説明

車両用シート

【課題】コストの低廉化を図りつつ、シート表面の美観性を向上させ、十分な送風効果を発揮できる車両用シートを提供する。
【解決手段】フレーム1とパッド22とを有するシートバック2と、少なくともシートバック2の背面部を覆う表覆材11と、を備え、シートバック2に、送風ユニットSUを備えるとともに、シートバック2の背面方向視においてシートバック2の背面部の一部を除く領域であって送風ユニットSUの少なくとも一部の領域に重複する覆い部材Cを、表覆材11の内側において送風ユニットSUから後方に離間した状態でフレーム1に固定支持させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームと該フレームに取り付けられたパッドとを有するシートバックと、少なくともシートバックの背面部を覆う表覆材とを備え、シートバックに、パッドの背面側から前面側に送風する送風ユニットを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用シートに関連する技術としては、例えば、特許文献1に示されたものがある。
この技術は、車両用空調シート装置において、十分な送風量を確保し、騒音による不快感の低減を目的とするものである。具体的には、乗員のクッション作用を行うクッション部材の背面側に、クッション部材の内部に空気を送風する送風ユニットを設けるとともに、送風ユニットの背面側に一定の隙間を保持しつつ板状の保護部材を対向配置する。これにより、乗員が着座して送風ユニットと保護部材との間隔が多少変動した場合でも、送風ユニットと保護部材との間隔が適切に維持され、空気の吸い込み機能が阻害されることを防止する。また、送風ユニットと保護部材との間隔が適切に維持されることで、空気流の騒音が過大となることがなく、乗員が不快感を抱くことを防止しようとするものである。
尚、この技術では、保護部材として、シートの後面全体を覆うことができるサイズであって、空気を取り入れるための孔部が形成された部材が用いられている。
【0003】
一方、車両用シートの後面側の部材に関する技術を開示するものとしては、例えば、特許文献2に示されたものがある。
この技術は、送風ユニットを備えたシートではないが、シートバックにおけるカバーリング作業を簡素化しようとするものである。具体的には、弾性を有する板状部材で形成されたバックボードと、このバックボードに貼り付けた表皮材とを備えており、これらをシートバックに取り付ける際に、バックボードを撓ませつつサイドフレームの取付部に差込み固定するものである。このバックボートはシートバックの全面積を覆うような大きなものではなく、シートバックの中央部から下方部のみを覆う部材である。バックボードの差込部には表皮材が貼り付けられておらず、表皮材そのものはシートの後面全体を覆うよう構成してある。
尚、このバックボードは、乗員がシートパッドを後方に強く押した際には、それにともなって後方に押されたパッド支持バネと当接し、バックボード自身が撓むことで後方への荷重を吸収する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224108号公報
【特許文献2】特開2006−320611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送風ユニットを備えるシートにおいてはその送風機能が最も重要である。その点においては、送風ユニットと保護部材との距離が確実に確保できる点で上記特許文献1の技術は妥当とも考えられる。ただし、空気を取り込む孔部を備えるなど意匠性において必ずしも優れているとは言えず、そのための加工費用も必要となる。
また、保護部材はシートバック後面のほぼ全体を覆うよう樹脂材などで形成され、サイズが大きいため経済性の観点からは十分に合理的なものとは言えない。
【0006】
一方、特許文献2の技術は、バックボードの大きさがコンパクトに構成されているとはいえ、このバックボートは乗員の荷重を受け止めて変形できるようシートフレームに対して摺動自在に構成してある。そのため、シートフレームに対する取り付け位置が不安定なものとなり、当該バックボードを直ちに送風ユニットを備えたシートに適用したとしても空気の流通空間が適切に確保できるかどうかが不明である。
このように、上記従来の公知技術にあっては、送風ユニットを備えたシートをより合理的に構成するにはいまだ改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、送風ユニットの送風機能が十分に発揮されるとともに、経済性および意匠性に優れた車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用シートの第1特徴構成は、フレームと該フレームに取り付けられたパッドとを有するシートバックと、少なくとも前記シートバックの背面部を覆う表覆材と、を備え、前記シートバックに、前記パッドの背面側から前面側に送風する送風ユニットを備えるとともに、前記シートバックの背面方向視において前記シートバックの背面部の一部を除く領域であって前記送風ユニットの少なくとも一部の領域に重複する覆い部材を、前記表覆材の内側において前記送風ユニットから後方に離間した状態で前記フレームに固定支持させてある点にある。
【0009】
本構成によれば、覆い部材を表覆材の内側において送風ユニットから後方に離間した状態でフレームに固定支持させてあるから、例えば、乗員等がシートバックの背面部に接触したとしても、覆い部材がシートバックに近接することがなくなり、送風ユニットと覆い部材や表覆材との空間を十分に確保できる。よって、送風ユニットの背面側からの空気の取り入れ量を十分に確保できる。
【0010】
また、シートバックの背面方向視において送風ユニットの少なくとも一部の領域に重複する覆い部材を表覆材の内側において送風ユニットから後方に離間した状態でフレームに固定支持させてあるから、例えば、乗員等がシートバックの背面部に接触したときに、覆い部材が送風ユニットを保護する。
【0011】
また、シートバックの背面方向視においてシートバックの背面部の一部を除く領域に重複する覆い部材を表覆材の内側において送風ユニットから後方に離間した状態でフレームに固定支持させてあるから、シートバックに表覆材を取り付けたときに、覆い部材によって送風ユニットの後方に表覆材が張設されて表覆材の表面意匠を構成する。よって、送風ユニットの形状が表覆材から浮き出るといったことがなくなる。
【0012】
以上のように、本構成の車両用シートであれば、覆い部材がシートバックの背面部のほぼ全領域を覆う構成に比して覆い部材のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の車両用シートを示す分解斜視図である。
【図2】本発明の車両用シートを示す横断面図である。
【図3】本発明の車両用シートを示す縦断面図である。
【図4】別実施形態における車両用シートから表覆材およびパッドを取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用シートについて説明する。
図1〜図3に示すように、車両用シートは、乗員の臀部を支持する座部1と、乗員の上体を支持するシートバック2と、そのシートバック2を覆う通気性を有する袋状のファブリック11(表覆材の一例)と、を備えて構成してある。
【0015】
座部1は、シートクッションフレーム3と、そのシートクッションフレーム3に取り付けられた座部側のパッド(図示しない)と、を備えている。
【0016】
シートクッションフレーム3は、左右のレール4に沿って前後方向に移動可能に構成してあり、左右のシートフレーム5と、両シートフレーム5の前端同士を連結する前フレーム6と、両シートフレーム5の前側同士を連結する前支持フレーム7と、両シートフレーム5の後側同士を連結する後支持フレーム8と、を備えている。両シートフレーム5の後側上部には、それぞれシートバック2を軸支する略半円状の軸支部9が形成されている。一方の軸支部9の外方側には、シートバック2の角度を調節するリクライニング機構10が装着されている。
【0017】
シートバック2は、シートバックフレーム21と、そのシートバックフレーム21に取り付けられたシートバック側のパッド22と、を備えている。
【0018】
シートバックフレーム21は、下端部がリクライニング軸Xを介して軸支部9に枢支連結してあり、左右の縦フレーム23と、両縦フレーム23の上端同士を連結する上フレーム24と、を備えている。両縦フレーム23には、シートバック側のパッド22を背面側から弾性支持する波状のばね25が掛け渡されている。ばね25は、上下方向に並んで複数(本実施形態では3つ)設けられている。ばね25の背面側には、送風ユニットSUが取り付けられている。送風ユニットSUの位置は、シートバックの背面方向視においてシートバックフレーム21の上下および左右中央部に設定してある。
【0019】
シートバック側のパッド22は、前壁部22aと、その前壁部22aの左右両側端から背面側に延出する両側壁部22bと、前壁部22aの上端から背面側に延出する上壁部22cとを備えて、背面側と下側が開口する矩形板状に構成してある。パッド22をシートバックフレーム21に差し込むと、両縦フレーム23が両側壁部22bに形成された溝部22dに係合する。これにより、パッド22をシートバックフレーム21に取り付けることができる。前壁部22aの上下及び左右中央部には、複数の通気孔22eが形成されている。これにより、図2,図3の矢印に示すように、送風ユニットSUの作動によってパッド22の背面側の空気が通気孔22eを通ってパッド22の前面側に送風される。また、表覆材が通気性を有するファブリック11であるから、シートバック2の背面側からファブリック11を通して送風ユニットSUに空気を円滑に流すことができる。この場合には、表覆材に特別に空気吸入口を設けることも不要である。
【0020】
シートバック2を背面から見た状態においてシートバック2の背面部の上側および下側を除く領域であって送風ユニットSUの全体に重複する領域に樹脂製の覆い部材Cを、覆い部材Cの内側において送風ユニットSUから後方に離間した状態でシートバックフレーム21に固定支持させてある。
【0021】
具体的には、覆い部材Cは横向きの帯板状に構成され、背面側に湾曲する保護部26と、その保護部26の左右両端に形成された略L字状の取付部27とを備えている。保護部26の左右両端側には、折曲部26aが形成されている。取付部27と縦フレーム23とを密着させた状態で左右の縦フレーム23の上下中間部に取付部27をボルト固定することで、覆い部材Cが左右の縦フレーム23に亘って連結される。
【0022】
これにより、例えば、乗員等がシートバック2の背面部のうち、送風ユニットSUに近い部位に接触したとしても、覆い部材Cによって送風ユニットSUが保護される。また、送風ユニットSUと覆い部材Cとの距離が確実に維持される。その結果、送風ユニットSUによってファブリック11が吸引されることがなくなり、送風ユニットSUの背面側からの空気の取り入れ量を十分に確保することができる。ファブリック11の素材としては、通気性を有しつつ送風ユニットSUから透け難くなる織物等が挙げられる。
【0023】
覆い部材Cは、シートバック2の背面方向視においてシートバック2の背面部の上側および下側に対しては設けられないが、シートバック2にファブリック11を取り付けたときに、覆い部材Cによって送風ユニットSUの後方にファブリック11が張設されてファブリック11の表面意匠を構成する。このように、覆い部材Cの大きさはシートバック2に比べて小さいが、この覆い部材Cを送風ユニットSUから離間して設け、その外側にファブリック11を被せ付けるから、送風ユニットSUの形状がファブリック11から浮き出るといったことがなくなる。また、特許文献1のように、覆い部材Cがシートバック2の背面部のほぼ全領域を覆う構成に比して覆い部材Cを極めてコンパクトに構成することができる。
【0024】
また、覆い部材Cは後方に凸となるアーチ状に構成してあるので、覆い部材Cの後方からの外力に対する強度が向上し、覆い部材Cが変形し難くなる。加えて、送風ユニットSUと覆い部材Cとの空間を確保し易くなる。
【0025】
本構成の如く、覆い部材Cをシートバックフレーム21に固定支持させてあれば、乗員がシートバック2に凭れ掛かったときに、送風ユニットSUが前後方向に移動しても、送風ユニットSUは覆い部材Cとは接触しないから、覆い部材Cの形状が浮き上がることがなくなる。
【0026】
〔別実施形態〕
(1)覆い部材Cがシートバック2の背面方向視において送風ユニットSUの一部の領域に重複するように構成してもよい。例えば、図4に示すように、覆い部材Cを金属製の棒状部材で構成してもよい。この場合でも、送風ユニットSUの保護機能を確保可能である。尚、このような場合には、送風ユニットSUの保護機能を高めるために、図4に示すように、覆い部材Cに加えて、送風ユニットSUを覆う箱状のカバー部材31をばね25に取り付けてもよい。カバー部材31の取付方法としては、カバー部材31の角部に係合爪を設け、その係合爪をばね25に固定する方法等が挙げられる。
【0027】
(2)両縦フレーム23の下側同士を連結する下フレームを設け、帯板状に構成された覆い部材C又は棒状部材で構成された覆い部材Cを上フレーム24と下フレームとに亘って上下方向に固定支持させてもよい。さらに、覆い部材Cをシートバックフレーム21における1つのフレームに片持ち支持させてもよい。
【0028】
(3)図1に示した覆い部材Cの上下端縁に、前面側に突出するリブを設けてもよい。これにより、覆い部材Cの剛性が向上し、覆い部材Cが変形し難くなる。加えて、覆い部材Cの端縁部がファブリック11に接触し、ファブリック11が磨耗することを防止できる。
【0029】
(4)表覆材はファブリック11に限られるものではなく、人工皮革や樹脂製の表皮等、種々の部材が使用可能である。
【0030】
(5)覆い部材Cを両縦フレーム23に固定するために、ボルトで固定する構成に代えて、覆い部材Cの両端に係合部を設けて、両縦フレーム23に係合部を係合させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、乗用車、バス、トラック等の各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
2 シートバック
11 表覆材
21 フレーム
22 パッド
SU 送風ユニット
C 覆い部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと該フレームに取り付けられたパッドとを有するシートバックと、
少なくとも前記シートバックの背面部を覆う表覆材と、を備え、
前記シートバックに、前記パッドの背面側から前面側に送風する送風ユニットを備えるとともに、
前記シートバックの背面方向視において前記シートバックの背面部の一部を除く領域であって前記送風ユニットの少なくとも一部の領域に重複する覆い部材を、前記表覆材の内側において前記送風ユニットから後方に離間した状態で前記フレームに固定支持させてある車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206649(P2012−206649A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74923(P2011−74923)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】