッション3との間に掛着された図示しないバネの附勢力により、各リクライニング装置5の中心軸線のまわりに前方側へ倒し込まれる方向に回転附勢された状態とされている。これにより、シートバック2は、上記解除レバー4の操作によって各リクライニング装置5のロック状態が解除されることで、上記バネの附勢力によって前方側へ倒し込まれるようになっている。具体的には、このシートバック2の前方側への倒れ込み回転は、シートバック2の外側の側部に設けられた切替レバー6を上側と下側に切り替える操作によって、2パターンの倒れ込み態様に切り替えられるようになっている。
【0017】
1つ目のパターンとして、図2に示すように、切替レバー6が上側に切り替えられた状態で、解除レバー4が操作されることにより、シートバック2は、シートクッション3の上面部に重なる位置(大倒し位置)まで前方側に大きく倒し込まれるようになっている(以下、この操作を「大倒し操作」と呼ぶ。)。この大倒し操作により、シートバック2の背面が略水平状となるため、シートバック2の背面を荷物置きやテーブルなどの載置台として利用することができるようになる。
【0018】
2つ目のパターンとして、図3に示すように、切替レバー6が下側に切り替えられた状態で、解除レバー4が操作されることにより、シートバック2は、上記図2で示した大倒し位置よりも手前側となる前傾位置(中間位置)まで倒し込まれた状態で係止されるようになっている(以下、この操作を「ウォークイン操作」と呼ぶ。)。そして、このウォークイン操作により、併せて、車両用シート1をフロアに対して前後スライド可能に結合している図示しないスライド装置のロック状態が解除され、車両用シート1が前方側へスライド可能な状態に切り替えられるようになっている。このウォークイン操作により、車両用シート1を、シートバック2を前傾姿勢に切り替えて前方側へスライドさせた退避状態とすることができ、その後列側のシートへの乗降スペースを広く空けた状態とすることができる。
【0019】
以下、上記解除レバー4及び切替レバー6の操作構造、並びにこれらにより作動操作される各機構の構成について説明する。先ず、解除レバー4の構成について説明する。図5に示すように、解除レバー4は、シートバックフレーム2Fの外側の肩口に、軸ピン4Aにより前倒し回転可能に軸連結されて設けられている。この解除レバー4は、常時は、シートバックフレーム2Fとの間に掛着された図示しないバネの附勢力により、起立する方向に附勢された状態とされており、その前倒し操作されていない通常時には、起立した姿勢位置に保持された状態とされている。上記解除レバー4は、第2のケーブル4Bにより、各リクライニング装置5のロック解除の操作を行う操作軸5H同士を一体的に連結しているロッド5Nに接合された解除アーム5Lと接続されている。
【0020】
ここで、第2のケーブル4Bは、管状部材の内部にワイヤー部材が挿通された2重構造とされており、管状部材の各端部が、シートバックフレーム2Fに形成された各掛部2F2,2F3に掛着されて固定され、管状部材の各端部から繰り出されたワイヤー部材の各端部が、解除レバー4の下端部と解除アーム5Lの端部とにそれぞれ掛着された構成とされている。これにより、第2のケーブル4Bは、解除レバー4が前倒し操作されることで、ワイヤー部材が上方側に引張られて、解除アーム5Lを図示反時計回り方向に回転させて、各リクライニング装置5のロック状態を解除するようになっている。
【0021】
ここで、上述した各リクライニング装置5の基本構造について説明する。なお、各リクライニング装置5は、互いに左右対称の向きに配置されているが、双方の基本的な構成は同じものとなっている。したがって、以下では、これらを代表して、一方側のリクライニング装置5の構成についてのみ説明することとする。図4に示すように、リクライニング装置5は、シートクッションフレーム3Fの内側の側部に一体的に結合される円盤形状のラチェット5Aと、シートバックフレーム2Fの外側の側部に一体的に結合される円盤形状のガイド5Bと、を有し、これらラチェット5Aとガイド5Bとが、互いに同軸まわりに相対回転可能な状態に組み付けられて、外周リング5Cにより互いに軸方向に外れ止めされた構成となっている。上記ラチェット5Aとガイド5Bとは、これらの間に組み込まれた外歯を有する2個のポール5Dが、ガイド5Bの中心部に支持されたヒンジカム5Fの軸回転に伴って、同ヒンジカム5Fによりスライド操作されるスライドカム5Eによりラチェット5Aと噛合するよう押圧されたり、ラチェット5Aとの噛合状態から引き戻されたりすることで、互いの相対回転がロックされたり解除されたりする構成となっている。
【0022】
上記ヒンジカム5Fは、常時は、ガイド5Bとの間に掛着されたバネ5Gの附勢力により回転附勢されて、各ポール5Dをラチェット5Aと噛合させた状態に保持した状態となっている。これにより、リクライニング装置5は、常時は、ラチェット5Aとガイド5Bとの相対回転がロックされた状態として、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態となっている。しかし、上記ヒンジカム5Fは、その中心部に挿通されて回転方向に一体的とされた操作軸5Hが、上述した解除レバー4(図1参照)の前倒し操作によって回転操作されることにより、上記バネ5Gの附勢力に抗して回転操作されて、各ポール5Dをラチェット5Aとの噛合状態から外すように引き戻す。これにより、ラチェット5Aとガイド5Bの互いの回転ロック状態が解除されて、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれる。以上が、各リクライニング装置5の基本構造となっている。
【0023】
次に、切替レバー6の構成について説明する。図5〜図6に示すように、切替レバー6は、シートバックフレーム2Fの外側の側部に軸ピン6Aにより回転可能に軸連結されて設けられている。この切替レバー6は、シートバックフレーム2Fの外側の側部に形成されたスリット2F5を通して、その先端側の操作部6Bが、外部に露呈した状態となって設けられ、使用者が、この操作部6Bを把持して、切替レバー6を軸ピン6Aを中心に上下に回転させるように操作を行える構成となっている。具体的には、上記切替レバー6は、図6に示すように、シートバックフレーム2Fに設けられた上ストッパ2F6に当たる位置と、下ストッパ2F7と当たる位置と、の間で上下に回転移動させられるようになっている。
【0024】
ここで、切替レバー6は、シートバックフレーム2Fとの間に、引張バネから成る第1のバネ6Cが掛着されており、このバネ附勢力によって、常時、上下どちらかの回転方向に附勢力がかけられた状態とされている。この第1のバネ6Cは、その一端6C1が、切替レバー6の軸ピン6Aと操作部6Bとの間の中間位置に掛着されており、他端6C2が、上記軸ピン6Aを一端6C1との間に挟み込む離れた位置で、シートバックフレーム2Fに引張り込まれた状態で掛着されている。これにより、第1のバネ6Cは、そのバネ附勢力により、一端6C1に掛着された切替レバー6を、軸ピン6Aを中心に、シートバックフレーム2Fに掛着された他端6C2に向けて引き寄せる方向に回転附勢力を及ぼす構成とされている。
【0025】
上記第1のバネ6Cの附勢力により、切替レバー6は、図6に示すように、その回転位置が、第1のバネ6Cの一端6C1と他端6C2とを結ぶ線分が軸ピン6Aの位置よりも上側に位置する状態のときには、軸ピン6Aを中心に図示反時計回り方向、すなわち上方側へ回転移動する附勢力がかけられた状態とされる。また、切替レバー6は、図9に示すように、その回転位置が、第1のバネ6Cの一端6C1と他端6C2とを結ぶ線分が軸ピン6Aの位置よりも下側に位置する状態のときには、軸ピン6Aを中心に図示時計回り方向、すなわち下方側へ回転移動する附勢力がかけられた状態とされる。このように、切替レバー6は、その上下の移動操作によって、第1のバネ6Cの一端6C1と他端6C2とを結ぶ線分が軸ピン6Aと重なる位置を境界として、切替レバー6を上方側又は下方側へ回転させることにより、第1のバネ6Cにより受ける回転附勢力の方向が上下に切り替えられるようになっている。
【0026】
これにより、切替レバー6は、その上下の移動操作によって、上記境界位置よりも上方側へ移動操作されると、上記第1のバネ6Cの附勢力によって、上ストッパ2F6と当たる位置まで回転して、この位置で保持されるようになっている。また、切替レバー6は、上記境界位置よりも下方側へ移動操作されることにより、第1のバネ6Cの附勢力の方向が切り替わって、その附勢力により、下ストッパ2F7と当たる位置まで回転して、この位置で保持されるようになっている。このように、切替レバー6は、その移動操作によって附勢方向が切り替わるターンオーバー式の第1のバネ6Cの附勢力を受けた構成により、常に、上ストッパ2F6と当たる位置(大倒し操作の切替位置)か、下ストッパ2F7と当たる位置(ウォークイン操作の切替位置)か、のどちらか近い方に向かって移動するように附勢力を受けた切替構造とされている。
【0027】
上記切替レバー6は、第1のケーブル6Dにより、図5に示すシートクッションフレーム3Fに回転可能に軸連結されたストッパリンク7と接続されている。ここで、第1のケーブル6Dが本発明の「ケーブル」に相当し、ストッパリンク7が本発明の「ストッパ」に相当する。この第1のケーブル6Dは、管状部材の内部にワイヤー部材が挿通された2重構造とされており、管状部材の各端部が、図9及び図5に示すように、シートバックフレーム2Fに形成された掛部2F4と、シートクッションフレーム3Fに接合された固定ブラケット3Aの掛部3A1と、にそれぞれ掛着されて固定され、管状部材の各端部から繰り出されたワイヤー部材の各端部が、切替レバー6と、上記ストッパリンク7の図示右側の端部とにそれぞれ掛着された構成とされている。
【0028】
ここで、ストッパリンク7は、図5に示すように、シート前後方向にアームを延出させる形に形成され、その中央部が、軸ピン7Aによりシートクッションフレーム3Fに回転可能に軸連結されて設けられている。このストッパリンク7は、その図示左方側(シート前方側)に延出するアームの先端に、図10において後述するシートバック2の前倒れ回転を中間位置にて係止するための係止ピン7Bが軸方向に突出して設けられ、図示右方側(シート後方側)に延出するアームの先端に、前述した第1のケーブル6Dのワイヤー部材の下端部が掛着されている。上記ストッパリンク7は、その図示右方側(シート後方側)に延出するアームの中間位置と固定ブラケット3Aとの間に、引張バネから成る第2のバネ7Cが掛着されており、この第2のバネ7Cの附勢力によって、常時、軸ピン7Aを中心に図示時計回り方向に回転する附勢力がかけられた状態とされている。
【0029】
しかし、上記第2のバネ7Cは、そのストッパリンク7を回転附勢する力が、図6において前述した第1のバネ6Cが切替レバー6を上方側に附勢して上ストッパ2F6に当てた状態に保持する力よりも弱く働くように設定されている。具体的には、上記の設定は、第2のバネ7Cが第1のバネ6Cよりもバネ力の弱い小型の構成とされていることによって行われている。なお、上記バネの附勢力に強弱をつけるその他の方法として、各バネ6C,7Cの端部の掛着位置をずらして、附勢対象への発揮トルクを強めたり弱めたりする方法が挙げられる。
【0030】
上記バネ力の強弱設定により、図5に示すように、ストッパリンク7は、切替レバー6が上側の切替位置(大倒し操作の切替位置)に切り替えられた状態となっているときには、上記第1のケーブル6Dを介して、第2のバネ7Cの附勢による図示時計回り方向の回転が止められた状態として、係止ピン7Bがシートバックフレーム2Fから下方側に離間した位置に保持されるようになっている。この状態では、係止ピン7Bは、シートバック2が前述した解除レバー4の前倒し操作によって前方側に倒し込まれても、シートバックフレーム2Fの構成部材(後述する係止突起2F1)とは干渉しない状態とされる。したがって、上記切替レバー6が上側の切替位置(大倒し操作の切替位置)に切り替えられた状態で、解除レバー4が操作されることにより、シートバック2は、図7に示すように、シートクッション3の上面部に重なる位置(大倒し位置)まで前方側に大きく倒し込まれることとなる。
【0031】
しかし、図8に示すように、ストッパリンク7は、切替レバー6が下側の切替位置(ウォークイン操作の切替位置)に切り替えられることにより、上記第1のケーブル6Dによる牽引状態が弛められて、第2のバネ7Cの附勢力によって図示時計回り方向に回転し、係止ピン7Bが、シートバックフレーム2Fの下側の周縁部に押し当てられた状態となって保持される。これにより、ストッパリンク7は、シートバック2が解除レバー4の前倒し操作によって前方側に倒し込まれることにより、図10に示すように、係止ピン7Bがシートバックフレーム2Fの前下側の周縁部に突出形成された係止突起2F1と当接して、シートバック2の前倒れ回転を図示された中間位置にて係止させた状態となる。したがって、図8に示すように、上記切替レバー6が下側の切替位置(大倒し操作の切替位置)に切り替えられた状態で、解除レバー4が操作されることにより、シートバック2は、図10に示すように、前傾姿勢となる位置(中間位置)まで倒し込まれたところでその前倒れの回転移動が係止されて保持されることとなる。
【0032】
このように、本実施例の車両用シート1によれば、シートバック2の大倒し操作とウォークイン操作は、共に、解除レバー4の操作によって行われる。詳しくは、この解除レバー4の操作は、切替レバー6の切り替え操作によって、ストッパリンク7の位置が切り替えられることで、その操作によりシートバック2を倒し込める位置が、大倒し位置と、その手前側の中間位置までと、に切り替えられる。このように、レバーを解除レバー4と切替レバー6とに分けて構成したことにより、シートバック2を大倒しするレバー操作とシートバック2を中間位置まで倒すレバー操作とで、操作性に差が出ないようにすることができる。
【0033】
また、第1のバネ6Cにより発揮される切替レバー6を回転附勢する力が、第2のバネ7Cにより発揮されるストッパリンク7を回転附勢する力よりも強く働くように設定したことにより、切替レバー6自体が、第1のバネ6Cの附勢力によって、大倒し操作の切替位置(上側の切替位置)とウォークイン操作の切替位置(下側の切替位置)とにそれぞれ安定して保持されるようになる。また、この切替レバー6に第1のケーブル6Dを介して繋がれたストッパリンク7も、上記各バネ6C,7Cの附勢力によって、係止機能する状態(図8の状態)と係止機能しない状態(図5の状態)の各位置にて安定して保持されるようになる。すなわち、ストッパリンク7は、切替レバー6がウォークイン操作の切替位置に切り替えられて第1のケーブル6Dによる牽引状態が弛められることで、第2のバネ7Cの附勢力によって、係止機能する位置状態(図8の状態)に安定して保持される。また、ストッパリンク7は、上記第2のバネ7Cの附勢力に抗して切替レバー6が大倒し操作の切替位置(図5の状態)に切り替えられることで、切替レバー6にかかる第1のバネ6Cの附勢力によって、第1のケーブル6Dにより牽引された位置状態にて安定して保持されるようになる。したがって、切替レバー6の切替操作を簡便かつ的確に行えるようにすることができる。
【0034】
また、解除レバー4が、シートバック2の外側の肩口に設けられていることにより、シートバック2を大倒ししたり中間位置まで倒し込んだりする操作が、車両の乗降ドア側に立った位置や後席側の位置から解除レバー4に簡単に手を届かせて操作を行うことができる。また、切替レバー6が、解除レバー4とは異なりシートバック2の外側の側部に設けられていることで、解除レバー4による操作を大倒し操作からウォークイン操作、或いはウォークイン操作から大倒し操作へと切り替える操作が、上記解除レバー4と混同を生じさせることなく、切替レバー6に的確に手を掛けて行えるようにすることができる。
【0035】
また、ストッパリンク7は、切替レバー6がウォークイン操作の切替位置(下側の切替位置)に切り替えられることで、この切替レバー6に繋がれた第1のケーブル6Dが弛められて第2のバネ7Cの附勢力によりシートバックフレーム2Fの下側の周縁部に押し付けられた状態となり、シートバック2の倒れ込みをシートバックフレーム2Fに形成された係止突起2F1との当接により係止させることのできる状態となる。そして、ストッパリンク7は、切替レバー6が上側の大倒し操作の切替位置に切り替えられることにより、第1のケーブル6Dを介して牽引されて、上記シートバックフレーム2Fとの当接状態から離されて係止機能しない状態となる。したがって、シートバック2が大倒し位置に倒し込まれた状態で、切替レバー6が誤ってウォークイン操作の切替位置に切り替えられても、第1のケーブル6Dは、弛められる方向に操作される。したがって、このような誤操作があっても、第1のケーブル6Dに無理な負荷がかからないため、部品の損傷を防ぐことができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、解除レバー4は、前に倒し込むタイプの操作構造に限らず、後ろや横に倒し込むタイプのものや、いずれかの方向に起こし上げるタイプのもの、スライド操作するタイプのもの、押し込み或いは引張り操作タイプのものなど、種々のタイプの操作構造を適用することができるものである。また、切替レバーも同様である。また、上記実施例では、ストッパリンク7(ストッパ)が、第2のバネ7Cにより係止機能する状態に向かって移動附勢され、切替レバー6が大倒し操作の切替位置に切り替えられることで、第1のケーブル6D(ケーブル)を介して係止機能しない状態まで牽引されて保持される構成とされたものを示したが、そうでない構成であってもよい。すなわち、ストッパが、第2のバネにより係止機能しない状態に向かって移動附勢され、切替レバーがウォークイン操作の切替位置に切り替えられることで、ケーブルを介して係止機能する状態の位置まで牽引されて保持される構成とされたものであってもよい。また、これに関連して、上記実施例では、切替レバー6が大倒し操作の切替位置に切り替えられる操作によって第1のケーブル6D(ケーブル)が牽引される構成とされたものを示したが、上記ストッパの附勢方向との関係で、切替レバーがウォークイン操作の切替位置に切り替えられる操作によってケーブルが牽引される構成とされたものであってもよい。
【0037】
また、ストッパは、回転移動式の構造でなくてもよく、スライド式等の他の移動構造となっているものであってもよい。また、第1のバネや第2のバネは、引張バネでなくてもよく、圧縮バネや、捩りバネ等の種々のバネを適用することができる。また、解除レバーと切替レバーとが、互いに隣接した箇所に並んで設けられた構成となっているものであってもよいが、その把持操作する部分の大きさや形、操作タイプや操作方向を変えるなどして、解除レバーは、もっぱら、シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除するためのレバーとして、切替レバーは、もっぱら、解除レバーによる操作を大倒し操作からウォークイン操作、或いはウォークイン操作から大倒し操作へと切り替えるためのレバーとして、それぞれ認識されやすい形式のものに形成するすることが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用シート
2 シートバック
2F シートバックフレーム
2F1 係止突起
2F2 掛部
2F3 掛部
2F4 掛部
2F5 スリット
2F6 上ストッパ
2F7 下ストッパ
3 シートクッション
3F シートクッションフレーム
3A 固定ブラケット
3A1 掛部
4 解除レバー
4A 軸ピン
4B 第2のケーブル
5 リクライニング装置
5A ラチェット
5B ガイド
5C 外周リング
5D ポール
5E スライドカム
5F ヒンジカム
5G バネ
5H 操作軸
5L 解除アーム
5N ロッド
6 切替レバー
6A 軸ピン
6B 操作部
6C 第1のバネ
6C1 一端
6C2 他端
6D 第1のケーブル(ケーブル)
7 ストッパリンク(ストッパ)
7A 軸ピン
7B 係止ピン
7C 第2のバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを前方側の大倒し位置まで倒し込む大倒し操作と、該大倒し位置よりも手前側の中間位置まで倒し込むウォークイン操作と、が可能な車両用シートであって、
前記シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除して該シートバックを前倒し可能な状態にする解除レバーと、
前記シートバックの倒し込み位置を前記中間位置に係止させて規制するストッパと、
該ストッパを係止機能させる状態と係止機能させない状態とに切り替える切替レバーと、を有し、
前記切替レバーの切り替え操作によって前記解除レバーの操作による前記シートバックの倒し込みの係止位置が前記大倒し位置と前記中間位置とに切り替えられることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記切替レバーは、該切替レバーの操作により附勢方向が切り替わるターンオーバー式の第1のバネの附勢力により前記ストッパを係止機能させる状態と係止機能させない状態とにそれぞれ切り替えた位置にて保持される構成とされ、前記ストッパは、前記切替レバーにケーブルを介して繋がれており、第2のバネの附勢力により前記係止機能する状態か係止機能しない状態かのいずれか一方に向かって移動附勢された構成とされ、前記第1のバネによって前記切替レバーが移動附勢される力が前記第2のバネによって前記ストッパが移動附勢される力よりも大きく設定されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記解除レバーが前記シートバックの外側の肩口に設けられ、前記切替レバーが前記シートバックの外側の側部に設けられていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−201200(P2012−201200A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67084(P2011−67084)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】