説明

車両用シート

【課題】シートバックフレームに、車両の側突に対しては高い支持強度を発揮し、前後衝突に対しては高い衝撃吸収性を発揮することのできる補強構造を設定する。
【解決手段】シートバックフレームの左右両側部間にコネクティングロッド4bと操作軸4aとが一体的に結合された状態で架設された車両用シートである。コネクティングロッド4bと操作軸4aとは、互いの結合部が、シート前後方向に嵌合する凹凸形状とされて、ピン4cの差込みより互いにシート前後方向と幅方向とに面当接した状態として保持されており、車両側突等の発生によりシート側方からの衝撃力を受けてもシート幅方向に真っ直ぐな状態を維持して補強部材として機能するが、車両後突等の発生によりシート前方からの衝撃力を受けることで、コネクティングロッド4bがピン4cを変形させながら操作軸4aからシート後方側に離間する形で変位する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックの左右両サイドの下部フレーム間にロッドが架設された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックフレームの両サイドフレーム間に、補強パイプが架設された構成が知られている(特許文献1)。この補強パイプは、2本のパイプ材が中央で1つに繋ぎ合わされた構成となっており、車両の後突発生時には、着座乗員がシートバックに圧し掛かる強い衝撃力を受けることで上記繋ぎ部分が変形する衝撃吸収部材として機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−145538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、2本のパイプ材の繋ぎ部分をそれぞれ平板状にして重合させた構成であるため、車両の側突発生時にも、座屈方向に変形し易い構成となっている。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバックフレームに、車両の側突に対しては高い支持強度を発揮し、後ろからの衝突に対しては高い衝撃吸収性を発揮することのできる補強構造を設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックの左右両サイドの下部フレーム間にロッドが架設された車両用シートである。ロッドは、そのシート幅方向の中央部と側部とが、互いにシート前後方向に嵌合する凹凸形状に分割された形状とされており、これらの間に跨って設けられる結合部材により互いにシート前後方向と幅方向とに面当接した状態に保持された構成とされている。上記中央部と側部とは、車両側突等の発生によりシート側方からの衝撃力を受けても、互いのシート幅方向に面当接した構成と結合部材による結合構造とによって、両下部フレーム間でシート幅方向に真っ直ぐな状態を維持してシートバックの構造強度を担保する補強部材として機能する構成とされる。しかし、上記中央部と側部とは、車両後突等の発生により着座乗員がシートバックに圧し掛かるような、シート前方からの衝撃力を受けることで、中央部が側部からシート後方側に離間する形で結合部材を変形させながら変位する構成となっている。
【0006】
この第1の発明によれば、ロッドは、常時はその中央部と側部との面当接構造と結合部材による結合構造とによって、シートバックの下部フレーム間でシート幅方向に真っ直ぐな状態を維持するように保持される。この保持状態は、車両側突等の発生によりロッドにシート側方からの衝撃力が入力されても維持され、ロッドはシートバックの構造強度を担保する補強部材として機能する。しかし、上記の保持状態を形成している結合部材は、車両後突等の発生によって着座乗員がシートバックに圧し掛かるようなシート前方からの衝撃力が入力されることにより変形し、この変形によりロッドの中央部が側部に対してシート後方側へ離間する形で変位して、着座乗員の凭れ掛かりが受け入れられる状態となる。このように、シートバックフレームに、車両の側突に対しては高い支持強度を発揮し、後ろからの衝突に対しては高い衝撃吸収性を発揮することのできる補強構造を設定することができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成となっているものである。すなわち、ロッドが、シートバックの左右両サイドの下部フレームに設定される各リクライニング装置の操作軸に連結されて、各操作軸による各リクライニング装置のロック解除操作を同期させるコネクティングロッドとして機能するように構成されている。上記コネクティングロッドが上述した中央部として、各操作軸が上述した側部として、それぞれ互いに結合部材により一体的に回動するように結合された構成とされている。
【0008】
この第2の発明によれば、通常時、補強部材として機能するロッドを、各リクライニング装置のロック・アンロックの動作を同期させるためのコネクティングロッドとして合理化して構成することができる。また、上記コネクティングロッドと各操作軸との連結部に、結合部材による結合構造を設定したことにより、かかる結合構造を両者の嵌合構造を利用した箇所に合理的に構成して設定することができる。また、上記コネクティングロッドは、車両後突の発生によって結合部材が変形して、各操作軸に対してシート後方側へ移動しても、各操作軸の配設向き自体は変わらず互いに同軸線上の位置に向けられた状態に保たれるため、後突発生後にもコネクティングロッドを介して各リクライニング装置のロックを解除する動作を行うことができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、次の構成となっているものである。すなわち、結合部材が、ロッドの中央部と側部との凹凸形状が嵌合した両部位に跨って高さ方向に貫通して差し込まれる差込部材として構成されている。
【0010】
この第3の発明によれば、結合部材が上記のように高さ方向に貫通して差し込まれる差込部材として構成されることにより、ロッドの中央部と側部との結合構造を、シート前方からの衝撃力に対して曲げ変形しやすい構成として簡便に具現化して構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の車両用シートの概略構成を示した斜視図である。
【図2】車両用シートの側面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】車両後突の発生によってロッドが変形した状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、自動車の助手席シートとして構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を有する。シートバック2は、その左右両側の下端部が、車両のフロア上に設置されたシートクッション3の左右両側の各後端部に対して、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置4を間に介して連結された構成となっている。
【0014】
上記各リクライニング装置4は、詳しくは、シートバック2の骨格を成すシートバックフレーム2aの左右両側の下端部と、シートクッション3の骨格を成すシートクッションフレーム3aの左右両側の後端部と、の間にそれぞれ介設され、これらを互いに同軸回りに相対回転可能な状態となるように連結している。これにより、シートバック2が、シートクッション3に対して、シート前後方向に背凭れ角度を調節させられる状態に連結された状態とされている。上記各リクライニング装置4は、それらの内部に備えられた回転止め構造(ロック構造)によって、シートバック2の背凭れ角度を変化させられる状態(アンロック状態)とロックした状態とに切り替えられるようになっている。
【0015】
詳しくは、各リクライニング装置4は、それらの中心部に挿通された各操作軸4aの軸回転操作により、ロック・アンロックの各状態に切り替えられるようになっており、各操作軸4aがコネクティングロッド4bによって互いに一体的に連結されていることにより、互いのロック・アンロックの切替え操作が左右で同期して一斉に行われるようになっている。
【0016】
上記各リクライニング装置4は、常時は、後述するバネの附勢構造によってロックした作動状態に保持されており、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態に保持されている。そして、このシートバック2の背凭れ角度の固定状態は、シートクッション3の車両外側(図1の紙面右側)の側部に配設された解除レバー5を引き上げる操作によって、各操作軸4aが一斉に軸回動操作されて解除されるようになっている。この解除操作により、シートバック2がその背凭れ角度位置を自由に調節することができる状態となる。また、上記の解除操作をやめることにより、各リクライニング装置4が再びそれらのバネ附勢構造によってロックした状態に戻されて、シートバック2の背凭れ角度が固定された状態に戻されるようになっている。
【0017】
ここで、上記シートバックフレーム2aの左右両側部とシートクッションフレーム3aの左右両側部との間には、シートバック2を常時、シート前方側に向かって回転附勢する渦巻きバネ6が掛着されている。これら渦巻きバネ6は、図2に示すように、それらの内側の端部6aが、シートクッションフレーム3aの左右両外側の側部に結合されたL字板3bの両外側に張り出す板部の前縁部に掛着されて固定されており、外側の端部6bが、シートバックフレーム2aの左右両外側の側部に結合されたL字板2bの両外側に張り出す板部の後縁部にそれぞれ掛着されて固定されている。
【0018】
これら渦巻きバネ6の附勢力により、シートバック2は、その背凭れ角度の固定状態が解かれると、着座乗員の背部に当たる位置まで起こし上げられて、着座乗員の背部が前後に傾動される動きに追従してその背凭れ角度位置を自由に変動させられる状態となる。ここで、上記シートバック2の回転可能領域は、上述したシートバックフレーム2aの左右両外側の側部に結合されたL字板2bの前縁部又は後縁部が、シートクッションフレーム3aの左右両側部の前部又は後部に突出して形成された前倒れストッパ3d1又は後倒れストッパ3d2と当たる位置間の領域として設定されている。
【0019】
ところで、上述した各リクライニング装置4は、図3に示すように、円盤形状のラチェット10及びガイド20と、これらの間に挟まれて配設される図示しないロック部品と、ロック部品をロック・アンロック作動させるヒンジカム30と、ヒンジカム30を常時ロック作動させる方向に回転附勢するロックスプリング40と、ラチェット10とガイド20とを組み付けた状態に保持する外周リング50と、を有する構成となっている。ラチェット10は、その円盤部11の外周部に、板厚方向(軸方向)に円筒状に突出する円筒部12が形成された構成となっている。このラチェット10の中心部には、丸孔状の貫通孔13が板厚方向に貫通して形成されている。ガイド20は、上記ラチェット10よりもひとまわり大きな円盤形状に形成されており、その円盤部21の外周部には、ラチェット10への組み付け方向となる板厚方向(軸方向)に円筒状に突出する円筒部22が形成された構成となっている。このガイド20の中心部にも、丸孔状の貫通孔23が板厚方向に貫通して形成されている。
【0020】
上記ラチェット10とガイド20とは、互いの円筒部12,22同士を軸方向に嵌め込むように組み付けられることにより、互いの円筒部12,22同士が径方向の内外に緩やかに嵌まり合った状態となって、互いに相対回転可能に内外に支え合った状態となって組み付けられる。そして、この組み付けたラチェット10とガイド20との外周部間に、外周リング50を跨らせて組み付けることにより、ラチェット10とガイド20とが互いに軸方向に外れ止めされた状態となって保持されている。上記ラチェット10は、その外側の板面が、シートバックフレーム2aの外側の板面に一体的に結合されて組み付けられており、ガイド20は、その外側の板面が、シートクッションフレーム3aの内側の板面に一体的に結合されて組み付けられている。これにより、各リクライニング装置4が、シートバックフレーム2aの各側部をシートクッションフレーム3aの各側部に対して、互いに同軸まわりに回転可能となるように軸支した状態として、これらを連結した状態となって組み付けられている。
【0021】
上記ラチェット10とガイド20との間には、これらの相対回転をロックしたり解除したりする図示しないロック部品が設けられている。具体的には、上記図示しないロック部品は、ガイド20に対して、半径方向の内外方にしか移動できないように円周方向に支えられた状態としてセットされている。上記ロック部品は、ガイド20の中心部に回転可能に軸支されたヒンジカム30の一方向又は他方向の回動により、半径方向の外側に押し出されてラチェット10の円筒部12の内周面(歯面)に押し付けられて噛合されたり、半径方向の内側に引き戻されて噛合状態から外されたりするように操作されるようになっている。
【0022】
上記ヒンジカム30の回転によりロック部品がラチェット10の円筒部12の内周面と噛合することにより、リクライニング装置4は、そのラチェット10とガイド20との間の相対回転が規制された状態(ロック状態)となる。すなわち、上記ロック部品は、ガイド20との関係においては、半径方向の内外方にしか移動できないように円周方向に支えられた状態となっており、このようなロック部品がラチェット10と噛合して回転方向に一体的な状態となることにより、ラチェット10とガイド20とが上記ロック部品を介して互いの相対回転がロックされた状態となる、ということである。
【0023】
上述したヒンジカム30は、その一部が、ガイド20の中心部に貫通形成された丸孔状の貫通孔23内に挿通されて、ガイド20に対して回転可能に軸支された状態とされている。そして、上記ヒンジカム30は、常時は、ガイド20との間に掛着されたロックスプリング40の附勢力によって、一の回転方向に附勢された状態とされており、この附勢に伴う回動によって、常時は、上述した図示しないロック部品を半径方向の外側に押し出してリクライニング装置4をロックさせた状態として保持された状態となっている。
【0024】
上記ヒンジカム30は、その軸心部に挿通された操作軸4aが、前述した解除レバー5の引き上げ操作によって、上記ロックスプリング40の附勢力に抗した方向に回動操作されることにより、上述した図示しないロック部品をラチェット10との噛合状態から外して、リクライニング装置4のロック状態を解除するようになっている。ここで、上述した各操作軸4aは、上述した各リクライニング装置4の中心部に対して、シートバックフレーム2aのシート内側の各側部から、それぞれシート外側に向かって軸方向に差し込まれて挿通されている。詳しくは、各操作軸4aは、シートバックフレーム2aに形成された貫通孔2cと、リクライニング装置4のラチェット10の中心部に形成された貫通孔13と、ヒンジカム30の貫通孔31(ガイド20の貫通孔23)と、シートクッションフレーム3aに形成された貫通孔3cと、に貫通してシート外側に突出した状態として挿通されている。
【0025】
各操作軸4aは、それらのシート内側の端部に、各軸の軸径よりも太い頭部4a1が形成されている。これら頭部4a1には、コネクティングロッド4bの各端部4b1が嵌合されて後述するピン4cによりそれぞれ一体的に結合された状態とされている。これにより、各操作軸4aは、上記コネクティングロッド4bを介して互いに一体的に回動するように連結された状態とされている。上記各操作軸4aは、上述した各頭部4a1の太径形状によって、それぞれ、各リクライニング装置4からシート外側には抜け落ちない構成となっている。上記各操作軸4aのうち、車両外側(図3の左側)に配された操作軸4aには、そのシートクッションフレーム3aからシート外側に突出した部位箇所に、解除レバー5のフレーム板が一体的に溶着されて結合されている。
【0026】
したがって、上記解除レバー5の引き上げ操作を行うことにより、各操作軸4aが各リクライニング装置4のロックスプリング40の附勢力に抗した方向に一斉に回動操作されて、各リクライニング装置4のロック状態が一斉に解除される。また、上記解除レバー5の引き上げ操作をやめることにより、各操作軸4aが、上記各リクライニング装置4のロックスプリング40の附勢力によってヒンジカム30と共にロックの回転方向に回動し、各リクライニング装置4が一斉にロック状態に戻される。ここで、上記解除レバー5自体は、シートクッションフレーム3aとの間に掛着された引張バネ7の附勢力によって、引き上げ操作前の初期位置に戻されて保持されるようになっている。なお、各リクライニング装置4の詳細な構成については、特開2011−116303号公報等の文献に開示されたものと同じものとなっているため、その具体的な説明は省略することとする。
【0027】
ところで、上述したコネクティングロッド4bは、図3〜図4に示すように、断面円形状のストレートな鋼管材により形成されており、その両側の端部4b1が、上述した各操作軸4aの頭部4a1から軸方向に突出して形成された断面扇型の各嵌合部4a2と嵌合するV字形状にプレス加工されて凹んだ断面形状に形成されている。詳しくは、上記各操作軸4aは、図4に示すように、それらの各嵌合部4a2のV字状に突出する断面形状の向きが、それぞれ、シート後方側に向けられた状態として配設されており、これら各嵌合部4a2に対し、コネクティングロッド4bの各端部4b1が、それぞれ、シート後方側から互いのV字の凹凸同士が嵌合するように面当接された状態として、全体が断面円形状を成す形に組み付けられた構成となっている。この組み付け状態では、コネクティングロッド4bの各端部4b1のV字状にプレス加工されたきわの軸方向に面を向ける側面部分が、各操作軸4aの各嵌合部4a2の端側の軸方向に面を向ける側面部分に軸方向に面当接した状態となっている。
【0028】
そして、上記のように組み付けられた各操作軸4aの嵌合部4a2とコネクティングロッド4bの各端部4b1との両部位に跨って、結合部材となるピン4cが高さ方向に真っ直ぐに貫通して差し込まれた状態となって固定されている。ここで、ピン4cが本発明の「差込部材」に相当する。上記ピン4cの差し込み固定により、各操作軸4aとコネクティングロッド4bとが、それぞれ、回転方向と軸方向とに一体的となるように結合された状態とされている。
【0029】
ここで、上述した各操作軸4aの回転向きは、各操作軸4aが前述した各リクライニング装置4における、シートクッションフレーム3aに結合された各ガイド20に対してロック時の回転向きが定められる各ヒンジカム30に連結された構成となっていることにより、シートバック2の背凭れ角度位置によらず、各リクライニング装置4のロック時には、常に、各嵌合部4a2のV字状に突出する断面形状の各向きが、それぞれ、シート後方側に向けられた一定の向きに保持されるようになっている。
【0030】
上述したコネクティングロッド4bと各操作軸4aとは、常時は、上述したピン4cを介した連結構造によって、シートバックフレーム2aの左右両側の下端部間でシート幅方向(軸方向)に真っ直ぐな状態に保持されている。これらコネクティングロッド4bと各操作軸4aとが真っ直ぐに保持された状態は、例えば、車両側突等の発生によりシートバック2に車両外側(シート側方)からの衝撃力が入力されても維持されるようになっており、これらは、上記側突発生時におけるシートバック2の構造強度を担保する補強部材として機能するようになっている。すなわち、上記コネクティングロッド4bと各操作軸4aとは、互いの連結部において互いに軸方向(シート幅方向)に真っ直ぐに面当接した構成と、互いがピン4cにより一体的に結合された構成とによって、常時はシート幅方向に真っ直ぐに整列された状態として保持されているため、上記のようなシート側方からの衝撃力を受けても、かかる荷重は一方側の操作軸4aからコネクティングロッド4bを伝って他方側の操作軸4aに軸方向に真っ直ぐに伝達されるようになっており、コネクティングロッド4bをシート前後方向に移動させるような力が働きにくくなっているからである。
【0031】
したがって、上記のようなシート側方からの衝撃力がシートバック2にかけられた場合には、コネクティングロッド4bがつっかえ棒となって、各操作軸4aの頭部4a1がシートバックフレーム2aの左右両側の内側面にそれぞれ突き当たって、シートバックフレーム2aの幅方向への変形が抑えられるようになっている。なお、厳密には、本実施例では、図3に示すように、シートバックフレーム2aの左右両側部に大きな貫通孔2cが空けられているため、各操作軸4aの頭部4a1が当たる先は、各リクライニング装置4のラチェット10の外側面となっている。
【0032】
しかし、上記コネクティングロッド4bは、図5に示すように、車両後突等の発生により着座乗員がシートバック2に急激的に圧し掛かるような、シート前方からの衝撃力を受けることにより、各操作軸4aに対してシート後方側に離間する形で各側のピン4cを捻じ曲げるように変形させながら変位するようになっている。具体的には、コネクティングロッド4bは、上記衝撃力を受けることで、全体がシート後方側に変位して、着座乗員の体がシートバック2内にのめり込む動きを受け入れるようになっている。これらピン4cの変形により、上記入力された衝撃力の一部が吸収される。
【0033】
上記コネクティングロッド4bの変位により、車両後突時における着座乗員の体の動きは、先ず、腰部が頭部の動きに先行して、シートバック2内にのめり込み、着座乗員の頭部とヘッドレストとの間の距離が縮められた状態となり、次いで、頭部が後側のヘッドレストに当てられる挙動となる。これにより、着座乗員の頭部がヘッドレストに鞭打ち状に強く押し当てられる事態を防止することができ、至近距離で比較的軟らかく受け止められるようになっている。このように、シートバックフレーム2aに、車両の側突に対しては高い支持強度を発揮し、前後衝突に対しては高い衝撃吸収性を発揮することのできる補強構造を設定することができる。
【0034】
ここで、各ピン4cは、上述したコネクティングロッド4bの各端部4b1と各操作軸4aの嵌合部4a2とに跨ってシート高さ方向に上側から下側へ真っ直ぐに貫通して挿通されており、その挿通された先の端部が折り曲げられて抜け止めされた構成となっている。これにより、上記各ピン4cは、上記衝撃力を受けて捻じ曲げられるときには、上記挿通された先の折り曲げられた余長部分が内部に引き込まれる形で変形し、コネクティングロッド4bがシート後方側へ離間する移動が起こっても破断することなく、コネクティングロッド4bの各端部4b1と各操作軸4aの嵌合部4a2とを繋ぎ止めた状態に保持するようになっている。
【0035】
ここで、各操作軸4aは、上記のようにコネクティングロッド4bがシート後方側に移動変位しても、それらはピン4cが変形することで変位せず、互いに同軸線上の位置に配設された状態を維持するようになっている。したがって、車両後突が発生した後にも、解除レバー5を操作することにより、かかる操作力を、各操作軸4aとピン4cを介して繋ぎ止められているコネクティングロッド4bを介して一方側の操作軸4aから他方側の操作軸4aへと伝達することができ、後突発生後にも各リクライニング装置4のロックを解除する機能を有効に働かせることができる。また、後突発生後に、上記変形した各ピン4cを交換するだけで、再び、コネクティングロッド4bと各操作軸4aとを初期の結合させた状態に戻すことができ、かかる修復作業をより簡便に行うことができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、上記実施例では、本発明の「ロッド」に相当する構成として、左右両側に配されたリクライニング装置4の操作軸4a同士を連結するコネクティングロッド4bをその中央部とし、コネクティングロッド4bの両端部4b1に結合される各操作軸4aをその側部として構成したものを例示したが、単に、シートバックの両サイドの下部フレーム間に補強用ロッドとして機能するように架け渡されて設けられるものであってもよい。また、上記実施例では、ロッドの中央部(コネクティングロッド4b)と側部(操作軸4a)とを結合する結合部材として、これらの間に跨って差し込まれるピン4c(差込部材)を例示したが、これらを束ねるように結束するバンド型の結合部材であってもよい。また、ピン4cを使用する場合でも、その差し込み方向がロッドの中央部(コネクティングロッド4b)と側部(操作軸4a)との離間方向と同じシート前後方向に差し込まれるものであってもよい。また、ロッドの中央部と側部との嵌合部の分割形状(シート前後方向に嵌合する凹凸形状)は、どちら側が凹又は凸となる形状であっても構わない。また、凹凸の分割ラインの形状は、上記実施例で示したようなV字状の分割ラインの他、U字状やコ字状などの分割ラインとなる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用シート
2 シートバック
2a シートバックフレーム
2b L字板
2c 貫通孔
3 シートクッション
3a シートクッションフレーム
3b L字板
3c 貫通孔
3d1 前倒れストッパ
3d2 後倒れストッパ
4 リクライニング装置
4a 操作軸
4a1 頭部
4a2 嵌合部
4b コネクティングロッド
4b1 端部
4c ピン(差込部材)
5 解除レバー
6 渦巻きバネ
6a 内側の端部
6b 外側の端部
7 引張バネ
10 ラチェット
11 円盤部
12 円筒部
13 貫通孔
20 ガイド
21 円盤部
22 円筒部
23 貫通孔
30 ヒンジカム
31 貫通孔
40 ロックスプリング
50 外周リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの左右両サイドの下部フレーム間にロッドが架設された車両用シートであって、
前記ロッドは、そのシート幅方向の中央部と側部とが、互いにシート前後方向に嵌合する凹凸形状に分割された形状とされて、これらの間に跨って設けられる結合部材により互いにシート前後方向と幅方向とに面当接した状態に保持された構成とされており、前記中央部と前記側部とは、車両側突等の発生によりシート側方からの衝撃力を受けても互いのシート幅方向に面当接した構成と前記結合部材による結合構造とによって前記両下部フレーム間でシート幅方向に真っ直ぐな状態を維持して前記シートバックの構造強度を担保する補強部材として機能する構成とされるが、車両後突等の発生により着座乗員が前記シートバックに圧し掛かるような、シート前方からの衝撃力を受けることで前記中央部が前記側部からシート後方側に離間する形で前記結合部材を変形させながら変位する構成となっていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記ロッドが、前記シートバックの前記左右両サイドの下部フレームに設定される各リクライニング装置の操作軸に連結されて、当該各操作軸による前記各リクライニング装置のロック解除操作を同期させるコネクティングロッドとして機能するように構成されており、
前記コネクティングロッドが前記中央部として、前記各操作軸が前記側部として、それぞれ互いに前記結合部材により一体的に回動するように結合された構成とされていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記結合部材が、前記ロッドの前記中央部と前記側部との凹凸形状が嵌合した両部位に跨って高さ方向に貫通して差し込まれる差込部材として構成されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95402(P2013−95402A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243317(P2011−243317)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】